(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の角周波数を中心として周波数軸上で対称な位置に上側帯波信号と下側帯波信号とを有する受信信号を直交復調して生成されるベースバンド信号を離散フーリエ級数に展開する離散フーリエ変換実行部と、
離散フーリエ級数に展開された前記ベースバンド信号の周波数ビンに対する振幅スペクトルを算出する振幅スペクトル算出部と、
前記第1の角周波数に対応する中心周波数ビンに関する振幅スペクトルの対称性を評価して、前記振幅スペクトルの非対称成分に対応する周波数ビンを非対称周波数ビンとして検出する非対称成分検出部と、
前記ベースバンド信号から展開された前記離散フーリエ級数において、前記非対称周波数ビンに対応する値に第1の係数を乗ずる一方、前記非対称周波数ビン以外の周波数ビンに対応する値に該第1の係数よりも大きい第2の係数を乗ずる抑圧部と、
前記抑圧部で処理された前記離散フーリエ級数を逆離散フーリエ変換して、離散時間信号を得る逆離散フーリエ変換実行部と、を備えるノイズ抑圧装置。
前記受信信号に含まれる搬送波信号の角周波数に対応する中心周波数ビンにおける振幅と、前記中心周波数ビン以外の周波数ビンにおける振幅とを比較し、前記中心周波数ビンにおける振幅に対し、所定の値を超える振幅を有するノイズ周波数ビンを検出するノイズ成分検出部と、
前記ベースバンド信号から展開された前記離散フーリエ級数において、前記ノイズ周波数ビンに対応する値に第3の係数を乗ずる一方、前記中心周波数ビンにおける振幅に対し所定の値以下の振幅を有する周波数ビンに、該第3の係数よりも大きい第4の係数を乗ずる第2抑圧部と、
前記抑圧部で処理された前記離散フーリエ級数を、前記第2抑圧部で処理された前記離散フーリエ級数で補間して新たな離散フーリエ級数を算出する調整部と、をさらに備え、
前記離散時間信号は、前記新たな離散フーリエ級数を前記逆離散フーリエ変換実行部で逆離散フーリエ変換して得られるものとする、請求項1に記載のノイズ抑圧装置。
前記非対称周波数ビン以外の周波数ビンが複数存在する場合、前記第2の係数は、前記非対称周波数ビン以外の周波数ビンに対して個別の値をとりうる、請求項1または3に記載のノイズ抑圧装置。
前記ノイズ周波数ビン以外の周波数ビンが複数存在する場合、前記第4の係数は、前記ノイズ周波数ビン以外の周波数ビンに対して個別の値をとりうる、請求項2または3に記載のノイズ抑圧装置。
前記非対称成分検出部は、一の周波数ビンにおける振幅と、前記中心周波数ビンに対して該一の周波数ビンと対称な位置にある周波数ビンを含む連続した複数の周波数ビンにおける振幅の最大値との比較に基づいて、前記振幅スペクトルの対称性を評価し、前記非対称周波数ビンを検出する、請求項1または3に記載のノイズ抑圧装置。
前記振幅スペクトルにおける直流成分の近傍において、最大の振幅を有する周波数ビンを前記中心周波数ビンとする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のノイズ抑圧装置。
前記受信信号に含まれる搬送波信号の角周波数に対応する中心周波数ビンにおける振幅と、前記中心周波数ビン以外の周波数ビンにおける振幅とを比較し、前記中心周波数ビンにおける振幅に対し、所定の値を超える振幅を有するノイズ周波数ビンを検出するステップと、
前記ベースバンド信号から展開された前記離散フーリエ級数において、前記ノイズ周波数ビンに対応する値に第3の係数を乗ずる一方、前記中心周波数ビンにおける振幅に対し所定の値以下の振幅を有する周波数ビンに、該第3の係数よりも大きい第4の係数を乗ずるステップと、
前記非対称成分が抑圧された前記離散フーリエ級数を前記ノイズ周波数ビンに対応する成分が抑圧された前記離散フーリエ級数で補間して新たな離散フーリエ級数を算出するステップと、をさらに備え、
前記新たな離散フーリエ級数を逆離散フーリエ変換して前記離散時間信号を得る、請求項11に記載のノイズ抑圧方法。
前記非対称周波数ビン以外の周波数ビンが複数存在する場合、前記第2の係数は、前記非対称周波数ビン以外の周波数ビンに対して個別の値をとりうる、請求項11または13に記載のノイズ抑圧方法。
前記ノイズ周波数ビン以外の周波数ビンが複数存在する場合、前記第4の係数は、前記ノイズ周波数ビン以外の周波数ビンに対して個別の値をとりうる、請求項12または13に記載のノイズ抑圧方法。
前記非対称周波数ビンを検出するステップにおいて、一の周波数ビンにおける振幅と、前記中心周波数ビンに対して該一の周波数ビンと対称な位置にある周波数ビンを含む連続した複数の周波数ビンにおける振幅の最大値との比較に基づいて、前記振幅スペクトルの対称性を評価し、前記非対称周波数ビンを検出する、請求項11または13に記載のノイズ抑圧方法。
前記振幅スペクトルにおける直流成分の近傍において、最大の振幅を有する周波数ビンを前記中心周波数ビンとする、請求項11ないし18のいずれか1項に記載のノイズ抑圧方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された従来の技術では、ノイズが両側帯波信号の搬送波付近に存在する場合に、RF帯域における一方の側帯波にのみ重畳されるノイズを抽出するための直交復調が必要となる。
【0009】
しかし、この場合に、ミキサーで混合される混合波の周波数と、放送局から送信される搬送波の周波数との同期を保つことが困難となる。また、両側帯波に複数のノイズが重畳された場合は、各ノイズに対し個別に別方向に位相を回転させる必要があり、ノイズ抽出処理が困難であった。
【0010】
また、特許文献2に開示された従来の技術では、信号帯域外の周波数を用いて受信信号近傍のノイズだけを選択出力する第2ミキサー部を使用するためには、受信信号近傍においてノイズだけを選択出力可能な周波数帯が存在することが前提となる。
【0011】
