(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態における工作機械は、ターニングセンタまたは複合加工機である。まず、
図1から
図4に関連して工作機械の構造を中心として説明する。
図5以降に関連して、本実施形態における工具交換制御の詳細を説明する。
【0015】
図1は、本実施形態における工作機械の概略構成を示す平面図である。
工作機械100は、制御装置160、加工装置112、工具交換部114および工具格納部106を備える。制御装置160は、
図6に関連して後述する情報処理装置118および加工制御部116に対応する。タレットベース102やタレット164は、X、Y、Z軸方向に移動可能である。タレットベース102とタレット164とを含めて刃物台という場合と、タレット164のみを刃物台という場合がある。
図1は、X−Z方向平面に見た場合の平面図である。タレット164はZ軸を中心として回転可能にタレットベース102に設置される。工具格納部106(工具マガジン)は、タレットベース102のZ軸正方向側に設けられる。工具交換部114は、工具Tを移送する。
【0016】
図2は、工作機械100の斜視図である。
角柱体型のタレット164には、その外周平面に、工具Tを保持するための複数のホルダ168を有する。ホルダ168はタレット本体から着脱可能に装着される。位置PTのホルダ168に装着される工具Tが着脱対象となる。タレット164を矢示B−C方向(Z軸回転方向)に回転させることにより、各ホルダ168を着脱位置PTに割り出すことができる。
【0017】
工具格納部106は、矢示D−E方向(X軸回転方向)に回転可能に設けられた保持板170と、保持板170の周縁に等間隔に配設された保持ポット174と、保持板170を回転させる駆動モータ176(
図3参照)を備える。保持ポット174は工具Tを保持する。保持ポット174は、X軸負方向に突出する。位置PMの保持ポット174にある工具Tが着脱対象となる。駆動モータ176が保持板170を回転させることにより、各保持ポット174を着脱位置PMに割り出すことができる。
【0018】
図3は、工具格納部106および工具交換部114の斜視図である。
工具交換部114は、タレットベース102および工具格納部106よりも、X軸負方向側に設けられる(
図1参照)。工具交換部114は、Z軸に沿って設けられた送り機構178と、送り機構178によりZ軸に沿って移動される移動台180と、移動台180に取り付けられた第1ハンド182および第2ハンド194などを含む。
【0019】
送り機構178は、Z軸に平行に配設されるレール保持台184と、レール保持台184の下面に、Z軸に平行に取り付けられる2本のガイドレール186と、各ガイドレール186に係合するようにそれぞれ2個ずつ設けられたスライダ188と、レール保持台184に沿って配設されたボールねじ190と、ボールねじ190に螺合するボールナット192と、ボールねじ190の端部に連結して、ボールねじ190を軸線中心に回転させるサーボモータ196を備える。スライダ188は移動台180の上面に固設される。
【0020】
移動台180の下面には、矢示F−G方向(Y軸回転方向)に回転可能、かつ、X軸方向に移動可能に保持部材198が配設される。保持部材198は、移動シリンダ200によりX軸方向に駆動される。保持部材198は、ラック&ピニオン機構などの機構を介し、駆動シリンダ202により駆動されて、矢示F−G方向に90度の角度範囲で旋回する。すなわち、保持部材198はX−Z方向に平面移動可能であり、かつ、F−G方向に回転可能に構成されている。
図3は、保持部材198がF方向に回転したときの状態を示している。
【0021】
保持部材198には回転軸204が貫通して取り付けられる。回転軸204は、ラック&ピニオン機構などの機構を介し、駆動シリンダ206により駆動されて、矢示J−K方向に180度の角度範囲で回転する。
【0022】
図4は、
図3に示すA部の拡大斜視図である。
回転軸204の端部には、回転軸204の軸心を中心とした点対称、かつ、上下平行となるように、第1ハンド182および第2ハンド194が取り付けられる。第1ハンド182および第2ハンド194は同一構成である。第1ハンド182は、工具Tを把持するための一対の把持爪208を有し、把持爪208により工具Tを把持可能である。同様にして、第2ハンド194も一対の把持爪210を有し、把持爪210により工具Tを把持可能である。
【0023】
保持部材198が矢示F方向側に回転したとき(
図3,
図4に示す回転状態)、第1ハンド182と第2ハンド194それぞれの把持爪208および把持爪210はZ軸方向(把持爪208等により把持される工具Tの軸線方向と直交する直交方向)に沿った姿勢となる。保持部材198が矢示G方向側に回転したとき、第1ハンド182と第2ハンド194それぞれの把持爪208および把持爪210はX軸方向に沿った姿勢となる。
