(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、文中の数字の間にある「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0015】
<バリア性積層フィルム>
図1は、本発明に係る実施形態のバリア性積層フィルム100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係るバリア性積層フィルム100は、基材層101と、応力緩和層102と、無機物層103と、バリア性樹脂層104と、をこの順番に備える。そして、バリア性樹脂層104がポリカルボン酸とポリアミンとのアミド架橋物を含み、応力緩和層102には芳香族環構造を主鎖に有するポリウレタン系樹脂を含む。
【0016】
本実施形態によれば、基材層101と無機物層103との間に芳香族環構造を主鎖に有するポリウレタン系樹脂を含む応力緩和層102を設けることにより、得られるバリア性積層フィルム100において、レトルト処理前後におけるバリア性および基材層101とバリア性樹脂層104との層間の接着性の両方をバランスよく向上できる。
すなわち、本実施形態に係るバリア性積層フィルム100において、基材層101と無機物層103との間に芳香族環構造を主鎖に有するポリウレタン系樹脂を含む応力緩和層102を備えることにより、レトルト処理前後におけるバリア性および基材層101とバリア性樹脂層104との層間の接着性を効果的に向上させることができる。
以上から、本実施形態によれば、レトルト処理後におけるバリア性に優れながら、基材層とバリア性樹脂層との層間の接着性にも優れたバリア性積層フィルム100を実現することができる。
【0017】
バリア性積層フィルム100において、レトルト処理後における基材層101とバリア性樹脂層104との層間の接着性をさらに向上させる観点から、バリア性積層フィルム100を130℃で30分間レトルト処理した後の、25℃、引張速度300mm/分の条件で測定される基材層101とバリア性樹脂層104との間の180°剥離強度をP[N/15mm]とし、応力緩和層102の厚みをT[μm]としたとき、P/Tが好ましくは2.0以上15.0以下であり、より好ましくは2.0以上13.0以下である。
このようなP/Tは、例えば、応力緩和層102の構成材料や厚み、無機物層103の構成材料や厚み、バリア性樹脂層104の構成材料や厚み等を調整することにより達成できる。
【0018】
バリア性積層フィルム100において、水蒸気バリア性をさらに向上させる観点から、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定される、水蒸気透過度が4.0g/(m
2・24h)以下であることが好ましく、3.5g/(m
2・24h)以下であることがより好ましく、3.0g/(m
2・24h)以下であることがさらに好ましく、2.5g/(m
2・24h)以下であることがさらにより好ましく、2.0g/(m
2・24h)以下であることが特に好ましい。
このような水蒸気透過度は、例えば、無機物層103の構成材料や厚み、バリア性樹脂層104の構成材料や厚み等を調整することにより達成できる。
【0019】
バリア性積層フィルム100において、酸素バリア性をさらに向上させる観点から、温度20℃、湿度90%RHの条件で測定される、酸素透過度が10.0ml/(m
2・24h・MPa)以下であることが好ましく、5.0ml/(m
2・24h・MPa)以下であることがより好ましく、3.0ml/(m
2・24h・MPa)以下であることがさらに好ましく、1.5ml/(m
2・24h・MPa)以下であることがさらにより好ましく、1.0ml/(m
2・24h・MPa)以下であることが特に好ましい。
このような酸素透過度は、例えば、無機物層103の構成材料や厚み、バリア性樹脂層104の構成材料や厚み等を調整することにより達成できる。
なお、酸素透過度は、JIS K7126に準じ、温度20℃、湿度90%RHの条件で測定する。
【0020】
バリア性積層フィルム100において、レトルト処理後における水蒸気バリア性をさらに向上させる観点から、バリア性積層フィルム100を130℃で30分間レトルト処理した後の、40℃、90%RHでの水蒸気透過度が4.0g/(m
2・24h)以下であることが好ましく、3.5g/(m
2・24h)以下であることがより好ましく、3.0g/(m
2・24h)以下であることがさらに好ましく、2.5g/(m
2・24h)以下であることが好ましく、2.0g/(m
2・24h)以下であることが特に好ましい。
このようなレトルト処理後におけるバリア性積層フィルム100の水蒸気透過度は、例えば、応力緩和層102の構成材料や厚み、無機物層103の構成材料や厚み、バリア性樹脂層104の構成材料や厚み等を調整することにより達成できる。
【0021】
バリア性積層フィルム100において、レトルト処理後における酸素バリア性をさらに向上させる観点から、当該バリア性積層フィルムを130℃で30分間レトルト処理した後の、温度20℃、湿度90%RHの条件で測定される、酸素透過度が10.0ml/(m
2・24h・MPa)以下であることが好ましく、5.0ml/(m
2・24h・MPa)以下であることがより好ましく、3.0ml/(m
2・24h・MPa)以下であることがさらに好ましく、1.5ml/(m
2・24h・MPa)以下であることがさらにより好ましく、1.0ml/(m
2・24h・MPa)以下であることが特に好ましい。
このようなレトルト処理後におけるバリア性積層フィルム100の酸素透過度は、例えば、応力緩和層102の構成材料や厚み、無機物層103の構成材料や厚み、バリア性樹脂層104の構成材料や厚み等を調整することにより達成できる。なお、酸素透過度は、JIS K7126に準じ、温度20℃、湿度90%RHの条件で測定する。
【0022】
バリア性積層フィルム100は、レトルト処理後においても、基材層101とバリア性樹脂層104との間の接着性に優れている。バリア性積層フィルム100において、レトルト処理後における基材層101とバリア性樹脂層104との間の接着性をさらに向上させる観点から、バリア性積層フィルム100を130℃で30分間レトルト処理した後の、25℃、引張速度300mm/分の条件で測定される基材層101とバリア性樹脂層104との間の180°剥離強度Pが0.5N/15mm以上であることが好ましく、0.7N/15mm以上であることがより好ましく、1.0N/15mm以上であることがさらに好ましく、1.5N/15mm以上であることがさらにより好ましく、1.8N/15mm以上であることが特に好ましい。
このような基材層101とバリア性樹脂層104との間の180°剥離強度Pは、例えば、応力緩和層102の構成材料や厚み、無機物層103の構成材料や厚み、バリア性樹脂層104の構成材料や厚み等を調整することにより達成できる。
【0023】
以下、バリア性積層フィルム100を構成する各層について説明する。
【0024】
[バリア性樹脂層]
本実施形態に係るバリア性樹脂層104はポリカルボン酸とポリアミンとのアミド架橋物を含み、例えばポリカルボン酸およびポリアミンを含む混合物を加熱して硬化させることにより形成することができる。
【0025】
また、バリア性樹脂層104の赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1493cm
−1以上1780cm
−1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、吸収帯1598cm
−1以上1690cm
−1以下の範囲における全ピーク面積をBとしたとき、B/Aで示されるアミド結合の面積比率がバリア性の観点から好ましくは0.370以上、より好ましくは0.400以上、さらに好ましくは0.420以上、特に好ましくは0.430以上である。また、B/Aで示されるアミド結合の面積比率の上限は、外観、寸法安定性、生産性のバランスをより向上させる観点から、好ましくは0.700以下、より好ましくは0.680以下、特に好ましくは0.650以下である。
【0026】
ここで、上記B/Aが上記下限値以上であるバリア性樹脂層104は、ポリカルボン酸およびポリアミンを特定の割合で含む混合物(以下、バリア用塗材とも呼ぶ。)を特定の加熱条件で加熱することにより得ることができる。
バリア性樹脂層104は赤外線吸収スペクトルにおける未反応のカルボン酸のνC=Oに基づく吸収が1700cm
−1付近にみられ、架橋構造であるアミド結合のνC=Oに基づく吸収が1630〜1685cm