しかし、受信信号近傍に隣接する放送波が存在する場合、ノイズだけを選択出力可能な周波数帯を確保することはできなかった。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、種々の条件下で、受信信号に含まれるノイズを安定して抑圧可能なノイズ抑圧装置及びノイズ抑圧方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、この発明では、受信信号に含まれる側帯波信号が周波数軸上で搬送波信号に対して対称に配置されていることに着目して、非対称成分をノイズ成分として抑圧するようにした。また、搬送波信号の振幅と側帯波信号との振幅の比が一定以下になることに着目してノイズ成分を抑圧するようにした。
【0014】
具体的には、本発明に係るノイズ抑圧装置は、第1の角周波数を中心として周波数軸上で対称な位置に上側帯波信号と下側帯波信号とを有する受信信号を直交復調して生成されるベースバンド信号を離散フーリエ級数に展開する離散フーリエ変換実行部と、離散フーリエ級数に展開されたベースバンド信号の周波数ビンに対する振幅スペクトルを算出する振幅スペクトル算出部と、第1の角周波数に対応する中心周波数ビンに関する振幅スペクトルの対称性を評価して、振幅スペクトルの非対称成分に対応する周波数ビンを非対称周波数ビンとして検出する非対称成分検出部と、ベースバンド信号から展開された離散フーリエ級数において、非対称周波数ビンに対応する値に第1の係数を乗ずる一方、非対称周波数ビン以外の周波数ビンに対応する値に第1の係数よりも大きい第2の係数を乗ずる抑圧部と、抑圧部で処理された離散フーリエ級数を逆離散フーリエ変換して、離散時間信号を得る逆離散フーリエ変換実行部と、を備えている。
【0015】
この構成によれば、もとの信号に含まれる両側帯波信号が周波数軸上で対称に配置されていることを利用して演算処理を行うため、回路規模を大幅に拡張することなく、少ない演算量で安定してノイズを抑圧できる。
【0016】
受信信号に含まれる搬送波信号の角周波数に対応する中心周波数ビンにおける振幅と、中心周波数ビン以外の周波数ビンにおける振幅とを比較し、中心周波数ビンにおける振幅に対し、所定の値を超える振幅を有するノイズ周波数ビンを検出するノイズ成分検出部と、ベースバンド信号から展開された離散フーリエ級数において、ノイズ周波数ビンに対応する値に第3の係数を乗ずる一方、中心周波数ビンにおける振幅に対し所定の値以下の振幅を有する周波数ビンに、第3の係数よりも大きい第4の係数を乗ずる第2抑圧部と、抑圧部で処理された離散フーリエ級数を、第2抑圧部で処理された離散フーリエ級数で補間して新たな離散フーリエ級数を算出する調整部と、をさらに備え、離散時間信号は、新たな離散フーリエ級数を逆離散フーリエ変換実行部で逆離散フーリエ変換して得られる、のが好ましい。
【0017】
この構成によれば、2つのノイズ抑圧処理を行い、それらの結果に基づいた補間データを用いることで、回路規模を大幅に拡張することなく、少ない演算量で安定してノイズを抑圧することができる。特に、搬送波に対応する成分に対し、対称位置にある2つの周波数ビンに同じ振幅のノイズがそれぞれ重畳している場合、このノイズを抑圧することが可能となる。
【0018】
本発明に係る別のノイズ抑圧装置は、搬送波信号と両側帯波信号とを有する受信信号を直交復調して生成されるベースバンド信号を離散フーリエ級数に展開する離散フーリエ変換実行部と、離散フーリエ級数に展開されたベースバンド信号の周波数ビンに対する振幅スペクトルを算出する振幅スペクトル算出部と、搬送波信号の角周波数に対応する中心周波数ビンにおける振幅と、中心周波数ビン以外の周波数ビンにおける振幅とを比較し、中心周波数ビンにおける振幅に対し、所定の値を超える振幅を有するノイズ周波数ビンを検出するノイズ成分検出部と、ベースバンド信号から展開された離散フーリエ級数において、ノイズ周波数ビンに対応する値に第3の係数を乗ずる一方、中心周波数ビンにおける振幅に対し所定の値以下の振幅を有する周波数ビンに、第3の係数よりも大きい第4の係数を乗ずる抑圧部と、抑圧部で処理された離散フーリエ級数を逆離散フーリエ変換して、離散時間信号を得る逆離散フーリエ変換実行部と、を備えている。
【0019】
この構成によれば、搬送波に対応する成分の振幅と、それ以外の周波数ビンに対応する振幅との比に基づいて、ノイズ成分を検出するため、回路規模を大幅に拡張することなく、少ない演算量で安定してノイズを抑圧することができる。特に、搬送波に対応する成分に対し、対称位置にある2つの周波数ビンに同じ振幅のノイズがそれぞれ重畳している場合、このノイズを抑圧することが可能となる。
【0020】
非対称周波数ビンが複数存在する場合、第1の係数は、非対称周波数ビンに対して個別の値をとりうる、のが好ましい。
【0021】
この構成によれば、例えば、複数の非対称成分がそれぞれ異なる振幅を有する場合、非対称周波数ビンの各々に対し、振幅に応じた異なる抑圧係数を設定することにより、より確実に非対称成分を抑圧できる。
【0022】
また、各周波数ビンに対して個別の抑圧係数を持つことで、例えば、受信時間が推移して、ノイズ成分が混入する非対称周波数ビンが変化するような場合に、係数を変化させて、受信信号の時間変化の影響が復調後の音声信号に現れるのを抑制できる。
【0023】
非対称周波数ビン以外の周波数ビンが複数存在する場合、第2の係数は、非対称周波数ビン以外の周波数ビンに対して個別の値をとってもよい。
【0024】
上記と同様に、各周波数ビンに対して個別の抑圧係数を持つことで、受信信号の時間変化の影響が復調後の音声信号に現れるのを抑制できる。
【0025】
ノイズ周波数ビンが複数存在する場合、第3の係数は、ノイズ周波数ビンに対して個別の値をとりうる、のが好ましい。
【0026】
この構成によれば、例えば、複数のノイズ成分がそれぞれ異なる振幅を有する場合、ノイズ周波数ビンの各々に対し、振幅に応じた異なる抑圧係数を設定することにより、より確実にノイズ成分を抑圧できる。
【0027】
