特許第6935345号(P6935345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6935345
(24)【登録日】2021年8月27日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】火災報知設備
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20210906BHJP
   G08B 29/16 20060101ALI20210906BHJP
   G06F 11/20 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   G08B17/00 C
   G08B29/16
   G06F11/20 633
   G06F11/20 641
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-29246(P2018-29246)
(22)【出願日】2018年2月22日
(65)【公開番号】特開2019-144911(P2019-144911A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2020年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】石田 憲
(72)【発明者】
【氏名】金子 茂
(72)【発明者】
【氏名】小野 武宏
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳大
【審査官】 大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−339558(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2007−0063753(KR,A)
【文献】 特開平07−244792(JP,A)
【文献】 特開2017−068392(JP,A)
【文献】 特開2005−122626(JP,A)
【文献】 特開2017−068524(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0240105(US,A1)
【文献】 特開2004−145665(JP,A)
【文献】 特開平8−44980(JP,A)
【文献】 特開平2−39398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
G08B 29/00
G06F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機から引き出された伝送路に固有のアドレスが設定された伝送機能を有する火災感知器を接続して火災を監視する火災報知設備に於いて、
前記受信機に、
前記1又は複数の伝送路と接続し、前記火災感知器との間で信号を送受信して火災を検出するサブCPUが複数設けられ、
さらに、前記複数のサブCPUから火災検出情報を受信して自己に接続された第1警報表示部により警報表示するメインCPUが設けられ、
前記複数のサブCPUの内の1台をバックアップ用サブCPUとし、前記バックアップ用サブCPUに前記メインCPUの機能が停止した場合に最小限必要な所定の警報表示を行う第2警報表示部が接続され、
前記バックアップ用サブCPUは、自己又は他の前記サブCPUの火災検出情報により前記第2警報表示部を作動して警報表示させることを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記メインCPUと前記複数のサブCPUはバス接続されており、前記複数のサブCPUは火災検出時に火災検出情報を前記バスに出力し、
前記メインCPUが正常な場合、前記メインCPUは前記火災検出情報を受信時に前記第1警報表示部の作動により警報表示させ、
前記メインCPUの正常な場合及び機能停止した場合のいずれにおいても、前記バックアップ用サブCPUは自己の火災検出時及び前記バックアップ用サブCPUを除く前記複数のサブCPUから前記火災検出情報の受信時に前記第2警報表示部の作動により警報表示させることを特徴とする火災報知設備。
【請求項3】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記バックアップ用サブCPUに接続された前記第2警報表示部には、火災代表灯とアドレス表示器が設けられたことを特徴とする火災報知設備。
【請求項4】