−1付近にみられ、カルボン酸塩のνC=Oに基づく吸収が1540〜1560cm
−1付近にみられる。
すなわち、本実施形態において、赤外線吸収スペクトルにおける吸収帯1493cm
−1以上1780cm
−1以下の範囲における全ピーク面積Aは、カルボン酸とアミド結合とカルボン酸塩の合計量の指標を表し、吸収帯1598cm
−1以上1690cm
−1以下の範囲における全ピーク面積Bはアミド結合の存在量の指標を表し、後述する吸収帯1690cm
−1以上1780cm
−1以下の範囲における全ピーク面積Cは未反応のカルボン酸の存在量の指標を表し、後述する吸収帯1493cm
−1以上1598cm
−1以下の範囲における全ピーク面積Dはカルボン酸塩、すなわちカルボキシル基とアミノ基のイオン架橋の存在量の指標を表していると考えられる。
【0027】
なお、本実施形態において、上記全ピーク面積A〜Dは、以下の手順で測定できる。
まず、バリア性樹脂層104から1cm×3cmの測定用サンプルを切り出す。次いで、そのバリア性樹脂層104の表面の赤外線吸収スペクトルを赤外線全反射測定(ATR法)により得る。得られた赤外線吸収スペクトルから、以下の手順(1)〜(4)で上記全ピーク面積A〜Dを算出する。
(1)1780cm
−1と1493cm
−1の吸光度を直線(N)で結び、吸収帯1493cm
−1以上1780cm
−1以下の範囲の吸光スペクトルとNで囲まれる面積を全ピーク面積Aとする。
(2)1690cm
−1の吸光度(Q)から垂直に直線(O)を下ろし、NとOの交差点をPとし、1598cm
−1の吸光度(R)から垂直に直線(S)を下ろし、NとSの交差点をTとし、吸収帯1598cm
−1以上1690cm
−1以下の範囲の吸収スペクトルと直線S、点T、直線N、点P、直線O、吸光度Q、吸光度Rで囲まれる面積を全ピーク面積Bとする。
(3)吸収帯1690cm
−1以上1780cm
−1以下の範囲の吸収スペクトルと吸光度Q、直線O,点P、直線Nで囲まれる面積を全ピーク面積Cとする。
(4)吸収帯1493cm
−1以上1598cm
−1以下の範囲の吸収スペクトルと吸光度R、直線S、点T、直線Nで囲まれる面積を全ピーク面積Dとする。
次いで、上記の方法で求めた面積から面積比B/A、C/A、D/Aを求める。
なお、本実施形態の赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は、例えば、日本分光社製IRT−5200装置を用い、PKM−GE−S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm
−1、積算回数100回の条件で行うことができる。
【0028】
ポリカルボン酸およびポリアミンを含む混合物により形成されたバリア性樹脂層104にはイオン架橋とアミド架橋という2種類の架橋構造が存在し、これらの架橋構造の存在比率がバリア性能を向上させる観点において重要である。なお、上記イオン架橋とは、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミンに含まれるアミノ基とが酸塩基反応を起こすことによって生成するものであり、上記アミド架橋とは、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミンに含まれるアミノ基とが脱水縮合反応を起こすことによって生成するものである。
そこで、高湿度下およびレトルト処理後での双方の条件下での酸素バリア性、水蒸気バリア性等のバリア性能を向上させつつ、外観、寸法安定性、生産性の性能バランスを向上させるための設計指針として、上記B/Aで示されるアミド結合の面積比率という尺度を適用できる。製造条件を制御することにより、バリア性樹脂層104の上記B/Aで示されるアミド結合の面積比率を特定値以上に調整することが可能となり、このような特性を有するバリア性樹脂層104は高湿度下およびレトルト処理後での双方の条件下でのバリア性がより効果的に発現し、さらに外観、寸法安定性、生産性のバランスにも優れている。
すなわち、B/Aで示されるアミド結合の面積比率が上記下限値以上であるバリア性樹脂層104を用いることにより、高湿度下およびレトルト処理後での双方の条件下での酸素バリア性、水蒸気バリア性により一層優れながら、外観、寸法安定性、生産性のバランスにも優れるバリア性積層フィルム100を得ることができる。
【0029】
このようなバリア性樹脂層104が上記の性能バランスに優れる理由は必ずしも明らかではないが、B/Aで示されるアミド結合の面積比率が上記範囲内であるバリア性樹脂層104は、前述したイオン架橋とアミド架橋という2種類の架橋構造がバランス良く緻密な構造を形成しているためであると考えられる。
すなわち、上記B/Aで示されるアミド結合の面積比率が上記範囲内であることは、イオン架橋とアミド架橋という2種類の架橋構造がバランス良く形成していることを意味していると考えられる。
【0030】
本実施形態に係るバリア性樹脂層104は、赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1690cm
−1以上1780cm
−1以下の範囲における全ピーク面積をCとしたとき、C/Aで示されるカルボン酸の面積比率が、外観、寸法安定性、生産性のバランスをより向上させる観点から、好ましくは0.040以上、より好ましくは0.060以上、特に好ましくは0.080以上である。
また、上記C/Aで示されるカルボン酸の面積比率の上限は、高湿度下およびレトルト処理後での双方の条件下での酸素バリア性、水蒸気バリア性をより一層向上させる観点から、好ましくは0.500以下、より好ましくは0.450以下、特に好ましくは0.400以下である。
【0031】
本実施形態に係るバリア性樹脂層104は、赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1493cm
−1以上1598cm
−1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率が、高湿度下およびレトルト処理後での双方の条件下での酸素バリア性、水蒸気バリア性をより一層向上させる観点から、好ましくは0.100以上、より好ましくは0.150以上である。
また、上記D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率の上限は、外観、寸法安定性、生産性のバランスをより向上させる観点から、好ましくは0.450以下、より好ましくは0.420以下、特に好ましくは0.400以下である。
【0032】
バリア性樹脂層104のB/Aで示されるアミド結合の面積比率、C/Aで示されるカルボン酸の面積比率およびD/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率は、バリア性樹脂層104の製造条件を適切に調節することにより制御することが可能である。本実施形態においては、とくにポリカルボン酸およびポリアミンの配合比率、バリア用塗材の調製方法、上記バリア用塗材の加熱処理の方法・温度・時間等が、上記B/Aで示されるアミド結合の面積比率、上記C/Aで示されるカルボン酸の面積比率および上記D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率を制御するための因子として挙げられる。
【0033】
上記B/Aが上記下限値以上であるバリア性樹脂層104を得るためには、ポリカルボン酸およびポリアミンの配合比率、バリア用塗材の調製方法、上記バリア用塗材の加熱処理の方法・温度・時間等の製造条件を高度に制御することが重要である。すなわち、以下の3つの条件に係る各種因子を高度に制御する製造方法によって初めて上記B/Aが上記下限値以上であるバリア性樹脂層104を得ることができる。
(1)ポリカルボン酸およびポリアミンの配合比率
(2)バリア用塗材の調製方法
(3)バリア用塗材の加熱処理の方法・温度・時間
【0034】
以下、本実施形態に係るバリア性樹脂層104の製造方法の一例について説明する。
まず、(1)ポリカルボン酸およびポリアミンの配合比率について説明する。
【0035】
(ポリカルボン酸およびポリアミンの配合比率)
本実施形態において、(バリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(バリア用塗材中のポリアミンに含まれるアミノ基のモル数)は、好ましくは100/22超、より好ましくは100/25以上、特に好ましくは100/29以上である。
