(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料、封止材料などの幅広い分野に利用されている。近年、電気・電子部品を搭載する積層板はその利用分野の拡大により、要求特性が広範かつ高度化している。
近年、特にパワー半導体の高機能化に伴い、次世代デバイスとしてSiC(炭化珪素)やGaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップデバイスが注目されている。SiCやGaNパワー半導体デバイスを用いると小型化による省スペース化や、大幅な損失低減が可能となるため、SiCやGaNデバイスの早期普及が望まれている。しかし、現状では、その特性を引き出すための駆動温度が200℃以上、特に250℃付近と高すぎるため、周辺材料の耐久性が十分でなく、この駆動条件に耐えうる樹脂材料の開発が求められている。
このような用途においては200℃以上、特に250℃での耐熱性(Tg)だけでなく、熱安定性が重要視され、200℃付近から熱分解が始まるエポキシ樹脂の使用は困難とされている。そこで、マレイミド樹脂やベンゾオキサジン樹脂などの耐熱性の樹脂が精力的に検討されているが、200℃以上、さらには250℃といった高い温度での成型が必要になることから、成形機の許容温度を超えてしまい、成型性に課題がある。その上、5%熱重量減少温度では非常に高い温度の耐熱安定性を示すものの、これら樹脂の初期の熱分解温度は比較的早いことが課題であった。
したがって、200℃以下での成型性(硬化性)、250℃以上の耐熱性、250℃での熱安定性の解決が急務である。
【0003】
またこれは同時にこれら半導体を搭載するプリント配線基板(以下、基板と称す)にも求められており、上述の特性は次世代半導体周辺材料には必須の特性となる。
さらに車載用の基板だけでなく、スマートフォンやタブレットに代表される電子デバイス用の基板にも耐熱性の要求特性が高まっている。
特に薄型化が重要視されているこの分野においては当然ながらデバイス内部に搭載される基板も一枚一枚が薄層化しており、実装までの各工程において高温にさらされる場合が多い。半導体実装時には250℃以上の高温にさらされ、250℃以上での弾性率が低い(柔らかくなる)と基板が変形してしまう恐れがある。一方、硬化温度は銅箔表面の酸化の問題から、200℃、特に230℃を超えるような温度領域での成型が困難である。すなわち本分野においては200℃以下で硬化・成型でき、かつ250℃における弾性率が高い(硬い)ことが重要視されている。
【0004】
なお、近年特に注目されているのはこれら電子デバイスにおける高速通信化である。高周波基板はもとより、スマートフォンやタブレットの情報通信量が非常に多くなり、いかに早く多くの情報を伝えるかということが重要となってきており、高速通信化がパッケージ基板にたいして重要なファクターとなることから誘電特性、特に誘電正接が重要視される。一般のエポキシ樹脂硬化物(樹脂のみ)では誘電正接が0.02(1GHzでの測定)に対し、3/4以下、すなわち0.015以下、特に0.010以下の誘電正接が求められており、これらの特性を満たす材料の開発が急務である。
【0005】
また、繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂と、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維やアラミド繊維などの強化繊維とから成り、一般に軽量かつ高強度の特徴を有する。このような繊維強化複合材料は、電気電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)、旅客機の機体や翼などの航空宇宙材料、ロボットハンドアームに代表される工作機械部材や、建築・土木補修材としての用途、さらにはゴルフシャフトやテニスラケットなどのレジャー用品用途などに幅広く用いられている。
特に旅客機の機体や翼などの航空宇宙材料、ロボットハンドアームに代表される工作機械部材において炭素繊維強化複合材料(以下CFRPと称す)には、室温から約200℃までの温度範囲で剛性を保つ耐熱性、機械特性、長期信頼性、即ち熱分解温度が十分高く高温での弾性率が高い事が要求されている。
繊維強化複合材料のマトリックス樹脂としては、従来エポキシ系樹脂が広く使用されているが、特にエンジン部分等への適用においては高温時にも弾性率を維持できることが重要であり、エポキシ樹脂では耐熱性が不十分で、マレイミド樹脂を使用した硬化系が検討されている。
【0006】
しかしながらマレイミド樹脂だけでは硬化性が悪く、かつ成型品が脆くなるため、これを改善するために各種変性剤が開発されている。その解決策として、種々の変性が行われており、例えばシアン酸エステル系樹脂組成物にメタ(アクリロイル)基を導入した変性ブタジェン系樹脂を配合するもの(特許文献1)、ブタジェン−アクリロニトリル共重合体を添加するもの(特許文献2)、あるいはこれらにさらにエポキシ樹脂を加えたもの(特許文献3)などが知られている。しかし、これらの方法では、成型品の脆さは軽減するものの、いずれも耐熱、機械強度の低下が避けられない問題があった。
一方、マレイミド樹脂をマレイミド樹脂の反応性希釈剤、架橋剤、難燃剤などの添加剤として知られるアリル化合物で変性する方法が知られている。例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミドに常温で液状であるo,o’−ジアリルビスフェノールAを加熱溶融混合して得られる樹脂組成物が開示されており、無溶剤で炭素繊維シートに含浸させることが可能であると記載されている(特許文献4)。また、ノボラック型のポリフェニルメタンマレイミドとo,o’−ジアリルビスフェノールAを含有するマレイミド樹脂組成物が開示されている(特許文献5)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のマレイミド樹脂組成物について、以下に説明する。
本発明のマレイミド樹脂組成物は、マレイミド化合物(A)、及び、上下記式(1)で表される構造を分子中に含むスルホニル化合物(B)を含有することを特徴とする。
【0018】
(式中、複数のRは、それぞれ独立して、アルケニル基、アルケニルエーテル基、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜4のフルオロアルキル基、ヒドロキシル基、アリロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、第3級炭素構造を有する基、環状アルキル基、グリシジル基を表し、Rの少なくとも1つは、アルケニル基又はアルケニルエーテル基である。aは1〜4の整数を表す。)
【0019】
アルケニル基又はアルケニルエーテル基を含有するビスフェノールS型の化合物である前記式(1)で表される構造を分子中に含むスルホニル化合物(B)は、電子吸引体であるスルホニル基の存在により、最高被占軌道(HOMO)の密度はアルケニル基又はアルケニルエーテル基に局在化し、電子受容体のマレイミド基を有する化合物(A)との反応性を良くしていると考えられる。さらに、ラジカル重合開始剤を用いることで硬化速度を速めることができる。
【0020】
本発明で用いられるマレイミド化合物(A)は、下記の式(3)で表されるマレイミド基を分子中に1個以上含有する化合物である。