請求項3記載の火災報知設備に於いて、
前記メインCPUに接続された前記第1警報表示部には、火災検出情報を画面表示するディスプレイ装置と、前記火災代表灯を除く1又は複数の表示灯が設けられたことを特徴とする火災報知設備。
【請求項5】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記メインCPUは、周期的に前記サブCPUに対し定期通報信号を送信しており、前記サブCPUは前記定期通報信号の受信が断たれた場合に前記メインCPUの機能停止を検出することを特徴とする火災報知設備。
【請求項6】
請求項5記載の火災報知設備に於いて、
前記バックアップ用サブCPUはウォッチドッグタイマによって自己の異常を検出するものであって、前記メインCPUの機能停止又は自己の異常のいずれを検出した場合に異常検出灯によって異常を警報することを特徴とする火災報知設備。
【請求項7】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記サブCPUから引き出された前記伝送路には、更に、固有アドレスが設定された伝送機能を有する中継器が接続され、前記中継器に発信機が接続されるか、又は前記中継器から引き出された感知器回線にオンオフ火災感知器が接続されたことを特徴とする火災報知設備。
【請求項8】
請求項1記載の火災報知設備に於いて、
前記サブCPUから引き出された前記伝送路には、更に、固有アドレスが設定された伝送機能を有するガス漏れ検出器が接続され、
前記バックアップ用サブCPUは自己に接続された前記第2警報表示部には、火災代表灯、ガス漏れ代表灯及びアドレス表示器が設けられたことを特徴とする火災報知設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信機から引き出された伝送路に固有のアドレスが設定された伝送機能を有する火災感知器を接続して火災を監視する火災報知設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、R型として知られた火災報知設備にあっては、受信機から引き出された伝送路に、固有のアドレスが設定された伝送機能を有する火災感知器等の端末装置を接続し、火災検出時には、例えば火災感知器からの火災割込みに基づき、受信機から検索コマンドを発行して発報した火災感知器のアドレスを特定し、受信機で火災代表灯を点灯して主音響警報を出力し、更に、7セグメント表示器等に火災を検出した感知器アドレスを表示するようにしている。
【0003】
このように、火災を検出した火災感知器のアドレスが分かると、適切な避難誘導や消火活動が可能となり、特に規模の大きな設備の火災監視には不可欠な機能となっている。
【0004】
また、R型の火災報知設備では、メインCPUと複数のサブCPUが設けられ、CPU間通信を行うようにしており、サブCPUは伝送路毎に設けられ、伝送路に接続された火災感知器との間で信号を送受信して火災を検出すると火災検出情報をメインCPUに送信する。
【0005】
メインCPUには火災代表灯、7セグメント表示器、液晶ディスプレイ装置、LED表示灯等の警報表示部が接続されており、サブCPUから送信された火災検出情報を受信すると、リレー回路の作動により火災代表灯を点灯すると共に7セグメント表示器に火災が検出された感知器アドレスを表示し、更に、スピーカから主音響警報を出力させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−076064号公報
【特許文献2】特開2017−191418号公報
【特許文献3】特開2000−339558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のメインCPUと複数のサブCPUが設けられた火災報知設備の受信機にあっては、設備の運用中に、メインCPUが故障等により機能停止すると、サブCPUからの火災検出情報に基づく火災警報表示ができなくなり、火災監視機能が失われる問題がある。
【0008】
この問題を解決するためには、メインCPUを二重化することが考えられるが、メインCPUを二重化すると、メインCPUに接続している火災代表灯、7セグメント表示器、液晶ディスプレイ装置、LED表示灯等の警報表示部を駆動するための駆動回路部も二重化する必要があり、回路構成が複雑化すると共に回路規模も大きくなり、設備コストが高くなる問題がある。
【0009】
