(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6935221
(24)【登録日】2021年8月27日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】金属構造体と複合材料構造体の両方における雷撃表示のための熱変色観察フィーチャ
(51)【国際特許分類】
G01N 25/00 20060101AFI20210906BHJP
G01N 25/72 20060101ALI20210906BHJP
B32B 37/14 20060101ALI20210906BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20210906BHJP
G01N 21/35 20140101ALI20210906BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20210906BHJP
B64F 5/40 20170101ALI20210906BHJP
B64D 45/02 20060101ALN20210906BHJP
B64C 1/00 20060101ALN20210906BHJP
【FI】
G01N25/00 Z
G01N25/72 K
B32B37/14 Z
G01N21/27 A
G01N21/27 B
G01N21/35
G01N21/64 Z
B64F5/40
!B64D45/02
!B64C1/00 B
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-81811(P2017-81811)
(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公開番号】特開2017-227620(P2017-227620A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2020年4月14日
(31)【優先権主張番号】15/143,958
(32)【優先日】2016年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョージソン, ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】イン, ジョン−ビョン
【審査官】
野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0273240(US,A1)
【文献】
特開昭64−015645(JP,A)
【文献】
特公昭49−025519(JP,B1)
【文献】
特開2008−117958(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0063026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00−25/72
B32B 37/14
G01N 21/27
G01N 21/35
G01N 21/64
B64F 5/40
B64D 45/02
B64C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体内の電流による第1の閾値温度への前記構造体の一部分の加熱に応じて、前記構造体の前記一部分に付けられた材料を第1の色へ変化させること、
前記第1の色の位置に基づいて、前記構造体を通った前記電流の経路を検出すること、及び
前記第1の閾値温度よりも高い第2の閾値温度への前記構造体の第2の部分の加熱に応じて、前記構造体の前記第2の部分に付けられた材料を、前記第1の色とは異なる第2の色へ変化させることを含む、方法。
【請求項2】
少なくとも前記第1の色に基づいて、前記検出された前記構造体を通った前記電流の経路に沿って前記電流によって生み出された損傷の程度を評価することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の閾値温度よりも高い第3の閾値温度への前記構造体の第3の部分の加熱に応じて、前記構造体の前記第3の部分に付けられた材料を、前記第1の色及び第2の色とは異なる第3の色へ変化させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも前記第1の色、第2の色及び第3の色に基づいて、前記検出された前記構造体を通った前記電流の経路に沿って前記電流によって生み出された損傷の程度を評価することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