【0022】
本発明に用いられるマレイミド化合物(A)は公知のものを使用することができ、例えば、脂肪族/脂環族マレイミド化合物、芳香族マレイミド化合物等が挙げられる。
脂肪族/脂環族マレイミド化合物の具体例としては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、マレイミドカルボン酸等の単官能マレイミドやN−2,2’−ヒドロキシエチルマレイミド、N−1−メトキシメチルプロピルマレイミド、N−1−エトキシメチルプロピルマレイミド、N−1−メトキシメチルブチルマレイミド、N,N’−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ビスマレイミド、N,N’−4,7−ジオキ
サデカン−1,10−ビスマレイミド、N,N’−3,6,9−トリオキサドデカン−1,11−ビスマレイミド、N,N’−4,9−ジオキサドデカン−1,12−ビスマレイミド、N,N’−4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ビスマレイミド、N,N’−7−メチル−4,10−トリオキサトリデカン−1,13−ビスマレイミド、N,N’−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1,14−ビスマレイミド、N,N’− 3,6,9,12,15−ペンタオキサへプタデカン−1,17−ビスマレイ
ミド、ビス(3−N−マレイミドプロピル)ポリテトラヒドロフランが挙げられる。
【0023】
前記式(3)で表されるマレイミド基を1つ有する芳香族マレイミド化合物としてはN−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド等の単官能マレイミドが挙げられる。
前記式(3)で表されるマレイミド基を2つ有する芳香族マレイミド化合物としては、N,N’−メチレンビスマレイミド、N,N’−トリメチレンビスマレイミド、N,N’−ドデカメチレンビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、1,4−ジマレイミドシクロヘキサン、イソホロンビスウレタンビス(N−エチルマレイミド)、N,N’−P−フェニレンビスマレイミド、N,N’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−フェニレンビスマレイミド、N,N’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−ジシクロヘキシルメタンビスマレイミド、N,N’−キシレンビスマレイミド、N,N’−トリレンビスマレイミド、N,N’−キシリレンビスマレイミド、N,N’−ジフェニルシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’−ジクロロジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−ジフェニルシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’−ジフェニルメタンビスメチルマレイミド、N,N’−ジフェニルエーテルビスメチルマレイミド、N,N’−ジフェニルスルホンビスメチルマレイミド(各々異性体を含む。)、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−ドデカメチレンビスマレイミド、N,N’−m−キシリレンビスマレイミド、N,N’−p−キシリレンジマレイミド、N,N’−1,3−ビスメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’−2,4−トリレンビスマレイミド、N,N’−2,6−トリレンビスマレイミド、N,N’−3,3−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルスルフィドビスマレイミド、N,N’−p−ベン
ゾフェノンビスマレイミド、N,N’−ジフェニルエタンビスマレイミド、N,N’−ジフェニルエ−テルビスマレイミド、N,N’−(メチレン−ジテトラヒドロフェニル)ビスマレイミド、N,N’−(3−エチル)−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−(3,3’−ジメチル)−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−(3,3’−ジエチル)−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−(3,3’−ジクロロ)−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−トリジンビスマレイミド、N,N’−イソホロンビスマレイミド、N,N’−p,p’−ジフェニルジメチルシリルビスマレイミド、N,N’−ベンゾフェノンビスマレイミド、N,N’−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−ナフタレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4’−(1,1−ジフェニル−シクロヘキサン)−ビスマレイミド、N,N’−3,5−(1,2,4−トリアゾール)−ビスマレイミド、N,N’−ピリジン−2,6−ジイルビスマレイミド、N,N’−5−メトキシ−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,2−ビス(2−マレイミドエトキシ)エタン、1,3−ビス(3−マレイミドプロポキシ)プロパン、N,N’−4,4’−ジフェニルメタン−ビス−ジメチルマレイミド、N,N’−ヘキサメチレン−ビス−ジメチルマレイミド、N,N’−4,4’−(ジフェニルエーテル)−ビス−ジメチルマレイミド、N,N’−4,4’−(ジフェニルスルホン)−ビス−ジメチルマレイミド、N,N’−4,4’−(ジアミノ)−トリフェニルホスフェートのN,N’−ビスマレイミド等に代表される2官能マレイミド化合物等が挙げられる。
【0024】
前記式(3)で表されるマレイミド基を3つ以上有する芳香族マレイミド化合物としては、アニリンとホルマリンとの反応生成物(ポリアミン化合物)、3,4,4’−トリアミノジフェニルメタン、トリアミノフェノールなどと無水マレイン酸との反応で得られる多官能マレイミド化合物が挙げられる。
