(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、数百μmオーダのプリント基板材料の絶縁基板上にスパイラル導体を形成しており、インダクタ部品の全体を低背化することに限界が生じる。また、例えば、特許文献1の構造において低背化を達成するために、特許文献2のように、絶縁基板をエッチングや研磨で除去することを考えた場合、特許文献1ではスパイラル導体が絶縁基板の直上に形成されているため、絶縁基板の除去時にスパイラル導体の底面も一部除去されてしまう可能性が高い。このように、スパイラル導体まで除去されてしまうと、直流抵抗(Rdc)が増加(悪化)してしまう上に、このスパイラル導体の除去量は、量産時には、除去工程ごとにばらつくことが避けられず、Rdcのばらつきの原因ともなる。
【0006】
また、特許文献1では、スパイラル導体は、絶縁樹脂層で覆われており、特許文献2では、素体が、フォトレジスト(非磁性体)であることから、絶縁樹脂層やフォトレジストが部品全体に占める割合が大きい。したがって、部品の小型低背化が進み、磁性体(特許文献1のコアや、特許文献2の磁性体端子および磁性中脚部)や配線(特許文献1のスパイラル導体や、特許文献2の平面コイル)の形成領域が十分に確保できず、インダクタンス(L)、Rdcの両方を十分に確保できなくなる可能性がある。すなわち、小型低背化によってLとRdcとのいずれかまたはその両方が犠牲になる可能性がある。
【0007】
以上のように、従来のインダクタ部品は、小型低背化に適した構成とは言えない。
【0008】
そこで、本開示の課題は、小型低背化に適したインダクタ部品およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
磁性体を含有しない絶縁層と、
前記絶縁層の第1主面上に形成され、前記第1主面上に巻回されるスパイラル配線と、
前記スパイラル配線の少なくとも一部に接触する磁性層と
を備える。
【0010】
ここで、スパイラル配線とは、平面に形成された曲線(2次元曲線)であって、ターン数が1周を超える曲線であってもよく、ターン数が1周未満の曲線であってもよく、一部に直線を有していてもよい。
【0011】
本開示のインダクタ部品によれば、スパイラル配線が絶縁層の第1主面上に形成されていることで、絶縁層の第2主面側(下方)からの基板の除去(エッチング、研磨など)の加工プロセスに対して、スパイラル配線が保護される。これにより、直流抵抗(Rdc)の増加や量産時のRdcのばらつきを抑制できる。
【0012】
また、スパイラル配線に磁性層が接触していることで、インダクタ部品全体に占める絶縁層の割合が減少し、スパイラル配線と磁性層の形成領域を確保できる。これにより、インダクタンス(L)とRdcのトレードオフの関係を改善することができる。
【0013】
したがって、小型低背化に適したインダクタ部品を実現できる。
【0014】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記磁性層は、前記スパイラル配線との接触部分において、前記スパイラル配線の側面に接触している。
【0015】
前記実施形態によれば、絶縁層の割合が減少する。
【0016】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記磁性層は、前記スパイラル配線との接触部分において、前記スパイラル配線の上面に接触している。
【0017】
前記実施形態によれば、絶縁層の割合が減少する。
【0018】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記磁性層は、前記スパイラル配線との接触部分において、前記スパイラル配線の側面から上面にかけて接触している。
【0019】
前記実施形態によれば、絶縁層の割合がより減少する。
【0020】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記絶縁層の厚みは、前記スパイラル配線の厚みより薄い。
【0021】
前記実施形態によれば、絶縁層の割合がより減少する。
【0022】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記絶縁層の厚みは、10μm以下である。
【0023】
前記実施形態によれば、絶縁層の割合がより減少する。
【0024】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記絶縁層は、前記スパイラル配線に沿った形状である。
【0025】
前記実施形態によれば、スパイラル配線が形成されない領域において絶縁層を設けないため、絶縁層の割合がより減少する。
【0026】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記磁性層の内部を前記第1主面の法線方向に貫通する柱状配線と、前記磁性層の外側に形成された外部端子とをさらに備え、
前記スパイラル配線と前記柱状配線が直接に接触し、前記柱状配線と前記外部端子が直接に接触している。
【0027】
前記実施形態によれば、ビア導体が無いため、インダクタ部品の低背化と、Rdcの低下と、接続信頼性の向上を実現できる。
【0028】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記スパイラル配線は、1層のみである。
【0029】
前記実施形態によれば、インダクタ部品の低背化を実現できる。
【0030】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記スパイラル配線の側面は、全て、前記磁性層に接触している。
【0031】
前記実施形態によれば、絶縁層の割合がより減少する。
【0032】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記スパイラル配線の上面は、前記柱状配線と接触する部分以外の全て、前記磁性層に接触している。
【0033】
前記実施形態によれば、絶縁層の割合がより減少する。
【0034】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記スパイラル配線は、1周を超えるスパイラル形状であり、
前記スパイラル配線の1周を超えて並走する領域において、前記スパイラル配線の側面は、前記絶縁層に覆われている。
