特許第6935142号(P6935142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6935142
(24)【登録日】2021年8月27日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】ケーブルおよびコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20210906BHJP
   G06F 3/00 20060101ALI20210906BHJP
   H01R 13/66 20060101ALI20210906BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   H02M3/155 U
   G06F3/00 V
   H01R13/66
   H02M3/155 Y
   H01B7/00 306
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-39352(P2018-39352)
(22)【出願日】2018年3月6日
(65)【公開番号】特開2019-154189(P2019-154189A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2020年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 信一
(72)【発明者】
【氏名】小玉 哲
(72)【発明者】
【氏名】田村 豊
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−220541(JP,A)
【文献】 特開2000−331409(JP,A)
【文献】 特開平10−262366(JP,A)
【文献】 特開2007−143321(JP,A)
【文献】 特開2015−176813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
G06F 3/00
H01R 13/66
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にホスト機器と接続可能なホスト機器側コネクタを設け、他端に周辺機器と接続可能な周辺機器側コネクタを設けたケーブルであって、
前記ケーブルのケーブル本体が、前記ホスト機器側コネクタから前記周辺機器側コネクタまでそれぞれ延びるデータ通信用信号線と電源線とを備え、
前記ホスト機器側コネクタ、または前記周辺機器側コネクタが、インターフェイス規格に従ってホスト機器から供給される電圧を昇圧する昇圧コンバータを備え、
前記周辺機器側コネクタが、前記電源線を通じて前記周辺機器へ供給される電圧に含まれるノイズを抑制可能なように、前記昇圧コンバータから出力される電圧を降圧する降圧コンバータを備え、
前記昇圧コンバータが、降圧時の電圧差に応じた電圧分だけ、前記ホスト機器から供給される電圧を昇圧することを特徴とするケーブル。
【請求項2】
前記昇圧コンバータが、前記ホスト機器側コネクタに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記降圧コンバータが、前記ホスト機器から供給される昇圧前の電圧よりも小さい電圧分だけ、電圧を下げることを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記昇圧コンバータが、前記周辺機器側コネクタに設けられていることを特徴とする請求項に記載のケーブル。
【請求項5】
前記電源線が、GND線と、電源供給線から成り、
前記昇圧コンバータが、前記GND線のGND電圧および前記電源供給線の電源電圧のうち、少なくとも電源電圧を昇圧することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のケーブル。
【請求項6】
前記電源線が、GND線と、電源供給線と、GND線の電圧が負電圧側に昇圧された電圧を供給するGND電圧供給線とから成り、
前記昇圧コンバータが、前記GND線のGND電圧および前記電源供給線の電源電圧を昇圧し、
昇圧されたGND電圧および電源電圧が、それぞれGND電源供給線および電源供給線を通じて、前記周辺機器側コネクタへ供給されることを特徴とする請求項に記載のケーブル。
【請求項7】
前記昇圧コンバータが、電源電圧用の昇圧コンバータとGND電圧用の昇圧コンバータとを有し、
前記降圧コンバータが、電源電圧用の降圧コンバータとGND電圧用の降圧コンバータとを有することを特徴とする請求項6に記載のケーブル。
【請求項8】
前記昇圧コンバータが、スイッチングレギュレータで構成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のケーブル。
【請求項9】
前記降圧コンバータが、シリーズレギュレータで構成されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のケーブル。