トリス−(4−アミノフェニル)−ホスフェート、トリス(4−アミノフェニル)−ホスフェート、トリス(4−アミノフェニル)−チオホスフェートと無水マレイン酸との反応で得られるマレイミド化合物、2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−クロロ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−ブロモ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−エチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−プロピル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−イソプロピル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−ブチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−第2級ブチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−メトキシ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,1−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔3−メチル4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔3−クロロ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔3−ブロモ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕エタン、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−クロロ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−ブロモ−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、3,3−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕ペンタン、1,1−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス〔3,5−ジメチル−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス〔3,5−ジブロモ−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス〔3,5−メチル−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン及びこれらN,N’−ビスマレイミド化合物とジアミン類を付加させて得られる末端がN,N’−ビスマレイミド骨格を有するプレポリマー及びアニリン・ホルマリン重縮合物のマレイミド化物又はメチルマレイミド化合物等が例示できる。
これらのマレイミド化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。芳香族マレイミド化合物と脂肪族マレイミド化合物を併用して用いても良い。
本発明においては特に耐熱性(ガラス転移点)および/または弾性率の面から芳香族マレイミドが好ましく、官能基を一分子中に2つ以上有するマレイミドとの組み合わせが好ましい。
【0025】
本発明で用いられるスルホニル化合物(B)は下記式(1)で表される構造を分子中に含む化合物である。
【0027】
(式中、複数のRは、それぞれ独立して、アルケニル基、アルケニルエーテル基、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜4のフルオロアルキル基、ヒドロキシル基、アリロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、第3級炭素構造を有する基、環状アルキル基、グリシジル基を表し、Rの少なくとも1つは、アルケニル基又はアルケニルエーテル基である。aは1〜4の整数を表す。)
【0028】
前記(B)成分は、マレイミド基を有する化合物(A)の芳香族液状反応性希釈剤として用いられる。ビスフェノールS構造がビスフェノールA構造に対して、マレイミド基を有する化合物に対する反応性に優れる。これは、前述したとおりスルホニル基の電子吸引性に起因すると考えられる。
【0029】
式中のアルケニル基又はアルケニルエーテル基としては、ビニル基、スチリル基、アリル基、置換アリル基、プロぺニル基、置換プロぺニル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、メタリルエーテル基が挙げられる。
【0030】
式中のアルケニル基又はアルケニルエーテル基以外の置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至4のフルオロアルキル基、ヒドロキシル基、アリロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、第3級炭素構造を有する基、環状アルキル基、グリシジル基又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
式中のaは1〜4であり、好ましくは1〜2である。
【0032】
式(1)で表される構造を分子中に含むスルホニル化合物(B)は、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0034】
(式中、Rは1つ以上のアルケニル基又はアルケニルエーテル基を有し、それ以外の置換基として水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜4のフルオロアルキル基、ヒドロキシル基、アリロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、第3級炭素構造を有する基、環状アルキル基、グリシジル基を表す。Xはそれぞれ独立して水素原子またはグリシジル基を表す。aは1〜4の整数を表す。nは0〜10であり、その平均値は0〜10の実数を表す。)
【0035】
式(2)中、nは0〜10であり、0〜5が好ましい。nの平均値は0〜10であり、好ましくは0〜5である。
【0036】
式(1)で表される構造を含む又は式(2)で表されるスルホニル化合物(B)の具体例としては、2,2’−ジアリル−4,4’−スルホニルジフェノール、2−アリル−2’−プロペニル−4,4’−スルホニルジフェノール、2,2’−ジプロペニル−4,4’−スルホニルジフェノール、2,2’−ジアリル−6,6’−スルホニルジフェノール、2−アリル−2’−プロペニル−6,6’−スルホニルジフェノール、2,2’−ジプロペニル−6,6’−スルホニルジフェノール、2,2’−ジアリル−4,4’−スルホニルジグリシジルエーテル、2−アリル−2’−プロペニル−4,4’−スルホニルジグリシジルエーテル、2,2’−ジプロペニル−4,4’−スルホニルジグリシジルエーテル、2,2’−ジアリル−6,6’−スルホニル
ジグリシジルエーテル、2−アリル−2’−プロペニル−6,6’−スルホニルジグリシジルエーテル、2,2’−ジプロペニル−6,6’−スルホニルジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
(B)成分の軟化点としては通常60〜130℃であり、70〜120℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
【0038】
本発明のマレイミド樹脂組成物は、(A)成分、及び(B)成分を少なくとも含有し、(A)成分100重量部に対する(B)成分の含有量は、1重量部以上、好ましくは10重量部以上、200重量部以下、好ましくは100重量部以下である。