また、各周波数ビンに対して個別の抑圧係数を持つことで、例えば、受信時間が推移して、ノイズ成分が混入するノイズ周波数ビンが変化するような場合に、係数を変化させて、受信信号の時間変化の影響が復調後の音声信号に現れるのを抑制できる。
【0028】
ノイズ周波数ビン以外の周波数ビンが複数存在する場合、第4の係数は、ノイズ周波数ビン以外の周波数ビンに対して個別の値をとってもよい。
【0029】
上記と同様に、各周波数ビンに対して個別の抑圧係数を持つことで、受信信号の時間変化の影響が復調後の音声信号に現れるのを抑制できる。
【0030】
振幅スペクトルにおける直流成分の近傍において、最大の振幅を有する周波数ビンを中心周波数ビンとするのが好ましい。
【0031】
この構成によれば、ベースバンド信号を生成するために混合する複素周波数の角周波数と搬送波信号の角周波数との間にオフセットがあった場合でも、振幅スペクトルの対称軸、あるいは搬送波に対応する周波数成分を設定することができる。
【0032】
非対称成分検出部は、一の周波数ビンにおける振幅と、中心周波数ビンに対して一の周波数ビンと対称な位置にある周波数ビンを含む連続した複数の周波数ビンにおける振幅の最大値との比較に基づいて、振幅スペクトルの対称性を評価し、非対称周波数ビンを検出する、のが好ましい。
【0033】
この構成によれば、有限の周波数分割区間に起因して生じる、周波数ビンの対称位置のずれの影響を低減することができ、安定してノイズを抑圧できる。
【0034】
また、本発明に係る受信装置は、放送局から出力されるAM放送波信号を受信するアンテナと、アンテナから受信したAM放送波信号を増幅するアンプと、増幅されたAM放送波信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器と、デジタル信号を変換して生成されるベースバンド信号に含まれるノイズを抑圧して離散時間信号を生成する、上記のいずれかのノイズ抑圧装置と、離散時間信号を音声信号に復調する復調部と、を備えている。
【0035】
この構成によれば、上記のノイズ抑圧装置を備えることにより、安定してノイズを抑圧でき、音声信号を高品質で受信することが可能となる。
【0036】
本発明に係るノイズ抑圧方法は、第1の角周波数を中心として周波数軸上で対称な位置に上側帯波信号と下側帯波信号とを有する受信信号に含まれるノイズを抑圧するノイズ抑圧方法であって、受信信号に所定の角周波数を有する複素正弦波を混合してベースバンド信号を生成するステップと、ベースバンド信号を離散フーリエ級数に展開するステップと、離散フーリエ級数に展開されたベースバンド信号の周波数ビンに対する振幅スペクトルを算出するステップと、第1の角周波数に対応する中心周波数ビンに関する振幅スペクトルの対称性を評価して、振幅スペクトルの非対称成分に対応する周波数ビンを非対称周波数ビンとして検出するステップと、ベースバンド信号から展開された離散フーリエ級数において、非対称周波数ビンに対応する値に第1の係数を乗ずる一方、非対称周波数ビン以外の周波数ビンに対応する値に第1の係数よりも大きい第2の係数を乗ずるステップと、非対称成分が抑圧された離散フーリエ級数を逆離散フーリエ変換して、離散時間信号を得るステップと、を備えている。
【0037】
この方法によれば、もとの信号に含まれる両側帯波信号が周波数軸上で対称に配置されていることを利用して演算処理を行うため、少ない演算量で安定してノイズを抑圧できる。このことにより、音声信号を高品質で受信することができる。
【0038】
受信信号に含まれる搬送波信号の角周波数に対応する中心周波数ビンにおける振幅と、中心周波数ビン以外の周波数ビンにおける振幅とを比較し、中心周波数ビンにおける振幅に対し、所定の値を超える振幅を有するノイズ周波数ビンを検出するステップと、ベースバンド信号から展開された前記離散フーリエ級数において、ノイズ周波数ビンに対応する値に第3の係数を乗ずる一方、中心周波数ビンにおける振幅に対し所定の値以下の振幅を有する周波数ビンに、第3の係数よりも大きい第4の係数を乗ずるステップと、非対称成分が抑圧された離散フーリエ級数をノイズ周波数ビンに対応する成分が抑圧された離散フーリエ級数で補間して新たな離散フーリエ級数を算出するステップと、をさらに備え、新たな離散フーリエ級数を逆離散フーリエ変換して、離散時間信号を得る、のが好ましい。
【0039】
この方法によれば、2つのノイズ抑圧処理を行い、それらの結果に基づいた補間データを用いることで、回路規模を大幅に拡張することなく、少ない演算量で安定してノイズを抑圧することができる。特に、搬送波に対応する成分に対し、対称位置にある2つの周波数ビンに同じ振幅のノイズがそれぞれ重畳している場合、このノイズを抑圧することが可能となる。
【0040】
本発明に係る別のノイズ抑圧方法は、搬送波信号と両側帯波信号とを有する受信信号に含まれるノイズを抑圧するノイズ抑圧方法であって、受信信号に所定の角周波数を有する複素正弦波を混合してベースバンド信号を生成するステップと、ベースバンド信号を離散フーリエ級数に展開するステップと、離散フーリエ級数に展開されたベースバンド信号の周波数ビンに対する振幅スペクトルを算出するステップと、搬送波信号の角周波数に対応する中心周波数ビンにおける振幅と、中心周波数ビン以外の周波数ビンにおける振幅とを比較し、中心周波数ビンにおける振幅に対して所定の値を超える振幅を有するノイズ周波数ビンを検出するステップと、ベースバンド信号から展開された離散フーリエ級数において、ノイズ周波数ビンに対応する値に第3の係数を乗ずる一方、中心周波数ビンにおける振幅に対して所定の値以下の振幅を有する周波数ビンに対応する値に第3の係数よりも大きい第4の係数を乗ずるステップと、ノイズ周波数ビンに対応する成分が抑圧された離散フーリエ級数を逆離散フーリエ変換して、離散時間信号を得るステップと、を備えている。
【0041】
この方法によれば、搬送波に対応する成分の振幅と、それ以外の周波数ビンに対応する振幅との比に基づいて、ノイズ成分を検出するため、回路規模を大幅に拡張することなく、少ない演算量で安定してノイズを抑圧することができる。特に、搬送波に対応する成分に対し、対称位置にある2つの周波数ビンに同じ振幅のノイズがそれぞれ重畳している場合、このノイズを抑圧することが可能となる。
