特許第6935670号(P6935670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6935670
(24)【登録日】2021年8月30日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】衛生洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20210906BHJP
【FI】
   E03D9/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-19166(P2017-19166)
(22)【出願日】2017年2月6日
(65)【公開番号】特開2018-127763(P2018-127763A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 好久
(72)【発明者】
【氏名】下山 岳宏
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−121303(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/016389(WO,A1)
【文献】 米国特許第06240572(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射して人体局部を洗浄するノズルと、
液体により前記ノズルを洗浄するノズル洗浄部と、
液体の供給源と前記ノズルとを接続する供給流路と、
前記供給流路と前記ノズル洗浄部とを接続する分岐流路と、
前記供給流路及び前記分岐流路のうち、前記供給源と前記ノズル洗浄部とを接続する流路に配置されるバキュームブレーカと、
前記分岐流路において、前記バキュームブレーカと前記ノズル洗浄部との間に配置され、通過する液体に除菌成分が溶出する除菌剤を収容するタンクと、を備え、
前記バキュームブレーカは、当該バキュームブレーカの上流側に接続される流路から液体が流入しないときに、当該バキュームブレーカの下流側に接続される流路を大気開放し、
前記タンクにおいて、液体が流出する流出口は、当該タンクの内底面よりも鉛直上方に位置し、
前記タンクにおいて、液体が流入する流入口は、前記流出口よりも鉛直下方に位置し、さらに、前記除菌剤の少なくとも一部よりも鉛直下方に位置する
衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記タンクにおいて、前記流入口は、前記除菌剤に正対する方向に開口する
請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記タンクにおいて、前記流入口及び前記流出口は異なる方向に開口する
請求項1又は2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記タンクの内部において、通液性を有し、前記除菌剤を包む袋体をさらに備える
請求項1乃至3の何れか一項に記載の衛生洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、洗浄水を噴射して人体を洗浄する洗浄ノズル(ノズル)と、洗浄水により洗浄ノズルを洗浄するノズル洗浄手段(ノズル洗浄部)と、を有するノズルユニットを備える衛生洗浄装置が開示されている。この衛生洗浄装置は、ノズルユニットに洗浄水を供給する流路の途中に、当該流路に空気を取り込むことのできるバキュームブレーカを備える。こうして、この衛生洗浄装置では、流路に空気を取り込むことで、当該流路及びノズルユニットから水抜きを行うことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−161161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のような衛生洗浄装置においては、ノズル洗浄手段による洗浄ノズルの除菌効果を高める点について、改善の余地が残されていた。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものである。その目的は、ノズルを洗浄するノズル洗浄部の洗浄効果を向上できる衛生洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する衛生洗浄装置は、液体を噴射して人体局部を洗浄するノズルと、液体により前記ノズルを洗浄するノズル洗浄部と、液体の供給源と前記ノズルとを接続する供給流路と、前記供給流路と前記ノズル洗浄部とを接続する分岐流路と、前記供給流路及び前記分岐流路のうち、前記供給源と前記ノズル洗浄部とを接続する流路に配置されるバキュームブレーカと、前記分岐流路において、前記バキュームブレーカと前記ノズル洗浄部との間に配置され、通過する液体に除菌成分が溶出する除菌剤を収容するタンクと、を備え、前記バキュームブレーカは、当該バキュームブレーカの上流側に接続される流路から液体が流入しないときに、当該バキュームブレーカの下流側に接続される流路を大気開放し、前記タンクにおいて、液体が流出する流出口は、当該タンクの内底面よりも鉛直上方に位置する。