上記範囲より(B)成分が少ないと、組成物の粘度が高くなり、組成物の不均一性が増し、成形性が不良となる場合があり、上記範囲より(B)成分が多いと硬化物のガラス転移温度が低下する場合がある。
【0039】
また、(A)成分と(B)成分は、これらの合計に対する(A)成分の割合(重量比)が好ましくは0.5〜0.9、より好ましくは0.5〜0.8となるように配合する。(A)成分と(B)成分との合計に対する(A)成分の割合が上記下限より低いと硬化物のガラス転移温度が著しく低下し、300℃24時間処理時の重量が著しく減少し、上記上限よりも多いと組成物の粘度が大幅に上昇し、また組成物が著しく不均一となり成形性が不良となる場合がある。
【0040】
本発明のマレイミド樹脂組成物において、前記(A)成分及び(B)成分のほかに、ラジカル重合開始剤(C)を含むことができる。ラジカル重合開始剤(C)はマレイミド樹脂組成物において、アルケニル基又はアルケニルエーテル基とマレイミド基の反応を促進させる目的で用いる。
用いることができるラジカル重合開始剤(C)としては、特に制限は無いが、有機過酸化物、アゾ化合物が挙げられ、好ましくは有機過酸化物である。
【0041】
有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、スクシニックアシッドパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジミリスティルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクテート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘキサネート、アセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、等が挙げられる。
【0042】
これらの有機過酸化物のうち、分解してラジカルを発生する温度が、120℃以上であるものが好ましい。このような有機過酸化系化合物として過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドが好ましい。
アゾ化合物としてはアゾイソブチルニトリル等が挙げられる。特に熱によって活性化される化合物が好適に用いられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0043】
(C)成分の重合開始剤の量としては、(A)成分100重量部に対して通常0.001重量部以上10重量部以下であり、0.01重量部以上5重量部以下が好ましく、0.01重量部以上3重量部以下がより好ましく、0.01重量部以上1重量部以下が特に好ましい。
(C)成分が上記範囲より少ないと重合促進効果を十分に得ることができず、硬化不良の原因になり、また、多すぎると樹脂組成物の硬化物性に悪影響を及ぼす場合がある。そのため(A)成分100重量部に対し好ましくは0.001〜10重量%添加する。
【0044】
本発明のマレイミド樹脂組成物は、必要に応じてラジカル重合開始剤の他の硬化促進剤を用いる、あるいは併用することができる。用い得る硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン等のアミン類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン類及びオクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛、ジブチルスズジマレエート、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オレイン酸スズ等の有機金属塩、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化スズなどの金属塩化物などの有機金属化合物などがあり、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエートなど有機過酸化物がある。硬化促進剤は少なすぎると硬化不良の原因になり、多すぎると樹脂組成物の硬化物性に悪影響を及ぼす場合がある。そのためマレイミド樹脂に対し好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.01〜10重量%添加する。
【0045】
一方、ラジカル重合促進剤は、本発明で使用する(A)、(B)両成分に対して重合促進効果を発揮するが、一部の成分の末端に対して不安定な酸素−炭素結合を形成する。この酸素−炭素結合は、高温になると燃焼して熱重量減少の原因となるため、重合促進剤としてラジカル重合促進剤のみを用いたポリマレイミド系組成物から得られる硬化物は、長期間高温条件下においた場合の熱重量減少率が大きくなる場合がある。そのため、アニオン重合促進剤とラジカル重合促進剤を併用することにより、各々の長所を生かした上で短所を補い合い、これにより、耐熱性の向上と熱重量減少の抑制を図ることができる。添加する触媒には、特にアニオン重合剤が好ましい。
【0046】
本発明のマレイミド樹脂組成物には、前記(A)〜(C)成分以外にシアネートエステル化合物を配合することもできる。本発明のマレイミド樹脂組成物に配合し得るシアネートエステル化合物としては従来公知のシアネートエステル化合物を使用することができる。シアネートエステル化合物の具体例としては、フェノール類と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類とケトン類との重縮合物及びビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物などをハロゲン化シアンと反応させることにより得られるシアネートエステル化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。
また、日本国特開2005−264154号公報に合成方法が記載されているシアネートエステル化合物は、低吸湿性、難燃性、誘電特性に優れているためシアネートエステル化合物として特に好ましい。
【0047】
更に本発明のマレイミド樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いうる添加剤の具体例としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、マレイミド系化合物、シアネートエステル系化合物、シリコーンゲル、シリコーンオイル、並びにシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、石英粉、アルミニウム粉末、グラファイト、タルク、クレー、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、アスベスト、マイカ、ガラス粉末等の無機充填材、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。これら添加剤の配合量は、マレイミド樹脂組成物100重量部に対して好ましくは1,000重量部以下、より好ましくは700重量部以下の範囲である。
【0048】