【0042】
また、本発明に係る受信方法は、放送局から出力されるAM放送波信号を受信するステップと、AM放送波信号を増幅するステップと、増幅されたAM放送波信号をデジタル信号に変換するステップと、デジタル信号と所定の角周波数を有する複素正弦波とを混合してベースバンド信号を生成するステップと、ベースバンド信号に含まれるノイズを抑圧して離散時間信号を生成する、上記のいずれかのノイズ抑圧方法により、ベースバンド信号に含まれるノイズを抑圧して離散時間信号を生成するステップと、離散時間信号を音声信号に復調するステップと、を備えている。
【0043】
この方法によれば、上記のノイズ抑圧ステップを実行することにより、安定してノイズを抑圧でき、音声信号を高品質で受信することが可能となる。
【発明の効果】
【0044】
以上説明したように、本発明によると、AM放送波信号のような両側帯信号を含む信号に含まれるノイズを、少ない演算量で安定して抑圧することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0047】
(実施形態1)
(受信装置の構成)
図1は、本実施形態に係る受信装置を示し、この受信装置10は、放送局から出力されるAM放送波信号を受信するアンテナ11と、アンテナ11から受信したAM放送波信号を増幅するアンプ12と、増幅されたAM放送波信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器13(ADC;Analog−to−Digital Converter)と、複素正弦波を生成する数値制御発振器14(NCO;Numerically Controlled Oscillator)と、デジタル信号に変換されたAM放送波信号とNCOで生成された複素正弦波とを混合してベースバンド信号を生成するミキサー15と、を備えている。
【0048】
NCO14とミキサー15とは直交復調部16を構成しており、ミキサー15で生成されたベースバンド信号は、I(In−Phase)信号とQ(Quadrature−Phase)信号とに分離された信号である。
【0049】
また、受信装置10は、ベースバンド信号を離散フーリエ級数に展開する離散フーリエ変換(DFT;Discrete Fourier Transformation)実行部17と、離散フーリエ級数に展開されたベースバンド信号の振幅スペクトルを算出する振幅スペクトル算出部18と、振幅スペクトルの上側帯波に対応する成分と下側帯波に対応する成分との対称性を評価し、非対称となる周波数成分を検出する非対称成分検出部19と、離散フーリエ級数における非対称な周波数成分に対応する値を抑圧する抑圧部20と、抑圧処理が行われた離散フーリエ級数を離散時間信号に変換する逆離散フーリエ変換(IDFT;Inverse Discrete Fourier Transform)実行部21と、離散時間信号を音声信号に復調する復調部22と、を備えている。
【0050】
また、
図1に示すように、受信装置10は、音声信号を出力するためのスピーカー23を備えていてもよい。
【0051】
DFT実行部17と、振幅スペクトル算出部18と、非対称成分検出部19と、抑圧部20と、IDFT実行部21と、復調部22とは、機能ブロックとして、例えば、ベースバンドLSIにおける汎用的な演算処理部で演算を実行することにより実現される。なお、これらすべてが同一のLSI上に実装されていてもよいし、複数のLSI上に実装されていても良い。またこれらの機能を、LSI上で専用の機能ブロックとして有していてもよい。
【0052】
なお、後述する抑圧係数の設定にあたって、
図2に示すように、抑圧係数設定部20aを別途設けてもよい。
【0053】
また、後述するように、ノイズ抑圧処理は、直交復調部16で生成されたベースバンド信号を、順次、DFT実行部17からIDFT実行部21までの間で信号処理を行うことによって実現され、これらの機能ブロックによりノイズ抑圧装置30が構成される。
【0054】
(AM放送波信号の音声復調処理)
以下に、
図1に示した受信装置で、AM放送波信号にノイズが重畳された信号を受信した場合の音声復調処理について説明する。なお、本実施形態では、ノイズとして、音声コンテンツ帯域に単一周波数を有する単一の信号を仮定している。
【0055】
まず、ノイズを含まない場合のAM放送波信号について説明する。
【0056】
放送局から出力されアンテナで受信するAM放送波信号V
0(t)は(式1)で表される。
【0058】
ここで、mは変調率、S(t)は音声コンテンツ、ω
Cは搬送波の角周波数、Aは搬送波の振幅である。
【0059】
音声コンテンツを、角周波数ω
Sを持つ単一トーン信号cos(ω
St)に置き換えると、V
0(t)は(式2)で表される。
【0061】
(式2)に示されるように、単一トーン信号のAM放送波信号は、角周波数ω
Cの搬送波信号と、搬送波信号に対し上下に信号周波数ω
Sだけシフトした上側帯波(USB;Upper Side Band)信号及び下側帯波(LSB;Lower Side Band)信号との加算信号となる。上側帯波と下側帯波は搬送波を中心に対称の振幅スペクトルを有している。
【0062】
なお、単一トーン信号に限らず、その他の信号についても、AM放送波信号に含まれる上側帯波と下側帯波とは、搬送波を中心に対称の振幅スペクトルを持つ。
【0063】
次に、アンテナでの受信信号にノイズが重畳されている場合を考える。この場合、アンテナに入力される信号V(t)は(式3)で表される。
【0065】
Bはノイズの振幅、ω
Bは搬送波を中心とした場合のノイズの角周波数であり、搬送波信号の角周波数ω
Cからω
Bだけ離れた角周波数においてノイズが重畳されていることを示す。
【0066】
この信号に対する音声復調処理フローチャートを
図3に示す。