検出器を用いて前記構造体の表面をスキャンすること
前記検出器において、前記構造体からの光を受信すること、及び
前記構造体からの前記光に基づいて、前記第1の色の前記位置を特定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記スキャンの間に前記構造体に光源を向けることを更に含み、前記光源が紫外線光源であり、前記第1の色が非紫外線光の下で実質的に視認できない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
構造体、
前記構造体の第1の部分に付けられた第1の材料であって、前記構造体内の電流による第1の閾値温度への前記構造体の前記第1の部分の局所的な加熱に応じて、第1の色へ局所的に変化するように適合された、第1の材料、
前記構造体からの光を受信し、前記第1の色の位置に基づいて、前記構造体を通った前記電流の経路の検出を可能にするように構成された、検出器、及び
前記構造体の第2の部分に付けられた第2の材料であって、前記第1の閾値温度よりも高い第2の閾値温度への前記構造体の前記第2の部分の加熱に応じて、前記第1の色とは異なる第2の色へ変化するように適合された、第2の材料を備える、システム。
【請求項8】
前記第1の色が、前記構造体を通った前記電流の前記経路に沿って前記電流によって生み出された損傷の程度を評価することを可能にする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記構造体の第3の部分に付けられた第3の材料であって、前記第2の閾値温度よりも高い第3の閾値温度への前記構造体の前記第3の部分の加熱に応じて、前記第1の色及び第2の色とは異なる第3の色へ変化するように適合された、第3の材料を更に備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の色、第2の色及び第3の色が、前記検出された前記構造体を通った前記電流の経路に沿って前記電流によって生み出された損傷の程度を評価することを可能にする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記構造体に向けられた光源を更に備え、前記光源が紫外線光源であり、前記第1の色が非紫外線光の下で実質的に視認できない、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記構造体が、複合材料航空機に付けられた銅フォイル、複合材料航空機の導電性メッシュ、複合材料航空機の誘電性トップ、雷放ストリップ、接地ケーブル若しくはプレート、航空機の避雷層の一部分、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
第1の材料を構造体の第1の部分に付けることと、
第2の材料を前記構造体の第2の部分に付けることとを含み、
前記第1の材料が、前記構造体内の電流による第1の閾値温度への前記構造体の前記第1の部分の加熱に応じて、第1の色へ変化するように適合されており、
前記第2の材料が、第2の閾値温度への前記構造体の前記第2の部分の加熱に応じて、前記第1の色とは異なる第2の色へ変化するように適合されている、方法。
【請求項14】
前記第1の材料が、コーティングマトリクスの第1の部分の中へ組み込まれ、前記第2の材料が、前記コーティングマトリクスの第2の部分の中へ組み込まれ、前記コーティングマトリクスが前記構造体に付けられている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の材料が、避雷層の樹脂の第1の部分の中へ組み込まれ、前記第2の材料が、前記避雷層の前記樹脂の第2の部分の中へ組み込まれている、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは、金属構造体と複合材料構造体の両方における雷撃表示のための熱変色(thermo‐chromatic)観察フィーチャに関する。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙産業及び民間航空機産業における炭素繊維強化ポリマー(CFRP)複合材料構造体の使用の増加に伴って、複合材料の損傷を検出するための効率的な非破壊評価(NDE)方法の進歩に対する必要性が高まっている。特に危険な損傷の形態は、検出することが難しい熱損傷を起こし得る雷撃からもたらされる。