【0024】
保持部材198がX軸正方向側の移動端(この位置を「第1X位置」という)にあり、かつ、F方向の回転端にあるとき、着脱位置PMに割り出された保持ポット174に保持されている工具Tは、第1ハンド182または第2ハンド194により把持できる。
【0025】
また、第1ハンド182が上側において工具Tを把持し、着脱位置PMの保持ポット174に工具Tが保持されていないときには、第1ハンド182が把持する工具Tを着脱位置PMの保持ポット174(空の保持ポット)に収容できる。
【0026】
移動台180がタレット164と工具格納部106の中間位置にあるとする。ここで、保持部材198をX軸負方向の移動端(この位置を「第2X位置」という)に移動させ、かつ、矢示F方向の回転端に回転させる。次に、移動台180をZ軸正方向に移動させ、第1ハンド182に把持される工具Tの軸心(X方向)と保持ポット174の軸心を一致させる(このときのZ座標を「第1Z位置」という)。続いて、保持部材198をX軸正方向に「第1X位置」まで移動させて、第1ハンド182の工具Tを着脱位置PMの空の保持ポット174に装着する。このあと、移動台180をZ軸負方向に移動させることにより(この位置を「第2Z位置」という)、第1ハンド182による工具Tの把持が解除される。
【0027】
一方、上側に第1ハンド182が位置し、第1ハンド182の把持爪208には工具Tが把持されておらず、着脱位置PMに工具Tが保持されているときには、着脱位置PMの工具Tを第1ハンド182により取り出すことができる。
【0028】
移動台180がタレット164と工具格納部106と中間位置にあるとする。ここで、保持部材198を矢示F方向の回転端に回転させ(
図3,
図4に示す回転状態)、移動台180を「第2Z位置」に移動させた後、移動台180を「第1X位置」に移動させ、次いで、移動台180を前記「第1Z位置」に移動させる。これにより、着脱位置PMに装着された工具Tは、一対の把持爪208の開口部分に侵入し、把持爪208により把持される。次に、保持部材198を「第2X位置」に移動させる。これにより、保持ポット174に装着された工具Tは、一対の把持爪208により把持された状態で、保持ポット174から取り出される。
【0029】
タレット164では、着脱位置PTに割り出されたタレット164が半径方向に沿って工具Tを保持するタイプの場合には、工具交換部114の保持部材198が「第1X位置」にあり、かつ、矢示F方向の回転端にある時、ホルダ168に保持された工具Tを、下側に位置する第1ハンド182または第2ハンド194によって把持できる。
【0030】
上側に第1ハンド182が位置し、下側に第2ハンド194が位置し、第1ハンド182が工具Tを把持し、第2ハンド194が工具Tを把持していない状態にあり、かつ、着脱位置PTに工具Tが保持されているときには、第1ハンド182に把持した工具Tと、着脱位置PTのホルダ168に保持される工具Tを交換できる。
【0031】
移動台180がタレット164と工具格納部106との中間位置にあるとする。ここで、保持部材198を矢示F方向の回転端に回転させるとともに、「第2X位置」に移動させた状態で、移動台180をZ軸負方向に設定された所定位置(この位置を「第3Z位置」という)まで移動させる。「第3Z位置」は、保持部材198を「第1X位置」に移動させたときに、下側に位置する第2ハンド194がホルダ168に保持された工具Tに対してZ軸正方向側の位置、言い換えれば、第2ハンド194が工具Tと干渉しない手前の位置にある。
【0032】
保持部材198を「第1X位置」に移動させた後、移動台180をZ軸負方向に設定された所定位置(この位置を「第4Z位置」という)まで移動させる。これにより、着脱位置PTの工具Tが、一対の把持爪210の開口部分に侵入して、把持爪210によって把持される。次に、保持部材198を「第2X位置」まで移動させると、ホルダ168に装着された工具Tが、一対の把持爪210によりホルダ168から取り出される。
【0033】
次に、駆動シリンダ206は第1ハンド182と第2ハンド194とを上下反転させて、上側に第2ハンド194を位置させ、下側に第1ハンド182を位置させ、保持部材198を「第1X位置」に移動させる。これにより、第1ハンド182に把持された工具Tが着脱位置PTに設置される。次いで、移動台180を「第3Z位置」に移動させると、第1ハンド182による工具Tの把持が解除される。以上の第1交換動作によって、第1ハンド182に把持された工具Tと、着脱位置PTの工具Tが交換される。なお、第2ハンド194に把持された工具Tは、上述した収納動作によって、工具格納部106に収納できる。
【0034】