【0035】
前記実施形態によれば、スパイラル配線の絶縁性および耐電圧性を向上できる。
【0036】
また、インダクタ部品の製造方法の一実施形態では、
基板を準備する工程と、
前記基板上に磁性体を含有しない絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の第1主面上に巻回されるように、前記第1主面上にスパイラル配線を形成する工程と、
前記スパイラル配線の少なくとも一部に接触するように、前記絶縁層上に磁性層を形成する工程と、
前記基板を除去する工程と
を備える。
【0037】
前記実施形態によれば、基板を除去する際に、スパイラル配線が絶縁層によって保護され、Rdcの増加や量産時のRdcのばらつきを抑制できる。また、スパイラル配線に磁性層が接触していることで、インダクタ部品全体に占める絶縁層の割合が減少し、LとRdcのトレードオフの関係を改善することができる。したがって、小型低背化に適したインダクタ部品を製造できる。
【0038】
また、インダクタ部品の製造方法の一実施形態では、前記絶縁層は、前記スパイラル配線に沿った部分を残して除去される。
【0039】
前記実施形態によれば、絶縁層の割合がより減少する。
【0040】
また、インダクタ部品の製造方法の一実施形態では、
前記スパイラル配線の形成後、前記磁性層の形成前に、前記スパイラル配線から前記第1主面の法線方向に延びる柱状配線を形成し、前記柱状配線の上端が露出するように前記磁性層を形成する。
【0041】
前記実施形態によれば、ビア導体が無いため、インダクタ部品の低背化と、Rdcの低下と、接続信頼性の向上を実現できる。
【発明の効果】
【0042】
本開示の一態様であるインダクタ部品およびその製造方法によれば、小型低背化に適したインダクタ部品を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本開示の一態様を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0045】
(第1実施形態)
(構成)
図1は、インダクタ部品の第1実施形態を示す透視平面図である。
図2は、
図1のX−X断面図である。
【0046】
インダクタ部品1は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載され、例えば全体として直方体形状の部品である。ただし、インダクタ部品1の形状は、特に限定されず、円柱状や多角形柱状、円錐台形状、多角形錐台形状であってもよい。
【0047】
図1と
図2に示すように、インダクタ部品1は、磁性層10と、絶縁層15と、スパイラル配線21と、柱状配線31,32と、外部端子41,42と、被覆膜50とを有する。
【0048】
絶縁層15は、上面である第1主面15aと下面である第2主面15bとを有する。絶縁層15の第1主面15aに対する法線方向を、図中、Z方向とし、順Z方向を上側、逆Z方向を下側とする。
【0049】
絶縁層15は、上方からみてスパイラル配線21に沿った形状の層である。このように、スパイラル配線21が形成されない領域において絶縁層15を設けないため、インダクタ部品1の全体における絶縁層15の割合がより減少する。なお、図面では、スパイラル配線21の配線間の領域では絶縁層15が結合されているが、スパイラル配線21の配線間の領域で分割されていてもよい。また、絶縁層15はスパイラル配線21に沿った形状ではなく、平板状の層であってもよい。
【0050】
絶縁層15の厚みは、スパイラル配線21よりも薄いことが好ましく、絶縁層15の割合がより減少する。また、絶縁層15の厚みは、10μm以下であることが好ましく、絶縁層15の割合がより減少する。
【0051】
絶縁層15は、磁性体を含有しない絶縁性材料からなり、例えばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂などの樹脂材料や、ケイ素やアルミニウムの酸化膜、窒化膜などの無機材料からなる。絶縁層15は、磁性体を含有しないため、絶縁層15の第1主面15aの平坦性を確保して第1主面15a上にスパイラル配線21を良好に形成でき、また、スパイラル配線21の配線間の導通を防止できる。なお、絶縁層15は、フィラーを含まない構成が好ましく、この場合、絶縁層15の薄膜化や平坦性向上が可能である。一方、絶縁層15がシリカなどの非磁性体のフィラーを含む場合は、絶縁層15の強度や加工性、電気的特性の向上が可能である。
【0052】
スパイラル配線21は、絶縁層15の第1主面15a上に形成され、第1主面15a上に巻回される。スパイラル配線21は、ターン数が1周を超えるスパイラル形状である。スパイラル配線21は、上側からみて、外周端21bから内周端21aに向かって時計回り方向に渦巻状に巻回されている。
【0053】
スパイラル配線21の厚みは、絶縁層15の厚みよりも大きいことが好ましく、例えば、40μm以上120μm以下であることが好ましい。スパイラル配線21の実施例として、厚みが45μm、配線幅が40μm、配線間スペースが10μmである。配線間スペースは3μm以上20μm以下が好ましい。
【0054】
スパイラル配線21は、導電性材料からなり、例えばCu、Ag,Auなどの低電気抵抗な金属材料からなる。本実施形態では、インダクタ部品1は、スパイラル配線21を1層のみ備えており、インダクタ部品1の低背化を実現できる。つまり、スパイラル配線21は、その両端(内周端21aおよび外周端21b)にスパイラル形状部分よりもやや線幅の大きいパッド部を有し、パッド部において、柱状配線31,32と直接接続されている。
【0055】
磁性層10は、スパイラル配線21が形成された絶縁層15の第1主面15aおよび第2主面15bを覆うように形成されている。磁性層10は、スパイラル配線21の少なくとも一部に接触しており、具体的には、スパイラル配線21との接触部分において、スパイラル配線21の側面から上面にかけて接触している。特に、本実施形態では、スパイラル配線21が絶縁層15と接するのはその底面のみであり、スパイラル配線21の側面は全て磁性層10に接触しており、スパイラル配線21の上面は、柱状配線31,32と接触する部分以外の全て、磁性層10に接触している。このため、絶縁層15の割合をより減少できる。
【0056】
磁性層10は、第1磁性層11と、第2磁性層12と、内磁路部13と、外磁路部14とによって構成される。なお、
