(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の構成では、張材に作用する着座者からの荷重(テンション)が解除されると、張材の端部に設けられた係止プレートが溝部内で回転して、枠体等の保持部材の溝部から係止プレートが抜けてしまう可能性がある。
【0007】
また、張材に設けられた縁部に突起が形成された構成では、突起の周囲に形成された切込みにより、縁材の他部位と突起との縁が切られている。このことによって、張材のテンションに由来する溝部からの脱落方向のモーメントが突起の付け根に集中的に作用する。突起の形成部位の幅は切込みによって狭くなっているので、脱落方向へのモーメントに抗しきれない。また、これに付随して、突起の付け根の破損が発生し、そのことによって縁材そのものが破損して縁材が脱落する可能性がある。このため、縁材の寸法を溝部の厚さと等しい程度の厚肉に設定することも考えられる。このことによって、突起の形成部位が初期位置に復帰しようとした場合でも、突起は段部に引っかかった状態が維持されるような寸法設定とすることも可能である。このような場合、張材を厚肉な縁材と一体化するための手段が限定されてしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、張材の設けられた縁材が保持部材に確実に取り付けられるとともに、保持部材から外れにくい張材の張設構造及び椅子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る張材の張設構造は、荷重を受ける張材と、該張材の縁部に設けられた縁材と、該縁材を保持する保持部材と、を備え、該保持部材は、前記縁材が挿入された挿入溝部と、該挿入溝部に形成され、前記縁材を係合する係合部と、を有し、前記縁材は、前記張材の縁部に連結された基部と、該基部から前記挿入溝部が開口する方向と交差する一方向に突出する突出部と、前記基部における前記突出部が突出する面と反対側の面において、前記突出部と反対側の位置に、前記一方向に凹むように形成された凹部と、を有
し、該凹部は、前記基部の外縁側から内縁側に向かうにしたがって次第に前記一方向に凹むように傾斜していることを特徴とする特徴とする。
また、本発明に係る張材の張設構造は、荷重を受ける張材と、該張材の縁部に設けられた縁材と、該縁材を保持する保持部材と、を備え、該保持部材は、前記縁材が挿入された挿入溝部と、該挿入溝部に形成され、前記縁材を係合する係合部と、を有し、前記縁材は、前記張材の縁部に連結された基部と、該基部から前記挿入溝部が開口する方向と交差する一方向に突出する突出部と、前記基部における前記突出部が突出する面と反対側の面において、前記突出部と反対側の位置に、前記一方向に凹むように形成された凹部と、を有し、該凹部は、中央傾斜面と、該中央傾斜面における前記縁材の長手方向の両側方に配置される側方傾斜面と、を有し、該側方傾斜面における前記縁材の長手方向の端部は、前記基部における前記反対側の面に連続していることを特徴とする。
【0010】
このように構成された張材の張設構造では、張材の縁部に設けられた縁材は、挿入溝部に挿入される際には、突出部が挿入溝部の一方向側の壁部に当接する。そして、突出部は挿入溝部の一方向側の壁部から一方向と反対方向に力を受ける。基部における突出部が突出する面と反対側の面に、一方向に凹むように凹部が形成され、基部の厚みが薄くなっている。このため、突出部に作用する反対方向の力により、基部の凹部は反対方向に膨らむように弾性変形しつつ挿入される。そして、挿入溝部内に挿入が完了した状態では、縁材は元の形状に戻り、突出部が、挿入溝部に形成された係合部に係合され、張材の設けられた縁材は保持部材に確実に取り付けられる。
また、縁材が保持部材に取り付けられた状態で、縁材に挿入溝部の開口する方向に向かって力が作用しても、縁材の突出部の周囲等にはスリットが形成されておらず、突出部は挿入溝部から外れる方向に弾性変形しにくい。よって、縁材が保持部材の挿入溝部から外れることがない。
【0011】
また、本発明に係る張材の張設構造では、前記凹部は、前記突出部と反対側の位置に向かうにしたがって漸次深さが深くなるように形成されていることが好ましい。
【0012】
