特許第6935281号(P6935281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6935281吸着剤組成物及びそれを用いた有害物質の吸着方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6935281
(24)【登録日】2021年8月27日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】吸着剤組成物及びそれを用いた有害物質の吸着方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20210906BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20210906BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20210906BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20210906BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   B01J20/26 A
   B01J20/22 A
   B01J20/22 B
   B01J20/26 B
   A61L9/01 H
   A61L9/014
   C02F1/28 A
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-181468(P2017-181468)
(22)【出願日】2017年9月21日
(65)【公開番号】特開2018-51555(P2018-51555A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2020年4月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-183697(P2016-183697)
(32)【優先日】2016年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 尚史
(72)【発明者】
【氏名】横山 祐一郎
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101186604(CN,A)
【文献】 特開昭56−127385(JP,A)
【文献】 特開2015−166080(JP,A)
【文献】 特開平04−224568(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/037861(WO,A1)
【文献】 特開2016−175898(JP,A)
【文献】 有機合成化学,Vol.48,No.12,1990年,P.1106-1114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 − 20/34
A61L 9/00 − 9/22
C02F 1/28
B01D 53/02 − 53/12
B01D 53/38 − 53/58
C07D 323/00 − 323/06
C07D 325/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A)を含む吸着剤組成物であって、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の吸着に用いられる吸着剤組成物
【化1】

[一般式(1)において、Rは炭素数2〜21の2価の炭化水素基である。Rの水素原子は少なくとも1つがハロゲノ基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されていてもよい。Rは炭素数2〜8の2価の炭化水素基である。mは1〜3の整数である。nは1〜500の整数であり、m個あるRは同じであっても異なっていてもよく、m×n個あるRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
が炭素数3〜16の直鎖又は分岐アルキレン基であり、Rが炭素数2〜4のアルキレン基である請求項1に記載の吸着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸着剤組成物と被処理体とを接触させる工程を有する有害物質の吸着方法であって、有害物質がアンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である吸着方法
【請求項4】
被処理体が水又は気体である請求項3に記載の有害物質の吸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸着剤組成物及びそれを用いた有害物質の吸着方法に関する。さらに詳しくは環状ポリエーテルエステルを含む吸着剤組成物、及びそれを用いた有害物質の吸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内又は屋外大気雰囲気中に拡散した悪臭物質等の環境に有害な化合物は、吸着剤に吸着する方法が行われており、除去対象となる化合物を効率的に吸着する吸着剤及び吸着方法が検討されている。
例えば、シクロデキストリンはその環状構造の内部に、悪臭物質等の分子を包接できることから、室内大気雰囲気中の吸着対象化合物を効率的に吸着することができる浄化方法として、被処理で満たされた室内大気雰囲気をシクロデキストリン水溶液と接触させ、有害物質を吸着する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
シクロデキストリンを用いた有害物質の吸着においては、その吸着効率を高めるための改良検討が行われており、特に排水中のフェノール化合物を良好に除去可能な化合物としてとして、シクロデキストリンに特定の重合官能基を結合したシクロデキストリン誘導体及びその重合体等が知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献2に記載のシクロデキストリン誘導体及びその重合体は、水に含まれるフェノール化合物は良好に吸着できるものの、悪臭物質であるアミン等の吸着効率が十分でないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−46466号公報
【0005】
【特許文献2】特開2016−069652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水中及び屋内若しくは屋外大気雰囲気中に揮発した悪臭物質を良好に吸着可能な吸着剤組成物及びそれを用いた有害物質の吸着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の目的を達成すべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、一般式(1)で示される環状ポリエーテルエステルを含む吸着剤組成物であって、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の吸着に用いられる吸着剤組成物、及びそれを用いた有害物質の吸着方法であって、有害物質がアンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン及びトリメチルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である吸着方法である。
