(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6935397
(24)【登録日】2021年8月27日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】挟持具及び動物の取り扱い方法
(51)【国際特許分類】
A01K 13/00 20060101AFI20210906BHJP
A01K 15/04 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
A01K13/00 Z
A01K15/04 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-520873(P2018-520873)
(86)(22)【出願日】2017年5月26日
(86)【国際出願番号】JP2017019740
(87)【国際公開番号】WO2017209003
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2020年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-108858(P2016-108858)
(32)【優先日】2016年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520352528
【氏名又は名称】株式会社九州動物専門学院
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(72)【発明者】
【氏名】河本 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】大山田 真美
(72)【発明者】
【氏名】寺田 朋嗣
(72)【発明者】
【氏名】水井 雅彦
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−27543(JP,U)
【文献】
特開2001−79062(JP,A)
【文献】
特開2012−75488(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第2419063(FR,A1)
【文献】
登録実用新案第3131759(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3119277(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 13/00
A01K 15/00
A01K 29/00
A61H 39/04
A61D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結され、連結された部分を中心に開閉可能で、四足歩行のほ乳類の体を挟持する一対の挟持片と、
互いに向かい合うように前記挟持片それぞれに形成され、前記一対の挟持片に挟持された前記ほ乳類の体を押圧する一対の押圧部と、
前記押圧部が前記ほ乳類の体を押圧する方向に、前記一対の挟持片を付勢する弾性部材と、
を備え、
前記押圧部は、
前記挟持片の中腹から突き出して、前記ほ乳類のラストリブとタックアップとの間の筋肉を押圧する、
挟持具。
【請求項2】
前記一対の押圧部が、
前記ほ乳類の首の後ろの筋肉を挟持可能である、
請求項1に記載の挟持具。
【請求項3】
前記押圧部が、球形である、
請求項1又は2に記載の挟持具。
【請求項4】
前記挟持片に対して脱着可能で、かつ、互いに形状が異なる前記押圧部を複数有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の挟持具。
【請求項5】
前記弾性部材は、ピンチリング又はトーションバネである、
請求項1から4のいずれか一項に記載の挟持具。
【請求項6】
前記一対の挟持片を開く方向に操作する操作部を備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載の挟持具。
【請求項7】
四足歩行のほ乳類のラストリブとタックアップとの間の筋肉を両側から挟持具で挟持して押圧する第1のステップと、
前記挟持具で挟持された状態で、前記ほ乳類を取り扱う第2のステップと、
を含む動物の取り扱い方法。
【請求項8】
前記第1のステップでは、
前記挟持具で挟持された状態で、前記ほ乳類を落ち着かせた後に、前記ほ乳類の首の後ろの筋肉を挟持具で挟持する、
請求項7に記載の動物の取り扱い方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
挟持具及び動物の取り扱い方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットを落ち着かせたいときに落ち着かせることができれば、飼い主にとってこんなにうれしいことはない。そのような観点から、ペットをリラックスさせるためのペットのマッサージ器具等が開示されている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−54310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ペットをすぐに落ち着かせることができるような器具はいまだ作成されておらず、そのような器具の開発に試行錯誤が繰り返されている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、四足歩行のほ乳類を容易に落ち着かせることができる
挟持具及び動物の取り扱い方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る
挟持具は、
互いに連結され、連結された部分を中心に開閉可能で、
四足歩行のほ乳類の体を
挟持する一対の
挟持片と
、
互いに向かい合うように
前記挟持片それぞれに形成され
、前記一対の挟持片に挟持された前記ほ乳類の体を押圧する一対の押圧部と、
前
記押圧部が
前記ほ乳類の体を押圧する方向に、前記一対の
挟持片を付勢する弾性部材と、
を備え、
前記押圧部は、
前記挟持片の中腹から突き出して、前記ほ乳類のラストリブとタックアップとの間の筋肉を押圧する。
【0007】
この場合、前記
一対の押圧部が、
前記ほ乳類の首の後ろの筋肉を
挟持可能である、
こととしてもよい。
【0008】
前
記押圧部が、球形である、
こととしてもよい。
【0009】
前記
挟持片に対して脱着可能で、かつ、
互いに形状が異なる
前記押圧部を複数有する、
こととしてもよい。
【0011】
前記弾性部材は、ピンチリング又はトーションバネである、
こととしてもよい。
【0012】
前記一対の
挟持片を開く方向に操作する操作部を備える、
こととしてもよい。
【0013】
本発明の第2の観点に係る動物の取り扱い方法は、
四足歩行のほ乳類のラストリブとタックアップとの間の筋肉を両側から
挟持具で
挟持して押圧する第1のステップと、
前記
挟持具で
挟持された状態で、前記ほ乳類を取り扱う第2のステップと、
を含む。
【0014】
前記第1のステップでは、
前記
挟持具で
挟持された状態で、前記ほ乳類を落ち着かせた後に、前記ほ乳類の首の後ろの筋肉を
挟持具で
挟持する、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
四足歩行のほ乳類が交尾を行う際には、雄が雌の上に乗って、ラストリブとタックアップとの間を前足で押さえ(両前足で挟み込み)、雌を落ち着かせるのが一般的である。これは、逆に言えば、ラストリブとタックアップとの間を抑えれば、四足歩行のほ乳類を落ち着かせることができることを示している。本発明によれば、このことを利用して、ラストリブとタックアップとの間を押圧するので、四足歩行のほ乳類を容易に落ち着かせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る
挟持具の構成を示す図である。
【
図2】
図1の
挟持具を操作する様子を示す図である。
【
図3】四足歩行のほ乳類における押圧する部分を示す図である。
【
図4】動物の取り扱い方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図1の
挟持具を装着した様子を示す図である。
【
図6A】
挟持具が装着されていない状態での心拍数及び呼吸数の変化を示す図である。
【
図6B】
挟持具が装着された状態での心拍数及び呼吸数の変化を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る
挟持具の構成を示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態3に係る
挟持具の構成(その1)を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態3に係る
挟持具の構成(その2)を示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態3に係る
挟持具の構成(その3)を示す図である。
【
図12】本発明の実施の形態4に係る
挟持具の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
実施の形態1.