一方、本実施形態において、(バリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(バリア用塗材中のポリアミンに含まれるアミノ基のモル数)は、好ましくは100/99以下、より好ましくは100/86以下、特に好ましくは100/75以下である。本実施形態に係るバリア性樹脂層104を得るためには、(バリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(バリア用塗材中のポリアミンに含まれるアミノ基のモル数)が上記範囲内になるように、バリア用塗材中のポリカルボン酸およびポリアミンの配合比率を調整することが好ましい。
【0036】
(ポリカルボン酸)
本実施形態に係るポリカルボン酸は、分子内に2個以上のカルボキシ基を有するものである。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸、3−ヘキセン酸、3−ヘキセン二酸等のα,β−不飽和カルボン酸の単独重合体またはこれらの共重合体が挙げられる。また、上記α,β−不飽和カルボン酸と、エチルエステル等のエステル類、エチレン等のオレフィン類等との共重合体であってもよい。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸の単独重合体またはこれらの共重合体が好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体から選択される一種または二種以上の重合体であることがより好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸から選択される少なくとも一種の重合体であることがさらに好ましく、アクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体から選択される少なくとも一種の重合体であることが特に好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の単独重合体、アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリアクリル酸は、重合体100質量%中に、アクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
また、本実施形態において、ポリメタクリル酸とは、メタクリル酸の単独重合体、メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリメタクリル酸は、重合体100質量%中に、メタクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
【0037】
本実施形態に係るポリカルボン酸はカルボン酸モノマーが重合した重合体であり、ポリカルボン酸の分子量としては、バリア性および取扱い性のバランスに優れる観点から500〜2,000,000が好ましく、1,500〜1,000,000がより好ましい。さらに5,000〜500,000が好ましく、10,000〜100,000が特に好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリカルボン酸の分子量はポリエチレンオキサイド換算の重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0038】
(ポリアミン)
本実施形態に係るポリアミンは、主鎖あるいは側鎖あるいは末端にアミノ基を2つ以上有するポリマーである。具体的には、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ(トリメチレンイミン)等の脂肪族系ポリアミン類;ポリリジン、ポリアルギニンのように側鎖にアミノ基を有するポリアミド類;等が挙げられる。また、アミノ基の一部を変性したポリアミンでもよい。良好なバリア性を得る観点から、ポリエチレンイミンがより好ましい。
【0039】
本実施形態に係るポリアミンの重量平均分子量は、バリア性および取扱い性のバランスに優れる観点から、50〜5,000,000が好ましく、100〜2,000,000がより好ましく、1,500〜1,000,000がさらに好ましく、1,500〜500,000がよりさらに好ましく、1,500〜100,000が特に好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリアミンの分子量は沸点上昇法や粘度法を用いて測定することができる。
【0040】
つぎに、(2)バリア用塗材の調製方法について説明する。例えば、バリア用塗材は以下のようにして製造することができる。
【0041】
まず、ポリカルボン酸に、塩基を加えることによりポリカルボン酸のカルボキシ基を完全にまたは部分的に中和する。次いで、カルボキシ基を完全にまたは部分的に中和したポリカルボン酸にポリアミンを添加する。このような手順でポリカルボン酸およびポリアミンを混合することにより、ポリカルボン酸およびポリアミンの凝集物の生成を抑制でき、均一なバリア用塗材を得ることができる。これにより、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミンに含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進めることが可能となる。
【0042】
本実施形態に係る塩基で、ポリカルボン酸を中和することにより、ポリアミンとポリカルボン酸とを混合する際に、ゲル化が起こることを抑制することができる。したがって、ポリカルボン酸において、ゲル化防止の観点から塩基によってカルボキシ基の部分中和物または完全中和物とすることが好ましい。中和物は、ポリカルボン酸のカルボキシ基を塩基で部分的にまたは完全に中和する(すなわち、ポリカルボン酸のカルボキシ基を部分的または完全にカルボン酸塩とする)ことにより得ることができる。これにより、ポリアミンを添加する際、ゲル化を防止できる。
部分中和物は、ポリカルボン酸の水溶液に塩基を添加することにより調製するが、ポリカルボン酸と塩基の量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。本実施形態においてはポリカルボン酸の塩基による中和度は、ポリアミンのアミノ基との中和反応に起因するゲル化を十分に抑制する観点から、30〜100当量%が好ましく、40〜100当量%、さらには50〜100当量%がより好ましい。
【0043】
塩基としては、任意の水溶性塩基を用いることができる。水溶性塩基として、揮発性塩基と不揮発性塩基のいずれかまたは双方を使用することができるが、残存した遊離塩基によるバリア性低下を抑制する観点から乾燥・硬化の際に除去が容易な揮発性塩基であることが好ましい。
揮発性塩基としては、例えば、アンモニア、モルホリン、アルキルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N−メチルモノホリン、エチレンジアミン、トリエチルアミン等の三級アミンまたはこれらの水溶液、あるいはこれらの混合物が挙げられる。良好なバリア性を得る観点から、アンモニア水溶液が好ましい。
不揮発性塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムまたはこれらの水溶液、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0044】
また、バリア用塗材の固形分濃度は、塗工性を向上させる観点から、0.5〜15質量%に設定することが好ましく、1〜10質量%に設定することがさらに好ましい。
【0045】
また、バリア用塗材には、塗布の際にはじきが発生するのを防止する観点から、界面活性剤をさらに添加することが好ましい。界面活性剤の添加量は、バリア用塗材の固形分全体を100質量%としたとき、0.01〜3質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0046】
本実施形態に係る界面活性剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、良好な塗工性を得る観点から、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類がより好ましい。
【0047】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、シリコーン系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0048】
ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等を挙げることができる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類を挙げることができる。
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル等を挙げることができる。
ソルビタン脂肪酸エステル類としては、例えば、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等を挙げることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。
アセチレンアルコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール等を挙げることができる。
含フッ素系界面活性剤としては、例えば、フッ素アルキルエステル等を挙げることができる。
【0049】
本実施形態に係るバリア用塗材は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の添加剤を含んでもよい。例えば、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤、多価金属化合物等の各種添加剤を添加してよい。
【0050】
次に、(3)バリア用塗材の加熱処理の方法・温度・時間について説明する。
本実施形態に係るバリア性樹脂層104を得るためには、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミンに含まれるアミノ基との脱水縮合反応を効果的に進めることが可能な、バリア用塗材の加熱処理の方法・温度・時間を採用することが好ましい。具体的には、バリア用塗材の塗工量、加熱処理に使用する装置の種類、加熱処理温度、加熱処理時間等の各因子を高度に制御して組み合わせることが重要となる。本実施形態に係るバリア性樹脂層104を製造するためには、例えば、本実施形態に係るバリア用塗材を無機物層103にウエット厚みが0.05〜300μmになるように塗布し、公知の加熱処理に使用する装置により、加熱して乾燥する。
乾燥、加熱処理する方法は、本発明の目的を達することができる限り特に限定されないが、バリア用塗材を硬化させられるもの、硬化したバリア用塗材を加熱できる方法であればよい。例えば、オーブン、ドライヤー等の対流伝熱によるもの、加熱ロール等の伝導伝熱によるもの、赤外線、遠赤外線・近赤外線のヒーター等の電磁波を用いる輻射伝熱によるもの、マイクロ波等内部発熱によるものが挙げられる。乾燥、加熱処理に使用する装置としては製造効率の観点から乾燥と加熱処理の双方を行える装置が好ましい。その中でも具体的には乾燥、加熱、アニーリング等の種々の目的に利用できるという観点から熱風オーブンを用いることが好ましく、また、フィルムへの熱伝導効率に優れているという観点から加熱ロールを用いることが好ましい。
また、乾燥、加熱処理に使用する方法を適宜組み合わせてもよい。熱風オーブンと加熱ロールを併用してもよく例えば、熱風オ―ブンでバリア用塗材を乾燥後、加熱ロールで加熱処理を行えば加熱処理工程が短時間となり製造効率の観点から好ましい。また、熱風オーブンのみで乾燥と加熱処理を行うことが好ましい。熱風オーブンを用いて、バリア用塗材を乾燥させる場合、加熱処理温度は160〜250℃、加熱処理時間は1秒〜30分、好ましくは加熱処理温度が180〜240℃、加熱処理時間が5秒〜20分、より好ましく加熱処理温度が200℃〜230℃、加熱処理時間が10秒〜15分、さらに好ましくは加熱処理温度が200℃〜220℃、加熱処理時間が15秒〜10分の条件で加熱処理をおこなうことが望ましい。
さらに上述したように加熱ロールを併用することで短時間での加熱処理が可能となる。なお、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミンに含まれるアミノ基との脱水縮合反応を効果的に進める観点から、加熱処理温度および加熱処理時間はバリア用塗材のウエット厚みに応じて調整することが重要である。
【0051】
本実施形態に係るバリア用塗材を基材に塗布する方法は、特に限定されず、通常の方法を用いることができる。例えば、メイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター、アプリケーター等種々公知の塗工機を用いて塗工する方法が挙げられる。
【0052】
塗工量(ウエット厚み)は、0.05〜300μmが好ましく、1〜200μmがより好ましく、1〜100μmとなることがさらに好ましい。
塗工量が上記上限値以下であると、得られるバリア性積層フィルム100がカールすることを抑制できる。また、塗工量が上記上限値以下であると、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミンに含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進めることが可能となる。
また、塗工量が上記下限値以上であると、得られるバリア性積層フィルム100のバリア性能をより良好なものとすることができる。
【0053】
乾燥・硬化後のバリア性樹脂層104の厚みは0.01μm以上15μm以下が好ましく、0.05μm以上5.0μm以下がより好ましく、0.10μm以上1.0μm以下がより好ましく、0.10μm以上0.50μm以下が特に好ましい。
バリア性樹脂層104の厚さが上記下限値以上であるとバリア性をより良好にすることができる。また、バリア性樹脂層104の厚さが上記上限値以下であると、外的な変形力に対する追従性がより良好になり、基材層101との接着性をより良好にすることができる。すなわち、バリア性樹脂層104の厚さを上記範囲内とすることにより、バリア性樹脂層104により良好な追従性を付与することができ、結果としてバリア性積層フィルム100に外的な変形を加えてもバリア性樹脂層104と基材層101との層間でより剥離しにくくなる。
【0054】
乾燥および熱処理は、乾燥後、熱処理を行ってもよいし、乾燥と熱処理を同時におこなってもよい。乾燥、熱処理する方法は、本発明の目的を達成することができる方法であれば特に制限はされないが、乾燥、加熱、アニーリング等種々の目的に利用できるという観点からオーブンによる方法が好ましく、また、加熱目的ではフィルムへの熱伝導効率に優れているという観点から加熱ロールによる方法が特に好ましい。
【0055】
本実施形態に係るバリア性樹脂層104は、上記のバリア用塗材により形成されたものであり、バリア用塗材を無機物層103に塗布した後、乾燥、熱処理を行い、バリア用塗材を硬化させることによって得られるものである。
【0056】
[無機物層]
無機物層103を構成する無機物は、例えば、バリア性を有する薄膜を形成できる金属、金属酸化物、金属窒化物、金属弗化物、金属酸窒化物等が挙げられる。
無機物層103を構成する無機物としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル等の周期表遷移元素;亜鉛等の周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表3A族元素;ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表4A族元素;セレン、テルル等の周期表6A族元素等の単体、酸化物、窒化物、弗化物、または酸窒化物等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
なお、本実施形態では、周期表の族名は旧CAS式で示している。
【0057】
さらに、上記無機物の中でも、バリア性やコスト等のバランスに優れていることから、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、およびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物が好ましい。
なお、酸化ケイ素には、二酸化ケイ素の他、一酸化ケイ素、亜酸化ケイ素が含有されていてもよい。
上記無機物の中でも、酸化アルミニウムはレトルト処理による耐水性にも優れることから特に好ましい。酸化アルミニウムは、アルミニウム(Al)と酸素(O)の存在比(モル比)は、Al:O=1:1.5〜1:2.0であることが好ましい。
【0058】