【0008】
【化1】
[一般式(1)において、R1は炭素数2〜21の2価の炭化水素基である。R1の水素原子は少なくとも1つがハロゲノ基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されていてもよい。R2は炭素数2〜8の2価の炭化水素基である。mは1〜3の整数である。nは1〜500の整数であり、m個あるR1は同じであっても異なっていてもよく、m×n個あるR2は同じであっても異なっていてもよい。]
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸着剤組成物は、水中に溶解した悪臭物質などの有害物質及び屋内若しくは屋外大気雰囲気中に揮発した悪臭物質などの有害物質を良好に吸着し水中及び屋内若しくは屋外大気雰囲気中から吸着することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の吸着剤組成物は、上記一般式(1)で示される環状ポリエーテルエステル(A)を含む。
【0011】
上記一般式(1)において、R1は水素原子の少なくとも1つがハロゲノ基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されていてもよい炭素数2〜21の炭化水素基である。
【0012】
炭素数2〜21の炭化水素基としては、炭素数2〜21のアルキレン基、炭素数2〜21のアルケニレン基、炭素数6〜21のアリーレン基及び炭素数7〜21のアラルキレン基等が挙げられる。
【0013】
炭素数2〜21のアルキレン基としては、炭素数2〜21の直鎖アルキレン基(エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基及びn−ヘンイコサニレン基)及び炭素数3〜21の分岐アルキレン基(1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルトリメチレン基、1−n−ブチルトリメチレン基、1−n−ヘキシルトリメチレン基、1−n−プロピルトリメチレン基、1−n−ヘプチルトリメチレン基、1−n−オクチルトリメチレン基、1−n−ヘプチルテトラメチレン基及び1−n−オクチルエチレン基等)及び炭素数4〜21のシクロアルキレン基(シクロブチレン基、シクロペンチレン基、2−メチルシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、1,3−ジメチルシクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、1−エチルシクロペンチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基、シクロトリデレン基、シクロテトラデシレン基、シクロペンタデシレン基、シクロヘキサデシレン基、シクロヘプタデシレン基、シクロオクタデシレン基、シクロノナデシレン基、シクロエイコシレン基、ノルボルニレン基、ジシクロペンチレン基、イソプロピリデンジシクロヘキシレン基及びシクロヘキサンジメチレン基等)等が挙げられる。
【0014】
炭素数2〜21のアルケニレン基としては、炭素数2〜21の直鎖アルケニレン基(エテニレン基、プロペニレン基及びヘンイコセニレン基等)及び炭素数3〜21の分岐アルケニレン基(1−エチルエテニレン基、1,2−ジメチルエテニレン基、1−ブチルエテニレン基、1−ヘキシルエテニレン基及び1−オクチルエテニレン基等)等が挙げられる。
【0015】
炭素数6〜21のアリーレン基としては、o−、p−又はm−フェニレン基、2,4−ナフチレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、フルオレニレン基、ピレニレン基及び基等が挙げられる。
【0016】
炭素数7〜21のアラルキレン基としては、フェニルメチレン基、ジフェニルメチン基、1−フェニルエチレン基、o−フェニレンエチル基及びナフチルメチレン基等が挙げられる。
【0017】
これらの基の有する水素原子の少なくとも1つがハロゲノ基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換された基としては、1−ブロモ−トリメチレン基、1−アセチル−トリメチレン基、1−メトキシ−トリメチレン基及び1−フェノキシ−トリメチレン基等が挙げられる。
【0018】
これらのうち、R1としては、好ましくは炭素数3〜16の直鎖又は分岐アルキレン基であり、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、テトラデカメチレン基、メチルエチレン基、1−n−プロピルトリメチレン基、1−n−ヘプチルトリメチレン基、1−n−オクチルトリメチレン基、1−n−ヘプチルテトラメチレン基、1−n−ヘキシルトリメチレン基、1−n−ヘキシルテトラメチレン基、1−n−ウンデシルトリメチレン基及び1−n−ウンデシルテトラメチレン基がさらに好ましい。
【0019】
一般式(1)において、R2は炭素数2〜8の2価の炭化水素基である。炭素数2〜8の2価の炭化水素基のうち好ましいものとしては、フェニルエチレン基、炭素数2〜4のアルキレン基が挙げられ、さらに好ましくは炭素数2〜4の直鎖アルキレン基(エチレン基、プロピレン基及びブチレン基等)及び炭素数3又は4の分岐アルキレン基(メチルエチレン基、エチルエチレン基、メチルプロピレン基及び2−メチルプロピレン等)が挙げられ、特に好ましくは炭素数2〜4の直鎖アルキレン基及び炭素数3〜4の分岐アルキレン基であり、最も好ましくはエチレン基及びメチルエチレン基である。
【0020】
上記一般式(1)において、mは[R1CO(OR2nO]で表される単位の繰り返し数を意味し、nは(OR2)で表されるオキシアルキレン基の付加モル数を意味する。
mは1〜3の整数であり、好ましくは1である。
nは1〜500の整数であり、環状ポリエーテルエステル(A)のオキシアルキレン基の付加モル数(n)は、吸着対象に応じて調整することができるが、吸着効率等の観点から、好ましくは1〜500、更に好ましくは5〜100、特に好ましくは5〜20の整数である。
なお、mが2又は3である場合、m個あるR1は同じであっても異なっていてもよく、同じであることが好ましい。また、mが2若しくは3、及び/又はnが2以上の整数である場合、m×n個あるR2は同じであっても異なっていてもよく、同じであることが好ましい。
【0021】
m×n個あるR2の組成は、Polym. Chem., 2014, 5, 6905.に記載のマトリックス支援レーザー脱離イオン化法による飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MSともいう)により測定分析することができる。
【0022】
本発明の吸着剤組成物に含まれる環状ポリエーテルエステル(A)としては、mが1〜3であれば、一般式(1)においてnで表されるオキシアルキレン基の付加モル数が特定の値である環状ポリエーテルエステル(A)を用いてもよく、nの値が異なる複数の環状ポリエーテルエステル(A)を併用してもよい。
一般式(1)においてnで表されるオキシアルキレン基の付加モル数の値(n)が異なる複数の環状ポリエーテルエステル(A)を併用する場合、使用する環状ポリエーテルエステル(A)のオキシアルキレン基の付加モル数の値と比率は、吸着対象の種類等に応じて調整することができる。