タレット164の着脱位置PTに割り出されたホルダ168が、工具TをZ軸に沿って保持するタイプの場合には、保持部材198が矢示G方向の回転端にあり、かつ、「第1X位置」にある時に、このホルダ168に保持された工具Tを、下側に位置する第1ハンド182または第2ハンド194によって把持できる。
【0035】
上側に第1ハンド182が位置し、下側に第2ハンド194が位置し、ボールナット192が工具Tを把持し、第2ハンド194が工具Tを把持していない状態にあり、かつ、着脱位置PTに工具Tが保持されているときには、第1ハンド182に把持された工具Tと、着脱位置PTの工具Tを交換できる。
【0036】
移動台180がタレット164と工具格納部106との中間位置にあるとする。ここで、保持部材198を矢示G方向の回転端に回転させるとともに、「第2X位置」に移動させ、移動台180をZ軸負方向に設定された「第3Z位置」に移動させる。このとき、第2ハンド194はホルダ168に保持された工具Tを把持可能な位置にある。
【0037】
次に、保持部材198を「第1X位置」に移動させる。これにより、着脱位置PTの工具Tが、一対の把持爪210の開口部分に侵入し、把持爪210によって把持される。この後、保持部材198をZ軸負方向に設定された「第4Z位置」まで移動させると、ホルダ168に装着された工具Tは、把持爪210によりホルダ168から取り出される。
【0038】
次に、駆動シリンダ206により、第1ハンド182と第2ハンド194とを上下反転させて、上側に第2ハンド194を位置させ、下側に第1ハンド182を位置させ、移動台180を「第3Z位置」に移動させる。これにより、第1ハンド182が把持する工具Tは着脱位置PTに装着される。次いで、保持部材198を「第2X位置」に移動させると、第1ハンド182による工具Tの把持が解除される。以上の第2交換動作によって、ボールナット192に把持された工具Tと、着脱位置PTの工具Tを交換される。第2ハンド194に把持された工具Tは、上述した収納動作によって、工具格納部106に収納できる。
【0039】
次に、工具パターンの保存と復帰について説明する。
【0040】
図5は、タレット164における工具交換を説明するための模式図である。
上述したように、工作機械のタレットベース102は、回転可能なタレット164を備える。タレット164は中央の軸を中心として回転可能である。タレット164は、工具の取り付け位置としてホルダ168がセットできる12個のステーション104(S1〜S12)を備える。各ステーション104に作業工具が装着される。たとえば、ホルダ168に2本の工具が装着できる形態であれば、1つのステーションに対して2本の工具が装着することもできる。
【0041】
工具の形状およびサイズは多様である。工具はホルダ168に取り付けられ、ホルダ168はステーション104に装着される。工作機械は、各工具を工具番号により識別する。
図5においてはステーション番号=S1に対応するステーション104(以下、「ステーション104(S1)」のように表記する)に、工具番号=T3の作業工具(以下、「作業工具(T3)」のように表記する)が装着されている。同様にして、ステーション104(S2)には作業工具(T24)、ステーション104(S3)には作業工具(T20)が装着されている。
【0042】
タレットベース102は、所定の加工位置110に対応する作業工具によりワークを加工する。
図5では、加工位置110(ステーション104(S1))にある作業工具(T3)により、ワークが加工される。工作機械は、タレットベース102およびタレット164を移動させ、作業工具(T3)をワークの所定位置に所定角度にて当てることでワークを加工する。別の作業工具(T24)によりワークを加工したいときには、工作機械はタレット164を回転させて作業工具(T24)を加工位置110にセットする。
【0043】
交換位置108に対応する作業工具は工具交換の対象となる。工作機械は、一般的に工具マガジンともよばれる工具格納部106を有する。工具格納部106には多数の予備工具が格納される。工作機械は、たとえば、予備工具(T4)をタレットベース102に装着するときには、交換位置108(ステーション(S2))の作業工具(T24)を工具格納部106に格納するとともに、予備工具(T4)を交換位置108に対応するステーション104(S2)に装着する。
【0044】
以上のように、工作機械は、タレットベース102の移動によりワークと作業工具の相対距離および相対角度を変化させつつワークを加工する。また、タレット164を回転させることで12個の作業工具からワークを実際に加工する作業工具を選ぶ。作業工具と予備工具は随時交換可能である。大容量の工具格納部106に多数の予備工具を格納しておけば、1台の工作機械により多種多様な加工を実現できる。その一方、比較的使用頻度の高い12種類の工具をタレット164に装着しておけば、工具交換にともなう時間のロスを抑制できる。
【0045】