図1では、磁性層10の一部を透明にした図で示している。第1磁性層11および第2磁性層12は、Z方向の両側からスパイラル配線21を挟む位置にある。具体的には、第1磁性層11は、スパイラル配線21の上側、第2磁性層12は、スパイラル配線21の下側に位置している。内磁路部13、外磁路部14は、
図1に示すように、それぞれスパイラル配線21の内側、外側に配置され、かつ、
図2に示すように第1磁性層11および第2磁性層12に接続されている。このように、磁性層10は、スパイラル配線21に対して閉磁路を構成している。
【0057】
磁性層10は、磁性体材料からなり、例えば、磁性材料の粉末を含有する樹脂からなる。磁性層10を構成する樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂などであり、磁性材料の粉末としては、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、または、それらのアモルファス合金などの金属磁性体材料の粉末あるいはフェライトなどの粉末である。磁性材料の含有率は、好ましくは、磁性層10全体に対して50vol%以上85vol%以下である。なお、磁性材料の粉末は、粒子が略球形状であることが好ましく、平均粒径が5μm以下であることが好ましい。また、磁性層10は、フェライト基板などであってもよい。なお、磁性材料を樹脂で構成する場合は、絶縁層15と同種材料を用いることが好ましく、この場合、絶縁層15と磁性層10との密着性を向上できる。
【0058】
柱状配線31,32は、磁性層10の内部を絶縁層15の第1主面15aの法線方向に貫通する配線である。本実施形態では、第1柱状配線31は、スパイラル配線21の内周端21aの上面から上側に延在し、第1磁性層11の内部を貫通する。第2柱状配線32は、スパイラル配線21の外周端21bの上面から上側に延在し、第1磁性層11の内部を貫通する。柱状配線31,32は、スパイラル配線21と同様の材料からなる。
【0059】
外部端子41,42は、磁性層10の外側に形成された端子である。本実施形態では、スパイラル配線21と第1、第2柱状配線31,32が直接に接触し、第1柱状配線31と第1外部端子41が直接に接触し、第2柱状配線32と第2外部端子42が直接に接触している。したがって、第1、第2柱状配線31,32よりも断面積の小さいビア導体が無いため、インダクタ部品1の低背化と、Rdcの低下と、接続信頼性の向上を実現できる。ただし、スパイラル配線21は、第1、第2柱状配線31,32に対して、第1、第2柱状配線31,32よりも断面積の小さいビア導体を介して接続されていてもよい。
【0060】
外部端子41,42は、導電性材料からなり、例えば、低電気抵抗かつ耐応力性に優れたCu、耐食性に優れたNi、はんだ濡れ性と信頼性に優れたAuが内側から外側に向かってこの順に並ぶ3層構成である。
【0061】
第1外部端子41は、第1磁性層11の上面に設けられ、該上面から露出する第1柱状配線31の端面を覆っている。第2外部端子42は、第1磁性層11の上面に設けられ、該上面から露出する第2柱状配線32の端面を覆っている。
【0062】
外部端子41,42には、好ましくは、防錆処理が施されている。ここで、防錆処理とは、NiおよびAu、または、NiおよびSnなどで被膜することである。これにより、はんだによる銅喰われや、錆びを抑制することができ、実装信頼性の高いインダクタ部品1を提供できる。
【0063】
被覆膜50は、絶縁性材料からなり、第1磁性層11の上面および第2磁性層12の下面を覆い、柱状配線31,32および外部端子41,42の端面を露出させている。被覆膜50によって、インダクタ部品1の表面の絶縁性を確保することができる。なお、被覆膜50が第2磁性層12の下面側に形成されていなくてもよい。
【0064】
前記インダクタ部品1によれば、スパイラル配線21が絶縁層15の第1主面15a上に形成されていることで、絶縁層15の第2主面15b側(下方)からの基板の除去(エッチング、研磨など)の加工プロセスに対して、スパイラル配線21が保護される。これにより、直流抵抗(Rdc)の増加や量産時のRdcのばらつきを抑制できる。
【0065】
また、スパイラル配線21に磁性層10が接触していることで、インダクタ部品1の全体に占める絶縁層15の割合が減少し、スパイラル配線21と磁性層10の形成領域を確保できる。これにより、インダクタンス(L)とRdcのトレードオフの関係を改善することができる。
【0066】
したがって、小型低背化に適したインダクタ部品1を実現できる。
【0067】
また、絶縁層15は、磁性体、特に磁性体の粉末を含有しないことで、絶縁層15の主面15a,15bの平坦性および絶縁性を向上できる。したがって、スパイラル配線21の形成精度や絶縁性、耐電圧の低下を抑制できる。
【0068】
また、磁性層10の内部を貫通する柱状配線31,32を含むので、スパイラル配線21から直接Z方向に配線が引き出される。これは、スパイラル配線21が、インダクタ部品の上面側に最短距離で引き出されていることを意味し、基板配線がインダクタ部品1の上面側から接続される3次元実装において、不要な配線引き回しを低減できることを意味する。したがって、インダクタ部品1は、3次元実装に十分に対応できる構成を有しており、回路設計の自由度を向上できる。
【0069】
また、インダクタ部品1では、スパイラル配線21から側面方向に配線が引き出されないため、Z方向から見たインダクタ部品1の面積、すなわち実装面積の低減を実現することができる。したがって、インダクタ部品1は、表面実装および3次元実装のいずれにおいても求められる実装面積の低減も実現でき、回路設計の自由度を向上できる。
【0070】
また、インダクタ部品1では、柱状配線31,32は、磁性層10の内部を貫通し、スパイラル配線21が巻回された平面に対して法線方向に延在する。この場合、柱状配線31,32においては、電流はスパイラル配線21が巻回された平面に沿った方向に流れず、Z方向に流れる。
【0071】
ここで、インダクタ部品1のサイズが小さくなると、相対的に磁性層10も小さくなるが、特に内磁路部13では磁束密度が高くなり、磁気飽和しやすくなる。しかし、柱状配線31,32に流れるZ方向の電流による磁束は、内磁路部13を通らないので、磁気飽和特性、すなわち直流重畳特性への影響を低減できる。一方で、従来技術のように、スパイラル配線から引出部によって側面側(スパイラル配線が巻回された平面に沿った方向側)に配線を引き出した場合は、引出部に流れる電流により発生する磁束の一部は内磁路部や外磁路部を通過してしまうため、磁気飽和特性、直流重畳特性への影響を避けることができない。