【0023】
上記一般式(1)中のmの値とnの値の調整は、後述のアルコキシル化反応において用いる活性水素含有基を有さないラクトンと炭素数2〜8のアルキレンオキサイドとの比率の調整及びアルキレンオキサイドの付加方法を変えること等で行うことができる。
なお、後述の合成方法等で得られる環状ポリエーテルエステルは、異なるmと異なるnを有する環状ポリエーテルエステルの混合物であるが、混合物中に含まれる特定のnを有する環状ポリエーテルエステル(A)の含有量は、アルキレンオキサイドの付加方法を変えることで調整することができ、例えば活性水素含有基を有さないラクトンに反応するアルキレンオキサイドを段階的に反応すると特定の値のnを有する環状ポリエーテルエステル(A)の含有量を増やすことができる。
なお、環状ポリエーテルエステル(A)のmの値、及びnの値は、Polym. Chem., 2014,5, 6905.に記載のMALDI−TOF MSにより分析し、確認することが出来る。
【0024】
本発明の吸着剤組成物に含まれる環状ポリエーテルエステル(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記する)は、本発明の吸着剤組成物が対象とする悪臭物質等の有害物質の種類に応じて調整することができるが、吸着性等の観点から200〜30000が好ましく、更に好ましくは200〜10000、特に好ましくは200〜6000である。環状ポリエーテルエステル(A)のMnはオキシアルキレン基の付加モル数を調整すること等によって好ましい範囲にすることができる。
【0025】
ここで本発明の吸着対象である有害物質としては、車両の排気ガス、たばこ臭、ペット臭、さらには建築材から放出される化学物質過敏症の原因物質とされるホルムアルデヒドなどが挙げられ、これらの物質には臭気によって人が不快と感じる匂いを放つ悪臭物質が含まれる。
【0026】
悪臭物質の具体例は、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等の物質であり、これをそのまま大気中に放出すれば、人体に悪影響を及ぼすおそれがある物質をいう。
【0027】
環状ポリエーテルエステル(A)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記)を用いて以下の条件で測定することができる。
・装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
・カラム:「Guardcolumn Super H−L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000を各1本連結したもの」[いずれも東ソー(株)製]
・試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
・溶液注入量:10μL
・流量:0.6mL/分
・測定温度:40℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリエチレングリコール
【0028】
本発明の吸着剤組成物に用いる環状ポリエーテルエステル(A)として、好ましいものとしては、R1がテトラデカメチレン基であり、R2がエチレン基及びプロピレン基であり、mが1〜3、nが1〜500である環状ポリエーテルエステルが挙げられる。
【0029】
本発明の吸着剤組成物に用いる環状ポリエーテルエステル(A)は、活性水素含有基を有さないラクトンと炭素数2〜8のアルキレンオキサイドとを用いて、前記の活性水素含有基を有さないラクトンのオキシカルボニル基が有するカルボニルと酸素原子との間にオキシアルキレン基を挿入する反応(アルコキシル化反応ともいう)を行うことで得ることができる。前記のアルコキシル化反応は、活性水素含有基を有さないラクトンと炭素数2〜8のアルキレンオキサイドとを、アルキレンオキサイドの開環付加反応及びアルコキシル化反応等に用いられる触媒をアルコキシル化反応の触媒として用いて行ってもよい。
なお、前記活性水素含有基はアルキレンオキサイドが開環付加し得る官能基を意味し、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基及びアミノ基等が挙げられる。
【0030】
前記のアルコキシル化反応では、アルコキシル化反応で生成した一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A)に対して、さらに他の一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステルが挿入付加する副反応がおこる。
そのため、前記のアルコキシル化反応で得られた反応生成物には、一般式(1)においてm=1である環状ポリエーテルエステル(A)の他に、一般式(1)において[R1CO(OR2nO]で表される単位を一分子中に2個有する環状ポリエーテルエステル(すなわちm=2)及び/又は3個有する環状ポリエーテルエステル(すなわちm=3)を含み、反応生成物は、一般式(1)において[R1CO(OR2nO]で表される単位を1〜3個有する環状ポリエーテルエステルを主成分とするポリエーテル組成物となる。
なお、反応生成物に含まれる環状ポリエーテルの組成は、Polym. Chem., 2014,5,6905.に記載のMALDI−TOF MSにより分析し、確認することが出来る。
【0031】
前記のアルコキシル化反応の反応生成物[すなわち、環状ポリエーテルエステル(A)を含む混合物]を、さらにゲル透過法及びシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の方法により分画、精製を行うことで特定のmとnを有する環状ポリエーテルエステル(A)を得ることができる。なお、本発明の吸着剤組成物に含まれる環状ポリエーテルエステル(A)としては、前記のアルコキシル化反応の反応生成物をそのまま用いても、反応生成物を分画、精製して得られた環状ポリエーテルエステル(A)を用いてもよい。
【0032】
環状ポリエーテルエステル(A)を得るために用いる活性水素含有基を有さないラクトンとしては、1つの水酸基と1つのカルボキシル基とを有し、前記の1つの水酸基と1つのカルボキシル基とを除く他の活性水素含有基を有していない炭素数4〜22のモノヒドロキシカルボン酸について水酸基とカルボキシル基とを分子内脱水することで得られる環状エステルを用いることができる。分子内脱水してラクトンを合成する方法としては、公知の方法で加熱脱水する方法、J.S.Nimitz,R.H.Wollemberg,Terahedron Lett.1978,19,3523に記載方法、及びリパーゼ等の酵素を用いる方法の公知の合成方法を用いることができる。
【0033】
1つの水酸基と1つのカルボキシル基とを除く他の活性水素含有基を有していない炭素数4〜22のモノヒドロキシカルボン酸としては、炭素数4〜22の直鎖ヒドロキシカルボン酸(3−ヒドロキシプロパン酸、4−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシペンタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、15−ヒドロキシペンタデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸及び4−ヒドロキシ−2−ブテン酸等)及び炭素数3〜22の分岐ヒドロキシカルボン酸(3−ヒドロキシブタン酸、5−ヒドロキシトリデカン酸、2−メチレン−4−ヒドロキシ酪酸、4−フェニル−4−ヒドロキシ酪酸、2,2−ジメチル−4−ヒドロキシ酪酸、4−ヘキシル−4−ヒドロキシ酪酸及び4−ヒドロキシ−2−メチル−2−ブテン酸等)等が挙げられる。