【0003】
雷撃による熱損傷のための通常の検査方法は、超音波設備の使用を含んで、層間剥離、分離、及び/又は亀裂などの損傷が生じたか否かを判定し得る。別の1つの検査方法は、航空機から得られたスペクトル信号のフーリエ変換赤外線(FTIR)解析を実行して、視覚検査を特定の樹脂コーティングの熱損傷に関連付けることを含む。しかし、これらの方法は、時間がかかり、不正確であり得る。
【0004】
雷撃による損傷を検出するための他の方法は、最初の雷撃によってもたらされた跡、変色、又は損傷に基づいて、最初の雷撃ポイントの位置を判定すること、及び最初の雷撃ポイントの近傍の航空機の各構成要素を検査することを含み得る。しかし、検査される構成要素の多くは、雷撃からの電流によって辿られた特定の経路の外側にあり、したがって、損傷している可能性が低い場合がある。電流が、どの経路を辿り得たかは知られていないので、これらの構成要素は、その必要がないのに検査されている場合もある。更に、検査は、時間がかかり、高価で、且つ/又は侵襲的な解体プロセスを含み得る。必要なのは、構造体を通った雷撃からの電流が辿った経路を判定するための、及び、その経路に沿って構成要素が受けたであろう損傷の程度を判定するための、速く、信頼でき、非侵襲的な方法である。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、システムが、構造体、及び構造体に付けられた熱変色材料を含む。熱変色材料は、構造体の局所的な加熱に応じて、局所的にある色へ変わるように適合されている。加熱は、雷撃からの電流によってもたらされ得る。変色の位置と程度を調べることによって、雷撃による構造体への損傷の予測が判定され得る。
【0006】
一実施形態では、方法が、構造体内の電流による第1の閾値温度への構造体の一部分の加熱に応じて、構造体の一部分に付けられた材料を、第1の色へ変化させることを含む。該方法は、第1の色の位置に基づいて、構造体を通った電流の経路を検出することを更に含む。
【0007】
ある実施形態では、該方法が、少なくとも第1の色に基づいて、検出された構造体を通った電流の経路に沿って電流によって生み出された損傷の程度を評価することも含む。ある実施形態では、該方法が、第1の閾値温度よりも高い第2の閾値温度への構造体の第2の部分の加熱に応じて、構造体の第2の部分に付けられた材料を、第1の色とは異なる第2の色へ変化させることを含む。ある実施形態では、該方法が、更なる連続的に増加する閾値温度への構造体の更なる部分の加熱に応じて、構造体の更なる部分に付けられた更なる材料を、第1の色とは異なり且つ互いに異なる更なる色へ連続的に変化させることを含む。ある実施形態では、該方法が、少なくとも第1の色及び更なる色に基づいて、検出された構造体を通った電流の経路に沿って電流によって生み出された損傷の程度を評価することも含む。
【0008】
ある実施形態では、該方法が、検出器を用いて構造体の表面をスキャンすることを含む。該方法は、検出器において、構造体からの光を受信することを更に含む。該方法は、構造体からの光に基づいて、第1の色の位置を特定することも含む。ある実施形態では、該方法が、スキャンの間に構造体に光源を向けることを含む。光源は、紫外線光源であり、第1の色は、非紫外線光の下では実質的に視認できない場合もある。ある実施形態では、第1の閾値温度が、200°Cと300°Cとの間である。
【0009】
一実施形態では、システムが、構造体、及び構造体の一部分に付けられた第1の材料を含む。該材料は、構造体内の電流による第1の閾値温度への構造体の一部分の局所的な加熱に応じて、局所的に第1の色へ変化するように適合されている。該システムは、構造体からの光を受信して、第1の色の位置に基づいて構造体を通った電流の経路の検出を可能にするように構成された、検出器を更に含む。
【0010】