【0007】
上記構成によれば、流出口がタンクの内底面よりも鉛直上方に設けられているため、タンク内に液体が残留しやすい。つまり、バキュームブレーカの作用により、バキュームブレーカとノズル洗浄部との間の流路から液体が排出される場合でも、タンク内に液体が残留しやすい。その結果、衛生洗浄装置を使用していないときに、タンク内に残留した液体に除菌剤を溶出させることができる。このため、次回のノズル洗浄時にノズル洗浄部に供給される液体の除菌効果を高めることができる。よって、ノズルを洗浄するノズル洗浄部の洗浄効果を向上できる。
【0008】
また、前記タンクにおいて、液体が流入する流入口は、前記流出口よりも鉛直下方に位置することが好ましい。
【0009】
鉛直方向において、流入口が流出口と同じ高さに設けられる場合、流入口から流入した液体が直線的に流出口に向かいやすくなる。また、鉛直方向において、流入口が流出口より上方に位置する場合にも、重力の影響により、流入口から流入した液体が直線的に流出口に向かいやすくなる。このため、流入した液体に押し出されるようにして、タンク内に残留していた除菌成分の濃度が高い液体が早期に排出されやすい。
【0010】
この点、上記構成によれば、流入口が流出口より鉛直下方に位置するため、重力の影響により、流入口から流入した液体が直線的に流出口に向かいにくくなる。このため、タンクの内部において、液体が攪拌されるような水流が発生しやすい。したがって、除菌成分の濃度が高い液体が早期に排出されることを抑制できる。
【0011】
また、前記タンクにおいて、前記流入口及び前記流出口は異なる方向に開口することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、流入口及び流出口が異なる方向に開口するため、流入口から流入した液体が直線的に流出口に向かいにくくなる。このため、タンクの内部において、液体が攪拌されるような水流がより発生しやすくなる。したがって、除菌成分の濃度が高い液体が早期に排出されることをより抑制できる。
【0013】
また、前記タンクの内部において、通液性を有し、前記除菌剤を包む袋体をさらに備えることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、袋体が除菌剤を包むため、タンク内に液体が供給されたときに、除菌剤がタンクの内壁に直接的に衝突することを抑制できる。これによって、除菌剤による異音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る衛生洗浄装置を備える便座の斜視図。
図2】衛生洗浄装置の構成図。
図3】通水時のバキュームブレーカの側断面図。
図4】非通水時のバキュームブレーカの側断面図。
図5】ノズルユニットおよびノズル洗浄部の側断面図であって、(a)はノズルが格納位置に配置される状態を示し、(b)はノズルが突出位置に配置される状態を示す。
図6】タンクを側面から見た断面図。
図7図6におけるタンクのA−A矢視断面図。
図8】(a)〜(c)はメッシュバッグで除菌剤を包む様子を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、衛生洗浄装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1に示すように、便座装置4は、使用者が着座する便座2と、当該便座2を覆う便蓋3と、使用者の局部を洗浄する衛生洗浄装置1と、を備えている。
【0018】
図2に示すように、衛生洗浄装置1は、液体の一例としての水(洗浄水)を供給する供給源10から供給された水の供給状態を切り替えるメインバルブ11と、大気を取り入れることで真空状態の発生を抑制するバキュームブレーカ12と、水の供給先を切り替える切替バルブ13と、ノズル50から水を噴射することで人体の局部を洗浄するノズルユニット14と、除菌剤31を収容するタンク15と、ノズル50を洗浄するノズル洗浄部16と、メインバルブ11、切替バルブ13及びノズルユニット14を制御する制御部17と、を備える。