図1に示すように、本実施の形態1に係る
挟持具100は、一対の
挟持片1A,1Bと、押圧部2A,2Bと、弾性部材3と、操作部4A,4Bとを備える。本実施の形態では、四足歩行するほ乳類として犬を対象とする。
【0019】
一対の
挟持片1A,1Bは、回転軸10を介して互いに連結されている。
挟持片1A,1Bは、回転軸10を中心に、一方が他方に対して相対的に回転可能であり、
挟持片1A,1B間を開閉可能となっている。一対の
挟持片1A,1Bは、例えば樹脂等で形成されている。
【0020】
また、一対の
挟持片1A,1Bの端部には、互いに向かい合うようにして形成された一対の押圧部2A,2Bが設けられている。押圧部2A,2Bは、犬の体を押圧する部分であり、本実施の形態では球状となっている。一対の押圧部2A,2Bも、例えば樹脂で形成されている。
【0021】
また、一対の
挟持片1A,1Bにおいて、押圧部2A,2Bが設けられていない他の端部には、操作部4A,4Bが設けられている。
図2に示すように、操作部4A,4Bは、一対の
挟持片1A,1Bを開く方向に操作可能である。操作部4A,4Bがあれば、
挟持具100を操作し易くなる。
【0022】
弾性部材3は、各押圧部2A,2Bが当接する方向に、一対の
挟持片1A,1Bを付勢する。この弾性部材3により、操作部4A,4Bで操作しない状態では、
図1に示すように、押圧部2A,2B同士が当接する状態となる。弾性部材3の弾性力は、押圧部2A,2Bにおいて上記筋肉を押圧する力(犬の体を
挟持する力)が適切な大きさとなるように設定されている。本実施の形態では、弾性部材3は、ピンチリングである。
【0023】
本実施の形態に係る動物の取り扱い方法では、
図3に示すように、本実施の形態に係る
挟持具100を用いて、四足歩行のほ乳類のラストリブとタックアップとの間の筋肉(斜線で示される部分L)を両側から
挟持して刺激する。その部分Lに刺激を与えられた犬は、一般的に服従行動をとり、落ち着くようになる。
【0024】
次に、本実施の形態に係る犬の取り扱い方法について説明する。
【0025】
まず、
図4に示すように、四足歩行のほ乳類のラストリブとタックアップとの間の筋肉を両側から
挟持して
挟持具100で押圧する(ステップS1;第1のステップ)。犬が交尾を行う際には、雄が雌の上に乗って、ラストリブとタックアップとの間を両前足で押さえ、雌を落ち着かせるのが一般的である。そこで、ここではその原理を利用し、
図5に示すように、
挟持具100を用いて、ラストリブとタックアップとの間の部分Lを
挟持して押圧し、刺激を与え、犬を落ち着かせることができる。
【0026】
続いて、
挟持具100で押圧された犬が落ち着いた状態で、犬を取り扱う(ステップS2;第2のステップ)。犬の取り扱いには、例えば、トリミングや、訓練などがある。
【0027】
ここで、大型犬、小型犬等様々な犬を対象として、
挟持具100なしの場合と、
挟持具100を装着した場合との違いを比較した。
図6Aには、
挟持具100が装着されていない状態での心拍数及び呼吸数の変化が示されている。また、
図6Bには、
挟持具100を装着された状態での心拍数及び呼吸数の変化が示されている。
図6A及び
図6Bにおいて、折れ線は、心拍数及び呼吸数の平均値を示し、縦線は標準偏差を示している。また、時間軸におけるPreは計時直前の状態を示す。
【0028】
図6Aに示すように、
挟持具100が装着されていない状態では、30分間における心拍数の平均は120回/分から100回/分に変化しており、呼吸数の平均は、75回/分から70回/分に変化している。一方、
図6Bに示すように、
挟持具100が装着されている状態では、30分間における心拍数の平均は130回/分から100回/分に低下しており、呼吸数の平均は、45回/分から30回/分に変化している。したがって、
挟持具100を装着した方が、30分間における心拍数及び呼吸数の低下量は大きくなっており、
挟持具100の装着が動物をより落ち着かせていることが明らかとなった。
【0029】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、ラストリブとタックアップとの間を抑えれば、四足歩行のほ乳類を落ち着かせることができることを示している。本実施の形態によれば、このことを利用して、ラストリブとタックアップとの間を押圧するので、四足歩行のほ乳類を容易に落ち着かせることができる。
【0030】
実施の形態2.