ある実施形態では、第1の色が、構造体を通った電流の経路に沿って電流によって生み出された損傷の程度を評価することを可能にする。ある実施形態では、該システムが、構造体の第2の部分に付けられた第2の材料を更に含む。第2の材料は、第1の閾値温度よりも高い第2の閾値温度への構造体の一部分の加熱に応じて、第1の色とは異なる第2の色へ変化するように適合されている。ある実施形態では、該システムが、構造体の更なる部分に付けられた更なる材料も含む。更なる材料は、更なる連続的に増加する閾値温度への構造体の更なる部分の加熱に応じて、第1の色とは異なり且つ互いに異なる更なる色へ変化するように適合されている。ある実施形態では、第1の色及び更なる色が、検出された構造体を通った電流の経路に沿って電流によって生み出された損傷の程度を評価することを可能にする。
【0011】
ある実施形態では、該システムが、構造体に向けられた光源も含む。光源は、紫外線光源であり、第1の色は、非紫外線光の下では実質的に視認できない場合もある。
【0012】
ある実施形態では、構造体が、複合材料航空機に付けられた銅フォイル(copper foil)、複合材料航空機の導電性メッシュ(conductive mesh)、複合材料航空機の誘電性トップ(dielectric top)、雷放ストリップ(lightning diversion strip)、接地ケーブル若しくはプレート、航空機の避雷層の一部分、又はそれらの任意の組み合わせを含む。ある実施形態では、材料が、熱変色観察材料を含む。
【0013】
一実施形態では、方法が、第1の材料を構造体の第1の部分に付けることを含む。第1の材料は、構造体内の電流による第1の閾値温度への構造体の第1の部分の加熱に応じて、第1の色へ変化するように適合されている。該方法は、第2の材料を構造体の第2の部分に付けることを更に含む。第2の材料は、第2の閾値温度への構造体の第2の部分の加熱に応じて、第1の色とは異なる第2の色へ変化するように適合されている。
【0014】
ある実施形態では、第1の材料が第1の組のアップリケストリップの中へ組み込まれ、第2の材料が第2の組のアップリケストリップの中へ組み込まれている。第1の組のアップリケストリップと第2の組のアップリケストリップは、繰り返しパターンで構造体に付けられている。ある実施形態では、第1の材料がコーティングマトリクスの第1の部分の中へ組み込まれ、第2の材料がコーティングマトリクスの第2の部分の中へ組み込まれている。コーティングマトリクスは、構造体に付けられている。ある実施形態では、第1の材料が避雷層の樹脂の第1の部分の中へ組み込まれ、第2の材料が避雷層の樹脂の第2の部分の中へ組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】熱変色材料を有する航空機100の一実施形態を描いている。
【
図2】雷撃表示のためのシステムの一実施形態を描いている。
【
図2A】雷撃表示のためのシステムの一実施形態の断面図を描いている。
【
図3】雷撃表示のためのシステムの一実施形態を描いている。
【
図3A】雷撃表示のためのシステムの一実施形態の断面図を描いている。
【
図4】雷撃表示のためのシステムの一実施形態を描いている。
【
図4A】雷撃表示のためのシステムの一実施形態の断面図を描いている。
【
図5】雷撃による潜在的な損傷の位置及び程度を検出するためのシステムの一実施形態を描いている。
【
図6】雷撃表示のための方法の一実施形態を描いているフローチャートである。
【
図7】雷撃表示システムを製造するための方法の一実施形態を描いているフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示が様々な変形例及び代替的な形態を許容する一方で、具体的な実施形態が、図面で例示的に示され、本明細書でより詳細に説明される。しかし、本開示は、開示される特定の形態に限定されることを意図しないことが理解されるべきである。むしろ、添付の特許請求の範囲で規定される開示の精神及び範囲内に含まれる全ての変形例、等価物、及び代替例をカバーすることが意図される。
【0017】
図1を参照すると、航空機100の一実施形態が描かれている。航空機100は、複合材料、金属材料、他の種類の建築材料、又はそれらの組み合わせを含み得る。航空機100の表面102は、本明細書で説明されるように、そこに付けられた熱変色観察材料を含み得る。航空機100の運航の間の何らかの時に、航空機100の表面102は、雷に撃たれ得る。航空機100の構造体内で生み出された熱に応じて、熱変色観察材料は、変色して、表面102の変色した領域106を生成する。変色した領域106は、雷104からの電流によって生み出された熱により生成されるので、変色した領域106は、電流が航空機100の表面102を離れるか又はそれがもはや熱変色観察材料を起動するのに十分な熱を生み出さなくなるように消散するまで、実質的に電流の経路を辿り得る。ある実施形態では、変色した領域106が、紫外線光の下で視認できる(visible)ように、且つ、非紫外線光の下で実質的に視認できない(invisible)ように、熱変色材料が選択される。
