特許第6935258号(P6935258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧 ▶ 成均館大学校 産学協力団の特許一覧

<>
  • 特許6935258-水分遮断用封止樹脂組成物 図000008
  • 特許6935258-水分遮断用封止樹脂組成物 図000009
  • 特許6935258-水分遮断用封止樹脂組成物 図000010
  • 特許6935258-水分遮断用封止樹脂組成物 図000011
  • 特許6935258-水分遮断用封止樹脂組成物 図000012
  • 特許6935258-水分遮断用封止樹脂組成物 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6935258
(24)【登録日】2021年8月27日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】水分遮断用封止樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20210906BHJP
   C08G 59/60 20060101ALI20210906BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20210906BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20210906BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210906BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210906BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20210906BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   C08G59/20
   C08G59/60
   C08L63/00 C
   C08K3/01
   C08K3/22
   H05B33/14 A
   H05B33/04
   H05B33/02
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-144495(P2017-144495)
(22)【出願日】2017年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-16799(P2018-16799A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2020年6月4日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0097196
(32)【優先日】2016年7月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】514107680
【氏名又は名称】成均館大学校 産学協力団
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ブ ヨンスン
(72)【発明者】
【氏名】キム ソンヒ
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−039914(JP,A)
【文献】 特開平02−004886(JP,A)
【文献】 特表2016−524295(JP,A)
【文献】 特開2010−132732(JP,A)
【文献】 特表2014−500586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
H01L 51/50
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分遮断用封止樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂、硬化剤及び吸湿剤を含み、
上記エポキシ樹脂は、多官能性ビスフェノール(Multifunctional Bisphenol)Aタイプエポキシ樹脂(ただし、二官能性ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂に相当するものを除く。)と、ブタジエンアクリロニトリル改質(Butadiene Acrylonitrile Modified)エポキシ樹脂を含み、
上記硬化剤は、一分子中に二つの−NHを有する二官能性硬化剤と、一分子中に二つを超える−NHを有する多官能性硬化剤を含む、水分遮断用封止樹脂組成物。
【請求項2】
上記二官能性硬化剤は、アミド硬化剤を含む、請求項1に記載の水分遮断用封止樹脂組成物。
【請求項3】
上記多官能性硬化剤は、アミン硬化剤を含む、請求項1又は2に記載の水分遮断用封止樹脂組成物。
【請求項4】
上記二官能性硬化剤と上記多官能性硬化剤の重量比は1:9乃至9:1以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水分遮断用封止樹脂組成物。
【請求項5】