【請求項10】
USB(Universal Serial Bath)規格に応じたケーブルであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のケーブル。
【請求項11】
周辺機器と接続可能な周辺機器側端子と、
インターフェイス規格に従い、データ通信用信号線と電源線とが両端の間で延びているケーブルのコネクタと接続可能なケーブル側端子と、
前記ケーブルを通じてホスト機器から供給される電源電圧を昇圧する昇圧コンバータと、
昇圧された電源電圧を降圧する降圧コンバータとを備え、
前記降圧コンバータが、電源電圧に含まれるノイズを抑制可能なように、前記昇圧コンバータから出力される電圧を降圧し、
前記昇圧コンバータが、降圧時の電圧差に応じた電圧分だけ、前記ケーブルを通じて前記ホスト機器から供給される電源電圧を昇圧することを特徴とするコネクタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、USB(Universe Serial Bus)ケーブルなどインターフェイス規格に基づいたケーブル、およびコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
USB規格などインターフェイス規格に準拠するケーブルにおいては、ホスト機器(PCなど)と周辺機器(マウス、携帯端末など)との間でデータ転送可能であり、それととともに、ホスト機器側から周辺機器へ電源電圧(バスパワー)を供給可能である。例えばUSBケーブルは信号線と電源線とを内包し、電源電圧(例えば+5V)がホスト側から周辺機器へ供給される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−280771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周辺機器へ供給される電源電圧にノイズが重畳すると、周辺機器の動作に影響を与える恐れがある。したがって、ノイズの影響を抑え、安定した電源電圧を周辺機器に供給可能なケーブルが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のケーブルは、一端にホスト機器と接続可能なコネクタ(以下、ホスト機器側コネクタという)を設け、他端に周辺機器と接続可能なコネクタ((以下、周辺機器側コネクタという)を設けたケーブルである。例えば、USB(Universal Serial Bath)規格に応じたケーブルとして構成可能である。
【0006】
本発明では、ホスト機器側コネクタもしくは周辺機器側コネクタに、インターフェイス規格に従ってホスト機器から供給される電圧を昇圧する昇圧コンバータが設けられている。そして、周辺機器側コネクタには、昇圧された電圧を降圧して安定化させることが可能な降圧コンバータが設けられている。例えば、昇圧コンバータをホスト機器側コネクタに設け、降圧コンバータを周辺機器側コネクタに設けたケーブルを構成することが可能である。
【0007】
ここで、「電圧を降圧して安定化させることが可能な」とは、リップル除去機能あるいはそれ以外の機能などによって降圧後の電圧においてノイズが抑制され、安定化するように降圧させることができることを表す。例えば降圧コンバータは、リニアレギュレータであるシリーズレギュレータで構成することができる。一方、昇圧コンバータは、例えばスイッチングレギュレータで構成することが可能である。
【0008】
昇圧コンバータ、降圧コンバータは、ノイズ抑制という観点から電圧を昇圧、降圧すればよい。例えば、昇圧コンバータは、ホスト機器から供給される電圧よりも小さい電圧分だけ、電圧を上げるようにすることができる。降圧コンバータは、昇圧コンバータの昇圧前の電圧まで下げるように構成することが可能であり、この場合、ケーブル区間で昇圧された電圧供給が行われる一方、周辺機器は、ホスト機器から供給された電源電圧と同じ電圧値になる。
【0009】
例えば、ケーブル本体は、GND線と、電源供給線から成る電源線を内包している。昇圧コンバータは、GND線のGND電圧および電源供給線の電源電圧のうち、少なくとも電源電圧を昇圧すればよい。あるいは、昇圧コンバータがGND電圧および電源電圧を昇圧し、降圧コンバータが降圧してもよい。この場合、ケーブル本体には、昇圧されたGND電圧を周辺機器側コネクタへ供給するGND電圧供給線が設けられる。また、昇圧コンバータが、電源電圧用の昇圧コンバータとGND電圧用の昇圧コンバータとを備えたコンバータとして構成され、降圧コンバータが、電源電圧用の降圧コンバータとGND電圧用の降圧コンバータとして構成される。
【0010】
本発明の一態様であるコネクタは、ホスト機器と接続可能なホスト機器側端子と、インターフェイス規格に従うケーブルのコネクタと接続可能なケーブル側端子と、ホスト機器から供給される電源電圧を昇圧する昇圧コンバータとを備える。また、本発明の一態様であるコネクタは、周辺機器と接続可能な周辺機器側端子と、インターフェイス規格に従うケーブルのコネクタと接続可能なケーブル側端子と、ケーブルから供給される電源電圧を降圧して安定化させることが可能な降圧コンバータとを備える。