【0018】
熱変色観察材料を航空機の表面102に付けることの利点は、雷104の雷撃ポイントと航空機100の表面102を通った電流によって辿られた経路との両方の検出を可能にすることである。変色した領域106の位置を特定することによって、どの構成要素が雷104によって損傷されたかの、より正確な予測が行われ得る。したがって、それらの構成要素が過熱したか又はさもなければ電流によって損傷を受けた可能性が高いときに、変色した領域106の近傍のそれらの構成要素のみを検査することによって、時間及び費用が省かれ得る。
図1の実施形態に関連付けられた他の利益及び利点は、本開示の利益を有する当業者にとって明らかであろう。
【0019】
図2及び
図2Aを参照すると、雷撃表示のためのシステム200の一実施形態が描かれている。
図2は、システム200の上面図を描いている。
図2Aは、
図2のシンボルAによって指定されている断面線に沿った、システム200の断面図を描いている。システム200は、構造体204に付けられた熱変色観察材料202を含み得る。
【0020】
熱変色観察材料202は、温度の変化によって変色する任意の物質を含み得る。雷検出の用途のために、色の変化は、システム200の検査が行われ得るまで十分に永続的に変化したままである。ある実施形態では、熱変色観察材料202が、200°Cと300°Cの間の閾値温度において、変色し得るか又は蛍光を発し得る。
【0021】
種々の種類の熱変色観察材料が、起動されるために熱を加えられている間の種々の時間間隔に関連付けられ得る。ある実施形態では、雷撃を検出するために、熱変色観察材料202が、雷撃に関連付けられた短い時間間隔の間に起動される。例えば、熱変色観察材料202は、0.1秒と1秒の間の期間内に起動され得る。更に、熱変色観察材料202は、システム200の検査を可能にするために、十分な時間間隔の間、その変化した色を維持し得る。例えば、熱変色観察材料は、数日以上までその変化した色を維持し得る。
【0022】
構造体204は、避雷が望ましいであろう任意の構造体を含み得る。ある実施形態では、構造体204が航空機の一部分であり得る。例えば、構造体204は、複合材料航空機に付けられた銅フォイル、複合材料航空機の導電性メッシュ、複合材料航空機の誘電性トップ、雷放ストリップ、接地ケーブル若しくはプレート、航空機の避雷層の一部分、航空機の別の一部分、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0023】
動作の間のある時において、システム200は、雷に撃たれ得る。雷は、入口ポイント210において構造体204に入る電流を生み出し得る。電流は、出口ポイント212を通って出て行く前に、経路208に沿って構造体204を通って移動し得る。ある実施形態では、電流が、経路208に沿って部分的にか又は完全にかの何れかで消散し得る。例えば、構造体204は、大きい領域の全体にわたって電流を再誘導及び/又は広げるように設計され、それは、電流の低減をもたらし得る。ある事例では、電流が、出口ポイント212に到達する前に、完全に消散し得る。
【0024】
電流が経路208に沿って構造体204を通って移動する際に、経路の近傍の構造体204の一部分206は加熱され得る。一部分206が閾値温度に到達したときに、一部分206に付けられた熱変色観察材料202は、別の色へ変化して、変色領域214を生成し得る。
図2及び
図2Aで示されている網掛けは、変色領域214の色が、熱変色観察材料202の残りとは異なることを示している。
【0025】
システム200の利点は、熱変色観察材料202内の変色領域214を生成することによって、システム200が、構造体204を通った雷撃からの電流が辿った経路を判定するための、及び、その経路208に沿って構成要素が受けたであろう損傷の程度を判定するための、速く、信頼でき、非侵襲的な方法を提供することである。システム200の他の利益及び利点は、本開示の利益を有する当業者にとって明らかであろう。
【0026】