図7に示すように、本実施の形態に係る
挟持具101は、上記実施の形態1に係る
挟持具100と構成はほぼ同じである。なお、本実施の形態では、押圧部2A,2Bは、
挟持片1A,1Bに対して脱着可能となっており、
図7では、押圧部はセットされていない。
図8に示すように、
挟持具101は、弾性部材3の代わりに、弾性部材13を用いている点が上記実施の形態1に係る
挟持具100と異なる。
【0031】
弾性部材13は、トーションバネである。弾性部材13を用いれば、外にバネが露出することがないので、器具全体の小型化を図ることができるうえ、見栄えを良くすることができる。
【0032】
実施の形態3.
図9、
図10、
図11に示すように、本実施の形態に係る
挟持具102は、押圧部2A,2Bの代わりに、押圧部12A,12B、22A,22B、32A,32Bを備える。押圧部12A,12Bでは、押圧する部分が小さくなっており、押圧部22A,22Bでは、全体が球形となっており、押圧部32A,32Bでは、全体が卵形となっている。押圧部12A,12B、22A,22B、32A,32Bは、いずれも
挟持片1A,1Bに対して脱着可能となっており、付け替え可能である。押圧する部分の面積、形状が異なる押圧部を揃えれば、押圧部を付け替えることにより押圧力を調整することができるので、対象となる動物に最も適した押圧部を選択し、リラックス効果をより高めることができる。
【0033】
実施の形態4.
上記各実施の形態に係る
挟持具100〜102は、各
挟持片1A,1Bの先端に押圧部を取り付けるものであった。しかしながら、本実施の形態に係る
挟持具103は、押圧部42A,42Bを備えるが、
図12に示すように、押圧部42A,42Bは、各
挟持片1A,1Bの中腹から突き出している。押圧部42A,42Bは、
図13に示すように、犬のラストリブとタックアップとの間の筋肉を押圧する。
【0034】
本実施の形態によれば、押圧部42A,42Bは、各
挟持片1A,1Bの中腹から突き出す形状とすることで、押圧部42A,42Bで犬のラストリブとタックアップとの間の筋肉を押圧するとともに、
挟持片1A,1Bで、犬の胴体を
挟持し、器具全体を安定して犬の体に固定することができる。
【0035】
なお、
挟持片1A,1Bにおける押圧部42A,42Bを変更可能とし、押圧部42A,42Bの位置を、対象となる犬の体型に合わせることができる。
【0036】
上記実施の形態3、4に係る
挟持具102、103のように、操作部4A,4Bはなくてもよい。このようにすれば、操作部4A,4Bが、何かにぶつかって
挟持具102,103が犬の胴体から外れたりするのを防止することができる。また、器具のデザイン性も向上することができる。
【0037】
四足歩行のほ乳類には、犬の他、猫、馬、牛など、様々な動物があり、それらの動物にも本実施の形態に係る
挟持具100を適用することができる。この場合、
挟持具100の大きさは、その動物の体の大きさに応じたものとなる。例えば、犬であっても、大型犬と小型犬との間では、
挟持具100の大きさは異なる。
【0038】
また、ラストリブとタックアップとの間に限らず、首の後ろを挟む場合にも、
挟持具100を用いることができる。首の後ろの部分は、子供の頃に親に噛まれて運ばれる部分であり、この部分を刺激されると、子供がおとなしくなるためである。しかしながら、首の後ろは口に近いため、興奮した動物に対しては、まず、ラストリブとタックアップとの間に
挟持具100を装着させ、落ち着かせてから、首の後ろにも
挟持具100を装着するようにするのが望ましい。
【0039】
なお、本実施の形態では、犬のトリミングを行う場合について説明したが、本発明はこれには限られない。例えば、単に飼い主がペットを落ち着かせて、寝かせたり遊んだりするだけでもよい。
【0040】
また、本実施の形態に係る
挟持具100は、回転軸10を中心に、一対の
挟持片1A,1Bを開閉するものであったが、本発明はこれには限られない。例えば、一対の
挟持片1A,1Bは、弾性部材3で連結されるものであってもよいし、一体に成形されたものであってもよい。
【0041】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0042】
なお、本願については、2016年5月31日に出願された日本国特許出願2016−108858号を基礎とする優先権を主張し、本明細書中に日本国特許出願2016−108858号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、四足歩行のほ乳類を落ち着かせるのに用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1A,1B
挟持片、2A,2B 押圧部、3 弾性部材、4A,4B 操作部、10 回転軸、12A,12B 押圧部、13 弾性部材、22A,22B 押圧部、32A,32B 押圧部、42A,42B 押圧部、100,101,102,103
挟持具、L 部分