【0011】
さらに本発明の他の態様であるコネクタは、周辺機器と接続可能な周辺機器側端子と、インターフェイス規格に従うケーブルのコネクタと接続可能なケーブル側端子と、ケーブルを通じてホスト機器から供給される電源電圧を昇圧する昇圧コンバータと、昇圧された電源電圧を降圧して安定化させることが可能な降圧コンバータとを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ノイズの影響を抑えながら、周辺機器へ電源供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態であるケーブルの構成図である。
図2】ケーブル本体の断面図である。
図3】コネクタの概略的電気回路を示した図である。
図4】電源電圧の昇圧、降圧を示した図である。
図5】第2の実施形態におけるコネクタの概略的電気回路を示した図である。
図6】第2の実施形態における電源電圧およびGND電圧の昇圧、降圧を示した図である。
図7】第3の実施形態であるケーブルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、第1の実施形態であるケーブルの構成図である。図2は、ケーブル本体の断面図である。
【0016】
ケーブル10は、データ転送可能であるとともに、ホスト機器100から周辺機器200へ給電するときに使用可能なケーブルである。ここでは、シリアルバス規格の1つであるUSB規格に従うUSBケーブルとして構成されている。ケーブル10は、ケーブル本体20と、一方の端部に設けられたコネクタ(ホスト機器側コネクタ)30と、他方の端部に設けられたコネクタ(周辺機器側コネクタ)40とを備える。
【0017】
コネクタ30は、電源を備えたホスト機器100(例えばPC)に接続可能である。一方、コネクタ40は、携帯端末、オーディオ用機器(例えばUSB−ADC)などの電源を備えていない周辺機器200に接続可能である。ユーザは、周辺機器200を使用する場合、コネクタ30のプラグ30Pをホスト機器100のポート(ソケット)100Pに差し込み、コネクタ40のプラグ40Pを周辺機器200のポート(ソケット)200Pに差し込む。
【0018】
図2に示すように、ケーブル10には、一対の信号線22(22A、22B)と、一対の電源線24(24A、24B)が配設されている。信号線22は、画像データ、音声データなどのデータをホスト機器100と周辺機器200との間で相互通信する信号線として構成されている。
【0019】
電源線24は、電源供給線24A、GND線24Bから成り、ホスト機器100内の図示しない電源回路が、電源供給線24Aを通じて電源電圧を周辺機器200に供給する。また、GND線24Bは、ホスト機器100内の電源回路のGND線と接続されている。
【0020】
図3は、コネクタ30、40の概略的電気回路を示した図である。
【0021】
ホスト機器100と接続するコネクタ30には、昇圧コンバータ35が設けられている。昇圧コンバータ35は、直流電圧を増加させるDC−DCコンバータであり、ここではスイッチングレギュレータによって構成されている。昇圧コンバータ35は、インダクタ35A、スイッチング素子35B、ダイオード35C、コンデンサ35Dなどを備え、ケーブル本体20の電源電圧線24A、GND線24B(図2参照)と接続する。
【0022】
昇圧コンバータ35は、ホスト機器100から供給される電源電圧(V+)を所定電圧分だけ昇圧するように構成されている。例えば、ホスト機器100がUSB規格に従って+5Vの電源電圧を供給する場合、昇圧コンバータ35は+5Vの電源電圧を+7Vへ昇圧する。昇圧された電源電圧は、電源供給線24Aを通じてコネクタ40に供給される。
【0023】
周辺機器200と接続するコネクタ40には、降圧コンバータ45が設けられている。降圧コンバータ45は、直流電圧を下げるDC−DCコンバータであり、ここではリニアコンバータの1つであるシリーズレギュレータとして構成されている。降圧コンバータ45は、コンデンサ45A、三端子レギュレータ45B、コンデンサ45Cなどを備え、電源供給線24A、GND線24B(図2参照)と接続する。降圧コンバータ45は、昇圧された電源電圧(例えば+7V)を、昇圧前の電圧(例えば+5V)まで降下させる。
【0024】
図4は、電源電圧の昇圧、降圧を示した図である。
【0025】
例えば、ホスト機器100がノート型PCである場合、HDD、ディスプレイ、CPUなどのデバイス動作によってノイズが生じ、ポート100Pの電源電圧ライン(バスパワーライン)に影響を与える。その結果、電源電圧(V+)に無視できない程度のノイズ(例えば数10mV〜100mV)が重畳し、電源電圧が不安定になる。
【0026】