工作機械は、加工プログラムにしたがって工具交換を繰り返しながらワークを加工する。このため、タレット164における作業工具の組み合わせ、すなわち、工具パターンは複雑に変化していく。加工スペースにおいてタレットベース102を移動させるとき、タレット164に装着される作業工具がテールストック等に接触しないように加工プログラムを作成する必要がある。以下、作業工具がワークあるいはテールストック等の外部機材に意図せぬ接触をしてしまう事象を「干渉」とよぶ。工具の大きさや形状は多種多様であるため、干渉がどのような状況において発生するのかをあらかじめ予見することは大変難しい。
【0046】
たとえば、工具パターンV1により加工工程の一部の仕上げ工程Aを行ったときには干渉は発生しなかったとする。しかし、同じ仕上げ工程Aをもう一度行ったときには干渉が発生することもある。これは、1回目の仕上げ工程Aの開始時における工具パターンV1と、2回目の仕上げ工程Aの開始時における工具パターンV2が異なるためである。2回目の仕上げ工程Aの開始時において、タレット164に大きな作業工具(TX)が取り付けられており、タレットベース102の移動時にこの作業工具(TX)が干渉を起こすことがある。このように、タレットベース102をまったく同じように動かしたとしても、工具パターンによって干渉が発生することもあれば発生しないこともある。今後、工作機械の小型化を進めていく上では、タレットベース102を狭い加工室内で動作させる必要があり、干渉が発生するリスクが高まると考えられる。
【0047】
そこで、本実施形態においては、干渉が発生しない工具パターンを記憶させておき、この「安全な工具パターン」を再現した上で加工工程の再開または再実行を行うことにより、干渉のリスクを低減する。
【0048】
図6は、工作機械100のハードウェア構成図である。
工作機械100は、情報処理装置118、加工制御部116、加工装置112、工具交換部114および工具格納部106を含む。数値制御装置として機能する加工制御部116は、加工プログラムにしたがって加工装置112に制御信号を送信する。加工装置112は、加工制御部116からの指示にしたがってタレットベース102を動かしてワークを加工する。また、加工制御部116は、工具情報管理部130(後述)からタレットベース102の工具パターンを取得する。
【0049】
情報処理装置118は、加工制御部116を制御する。本実施形態においては、情報処理装置118は作業者にユーザインタフェース機能を提供するとともに工具パターンを管理する。工具格納部106は予備工具を格納する。工具交換部114は、いわゆるATC(Automatic Tool Changer)に対応する。工具交換部114は、加工制御部116からの交換指示にしたがって、工具格納部106から予備工具を取り出し、タレットベース102の交換位置108にある作業工具と予備工具を交換する。
【0050】
図7は、情報処理装置118の機能ブロック図である。
情報処理装置118の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コンピュータプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0051】
なお、加工制御部116も、プロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され演算器に処理命令を供給するソフトウェアやプログラムを情報処理装置118とは別個のオペレーティングシステム上で実現される形態でもよい。
【0052】
情報処理装置118は、ユーザインタフェース処理部120、データ処理部122およびデータ格納部124を含む。
ユーザインタフェース処理部120は、ユーザからの操作を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインタフェースに関する処理を担当する。データ処理部122は、ユーザインタフェース処理部120により取得されたデータおよびデータ格納部124に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部122は、ユーザインタフェース処理部120およびデータ格納部124のインタフェースとしても機能する。データ格納部124は、各種プログラムと設定データを格納する。
【0053】
ユーザインタフェース処理部120は、入力部126および出力部128を含む。
入力部126は、タッチパネルあるいはハンドル等のハードデバイスを介してユーザからの入力を受け付ける。出力部128は、画像表示あるいは音声出力を介して、ユーザに各種情報を提供する。
【0054】
データ処理部122は、工具情報管理部130を含む。工具情報管理部130は、工具パターンの保存および復帰を制御する(後述)。