本発明のマレイミド樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、各成分を均一に混合するだけでも、あるいはプレポリマー化してもよい。例えば本発明で用いられるマレイミド樹脂(A)とアルケニル基又はアルケニルエーテル基含有スルホニル化合物(B)を触媒の存在下または不存在下、溶剤の存在下または不存在下において加熱することによりプレポリマー化する。必要により、アミン化合物、シアネートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物化合物などの硬化剤及びその他添加剤を追加してプレポリマー化してもよい。各成分の混合またはプレポリマー化は溶剤の不存在下では例えば押出機、ニーダ、ロールなどを用い、溶剤の存在下では攪拌装置つきの反応釜などを使用する。
【0049】
本発明のマレイミド樹脂組成物に有機溶剤を添加してワニス状の組成物(以下、単にワニスという)とすることができる。本発明のマレイミド樹脂組成物を必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、エポキシ樹脂組成物ワニスとし、炭素繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明のマレイミド樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明のマレイミド樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有するマレイミド樹脂組成物の硬化物を得ることもできる。
【0050】
また、本発明のマレイミド樹脂組成物をフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはB−ステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂組成物を前記エポキシ樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
【0051】
本発明のマレイミド樹脂組成物を加熱溶融し、低粘度化してガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維などの強化繊維に含浸させることにより本発明のプリプレグを得ることができる。
また、前記ワニスを、強化繊維に含浸させて加熱乾燥させることにより本発明のプリプレグを得ることもできる。
【0052】
これらの強化繊維に本発明のマレイミド樹脂組成物を含浸させる方法にも特に制限はないが、溶剤を使用しない方法が好ましいため、本発明のマレイミド樹脂組成物を60〜110℃に加温し、流動性がある状態で含浸させるホットメルト法が好ましい。
【0053】
得られるプリプレグ(強化繊維にマレイミド樹脂組成物を含浸させたもの)に占めるポリマレイミド系組成物の割合は、強化繊維の形態にもよるが通常20重量%以上80重量%以下、好ましくは25重量%以上65重量%以下、より好ましくは30重量%以上50%以下である。この範囲よりもポリマレイミド樹脂組成物の割合が多いと相対的に強化繊維の割合が減ることにより十分な補強効果が得られず、逆にポリマレイミド樹脂組成物が少ないと成型性が損なわれる。
【0054】
このプリプレグは公知の手法により硬化させて最終成型品とすることができる。例えば、プリプレグを積層して、オートクレーブ中で2〜10kgf/cm
2に加圧し、150℃〜200℃で30分ないし3時間加熱硬化させて成型体とすることができるが、さらに耐熱性を向上させるため、ポストキュアとして180℃〜280℃の温度範囲で温度をステップ的に加温しながら1時間〜12時間処理することにより繊維強化複合材成型品とすることができる。
上記のプリプレグを所望の形に裁断、必要により銅箔などと積層後、積層物にプレス成形法やオートクレーブ成形法、シートワインディング成形法などで圧力をかけながら積層板用エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させることにより積層板を得ることができる。
更に、表面に銅箔を重ねてできた積層板に回路を形成し、その上にプリプレグや銅箔等を重ねて上記の操作を繰り返して多層の回路基板を得ることができる。
【0055】
本発明のマレイミド樹脂組成物、プリプレグまたはそれらの硬化物、特にプリプレグの硬化物は、特に液晶ガラス基板搬送用ロボットハンド用途として有用である。ただし、本発明の硬化物の用途は液晶ガラス基板搬送用ロボットハンド用途に限定されるものではなく、その他、シリコンウェハー搬送用ディスク用途、航空宇宙向け部材用途、自動車のエンジン部材用途など、軽量で高強度かつ高耐熱性が要求される部材に広く適用することができる。
【0056】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り「重量部」である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定される物ではない。また実施例において、エポキシ当量、溶融粘度、軟化点、全塩素濃度は以下の条件で測定した。
エポキシ当量:JIS K−7236に準じた方法で測定。
溶融粘度:150℃におけるコーンプレート法における溶融粘度。
軟化点:JIS K−7234に準じた方法で測定。
式(1)または(2)における全R中のプロペニル基の割合:NMRにより測定。
【0058】
(合成例1)
2,2’−ジアリル−4,4’−スルホニルジフェノール(日本化薬(株)製 ARM−019、B1)165重量部、メタノール200重量部を反応容器に仕込み、撹拌、溶解後、粒状の水酸化カリウム(純度85%)105重量部添加した。添加後、加熱しながらメタノールを留去し、内温を100℃に保持しながら4時間反応を行った。塩酸で中和を行った後、メチルイソブチルケトンを330重量部加え、水洗を繰り返した。ついで油層から加熱減圧下においてメチルイソブチルケトンを留去することにより、2,2’−ジプロペニル−4,4’−スルホニルジフェノール161重量部を得た。得られた2,2’−ジプロペニル−4,4’−スルホニルジフェノール(B2)の軟化点は81℃であった。
【0059】
(合成例2)
合成例1で得られた2,2’−ジプロペニル−4,4’−スルホニルジフェノール(B2)165重量部、エピクロルヒドリン510重量部、ジメチルスルホキシド130重量部を反応容器に仕込み、加熱、撹拌、溶解後、温度を45℃に保持しながら、フレーク状水酸化ナトリウム41重量部を1.5時間かけて連続的に添加した。水酸化ナトリウム添加完了後、45℃で2時間、70℃で1時間反応を行った。ついで加熱減圧下において過剰のエピクロルヒドリンとジメチルスルホキシドを留去し、残留物に330重量部のメチルイソブチルケトンを添加し残留物を溶解させた。このメチルイソブチルケトン溶液から水洗によって副生塩を除去した後、30%水酸化ナトリウム水溶液10重量部を添加し、70℃で1時間反応させた後、反応液の水洗を洗浄液が中性となるまで繰り返した。ついで油層から加熱減圧下においてメチルイソブチルケトンを留去することによりエポキシ基を有するスルホニル化合物(B3)207重量部を得た。得られたエポキシ基を有するスルホニル化合物(B3)のエポキシ当量は236g/eq、軟化点64℃、溶融粘度0.09Pa・s、式(2)における全R中のプロペニル基の割合は100%であった。