無機物層103は上記無機物により構成されている。無機物層103は単層の無機物層から構成されていてもよいし、複数の無機物層から構成されていてもよい。また、無機物層103が複数の無機物層から構成されている場合には同一種類の無機物層から構成されていてもよいし、異なった種類の無機物層から構成されていてもよい。
【0059】
無機物層103の厚さは、バリア性、密着性、取扱い性等のバランスの観点から、通常1nm以上1000nm以下、好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは1nm以上50nm以下、特に好ましくは1nm以上20nm以下である。
本実施形態において、無機物層103の厚さは、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡による観察画像により求めることができる。
【0060】
無機物層103の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学気相成長法、物理気相蒸着法、化学気相蒸着法(CVD法)、プラズマCVD法、ゾルゲル法等により応力緩和層102の表面に無機物層103を形成することができる。中でも、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法(CVD)、物理気相蒸着法(PVD)、プラズマCVD法等の減圧下での製膜が望ましい。これにより、窒化珪素や酸化窒化珪素等の珪素を含有する化学的に活性な分子種が速やかに反応することにより、無機物層103の表面の平滑性が改良され、孔を少なくすることができるものと予想される。
これらの結合反応を迅速に行うには、その無機原子や化合物が化学的に活性な分子種もしくは原子種であることが望ましい。
【0061】
[基材層]
基材層101は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紙等の有機質材料により形成されており、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂を含むことが好ましい。
【0062】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド等の公知の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0063】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ブテン)等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、フッ素樹脂あるいはこれらの混合物等の公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。
これらの中でも、透明性を良好にする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、およびポリイミドから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートから選択される少なくとも一種がより好ましい。
また、熱可塑性樹脂により構成された基材層101は、バリア性積層フィルム100の用途に応じて、単層であっても、二層以上であってもよい。
【0064】
また、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂により構成されたフィルムを少なくとも一方向、好ましくは二軸方向に延伸して基材層101としてもよい。
【0065】
基材層101としては、透明性、剛性、および耐熱性に優れる観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、およびポリイミドから選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂により構成された二軸延伸フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートから選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂により構成された二軸延伸フィルムがより好ましい。
【0066】
また、基材層101は応力緩和層102との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、プライマーコート処理、オゾン処理等の表面活性化処理を行ってもよい。
【0067】
基材層101の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、1μm以上1000μm以下が好ましく、1μm以上500μm以下がより好ましく、1μm以上300μm以下がさらに好ましい。
【0068】
基材層101の形状は、特に限定されないが、例えば、シート、フィルム、トレー、カップ、中空体等の形状が挙げられる。
【0069】
[応力緩和層]
バリア性積層フィルム100において、レトルト処理後におけるバリア性および基材層101と無機物層103との間の接着性を良好にする観点から、基材層101上に応力緩和層102が設けられている。基材層101と無機物層103との間に応力緩和層102を設けることによりバリア性樹脂層104の追従性がさらに向上し外的な変形が加えられてもバリア性積層フィルム100においてバリア性樹脂層104はより安定的な接着状態を保つことができる。
応力緩和層102は芳香族環構造を主鎖に有するポリウレタン系樹脂により構成されている。
【0070】
応力緩和層102に用いられる芳香族環構造を主鎖に有するポリウレタン系樹脂は、例えば、ポリオールと有機ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応により水分散型ポリウレタン樹脂として得ることができる。ここで、本実施形態に係るポリウレタン系樹脂は、ポリオール、有機ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤の少なくとも一つに芳香族環構造を有する化合物を用いる。これにより、ポリウレタン系樹脂の主鎖に芳香族環構造を導入することができる。
また、上記ポリウレタン系樹脂にシラノール基を導入することが、耐水性、耐熱性、密着性等の観点からさらに好ましい。
本実施形態に係るポリウレタン系樹脂は、レトルト処理後におけるバリア性積層フィルム100のバリア性および基材層101とバリア性樹脂層104との層間の接着性をより良好にする観点から、シラノール基を有するポリウレタン系樹脂であることが好ましく、芳香族ポリエステル骨格を含むことがさらに好ましい。
ここで、芳香族ポリエステル骨格は、ポリオールとして芳香族ポリエステルポリオールを用いることにより、ポリウレタン系樹脂の主鎖に導入することができる。
【0071】
ポリオールとして、例えば、ポリマージオール等が挙げられる。ポリマージオールとしては、例えば、ポリカーボネート系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリカプロラクトン系ジオール、ポリエーテル系ジオール、シリコーン系ジオールおよびフッ素系ジオール等が挙げられる。これらを組み合わせた共重合体を用いてもよいし、あるいは一種または二種以上を併用して用いてもよい。これらの中でもポリエステル系ジオールが好ましく、芳香族ジカルボン酸成分を用いた芳香族ポリエステルポリオールがより好ましい。
芳香族ポリエステルポリオールに使用する芳香族ジカルボン酸成分は特に限定されないが、テレフタル酸やイソフタル酸が好ましく、アルコール成分も特に限定されないが、エチレングリコールやジエチレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましい。
また、ポリオールとしては、ポリマージオール以外に、低分子量ポリオールをポリマージオールと併用することができる。
【0072】
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、トリメチロールプロパンおよびグリセリンから選ばれる一種または二種以上を使用することができる。また、ビスフェノールAに各種アルキレンオキサイドを付加させた付加物も使用可能である。
【0073】
有機ポリイソシアネートとしては、例えば、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいは上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート等のポリイソシアネート類が挙げられ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。