本発明は、メインCPUを二重化することなく、メインCPUの機能停止に対しサブCPUを利用して火災監視に最小限必要な警報表示を簡単に可能とする火災報知設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(火災報知設備)
本発明は、受信機から引き出された伝送路に固有のアドレスが設定された伝送機能を有する火災感知器を接続して火災を監視する火災報知設備に於いて、
受信機に、
1又は複数の伝送路と接続し、火災感知器との間で信号を送受信して火災を検出するサブCPUが複数設けられ、
さらに、複数のサブCPUから火災検出情報を受信して自己に接続された第1警報表示部により警報表示するメインCPUが設けられ、
複数のサブCPUの内の1台をバックアップ用サブCPUとし、バックアップ用サブCPUにメインCPUの機能が停止した場合に最小限必要な所定の警報表示を行う第2警報表示部が接続され、
バックアップ用サブCPUは、自己又は他の前記サブCPUの火災検出情報により第2警報表示部を作動して警報表示させることを特徴とする。
【0011】
(メインCPUが正常な場合と機能停止した場合の制御)
メインCPUと複数のサブCPUはバス接続されており、複数のサブCPUは火災検出時に火災検出情報をバスに出力し、
メインCPUが正常な場合、メインCPUは火災検出情報を受信時に第1警報表示部の作動により警報表示させ、
メインCPUの正常な場合及び機能停止した場合のいずれにおいても、バックアップ用サブCPUは自己の火災検出時及びバックアップ用サブCPUを除く複数のサブCPUから火災検出情報の受信時に第2警報表示部の作動により警報表示させる。
【0012】
(メインCPUの機能停止に対し最小限必要な警報表示)
バックアップ用サブCPUに接続された第2警報表示部には、火災代表灯とアドレス表示器が設けられる。
【0013】
(メインCPUの警報表示)
メインCPUに接続された第1警報表示部には、火災検出情報を画面表示するディスプレイ装置と、火災代表灯を除く1又は複数の表示灯が設けられる。
【0014】
(メインCPUの機能停止検出)
メインCPUは、周期的にサブCPUに対し定期通報信号を送信しており、サブCPUは定期通報信号の受信が断たれた場合にメインCPUの機能停止を検出する。
【0015】
(ウォッチドッグタイマ)
バックアップ用サブCPUはウォッチドッグタイマによって自己の異常を検出するものであって、メインCPUの機能停止又は自己の異常のいずれを検出した場合に異常検出灯によって異常を警報する。
【0016】
(発信機、オンオフ火災感知器)
サブCPUから引き出された伝送路には、更に、固有アドレスが設定された伝送機能を有する中継器が接続され、中継器に発信機が接続されるか、又は中継器から引き出された感知器線にオンオフ火災感知器が接続される。
【0017】
(ガス漏れ警報器)
サブCPUから引き出された伝送路には、更に、固有アドレスが設定された伝送機能を有するガス漏れ検出器が接続され、
バックアップ用サブCPUに接続された第2警報表示部には、火災代表灯、ガス漏れ代表灯及びアドレス表示器が設けられる。
【発明の効果】
【0018】
(基本的な効果)
本発明は、
受信機から引き出された伝送路に固有のアドレスが設定された伝送機能を有する火災感知器を接続して火災を監視する火災報知設備に於いて、受信機に、1又は複数の伝送路と接続し、火災感知器との間で信号を送受信して火災を検出するサブCPUが複数設けられ、さらに、複数のサブCPUから火災検出情報を受信して自己に接続された第1警報表示部により警報表示するメインCPUが設けられ、複数のサブCPUの内の1台をバックアップ用サブCPUとし、バックアップ用サブCPUにメインCPUの機能が停止した場合に最小限必要な所定の警報表示を行う第2警報表示部が接続され、バックアップ用サブCPUは、自己又は他の前記サブCPUの火災検出情報により第2警報表示部を作動して警報表示させるようにしたため、メインCPUの機能が停止しても、バックアップ用サブCPUにより火災監視に最小限必要な警報表示が行われ、メインCPUを二重化する場合に比べ、メインCPUに接続していた警報表示部の一部をバックアップ用サブCPUの接続に変更するだけで済むことから、回路規模は実質的に増加することがなく、簡単且つ容易に、メインCPUの機能停止に対し火災監視機能は喪失せず、最小限必要な機能を維持することで高い信頼性が得られる。
【0019】
(メインCPUが正常な場合と機能停止した場合の制御による効果)