図3及び
図3Aを参照すると、雷撃表示のためのシステム300の一実施形態が描かれている。システム300は、第1の組のアップリケストリップ302〜307と第2の組のアップリケストリップ312〜317を含み得る。第1の組のアップリケストリップ302〜307は、第1の閾値温度において変色する第1の熱変色観察材料を含み得る。第2の組のアップリケストリップ312〜317は、第1の閾値温度よりも高い第2の閾値温度において変色する第2の熱変色観察材料を含み得る。
【0027】
構造体204を通過する電流は、入口ポイント210の近くで最も強くなり得る。経路208に沿って電流が移動する際に、電流が構造体204を加熱し及び/又は大きな導電性領域を通って消散し、電流はその力を失うだろう。そのようにして、構造体204は、出口ポイント212の近くと比較して入口ポイント210の近くで、経路208に沿ってより高い温度へ加熱され得る。
【0028】
図3及び
図3Aで描かれているように、電流は、アップリケストリップのうちの幾つか(例えば、アップリケストリップ302〜304)と接触する構造体204の部分を、第1の閾値温度を超える温度へ加熱し得る。熱に応じて、アップリケストリップ302〜304内に含まれる第1の熱変色観察材料は、変色して、構造体204の加熱された部分にわたり変色領域322〜324を生成し得る。同様に、電流は、他のアップリケストリップ(例えば、アップリケストリップ313〜315)と接触する構造体204の他の部分を加熱し得る。入口ポイント210の近くでは、熱が第2の閾値温度を超え得るので、アップリケストリップ313に含まれる第2の熱変色観察材料が、変色して、別の変色領域326を生成することをもたらす。経路208が入口ポイント210から離れて移動する際に、電流によって生み出される熱は減少し得る。そのようにして、入口ポイント210から離れて、熱は第2の閾値温度を超えない場合があり、構造体204の加熱された部分と接触しているにも関わらず、アップリケストリップのうちの幾つか(例えば、アップリケストリップ314、315)内に変色しない領域の生成をもたらす。
【0029】
アップリケストリップのうちの幾つか内に第1の熱変色観察材料を含み、且つ、他のアップリケストリップ内に別の熱変色観察材料を含むことによって、経路208に沿った構造体204の複数の部分における構造体204内の加熱の程度を判定することができる。例えば、アップリケストリップ302、303、及び313に隣接する構造体204の部分は、アップリケストリップ304、314、315に隣接する構造体204の部分よりも多くの熱に晒されたということが判定され得る。何故ならば、アップリケストリップ313の近くの温度は、第2の閾値温度を超え、一方で、アップリケストリップ314、315の近くの温度は、第2の閾値温度を超えなかったからである。したがって、アップリケストリップ302、303、313の近くの構造体204内の構成要素は、より多くの熱に晒された可能性があり、結局、雷撃によって損傷された可能性が高い。第1の熱変色観察材料と第2の熱変色観察材料の色は、特定の範囲の温度が構造体204の各部分に到達したことを判定できるようにするために、それらのそれぞれの閾値温度が到達された後で、互いに異なり得る。
【0030】
図3で示されるように、第1の熱変色観察材料を含むアップリケストリップ302〜307と第2の熱変色観察材料を含むアップリケストリップ312〜317は、構造体204の全体にわたり両方の閾値温度のための均一な熱のサンプリングを生み出すために、交互に付けられ得る。ある実施形態では、3種類以上の熱変色観察材料が使用され得る。例えば、更なる熱変色観察材料を含む更なるアップリケストリップが、構造体204の更なる部分に付けられ得る。更なる熱変色観察材料は、更なる連続的に増加する閾値温度への構造体204の更なる部分の加熱に応じて、更なる色へ変化するように連続的に適合され得る。更なるアップリケストリップは、各閾値温度のための均一な熱のサンプリングを生み出すために、構造体204に沿って連続的に横たえられ得る。更に、熱変色観察材料の各々は、互いに異なる色へ変化し得る。そのようにして、構造体204によって感知された温度の範囲がマッピングされ得る。
【0031】