このように構成された張材の張設構造では、突出部は、凹部における一番深い位置の反対側に設けられているため、突出部が挿入溝部の一方向側の壁部に当接すれば、凹部は反対方向に大きく膨らむ。よって、縁材を挿入溝部に挿入する際に、大きな力を要せずに、よりスムーズに挿入することができる。また、凹部は漸次深さが深くなるように形成されているため、凹部が弾性変形する際に凹部に局所的に力が作用することが抑制される。
【0013】
また、本発明に係る張材の張設構造では、前記縁材は、前記基部から一方向に突出し、前記突出部の基端を支持する補強部を有していてもよい。
【0014】
このように構成された張材の張設構造では、縁材の基部には一方向に突出し突出部の基端を支持する補強部が設けられている。よって、突出部は補強部により補強されているため、突出部が保持部材の挿入溝部に挿入され弾性変形する際に、突出部が折れたり、損傷したりすることがない。
【0015】
また、本発明に係る張材の張設構造では、前記補強部は、前記縁材の長手方向に連続するリブであってもよい。
【0016】
このように構成された張材の張設構造では、突出部は、縁材の長手方向に連続するリブにより補強されている。よって、突出部が保持部材の挿入溝部に挿入され弾性変形する際に、突出部が折れたり、損傷したりすることより一層抑制されるとともに、補強部自体も折れたり、損傷したりすることがない。
【0017】
また、本発明に係る張材の張設構造では、前記挿入溝部は、開口する入口側から該入口側と反対側の奥側に向かうにしたがって次第に溝幅が小さくなるように形成されていてもよい。
【0018】
このように構成された張材の張設構造では、挿入溝部は入口側から奥側に向かうにしたがって次第に溝幅が小さくなるように形成されているため、縁材を挿入溝部内に挿入する際には、挿入溝部を形成する壁部に沿って縁材を挿入すれば、縁材が当該壁部と当接して、挿入とともに該壁部から徐々に力を受けて弾性変形しやすい。よって、大きな力を伴わずに容易に、縁材を挿入溝部に挿入することができる。
【0019】
また、本発明に係る椅子は、上記のいずれか一に記載の張材の張設構造における保持部材を背フレームまたは座フレームとして備えることを特徴とする。
【0020】
このように構成された椅子では、上記のいずれか一に記載の張材の張設構造における保持部材を背フレームまたは座フレームとして備えるため、張材の設けられた縁材が保持部材に確実に取り付けられるとともに、保持部材から外れにくい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る張材の張設構造及び椅子によれば、張材の設けられた縁材が保持部材に確実に取り付けられるとともに、保持部材から外れにくい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る椅子について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る椅子を側方から見た斜視図である。
図1に示すように、椅子100は、床面Fの上に設置される脚部1と、脚部1の上部に設置されたボックス状の支基2と、支基2の上部に取り付けられた座受け部材3と、座受け部材3にスライド可能に支持され着座者が着座可能な座体4と、支基2から延び座体4に着座した着座者の背中を支持可能な背凭れ8と、を有している。
【0024】
以下の説明において、便宜上、座体4に着座した着座者が前を向く方向を「前方」、その反対方向を「後方」と称する。また、椅子100が設置される床面F側とその反対側を結ぶ方向を「上下方向」と称する。また、椅子100の幅方向、つまり前後方向と直交する水平方向を「左右方向」と称する。また、図中において、前方を矢印FRで示し、上方を矢印UPで示し、左方を矢印LHで示す。
【0025】
脚部1は、キャスター11a付きの多岐脚11と、多岐脚11の中央部より起立し昇降機構であるガススプリング(不図示)を内蔵する脚柱12と、を有している。
【0026】
脚柱12の下部を構成する外筒13は、多岐脚11に回転不能に嵌合して支持されている。脚柱12の上部を構成する内筒14は、上端部に支基2を固定して支持するとともに、下部が外筒13に水平方向で回転可能に支持されている。
【0027】
支基2には、脚柱12の昇降調整機構(不図示)と背凭れ8の傾動調整機構(不図示)が内蔵されている。
【0028】
座受け部材3は、支基2の上部に取り付けられた4本のリンクアーム(不図示)と、リンクアームどうしを連結する左右一対の固定フレーム(不図示)と、を有している。
【0029】