また、画像データ、音声データなどのデータは、USB規格に従って定められた転送速度(例えば480Mbps)で転送するが、所定周波数のクロックパルス信号に同期してシリアルデータ転送処理が行われる。このクロックパルス信号が、信号線24の傍に配設された電源供給線24Aに干渉することによって、ノイズが電源電圧(V+)に重畳される。
【0027】
ホスト機器100の動作に起因するノイズ、信号線24の干渉ノイズが重畳した電源電圧をそのまま周辺機器200へ供給すると、場合によっては周辺機器200の動作に影響を与える。例えば、USBケーブル10をUSB−DACに接続してアナログアンプ、スピーカーなどのオーデォオ機器を使用する場合、ノイズの影響を受けた電源電圧で動作するために音質が低下する。
【0028】
本実施形態では、周辺機器側のコネクタ40において、供給された電源電圧を降圧する。このとき、降圧コンバータ45が電圧安定化回路として機能するため、電源電圧(V+)に重畳したノイズ(図4の符号“ST”参照)を抑制することができる。
【0029】
詳述すると、シリーズレギュレータである降圧コンバータ45は、出力電圧のリップル除去機能を有し、PSRR(電源電圧除去比)が優れている。このリップル除去によって、電源電圧に重畳したノイズを抑制し、安定化された電源電圧に基づいて周辺機器200が動作する。
【0030】
一方、周辺機器200は、概してUSB規格に定められた電源電圧(符号“V+”参照)で動作するように構成されている。そのため、コネクタ30内に設けられた昇圧コンバータ35は、降圧時の電圧差と同じ電圧分だけ、電源電圧を昇圧させる。図4では、昇圧された電源電圧を“V++”で表している。よって、ケーブル10の区間だけ、USB規格と異なる昇圧された電源電圧となり、ホスト機器100からケーブル10へ供給される電源電圧、および周辺機器200に供給される電源電圧は、USB規格に応じた電源電圧となる。
【0031】
電源電圧を昇圧、降圧させるときの電圧差(すなわち、昇圧/降圧前の電圧と昇圧/降圧後の電圧との差)は、供給する電源電圧の大きさ、USB規格のヴァージョン、ケーブル10の特性(許容される供給電圧など)、降圧コンバータ45のPSRRなどに従って定めればよい。例えば、定められた電源電圧に対し、最も効果的にノイズ除去ができる電圧差を定め、それに合わせて昇圧させればよい。ノイズ抑制のための昇圧、降圧であることを考慮すれば、供給される電源電圧の大きさよりも小さい電圧分だけ昇圧、降圧するのがよい。
【0032】
このように本実施形態によれば、USB規格に応じたケーブル10において、昇圧コンバータ35、降圧コンバータ45が、ケーブル本体10の両端に設けられたコネクタ30、40にそれぞれ設けられている。コネクタ30、40内の回路構成を改良するだけで、ケーブル電源電圧に重畳するノイズを抑制し、安定した(クリーンな)電源供給を行うことが可能となる。よって、ケーブル接続による電源供給という優れた利便性を享受することができる。特に、オーディオ関連の周辺機器へ電源供給した場合、高品質な音声を実現することが可能となる。
【0033】
周辺機器用に別途外部電源を利用すればノイズの影響を受けなくて済むが、別電源を用意しなければならず、電源供給時の利便性が大きく損なわれる。また、信号処理によってノイズ成分をキャンセルさせるような信号処理回路を設けることも、コスト増加、追加機器の設置などの問題が生じる。
【0034】
さらに、フェライトコアなどのノイズフィルタを用いても、ノイズ帯域に合わせたフィルタが必要となり、帯域外のノイズを抑制できない。電源線に対して特殊なシールド構造を採用しても、そもそもホスト機器側で発生するノイズに対処することはできない。
【0035】
本実施形態のように昇圧コンバータ35、降圧コンバータ45をコネクタ30、40へ配置することは、上述したフィルタ、信号処理フィルタの設置と比べて極めて設計等が容易であり、既存のケーブルおよびコネクタの構成を大きく変える必要がなく、しかも製造コストを抑えことができる。また、ケーブル本体20が長い場合、途中で電源電圧が低下するという問題が生じるが、昇圧した電源電圧で供給するため、所望する電源電圧を周辺機器200へ供給することができる。
【0036】
昇圧コンバータ35については、スイッチングレギュレータ以外のDC−DCコンバータによって構成してもよい。また、降圧コンバータ45については、シャントレギュレータなどのリニアレギュレータで構成することも可能であり、また、リニアレギュレータ以外の電圧安定化機能をもつ降圧コンバータによって構成することも可能である。
【0037】
次に、図5、6を用いて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、GND線の電圧を昇圧、降圧する。それ以外の構成については、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0038】
図5は、第2の実施形態におけるコネクタの概略的電気回路を示した図である。信号ケーブル10’の両端に設けられたコネクタ30’、40’は、それぞれ一対の昇圧コンバータ35X、35Y、一対の降圧コンバータ45X、45Yを備える。昇圧コンバータ35X、降圧コンバータ45Xは、第1の実施形態と同様、正電圧用のコンバータとしてそれぞれ構成される。一方、昇圧コンバータ35Y、降圧コンバータ45Yは、負電圧用のコンバータとして構成されている。