第1の熱変色観察材料を含むアップリケストリップと第2の熱変色観察材料を含むアップリケストリップとの間の交互配置に関連する利点は、システム300が、構造体204を通った雷撃からの電流が辿った経路208を判定するための、及び、その経路208に沿って構成要素が受けたであろう損傷の程度を判定するための、速く、信頼でき、非侵襲的な方法を提供し得ることである。更に、システム300は、アップリケストリップを組み込んでいるので、容易に製造され得る。システム300の他の利益及び利点は、本開示の利益を有する当業者にとって明らかであろう。
【0032】
図4及び
図4Aを参照すると、雷撃表示のためのシステム400の一実施形態が描かれている。システム400は、その中に組み込まれた複数の熱変色観察粒子404を伴う、構造体204に付けられたマトリクス材料402を含み得る。
【0033】
ある実施形態では、マトリクス材料402が、構造体204に付けられた樹脂又は別の種類のコーティングを含み得る。マトリクス材料402は、スプレー、ブラシ、別の種類のアプリケーションプロセス、又はそれらの組み合わせによって、構造体204に付けられ得る。熱変色観察粒子404は、マトリクス材料402が構造体204に付けられる前に、マトリクス材料402の中へ組み込まれ得る。代替的に、ある実施形態では、熱変色観察粒子404が、マトリクス材料402の付着の後で、マトリクス材料402の中へ組み込まれ得る。
【0034】
熱変色観察粒子404の一部は、第1の熱変色観察材料を含み、熱変色観察粒子404の一部は、第2の熱変色観察材料を含み得る。第1の熱変色観察材料は、第1の閾値温度へ加熱されたときに第1の色へ変化して、第2の熱変色観察材料は、第1の閾値温度とは異なる第2の閾値温度へ加熱されたときに第1の色とは異なる第2の色へ変化し得る。例えば、経路208に沿った電流による加熱に際して、粒子404の一部は、第1の色へ変化して、変色領域(例えば、変色領域412、414、417)を生成し得る。他の変色領域(例えば、変色領域413、415)は、第1の色とは異なる第2の色に対応し得る。
【0035】
ある実施形態では、
図4及び
図4Aで描かれているように、粒子404が、無作為にマトリクス材料402の中へ混合されている。代替的に、ある実施形態では、第1の組の粒子412、414、416、417が、マトリクス材料402の第1の部分の中へ組み込まれ、第2の組の粒子413、415が、マトリクス材料402の第2の部分の中へ組み込まれ、第1の部分と第2の部分は最初に分離された状態にある。その後、マトリクス材料402の各部分は、あるパターンで構造体204に付けられ得る。
図4では描かれていないが、ある実施形態では、粒子404の一部が、更なる連続的に増加する閾値温度への構造体204の更なる部分の加熱に応じて、第1の色及び第2の色とは異なり且つ互いに異なる更なる色へ変化する更なる熱変色観察材料を含む。
【0036】
電流が、経路208に沿って入口ポイント210から出口ポイント212へ通過する際に、電流は、構造体204を加熱し得る。構造体204の部分が第1の閾値温度を超えて加熱されるならば、その後、熱変色観察粒子404は、それぞれの熱変色観察粒子の材料に関連付けられた温度範囲に基づいて変色し得る。色の変化は、構造体204に対する潜在的な損傷の位置及び/又は損傷の程度の判定を可能にし得る。システム400の他の利益及び利点は、本開示の利益を有する当業者にとって明らかであろう。
【0037】
図5を参照すると、雷撃による潜在的な損傷の位置及び程度を検出するためのシステム500の一実施形態が描かれている。システム500は、コントローラ502、光源506、及び検出器508を含み得る。
【0038】
コントローラ502は、本明細書で説明されるように、制御機能を実行し得る。ある実施形態では、コントローラが、プロセッサとメモリを使用して実装される。例えば、プロセッサは、中央処理装置(CPU)、グラフィカルプロセッシングユニット(GPU)、周辺インターフェースコントローラ(PIC)、別の種類のプロセッシングユニット、又はそれらの組み合わせを含み得る。ある実施形態では、コントローラが、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、集積回路(IC)デバイス、別の種類の回路論理、又はそれらの組み合わせなどの、プログラム可能な又は固定された回路論理を使用して実装される。
【0039】