【0072】
なお、柱状配線31,32が第1磁性層11の内部を貫通するため、スパイラル配線21から配線を引き出す際に磁性層10の開口箇所を小さくすることができ、容易に閉磁路構造を取ることができる。これにより、基板側へのノイズ伝播を抑制することができる。
【0073】
さらに、スパイラル配線21は絶縁層15に沿った平面上に巻回されているため、薄型化に対しても内磁路部13を大きく取ることができ、磁気飽和特性の高い薄型のインダクタ部品1を提供できる。これに対して、例えば、スパイラル配線が絶縁層15に沿った平面に対して垂直に巻回されたインダクタ部品を用いると、インダクタ部品の更なる薄型化、すなわち基板の厚み方向の薄型化に対し、コイル径(磁性層)の面積が縮小する。これにより、磁気飽和特性が悪化して、インダクタへの十分な通電ができない。
【0074】
さらに、インダクタ部品1は、
図2に示すように、第1磁性層11または第2磁性層12の表面を覆い、柱状配線31,32の端面を露出させる被覆膜50を備えている。ここで、上記「露出」には、インダクタ部品1の外方への露出だけでなく、他の部材への露出も含めている。
【0075】
具体的に述べると、第1磁性層11の上面において、被覆膜50は、外部端子41,42を除く領域を覆っている。このように、外部端子41,42と接続する柱状配線31,32の端面は、被覆膜50から露出している。したがって、隣り合う外部端子41,42(柱状配線31,32)の間の絶縁を確実にとることができる。これにより、インダクタ部品1の耐電圧性や耐環境性を確保することができる。また、被覆膜50の形状によって、磁性層10の表面に形成される外部端子41,42の形成領域を任意に設定できるようになることから、実装時の自由度を上げることができるとともに、外部端子41,42を容易に形成できる。
【0076】
なお、インダクタ部品1では、
図2に示すように、外部端子41,42の表面は、第1磁性層11の表面よりも、Z方向の外側に位置する。具体的には、外部端子41,42は、被覆膜50に埋め込まれており、外部端子41,42の表面は、第1磁性層11の表面と同一平面となっていない。このとき、磁性層10の表面と外部端子41,42の表面との位置関係を独立に設定することができ、外部端子41,42の厚みの自由度を上げることができる。この構成によれば、インダクタ部品1における外部端子41,42の表面の高さ位置を調整することができ、例えば、インダクタ部品1が基板に埋め込まれた際に、他の埋め込み部品の外部端子の高さ位置と合わせ込むことが可能となる。よって、インダクタ部品1を用いることにより、基板のビア形成時のレーザーの焦点合わせ工程を合理化することができ、基板の製造効率を向上できる。
【0077】
さらに、インダクタ部品1では、
図1に示すように、Z方向からみて、柱状配線31,32の端面を覆う外部端子41,42の面積は、柱状配線31,32の面積よりも大きい。したがって、実装時の接合面積が大きくなり、インダクタ部品1の実装信頼性が向上する。また、基板に実装する時に基板配線とインダクタ部品1との接合位置について、アライメントマージンを確保することができ、実装信頼性を高めることができる。なお、このとき、柱状配線31,32の体積に関わらず、実装信頼性を向上できるため、柱状配線31,32のZ方向から見た断面積を小さくすることにより、第1磁性層11の体積の減少を抑制し、インダクタ部品1の特性低下を抑制することができる。
【0078】
スパイラル配線21、柱状配線31,32、外部端子41,42は、好ましくは、銅または銅化合物からなる導体である。これにより、安価で直流抵抗を低減できるインダクタ部品1を提供できる。また、銅を主体とすることで、スパイラル配線21、柱状配線31,32、外部端子41,42間の接合力や導電性の向上を図ることもできる。
【0079】
なお、スパイラル配線からインダクタ部品の下面に引き出すように柱状配線を設けてもよい。このとき、インダクタ部品の下面に柱状配線に接続される外部端子を設けてもよい。
【0080】
インダクタ部品1は、1つのスパイラル配線を有するが、この構成に限られず、同一平面上に巻回された2つ以上のスパイラル配線を備えていてもよい。インダクタ部品1では外部端子41,42の形成自由度が高いため、外部端子の数が多いインダクタ部品において、その効果はより一層顕著となる。
【0081】
スパイラル配線は、平面に形成された曲線(2次元曲線)であって、ターン数が1周を超える曲線であるが、ターン数が1周未満の曲線であってもよく、または、一部に直線を有していてもよい。
【0082】
(製造方法)
次に、インダクタ部品1の製造方法について説明する。
【0083】
図3Aに示すように、基板61を準備する。基板61は、例えば、ガラスやフェライトなどのセラミック材料や、ガラスクロスを含む樹脂などのプリント配線基板材料などからなる平板状の基板である。基板61の厚みは、インダクタ部品の厚みに影響を与えないため、加工上のそりなどの理由から適宜取り扱いやすい厚さのものを用いればよい。
【0084】
図3Bに示すように、基板61上に磁性体を含有しない絶縁層62を形成する。絶縁層62は、例えば、磁性体を含有しないポリイミド系樹脂などからなり、基板61の上面(第1主面)上に上記ポリイミド系樹脂を印刷、塗布などによってコーティングして形成される。なお、絶縁層62は、例えば、基板61の上面上に、蒸着、スパッタリング、CVDなどのドライプロセスによってシリコン酸化膜などの無機材料の薄膜として形成してもよい。
【0085】
図3Cに示すように、絶縁層62をフォトリソグラフィによってパターニングして、スパイラル配線を形成する領域を残す。つまり、絶縁層62をスパイラル配線に沿った部分を残して除去する。絶縁層62には、基板61が露出する開口部62aが設けられる。
図3Dに示すように、絶縁層62上を含め、基板61上にCuのシード層63をスパッタリングや無電解めっきなどで形成する。
【0086】
図3Eに示すように、シード層63上にドライフィルムレジスト(DFR)64を貼り付ける。
図3Fに示すように、DFR64をフォトリソグラフィによりパターニングして、スパイラル配線を形成する領域に貫通孔64aを形成し、貫通孔64aからシード層63を露出させる。