【0034】
活性水素含有基を有さないラクトンとしては、前記の炭素数4〜22のヒドロキシカルボン酸の炭素原子に結合した水素原子のうち、少なくとも1つの水素原子がハロゲノ基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されたヒドロキシカルボン酸が分子内脱水した構造を有するラクトンも用いることもできる。
前記の炭素数4〜22のモノヒドロキシカルボン酸のうち、炭素原子に結合した水素原子の少なくとも1つがハロゲノ基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−ブロモ−4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられ、アセチル基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−アセチル−4−ヒドロキシブタン酸等が挙げられ、アルコキシ基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−メトキシ−4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられ、フェノキシ基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−フェニル−4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。
【0035】
活性水素含有基を有さないラクトンとして、好ましいものとしては、β−ラクトン(β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン等)、γ−ラクトン(γ−ブチロラクトン等)、δ−ラクトン(δ−バレロラクトン等)、ε−ラクトン(ε−カプロラクトン等)、長鎖アルキル基を有するラクトン(γ−エナントラクトン、γ−ウンデカノラクトン、γ−ドデカラクトン及びδ-ドデカノラクトン等)、大環状ラクトン(15−ペンタデカノラクトン)及び芳香族ラクトン(3,4−ジヒドロクマリン)等が挙げられる。
これらのラクトンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
アルコキシル化反応に用いる炭素数2〜8のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する場合がある)としては、エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、オキセタン、1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレンオキサイド及びスチレンオキサイド等が挙げられ、炭素数2〜3のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド及びオキセタン)が好ましく、エチレンオキサイド及び1,2−プロピレンオキサイドがさらに好ましい。
アルキレンオキサイドは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その結合形式はランダムであっても、ブロックであっても、その両方であってもよい。
アルキレンオキサイドとして2種以上を併用する場合、得られる環状ポリエーテルエステル(A)は、一般式(1)においてn個あるR2として、使用したアルキレンオキサイドの種類に対応した異なる種類のR2を有する環状ポリエーテルエステルである。
【0037】
アルコキシル化反応は、触媒の存在下で行うことが好ましい。
反応工程で用いる触媒としては、金属(ホウ素、錫、ニッケル、亜鉛及びアルミニウム等)のハロゲン化物、無機酸(硫酸及びリン酸等)、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等)の水酸化物、アミン化合物(ジエチルアミン及びトリエチルアミン等)、ホスファゼン、複合金属シアン化物錯体触媒(特開2005−53952号公報及び特開2016−6203号公報等に記載された亜鉛ヘキサシアノコバルテート等の2種類の金属を分子内に含有する金属錯体触媒等)、特開2000−354763号公報に記載された酸化物複合体、AlとMgとの複合酸化物(B1)及び層状複水酸化物(B2)並びにそれらの焼成物(B3)等を用いて行うことができる。
【0038】
本発明の製造方法で用いる層状複水酸化物とは、2価の金属(Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co及びCu等)と3価の金属(Al、Fe及びMn等)の水酸化物とが複合して積層構造を形成した無機の層状化合物を意味し、一般式が[M2+1-h3+h(OH)2][(Wi-h/i・jH2O][ここで、M2+は2価の金属、M3+は3価の金属、Wi-はi価の陰イオン(HCO3-、CO32-、PO43-、SO42-、Cl-、NO2-及びNO3-等)、h、i及びjはそれぞれ独立の正数である。]で表さる化合物であり、ハイドロタルサイト、モツコレアイト、マナセイト、スティッヒタイト、パイロアウライト、タコバイト、イヤードライト及びメイキセネライト等が含まれる。これらの層状複水酸化物は、粘土鉱物として知られており、天然に産する鉱物に含まれたものであっても、合成によって得られたものであってもよい。
【0039】
触媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの内、反応効率の観点から好ましいのは、AlとMgとの複合酸化物(B1)及びAlとMgを有するハイドロタルサイト(B2−1)並びにそれらの焼成物(B3)である。
【0040】
本発明において用いられる複合酸化物(B1)は、AlとMgを有する酸化物であれば、特に限定されないが、好ましい複合酸化物としては下記一般式(2)又は(3)で示される化合物等が挙げられる。
〔aMgO・Al23 ・bH2O〕 (2)
〔MgsAltu〕 (3)
一般式(2)において、a及びbは、それぞれ独立の正数である。一般式(3)において、s、t及びuは、それぞれ独立の正数である。反応性の観点から、s/tは0.1以上5未満であることが好ましい。
複合酸化物(B1)としては、2.5MgO・Al23 ・bH2O及びMg0.7Al0.31.15等が挙げられ、それぞれキョーワード300[協和化学工業(株)製]及びキョーワード2000[協和化学工業(株)製]等として市場から入手することができる。
【0041】
本発明に用いるハイドロタルサイト(B2−1)としては、下記一般式(4)で示される化合物等が挙げられる。
〔Mg1-cAlc(OH)2c+ 〔CO3c/2 ・dH2 O〕c- (4)
【0042】
また、一般式(4)において、cは0<c≦0.33を満たす数であり、dは0<d≦1.0を満たす数である。
【0043】
ハイドロタルサイト(B2−1)としては、Mg6 Al2 (OH)16 CO3 ・4H2 O[c = 0.25]及びMg4.5 Al2 (OH)13 CO3 ・3.5H2 O[C=0.31]等が挙げられ、それぞれキョーワード500[協和化学工業(株)製]及びキョーワード1000[協和化学工業(株)製]等として市場から入手することができる。