上記ブタジエンアクリロニトリル改質(Butadiene Acrylonitrile Modified)エポキシ樹脂は、上記エポキシ樹脂全体の10重量%以上、90重量%以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水分遮断用封止樹脂組成物。
【請求項6】
上記ブタジエンアクリロニトリル改質(Butadiene Acrylonitrile Modified)エポキシ樹脂は、上記エポキシ樹脂全体の40重量%以上、60重量%以下である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水分遮断用封止樹脂組成物。
【請求項7】
上記吸湿剤は、CaO、MgO、ゼオライト(Zeolite)、PLi、NaO、KOのうちの少なくとも1つを含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水分遮断用封止樹脂組成物。
【請求項8】
上記エポキシ樹脂と上記硬化剤の重量和に対する上記吸湿剤の重量比が25重量%以上、45重量%以下である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水分遮断用封止樹脂組成物。
【請求項9】
上記エポキシ樹脂内のエポキシ基に対する上記硬化剤内アミノ基の当量比は0.8〜1.2である、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の水分遮断用封止樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水分遮断用封止樹脂組成物を含む電気・電子封止材料。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水分遮断用封止樹脂組成物を含む電子機器。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水分遮断用封止樹脂組成物を含む電気・電子素子。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水分遮断用封止樹脂組成物を含む有機電界発光素子。
【請求項14】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水分遮断用封止樹脂組成物を含むフレキシブル電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水分遮断用封止樹脂組成物に関するものであり、更に具体的には2種類以上のエポキシ樹脂、2種類以上の硬化剤、及び吸湿剤を含む有機EL用水分遮断封止樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、電気・電子素子分野で湿気等の素子劣化の原因となる要因を遮断できる封止樹脂組成物に対する需要及び関心が高まっている。
【0003】
封止樹脂組成物は、有機発光素子(Organic Light Emitting Diode、OLED)や有機太陽電池(Organic Photovoltaic、OPV)のような有機素子が水分に脆弱な有機物で構成されているため、素子の寿命を延ばすために絶対に必要である。従来の封止樹脂組成物は、柔軟性が十分高くなく、フレキシブル装置には用いることができない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/125235号
【特許文献2】特開2015−15250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決するためのものであり、本発明の目的は、2種類以上のエポキシ樹脂、2種類以上の硬化剤、及び吸湿剤を含む封止樹脂組成物を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、水分の通過を十分防ぐ封止樹脂組成物を提供することである。
【0007】
本発明のもう1つの目的は、フレキシブル装置の封止に用いることができる封止樹脂組成物を提供することである。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、新規の封止樹脂組成物を電気・電子素子の薄膜封止材料として用いることにより、電気・電子素子の機能低下を防止して安定性を高めることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による封止樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、及び吸湿剤を含み、上記エポキシ樹脂は、多官能性ビスフェノール(Multifunctional Bisphenol)Aタイプエポキシ樹脂と、ブタジエンアクリロニトリル改質(Butadiene Acrylonitrile Modified)エポキシ樹脂を含み、上記硬化剤は二官能性硬化剤と多官能性硬化剤を含む。
【0010】
本発明による電気・電子素子封止材料は上述した封止樹脂組成物を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明による封止樹脂組成物は、水分透過率が非常に低く、柔軟度が高く、フレキシブル装置の封止に用いることができる。
【0012】