データ格納部124は、工具パターン記憶部132を含む。工具パターン記憶部132は、加工プログラムごとの工具パターンを保存する。
【0055】
以下、工具パターンのうち、タレット164に実際に取り付けられている作業工具の組み合わせをいうときには「現在パターン」とよび、現状ではタレット164に取り付けられていない作業工具の組み合わせとして工具パターン記憶部132に記憶される工具パターンのことを「保存パターン」とよぶ。両者を特に区別しないときには単に「工具パターン」とよぶ。
【0056】
図8は、工具パターン画面140の画面図である。
工具パターン記憶部132は、工具パターン(現在パターンと保存パターン)を記憶する。情報処理装置118の出力部128は、工具パターン記憶部132が記憶する工具パターンに基づいて、工具パターン画面140を生成し、画面表示させる。
【0057】
加工プログラムは、プログラム番号により識別される。プログラム番号領域144はプログラム番号を示す。工具情報管理部130は、加工プログラムごとに工具パターンを管理する。
図8の工具パターン画面140は、加工プログラム(B1249)の工具パターンを示す。
【0058】
現在パターン領域142は、タレット164に装着されている12個の作業工具の工具番号の組み合わせとしての現在パターンを示す。
図8によればステーション104(S1)には作業工具(T1)が装着されており、ステーション104(S2)には作業工具(T23)が装着されている(
図5参照)。出力部128は、加工プログラム(B1249)の実行中において、加工プログラム(B1249)に対応した工具パターン画面140を表示させる。また、加工中でなくても、作業者はプログラム番号「B1249」を指定した上で、加工プログラム(B1249)に対応した工具パターン画面140を表示させることもできる。
【0059】
保存パターン領域146は、加工プログラム(B1249)に対応づけられる保存パターンのリストを示す。保存パターンは、パターンIDにより識別される。加工プログラムには、コードの一部として「ステーション工具コード」を記載できる。ステーション工具コードにおいてパターンIDを指定することにより、現在パターンを保存パターンとして記憶させることができる。
【0060】
たとえば、ステーション工具コードを「GX」とする。加工プログラムに「現在パターンを保存コード(V2)として記憶させる命令」として「GX V2」と記載したとする。加工制御部116は、加工プログラムの実行中にステーション工具コード「GX V2」を検出したときには、「現在パターン」と「パターンID=V2」「プログラム番号=B1249」を情報処理装置118に通知する。情報処理装置118の工具情報管理部130は、通知された現在パターンを加工プログラム(B1249)の保存パターン(V2)として工具パターン記憶部132に記憶させる。このように、加工プログラムの任意の箇所にステーション工具コードを記載しておくことにより、加工工程の所定のタイミングにおける現在パターンを保存パターンとして工具パターン記憶部132に記憶させることができる。
【0061】
また、ステーション工具コードは「GX T1 V3」のように「ステーション工具コード、工具番号、パターンID」の形式にて記載することもできる。これは、タレット164を回転させて作業工具(T1)を加工位置110に設定した上で、設定後の現在パターンを保存パターン(V3)として記憶させることを意味する。
【0062】
本実施形態における工作機械100においては、1つの加工プログラムにつき最大24個の保存パターンを記憶させることができる。
【0063】
保存パターンは「復帰コード」により現在パターンとして再現できる。加工プログラムには任意の箇所に復帰コードを記載できる。たとえば、復帰コードを「GY」とする。加工制御部116は、加工プログラムの実行中に「保存コード(V5)を現在パターンとして再現させる命令」として「GY V5」を検出したときには、「現在パターン」と「パターンID=V5」「プログラム番号=B1249」を情報処理装置118に通知する。情報処理装置118の工具情報管理部130は、現在パターンと保存パターン(V5)が一致しないときには、保存パターン(V5)を加工制御部116に通知する。加工制御部116は、保存パターン(V5)にしたがって工具交換部114に工具交換を指示することにより、保存パターン(V5)を現在パターンとして再現する。
【0064】
一方、現在パターンと保存パターン(V5)が一致するときには、工具交換は不要であるため、工具情報管理部130は加工制御部116に工具交換なしでの作業続行を指示する。
【0065】
加工制御部116は、工具交換によって、現在パターンが変更されるごとに情報処理装置118に通知する。出力部128は、工具パターン画面140を表示させるとともに、工具交換に対応して現在パターン領域142を更新する。作業者は、ワーク加工中において、工具パターン画面140を確認しながら現在パターンを確認できる。