【0087】
図3Gに示すように、電解めっきにより、貫通孔64a内のシード層63上に金属膜65を形成する。
図3Hに示すように、金属膜65の形成後、さらにDFR64を貼り付ける。
【0088】
図3Iに示すように、DFR64をフォトリソグラフィによりパターニングし、柱状配線を形成する領域に貫通孔64aを形成し、貫通孔64aから金属膜65を露出させる。
図3Jに示すように、電解めっきにより、貫通孔64a内の金属膜65上にさらに金属膜66を形成する。
【0089】
図3Kに示すように、DFR64を除去し、
図3Lに示すように、シード層63のうち、金属膜65が形成されていない露出部分をエッチングにより除去する。これにより、絶縁層62の上面(第1主面)上に巻回されるように第1主面上にスパイラル配線21を形成し、また、スパイラル配線21から第1主面の法線方向に延びる柱状配線31,32を形成する。つまり、柱状配線31,32は、スパイラル配線21の形成後、磁性層の形成前に、形成される。
【0090】
図3Mに示すように、磁性体材料からなる磁性シート67を基板61の上面側(スパイラル配線形成側)に圧着する。これにより、スパイラル配線21の少なくとも一部(スパイラル配線21の側面、および、スパイラル配線21の上面の柱状配線31,32と接触する部分以外)に接触するように絶縁層15上に磁性層10を形成する。
【0091】
図3Nに示すように、磁性シート67を研磨し、柱状配線31,32(金属膜66)の上端を露出させる。
図3Oに示すように、磁性シート67の上面(第1主面)上に、被覆膜50としてのソルダーレジスト(SR)68を形成する。
【0092】
図3Pに示すように、SR68をフォトリソグラフィによりパターニングし、外部端子を形成する領域に、柱状配線31,32(金属膜66)および磁性層10(磁性シート67)が露出する貫通孔68aを形成する。
【0093】
図3Qに示すように、基板61を研磨により除去する。
図3Rに示すように、磁性体材料からなる磁性シート67を基板61の除去側に圧着し適切な厚みに研磨する。
【0094】
図3Sに示すように、無電解めっきにより、柱状配線31,32(金属膜66)からSR68の貫通孔68a内に成長するCu/Ni/Auの金属膜69を形成する。金属膜69により、第1柱状配線31に接続される第1外部端子41と、第2柱状配線32に接続される第2外部端子42を形成する。また、外部端子41,42と反対側の下面に、被覆膜50としてのSR68を形成する。
図3Tに示すように、個片化し、必要に応じてバレル研磨を行い、バリを除去して、インダクタ部品1を製造する。
【0095】
前記インダクタ部品1の製造方法によれば、基板61を除去する際に、スパイラル配線21が絶縁層15によって保護され、Rdcの増加や量産時のRdcのばらつきを抑制できる。また、スパイラル配線21に磁性層10が接触していることで、インダクタ部品1の全体に占める絶縁層15の割合が減少し、LとRdcのトレードオフの関係を改善することができる。したがって、小型低背化に適したインダクタ部品1を製造できる。
【0096】
また、絶縁層15は、スパイラル配線21に沿った部分を残して除去されるので、絶縁層の割合がより減少する。
【0097】
また、スパイラル配線21から延びる柱状配線31,32を形成し、柱状配線31,32の上端が露出するように磁性層10を形成するので、ビア導体が無いため、インダクタ部品1の低背化と、Rdcの低下と、接続信頼性の向上を実現できる。
なお、上記のインダクタ部品1の製造方法はあくまで一例であって、各工程において用いる工法や材料は、適宜他の公知のものと置き換えても良い。例えば、上記では、絶縁層62やDFR64、SR68はコーティング後にパターニングしたが、塗布、印刷、マスク蒸着、リフトオフなどによって、直接必要な部分に絶縁層62を形成してもよい。また、基板61の除去や磁性シート67の薄層化には研磨を用いたが、ブラスト、レーザーなどの他の物理プロセスや、フッ酸処理などの化学プロセスを用いてもよい。
【0098】
(実施例)
次に、インダクタ部品1の実施例について説明する。
【0099】
スパイラル配線21、柱状配線31,32、外部端子41,42は、例えばCu、Ag、Auなどの低抵抗な金属によって構成される。好ましくは、SAP(Semi Additive Process;セミアディティブ工法)によって形成される銅めっきを用いることで、低抵抗でかつ狭ピッチなスパイラル配線21を安価に形成できる。なお、スパイラル配線21、柱状配線31,32、外部端子41,42は、SAP以外のめっき工法、スパッタリング法や蒸着法、塗布法などで形成してもよい。
【0100】
本実施例においては、スパイラル配線21、柱状配線31,32は、SAPによる銅めっきで形成され、外部端子41,42は、無電解Cuめっきで形成される。なお、スパイラル配線21、柱状配線31,32、外部端子41,42を全て同じ工法で形成してもよい。
【0101】
磁性層10(第1磁性層11、第2磁性層12、内磁路部13および外磁路部14)は、例えば、磁性材料の粉末を含有する樹脂からなり、好ましくは、略球形の金属磁性材料を含む。したがって、磁性材料の磁路の充填性を良くできる。これにより、磁路を小さくでき、小型なインダクタ部品1を提供することができる。ただし、磁性層は、フェライトなどの磁性材料の粉末を含有する樹脂であってもよいし、フェライト基板や磁性材料のグリーンシートを焼結したものであってもよい。
【0102】
本実施例においては、磁性層10を構成する樹脂は、例えば、エポキシ系樹脂、ビスマレイミド、液晶ポリマ、ポリイミドからなる有機絶縁材料である。また、磁性層10の磁性材料の粉末は、平均粒径5μm以下の金属磁性体である。金属磁性体は、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、または、それらのアモルファス合金である。磁性材料の含有率は、好ましくは、磁性層10全体に対して50vol%以上85vol%以下である。
【0103】
上記のように、平均粒径が5μm以下と粒径の小さい磁性材料を使うことで、金属磁性体に発生する渦電流を抑制することができ、数十MHzといった高周波でも損失の小さいインダクタ部品1を得ることができる。
【0104】
また、Fe系の磁性材料を使うことで、フェライトなどよりも大きな磁気飽和特性を得ることができる。
【0105】