また、メインCPUと複数のサブCPUはバス接続されており、複数のサブCPUは火災検出時に火災検出情報をバスに出力し、メインCPUが正常な場合、メインCPUは火災検出情報を受信時に第1警報表示部の作動により警報表示させ、メインCPUの正常な場合及び機能停止した場合のいずれにおいても、バックアップ用サブCPUは自己の火災検出時及びバックアップ用サブCPUを除く複数のサブCPUから火災検出情報の受信時に第2警報表示部の作動により警報表示させるようにしたため、メインCPUが正常な場合と機能停止した場合のいずれについても、火災監視に最小限必要な第2警報表示部による警報表示がバックアップ用サブCPUにより行われ、メインCPUが正常な場合は第1警報表示部と第2警報表示部の両方の作動による警報表示を十分に行うことができ、メインCPUが機能停止した場合には、第2警報表示部による最小限必要な警報表示ができる。
【0020】
(バックアップ用サブCPUの警報表示による効果)
また、バックアップ用サブCPUに接続された第2警報表示部には、火災代表灯とアドレス表示器が設けられたため、メインCPUが機能停止しても、受信機で火災代表灯が点滅又は点灯し、また、感知器アドレスが表示されることで、適切な避難誘導や消火活動が可能となる。
【0021】
(メインCPUの警報表示による効果)
また、メインCPUに接続された第1警報表示部には、火災検出情報を画面表示するディスプレイ装置と、火災代表灯を除く1又は複数のサブCPU表示灯が設けられ、メインCPUが正常な場合には、バックアップ用サブCPUによる第2警報表示部の警報表示と合わせて十分な火災警報表示ができる。
【0022】
また、バックアップ用サブCPUが機能停止した場合、第2警報表示部による警報表示ができなくなっても、メインCPUに接続された第1警報表示部に設けたディスプレイ装置により火災警報と火災を検出した感知器アドレス等の火災検出情報が表示されることから、この場合にも火災監視機能が失われず、高い信頼性が確保できる。
【0023】
(メインCPUの機能停止検出の効果)
また、メインCPUは、周期的にサブCPUに対し定期通報信号を送信しており、サブCPUは定期通報信号の受信が断たれた場合にメインCPUの機能停止を検出するようにする、所謂ハートビート監視によりメインCPUが機能停止した場合にハートビート監視タイマがタイムアウトしてメインCPUの機能停止を確実に検出する。
【0024】
(ウォッチドッグタイマの効果)
また、バックアップ用サブCPUはウォッチドッグタイマによって自己の異常を検出するものであって、メインCPUの機能停止又は自己の異常のいずれを検出した場合に異常検出灯によって異常を警報することができるので、メインCPU・バックアップ用サブCPUのいずれに異常が生じても異常を警報することができる。
【0025】
(発信機とオンオフ火災感知器による効果)
また、サブCPUから引き出された伝送路には、更に、固有アドレスが設定された伝送機能を有する中継器が接続され、中継器に発信機が接続されるか、又は中継器から引き出された感知器緯線にオンオフ火災感知器が接続されたため、発信機やオンオフ火災感知器による火災監視についても、メインCPUが機能停止した場合、バックアップ用サブCPUにより火災監視に最小限必要な警報表示が受信機で行なわれ、例えば、火災代表灯が点灯し、また、感知器アドレスが表示されることで、適切な避難誘導や消火活動が可能となる。
【0026】
(ガス漏れ警報器の効果)
また、サブCPUから引き出された伝送路には、更に、固有アドレスが設定された伝送機能を有するガス漏れ検出器が接続され、バックアップ用サブCPUに接続された第2警報表示部には、火災代表灯、ガス漏れ代表灯及びアドレス表示器が設けられたため、ガス漏れ監視についても、メインCPUの機能停止した場合、ガス漏れ監視に最小限必要な第2警報表示部による警報表示がバックアップ用サブCPUにより行われ、ガス漏れ監視についても高い信頼性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】受信機にメインCPUとサブCPUが設けられた火災報知設備の実施形態を示した説明図
図2図1のメインCPUの制御を示したフローチャート
図3図1のサブCPUの制御を示したフローチャート
図4図1のバックアップ用サブCPUの制御を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0028】
[火災報知設備]
(火災報知設備の概要)
図1は受信機にメインCPUとサブCPUが設けられた火災報知設備の実施形態を示した説明図である。
【0029】
図1に示すように、火災報知設備が設置された建物の一階の管理人室などには例えばR型の受信機10が設置され、受信機10から警戒区域に対し系統毎に分けて伝送路12が引き出されている。