【0067】
音声復調をデジタル回路で実施するために、AM放送波信号V(t)をデジタル信号に変換する(ステップS1)。ここで、デジタル信号に変換するために、AM放送波信号V(t)をADC13に入力する必要があるが、信号V(t)は空間を伝播しているため、ADC13の入力ダイナミックレンジに対して電圧レベルが小さく、ADC13の出力信号から信号V(t)中の情報が欠落する場合がある。
【0068】
そのため、ADC13に入力する前にアンプ12によりV(t)を増幅する。
【0069】
アンプ12により増幅されたAM放送波信号V’(t)は(式4)で表される。
【0071】
A’はアンプ12により増幅された搬送波の振幅、B’はアンプ12により増幅されたノイズの振幅である。V’(t)をADC13に入力することでデジタル化された信号V’(t)が出力される。
【0072】
次に、デジタル信号V’(t)に対して、NCO14により生成される角周波数ω’
Cの複素正弦波exp(−jω’
Ct)によって直交復調を行い、I信号とQ信号とからなるベースバンド信号に変換する(ステップS2)。
【0073】
NCO14により生成される複素正弦波の角周波数ω’
Cは、搬送波の角周波数ω
Cと厳密に一致させる必要はない。また、位相についても厳密に一致させる必要はない。
【0074】
NCO14により生成される複素正弦波の角周波数がω’
C=ω
Cである場合のベースバンド信号は(式5)で表される。
【0076】
(式5)で表されるベースバンド信号を展開し、搬送波の角周波数ω
Cに対応する成分をローパスフィルタ(LPF、図示せず)により除去した後の信号をV’’(t)とする(ステップS3)。
【0077】
V’’(t)の実部をI(t)、虚部をQ(t)とすると、I(t)、Q(t)は、それぞれ(式6)、(式7)で表される。
【0080】
ベースバンド信号I(t)、Q(t)の振幅復調を行った結果は(式8)で表される。
【0082】
(式8)からわかるように、放送局から飛来したAM放送波信号がアンテナ11で受信されるまでにノイズが混入した場合、振幅復調の結果にはノイズ周波数ω
Bだけではなく、ノイズ周波数ω
Bと音声コンテンツの角周波数ω
Sとの和の角周波数の成分および差の角周波数の成分が含まれ、さらに、この結果は、平方根の演算で級数展開されるため音声帯域全体に拡散される。そのため、このままでは、振幅復調を実施した後の音声信号からノイズを除去することが困難である。
【0083】
従って、ノイズ成分の除去は振幅復調を実施する前段で実施する必要がある。
【0084】
DFT実行部17で、ベースバンド信号I(t)、Q(t)に対して、周波数軸上でL点のDFTを実行し、ベースバンド信号の離散フーリエ級数X
0(n)を求める(ステップS4)。ここで、nは、離散フーリエ級数X
0(n)における周波数ビンのインデックスを表わす。本実施形態では、直流成分を0番目のビンとして各周波数ビンに−L/2から(L/2−1)のインデックスを付与している。
【0085】
例えば、Lが256の場合は、256点のDFTを実施することで、256点の複素数の離散フーリエ級数が得られ、直流成分を0番目のビンとして各周波数ビンに対応する成分X(−128)からX(127)が得られる。
【0086】
次に、振幅スペクトル算出部18で、L点の離散フーリエ級数X
0(n)からL点の振幅スペクトル|X
0(n)|を算出する(ステップS5)。(式6)、(式7)で表されるベースバンド信号の振幅スペクトル|X
0(n)|を
図4Aに示す。
【0087】
ここで、搬送波の角周波数ω
Cに対応する周波数ビンは、離散フーリエ級数の直流成分である0番目のビンである。
【0088】
音声コンテンツの角周波数ω
Sに対応する周波数ビンは、0番目のビンを中心として対称となる位置に、上側帯波に対応する周波数ビンN
Sと下側帯波に対応する周波数ビン−N
Sとして発生するが、ノイズの角周波数ω
Bに対応する周波数ビンN
Bは、上側帯波または下側帯波に対応する周波数ビンのいずれか一方のみに発生する。
【0089】
次に、非対称成分検出部19でL点の振幅スペクトル|X
0(n)|の上側帯波と下側帯波の対称性を算出する。上記の対称性を算出するために、
図4Bに示すように、直流成分である0番目のビンを中心周波数ビンとして、これに対し反転させた振幅スペクトル|X’
0(n)|を算出する(ステップS6)。
【0090】
L点の振幅スペクトルにおける上側帯波に対応する成分と下側帯波に対応する成分とから、L点の対称性D
0(n)を求める(ステップS7)。具体的には、対称性D
0(n)は、上側帯波に対応するN番目の周波数ビンにおける振幅と、上側帯波の周波数ビンの対称位置にある下側帯波に対応する−N番目の周波数ビンにおける振幅の比率を求めて算出する。
【0091】
N番目の周波数ビンにおける振幅と−N番目の周波数ビンにおける振幅とが等しい場合、実数で表わされたD
0(n)は1となり、両者の振幅が異なる場合はD
0(n)≠1となる。なお、|X
0(n)|=0の場合は、D
0(n)=1とみなしてよい。
【0092】
なお、各周波数ビンにおける振幅が、例えば、直流成分における振幅を基準にデシベルで表現されているときは、上側帯波に対応する周波数ビンにおける振幅と、下側帯波の周波数ビンにおける振幅との差分を取って、対称性D
0(n)を算出する。
【0093】
また、上記の振幅比率が1を基準として上下で所定の範囲内にあれば、2つの成分について対称性がある(D
0(n)=1)と判断し、所定の範囲を超えていれば非対称(D
0(n)≠1)と判断してもよい。この場合、所定の範囲は、AM放送波の受信状況や、受信装置10の仕様、性能等により適宜決められる。
【0094】
図4A、4Bに示した振幅スペクトル|X
0(n)|、|X’
0(n)|間での対称性評価結果に基づき、
図4Cに示すように、ノイズの角周波数ω
Bに対応するN
B番目の周波数ビン(以下、非対称周波数ビンという)と、直流成分を中心として対称位置にある−N