また、本発明による封止樹脂組成物は、フレキシブルOLED等の電気・電子素子において水分の浸透を防止して、電気・電子素子の機能低下を防止し、安定性を高めることができるため、封止材として適切に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態による封止樹脂組成物の製造順序図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による封止樹脂組成物の水分透過深さを測定するための試料の模式図である。
図3図3(a)及び3(b)は、本発明の一実施形態による封止樹脂組成物の時間による水分透過深さを測定した結果である。
図4図4(a)乃至4(d)は、製造後に144時間が経過した比較例1乃至4を撮影した写真である。
図5図5(a)乃至5(c)は、それぞれ実施例1の製作直後、26時間経過後及び90時間経過後を撮影した写真であり、図5(d)乃至5(f)は、それぞれ比較例3の製作直後、26時間経過後及び90時間経過後を撮影した写真である。
図6図6(a)と6(b)は、それぞれ実施例2の封止樹脂組成物の表面を製造した直後と100回の曲げ(bending)後に撮影した走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)写真であり、図6(c)と6(d)は、それぞれ実施例3の封止樹脂組成物の表面を製造した直後と100回の曲げ後に撮影した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本明細書に添付する図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による封止樹脂組成物の製造順序に関するものである。
【0016】
本実施形態による製造工程(100)は、エポキシ樹脂と硬化剤とに含まれ得る水分と気泡を除去する脱泡及び脱湿段階(110)、脱泡処理されたエポキシ樹脂、硬化剤、及び吸湿剤を混合する段階(120)、混合物を基板にコーティングする段階(130)及びコーティングされた混合物を硬化させる段階(140)を含む。
【0017】
エポキシ樹脂と硬化剤を脱泡及び脱湿する段階(110)では、液体状態のエポキシ樹脂と硬化剤がそれぞれ異なる容器内に含まれ、真空オーブンで所定時間以上加熱される。このような脱泡及び脱湿によって、樹脂内及び硬化剤内の水分と気泡が除去され得る。該脱泡及び脱湿は、好ましくは、30℃〜50℃の温度で30分〜1時間の間に行われ得るが、本発明はこれに限定されず、エポキシ樹脂の種類及び硬化剤の種類に応じて該温度と時間は変更され得る。
【0018】
<エポキシ樹脂>
本実施形態によるエポキシ樹脂は、所定の比率で混合された2種類以上の樹脂混合物であり、架橋密度が高くて水分浸透の遮断効果が高い樹脂と、硬化時の柔軟度が高い樹脂との混合物が含まれる。樹脂の架橋密度が高いほど該樹脂を用いた封止樹脂組成物の水分透過率は低くなるのに対し、柔軟度が低くなり得る。従って、本発明による封止樹脂組成物は、架橋密度が高い樹脂と柔軟度を高めることができる樹脂を混合して共に用いることにより、封止樹脂組成物の水分透過率も低くしながら柔軟度も全て向上させることができる。架橋密度が高い樹脂の例としては、多官能性ビスフェノール(Multifunctional Bisphenol)Aタイプエポキシ樹脂があり、柔軟度が高い樹脂の例としては、ブタジエンアクリロニトリル改質(Butadiene Acrylonitrile Modified)エポキシ樹脂があるが、本発明はこれに限定されない。
【0019】
多官能性ビスフェノール(Multifunctional Bisphenol)Aタイプエポキシ樹脂として、例えば、次のような化学式1を有するKR−177製品(Kukdo Chemical Co.,Ltd.)がある。
【化1】
【0020】
ブタジエンアクリロニトリル改質(Butadiene Acrylonitrile Modified)エポキシ樹脂として、例えば、多官能性エポキシと次の化学式2で表されるCTBN(Carboxyl Terminated Butadiene Acrylonitrile)との化合物であるKR−207製品(Kukdo Chemical Co.,Ltd.)がある。CTBN内のブタジエンセグメントによって硬化後に高い柔軟性を有することができる。
【化2】
【0021】
本発明の一実施形態による多官能性ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂とブタジエンアクリロニトリル改質エポキシ樹脂との重量比は0.2:0.8〜0.8:0.2であってもよく、好ましくは0.4:0.6〜0.6:0.4であってもよく、更に好ましくは0.5:0.5であってもよい。
【0022】
本発明の他の実施形態によるエポキシ樹脂は、グリシジルアミン(Glycidyl amine)樹脂、ノボラック(novolac)型樹脂、O−クレーゾル(O−Cresol)ノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラック(Phenol Novolac)エポキシ樹脂、DOW TACTIX 742、KDT−4400(Kukdo Chemical Co.,Ltd.)、EPONTM Resin 1031樹脂のうちの2個以上を含み得る。
【0023】
<硬化剤>