コントローラ502は、検出器508からの入力を受信する、位置判定モジュール504を含み得る。入力に基づいて、位置判定モジュール504は、変色領域214の位置を判定し得る。コントローラ502は、その位置における構造体204に対する潜在的な損傷の程度を判定する、損傷評価モジュール505を更に含み得る。ある実施形態では、コントローラが、位置と潜在的な損傷の程度の予測とを構造体204の三次元モデルにマッピングする、視認可能な描写を生み出し得る。
【0040】
動作の間に、光源506が、構造体204に向けられ得る。ある実施形態では、光源506が、紫外線光ランプを含み得る。光源506は、熱変色観察材料202が蛍光を発することをもたらし得る、光510(例えば、紫外線光)を放射し得る。蛍光を発する熱変色観察材料を示す反射した及び/又は更なる光511が、検出器508において受信され得る。検出器は、光511に基づく画像データを、位置判定モジュール504に送信し得る。
【0041】
位置情報を判定するために、コントローラ502は、検出器508を制御して、熱変色観察材料202の表面をスキャンし得る。例えば、検出器508は、矢印512によって示されている方向においてスキャンし得る。スキャンは、回転運動、並進運動、他の種類の運動、又はそれらの組み合わせを含み得る。スキャンを実行するために、コントローラ502は、検出器508に運動を加えるためのギア、モータ、又は(図示せぬ)他の機械装置を含み得る。
【0042】
構造体204からの光に基づいて、コントローラ502は、変色領域214の位置を特定し得る。更に、コントローラ505は、変色領域214において存在する色を解析して、構造体204の各位置の全体を通して構造体204の加熱の程度を判定し、それによって、構造体204の1以上の構成要素において生じ得た損傷の程度を生み出し得る。
【0043】
図6を参照すると、雷撃表示のための方法600の一実施形態が描かれている。方法600は、構造体内の電流による第1の閾値温度への構造体の一部分の加熱に応じて、構造体の一部分に付けられた材料を、ある色へ変化させることを含み得る(602)。例えば、熱変色観察材料202は、電流経路208の近傍の構造体204の一部分206の加熱に応じて、変色領域214において
図2の網掛けによって表された色へ変化し得る。
【0044】
方法600は、検出器を用いて構造体の表面をスキャンすることを更に含み得る(604)。例えば、構造体204の表面が、検出器508によってスキャンされ得る。
【0045】
方法600は、検出器において、構造体からの光を受信することも含み得る(606)。例えば、光511が、検出器508において受信され得る。
【0046】
方法600は、検出器において構造体からの光を受信して、構造体からの光に基づいて、その色の位置を特定することを含み得る(608)。例えば、変色領域214の位置が、位置判定モジュール504において判定され得る。
【0047】
方法600は、第1の色の位置に基づいて、構造体を通った電流の経路を検出することを更に含み得る(610)。例えば、経路208は、変色領域214の経路に基づいて検出され得る。
【0048】
方法600は、少なくとも色に基づいて、検出された構造体を通った電流の経路に沿って電流によって生み出された損傷の程度を評価することも含み得る(612)。例えば、損傷評価モジュール505が、変色領域214の色に基づいて、変色領域214に沿った損傷の程度を判定し得る。
【0049】
図7を参照すると、雷撃表示システムを製造するための方法700の一実施形態が描かれている。方法700は、第1の材料を構造体の第1の部分に付けることを含み得る(702)。第1の材料は、構造体内の電流による第1の閾値温度への構造体の第1の部分の加熱に応じて、第1の色へ変化するように適合され得る。例えば、アップリケストリップ302〜307が、構造体204に付けられ得る。別の実施例として、熱変色観察粒子412、414、416、417が、構造体204に付けられ得る。
【0050】
方法700は、第2の材料を構造体の第2の部分に付けることを更に含み得る(704)。第2の材料は、第2の閾値温度への構造体の第2の部分の加熱に応じて、第1の色とは異なる第2の色へ変化するように適合され得る。例えば、アップリケストリップ312〜317が、構造体204に付けられ得る。別の実施例として、熱変色観察粒子413、415が、構造体204に付けられ得る。
【0051】
様々な実施形態が示され説明されたが、本開示は、限定的なものではなく、当業者にとって明らかな全てのそのような修正例及び変形例を含むと理解されるべきである。