B番目の周波数ビンとに非対称性が現れ、非対称成分が検出される。
【0095】
この場合、−N
B番目の周波数ビンには実際のノイズ成分が含まれていないため、後述する抑圧係数を求める際に注意が必要である。
【0096】
AM放送波信号のように音声信号が含まれる場合、実際の音声信号に対して振幅の大きい信号がノイズとして問題になることが多い。よって、例えば、非対称成分として検出された、対称位置にある2つの周波数ビンのうち、振幅の大きい方を実際の非対称成分(ノイズが重畳された成分)として選択することで、音声信号の品質を高品位に維持できる。
【0097】
次に、L点の抑圧係数W(n)を設定する(ステップS8)。
図5に示すように、非対称成分検出部19で検出された非対称周波数ビンN
Bに対してW(N
B)=0を、それ以外の周波数ビンに対してW(n)=1を設定する。
【0098】
なお、非対称周波数ビンの抑圧係数は、1より小さな任意の値を指定してもよい。また、非対称成分検出部19で検出された非対称周波数ビンN
Bに対して非対称周波数ビン-N
Bの振幅スペクトル|X
0(-N
B)|と同じ値となるように、W(N
B)を設定してもよい。
【0099】
また、非対称周波数ビンを中心に隣接する任意の周波数ビンに対して、同じ抑圧係数を設定してもよい。いずれにせよ、抑圧すべき非対称成分に対する抑圧係数W(N
B)よりも大きな値を有する抑圧係数W(n)が、非対称周波数ビン以外の周波数ビンに対して設定される。また、上述したとおり、抑圧係数設定部20aにより、ステップS7の処理を行ってもよい。
【0100】
次に、抑圧部20で、離散フーリエ級数X
0(n)における各周波数ビンに対応する値毎に、対応する周波数ビンで設定された抑圧係数W(n)を乗算する処理を行い、新たに離散フーリエ級数X
1(n)を算出する(ステップS9)。
図6に、上記の乗算処理を行った後の振幅スペクトルを示しており、ベースバンド信号におけるノイズ成分が抑圧されていることがわかる。
【0101】
次に、抑圧部20で算出された離散フーリエ級数X
1(n)に対して、IDFT実行部21でL点の逆離散フーリエ変換を実行し、ノイズ成分が除去された時間領域のベースバンド信号に変換する(ステップS10)。
【0102】
ノイズ成分が除去された時間領域のベースバンド信号は(式9)、(式10)で表される。
【0105】
復調部22において、(式9)、(式10)で表される信号を振幅復調する(ステップS11)。この結果は(式11)で表される。
【0107】
ハイパスフィルター(HPF、図示せず)に(式11)で表される信号を通過させ、搬送波成分を除去し、AM放送波に含まれる単一トーン信号に一致した音声出力となる(ステップS12)。
【0108】
以上説明したように、本実施形態によれば、もとの信号に含まれる両側帯波信号が周波数軸上で対称に配置されていることを利用して、少ない演算量で安定してノイズを抑圧できる。このことにより、音声信号を高品質で受信することができる。
【0109】
(信号受信状況の時間変化について)
実際のAM放送波信号を受信するにあたって、上述した離散フーリエ級数X
0(n)は、所定のサンプリング時刻毎に算出される。従って、実際の離散フーリエ級数X
0(n)は、X
0(n,o)で表わされる。ここで、nは、上述の通り、周波数ビンのインデックスを表わし、oは、サンプリング時刻のインデックスを表わす。
【0110】
すなわち、サンプリング時刻t1において、離散フーリエ級数X
0(n,1)が存在し、サンプリング時刻t2において、離散フーリエ級数X
0(n,2)が存在する。
【0111】
実際に受信されるAM放送波信号及びノイズが時間変化に対してあまり変化しないような状況であれば、離散フーリエ級数における時間変化項を考慮する必要はあまりない。しかし、実際には、受信状況等により、これらの信号、特にノイズの数やその振幅、周波数等は時々刻々と変化する場合が多い。
【0112】
従って、後者の場合には、ステップS8における抑圧係数W(n)についても、離散フーリエ級数X
0(n,2)と同様に、W(n,o)として求める必要がある。例えば、角周波数ω
Bのノイズ成分の振幅が時間的に変化する場合、
図7に示すように、ノイズ成分の振幅|X
0(N
B,o)|の変化に応じて、抑圧係数W(N
B,o)が、同じ周波数ビンに対しても各時刻で変化するように求められる。
【0113】
このように、信号や受信状況の時間変化に応じて、抑圧係数W(n,o)を算出し、ノイズ抑圧を行うことで、実際の音声信号を過度に抑圧したり、あるいは、ノイズの抑圧不足が生じたりするのを抑制でき、音声信号を高品質で受信することができる。
【0114】
なお、本実施形態では、AM放送波を例にとって説明したが、これに限らず、上側帯波と下側帯波を持ち、これらの振幅スペクトルが中心周波数を中心に対称となる信号に対して、本実施形態に開示した技術を適用することができる。
【0115】
また、本実施形態では、AM放送波信号の音声コンテンツ帯域に単一周波数をもつ1つのノイズが混入した信号を受信する例を示したが、複数のノイズが混入した場合においても、同様に、ノイズに対応する周波数ビンを非対称成分として検出でき、ノイズを抑圧することが可能である。上側帯波と下側帯波の双方にノイズが混入した場合においても、同様にノイズを抑圧することが可能である。
【0116】
(変形例1)
NCO14で生成される複素正弦波の角周波数が搬送波の角周波数に対してオフセットを有する場合を考える。この変形例では、複素正弦波の角周波数ω’
Cが、ω’
C=ω
C+ω
Mである場合を説明する。
【0117】
この場合のベースバンド信号は(式12)で表される。
【0119】
(式12)は、AM放送波信号に含まれる搬送波の角周波数ω
Cに対して、NCO14で生成される複素正弦波の角周波数がω
Mだけオフセットした状態で直交復調が実行されることを示している。
【0120】
(式12)で表わされるベースバンド信号を展開し、角周波数ω
Cの搬送波成分をLPFにより除去し、さらにL点のDFTを実施し、ベースバンド信号の離散フーリエ級数を得た結果を