【0044】
本発明に用いるハイドロタルサイト(B2−1)としては、上記の化合物以外にも、西ドイツ特許公告第1592126号及びヨーロッパ特許公開第0207811号等に記載の既知の鉱物も使用することができる。
【0045】
(B1)及び(B2−1)は、それぞれ1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの内、反応性の観点から好ましいのは複合酸化物(B1)であり、更に好ましいのは2.5MgO・Al23 ・nH2O(nは正数)及びMg0.7Al0.31.15である。
【0046】
AlとMgとの複合酸化物(B1)の焼成物又はAlとMgを有するハイドロタルサイト(B2−1)の焼成物である(B3)は、AlとMgとの複合酸化物(B1)又はハイドロタルサイト(B2−1)を空気雰囲気下、好ましくは窒素気流下で、好ましくは400〜1500℃(更に好ましくは600〜1000℃)にて1〜4時間加熱処理する方法等で得ることができる。
【0047】
アルコキシル化反応工程において、触媒の含有量は特に限定されないが、反応速度及び濾過効率の観点から、ラクトンとアルキレンオキサイドとの合計重量に対して0.01〜10重量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜1.0重量%である。
【0048】
また、ラクトンのアルコキシル化反応工程において、ハンドリングの観点から、ラクトン、アルキレンオキサイド及び触媒以外に、溶剤を添加してもよい。
溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジグリム、トリグリム、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、N−メチルピロリドン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジクロロエタン及びクロロホルム等が挙げられる。溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの内、ラクトン及びアルキレンオキサイド等との混和性の観点から、トルエン及びキシレンが好ましい。
アルコキシル化反応に用いる溶剤の重量は、反応速度等の観点から、環状化合物と環状エーテルと触媒との合計重量に対して、0〜99重量%が好ましく、更に好ましくは0〜90重量%である。
【0049】
アルコキシル化反応においては、ラクトン、アルキレンオキサイド並びに必要に応じて、触媒及び溶媒の混合物の温度が90〜250℃となることが好ましく、更に好ましくは100〜190℃である。
また、上記の温度とする時間は、1〜200時間が好ましい。
【0050】
アルコキシル化反応は、ラクトン、アルキレンオキサイド並びに必要に応じて、触媒及び溶媒を反応装置へ入れ不活性ガス(窒素及びアルゴン等)により系内を置換・密閉し、前記の反応温度と反応時間とで撹拌混合することで行うことができる。
反応装置としては撹拌装置及び加熱装置の付属した混合容器(スターラー付きフラスコ及びオートクレーブ等)等の公知の反応装置を用いることができる。
【0051】
本発明の製造方法は、アルコキシル化反応工程で得られた環状ポリエーテルエステル組成物を、更に濾過操作(特開2011−213864号公報に記載の方法等)、ゲル透過法及びシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の方法により精製する工程(以下精製工程と略記する)を含んでいてもよい。
上記の精製工程により、特定の構造を有する環状ポリエステル組成物を抽出することができる。
【0052】
本発明の環状ポリエーテルエステル組成物の製造工程は、触媒の除去操作を含んでいてもよい。触媒を除去する方法として公知の方法を用いることができるが、具体的には特開2010−6964号公報に記載の方法の他、ろ過用薬剤である珪藻土(ダイカライト6000、ラヂオライト#700等)、シリカゲル(ワコーゲル等)、ケイ酸マグネシウム(キョーワード600、キョーワード700)等を用いてろ過する方法が挙げられる。ろ過操作では前記ろ過用薬剤を単一で用いても複数種類を併用してもよいが、ろ過効率の観点から複数種類を用いることが好ましい。
また、ろ過速度を向上させる観点から、珪藻土を使用することが好ましく、触媒の除去効率を向上させるために、ケイ酸マグネシウムを用いることが好ましい。
ろ過操作は公知の方法で行うことができるが、珪藻土とケイ酸マグネシウムを層状に積層させた濾層に環状ポリエーテルエステル組成物またはその溶液を通過させる方法が挙げられる。ろ過に用いる溶剤は環状ポリエーテルエステル組成物を溶解させるものであれば限定されないが、溶解効率の観点から、THF,DMF、酢酸エチル、トルエン等が好ましい。
【0053】
本発明の吸着剤組成物は、取り扱い性等の観点から、さらに水又は有機溶剤を含んでもよい。
本発明の吸着剤組成物が水を含む場合、水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水等が挙げられ、なかでも、貯蔵安定性の点から、イオン交換水が好ましい。
【0054】
本発明の吸着剤組成物が有機溶剤を含む場合、環状ポリエーテルエステル(A)を溶解又は分散することができる有機溶剤を制限無く用いることができ、なかでもアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール等)が好ましい。
【0055】
本発明の吸着剤組成物が、さらに水又は有機溶剤を含む場合、水及び有機溶剤の重量は、貯蔵安定性等の観点から、吸着剤組成物の合計重量に基づいて50〜99重量%であることが好ましい。
【0056】
本発明の吸着剤組成物は、必要により、さらに公知のその他の成分、例えば特開2014−122331号公報及び特開2016−37525号公報等に記載のその他の界面活性剤(非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤等)、並びに特開2004−27181号公報に記載のビルダー、キレート剤、酵素、消泡剤、除菌剤、及び香料等を含有してもよい。
【0057】
非イオン性界面活性剤(C)としては、脂肪族系モノアルコール(炭素数8〜24)のアルキレンオキサイド(炭素数2〜8)付加物(重合度=1〜100);(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)脂肪族系炭化水素(炭素数8〜24)ジエーテル;(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=20)、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=30)等];多価(2価〜10価またはそれ以上)アルコール脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノラウリン酸ソルビタン等];(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8,重合度=1〜100)多価(2価〜10価またはそれ以上)アルコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノラウリン酸ポリオキシエチレン(重合度=10)ソルビタン、ポリオキシエチレン(重合度=50)ジオレイン酸メチルグルコシド等];脂肪酸アルカノールアミド[1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、1:1型ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド等];(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)アルキル(炭素数1〜22)フェニルエーテル;(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)アルキル(炭素数8〜24)アミノエーテル;及びアルキル(炭素数8〜24)ジアルキル(炭素数1〜6)アミンオキシド[ラウリルジメチルアミンオキシド等]等が挙げられる。