【0019】
さらに、衛生洗浄装置1は、供給源10とノズルユニット14とを接続する供給流路180と、当該供給流路180とノズル洗浄部16とを接続する分岐流路181と、を有する。このとき、供給流路180において、供給源10から分岐流路181との接続部位までを第1供給流路182とし、当該接続部位からノズルユニット14までを第2供給流路183とする。
【0020】
図2に示すように、供給源10は、第1供給流路182を介してメインバルブ11に接続されている。供給源10は、メインバルブ11に水を供給する水道等である。
【0021】
図2に示すように、メインバルブ11は、制御部17に電気的に接続されている。メインバルブ11は、開弁状態又は閉弁状態に切り替わる電磁弁である。メインバルブ11は、制御部17からの入力信号によって開閉状態が切り替わる。メインバルブ11は、第1供給流路182における供給源10とバキュームブレーカ12との間に設けられる。
【0022】
メインバルブ11は、開弁状態において、供給源10からバキュームブレーカ12に対する水の供給を許容する。また、メインバルブ11は、閉弁状態において、供給源10からバキュームブレーカ12に対する水の供給を制限する。
【0023】
バキュームブレーカ12は、当該バキュームブレーカ12の下流側の供給流路180及び分岐流路181の内部に真空状態が発生することによって、ノズル洗浄部16及びノズル50から水が逆流することを抑制する。
【0024】
図3に示すように、バキュームブレーカ12は、流入流路20と、流出流路21と、大気連通口22と、弁体23と、を有する。流入流路20は、第1供給流路182を介してメインバルブ11に接続される。流出流路21は、第1供給流路182を介して切替バルブ13に接続される。つまり、バキュームブレーカ12は、供給流路180の第1供給流路182において、切替バルブ13よりも上流側に設けられることとなる。
【0025】
また、大気連通口22は、大気に開放されている。弁体23は、流入流路20と流出流路21と大気連通口22との接続状態を切り替える。
【0026】
図3に示すように、供給源10から供給された水が、バキュームブレーカ12の上流側に接続される第1供給流路182から流入流路20に供給された場合、流入流路20から流入した水によって弁体23が押し上げられる。これによって、流出流路21は、流入流路20と接続し、大気連通口22と接続しない状態となる。したがって、供給源10から供給された水が、切替バルブ13に供給される。
【0027】
一方、図4に示すように、供給源10から供給された水が、バキュームブレーカ12の上流側に接続される第1供給流路182から流入流路20に供給されない場合、弁体23が重力によって下降する。これによって、流出流路21は、大気連通口22と接続し、流入流路20と接続しない状態となる。したがって、大気連通口22から流出流路21へ空気が流入する。つまり、バキュームブレーカ12は、当該バキュームブレーカ12の下流側に接続される第1供給流路182を大気に開放する。
【0028】
図2に示すように、切替バルブ13は、供給流路180における分岐流路181との接続部位に設けられる。切替バルブ13は、第1供給流路182を介してバキュームブレーカ12の流出流路21に接続される流入部24と、第2供給流路183を介してノズルユニット14に接続される第1流出部250と、分岐流路181を介してタンク15に接続される第2流出部251と、を有する。
【0029】
切替バルブ13は、制御部17に電気的に接続されている。切替バルブ13は、流入部24と第1流出部250とが連通される状態と、流入部24と第2流出部251とが連通される状態と、流入部24が第1流出部250及び第2流出部251の何れにも連通されない状態の何れかに切り替わる。切替バルブ13は、制御部17からの入力信号によって、連通状態が切り替わる。
【0030】
つまり、切替バルブ13は、供給流路180及び分岐流路181の接続状態を切り替える。具体的には、切替バルブ13は、接続状態を、第1供給流路182と第2供給流路183とを接続する状態と、第1供給流路182と分岐流路181とを接続する状態と、第1供給流路182が第2供給流路183及び分岐流路181の何れにも接続されない状態との何れかの状態に切り替える。
【0031】