また、磁性材料の充填量を50vol%以上にすることで透磁率を高くすることができ、所望のインダクタンス値の取得に必要なスパイラル配線のターン数を低減できるため、直流抵抗と近接効果による高周波での損失を低減できる。さらに、充填量が85vol%以下の場合、磁性材料に対して有機絶縁樹脂のボリュームが十分大きく、磁性材料の流動性を確保できるため、充填性が向上し、実効透磁率や、磁性材料自体の強度を向上できる。
【0106】
一方、低周波で使う場合、渦電流損を高周波程気にする必要がなくなるため、金属磁性体の平均粒径を大きくし、より高透磁率にしてもよい。例えば、平均粒径が100〜30μmの大粒と、大粒間の隙間を充填するようにいくつかの小粒(10μm以下)とが混在するような磁性材料が好ましい。こうすることで充填量を高くし、1〜10MHzといった周波数で高透磁率の磁性材料を実現できる。ただし、1MHz以上の周波数では、渦電流損の影響を抑制するため、比透磁率は70以下であることが好ましい。
【0107】
本実施例においては、被覆膜50は、ポリイミド、フェノール、エポキシ樹脂などの有機絶縁樹脂からなる感光性レジストやソルダーレジストで形成されている。
【0108】
また、外部端子41,42の表面に施される防錆処理は、Ni、Au、Snなどのめっきである。
【0109】
絶縁層15は、磁性体、特に磁性体の粉末を含有しない絶縁性樹脂からなる。したがって、例えば5μmの粒径を有する磁性体を含有しないので、絶縁層15の主面15a,15bの平坦性および絶縁性を向上できる。したがって、スパイラル配線21の形成精度や絶縁性、耐電圧の低下を抑制できる。また、絶縁層15でスパイラル配線21を覆っていないので、同じチップサイズで考えると磁性材料のボリュームが増えることでインダクタンス値を高くすることができる。絶縁層15の厚みは、スパイラル配線21よりも薄いことが好ましく、絶縁層15の厚みは、10μm以下であることが好ましい。
【0110】
本実施例において、スパイラル配線21の厚みは45μm、配線幅が40μm、配線間スペースが10μmである。
【0111】
なお、配線間スペースは3μm以上20μm以下が好ましい。配線間スペースを20μm以下にすることで配線幅を大きくとることができるので、直流抵抗を下げることができる。配線間スペースを3μm以上にすることで配線間の絶縁性が十分に保てる。
【0112】
また、配線厚みは40μm以上120μm以下が好ましい。配線厚みを40μm以上にすることで直流抵抗を十分に下げることができる。配線厚みを120μm以下にすることで配線アスペクトを極端に大きくすることがなくなり、プロセスばらつきを抑制することができる。
【0113】
スパイラル配線21のターン数は本実施形態では、2.5ターンである。ターン数は5ターン以下が好ましい。ターン数が5ターン以下であれば50MHzから150MHzといった高周波スイッチング動作に対して近接効果の損失を小さくすることできる。一方、1MHzといった低周波スイッチング動作で使用する場合は2.5ターン以上が好ましい。ターン数を多くすることで、インダクタンスを高くし、インダクタリップル電流を小さくできる。
【0114】
本実施形態では、第1磁性層11の厚みを117.5μmとし、第2磁性層12の厚みを67.5μmとしている。第1磁性層11、第2磁性層12の厚みは、それぞれ、10μm以上200μm以下が好ましい。第1、第2磁性層11,12の厚みが薄すぎると第1、第2磁性層11,12の研削時にプロセスばらつきによりスパイラル配線21が露出してしまう恐れがある。また、第1、第2磁性層11,12に含まれる磁性材料の平均粒径に対して、第1、第2磁性層11,12の厚みが薄いと脱粒による実効透磁率の低下が大きい。第1、第2磁性層11,12の厚みを200μm以下にするとインダクタ部品の薄膜化が実現できる。
【0115】
また、第1磁性層11の厚みが、第2磁性層12の厚みより厚いことが好ましい。インダクタ部品1では、法線方向(Z方向)からみた外部端子41,42の面積に関して、第1磁性層11は、第2磁性層12よりも大きい。すなわち、インダクタ部品1では、第1磁性層11中の磁束の方が、第2磁性層12中の磁束よりも、外部端子41,42によって遮られやすい。そこで、第1磁性層11側の厚みを厚くして外部端子41,42との距離を空け、外部端子41,42の影響を低減することで、インダクタンスの磁性層厚(チップ厚)のばらつきに対する感度を落とすことができ、狭偏差なインダクタンスを有するインダクタ部品を提供することができる。また、一般に外部端子41,42の面積が大きい第1磁性層11側の方が、インダクタ部品1を実装・内蔵する基板側のランドパターンの面積も大きく、また周囲の電子部品の数も多くなりやすい。したがって、第1磁性層11の厚みを厚くして、磁束漏れを低減することで、ランドパターンによる渦電流損や周囲の電子部品へのノイズ入射など、磁束漏れによる悪影響を効果的に低減することができる。
【0116】
防錆処理を含めた外部端子41,42の厚みは、無電解銅めっき厚5μm、Niめっき厚5μm、Auめっき厚0.1μmである。また、被覆膜50の厚みは5μmである。これらの厚みも適便チップ厚みと実装信頼性の観点から厚み、大きさが選択されてよい。
【0117】
以上より、本実施例によると、チップサイズ1210(1.2mm x 1.0mm)、厚み0.300mmである薄型インダクタを提供することができる。
【0118】
(第2実施形態)
図4は、インダクタ部品の第2実施形態を示す断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、絶縁層の配置が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0119】
図4に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aでは、スパイラル配線21は、1周を超えるスパイラル形状である。スパイラル配線21の1周を超えて配線同士が並走する領域において、スパイラル配線21の側面は、絶縁層15に覆われている。つまり、絶縁層15は、第1実施形態と同様にスパイラル配線21の下面を覆い、さらに、1周を超える領域においてスパイラル配線21の配線間に存在する。なお、スパイラル配線21の配線間に存在する絶縁層15の厚みは、スパイラル配線21の配線厚みと同じであってもよいし、スパイラル配線21の配線厚みよりも大きくても、小さくてもよい。