【0060】
(合成例3)
2,2’−ジアリル−4,4’−スルホニルジフェノール(B1)165重量部、エピクロルヒドリン510重量部、ジメチルスルホキシド130重量部を反応容器に仕込み、加熱、撹拌、溶解後、温度を45℃に保持しながら、フレーク状の水酸化ナトリウム41重量部を1.5時間かけて連続的に添加した。水酸化ナトリウム添加完了後、45℃で2時間、70℃で1時間反応を行った。ついで加熱減圧下において過剰のエピクロルヒドリンとジメチルスルホキシドを留去し、残留物に330重量部のメチルイソブチルケトンを添加し残留物を溶解させた。このメチルイソブチルケトン溶液から水洗によって副生塩を除去した後、30%水酸化ナトリウム水溶液10重量部を添加し、70℃で1時間反応させた後、反応液の水洗を洗浄液が中性となるまで繰り返した。ついで油層から加熱減圧下においてメチルイソブチルケトンを留去することによりエポキシ基を有するスルホニル化合物(B4)207重量部を得た。得られたエポキシ基を有するスルホニル化合物(B4)のエポキシ当量は229g/eq、軟化点64℃、溶融粘度0.09Pa・s、式(2)における全R中のプロペニル基の割合は100%であった。
【0061】
(合成例4)
温度計、冷却管、ディーンスターク共沸蒸留トラップ、撹拌機を取り付けたフラスコにアニリン372部とトルエン200部を仕込み、室温で35%塩酸146部を1時間で滴下した。滴下終了後加熱して共沸してくる水とトルエンを冷却・分液した後、有機層であるトルエンだけを系内に戻して脱水を行った。次いで4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル125部を60〜70℃に保ちながら1時間かけて添加し、更に同温度で2時間反応を行った。反応終了後、昇温をしながらトルエンを留去して系内を195〜200℃とし、この温度で15時間反応を行った。その後冷却しながら30%水酸化ナトリウム水溶液330部を系内が激しく還流しないようにゆっくりと滴下し、80℃以下で昇温時に留去したトルエンを系内に戻し、70℃〜80℃で静置した。分離した下層の水層を除去し、反応液の水洗を洗浄液が中性になるまで繰り返した。次いでロータリーエバポレーターで油層から加熱減圧下(200℃、0.6KPa)において過剰のアニリンとトルエンを留去することにより芳香族アミン樹脂173部を得た。芳香族アミン樹脂中のジフェニルアミンは2.0%であった。
得られた樹脂を、再びロータリーエバポレーターで加熱減圧下(200℃、4KPa)において水蒸気吹き込みの代わりに水を少量づつ滴下した。その結果、芳香族アミン樹脂(a1)166部を得た。得られた芳香族アミン樹脂(a1)の軟化点は56℃、溶融粘度は0.035Pa・s、ジフェニルアミンは0.1%以下であった。
【0062】
(合成例5)
温度計、冷却管、ディーンスターク共沸蒸留トラップ、撹拌機を取り付けたフラスコに無水マレイン酸147部とトルエン300部を仕込み、加熱して共沸してくる水とトルエンを冷却・分液した後、有機層であるトルエンだけを系内に戻して脱水を行った。次に、合成例4で得られた芳香族アミン樹脂(a1)195部をN−メチル−2−ピロリドン195部に溶解した樹脂溶液を、系内を80〜85℃に保ちながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で2時間反応を行い、p−トルエンスルホン酸3部を加えて、還流条件で共沸してくる縮合水とトルエンを冷却・分液した後、有機層であるトルエンだけを系内に戻して脱水を行いながら20時間反応を行った。反応終了後、トルエンを120部追加し、水洗を繰り返してp−トルエンスルホン酸及び過剰の無水マレイン酸を除去し、加熱して共沸により水を系内から除いた。次いで反応溶液を濃縮して、マレイミド樹脂(A1)を70%含有する樹脂溶液を得た。
【0063】
(合成例6)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、ジメチルスルホキシド720質量部、2,2’−ジアリル−4,4’−スルホニルジフェノール(B1水酸基当量263g/eq.軟化点65℃)540質量部、アリルクロライド(純度99% 東京化成工業製)280質量部(フェノール樹脂の水酸基1モル当量に対し、1.2モル当量)を加え、27℃に昇温し溶解させた。次いで46.3質量%水酸化ナトリウム水溶液134質量部を、内温35℃を超えないようにゆっくり加え、その後にフレーク状の水酸化ナトリウム(純度 99% 東ソー製)70.0質量部(フェノール樹脂の水酸基1モル当量に対し、1.1モル当量)を60分かけて添加した。そのまま30〜35℃で4時間、40〜45℃で1時間、55〜60℃で1時間反応を行った。この際の反応追跡はHPLCを用いて行い、原料フェノール樹脂の消失や、n=1体とn=2体のピークの中間のピークが増大していないことを確認した。
反応終了後、ロータリーエバポレータにて水やジメチルスルホキシド等を留去した。そして、酢酸30質量部を加えて中和し、メチルイソブチルケトン700質量部を加え、水洗を繰り返し、水層が中性になったことを確認した。その後油層からロータリーエバポレータを用いて、減圧下、窒素バブリングしながら溶剤類を留去することで、n=2.0である式(2)のアリルエーテル基を有するスルホニル化合物(B5)629質量部を得た。
【0064】
(合成例7)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、ジメチルスルホキシド720質量部、2,2’−ジアリル−4,4’−スルホニルジフェノール(B1水酸基当量263g/eq.軟化点65℃)540質量部、メタリルクロライド(純度99% 東京化成工業製)299質量部(フェノール樹脂の水酸基1モル当量に対し、1.1モル当量)を加え、27℃に昇温し溶解させた。次いで46.3質量%水酸化ナトリウム水溶液134質量部を、内温35℃を超えないようにゆっくり加え、その後にフレーク状の苛性ソーダ(純度 99% 東ソー製)70.0質量部(フェノール樹脂の水酸基1モル当量に対し、1.1モル当量)を60分かけて添加した。そのまま30〜35℃で4時間、40〜45℃で1時間、55〜60℃で1時間反応を行った。
反応終了後、ロータリーエバポレータにて水やジメチルスルホキシド等を留去した。そして、酢酸30質量部を加えて中和し、メチルイソブチルケトン700質量部を加え、水洗を繰り返し、水層が中性になったことを確認した。その後油層からロータリーエバポレータを用いて、減圧下、窒素バブリングしながら溶剤類を留去することで、n=2.0である式(2)のメタリルエーテル基を有するスルホニル化合物(B6)630質量部を得た。
【0065】
(実施例1)
合成例5で得られたマレイミド樹脂(A1)を63重量部、2,2’−ジアリル−4,4’−スルホニルジフェノール(B1)35重量部を配合し、150℃で混練し、その後、硬化促進剤であるジクミルパーオキサイド(DCP 化薬アクゾ製 C1)を2重量部配合し、80℃で混練し、マレイミド樹脂組成物を得た。得られたマレイミド樹脂組成物の発熱挙動を観察するためにMDSC測定を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例2)