【0074】
鎖伸長剤としては、例えば公知のポリアミン等が使用される。ポリアミンとしては、例えばエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン類、ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール、3−アミノプロパンジオール等のアミノ基と水酸基をもつ化合物、ヒドラジン類、酸ヒドラジド類、さらに、アミン系鎖伸長剤として、アルコキシシリル基含有アミン系鎖伸長剤を挙げることもできる。
【0075】
アルコキシシリル基含有アミン系鎖伸長剤は、1分子中に少なくとも2つの活性水素基と、アルコキシシリル基とを含有する化合物であり、具体的には、例えば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシシラン、N,N´−ビス[a−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン等が挙げられる。
【0076】
鎖伸長剤は、単独使用または併用することができる。
【0077】
また、応力緩和層102に用いられる芳香族環構造を主鎖に有するポリウレタン系樹脂は、分子構造内に親水性基を有していることが好ましい。分子構造内に親水性基を有することで、水分散型ポリウレタン樹脂としての分散・安定性を向上させることができる。
【0078】
親水性基としては、例えば、4級アミン塩等のカチオン系親水性基、スルホン酸塩やカルボン酸塩等のアニオン系親水性基、ポリエチレングリコール等のノニオン系親水性基、カチオン系親水性基とノニオン系親水性基の組み合わせ、およびアニオン系親水性基とノニオン系親水性基の組み合わせの、いずれの親水性基も採用することができる。
【0079】
ポリウレタン系樹脂にカルボキシル基を導入するには、例えば、ポリオール成分(ポリヒドロキシ化合物)として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基を有するポリオール化合物を用いることで共重合成分として導入し、塩形成剤により中和すればよい。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のトリアルキルアミン類;N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等のN−アルキルモルホリン類;N−ジメチルエタノールアミン、N−ジエチルエタノールアミン等のN−ジアルキルアルカノールアミン類;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
水分散型ポリウレタン系樹脂を得るには、例えば、ワンショット法、プレポリマー法等が用いられ、好ましくは、プレポリマー法が用いられる。
【0081】
プレポリマー法では、例えば、ポリオールと有機ポリイソシアネートを反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを得る。適宜、溶媒、触媒を用いてよい。
【0082】
次いで、必要により、乳化剤(外部乳化剤)を加え、続いて、適宜溶媒を追加して配合し、その後、水を加えて、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させる。あるいは、水中にイソシアネート基末端プレポリマーを加えて水分散させてもよい。
その後、鎖伸長剤を配合して、鎖伸長反応させる。なお、鎖伸長剤は、分割して配合することもできる。
その後、溶媒を留去させる。
これにより、水分散型ポリウレタン系樹脂を、水分散型ポリウレタン系樹脂が水分散されたポリウレタン樹脂水分散液として得ることができる。
【0083】
水分散型ポリウレタン系樹脂には、耐熱性、耐水性、および耐加水分解性等を向上する目的で架橋剤を併用してもよい。架橋剤は、水分散型ポリウレタン系樹脂に対し、第3成分として添加する外部架橋剤でもよく、また水分散型ポリウレタン系樹脂の分子構造内に予め架橋構造となる反応点を導入する内部架橋剤でもよい。
【0084】
架橋剤としては、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基、メラミン樹脂、およびシラノール基等を有する化合物を好適に用いることができ、カルボジイミド基を有する化合物がさらに好適である。また、カルボジイミド基を有する化合物を架橋剤として用いる場合、カルボジイミド基を有する化合物の添加量は、ポリウレタン系樹脂中のカルボキシル基1.0molに対し、カルボジイミド基が好ましくは0.1〜3.0mol、さらに好ましくは0.2〜2.0mol、特に好ましくは0.3〜1.0molとなるような量である。
【0085】
レトルト処理後におけるバリア性積層フィルム100のバリア性および基材層101とバリア性樹脂層104との層間の接着性をより良好にする観点から、応力緩和層102の赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1705cm
−1以上1735cm
−1以下の範囲における最大ピークA
1に対する吸収帯715cm
−1以上745cm
−1以下の範囲における最大ピークA
0の比(A
0/A
1)が0.20以上0.90以下であることが好ましく、0.30以上0.80以下であることがより好ましく、0.40以上0.70以下であることがさらに好ましく、0.50以上0.70以下であることが特に好ましい。
ここで、A
0/A
1はポリウレタン系樹脂に含まれる芳香環濃度の指標を表している。かかるポリウレタン系樹脂に含まれる芳香環濃度が上記の範囲であればレトルト処理前後の酸素バリア性および水蒸気バリア性、ならびにレトルト処理前後の層間剥離強度の観点から好ましい。
【0086】
応力緩和層102の厚みは、レトルト処理後におけるバリア性積層フィルム100のバリア性および基材層101とバリア性樹脂層104との層間の接着性をより良好にする観点から、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることがさらに好ましく、経済的であるという観点から1.0μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましい。
【0087】
[熱融着層]
本実施形態に係るバリア性積層フィルム100は、ヒートシール性を付与するために、少なくとも片面に熱融着層を設けてもよい。
熱融着層としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独重合体若しくは共重合体;高圧法低密度ポリエチレン;線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE);高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリプロピレンランダム共重合体;低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体;エチレン・ブテン−1ランダム共重合体;プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体;等から選択される一種または二種以上のポリオレフィンを含む樹脂組成物により構成される層;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を含む樹脂組成物により構成される層;EVAおよびポリオレフィンを含む樹脂組成物により構成される層等が挙げられる。
【0088】
[用途]
バリア性積層フィルム100は、例えば、食品、医薬品、日常雑貨等を包装するための包装用フィルム;真空断熱パネル用フィルム;エレクトロルミネセンス素子、太陽電池等を封止するための封止用フィルム;等として好適に使用することができる。バリア性積層フィルム100は、レトルト処理後におけるバリア性および基材層101とバリア性樹脂層104との層間の接着性に優れていることから、レトルト食品用包装材として特に好適に用いることができる。
【0089】
また、バリア性積層フィルム100は包装体を構成するフィルムとして好適に用いることもできる。本実施形態に係る包装体は、例えば、内容物を充填することを目的として使用される包装袋自体または当該袋に内容物を充填したものである。また、本実施形態に係る包装袋は用途に応じその一部にバリア性積層フィルム100を使用してもよいし、包装袋全体にバリア性積層フィルム100を使用してもよい。