【0030】
伝送路12には固有のアドレスが設定された伝送機能を有する複数の火災感知器14が接続されている。また、伝送路12には、図示しないが、伝送機能を備えたガス漏れ警報器、伝送機能を備えた中継器を介して接続された発信機、更には,また、オンオフ火災感知器が接続された感知器回線が引き出された中継器等が接続されている。
【0031】
ここで、伝送路12に接続される火災感知器14、中継器等の端末機器に設定される最大アドレス数は例えば255としており、伝送路12には最大255台の火災感知器14を含む端末機器が接続できる。
【0032】
(受信機の機能構成)
受信機10には、メインCPU16と複数のサブCPU基板18−1〜18−3が設けられ、サブCPU基板18−1〜18−3にはサブCPU20−1〜20−3と伝送部24−1〜24−3が設けられ、サブCPU基板18−3に設けられたサブCPU20−3をバックアップ用サブCPU20−3としている。なお、以下の説明では、バックアップ用サブCPU20−3を単にサブCPU20−3という場合がある。また、サブCPU20−1〜20−3及び伝送部24−1〜24−3をサブCPU20及び伝送部24という場合がある。
【0033】
メインCPU16とサブCPU20−1〜20−3は、シリアル転送バス15で接続されており、相互にデータを送受信する。シリアル転送バス15としては、例えばコントロールエリアネットワーク(CAN)が使用され、フレーム(メッセージともいう)と呼ばれるパケット単位にデータを送信する。
【0034】
コントロールエリアネットワーク(CAN)は、ピアツーピアネットワークであり、メインCPU16とサブCPU20−1〜20−3はノードとして機能し、ノードがデータ送信可能な状態になると、バスがビジーかどうかチェックし、フレームをネットワーク上に送信する。
【0035】
ネットワーク上に送信されたフレームには送信元や受信先のアドレスはなく、ネットワーク全体に固有なアービトレーションID(メッセージIDともいう)が付けられており、全ノードがフレームを受信し、各ノードはアービトレーションIDによりそのフレームを受け取るかどうかを判断している。アービトレーションIDはフレームの識別番号であり、同時に、フレームの優先度も表している。
【0036】
メインCPU16には、液晶表示パネル等を用いたタッチパネル付きのディスプレイ装置26、複数のLED表示灯が設けられたLED表示部28、スピーカが設けられた音響警報部32、及び、移報部33が接続されており、この内、ディスプレイ装置26とLED表示部28が火災警報表示を行う第1警報表示部として機能する。
【0037】
バックアップ用サブCPU20−3には、リレー回路部34を介して火災代表灯36とガス漏れ代表灯38が接続される。また、バックアップ用サブCPU20−3にはアドレス表示器として機能する所定桁数の7セグメント表示器40が接続される。このようにバックアップ用サブCPU20−3に接続された火災代表灯36、ガス漏れ代表灯38及び7セグメント表示器40は、メインCPU16の機能が停止した場合に最小限必要な火災警報表示を行うための第2警報表示部を構成している。
【0038】
本実施形態のバックアップ用サブCPU20−3にリレー回路部34を介して火災代表灯36とガス漏れ代表灯38を接続すると共に7セグメント表示器40を接続した回路部は、従来の受信機では、メインCPU16に接続されていた回路部であり、本実施形態のようにバックアップ用サブCPU20−3に接続を変更しても、ハードウェア的な回路規模は実質的に同じであり、受信機10の回路規模が増加することはない。
【0039】
(サブCPUとメインCPUによる火災監視制御)
サブCPU20は、伝送部24に指示して火災感知器14との間で所定の通信プロトコルに従って信号を送受信することで、火災監視制御を行っている。伝送部24から火災感知器14に対する下り信号は電圧モードで伝送している。この電圧モードの信号は、伝送路12の線路電圧を例えば18ボルトと30ボルトの間で変化させる電圧パルスとして伝送される。
【0040】
これに対し火災感知器14から伝送部24に対する上り信号は電流モードで伝送される。この電流モードにあっては、伝送路12に伝送データのビット1のタイミングで信号電流を流し、いわゆる電流パルス列として上り信号が受信機10に伝送される。
【0041】