切替バルブ13が流入部24と第1流出部250とが連通される状態になっている場合、第1流出部250は、流入部24から流入した水をノズルユニット14に流出させる。また、切替バルブ13が流入部24と第2流出部251とが連通される状態になっている場合、第2流出部251は、流入部24から流入した水をタンク15に流出させる。切替バルブ13が第1流出部250及び第2流出部251の何れにも流入部24が連通されない状態になっている場合、切替バルブ13内で水の動きが発生しない。
【0032】
図2及び図5に示すように、ノズルユニット14は、水を噴射するノズル50と、当該ノズル50を移動させる駆動部51と、ノズル50を収容するノズル収容部52と、ノズル50の先端を外部から遮蔽するシャッター53と、有する。
【0033】
図5(a)に示すように、ノズル50は、柱状をなしている。ノズル50は、当該ノズル50の長手方向における一端に接続部501を有し、当該長手方向における他端に噴射口500を有する。接続部501は、第2供給流路183を介して切替バルブ13の第1流出部250に接続される。接続部501及び噴射口500は、ノズル50の内部において連通している。これによって、接続部501から流入した水は、噴射口500から噴射される。したがって、ノズル50は、供給源10から供給された水を噴射口500から噴射することで、人体の局部を洗浄する。
【0034】
図2に示すように、駆動部51は、制御部17に電気的に接続されている。駆動部51は、例えばモータと、当該モータの回転をノズル50の直線移動に変換する変換機構と、を含んで構成すればよい。そして、駆動部51は、ノズル50を、便座2から突出する位置である「突出位置」と、便座2に隠れる位置である「格納位置」との間において進退移動させる。
【0035】
図5(a)に示すように、ノズル収容部52は筒状をなしている。ノズル収容部52は、紫外線などの光を通しにくい素材であるとよい。紫外線を通しにくい素材とは、例えば、PBT樹脂や、紫外線吸着剤を練り込んだ樹脂材である。
【0036】
ノズル収容部52は、当該ノズル収容部52の内部の空間520にノズル50を収容する。このとき、ノズル収容部52の内部の空間520において、ノズル50が進退移動する。そして、ノズル収容部52は、ノズル50が格納位置にいるときは、ノズル50における当該ノズル50の先端以外を外部から遮蔽する。
【0037】
シャッター53は、ノズル収容部52の先端側に、ノズル収容部52に対して回動可能に配置される。シャッター53は、空間520の先端側の開口を露出させる露出位置と、空間520の先端側の開口を遮蔽する遮蔽位置と、の間を回転する。また、シャッター53は、ばねなどの付勢部材によって、露出位置から遮蔽位置に向けて付勢されることが好ましい。
【0038】
このため、ノズル50が格納位置にあるとき、シャッター53は、遮蔽位置に位置することで、ノズル50の先端を空間の外部から遮蔽する。また、ノズル50が格納位置から突出位置に移動するとき、シャッター53は、ノズル50の先端に押されることで、露出位置に位置する。したがって、シャッター53はノズル50の水の噴出を阻害することはない。
【0039】
図6に示すように、タンク15は、タンク本体35と、キャップ30と、シールリング36と、を備える。タンク本体35は、略円筒状をなす周壁351と、周壁351の軸方向における一端側を塞ぐ底壁350と、を有している。これによって、周壁351の軸方向における他端側に開口部352が形成される。また、周壁351には、タンク15から水を流出される流出口34が形成されている。
【0040】
キャップ30は、タンク本体35の開口部352を塞ぐ被覆部300と、タンク本体35の開口部352に挿入される挿入部301とを備える。被覆部300には、タンク15に水を流入させる流入口33が形成される。
【0041】
こうして、タンク15は、タンク本体35に除菌剤31を収容した状態で、タンク本体35の開口部352をキャップ30で閉塞することにより構成される。また、タンク本体35の開口部352とキャップ30の挿入部301との間にシールリング36を介在させることにより、タンク本体35とキャップ30との隙間から水が漏出することが抑制される。なお、タンク本体35は、キャップ30が装着された状態で、当該キャップ30と係合するキャップ係止部353を備えてもよい。これによれば、キャップ30が不意に取り外れることが抑制される。
【0042】
また、図6に示すように、タンク15は、流入口33が水平方向に開口し、流出口34が鉛直上方Y1に開口するように配置される。なお、図6における上下方向は鉛直方向を示している。
【0043】
除菌剤31は、除菌性を有する金属元素、例えば銀を均一に含んだリン酸系ガラス(又はホウ酸系ガラス)等の徐溶性ガラス固溶体からなる。除菌剤31は、水に溶け出すことによって、水の除菌効果を高める。