本実施形態に係るバリア性積層フィルム100を含む包装体は、レトルト処理後におけるバリア性および基材層101とバリア性樹脂層104との層間の接着性に優れていることから、レトルト食品用包装体として特に好適に用いることができる。
【0090】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態を付記する。
[1]
基材層と、応力緩和層と、無機物層と、バリア性樹脂層と、をこの順番に備えるバリア性積層フィルムであって、
上記バリア性樹脂層がポリカルボン酸とポリアミンとのアミド架橋物を含み、
上記応力緩和層が芳香族環構造を主鎖に有するポリウレタン系樹脂を含むバリア性積層フィルム。
[2]
上記[1]に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
当該バリア性積層フィルムを130℃で30分間レトルト処理した後の、25℃、引張速度300mm/分の条件で測定される上記基材層と上記バリア性樹脂層との間の180°剥離強度Pが0.5N/15mm以上であるバリア性積層フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載のバリア性積層フィルムにおいて、
当該バリア性積層フィルムを130℃で30分間レトルト処理した後の、25℃、引張速度300mm/分の条件で測定される上記基材層と上記バリア性樹脂層との間の180°剥離強度をP[N/15mm]とし、
上記応力緩和層の厚みをT[μm]としたとき、
P/Tが2.0以上15.0以下であるバリア性積層フィルム。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記応力緩和層の厚みが0.05μm以上1.0μm以下であるバリア性積層フィルム。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
40℃、90%RHでの水蒸気透過度が4.0g/(m2・24h)以下であるバリア性積層フィルム。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
20℃、90%RHでの酸素透過度が10.0ml/(m2・24h・MPa)以下であるバリア性積層フィルム。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つのバリア性積層フィルムにおいて、
上記応力緩和層の赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1705cm−1以上1735cm−1以下の範囲における最大ピークA1に対する吸収帯715cm−1以上745cm−1以下の範囲における最大ピークA0の比(A0/A1)が0.20以上0.90以下であるバリア性積層フィルム。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記ポリウレタン系樹脂が芳香族ポリエステル骨格を含むバリア性積層フィルム。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記無機物層が、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物を含むバリア性積層フィルム。
[10]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記バリア性樹脂層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1598cm−1以上1690cm−1以下の範囲における全ピーク面積をBとしたとき、
B/Aで示されるアミド結合の面積比率が0.370以上であるバリア性積層フィルム。
[11]
上記[1]乃至[10]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
当該バリア性積層フィルムを130℃で30分間レトルト処理した後の、40℃、90%RHでの水蒸気透過度が4.0g/(m2・24h)以下であるバリア性積層フィルム。
[12]
上記[1]乃至[11]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
上記バリア性樹脂層の厚みが0.01μm以上15μm以下であるバリア性積層フィルム。
[13]
上記[1]乃至[12]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
当該バリア性積層フィルムを130℃で30分間レトルト処理した後の、20℃、90%RHでの酸素透過度が、10.0ml/(m2・24h・MPa)以下であるバリア性積層フィルム。
[14]
上記[1]乃至[13]のいずれか一つに記載のバリア性積層フィルムにおいて、
レトルト食品用包装材に用いられるバリア性積層フィルム。
【実施例】
【0091】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0092】
<溶液(Z)の調製>
ポリアクリル酸アンモニウム(東亜合成株式会社製、製品名:アロンA−30、30質量%水溶液、分子量:100,000)の混合物に精製水を添加して10質量%溶液にしたポリアクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
<溶液(Y)の調製>
ポリエチレンイミン(和光純薬工業株式会社製、製品名:ポリエチレンイミン、平均分子量:約10,000)に精製水を添加して10質量%溶液にしたポリエチレンイミン水溶液を得た。
<溶液(V)の調製>
上記溶液(Z)79gと上記溶液(Y)21gを混合・撹拌して混合液を調製した。
さらに上記混合液の固形分濃度が2.5質量%になるように精製水を添加し、均一溶液になるまで撹拌したのちに、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王社製、商品名:エマルゲン120)を混合液の固形分に対して0.3質量%となるように混合し、溶液(V)を調製した。
【0093】
<実施例1〜6および比較例1〜5>
[実施例1]
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)を基材とし、この片面に下記組成の樹脂組成物をメイヤーバーにて塗布して乾燥することにより、乾燥後の厚みが0.10μmの応力緩和層を形成した。
【0094】
(組成)
主剤:ポリウレタン樹脂水分散液(三井化学社製、製品名:タケラックWS−4032、芳香族ポリエステル型ポリウレタン樹脂)
架橋剤:カルボジイミド基を有する化合物(日清紡ケミカル社製、製品名:カルボジライトSV−02)
配合比:主剤中のポリウレタン樹脂のカルボキシル基1.0molに対し、架橋剤中のカルボジイミド基が0.4molとなるように、主剤に架橋剤を配合した。
【0095】
次いで、応力緩和層上に高周波誘導加熱方式により、アルミニウムを加熱蒸発させ、酸素を導入しながら蒸着することで、厚さ7nmの酸化アルミニウム膜を形成させた。これにより酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを得た。この酸化アルミニウム蒸着PETフィルムの水蒸気透過度は1.5g/(m
2・24h)であった。
次いで、上記溶液(V)を酸化アルミニウム蒸着PETフィルムの蒸着面に、アプリケーターで乾燥後のバリア性樹脂層の厚みが0.30μmになるように塗布し、熱風乾燥器を使用して温度;100℃、時間;30秒の条件で乾燥し、さらに温度;215℃、時間;10分熱処理をして、バリア性積層フィルムを得た。
【0096】
[実施例2]
応力緩和層の乾燥後の厚みを0.20μmとした以外は実施例1と同様にしてバリア性積層フィルムを得た。
【0097】
[実施例3]
応力緩和層の乾燥後の厚みを0.40μmとした以外は実施例1と同様にしてバリア性積層フィルムを得た。
【0098】
[実施例4]
応力緩和層を形成する際のポリウレタン樹脂水分散液として、三井化学社製の製品名タケラックWS−4031(芳香族ポリエステル型ポリウレタン樹脂)を用いる以外は実施例1と同様にしてバリア積層フィルムを得た。
【0099】
[実施例5]
応力緩和層の乾燥後の厚みを0.20μmとした以外は実施例4と同様にしてバリア性積層フィルムを得た。
【0100】
[実施例6]
応力緩和層の乾燥後の厚みを0.40μmとした以外は実施例4と同様にしてバリア性積層フィルムを得た。
【0101】