図8Aに示す。
【0121】
角周波数ω
Cを有する搬送波成分に対応する周波数ビンはN
M番目の周波数ビンであり、この周波数ビンは、反転スペクトルを算出する際の反転軸である中心周波数ビンとなる。また、この周波数ビンは、離散フーリエ級数|X
0(n)|の直流成分に対して角周波数ω
Mに対応した位置だけオフセットしている。
【0122】
同様に、角周波数ω
Sを有する音声コンテンツは、周波数ビンN
Mを中心として上側帯波と下側帯波の対称位置に発生し、それぞれ周波数ビンN
M+N
S、周波数ビンN
M−N
Sに属する。角周波数ω
Bを有するノイズが属する周波数ビンN
M+N
Bは、上側帯波と下側帯波のいずれか一方のみに発生する。
【0123】
搬送波の角周波数ω
Cに対する複素正弦波の角周波数ω’
Cのオフセット量が既知の場合、N
Mは計算により求まる。また、上記のオフセット量が未知の場合であっても、振幅スペクトル|X
0(n)|の直流成分の近傍の中から最大値を持つ周波数ビンを選択して、これを中心周波数ビンとして設定することができる。
【0124】
この場合は、
図8B、8Cに示すように、(N
M+N
B)番目及び(N
M−N
B)番目の周波数ビンの位置に非対称性が現れる。
【0125】
以上説明したように、AM放送波信号に含まれる搬送波の角周波数と、NCO14で生成される複素正弦波の角周波数との間にオフセットがあった場合においても、オフセット量が既知か未知かによらず、反転スペクトルを算出する際の中心周波数ビンを設定することが可能である。このことにより、
図3に示すフローチャートに従って、音声復調処理におけるノイズ抑圧処理を行うことができる。
【0126】
(変形例2)
離散フーリエ級数X
0(n)を算出するにあたって、有限の区間で周波数分割を行うため、各周波数ビン内における搬送波およびノイズの位置によっては、周波数ビンの対称位置がずれる場合がある。この場合は、例えば、
図9に示すように、+k番目の周波数ビンに対して、−k番目の周波数ビンだけでなく、その前後数点の周波数ビンを抽出する。その中で最大の振幅を有する周波数ビン(
図9では(−k+1)番目)と、+k番目の周波数ビンとで各々の振幅比率を比較し、対称性を評価する。つまり、−k番目の周波数ビンの前後でエンベロープを算出し、その最大振幅に対応する周波数ビンを、+k番目の周波数ビンに対する対称性評価時の比較対象とする。
【0127】
このような処理を行うことで、有限の周波数分割区間に起因して生じる、周波数ビンの対称位置のずれの影響を低減することができる。なお、エンベロープを算出する際の周波数ビンの抽出点の数は、振幅スペクトル全体の周波数ビンの個数や、分割区間あたりの周波数帯域幅等によって適宜決められる。
【0128】
なお、変形例を含む本実施形態において、非対称成分が複数存在する場合には、抑圧係数W(n)は、検出された非対称成分に対し、個別の値を取ることができる。例えば、複数の非対称成分がそれぞれ異なる振幅を有する場合、非対称周波数ビンの各々に対し、振幅に応じた異なる抑圧係数を設定することにより、より確実に非対称成分を抑圧できる。また、非対称周波数ビンの各々に対して、異なる抑圧係数を設定してもよいし、非対称周波数ビンのうちの一部の周波数ビンに対して異なる抑圧係数を設定してもよい。
【0129】
また、非対称周波数ビン以外の周波数ビンに対しても、個別の抑圧係数を設定してもよい。また、非対称周波数ビン以外の周波数ビンの各々に対して、異なる抑圧係数を設定してもよいし、そのうちの一部の周波数ビンに対して異なる抑圧係数を設定してもよい。
【0130】
上記のように、各周波数ビンに対して個別の抑圧係数を設定することで、受信信号の時間変化の影響に対応することができる。上述したように、実際のAM放送波信号を受信するにあたって、この信号に含まれるノイズの数やその振幅、周波数等は時々刻々と変化する場合が多い。
【0131】
例えば、時刻の変化に伴い、非対称成分の属する周波数ビンが変化した場合、抑圧係数W(n)が時刻の変化の前後で同じであると、復調後の音声信号に不自然さが現れる。これは非対称成分が属していない周波数ビンが、時刻の変化に伴い、非対称周波数ビンに変化した場合も同様である。
【0132】
従って、抑圧係数W(n)自体も固定した値ではなく、周波数ビン毎に個別の値を持ち、受信信号の時間変化に応じて、その値を変化させることで、音声信号を原信号に対して高品質で復調して出力できる。
【0133】
また、ある時刻で、非対称周波数ビンが複数存在し、次の時刻でそのうち一つの周波数ビンのみが非対称成分が属していない周波数ビンに変化するような場合、変化した周波数ビンに対してのみ抑圧係数W(n)を、例えば、0から1に変化させることで、音声信号を原信号に対して高品質で復調して出力できる。
【0134】
なお、非対称周波数ビンかどうかによらず、各周波数ビンに対する抑圧係数の変化量は、復調後の音声信号の品質等を考慮して適宜決められる。
【0135】
(実施形態2)
本実施形態と実施形態1との大きな違いは、ノイズ抑圧処理に際して、ベースバンド信号の周波数軸上での対称性を利用するのではなく、搬送波成分との比較に基づきノイズ成分を抽出している点にある。具体的には、
図10に示すように、DFT実行部17と第1第1抑圧部20bとの間に、非対称成分検出部19と並列に設けられたノイズ成分検出部24と、ノイズ成分検出部24に接続された第2抑圧部25と、第1、第2抑圧部20b,25の後段に設けられた調整部26とをさらに有している点で異なる。
【0136】
図11に示す音声復調フローチャートを用いて、本実施形態での音声復調処理を説明する。
図3に示したフローでの処理と同じ部分については詳細な説明は省略する。
【0137】
ステップS1からステップS9までの処理は、
図3に示したフローでの処理と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0138】