本発明の一実施形態による硬化剤は、所定の比率で混合された2種類以上の硬化剤の混合物であり、多官能性硬化剤と二官能性硬化剤との混合物が用いられ得る。多官能性硬化剤の例としては、次の化学式3のような構造を有するアミン系列のKH−8006製品(Kukdo Chemical Co.,Ltd.)があり、二官能性硬化剤の例としては、次の化学式4のような構造を有するアミド系列のG−640製品(Kukdo Chemical Co.,Ltd.)があるが、本発明はこれに限定されない。
【化3】
【化4】
【0024】
多官能性硬化剤のうちの1つであるKH−8006製品では、硬化時にエポキシ樹脂のエチレンオキシド環と結合するNH基を二官能性硬化剤であるG−640製品より多く含んでおり、架橋密度をより高めることができるので、水分透過率を下げることができる。二官能性硬化剤であるG−640製品は、他の膜との接着力を高めることができるようにする。従って、本発明による封止樹脂組成物では、二官能性硬化剤と多官能性硬化剤を混合していずれも用いることが好ましい。
【0025】
本発明の他の実施形態の硬化剤は、DETA(Diethylenetriamine)、TETA(Triethylenetetramine)、TEPA(Tetraethylenepentamine)、AEP(Aminoethylpiperazine)、DDM(Diaminodiphenylmethane)、DDS(Diaminodiphenylsulfone)、HMD(Hexamethylenediamine)、MPMD(methylpentamethylenediamine)、TMD(Trimethyl hexamethylene diamine)、DMAPA(Dimethylaminopropylamine)、DEAPA(Diethylaminopropylamine)、IPD(Isophoronediamine)、DACH(Diaminocyclohexane)、PACM(paraaminocyclohexyl methane)、MPD(Mefa−phenylene diamine)、MDA(Methylenedianiline)、DDS(Diaminodiphenylsulfone)、OTDA(Ortho Toluenediamine)のうちの2個以上を含み得る。
【0026】
エポキシ樹脂全体と硬化剤全体との当量比は1:0.3〜1:1.5であってもよく、好ましくは1:0.8〜1:1.2であってもよい。エポキシ樹脂全体に対する硬化剤全体の当量比が1を超えれば、硬化速度が速くなり得、当量比が高過ぎなければ、封止樹脂組成物内の硬化剤は、残らずに反応し得る。硬化剤全体においてアミン系列の硬化剤とアミド系列の硬化剤との重量比は0.1:0.9〜0.9:0.1であってもよく、好ましくは0.2:0.8〜0.8:0.2であってもよい。
【0027】
次に、水分と気泡が除去されたエポキシ樹脂及び硬化剤を吸湿剤と混合させる段階(120)は、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸湿剤を共に混合してもよく、これら材料のうちの一部をまず混合した後、残った材料を追加で混合してもよい。例えば、エポキシ樹脂と吸湿剤を20分〜40分間、高粘度用ミキサ(例えば、日本Thinky社のミキサ)で混合した後に、20分〜40分間、気泡除去のためのデフォーミング(defoaming)処理をし、硬化剤を追加して、再び、混合とデフォーミング処理をすることができる。
【0028】
本発明による吸湿剤としては、CaO、MgO、ゼオライト(Zeolite)、P、LiO、NaO、KO等が用いられ得るが、これに限定されるわけではない。吸湿剤の量はエポキシ樹脂と硬化剤の重量和に対して25〜45重量%であってもよい。吸湿剤の量が該範囲内であれば、水分浸透防止効果が低くなりにくく、他の層との接着力が低くなりにくい。
【0029】
次のコーティング段階(130)では、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸湿剤の混合物を基板にコーティングする。コーディング方法は、スピンコーティング、バー(bar)コーティング、ドロップ(drop)コーティング又はディップ(dip)コーティング方法を用いることができるが、本発明はこれに限定されるわけではない。混合物がコーティングされる基板の材質は、プラスチック、ガラス、石英等であってもよく、基板には混合物のコーティング前に金属膜及び/又は絶縁体膜が予め形成されていてもよい。混合物のコーティング後には、その上部を他の基板、例えば、ガラス基板で覆ってもよい。
【0030】
その後、硬化段階(140)では、基板上にコーティングされたエポキシ樹脂、硬化剤及び吸湿剤の混合物を硬化させて封止樹脂組成物を形成する。本発明による硬化段階では、好ましくは熱硬化が用いられ得るが、光硬化等の他の方法が用いられることもでき、本発明は特定の硬化方式に限定されない。本発明による熱硬化段階では、基板にコーティングされたエポキシ樹脂、硬化剤及び吸湿剤の混合物について、好ましくは40℃〜150℃、より好ましくは80℃〜100℃の温度で硬化を行うことができ、硬化時間は1時間〜24時間とすることができる。硬化条件は、材料の種類等に応じて変わり得る。また、熱硬化は、異なる温度と時間で種々の段階にわたって行われ得るが、初期段階で低温で硬化する場合には、初期段階で高温で硬化する場合に比べて気泡発生を減らして不良発生率を低下させ得る。
【0031】