合成例5で得られたマレイミド樹脂(A1)を63重量部、合成例1から得られたスルホニウム化合物(B2)35重量部を配合し、150℃で混練し、その後、硬化促進剤であるジクミルパーオキサイド(C1)を2重量部配合し、80℃で混練し、マレイミド樹脂組成物を得た。得られたマレイミド樹脂組成物の発熱挙動を観察するためにMDSC測定を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
合成例5で得られたマレイミド樹脂(A1)を63重量部、o,o’−ジアリルビスフェノールA(b1)35重量部を配合し、150℃で混練し、その後、硬化促進剤であるジクミルパーオキサイド(C1)を2重量部配合し、80℃で混練し、マレイミド樹脂組成物を得た。得られたマレイミド樹脂組成物の発熱挙動を観察するためにMDSC測定を行った。結果を表1に示す。
【0068】
・硬化発熱:モジュレイテッドDSC(MDSC)測定による硬化発熱開始温度、硬化発熱ピークトップ温度及び発熱終了温度の測定
解析条件
解析モード:MDSC測定
測定器:Q2000 TA−instruments社製、
昇温速度:3℃/min
【0069】
【表1】
【0070】
表1から、ビスA型アリルフェノールを用いたマレイミド樹脂組成物と比較して、本発明のマレイミド樹脂組成物は200℃以下の比較的低温で硬化終了しており、優れた硬化性を有することがわかる。このことから、電子吸引性のスルホニル基が隣接する炭素に共役にすることで、アルケニル、アルケニルエーテル基の硬化性を付与したものと考えられる。また、発熱開始温度が、100℃以上であることから、100℃以上での混練時の粘度増加を抑制できるものと考えられる。
また、175℃でのゲルタイムが30秒程度であることから、封止材で使用されているエポキシ樹脂/フェノール硬化系と同等の硬化性を有していることから、硬化サイクルの速さが特に要求される半導体封止材料分野でも使用できるものと考えられる。
【0071】
(実施例3)
合成例5で得られたマレイミド樹脂(A1)を63重量部、2,2’−ジアリル−4,4’−スルホニルジフェノール( B1)35重量部を配合し、150℃で混練し、その後、硬化促進剤であるジクミルパーオキサイド(C1)を2重量部配合し、80℃で混練し、本発明のマレイミド樹脂組成物を得た。得られたマレイミド樹脂組成物を180℃×1hでの硬化条件で硬化サンプルを作成し、硬化性を評価するためゲル分率を測定した。結果を表2に示す。
【0072】
(実施例4〜14と比較例2〜3)
実施例3において、マレイミド樹脂(A1)、2,2’−ジアリル−4,4’−スルホニルジフェノール(B1)、ジクミルパーオキサイド(C1)を、表2に記載の素材/配合量に変えた以外は同様の方法によりマレイミド樹脂組成物を得た。得られたマレイミド樹脂組成物を180℃×1hでの硬化条件で硬化サンプルを作成し、硬化性を評価するためゲル分率を測定した。結果を表2に示す。
【0073】
ゲル分率(%):得られた硬化物を50〜100μmに粉砕し、粉砕物を5gを還流しているメチルエチルケトン中に約8時間放置し、抽出し、その後
、80℃で3時間、120℃で5時間乾燥し、重量を測定した。
ゲル分率%=(メチルエチルケトン処理後の重量(g)/5g)×100
ゲルタイム:175℃のオーブンの上でのゲル化までの時間を測定
トランスファー成形性:175℃、20分以内に金型から硬化樹脂を取り出せること。
【0074】
【表2】
【0075】
表2から、比較用のビスA型のアリルフェノールに比べて、ビスS型のアルケニル基の反応性は、構造の異なるマレイミド樹脂でも優れており、更に、フェノール以外の置換基を有しても、優れた反応性を有することがわかる。
また、175℃でのゲルタイムが30秒程度であることから、封止材で使用されているエポキシ樹脂/フェノール硬化系と同等の硬化性を有していることから、硬化サイクルの速さが特に要求される半導体封止材料分野でも使用できるものと考えられる。
【0076】
(実施例15)
合成例5で得られたマレイミド樹脂(A1)を63重量部、2,2’−ジアリル−4,4’−スルホニルジフェノール(B1)を35重量部、硬化促進剤であるジクミルパーオキサイド(C1)を2重量部配合し、二本ロールにて混練し、175℃のトランスファー成形し、200℃×2hの硬化条件で硬化物を得た。得られた硬化物の下記の物性を評価した。結果を表3に示す。
【0077】
(実施例16)
合成例5で得られたマレイミド樹脂(A1)を63重量部、合成例1から得られたスルホニウム化合物(B2)を35重量部、硬化促進剤であるジクミルパーオキサイド(C1)を2重量部配合し、二本ロールにて混練し、175℃のトランスファー成形し200℃×2hの硬化条件で硬化物を得た。得られた硬化物の下記の物性を評価した。結果を表3に示す。
【0078】
(実施例17)
合成例5で得られたマレイミド樹脂(A1)を64重量部、合成例1から得られたスルホニウム化合物(B2)を36重量部配合し、二本ロールにて混練し、175℃のトランスファー成形し200℃×2hの硬化条件で硬化物を得た。得られた硬化物の下記の物性を評価した。結果を表3に示す。
【0079】
(比較例4)
EPPN−502H(日本化薬製 エポキシ当量169g/eq.軟化点67.5℃EP1)を61部、フェノールノボラック(P−2 明和化成製 H−1、水酸基当量106g/eq.)38重量部、トリフェニルホスフィン(TPP純正化学 試薬)1重量部を配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をタブレット化後、トランスファー成形で樹脂成形体を調製し、硬化条件160℃×2h+180℃×6hで硬化物を得た。得られた硬化物の下記の物性を評価した。結果を表3に示す。
【0080】
(比較例5)
EOCN−1020-55(日本化薬製エポキシ当量194g/eq. 軟化点54.8℃ EP2)を65部、フェノールノボラック(P−2 明和化成製 H−1、水酸基当量106g/eq.)34重量部、TPP(純正化学 試薬)1重量部を配合しミキシングロー
ルを用いて均一に混合・混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をタブレット化後、トランスファー成形で樹脂成形体を調製し、硬化条件160℃×2h+180℃×6hで硬化物を得た。得られた硬化物の下記の物性を評価した。結果を表3に示す。
【0081】
得られた硬化物を下記の測定を実施した。
・DMA
測定項目:30℃、200℃、250℃の貯蔵弾性率、
:ガラス転移温度(tanδ最大時の温度)
測定方法:動的粘弾性測定器TA−instruments製、Q−800
測定温度範囲:30℃〜350℃
昇温速度:2℃/min
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚みは約800μm)。
・誘電率及び誘電正接:
測定方法:空洞共振機 Agilent Technologies社製
K6991に準拠して1GHzにおいて測定
・曲げ試験
測定項目:曲げ強度、曲げ弾性率
測定方法:JIS−6481(曲げ強さ)に準拠し30℃で測定。
・熱分解測定:
測定方法:TG−DTA6220 SII社製
測定温度範囲:30〜580℃
昇温速度:10℃/min
Td1:1%重量減少温度
Td5:5%重量減少温度
【0082】
【表3】
【0083】