ステップS6からステップS9までの処理と平行して、ステップS10からステップS12までの処理を行う。
【0139】
まず、ノイズ成分検出部24で、振幅スペクトル|X
0(n)|において、搬送波に対応する周波数ビン(この場合は直流成分)における振幅と、直流成分を除く各周波数ビンにおける振幅との比率を求め、所定の比率を超える振幅を有する周波数ビンをノイズ成分として検出する(ステップS10)。
【0140】
図12に示すように、AM放送波信号における音声コンテンツの振幅は、変調率mが1の場合に、搬送波の振幅に対して−6dBとなる。また、mが1以上の場合であっても、搬送波の振幅に対する音声コンテンツの振幅が−6dBを超えることはない。よって、周波数ビンN
Bにおける振幅が直流成分の振幅に対して−6dBよりも大きければ、周波数ビンN
Bにはノイズが含まれていると推定され、この周波数ビンN
Bをノイズ成分として検出する。
【0141】
次に、第2抑圧部25で、各周波数ビンに対し抑圧係数W
2(n)を設定する(ステップS11)。この設定方法は、受信状況等の時間変化を考慮した場合も含め、実施形態1で示したのと同様であり、例えば、ステップS10で抽出されたノイズ成分に対応する周波数ビン(以下、ノイズ周波数ビンという)には、W
2(n)=0を設定する。また、実施形態1と同様に、抑圧すべきノイズ成分に対する抑圧係数W(N
B)よりも大きな値を有する抑圧係数W(n)が、ノイズ周波数ビン以外の周波数ビンに対して設定される。
【0142】
第2抑圧部25で、L点の抑圧係数W
2(n)とL点の離散フーリエ係数X
0(n)との乗算処理を行い、新たに離散フーリエ級数X
2(n)を算出する(ステップS12)。
【0143】
次に、調整部26で、ステップS9で算出された離散フーリエ級数X
1(n)と離散フーリエ級数X
2(n)とを対比し、離散フーリエ級数X
1(n)に対して離散フーリエ級数X
2(n)で補間を行い、新たに離散フーリエ級数X
3(n)を算出する(ステップS13)。
【0144】
離散フーリエ級数X
3(n)から、ノイズ成分が除去された時間領域のベースバンド信号を生成し、さらに音声復調を行う処理(ステップS14〜ステップS16)は、
図3におけるステップS10からステップS12に示した処理と同様につき説明を省略する。
【0145】
以上説明したように、本実施形態によれば、搬送波に対応する成分の振幅と、それ以外の周波数ビンに対応する振幅との比に基づいて、ノイズ成分を検出するため、少ない演算量で安定してノイズを抑圧することができる。このことにより、音声信号を高品質で受信することができる。特に、実施形態1に示した構成では、搬送波に対応する成分に対し、対称位置にある2つの周波数ビンに同じ振幅のノイズがそれぞれ重畳している場合、これらを抑圧することは困難であった。
【0146】
本実施形態に係る構成によれば、上記のノイズに対しても、搬送波に対応する成分の振幅との比に基づいてノイズとして検出できるため、このデータで、非対称成分に基づきノイズ抑圧した離散フーリエ級数を補間することが可能となる。このことにより、確実にノイズを抑圧できる。
【0147】
なお、ノイズ成分が複数存在する場合には、抑圧係数W(n)は、検出されたノイズ成分に対し、個別の値を取ることができる。例えば、複数のノイズ成分がそれぞれ異なる振幅を有する場合、ノイズ周波数ビンの各々に対し、振幅に応じた異なる抑圧係数を設定することにより、より確実にノイズ成分を抑圧できる。また、ノイズ周波数ビンの各々に対して、異なる抑圧係数を設定してもよいし、ノイズ周波数ビンのうちの一部の周波数ビンに対して異なる抑圧係数を設定してもよい。
【0148】
また、ノイズ周波数ビン以外の周波数ビンに対しても、個別の抑圧係数を設定してもよい。また、ノイズ周波数ビン以外の周波数ビンの各々に対して、異なる抑圧係数を設定してもよいし、そのうちの一部の周波数ビンに対して異なる抑圧係数を設定してもよい。
【0149】
実施形態1で述べたように、各周波数ビンに対して個別の抑圧係数を設定することで、受信信号の時間変化の影響に対応することができる。
【0150】
抑圧係数W(n)を固定した値ではなく、周波数ビン毎に個別の値を持ち、受信信号の時間変化に応じて、その値を変化させることで、音声信号を原信号に対して高品質で復調して出力できる。
【0151】
なお、ノイズ周波数ビンかどうかによらず、各周波数ビンに対する抑圧係数の変化量は、復調後の音声信号の品質等を考慮して適宜決められる。
【0152】
なお、実施形態1に示した構成のほうがより高精度にノイズの検出及び抑圧が行えるため、本実施形態では、搬送波に対応する成分の振幅と、それ以外の周波数ビンに対応する振幅との比に基づいて検出した結果を、振幅スペクトルの対称性に基づいて検出した結果に対する補間データとして用いている。しかし、高精度なノイズ抑圧が求められないような場合は、
図10に示した構成のうち、非対称成分検出部19と、第1抑圧部20bと、調整部26とを省略することが可能である。このことにより、演算量を低減でき、処理が高速化する。また、ノイズ抑圧のための演算処理に必要な回路規模等を抑制できる。
【0153】
この場合は、
図3に示すフローチャートのステップS7からS9までの処理に代えて、
図11に示すステップS10からS12までの処理を行うこととなる。
【0154】
なお、搬送波の角周波数ω
CとNCO14で生成される複素正弦波の角周波数ω’
Cとの間にオフセットがある場合においても、変形例1に示したのと同様の方法で中心周波数ビンを設定することができる。例えば、変形例1に示したのと同じオフセットを複素正弦波の角周波数ω’
Cが有しているとすると、周波数ビンN
Mにおける振幅と、それ以外の周波数ビンにおける振幅とをノイズ成分検出部24で比較し、ノイズ成分を検出することとなる。
【0155】
また、
図10に示した構成あるいは、この構成から非対称成分検出部19と、第1抑圧部20bと、調整部26とを省略した構成に、
図2に示した抑圧係数設定部20aを追加してもよい。