このような本発明の一実施形態によって製造された封止樹脂組成物では、エポキシ樹脂内に架橋密度が高い材料だけでなく、柔軟度を高めることができる材料が含まれており、硬化剤内に他の膜との接着性を向上させることができる材料が含まれており、水分浸透を防止しながらも、フレキシブルで、更に他の膜との接着性が高い封止樹脂組成物が提供され得る。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態による封止樹脂組成物の水分浸透防止効果を測定するための試料(200)の断面である。試料(200)は、下部基板(210)と上部基板(240)との間に、封止樹脂組成物(220)が所定の厚さのカルシウム(Ca)層(230)を覆うように形成される。空気中の水分が試料(200)内の封止樹脂組成物(220)を浸透すれば、カルシウム層(230)が水分と反応してカルシウム層(230)の色が変わり、このような色相変化から試料に対する水分浸透深さを測定して封止樹脂組成物(220)の水分浸透防止の程度を測定することができる。
【実施例】
【0033】
以下では、実施例及び比較例を通じて本発明を更に具体的に説明する。しかし、次の実施例及び比較例は、本発明に対する理解を促進するために例示の目的としてのみ提供されたものであるだけで、本発明の範疇及び範囲がここに限定されないことを明らかにしておく。次の実施例と比較例の試料はいずれも70℃〜100℃の温度で1時間と120℃の温度で1時間の2段階の熱硬化過程を経た。実施例と比較例では、吸湿剤としてシグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich,Inc.)のCaOナノパウダ製品を用いた。実施例1乃至3と比較例1乃至8は、水分浸透防止効果の測定のためのものであり、図2に示された構造を有するが、一辺が3cmである正方形のガラス基板上に真空の熱蒸着で形成された厚さ250nm、一辺2cmである正方形のCa層を封止樹脂組成物でコーティングした後、その上に一辺が3cmである正方形のガラス基板で覆って製作されたものである。柔軟度の測定のための実施例4乃至8は、エポキシ樹脂、硬化剤及び吸湿剤の混合物を厚さ150μmであるポリエチレンナフタレート(poly(ethylene naphthalate)(PEN))フィルム上にコーティング後、硬化して作られる。実施例及び比較例の封止樹脂組成物の厚さは80μm〜150μmである。
【0034】
<実施例>
実施例1は、KR−177製品及びKR−207製品を、それぞれ、0.5g及び0.5gで混合したエポキシ樹脂を用いて、該エポキシ樹脂に対する硬化剤の当量比は1:1とし、硬化剤であるKH−8006製品とG−640製品の重量比を0.4:0.6とし、エポキシ樹脂と硬化剤の重量和に対して30重量%の吸湿剤を含む封止樹脂組成物を含む試料である。
【0035】
実施例2は、硬化剤であるKH−8006製品とG−640製品の重量比を0.6:0.4とすること以外は、実施例1と同一の方法で製造された試料である。
【0036】
実施例3は、硬化剤であるKH−8006製品とG−640製品の重量比を0.8:0.2とすること以外は、実施例1と同一の方法で製造された試料である。
【0037】
実施例1乃至3は、水分浸透遮断特性を測定するための試料であり、2枚のガラス基板の間に位置する。
【0038】
実施例4は、KR−177製品及びKR−207製品を、それぞれ、0.2g及び0.8gで混合したエポキシ樹脂を用いて、該エポキシ樹脂に対する硬化剤の当量比は1:1とし、硬化剤であるKH−8006製品とG−640製品の重量比を0.8:0.2とし、エポキシ樹脂と硬化剤の重量和に対して30重量%の吸湿剤を含む封止樹脂組成物を含む試料である。
【0039】
実施例5は、実施例4のエポキシ樹脂に代えて、KR−177製品及びKR−207製品を、それぞれ、0.4g及び0.6gで混合したエポキシ樹脂を用いること以外は、実施例4と同一の方法で製造された試料である。
【0040】
実施例6は、実施例4のエポキシ樹脂に代えて、KR−177製品及びKR−207製品を、それぞれ、0.5g及び0.5gで混合したエポキシ樹脂を用いること以外は、実施例4と同一の方法で製造された試料である。
【0041】
実施例7は、実施例4のエポキシ樹脂に代えて、KR−177製品及びKR−207製品をそれぞれ0.6g及び0.4gで混合したエポキシ樹脂を用いること以外は、実施例4と同一の方法で製造された試料である。
【0042】
実施例8は、実施例4のエポキシ樹脂に代えて、KR−177製品及びKR−207製品をそれぞれ0.8g及び0.2gで混合したエポキシ樹脂を用いること以外は、実施例4と同一の方法で製造された試料である。
【0043】
実施例4乃至8は、封止材の柔軟特性を測定するための試料であり、プラスチックフィルム上にコーティングした。
【0044】
<比較例>
比較例1は、KR−177製品からなるエポキシ樹脂1gを用いて、該エポキシ樹脂に対する硬化剤の当量比は1:1とし、硬化剤であるKH−8006製品とG−640製品の重量比を0.2:0.8とし、エポキシ樹脂と硬化剤の重量和に対して50重量%の吸湿剤を含む封止樹脂組成物を含む試料である。
【0045】
比較例2は、硬化剤であるKH−8006製品とG−640製品の重量比を0.3:0.7とすること以外は、比較例1と同一の方法で製造された試料である。
【0046】
比較例3は、硬化剤であるKH−8006製品とG−640製品の重量比を0.4:0.6とすること以外は、比較例1と同一の方法で製造された試料である。