[比較例1]
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)を基材とし、そのコロナ処理された面に、高周波誘導加熱方式により、アルミニウムを加熱蒸発させ、酸素を導入しながら蒸着することで、厚さ8nmの酸化アルミニウム膜を形成させた。これにより酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを得た。この酸化アルミニウム蒸着PETフィルムの水蒸気透過度は1.5g/(m
2・24h)であった。この酸化アルミニウム蒸着PETフィルムの蒸着面に、アプリケーターにて乾燥後のバリア性樹脂層の厚みが0.30μmになるように塗布し、熱風乾燥器を使用して温度;100℃、時間;30秒の条件で乾燥し、さらに温度;215℃、時間;10分熱処理をして、バリア積層フィルムを得た。
【0102】
[比較例2]
応力緩和層を形成する際の樹脂組成物として、下記組成の樹脂組成物を使用し、乾燥後の応力緩和層の厚みを0.05μmにした以外は実施例1と同様にしてバリア積層フィルムを得た。
(組成)
主剤:ポリウレタン樹脂水分散液(三井化学社製、製品名:タケラックWS−4022、脂肪族ポリエステル型ポリウレタン樹脂)
架橋剤:イソシアネート系化合物(三井化学社製、製品名:WD−725)
配合比:主剤中のポリウレタン樹脂のヒドロキシル基1.0molに対し、架橋剤中のイソシアネート基が1.0molとなるように、主剤に架橋剤を配合した。
【0103】
[比較例3]
応力緩和層を形成する際の樹脂組成物の主剤にアクリルポリオール(東レ・ファインケミカル社製、製品名:コータックスLH−681)を用い、架橋剤にイソシアネート系化合物(三井化学社製、製品名:タケラックA−10)を用いた以外は比較例2と同様にしてバリア積層フィルムを得た。
【0104】
[比較例4]
応力緩和層を形成する際の樹脂組成物の主剤にアクリルポリオール(東レ・ファインケミカル社製、製品名:コータックスLH−635)を用いた以外は比較例3と同様にしてバリア積層フィルムを得た。
【0105】
[比較例5]
応力緩和層を形成する際の樹脂組成物として、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)(日本触媒社製「エポクロスWS−300J(固形分濃度10質量%)」)、水性アクリル系樹脂(B)(東亜合成社製「ジュリマーET−410J(固形分濃度30質量%)」)、水性ポリエステル系樹脂(C)(日本合成化学工業社製「ポリエスターWR−961J(固形分濃度30質量%)」)を固形分比(質量比)で(A)/(B)/(C)=23.7/57.2/19.1となるように調製した組成物を使用し、乾燥後の厚みを0.06μmとし、バリア性樹脂層の厚みを0.30μmとした以外は比較例2と同様にしてバリア性積層フィルムを得た。
【0106】
実施例および比較例で得られたバリア性積層フィルムについて、以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0107】
<物性評価用多層フィルムの作製>
(1)厚さ50μmの無延伸ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製、商品名:T.U.X.FCS)の片面に、エステル系接着剤(ポリエステル系接着剤(三井化学ポリウレタン社製、商品名:タケラックA310):12質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケネートA3):1質量部および酢酸エチル:7質量部)を塗布した。乾燥後、アミド架橋膜面と貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルム(レトルト前の物性測定用試料)を得た。
【0108】
(2)厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製 商品名:RXC−22)の片面に、エステル系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井化学社製 商品名:タケラックA525S):9質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学社製 商品名:タケネートA50):1質量部および酢酸エチル:7.5質量部)を塗布した。乾燥後、アミド架橋膜面と貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルム(レトルト後の物性測定用試料)を得た。
【0109】
(3)レトルト処理
上記(2)で得られた多層フィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として水を70cc入れ、もう1方をヒートシールにより袋を作成し、これを高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理を行った。レトルト処理後、内容物の水を抜き、レトルト処理後の多層フィルムを得た。
【0110】
(4)剥離強度の測定
上記方法で得られたレトルト処理前後の多層フィルムを15mm幅に採取した後、バリア性積層フィルムの剥離のきっかけを作るために試料の角における無延伸ポリエチレンフィルム層または無延伸ポリプロピレンフィルム層とバリア性積層フィルムとの間を部分的に剥離し、その後300(mm/分)の剥離速度で、180度ラミネート剥離強度を測定した。レトルト処理後の試料は濡れた状態で測定した。
【0111】
(5)酸素透過度[ml/(m
2・24h・MPa)]
上記方法で得られた多層フィルムを、モコン社製OX−TRAN2/21を用いて、JIS K7126に準じ、温度20℃、湿度90%RHの条件で測定した。
【0112】
(6)水蒸気透過度[g/(m
2・24h)]
厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製 商品名:T.U.X. FCS)の片面に、エステル系接着剤(ポリエステル系接着剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケラックA310):12質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケネートA3):1質量部および酢酸エチル:7質量部)を塗布し乾燥後、比較例、実施例で得られたバリア性積層フィルムのバリア面と貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように重ねてバリア性積層フィルムを折り返し、3方をヒートシールし、袋状にした後、内容物として塩化カルシウムを入れ、もう1方をヒートシールにより、表面積が0.01m
2になるように袋を作成し、40℃、90%RHの条件で300時間放置し、その重量差で水蒸気透過度を測定した。
【0113】
(7)バリア性樹脂層のIR面積比
赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は日本分光社製IRT−5200装置を用い、PKM−GE−S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm
−1、積算回数100回の条件で測定した。得られた吸収スペクトを前述した方法で解析し、全ピーク面積A〜Dを算出した。そして、全ピーク面積A〜Dから面積比B/A、C/A、D/Aを求めた。
【0114】
(8)応力緩和層のIRピーク高さ比(A
0/A
1)
酸化アルミニウムが蒸着された厚み12μmのPETフィルムの酸化アルミニウムの蒸着面に、乾燥厚みが約2μmになるようポリウレタン樹脂水分散液をバーコーターで塗布し、その後、110℃の乾燥機で1分間加熱しポリウレタン樹脂水分散液を乾燥して応力緩和層を形成した。
次いで、赤外線全反射測定(ATR法)により、応力緩和層表面の赤外線吸収スペクトルを測定した。ここで、吸収帯1705cm
−1以上1735cm
−1以下の範囲における最大ピークのベースラインからのピーク高さ(吸光度)をA
1とし、吸収帯715cm
−1以上745cm
−1以下の範囲における最大ピークのベースラインからのピーク高さ(吸光度)をA
0とし、A
0/A
1を算出した。
【0115】
【表1】
【0116】
実施例で得られたバリア性積層フィルムは、比較例で得られた積層フィルムに比べて、レトルト処理前後における酸素バリア性、水蒸気バリア性およびレトルト処理前後における基材層とバリア性樹脂層との層間の接着性のバランスに優れていた。