座体4は、座受け部材3に支持された座フレーム(保持部材)40と、座フレーム40に張設された座部張設部材60と、を有している。座部張設部材60の上面は、着座者の荷重を受ける座部荷重支持面71aとされている。
【0030】
図2は、座フレーム40を上方から見た斜視図である。
図2に示すように、座フレーム40は、固定フレームに支持された座下枠41と、座下枠41の上面に固定された座上枠50と、を有している。座下枠41及び座上枠50は、それぞれ環状に形成され、互いに一体に形成されている。
【0031】
座下枠41は、一対の固定フレームにそれぞれスライド可能に設けられた第一座補強杆42と、第一座補強杆42の両端部どうしを連結する第二座補強杆43と、を有している。第一座補強杆42と第二座補強杆43とは、例えば樹脂等で一体として形成され、所定の強度を有している。第一座補強杆42は、前後方向に沿って延びている。第二座補強杆43は、左右方向に沿って延びている。
【0032】
座上枠50は、左右方向に離間して配置された一対の縦杆51と、縦杆51の両端部どうしを連結する横杆52と、を有している。縦杆51と横杆52とは、例えば樹脂等で一体として形成され、座部張設部材60(
図1参照。以下同じ。)から作用する力に応じて弾性変形可能に構成されている。
【0033】
縦杆51は、前後方向に沿って延びている。横杆52は、左右方向に沿って延びている。前側の横杆52の内縁には、水平面に沿って板状に延びる補強板部53が設けられている。補強板部53の上面には、弾性を有するクッション体(不図示。以下同じ。)を載置可能とされている。
【0034】
縦杆51及び横杆88の外縁には、内方(内縁側)に向かって凹む取付溝(挿入溝部)55が形成されている。取付溝55に、後述する座部張設部材60(
図1参照)の端部が挿入され係合されている。
【0035】
図1に示すように、座部張設部材60は、略環状に形成された座縁材(縁材)61と、座縁材61に張設された座張材(張材)71と、を有している。
【0036】
図3は、座縁材61の平面図である。
図3に示すように、座縁材61は、環状を半分にした半環状の部材61aが一対、僅かに間隔を有して配置されて構成されている。一対の半環状の部材61aは、互いに左右対称に形成されている。
【0037】
図4は、座縁材61の一部分を上方から見た斜視図である。
図5は、座縁材61の一部分を下方から見た斜視図である。
図4及び
図5に示すように、座縁材61は、座体4の外縁に沿って延在する平板部(基部)62と、平板部62の内縁側の端部から下方に屈曲したリブ(補強部)64と、リブ64に複数設けられた抜け止め突起(突出部)66と、を有している。
【0038】
図3に示すように、平板部62の角部は曲線状に形成されるとともに、外縁部及び内縁部にそれぞれ切込み62a,62bが形成されている。外縁部の切込み62aは、内縁部の切込み62bよりも大きい。
【0039】
図6は、座体4における張材の張設構造を示す断面図である。
図7は、
図4のA−A線断面図である。
図4及び
図6に示すように、平板部62は、略水平面に沿って配置された上面62uを有している。上面(一方向と反対側の面)62uには、複数箇所に下方(一方向)に凹む幅広凹部(凹部)63が形成されている。
【0040】
図3に示すように、幅広凹部63は、平板部62の上面62uにおける抜け止め突起66と反対側の位置に向かうにしたがって漸次深さが深くなるように形成されている。本実施形態では、幅広凹部63は、左右それぞれ3箇所に形成されている。幅広凹部63は、座縁材61の延在方向を凹部幅方向として、凹部幅方向の中央に配置される中央傾斜面63a及び中央傾斜面63aの両側方に配置される側方傾斜面63bで形成されている。
【0041】
図4に示すように、中央傾斜面63aは、平板部62の外縁側から内縁側に向かうにしたがって次第に下方に傾斜している。中央傾斜面63aの外縁側の端部は、平板部62の上面62uに連続している。
【0042】
側方傾斜面63bは、外縁側から内縁側に向かうにしたがって次第に下方に傾斜するとともに、中央傾斜面63a側に向かうにしたがって次第に下方に傾斜している。側方傾斜面63bの外縁側の端部は、平板部62の上面62uに連続している。側方傾斜面63bにおける凹部幅方向側方の端部は、平面部62の上面62uに連続している。
【0043】
図4及び