【0047】
比較例4は、硬化剤であるKH−8006製品とG−640製品の重量比を0.5:0.5とすること以外は、比較例1と同一の方法で製造された試料である。
【0048】
比較例5は、KR−177製品からなるエポキシ樹脂1gを用いて、該エポキシ樹脂に対する硬化剤の当量は1:1とし、硬化剤としてKH−8006製品を用いて、エポキシ樹脂と硬化剤の重量和に対して10重量%の吸湿剤を含む封止樹脂組成物を含む試料である。
【0049】
比較例6は、吸湿剤の量がエポキシ樹脂と硬化剤の重量和に対して30重量%であること以外は、比較例5と同一の方法で製造された試料である。
【0050】
比較例7は、吸湿剤の量がエポキシ樹脂と硬化剤の重量和に対して50重量%であること以外は、比較例5と同一の方法で製造された試料である。
【0051】
比較例8は、吸湿剤の量がエポキシ樹脂と硬化剤の重量和に対して70重量%であること以外は、比較例5と同一の方法で製造された試料である。
【0052】
<実施例と比較例の対比>
本発明の実施例によって製造された封止組成物の効果を測定する方法とその測定結果を次に具体的に説明する。
【0053】
<試験例1:水分浸透防止の評価>
以下の結果は、実施例及び比較例の試料を85℃の温度、85%相対湿度の雰囲気下において、時間による試料内のカルシウム層のサイズ変化及び吸湿剤の色相変化を観察して水分浸透の防止の程度を測定したものである。
【0054】
図3(a)は、実施例1乃至3で吸湿剤の時間による色相変化を観察して測定した水分浸透長さの変化に関するグラフである。該グラフから分かるように、製造した後、144時間経過後の実施例1乃至3において、それぞれ、試料側面から1.7mm、1.2mm及び0.7mmの水分浸透が測定され、これから、硬化剤内において多官能性硬化剤の比率が高いほど水分浸透防止機能に優れることが確認される。特に、図3(b)に示された通り、実施例3の場合には、1000時間経過後にも水分が3.3mmのみ浸透して非常に優れた特性を示した。
【0055】
図4は、85℃の温度、85%相対湿度の雰囲気下で144時間経過時の比較例1乃至4を撮影した写真である。比較例1乃至4のうち、多官能性硬化剤の比率が最も高い比較例4で吸湿剤の色相変化が最も小さく、水分透過率が最も低いが、接触力に問題があり得るため、他の膜との積層における使用が制限的であり得る。
【0056】
図5は、実施例1と比較例3の時間経過によるカルシウム層の変化を撮影した写真であり、図5(a)乃至5(c)は、それぞれ実施例1の試料製作直後、26時間経過後及び90時間経過後を撮影したものであり、図5(d)乃至5(f)は、それぞれ比較例3の試料製作直後、26時間経過後及び90時間経過後を撮影したものである。試料製作直後には、実施例1と比較例3のカルシウム層及び吸湿剤のサイズ及び色相の変化はないが、90時間経過後には、実施例1がカルシウム層の変化はなく、吸湿剤の色相変化が更に小さく、比較例3に比べて吸湿水分浸透防止効果に更に優れることが確認される。
【0057】
次に、比較例5乃至8は、試料内の吸湿剤であるCaOの重量比を異ならせたものであり、試料製作から100時間後に測定した水分浸透長さから、CaOの量が多いほど水分浸透防止効果が大きくなることを表1から確認することができる。しかし、CaOの量があまりにも多く含まれた試料の場合、接着力が落ちて基板が剥離する問題が生じ得る。
【0058】
【表1】
【0059】
従って、水分浸透防止効果及び接着力等をいずれも考慮すると、封止樹脂組成物内のCaOはエポキシ樹脂と硬化剤の重量和に対する重量比が25重量%以上、45重量%以下であることが好ましく、封止樹脂組成物内のエポキシ樹脂及び硬化剤の数や種類が変わってもCaOの量の好ましい範囲は実質的に同一である。
【0060】
従って、本発明の一実施形態による封止樹脂組成物内のCaOは、エポキシ樹脂と硬化剤の重量和に対する重量比が10重量%以上50重量%以下であることが好ましい。
【0061】
<試験例2:試料の柔軟度の評価>
試料の柔軟度は、柔軟持続テスタ機(Flexural Endurance Taster)(IPC社のCK−700FET製品)を用いて、曲げる前の長さ2cm、曲げた後の長さ1cmの条件で試料の曲率半径を測定して評価する。
【0062】
表2は、実施例4乃至8の曲率半径を測定した結果である。該結果から、エポキシ樹脂内でKR−207製品の比率が大きくなるほど曲率の半径が小さくなり、柔軟度が向上することが分かる。
【0063】
【表2】
【0064】
図6は、実施例2又は3の封止樹脂組成物の表面を撮影した走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)写真であり、図6(a)及び(b)は、それぞれ、実施例2の試料を100回曲げ(bending)の前及び後に撮影した走査型電子顕微鏡写真であり、図6(c)及び(d)は、それぞれ、実施例3の試料を100回曲げの前及び後に撮影した走査型電子顕微鏡写真である。これらの写真から、実施例2及び3は多数の曲げにもかかわらず、膜にクラック(crack)等の損傷がほぼ発生しないことが確認される。
【符号の説明】
【0065】
100:試料製造工程
200:試料
210、240:基板
220:封止樹脂組成物
230:Ca層
図1
図2
図3
図4
図5
図6