サブCPU20による火災監視制御は、通常の監視中にあっては、一定周期毎に、伝送部24に指示して、一括AD変換コマンドを含むブロードキャストの一括AD変換信号を送信しており、この一括AD変換信号を受信した火災感知器14は、煙濃度又は温度をセンサデータとして検出して保持する。続いて、サブCPU20は、端末アドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を送信している。
【0042】
火災感知器14は自己アドレスに一致するアドレスを持つ呼出信号を受信すると、そのとき保持しているセンサデータを含む応答信号を伝送部24に送信する。また、火災感知器14は火災を検出すると伝送部24に対し火災割込み信号を送信する。
【0043】
サブCPU20は伝送部24を介して火災割込み信号を受信すると、グループ検索コマンド信号を送信して火災を検出している火災感知器14を含むグループを特定し、続いて、グループ内検索コマンド信号を送信して火災を検出している火災感知器14のアドレスを特定し、火災が検出された感知器アドレスを含む火災検出情報を、シリアル転送バス15を介してメインCPU16及びバックアップ用サブCPU20−3に送信する。
【0044】
シリアル転送バス15をコントロールエリアネットワーク(CAN)とした場合、サブCPU20−1,20−2は火災を検出したときに火災検出フレーム(火災検出情報)をネットワークに送信し、メインCPU16及びバックアップ用サブCPU20−3でサブCPU20−1,20−2が送信した火災検出フレームを受信する。
【0045】
また、バックアップ用サブCPU20−3は火災を検出したときに火災検出フレームをネットワークに送信し、メインCPU16でバックアップ用サブCPU20−3が送信した火災検出フレームを受信する。
【0046】
メインCPU16はサブCPU20−1〜20−3の何れから火災検出情報を受信すると、ディスプレイ装置26に火災が検出された感知器アドレスに基づき火災発生場所を含む火災警報情報を表示させると共に、音響警報部32のスピーカから火災発生を示す所定の主音響警報を出力させ、更に、移報部33により火災移報信号を外部に出力して所定の連動制御等を行わせる。
【0047】
また、バックアップ用サブCPU20−3も、メインCPU16が受信したと同じ火災検出情報を受信しており、リレー回路部34の作動によるリレー接点の閉成により火災代表灯36を点灯又は点滅させ、また、7セグメント表示器40に火災を検出した感知器アドレスを例えば伝送路に対応した系統番号と共に数値表示させる。
【0048】
この点は、サブCPU20−1〜20−3の何れでガス漏れ検出器によるガス漏れ情報を検出した場合も同様であり、メインCPU16はディスプレイ装置26にガス漏れ発生場所を含むガス漏れ警報情報を表示させると共に、音響警報部32からガス漏れ発生を示す所定の主音響警報を出力させ、更に、移報部33によりガス漏れ移報信号を外部に出力して所定の連動制御等を行わせる。
【0049】
また、バックアップ用サブCPU20−3も、メインCPU16が受信したと同じガス漏れ検出情報を受信しており、リレー回路部34の作動によるリレー接点の閉成によりガス漏れ火災代表灯38を点灯又は点滅させ、また、7セグメント表示器40にガス漏れを検出した検出器アドレスを例えば伝送路に対応した系統番号と共に数値表示させる。
【0050】
(メインCPUの機能停止の検出)
サブCPU20−1〜20−3でメインCPU16の機能停止を検出するため、メインCPU16は定期通報フレームを周期的に送信し、サブCPU20−1〜20−3には定期通報フレームの受信によりリセットスタートされるハートビート監視タイマが設けられている。
【0051】
メインCPU16が正常であれば、周期的に定期通報フレームがネットワークに送信され、定期通報フレームを正しく受信したサブCPU20−1〜20−3はハートビート監視タイマをリセットスタートし、メインCPU16の機能停止は検出されない。
【0052】
これに対しメインCPU16が機能停止すると定期通報フレームが送信されなくなり、サブCPU20−1〜20−3のハートビート監視タイマがリセットスタートされずにタイムアウトとなってメインCPU16の機能停止が検出される。
【0053】
サブCPU20−1,20−2及びバックアップ用サブCPU20−3は、メインCPU16の機能停止を検出すると、メインCPU16に対する火災検出フレーム(火災検出情報)の送信を禁止する。
【0054】
また、バックアップ用サブCPU20−3は、メインCPU16の機能停止を検出した場合、火災代表灯36とガス漏れ代表灯38及び7セグメント表示器40を利用し、メインCPU16の機能停止を示す障害表示を行う。このメインCPU16の機能停止を示す障害表示として、バックアップ用サブCPU20−3は、例えば、火災代表灯36、ガス漏れ代表灯38及び7セグメント表示器40を一斉に点滅させる。