図5に示すように、リブ64は、平板部62の延在方向に(長手方向)連続して設けられている。本実施形態では、リブ64は、
図3に示す破線箇所に設けられている。
【0044】
図4及び
図5に示すように、抜け止め突起66は、平板部62の下面62bにおいて、幅広凹部63の一番深い位置と反対側の位置に設けられている。抜け止め突起66は、平板部62の(詳細には、中央傾斜面63aの)下面62bから下方に延びる基端部(基端)67と、基端部67の下端から平板部62の内縁側に折曲された突起部68と、を有している。本実施形態では、抜け止め突起66は、平板部62に左右それぞれ3箇所ずつ設けられている。
【0045】
基端部67は、リブ64の外面(平板部62の外縁側の面)に沿って配置されている。突起部68は、リブ64の下面に沿って配置されている。基端部67は、リブ64により支持されている。突起部68の先端面68fは、リブ64の内面(平板部62の内縁側の面)64fと同一平面上に配置されている。
【0046】
図1に示すように、座張材71は、縁部が座縁材61の平板部62(
図6参照)に接着材の塗布や縫合等により接合されている。
【0047】
次に、座体4における座張材71の張設構造について説明する。
図6及び
図7に示すように、座フレーム40には、座縁材61の抜け止め突起66が配置される箇所において、上面から下方に向かって凹む下向き穴46が形成されている。下向き穴46は、取付溝55と連通している。下向き穴46の底部は、取付溝55を形成する下面55bよりも下方に配置されている。換言すると、下向き穴46の下部は、取付溝55の下面55bよりも下方に凹む溝凹部(係合部)47をなしている。
【0048】
取付溝55は、入り口55a側(外縁側)の溝幅(上下方向に高さ)が、奥55z側(内縁側)の溝幅よりも短いテーパー形状をなしている。
【0049】
座縁材61に張設された座張材71の端部近傍は、座フレーム40の上面40a及び側端面40bに沿って配置され、取付溝55内に係合する方向に巻き込まれいている。座フレーム40の平板部62の下面62bに沿って座張材71の端部が接合されている。
【0050】
座縁材61の抜け止め突起66は、溝凹部47内に係合されている。これにより、抜け止め突起66は、溝凹部47の開口方向への移動が規制される。また、座張材71にテンションが作用した状態では、抜け止め突起66は、
図6に示す状態から、溝凹部47を形成する一方の側壁47aに先端を近接させる方向(以下、テンション方向と称する)にわずかに回動する。換言すると、平板部62の外縁側を取付溝55側の上面55uに近接させるようにわずかに回動する。テンションが解除されると、
図6に示す状態、または
図6に示す状態からテンション方向と反対方向に回動する。この際、最大限に回動した際には、平板部62の上面62uが取付溝55の上面55uに当接して回動が規制され、抜け止め突起66が溝凹部47、つまり取付溝55から外れることがない。
【0051】
次に、上記の座部張設部材60を座フレーム40に取り付ける動作を説明する。
図8は、座部張設部材60を座フレーム40の取付溝55に挿入する前の段階を示す断面図である。
図9は、
図8のB−B線断面図である。
図10は、座部張設部材60を座フレーム40の取付溝55に挿入し始めた段階を示す断面図である。
図11は、
図10のC−C線断面図である。
図12は、座部張設部材60を座フレーム40の取付溝55に挿入して、図
10に示す段階の次の段階を示す断面図である。
図8及び
図9に示すように、座縁材61を取付溝55に挿入する前には、座縁材61は変形しておらず、平板部62の上面62uは略水平面に沿った状態である。
【0052】
この状態から、座縁材61の内縁側を座フレーム40の取付溝55内に挿入すると、座縁材61の抜け止め突起66の下面66bが取付溝55の下面55bに接触する。座縁材61を取付溝55内にさらに挿入すると、
図10及び
図11に示すように、座縁材61の抜け止め突起66の下面66bが取付溝55の下面55bに当接し、座縁材61に内縁側に上向きに力が作用する。座縁材61の幅広凹部63の位置では、幅広凹部63の深さ分座縁材61の厚みが薄くなっていて、弾性変形しやすいため、幅広凹部63が上方に変位し(膨らみ)、抜け止め突起66が持ち上げられる。
【0053】
側方傾斜面63bにおける凹部幅方向側方の端部は、平面部62の上面62uに連続しているため、側方傾斜面が上面62uに対して直角に形成されている場合等よりも、弾性変形しやすい。