【0120】
これにより、スパイラル配線21の配線間のスペースが狭い場合、スパイラル配線21の配線間において金属磁性体などの磁性材料を介した電気的な短絡経路ができる可能性を除くことができる。したがって、スパイラル配線21の絶縁性および耐電圧性を向上でき、信頼性の高いインダクタ部品1Aを提供することができる。
【0121】
なお、スパイラル配線21の配線同士が並走しない領域において、例えば、スパイラル配線21の両端部、スパイラル配線21の最外周の外側側面、および、スパイラル配線21の最内周の内側側面において、スパイラル配線21の側面が絶縁層15に覆われていてもよいし、磁性層10に直接接触していてもよい。
【0122】
前記インダクタ部品1Aを製造する方法について説明すると、例えば、第1実施形態の
図3Lの工程の後に、スパイラル配線21の配線間に絶縁層15を設けるようにしてもよい。
【0123】
(第3実施形態)
図5は、インダクタ部品の第3実施形態を示す断面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、スパイラル配線の層数が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0124】
図5に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Bは、第1実施形態のインダクタ部品1と同様に、絶縁層15A,15Bと、絶縁層15A,15Bの第1主面15a上に形成されるスパイラル配線21,22と、スパイラル配線21,22の少なくとも一部に接触する磁性層10とを備える。
【0125】
一方、インダクタ部品1Bでは、スパイラル配線は、第1スパイラル配線21と第2スパイラル配線22の複数あり、第1スパイラル配線21と第2スパイラル配線22との間を直列に接続するビア導体をさらに備える。2層のスパイラル配線21,22が、第1、第2外部端子41,42間で電気的に直列に接続されている。
【0126】
具体的に述べると、第2スパイラル配線22は、第1スパイラル配線21のZ方向(上方)に積層されている。第1スパイラル配線21は、上側からみて、外周端21bから内周端21aに向かって反時計回り方向に渦巻状に巻回されている。第2スパイラル配線22は、上側からみて、内周端22aから外周端22bに向かって反時計回り方向に渦巻状に巻回されている。
【0127】
第1スパイラル配線21は、第1絶縁層15Aの第1主面15a上に形成される。第2スパイラル配線22は、第2絶縁層15Bの第1主面15a上に形成される。第2絶縁層15Bは、第1絶縁層15AのZ方向(上方)に積層される。
【0128】
第2スパイラル配線22の外周端22bは、その外周端22bの上側の第2柱状配線32を介して、第2外部端子42に接続される。第2スパイラル配線22の内周端は、その内周端の下側のビア導体を介して、第1スパイラル配線21の内周端に接続される。ビア導体は、第2絶縁層15Bの内部を第1主面15aの法線方向に貫通する。
【0129】
第1スパイラル配線21の外周端21bは、その外周端21bの上側のビア導体25、端部配線26および第1柱状配線31を介して、第1外部端子41に接続される。ビア導体25は、第2絶縁層15Bの内部を第1主面15aの法線方向に貫通する。端部配線26は、第2スパイラル配線22と同一平面である第2絶縁層15B上に形成される。
【0130】
前記インダクタ部品1Bでは、第1スパイラル配線21と第2スパイラル配線22とが直列に接続されているので、ターン数を増やすことでインダクタンス値を向上できる。また、第1、第2柱状配線31,32を第1、第2スパイラル配線21,22の外周端から引き出すことができるので、第1、第2スパイラル配線21,22の内径を大きくとることができ、インダクタンス値を向上できる。
【0131】
また、第1スパイラル配線21と第2スパイラル配線22は、それぞれ法線方向に積層されているので、ターン数に対してZ方向からみたインダクタ部品1Bの面積、すなわち実装面積を低減でき、インダクタ部品1Bの小型化が実現できる。
【0132】
なお、スパイラル配線は2層に限られず、複数層あってもよい。また、上層側のスパイラル配線については、下方からの基板除去(エッチング、研磨)などの加工プロセスの影響を受けないため、絶縁層上ではなく、磁性層上に形成されていてもよい。具体的には、
図5の構成において、絶縁層15Bが存在せず、磁性層10が代わりに配置されていてもよい。また、第2実施形態のように第1スパイラル配線21の配線同士が並走する領域において、第1スパイラル配線21の側面が、絶縁層15(絶縁層15B)に覆われている構成であってもよい。この場合、第1スパイラル配線21は、内周側の側面で磁性層10に接触する。
【0133】
前記インダクタ部品1Bを製造する方法について説明すると、基板を準備し、基板上に第1絶縁層15Aを形成し、第1絶縁層15Aの第1主面15a上に第1スパイラル配線21を形成し、第1スパイラル配線21の少なくとも一部、具体的には第1スパイラル配線21の側面に接触するように磁性層10を形成する。さらに、磁性層10を研磨するなどして、第1スパイラル配線21の上面を露出させた上で、第1スパイラル配線21上及び磁性層10上に第2絶縁層15Bを形成し、第2絶縁層15Bの第1主面15a上に第2スパイラル配線22を形成し、第2スパイラル配線22の少なくとも一部に接触するように磁性層10を形成する。その後、基板を除去する。
【0134】
(第4実施形態)
図6は、インダクタ部品の第4実施形態を示す透視斜視図である。
図7は、
図6のX−X断面図である。第4実施形態は、第1実施形態とは、スパイラル配線の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第4実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0135】
図6と
図7に示すように、インダクタ部品1Cは、第1実施形態のインダクタ部品1と同様に、絶縁層15と、絶縁層15の第1主面15a上に形成されるスパイラル配線21B〜24Bと、スパイラル配線21B〜24Bのそれぞれの少なくとも一部に接触する磁性層10とを備える。
【0136】