【0058】
非イオン性界面活性剤(C)のうち、添加後も吸着能を維持させる観点から、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜12、重合度=1〜100)アルキル(炭素数8〜24)アミノエーテルが好ましく、具体的には特開2013−122047公報に記載のn−ドデシルアルコールのエチレンオキサイド10モル付加物が挙げられる。
【0059】
本発明の吸着剤組成物が公知のその他の成分を含む場合、公知のその他の界面活性剤の含有率は、吸着剤組成物の合計重量に基づいて、吸着効率等の観点から好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下である。また、ビルダー及びキレート剤を含む場合の含有率は、吸着剤組成物の合計重量に基づいて、好ましくは10重量%以下である。酵素、除菌剤、及び香料の含有率は、吸着剤組成物の全重量に基づいて、好ましくは5重量%以下である。
【0060】
本発明の吸着剤組成物が、さらに水又は有機溶剤を含む場合、所定量の環状ポリエーテルエステル(A)と水又は有機溶剤と必要により用いるその他の成分を公知の混合装置を用いて均一に混合することで得ることができ、混合の順番に制限はない。例えば、撹拌機及び加熱冷却装置を備えた混合槽で環状ポリエーテルエステル(A)及び水を、投入順序に特に制限なく投入し、10〜50℃で均一になるまで攪拌して製造することで得ることができる。
【0061】
本発明である、悪臭物質などの有害物質吸着方法は、前記の吸着剤組成物と被処理体を接触させる工程を有する。
【0062】
被処理体物は水又は気体であることが好ましく、水には自然水、生活排水、及び工場排水等が含まれ、気体としては、室内等の一定空間内に保持される空気及び工場等からの排気が含まれる。なお、被処理体物が気体である場合の室内とは、屋内、車内、庫内、船室内及び機内等を含む。
【0063】
本発明の有害物質の吸着方法は、前記の吸着剤組成物と被処理体を接触させることで行うことができる。被処理体物が水である場合、有害物質が溶解した水溶液に前記の吸着剤組成物を加え、マグネティックスターラー、超音波処理機などを用いて一晩攪拌し、得られた水溶液の臭気を確認する官能試験によって、吸着剤組成物に対する吸着性能を評価することができる。
【0064】
本発明の有害物質の吸着方法は、被処理対象物が気体である場合には、前記の吸着剤組成物中に気体をバブリングする方法、及びスプレー等で気体に対して吹き付ける方法等を用いることで行うことができる。
バブリングする方法、及び吹き付ける方法に用いる装置は、特開昭64−46466号公報等に記載の公知の装置を用いることができる。
また、無機粒子等に前記の吸着剤組成物を担持したものを被処理対象で満たされた室内に置く方法等も用いることができる。
【0065】
本発明の吸着剤組成物は、自然水、生活排水、及び工場排水等の水に含まれる有害物質の吸着、並びに室内の空気及び工場等からの排気に含まれる有害物質の吸着に用いることができる。また、環状ポリエーテルエステル(A)は臭気の要因となる他の化合物を包摂する能力に優れることから、口腔用組成物(歯磨き等)、家庭用器具(掃除用粘着シートにおける粘着層等)、及び建材(壁材等)等に混合して適用することもできる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部を示す。
【0067】
<製造例1>
撹拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、15−ペンタデカノラクトン240部(1モル)、「キョーワード500」[協和化学工業(株)製:Mg6 Al2 (OH)16 CO3 ・4H2 O]24.2部(0.04モル)及び過塩素酸アルミニウム九水和物1部(0.002モル)を入れて密閉した後、減圧下で160℃にて3時間加熱し、脱水処理した。次いで180℃まで昇温し、180℃でゲージ圧が0.1〜0.5MPa の範囲に入るように調整しながらエチレンオキサイド(以下、EOと略記する)88部(2モル)をオートクレーブ内に導入した。EO全量を導入した後、圧力が0.1MPaになるまで撹拌を継続した。その後、水酸化カリウム0.3部を追加して、さらにEO176部(4モル)を180℃でゲージ圧が0.1〜0.5MPa となるように導入した。EO全量を導入した後、圧力が0.01MPaになるまで撹拌を継続して15−ペンタデカノラクトンとEOとの反応を行った。EOの付加反応に要した合計時間は8時間であった。その後、EOの付加反応で得られた反応混合物から触媒をろ別して、環状ポリエーテルエステル組成物(A1)を得た。
得られた環状ポリエーテルエステル組成物(A1)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った。
環状ポリエーテルエステル組成物(A1)は、mが1〜3であり、nが1〜30である一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステルを合計して90重量%含む環状ポリエーテルエステルの混合物であり、環状ポリエーテルエステル組成物(A1)のnの平均値(すなわちEOの平均付加モル数)は6であり、nが5〜10である環状ポリエーテルエステルの合計重量が、環状ポリエーテルエステル(A1)の合計重量に対して85重量%であった。
【0068】
<製造例2>
撹拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、15−ペンタデカノラクトン240部(1モル)、「キョーワード500」24.2部(0.04モル)、及び過塩素酸アルミニウム九水和物1部(0.002モル)を入れて密閉した後、減圧下で160℃にて3時間加熱し、脱水処理した。次いで150℃に温調し、150℃でゲージ圧が1〜3kgf/cm2Gとなるように調整しながらプロピレンオキサイド(以下、POと略記する)61部(1.05モル)をオートクレーブ内に導入した。PO全量を導入した後、圧力が0.01MPaになるまで撹拌を継続して15−ペンタデカノラクトンとPOとの反応を行った。POの付加反応に要した時間は12時間であった。次いで180℃に温調し、180℃でゲージ圧が0.1−0.5MPa となるように調整しながらEO220部(5モル)をオートクレーブ内に導入した。EO全量を導入した後、さらに圧力が0.01MPaになるまで撹拌を継続してEOの反応を行った。EOの付加反応に要した時間は7時間であった。EOの付加反応を終えて得られた反応混合物から触媒をろ別し、環状ポリエーテルエステル組成物(A2)を得た。得られた環状ポリエーテルエステル組成物(A1)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った。