【0054】
また、中央傾斜面63aは溝凹部47の長手方向(座縁材61の延在方向に)に沿う長さを有するので、抜け止め突起66の上方への弾性変位に連動して、中央傾斜面63aは上方に弾性変位しやすい。
【0055】
取付溝55は、入り口55a側(外縁側)の溝幅(上下方向に高さ)が、奥55z側(内縁側)の溝幅よりも大きいテーパー形状をなしている。これにより、座縁材61が取付溝55の奥55z側に挿入されるにしたがって、座縁材61の幅広凹部63は上方に大きく変位するため、挿入しやすい。抜け止め突起66の先端が取付溝55の下面55bに沿うとともに上端が取付溝55の上面55uに沿って移動する。
【0056】
座縁材61を取付溝55内にさらに挿入すると、
図12に示すように、抜け止め突起66の一部が下向き穴46内に配置され、
図6及び
図7に示すように、抜け止め突起66が下向き穴46内に完全に配置されると、座縁材61の幅広凹部63は元の位置に戻るように弾性変形して、幅広凹部63が下方に変位し、抜け止め突起66が溝凹部47内に嵌め込まれる。このようにして、座部張設部材60を座フレーム40に取り付けられる。
【0057】
図1に示すように、背凭れ8は、支基2に連結された背フレーム(保持部材)80と、背フレーム80に張設された背部張設部材90と、を有している。背部張設部材90の前面は、着座者の荷重を受ける背部荷重支持面96fとされている。
【0058】
背フレーム80は、支基2に連結され、背フレーム80の強度を担う強度部材である背後枠81と、背後枠81の前方に設けられた背前枠86と、を有している。
【0059】
背後枠81は、下辺部82と、側辺部83と、上辺部84と、を有している。下辺部82と側辺部83と上辺部84とは、例えばアルミ等の金属または所定の強度を有する樹脂等により一体に形成されている。
【0060】
下辺部82は、支基2内の傾動調整機構(不図示)に連結され、支基2の後部の左右両側から延びている。下辺部82は、上方に向かうにしたがって次第に後方に向かって傾斜されている。また、各下辺部82には、座体4の側方に配置される肘掛け89が設けられている。
【0061】
各下辺部82の上端部には、側辺部83が連続して形成されている。各側辺部83は、上方に向かうにしたがって次第に左右方向の外側に向かって傾斜している。
【0062】
側辺部83の下部は、上方に向かうにしたがって次第に前方に向かって傾斜している。側辺部83の上部は、上方に向かうにしたがって次第に後方に向かって傾斜している。各側辺部83の上部どうしは、上辺部84で連結されている。
【0063】
図13は、背前枠86を前方から見た斜視図である。
図13に示すように、背前枠86は、左右方向に離間して配置された一対の縦杆87と、縦杆87の両端部どうしを連結する横杆88と、を有している。縦杆87と横杆88とは、例えば樹脂等で一体として形成され、背部張設部材90(
図1参照。以下同じ。)から作用する力に応じて弾性変形可能に構成されている。
【0064】
縦杆87は、上下方向に沿って延びている。横杆88は、左右方向に沿って延びている。縦杆87の上部と下部には、それぞれ、後方に向かって延びる上部連結部87a及び下部連結部87bが一体に形成されている。上部連結部87a及び下部連結部87bの先端部は、背後枠81の側辺部83(
図1参照)に連結されている。
【0065】
縦杆87及び横杆88の外縁には、内方(内縁側)に向かって凹む取付溝55が形成されている。取付溝55に、後述する背部張設部材90の端部が挿入され係合されている。
【0066】
図1に示すように、背部張設部材90は、略環状に形成された背縁材(縁材)91と、背縁材91に張設された背張材(張材)96と、を有している。
【0067】
背凭れ8において、座体4と同様に、背張材96の張設構造が設けられている。
図6を参照して説明すると、背フレーム80には、後方に凹む溝凹部47が設けられている。背縁材91は、平板部62が前方に配置され、リブ64及び抜け止め突起66が後方に突出している。背フレーム80の溝凹部47に、背縁材91の抜け止め突起66が係合されている。背縁材91に張設された背張材96の端部近傍は、背フレーム80の前面及び側端面に沿って配置され、取付溝55に係合する方向に巻き込まれいている。
【0068】