一方、インダクタ部品1Cにおいて、第1スパイラル配線21B、第2スパイラル配線22B、第3スパイラル配線23Bおよび第4スパイラル配線24Bは、Z方向から見たときに、半楕円形の弧状である。すなわち、第1〜第4スパイラル配線21B〜24Bは、約半周分巻回された曲線状の配線である。また、スパイラル配線21B〜24Bは、中間部分で直線部を含んでいる。このように、本開示において、「平面状に巻回されたスパイラル配線」とは、平面状に形成された曲線(2次元曲線)であって、ターン数が1周未満の曲線であってもよく、一部直線部を有していてもよい。
【0137】
第1、第4スパイラル配線21B,24Bは、その両端が外側に位置する第1柱状配線31および第2柱状配線32に接続され、第1柱状配線31および第2柱状配線32からインダクタ部品1Cの中心側に向かって孤を描く曲線状である。
【0138】
第2、第3スパイラル配線22B,23Bは、その両端が内側に位置する第1柱状配線31および第2柱状配線32に接続され、第1柱状配線31および第2柱状配線32からインダクタ部品1Cの縁側に向かって孤を描く曲線状である。
【0139】
ここで、第1〜第4スパイラル配線21B〜24Bのそれぞれにおいて、スパイラル配線21B〜24Bが描く曲線と、スパイラル配線21B〜24Bの両端を結んだ直線とに囲まれる範囲を内径部分とする。このとき、Z方向からみて、いずれのスパイラル配線21B〜24Bについても、その内径部分同士は重ならない。
【0140】
一方、第1、第2スパイラル配線21B,22Bはお互いに近接している。すなわち、第1スパイラル配線21Bで発生した磁束は、近接する第2スパイラル配線22Bの周囲を回り込み、第2スパイラル配線22Bで発生した磁束は、近接する第1スパイラル配線21Bの周囲を回り込む。これは、互いに近接している第3、第4スパイラル配線23B,24Bでも同様である。したがって、第1スパイラル配線21Bと第2スパイラル配線22Bとの磁気結合、第3スパイラル配線23Bと第4スパイラル配線24Bとの磁気結合は強くなる。
【0141】
なお、第1、第2スパイラル配線21B,22Bにおいて、同じ側にある一端からその反対側にある他端に向かって同時に電流が流れた場合、互いの磁束は強めあう。これは、第1スパイラル配線21Bと第2スパイラル配線22Bの同じ側にある各一端を共にパルス信号の入力側、その反対側にある各他端を共にパルス信号の出力側とした場合に、第1スパイラル配線21Bと第2スパイラル配線22Bとは正結合されていることを意味する。一方、例えば、第1スパイラル配線21Bと第2スパイラル配線22Bの一方のスパイラル配線では一端側を入力、他端側を出力とし、他方のスパイラル配線では一端側を出力、他端側を入力とすれば、第1スパイラル配線21Bと第2スパイラル配線22Bとは負結合されている状態とできる。これは第3、第4スパイラル配線23B,24Bについても同様である。
【0142】
第1、第3スパイラル配線21B,23Bの一端側に接続された第1柱状配線31、および、第2、第4スパイラル配線22B,24Bの他端側に接続された第2柱状配線32は、それぞれ、第1磁性層11の内部を貫通し、上面において露出する。第1、第3スパイラル配線21B,23Bの他端側にビア導体25を介して接続された第2柱状配線32、および、第2、第4スパイラル配線22B,24Bの一端側にビア導体25を介して接続された第1柱状配線31は、それぞれ、第2磁性層12の内部を貫通し、下面において露出する。ビア導体25は、絶縁層15の内部を貫通する。第1柱状配線31は、第1外部端子41に接続される。第2柱状配線32は、第2外部端子42に接続される。
【0143】
この構成によれば、例えば、インダクタ部品1Cを基板に埋め込むとともに、第1磁性層11の上面側にパルス信号の入力ラインを配置し、第2磁性層12の下面側にパルス信号の出力ラインを配置することにより、第1、第2スパイラル配線21B,22Bの組、第3、第4スパイラル配線23B,24Bの組のそれぞれをより容易に負結合させることができる。
【0144】
なお、インダクタ部品1Cでは、スパイラル配線21B〜24Bの柱状配線31,32との接続位置からチップの外側に向かってさらに配線が伸びているが、これはSAPにて銅配線を形成後、追加銅電解めっきを行う際の給電配線と接続される配線である。この給電配線によりSAPの給電膜を除去した後で合っても、追加銅電解めっきを容易に行うことができ、配線間距離を狭くすることができる。また、SAP形成後に追加銅電極めっきを行うことで、第1、第2スパイラル配線21B,22Bの配線間距離および第3、第4スパイラル配線23B,24Bの配線間距離を狭くでき、高い磁気結合を得ることができる。
【0145】
なお、スパイラル配線は4つに限られず、1〜3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。また、スパイラル配線の両端部は、磁性層の同じ側に磁性層を貫通する柱状配線に接続されてもよいし、一つの端部において、第1主面側に磁性層を貫通する柱状配線、第2主面側に磁性層を貫通する柱状配線の両方に接続されていてもよい。
【0146】
前記インダクタ部品1Cを製造する方法について説明すると、基板を準備し、基板上に絶縁層15を形成し、第1絶縁層15の第1主面15a上にスパイラル配線21B〜24B及びスパイラル配線21B〜24Bの一端上に第1柱状配線31を形成し、スパイラル配線21B〜24Bのそれぞれの少なくとも一部に接触するように磁性層10を形成する。その後、基板を除去する。さらに、スパイラル配線21B〜24Bの他端の下方となる第1絶縁層15を第2主面15b側からレーザードリルなどで開口し、ビア導体25、第2柱状配線32を形成する。そして、第1絶縁層15の第2主面15b側に磁性層10を形成し、磁性層10を上側、下側から研磨することで第1柱状配線31、第2柱状配線32を露出させ、被覆膜50を形成、開口後、第1外部端子41、第2外部端子42を形成すればよい。
【0147】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第4実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0148】
磁性層は、スパイラル配線との接触部分において、スパイラル配線の側面にのみ接触していてもよく、または、磁性層は、スパイラル配線との接触部分において、スパイラル配線の上面にのみ接触していてもよい。これらの場合であっても、スパイラル配線の側面及び上面が絶縁層で覆われている構成に対して、絶縁層の割合を減少できる。