表3から、本発明のマレイミド樹脂組成物の硬化物は、エポキシ樹脂と同様の硬化条件で成形可能であり、また、得られた硬化物は高耐熱エポキシ樹脂を用いた場合と比較して、Tgが約100℃高く、機械強度、高弾性率、低誘電特性に優れ、更に室温及び高温での弾性率変化が少ないことがわかる。
【0084】
(実施例18)
合成例5で得られたマレイミド樹脂(A1)を63重量部、2,2’−ジアリル−4,4’−スルホニルジフェノール(B1)を35重量部、硬化促進剤であるジクミルパーオキサイド(C1)を2重量部を、100重量部のMEKに溶かし、ワニスを作成した。作成したワニスを厚み0.1mmのガラスクロス(有沢製作所製 品番1031 NT-105 S640)に含浸し、120℃×5minで乾燥させることでプリプレグを作成した。その後、銅箔(CF−T9LK−STD−18,福田金属箔粉工業株式会社製)にプリプレグを20枚を挟み、減圧下、圧力1.0MPa、180℃×2hで熱プレスし、厚み2mmの銅箔プリント配線板を作成し、銅箔の90
°ピール強度を測定し、表4に示した。
【0085】
(比較例6)
合成例5で得られたマレイミド樹脂(A1)を63重量部、o,o’−ジアリルビスフェノールA(b1)を35重量部を配合し、150℃で混練し、その後、硬化促進剤であるジクミルパーオキサイド(C1)を2重量部を添加し、100重量部のMEKに溶かし、ワニスを作成した。作成したワニスを厚み0.1mmのガラスクロス(有沢製作所製 品番1031 NT-105 S640)に含浸し、120℃×5minで乾燥させることでプリプレグを作成した。その後、銅箔(CF−T9LK−STD−18,福田金属箔粉工業株式会社製)にプリプレグを20枚を挟み、減圧下、圧力1.0MPa、230℃×2hで熱プレスし、厚み2mmの銅箔プリント配線板を作成し、銅箔の90
°ピール強度を測定し、表4に示した。
【0086】
90°ピール強度測定方法:JIS C 6481に準拠した。
【0087】
【表4】
【0088】
表4からわかるように、ビスA型アリルフェノールと比較してビスS型アリルフェノールは優れた銅箔密着性を有することから、優れた接着材であることがわかった。
【0089】
(実施例19)
合成例5で得られたマレイミド樹脂(A1)を63重量部、2,2’−ジアリル−4,4’−スルホニルジフェノール(B1)を35重量部、硬化促進剤であるジクミルパーオキサイド(C1)を2重量部配合し、二本ロールにて混練し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、マレイミド樹脂組成物を得た。このマレイミド樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたマレイミド樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に175℃のトランスファー成形し200℃×2hの硬化条件で硬化サンプルを作成し、評価用試験片を得た。下記の測定条件において、難燃性試験を行った。評価結果も表5に示す。
【0090】
(実施例20)
マレイミド化合物(BMI−2300、大和化成工業(株)製)を54重量部、合成例2で得られたスルホニウム化合物(B3)を44重量部を配合し、硬化促進剤であるジクミルパーオキサイド(C1)を2重量部配合し、二本ロールにて混練し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、マレイミド樹脂組成物を得た。このマレイミド樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたマレイミド樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に175℃のトランスファー成形し200℃×2hの硬化条件で硬化サンプルを作成し、評価用試験片を得た。下記の測定条件において、難燃性試験を行った。評価結果も表5に示す。
【0091】
(実施例21)
マレイミド化合物(BMI−1000、大和化成工業(株)製)を56重量部、合成例2で得られたスルホニウム化合物(B3)42重量部を配合し、硬化促進剤であるジクミルパーオキサイド(C1)を2重量部配合し、二本ロールにて混練し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、マレイミド樹脂組成物を得た。このマレイミド樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたマレイミド樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に175℃のトランスファー成形し200℃×2hの硬化条件で硬化サンプルを作成し、評価用試験片を得た。下記の測定条件において、難燃性試験を行った。評価結果も表5に示す。
【0092】
(比較例7)
合成例5で得られたマレイミド樹脂(A1)を63重量部、o,o’−ジアリルビスフェノールA(b1)35重量部を配合し、硬化促進剤であるジクミルミルパーオキサイド(C1)を2重量部配合し、二本ロールにて混練し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、マレイミド樹脂組成物を得た。このマレイミド樹脂組成物をミキサーにて粉砕し、更にタブレットマシーンにてタブレット化した。このタブレット化されたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に175℃のトランスファー成形し200℃×2hの硬化条件で硬化サンプルを作成し、評価用試験片を得た。下記の測定条件において、難燃性試験を行った。評価結果も表5に示す。
【0093】
難燃性試験
・難燃性:UL94に準拠して行った。ただし、サンプルサイズは幅12.5mm×長さ150mmとし、厚さは0.8mmで試験を行った。
・残炎時間:5個1組のサンプルに10回接炎したあとの残炎時間の合計
【0094】
【表5】
【0095】
表5からわかるように、ビスA型アリルフェノールと比較してビスS型アリルフェノールは優れた難燃性を示す事がわかった。ハロゲンやアンチモン化合物等の難燃剤を用いなくとも、難燃を示すことが明らかである。
【0096】
(実施例22)
前述の実施例18のマレイミド樹脂組成物において、表面が金属の銅製の
図1に示す96Pin QFP(チップサイズ:7×7×厚み0.1mm、パッケージサイズ:14×14×厚み1.35mm)リードフレーム((株)健正堂製:日本化薬特注品)を作成した。まず、リードフレームをトランスファー成型金型にセットし、上記同様にしてタブレット化したマレイミド樹脂組成物をトランスファー成型(175℃×60秒)し、更に脱型後180℃×2時間の条件で硬化の96Pin QFPの封止材(
図2)を作成した。
【0097】
実施例22より、本発明のマレイミド樹脂組成物は、従来のエポキシ樹脂組成物等と同様の硬化過程でリードフレームを封止することが確認できる。このことから、半導体封止材料へ適用できることがわかる。
【0098】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2016年8月5日付で出願された日本国特許出願(特願2016−154824)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。