このように構成された椅子100では、座縁材61及び背縁材91は、取付溝55に挿入される際には、抜け止め突起66が取付溝55の面55bに当接する。そして、抜け止め突起66は取付溝55の面55bから力を受ける。平板部62における面62uに、面62b側に凹むように幅広凹部63が形成され、平板部62の厚みが薄くなっている。このため、抜け止め突起66に作用する力により、平板部62の幅広凹部63は反対方向に膨らむように弾性変形しつつ挿入される。そして、取付溝55内に挿入が完了した状態では、座縁材61及び背縁材91は元の形状に戻り、抜け止め突起66が、取付溝55の溝凹部47に係合され、座張材71及び背張材96の設けられた座縁材61及び背縁材91は座フレーム40及び背フレーム80に確実に取り付けられる。
【0069】
また、座縁材61及び背縁材91が座フレーム40及び背フレーム80に取り付けられた状態で、座縁材61及び背縁材91に取付溝55の開口する方向に向かって力が作用しても、座縁材61及び背縁材91の抜け止め突起66の周囲等にはスリットが形成されておらず、抜け止め突起66が取付溝55から外れる方向に弾性変形しにくい。よって、座縁材61及び背縁材91が座フレーム40及び背フレーム80の取付溝55から外れることがない。
【0070】
また、抜け止め突起66は、平板部62の下面62bにおいて、幅広凹部63の一番深い位置と反対側の位置に設けられている。よって、抜け止め突起66が取付溝55の面55bに当接すれば、幅広凹部63は反対方向に大きく膨らむ。よって、座縁材61及び背縁材91を取付溝55に挿入する際に、大きな力を要せずに、よりスムーズに挿入することができる。また、幅広凹部63は漸次深さが深くなるように形成されているため、幅広凹部63が弾性変形する際に幅広凹部63に局所的に力が作用することが抑制される。
【0071】
また、平板部62には抜け止め突起66の基端部67を支持するリブ64が設けられている。よって、抜け止め突起66はリブ64により補強されているため、抜け止め突起66が座フレーム40及び背フレーム80の取付溝55に挿入され弾性変形する際に、抜け止め突起66が折れたり、損傷したりすることがない。
【0072】
また、抜け止め突起66は、座縁材61の長手方向に連続するリブ64により補強されている。よって、抜け止め突起66が座フレーム40及び背フレーム80の取付溝55に挿入され弾性変形する際に、抜け止め突起66が折れたり、損傷したりすることより一層抑制されるとともに、リブ64自体も折れたり、損傷したりすることがない。
【0073】
また、取付溝55は入口側から奥55z側に向かうにしたがって次第に溝幅が小さくなるように形成されているため、座縁材61及び背縁材91を取付溝55に挿入する際には、取付溝55を形成する面55bに沿って座縁材61及び背縁材91を挿入すれば、座縁材61及び背縁材91が面55bと当接して面55bから力を受けて弾性変形する。よって、大きな力を伴わずに容易に、座縁材61及び背縁材91を取付溝55に挿入することができる。
【0074】
(変形例1)
上記に示す実施形態の変形例1について、主に図
14を用いて説明する。
以下の変形例において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図
14に示すように、本変形例では、幅広凹部63Aは、湾曲面63cで形成されている。湾曲面63cは、平板部62の外縁側から内縁側に向かうにしたがって次第に下方に傾斜している。また、湾曲面63cの外縁側の端部及び凹部幅方向側方の端部は、平板部62の上面62uに連続している。湾曲面63cは、凹部幅方向の中央側に向かうにしたがっ
て次第に深さが深くなるように形成されている。湾曲面63cにおいて、平板部62の内縁側の辺62dは凹部幅方向の中央側に向かうにしたがっ
て次第に深さが深くなるように、下方に凹む曲線で形成されている。湾曲面63cにおいて、平板部62の外縁側の辺62eは、直線で形成されている。
【0075】
抜け止め突起66は、平板部62の下面62bにおいて、幅広凹部63Aの一番深い位置と反対側の位置に設けられている。
【0076】
本変形例では、湾曲面63cが滑らかに連続する面で形成されているため、座縁材61Aが取付溝55に挿入される際には、抜け止め突起66に作用する力により、弾性変形しやすい。
【0077】
(変形例2)
上記に示す実施形態の変形例2について、主に図
15を用いて説明する。
図