【0039】
第2の実施形態では、ケーブル本体20’の電源線24’は、電源供給線24A’、GND線24B’とともに、GND線24B’の電圧(通常0V:以下、GND電圧という)を負電圧側に昇圧し、供給する電圧供給線(ここでは、GND電圧供給線という)24C’が配設されている。昇圧コンバータ35Y、降圧コンバータ45Yは、GND線24B’、GND電圧供給線24C’と接続されている。
【0040】
第1の実施形態で説明した電源電圧(V+)に重畳するノイズは、GND電圧にも重畳する。第2の実施形態では、このGND電圧を負電圧側に昇圧し、降圧してノイズを除去する。ここでは、昇圧コンバータ35Yが所定の電圧分(絶対値)だけ昇圧する(符号“V−”参照)。例えば、−2Vの電圧まで昇圧し、コネクタ40’に供給する。降圧コンバータ45Yは、昇圧された電圧をGND電圧(0V)まで降圧する。これによって、ホスト機器100と周辺機器200は、同じGND電圧となる。
【0041】
図6は、第2の実施形態における電源電圧およびGND電圧の昇圧、降圧を示した図である。図6に示すように、ホスト機器100に起因するノイズ、あるいはデータ転送に起因するノイズがGND電圧にも重畳する。このGND電圧を昇圧してコネクタ40’に供給し、降圧するときにノイズを除去することで、安定したGND電圧を供給することができる。
【0042】
なお、第1の実施形態のように、電源電圧(V+)に対してのみ昇圧、降圧を行っても、十分にノイズ抑制の効果を得ることができる。また、第1の実施形態の場合、従来の電源線をそのまま利用するだけでよく、ケーブル本体の構成を変えずに済む。
【0043】
第1、第2の実施形態では、昇圧、降圧するときの電圧差を同じにしているが、USB規格に従う範囲で、ノイズ抑制に最も好ましい電圧差を昇圧、降圧それぞれ別々に定めてもよい。
【0044】
第1、第2の実施形態では、USB規格に従うケーブルを構成しているが、USB規格以外のインターフェイス規格であって、ホスト機器から周辺機器へ給電可能な規格に従うケーブルとして構成してもよい。また、データ転送用の信号線と電源供給線とを備えたケーブルの代わりに、信号線をもたない給電専用のケーブルとして構成することも可能である。
【0045】
上述したケーブルは、ケーブル本体の両端にコネクタが一体的に繋がったケーブルとして構成されている。しかしながら、ホスト機器側コネクタ、周辺機器側コネクタを、それぞれ昇圧用コネクタ、降圧用コネクタとして単体で構成し、昇圧コンバータ、降圧コンバータを備えていない従来のケーブルと接続させることによって、電源電圧を安定化させることができる。
【0046】
すなわち、ホスト機器と接続可能な端子(例えばプラグ)と、従来のケーブルのコネクタと接続可能な端子(例えばソケット)とを備え、昇圧コンバータを備えたコネクタを構成することが可能である。
【0047】
また、周辺機器と接続可能な端子(例えばプラグ)と、従来のケーブルのコネクタと接続可能な端子(例えばソケット)とを備え、降圧コンバータを備えたコネクタを構成することができる。言い換えれば、上述したコネクタに対して接続端子を両側に設け、コネクタ単体として構成することが可能である。
【0048】
第1、第2の実施形態では、昇圧コンバータをホスト機器側のコネクタに設けているが、周辺機器側のコネクタに設けてもよい。この場合、ケーブルを通じて供給される電源電圧、GND電圧が、周辺機器側のコネクタにおいて昇圧され、降圧される。このような構成においても、電源電圧のノイズを抑制し、安定化させることができる。
【0049】
さらに、従来のケーブルのコネクタと接続可能な端子(例えばソケット)と、周辺機器へ接続可能な端子(例えばプラグ)とを備え、昇圧コンバータと降圧コンバータ両方を備えたコネクタを、単体として構成することも可能である。これによって、周辺機器に対してこのような昇圧−降圧コネクタを接続するだけで、電源電圧を安定化させることができる。
【0050】
次に、図7を用いて、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、信号線ケーブルと電源線ケーブルが別々に設けている。
【0051】
図7は、第3の実施形態であるケーブルを示した図である。信号線ケーブルと電源線ケーブルは、互いに物理的に分離している。これによって、信号線による電源線へのノイズ干渉を抑えることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 ケーブル
20 ケーブル本体
22 信号線
24 電源線
30 コネクタ(ホスト機器側コネクタ)
35 昇圧コンバータ
40 コネクタ(周辺機器側コネクタ)
45 降圧コンバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7