【0066】
工具パターン画面140には「保存キー」が表示されてもよい。ワークの加工中に作業者がパターンIDを選択した上で保存キーをタッチしたときには、工具情報管理部130は現在パターンを、選択されたパターンIDに対応する保存パターンとして工具パターン記憶部132に記憶させる。出力部128は、工具パターン画面140に示すデータを表形式のファイルとして出力することもできる。
【0067】
図9は、加工プログラム150の構成図である。
加工プログラム150は、4つのプログラムパーツB1〜B4を含む。プログラムパーツは、加工プログラム150に含まれる加工工程における一単位である。各プログラムパーツの前にはステーション工具コードR1〜R4が記載されている。なお、
図9では「ステーション工具コード」を「STコード」と記載している。
【0068】
加工制御部116が加工プログラム150にしたがってワークの加工を実行するとき、まず、ステーション工具コードR1(V1)を検出する。ステーション工具コードR1(V1)は、現在パターンを保存パターン(V1)として記憶させるコマンドである。保存パターン(V1)の記憶後、加工制御部116はプログラムパーツB1を実行する。プログラムパーツB1の実行後、ステーション工具コードR2(V2)によりそのときの現在パターンが保存パターン(V2)として再び記憶される。以後、プログラムパーツB2、ステーション工具コードR3(V3)、プログラムパーツB3、ステーション工具コードR4(V4)、プログラムパーツB4が順番に実行され、加工プログラム150は終了する。
【0069】
加工プログラム150の実行完了後、プログラムパーツB4だけ再実行したい場合がある。たとえば、プログラムパーツB4がワークの仕上げ工程であるとき、仕上げ工程を再実行することでワークの加工精度を高めたい場合が考えられる。あるいは、プログラムパーツB4の実行途中で異常停止が発生したため、プログラムパーツB4だけを再実行したい場合も考えられる。
【0070】
加工制御部116は、プログラムパーツB4の再実行に際して、その直前にあるステーション工具コードR4(V4)が指定するパターンID=V4および現在パターンを情報処理装置118に通知する。情報処理装置118の工具情報管理部130は、保存パターン(V4)を読み出し、現在パターンと保存パターン(V4)が一致しないとき、加工制御部116に保存パターン(V4)を通知する。加工制御部116は、工具交換部114に指示して保存パターン(V4)をタレットベース102の現在パターンとして再現する。保存パターン(V4)の再現後、加工制御部116は加工プログラム150のプログラムパーツB4を実行開始する。
【0071】
工具パターン(V4)を現在パターンとして設定していれば、プログラムパーツB4の実行中に干渉が発生しないことは確認済みであるとする。その一方、プログラムパーツB4の実行中に工具交換が発生する可能性があるので、プログラムパーツB4の終了または中断時における現在パターンは開始時の工具パターン(V4)とは同一ではないかもしれない。
【0072】
一例として、工具パターン(V4)には大きな作業工具(TX)は含まれていないが、プログラムパーツB4の実行中に作業工具(TX)が必要となり、工具交換を実行したとする。プログラムパーツB4の実行後、タレットベース102には作業工具(TX)が残る。このまま、プログラムパーツB4を再実行させるべくタレットベース102を動かすと、大きな作業工具(TX)がテールストック等と干渉する可能性がある。そこで、プログラムパーツB4を再実行する前に、保存パターン(V4)を現在パターンとして再現しておく。この場合、タレットベース102に装着されていた大きな作業工具(TX)は工具格納部106にいったん格納されることになる。工具パターン(V4)を復帰させた上でプログラムパーツB4を再実行する場合には干渉が発生しない。
【0073】
加工プログラムの作成者は、プログラムパーツの開始行において「直前の保存パターンを再現する復帰コード」を明示的に記載してもよい。上記の例でいえば、プログラムパーツB4の先頭行に復帰コード「GY V4」を記載しておけばよい。加工プログラム150の作成者は、加工プログラム150の任意の位置に任意の復帰コードを記載してもよい。
【0074】
あるいは、加工制御部116は、加工プログラム150のうち所定のプログラムパーツの再実行を情報処理装置118から指示されたときには、再実行時点の直前にあるステーション工具コードを検出し、このステーション工具コードにより指定される保存パターンを自動的に再現するようにあらかじめ設定されてもよい。
【0075】