【0055】
(メインCPUが機能停止した場合の火災監視制御)
メインCPU16の機能が停止すると、ディスプレイ装置26や音響警報部32を用いたメインCPU16による警報表示は行われず、バックアップ用サブCPU20−3のみによる警報表示が行われることになる。
【0056】
メインCPU16が機能停止した状態で例えばサブCPU20−1又はサブCPU20−2で火災が検出された場合、シリアル転送バス15に送信された火災検出情報はバックアップ用サブCPU20−3で受信され、バックアップ用サブCPU20−3はリレー回路部34の作動によるリレー接点の閉成により火災代表灯36を点灯又は点滅させ、また、7セグメント表示器40に火災を検出した感知器アドレスを例えば伝送路に対応した系統番号と共に数値表示させ、最小限必要な火災警報表示を行う。
【0057】
なお、メインCPU16が機能停止した状態で例えばサブCPU20−1又はサブCPU20−2でガス漏れが検出された場合、シリアル転送バス15に送信されたガス漏れ検出情報はバックアップ用サブCPU20−3で受信され、バックアップ用サブCPU20−3はリレー回路部34の作動によるリレー接点の閉成によりガス漏れ代表灯38を点灯又は点滅させ、また、7セグメント表示器40にガス漏れを検出した検出器アドレスを例えば伝送路に対応した系統番号と共に数値表示させ、最小限必要なガス漏れ警報表示を行う。
【0058】
[火災監視制御]
(メインCPUの制御)
図2図1のメインCPUの制御を示したフローチャートである。図2に示すように、メインCPU16はステップS1でサブCPU20(サブCPU20−1,20−2又はバックアップ用サブCPU20−3)から送信された火災検出情報の受信を判別するとステップS2に進み、ディスプレイ装置26に火災が検出された感知器アドレスに基づき火災発生場所を含む火災警報情報を表示させると共に、音響警報部32のスピーカから火災発生を示す所定の主音響警報を出力させ、更に、移報部33により火災移報信号を外部に出力して所定の連動制御等を行わせる。
【0059】
続いて、メインCPU16はステップS3でサブCPU20から送信された火災復旧情報の受信を判別するとステップS4に進み、ディスプレイ装置26の火災警報情報の表示を終了させ、音響警報部32からの主音響警報の出力を停止させ、更に、移報部33により火災移報信号の出力を停止させる。
【0060】
(サブCPUの制御)
図3図1のサブCPUの制御を示したフローチャートである。図3に示すように、例えばサブCPU20−1は、ステップ11で火災監視を行っており、ステップS12で火災を判定するとステップS13に進み、メインCPU16の正常を判別した場合はステップS14に進み、メインCPU16とバックアップ用サブCPU20−3の両方に火災検出情報を送信する。
【0061】
これによりメインCPU16はディスプレイ装置26に火災が検出された感知器アドレスに基づき火災発生場所を含む火災警報情報を表示させ、音響警報部32のスピーカから火災発生を示す所定の主音響警報を出力させ、更に、移報部33により火災移報信号を外部に出力して所定の連動制御等を行わせ、また、バックアップ用サブCPU20−3は、リレー回路部34の作動によるリレー接点の閉成で火災代表灯36を点灯又は点滅させ、また、7セグメント表示器40に火災を検出した感知器アドレスを例えば伝送路に対応した系統番号と共に数値表示させる。
【0062】
一方、サブCPU20−1は、ステップS13でメインCPU16の機能停止を判別した場合はステップS15に進み、バックアップ用サブCPU20−3にのみ火災検出情報を送信し、バックアップ用サブCPU20−3により、リレー回路部34の作動によるリレー接点の閉成で火災代表灯36を点灯又は点滅させ、また、7セグメント表示器40に火災を検出した感知器アドレスを例えば伝送路に対応した系統番号と共に数値表示させる火災監視に最小限必要な警報表示を行わせる。
【0063】
続いて、サブCPU20−1は、ステップS16で火災復旧を判別すると、ステップS17に進んでメインCPU16の正常を判別した場合はステップS18に進み、メインCPU16とバックアップ用サブCPU20−3の両方に火災検出情報を送信し、それぞれの警報表示を停止して復旧させる。
【0064】
一方、サブCPU20−1は、ステップS17でメインCPU16の機能停止を判別した場合はステップS19に進み、リレー回路部34の復旧によるリレー接点の開成で火災代表灯36を消灯させ、また、7セグメント表示器40の感知器アドレスの表示を停止して復旧させる。なお、サブCPU20−2の制御も同じになる。