15に示すように、本変形例では、幅広凹部63Bは、凹部幅方向の中央に隣接配置された中央傾斜面63d及び中央傾斜面63dの側方に配置された側方傾斜面63eで形成されている。
【0078】
中央傾斜面63dは、平板部62の外縁側から内縁側に向かうにしたがって次第に下方に傾斜している。中央傾斜面63dの外縁側の端部は、平板部62の上面62uに連続している。
【0079】
側方傾斜面63eは、外縁側から内縁側に向かうにしたがって次第に下方に傾斜するとともに、中央傾斜面63a側に向かうにしたがって次第に下方に傾斜している。側方傾斜面63bの外縁側の端部は、平板部62の上面62uに連続している。側方傾斜面63bの凹部幅方向側方の端部は、平面部62の上面62uに連続している。
【0080】
抜け止め突起66は、平板部62の下面62bにおいて、幅広凹部63Aの一番深い位置と反対側の位置に設けられている。詳細には、隣接する中央傾斜面63dどうしの間には境界線63fが形成され、抜け止め突起66は平板部62の下面62bにおいて境界線63fと反対側の位置に設けられている。
【0081】
本変形例では、抜け止め突起66は平板部62の下面62bにおいて、中央傾斜面63dどうしの境界線63fと反対側の位置に設けられているため、座縁材61Bに取付溝55の開口する方向に向かって力が作用しても、抜け止め突起66は取付溝55から外れる方向に弾性変形しにくい。
【0082】
(変形例3)
上記に示す実施形態の変形例3について、主に図
16を用いて説明する。
図
16に示すように、幅広凹部63Cは、直角面63gと、湾曲隅面63hと、幅広面63iとで形成されている。
【0083】
直角面63gは、平板部62の上面62uから直角に屈曲している。直角面63gの外縁側の端部は、平板部62の上面62uに連続している。
【0084】
幅広面63iは、平板部62の外縁側から内縁側に向かうにしたがって次第に下方に傾斜している。また、幅広面63iの外縁側の端部は、平板部62の上面62uに連続している。幅広面63iは、凹部幅方向の中央側に向かうにしたがってい次第に深さが深くなるように形成されている。
【0085】
湾曲隅面63hは、直角面63gの端部と幅広面63i端部とを結ぶ隅部であり、凹部幅方向側方に凹む形状をなしている。
【0086】
本変形例では、座縁材61Cが取付溝55に挿入される際には、抜け止め突起66に作用する力により、凹んでいた湾曲隅面63hが盛り上がり、幅広面63iが弾性変形しやすい。
【0087】
(変形例4)
上記に示す実施形態の変形例4について、主に図
17を用いて説明する。
図
17に示すように、幅広凹部63Dは、直角面63kと、幅広面63mとで形成されている。
【0088】
直角面63kは、平板部62の上面62uから直角に屈曲している。直角面63kの外縁側の端部は、平板部62の上面62uに連続している。
【0089】
幅広面63mは、平板部62の外縁側から内縁側に向かうにしたがって次第に下方に傾斜している。また、幅広面63iの外縁側の端部は、平板部62の上面62uに連続している。
【0090】
本変形例では、座縁材61Bに取付溝55の開口する方向に向かって力が作用しても、直角面63kと幅広面63mの交差部分(隅部)が盛り上がる方向に変形しにくいため、抜け止め突起66が取付溝55から外れる方向に弾性変形することが大きく抑制される。
【0091】
また、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0092】
例えば、上記に示す実施形態では、取付溝55はテーパー状に形成されているが、本発明はこれに限られない。テーパー状に形成されている方が、縁材を挿入溝部内に挿入しやすいが、テーパー状に形成されていなくてもよい。
【0093】
また、上記に示す実施形態では、抜け止め突起66は、平板部62の中央傾斜面63aの反対側に設けられているが、本発明はこれに限られない。側方傾斜面63bの反対側に設けられていてもよい。
【0094】
また、上記に示す実施形態では、抜け止め突起66を支持し、座縁材61の長手方向に連続するリブ64が設けられているが、本発明はこれに限られない。リブは、抜け止め突起66の基端部67近傍を支持する柱条やブロック状の突起であってもよい。あるいは、リブが設けられていなくてもよい。
【0095】
また、上記に示す椅子の他、スクリーンパネルや衣類等を掛けるロープ等の荷重を受ける張材を有する部材にも適用可能である。