環状ポリエーテルエステル組成物(A2)は、mが1〜3であり、nがそれぞれ1〜30である前記の一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステルを合計して90重量%含む混合物であり、環状ポリエーテルエステル組成物(A2)のnの平均値は6であり、そのうちPOの平均付加モル数は1であり、EOの平均付加モル数は5であり、nが5〜10である一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステルの合計重量が、環状ポリエーテルエステル(A2)の合計重量に対して90重量%であった。
【0069】
<製造例3>
撹拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、15−ペンタデカノラクトン240部(1モル)、及び「キョーワード500」〔協和化学工業(株)製:Mg6 Al2 (OH)16 CO3 ・4H2 O〕24.2部(0.04モル)を入れて密閉した後、減圧下で160℃にて3時間加熱し、脱水処理した。次いで180℃に温調し、180℃でゲージ圧が0.1〜0.5MPa の範囲に入るように調整しながらEO264部(6モル)をオートクレーブ内に導入した。EO全量を投入した後、圧力が0.01MPaになるまで撹拌を継続して15−ペンタデカノラクトンとEOとの反応を行った。EOの付加反応に要した時間は10時間であった。その後、EOの付加反応で得られた反応混合物から触媒をろ別して、環状ポリエーテルエステル組成物(A3)を得た。
得られた環状ポリエーテルエステル組成物(A3)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った。
環状ポリエーテルエステル組成物(A3)は、mが1〜3であり、nがそれぞれ1〜30である前記の一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A3)を合計して85重量%含む混合物であり、環状ポリエーテルエステル組成物(A3)のnの平均値(すなわちEOの平均付加モル数)は10であり、nが5〜10である環状ポリエーテルエステルの合計重量は環状ポリエーテルエステル(A3)の合計重量に対して28重量%であった。
【0070】
<製造例4>
撹拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、15−ペンタデカノラクトン240部(1モル)、「キョーワード500」[協和化学工業(株)製:Mg6 Al2 (OH)16 CO3 ・4H2 O]24.2部(0.04モル)及び過塩素酸アルミニウム九水和物1部(0.002モル)を入れて密閉した後、減圧下で160℃にて3時間加熱し、脱水処理した。次いで180℃まで昇温し、180℃でゲージ圧が0.1〜0.5MPaの範囲に入るように調整しながらエチレンオキサイド(以下、EOと略記する)88部(2モル)をオートクレーブ内に導入した。EO全量を導入した後、圧力が0.01MPaになるまで撹拌を継続した。その後、水酸化カリウム0.3部を追加して、さらにEO352部(8モル)を180℃でゲージ圧が0.1〜0.5MPaとなるように導入した。EO全量を導入した後、圧力が0.01MPaになるまで撹拌を継続して15−ペンタデカノラクトンとEOとの反応を行った。EOの付加反応に要した合計時間は8時間であった。その後、EOの付加反応で得られた反応混合物から触媒をろ別して、環状ポリエーテルエステル組成物(A4)を得た。得られた環状ポリエーテルエステル組成物(A4)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った。
環状ポリエーテルエステル組成物(A4)は、mが1〜3であり、nが1〜30である一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A4)を合計して90重量%含む環状ポリエーテルエステルの混合物であり、環状ポリエーテルエステル組成物(A4)のnの平均値(すなわちEOの平均付加モル数)は10であり、nが8〜13である環状ポリエーテルエステルの合計重量が、環状ポリエーテルエステル組成物(A4)の合計重量に対して85重量%であった。
【0071】
<製造例5>
撹拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、15−ペンタデカノラクトン240部(1モル)、「キョーワード500」[協和化学工業(株)製:Mg6 Al2 (OH)16 CO3 ・4H2 O]24.2部(0.04モル)及び過塩素酸アルミニウム九水和物1部(0.002モル)を入れて密閉した後、減圧下で160℃にて3時間加熱し、脱水処理した。次いで180℃まで昇温し、180℃でゲージ圧が0.1〜0.5MPaの範囲に入るように調整しながらエチレンオキサイド(以下、EOと略記する)88部(2モル)をオートクレーブ内に導入した。EO全量を導入した後、圧力が0.01になるまで撹拌を継続した。その後、水酸化カリウム0.3部を追加して、さらにEO1232部(28モル)を180℃でゲージ圧が0.1〜0.5MPaとなるように導入した。EO全量を導入した後、圧力が0.01MPaになるまで撹拌を継続して15−ペンタデカノラクトンとEOとの反応を行った。EOの付加反応に要した合計時間は8時間であった。その後、EOの付加反応で得られた反応混合物から触媒をろ別して、環状ポリエーテルエステル組成物(A5)を得た。得られた環状ポリエーテルエステル組成物(A5)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った。
環状ポリエーテルエステル組成物(A5)は、mが1〜3であり、nが1〜30である一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A5)を合計して90重量%含む環状ポリエーテルエステルの混合物であり、環状ポリエーテルエステル組成物(A5)のnの平均値(すなわちEOの平均付加モル数)は30であり、nが28〜33である環状ポリエーテルエステルの合計重量が、環状ポリエーテルエステル組成物(A5)の合計重量に対して85重量%であった。
【0072】
<製造例6>
「キョーワード300」〔化学式:2.5MgO・Al23 ・nH2 O(nは正数)、協和化学工業(株)製〕を電気炉にて窒素気流下900℃で24時間加熱処理し、焼成物を調整した。
【0073】
<製造例7>
攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、15−ペンタデカノラクトン30部[東京化成工業(株)製]と製造例6で得られた焼成物1部を投入した。窒素通気を1時間行った後、減圧(ゲージ圧−0.1 MPa)した。次いで150℃に昇温し、エチレンオキサイド27.5部を150℃にて、10時間かけて圧入した。その後、10時間熟成し、環状ポリエーテルエステル化合物(A)を含有する混合物(PA6−1)を得た。
得られた混合物(PA6−1)を50℃まで冷却し、エタノール100部を加えて50℃に温調した後、濾過助剤であるラヂオライト#700[昭和化学工業(株)製]5部及びキョーワード600[協和化学工業(株)製]5部を層状に充填した吸引漏斗で濾過して触媒を濾別した。次いで、エタノールを減圧留去し、環状ポリエーテルエステル化合物(PA6−2)を得た。
攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、環状ポリエーテルエステル化合物(A)を含有する混合物(PA6−2)5部と製造例1で得られた環状ポリエステル焼成物(A1)2部、及びキシレン25部を投入した。窒素通気を1時間行った後、減圧(ゲージ圧−0.1 MPa)した。次いで150℃に昇温し、エチレンオキサイド45.4部を150℃にて、10時間かけて圧入した。その後、10時間熟成し、環状化合物(A)を含有する混合物(PA6−3)を得た。
攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、環状化合物(A1)を含有する混合物(PA6−3)10部と製造例1で得られた上記焼成物(A1)1部を投入した。窒素通気を1時間行った後、減圧(ゲージ圧−0.1 MPa)した。次いで150℃に昇温し、エチレンオキサイド37.9部を150℃にて、10時間かけて圧入した。その後、10時間熟成し、環状ポリエーテルエステル化合物を含有する混合物(PA6−4)を得た。
得られた混合物(PA6−4)を50℃まで冷却し、エタノール100部を加えて50℃に温調した後、濾過助剤であるラヂオライト#700[昭和化学工業(株)製]5部及びキョーワード600[協和化学工業(株)製]5部を層状に充填した吸引漏斗で濾過して触媒を濾別した。次いで、エタノールを減圧留去し、環状ポリエーテルエステル化合物(A6)を得た。
得られた環状ポリエーテルエステル化合物(A6)について、MALDI−TOF MS[MALDI質量分析装置AXIMA−Performance、(株)島津製作所製、以下同様]による分析を行った結果、環状ポリエーテルエステル化合物(A6)は、一般式(1)において、R1がペンタメチレン基であり、R2がエチレン基であり、n=500である本発明の環状ポリエーテルエステル化合物と、更に[R1CO(OR2nO]で表される繰り返し単位を2個有する環状ポリエーテルエステル化合物と3個有する環状化合物環状ポリエーテルエステル化合物とを含有する混合物であった。
【0074】
<製造例7>
攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、製造例6で得られた環状ポリエーテルエステル化合物(PA6−1)30部と製造例1で得られた焼成物1部を投入した。窒素通気を1時間行った後、減圧(ゲージ圧−0.1 MPa)した。次いで150℃に昇温し、エチレンオキサイド28.7部を150℃にて、10時間かけて圧入した。その後、10時間熟成し、環状ポリエーテルエステル化合物を含有する混合物(PA7−1)を得た。
得られた混合物(PA7−1)を50℃まで冷却し、エタノール100部を加えて50℃に温調した後、濾過助剤であるラヂオライト#700[昭和化学工業(株)製]5部及びキョーワード600[協和化学工業(株)製]5部を層状に充填した吸引漏斗で濾過して触媒を濾別した。次いで、エタノールを減圧留去し、環状ポリエーテルエステル化合物(PA7−2)を得た。
攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、環状ポリエーテルエステル化合物を含有する混合物(PA7−2)20部と製造例1で得られた焼成物3部を投入した。窒素通気を1時間行った後、減圧(ゲージ圧−0.1 MPa)した。次いで150℃に昇温し、エチレンオキサイド24.4部を150℃にて、5時間かけて圧入後、10時間熟成した。次いでプロピレンオキサイド12.8部を5時間かけて圧入後、10時間熟成し環状ポリエーテルエステル化合物を含有する混合物(PA7−3)を得た。
得られた混合物(PA7−3)を50℃まで冷却し、エタノール100部を加えて50℃に温調した後、濾過助剤であるラヂオライト#700[昭和化学工業(株)製]5部及びキョーワード600[協和化学工業(株)製]5部を層状に充填した吸引漏斗で濾過して触媒を濾別した。次いで、エタノールを減圧留去し、環状ポリエーテルエステル化合物(A7)を得た。
得られた環状ポリエーテルエステル化合物(A7)について、MALDI−TOF MS[MALDI質量分析装置AXIMA−Performance、(株)島津製作所製、以下同様]による分析を行った結果、環状ポリエーテルエステル化合物(A7)は、一般式(1)において、R1がペンタメチレン基であり、R2がエチレン基及びメチルエチレン基であり、n=50(EO40モル,PO10モル)である本発明の環状ポリエーテルエステル化合物と、更に[R1CO(OR2nO]で表される繰り返し単位を2個有する環状ポリエーテルエステル化合物と3個有する環状ポリエーテルエステル化合物とを含有する混合物であった。
【0075】
<製造例8>
特開2013−122047号公報の製造例1と同様にしてn−ヘキサデシルアミンにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドが付加した比較用組成物に用いる非イオン性界面活性剤(C1)を得た。
【0076】
<製造例9>
特開2013−122047号公報の製造例8と同様にして比較用の組成物に用いる界面活性剤(直鎖のポリエーテルエステル)であるn−ドデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(HA1)を得た。
【0077】
<製造例10>
特開2016−069652号公報の実施例6−1と同様にして比較用の吸着組成物に用いるシクロデキストリン誘導体の重合体(HA2)を得た。
【0078】
においの評価は以下の6段階評価で行った
【0079】
<実施例1〜12、比較例1〜3>
吸着剤組成物を構成する原料を、表1に記載した量で撹拌機と温度調節機能とを備えた混合槽に投入し、20〜30℃で10分間撹拌して実施例1〜12及び比較例1にかかる吸着剤組成物をそれぞれ作製した。
【0080】
実施例1〜12及び比較例1〜3の吸着剤組成物について、以下の方法で吸着性を評価し、その結果を表1に示した。
精製水(10g)に吸着対象物質であるアンモニア2.5mg、メチルメルカプタン2.5mg、硫化水素2.5mg及びトリメチルアミン2.5mgをそれぞれ加えて溶かし、さらに実施例7〜14、又は比較例1で得られた吸着剤組成物を1g加え、褐色ガラス容器に充填し、キャップを施栓し、25℃に温調した恒温器内に24時間保存した。保存後の液から1mgを検体として50mLのビーカーに入れ、5名(男性2名、女性3名)のパネラーによるにおいの官能評価試験を実施した。下記の評価基準に従って、においの点数付けをした。5人のパネラーの評価結果を平均して評点を求め、表1に結果を示す。
【0081】
評価1:不快臭を全く感じない ・・・5点
評価2:やっと不快臭を感知できる・・・4点
評価3:不快臭が弱い ・・・3点
評価4:不快臭を楽に感知できる ・・・2点
評価5:不快臭が強い ・・・1点
評価6:不快臭が強烈 ・・・0点
このうち、平均値が4点以上を◎、3点以上4点未満を○、2点以上3点未満を△、1点以下を×とした。
【0082】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の洗浄剤組成物は、自然水、生活排水、及び工場排水等の水に含まれる有害物質の吸着、並びに室内の空気及び工場等からの排気に含まれる有害物質の吸着に用いることができる。また、環状ポリエーテルエステル(A)は臭気の要因となる他の化合物を包摂する能力に優れることから、口腔用組成物(歯磨き等)、家庭用器具(掃除用粘着シートにおける粘着層等)、及び建材(壁材等)等に混合して適用することもできる。