【0065】
(バックアップ用サブCPUの制御)
図4図1のバックアップ用サブCPUの制御を示したフローチャートである。図4に示すように、バックアップ用サブCPU20−3は、ステップ21で火災監視を行っており、ステップS22で火災を判定するとステップS23に進み、メインCPU16の正常を判別した場合はステップS24に進み、メインCPU16に火災検出情報を送信し、メインCPU16によりディスプレイ装置26に火災が検出された感知器アドレスに基づき火災発生場所を含む火災警報情報を表示させ、音響警報部32のスピーカから火災発生を示す所定の主音響警報を出力させる。
【0066】
続いて、バックアップ用サブCPU20−3は、ステップS25に進み、リレー回路部34の作動によるリレー接点の閉成で火災代表灯36を点灯又は点滅させ、また、7セグメント表示器40に火災を検出した感知器アドレスを例えば伝送路に対応した系統番号と共に数値表示させる。
【0067】
一方、バックアップ用サブCPU20−3はステップS23でメインCPU16の機能停止を判別した場合はステップ21をスキップしてメインCPU16への火災検出情報の送信は行わずにステップS25に進み、火災代表灯36を点灯又は点滅させ、また、7セグメント表示器40に感知器アドレスを表示させる。
【0068】
続いて、バックアップ用サブCPU20−3は、ステップS26で火災復旧を判別すると、ステップS27に進んでリレー回路部34の復旧によるリレー接点の開成で火災代表灯36を消灯させ、また、7セグメント表示器40の感知器アドレスの表示を消去して復旧させる。
【0069】
続いて、バックアップ用サブCPU20−3は、ステップS28でサブCPU20−1または20−2からの火災検出情報の受信を判別するとステップS29に進み、火災代表灯36を点灯又は点滅させ、また、7セグメント表示器40に感知器アドレスを表示させる。
【0070】
続いて、バックアップ用サブCPU20−3は、ステップS30でサブCPU20−1または20−2からの火災復旧情報の受信を判別するとステップS31に進み、火災代表灯36を消灯させ、また、7セグメント表示器40のアドレス表示を停止して復旧させる。
【0071】
また、バックアップ用サブCPU20−3はウォッチドッグタイマによる自己監視を行い、異常が発生してウォッチドッグタイマがリセットされずにタイムアウトした際、バックアップ用サブCPU20−3自身をリセットして自己復旧を行う。
【0072】
[本発明の変形例]
(シリアル転送バス)
上記の実施形態は、メインCPUとサブCPUの間で情報を伝送するシリアル転送バスとしてコントロールエリアネットワーク(CAN)を使用したが、本発明はこれに限定されず、適宜のシリアル転送バスを用いることかできる。
【0073】
(メインCPUが機能停止した場合の警報表示)
上記の実施形態は、メインCPUが機能停止した場合にバックアップ用サブCPUで行う火災監視に最小限必要な警報表示として、火災代表灯又はガス漏れ代表灯の作動と7セグメント表示器によるアドレス表示を例にとっているが、これに限定されず、火災警報又はガス漏れ警報と火災又はガス漏れ検出場所が分かる警報表示であれば、適宜の表示機器による最小限必要な警報表示とすることができる。
【0074】
(P型受信機)
上記の実施形態は、R型の受信機からの伝送路を介してR型の火災感知器を接続した火災報知設備を例にとっているが、P型の受信機から引き出した感知器回線にアドレスを設定すると共に伝送機能を備えたアドレッサブル火災感知器を接続した火災報知設備についても、同様に、受信機にメインCPUと複数のサブCPUを設けた場合に、サブCPUの内の1台をバックアップ用サブCPUとして、火災監視に最小限必要な警報表示部を接続し、メインCPUの機能が停止した場合に、バックアップ用CPUにより最小限必要な警報表示を行うようにしても良い。
【0075】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0076】
10:受信機
12:伝送路
14:火災感知器
15:シリアル転送バス
16:メインCPU
18−1〜18−3:サブCPU基板
20−1,20−2:サブCPU
20−3:バックアップ用サブCPU
24−1〜24−3:伝送部
26:ディスプレイ装置
28:LED表示部
30:操作部
32:音響警報部
33:移報部
34:リレー回路部
36:火災代表灯
38:ガス漏れ代表灯
40:7セグメント表示器
図1
図2
図3
図4