このほか、ステーション工具コードを明示的に記載することなく現在パターンを保存パターンとして記憶してもよい。たとえば、加工制御部116は、加工プログラム150を1行のコード、あるいは、所定行数のコードを実行するごとに、現在パターンを情報処理装置118に通知し、情報処理装置118の工具情報管理部130は現在パターンを保存パターンとして登録してもよい。このような制御方法によれば、加工プログラム150の作成者はステーション工具コードを明示的に記載しなくても、加工プログラム150の実行にともなって自動的に保存パターンを登録させることができる。
【0076】
図10は、保存パターンの復帰処理を示すフローチャートである。
加工プログラム150を再実行するとき、加工制御部116は現在パターンと、再実行時点の直前にあるステーション工具コードにより指定されるパターンIDを情報処理装置118に送信する。情報処理装置118の工具情報管理部130は、指定された保存パターンと現在パターンが一致するかを判定する(S20)。一致しているときには(S20のY)、工具情報管理部130は実行指示を加工制御部116に送信する。加工制御部116は、実行指示を受信したとき加工プログラム150の再実行を開始する(S24)。
【0077】
一致しないときには(S20のN)、工具情報管理部130は保存パターンとともに工具交換を指示する(S22)。加工制御部116は、保存パターンの再現後、ワークの加工を再開する(S24)。
【0078】
以上、実施形態に基づいて工作機械100について説明した。
本実施形態によれば、加工プログラム150の実行時における現在パターンを保存パターンとして記憶させることができる。ステーション工具コードにより、任意のタイミングにてタレットベース102における作業工具の組み合わせを保存パターンとして記憶させることができるので、「干渉の発生しない安全な工具パターン」を再現した上で加工プログラム150を再実行できる。
【0079】
また、加工プログラムの実行過程において、現在パターンを適宜、かつ、自動的に保存パターンとして記憶させてもよい。たとえば、加工プログラム150を10行実行するごとに現在パターンを保存パターンとして記憶させてもよい。そして、加工プログラム150を25行目のコードから再実行する場合には、加工制御部116はその直前の20行目の実行時の保存パターンを現在パターンとして再現すればよい。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0081】
[変形例]
工作機械100は、作業現場で簡単なコマンドやプログラムを組んで実行指示するためのMDIモード(Manual Data Input Mode)を備えてもよい。以下、MDIモードにより作成されるプログラムのことを特に「MDIプログラム」とよぶ。MDIプログラムは、ユーザインタフェース処理部120により作成される1回限りの単純なプログラムであることが多く、プログラム番号の設定もなされない。このMDIプログラムにおいて、既存の加工プログラムに対応付けられる任意の保存パターンを復帰させてもよい。たとえば、MDIプログラムに「GY B1234 V5」の形式にて復帰コードを記載してもよい。この場合には、工具情報管理部130は、加工プログラム(B1234)の保存パターン(V5)を読み出し、これを加工制御部116に通知する。加工制御部116は、通知された保存パターン(V5)にしたがって工具交換部114に工具交換を指示すればよい。
【0082】
本実施形態においては、1つのステーション104に1つのホルダを装着し、1つのホルダに1つの作業工具を装着するとして説明した。このほか、1つのホルダに複数本の作業工具、たとえば、1つのホルダに4本の作業工具をセットで取り付け可能であってもよい。この場合には、工具パターンとして、ステーション104と工具番号を対応づけるのではなく、ステーション104と工具セットのセット番号を対応づけてもよい。
【0083】
現在パターンの保存は、明示的にステーション工具コードを記載したタイミングにおいて実行しつつ、所定タイミング、たとえば、10行実行するごとに自動的に実行されるとしてもよい。同様にして、保存コードの再現は、復帰コードが記載されているタイミングにおいて実行しつつ、所定のタイミング、たとえば、加工プログラム150の実行時または再開時において自動的に実行されるとしてもよい。
【解決手段】工作機械は、工具を装着可能な第1および第2のステーションを有するタレット164と、複数の工具を格納可能な工具格納部106と、加工プログラムにしたがって、タレットに装着される工具Tを制御し、ワークを加工する加工制御部と、タレットに装着される工具と工具格納部に格納される工具を交換する工具交換部114と、加工プログラムの第1部分に対応する第1および第2のステーションに装着される工具の組み合わせを第1工具パターンとして記憶し、加工プログラムの第2の部分に対応する第1および第2のステーションに装着される工具の組み合わせを第2工具パターンとして記憶する工具パターン記憶部と、を備える。