【0044】
図6及び図7に示すように、除菌剤31は、網目状をなすメッシュバッグ32に収容された状態で、タンク15に収容される。つまり、メッシュバッグ32は、除菌剤31を包むようにして、除菌剤31とタンク15との間に配置される。
【0045】
メッシュバッグ32は、長方形の袋状をなしている。メッシュバッグ32は、除菌剤31が内部に入れられた状態で四方の端部が閉じられている。メッシュバッグ32は、例えば、ポリエステルなどの樹脂材料によって形成される。また、メッシュバッグ32は、折り曲げられたときに元の形状に復元しようとする力が働くように弾性を有することが好ましい。
【0046】
メッシュバッグ32の網目の大きさは、水及び空気が通過(透過)可能な大きさとなっている。例えば、メッシュバッグ32の網目は、線径が約50μmであり、目開きが約300μmとすればよい。この点で、メッシュバッグ32の網目の開口面積は、流出口34の開口面積より小さくされる。
【0047】
図8(a)に示すように、メッシュバッグ32の内部における、当該メッシュバッグ32の一対の向かい合う端部に除菌剤31が配置される。以降の説明において、メッシュバッグ32における除菌剤31が配置された一対の向かい合う端部の方向を「幅方向X」とも言う。
【0048】
そして、図8(b)に示すように、メッシュバッグ32は、幅方向Xにおける当該メッシュバッグ32の中央に向かって除菌剤31の周りに巻かれる。これによって、図8(c)に示すように、メッシュバッグ32は、除菌剤31の周りに折り重ねられた状態となる。メッシュバッグ32は、この状態でタンク15内に配置される。
【0049】
このとき、メッシュバッグ32は弾性を有するため、タンク15内において、メッシュバッグ32が折り重ねられた状態から元に戻ろうとする力が働く。これによって、メッシュバッグ32が除菌剤31を押圧し、除菌剤31の動きを抑制する。
【0050】
また、メッシュバッグ32は、除菌剤31が使用によって小さくなった場合、折り重ねられた状態から元に戻ろうとする力によって変形する。これによって、メッシュバッグ32は、除菌剤31に接する状態を維持することができる。したがって、メッシュバッグ32は、除菌剤31が使用によって小さくなった場合でも、除菌剤31の動きを抑制し続けることができる。
【0051】
図5(a)に示すように、ノズル洗浄部16は、ノズル収容部52の上部に設けられる。詳しくは、ノズル洗浄部16は、供給された水をノズル収容部52の空間520に供給可能に設けられる。
【0052】
ノズル洗浄部16は、ノズル50に水を噴出する噴出口40を有する。噴出口40は、ノズルユニット14のノズル50が格納位置に後退している状態において、当該ノズル50に面する。したがって、ノズル洗浄部16は、ノズル50が格納位置に後退している状態において、タンク15から供給された水を噴出口40から噴出することによって、ノズル50を洗浄する。
【0053】
制御部17は、CPU,RAM及びRAM等からなる周知のマイクロコンピュータで構成される。制御部17は、ROMから読み出したプログラムをCPUで実行することによって、メインバルブ11、切替バルブ13及びノズルユニット14の駆動部51の駆動を制御する。
【0054】
次に、図2を参照して、衛生洗浄装置1の作用について説明する。
【0055】
まず、使用者が衛生洗浄装置1を使用していないときは、メインバルブ11は閉状態となっている。また、切替バルブ13は、流入部24が第1流出部250及び第2流出部251の何れにも連通されない状態となっている。
【0056】
こうした状況において、衛生洗浄装置1が人体局部の洗浄を行う場合には、ノズルユニット14の駆動部51が駆動されることによって、ノズル50が突出位置へ移動する。ノズル50が突出位置に移動すると、メインバルブ11が開状態に切り替わる。これによって、供給源10からバキュームブレーカ12へ水が供給される。すると、バキュームブレーカ12において、供給源10から供給された水によって弁体23が押し上げられる。これによって、供給源10と切替バルブ13とが連通される。
【0057】
このとき、切替バルブ13が第1供給流路182と第2供給流路183とを接続する状態となっているため、供給源10から供給された水は、ノズルユニット14のノズル50へ供給される。したがって、ノズル50は、供給された水を噴射口500から人体の局部へ噴射し、当該局部を洗浄する。
【0058】
局部の洗浄が完了すると、メインバルブ11が閉状態に切り替わる。これによって、供給源10からのバキュームブレーカ12への水の供給が停止されるため、弁体23は重力によって下降する。したがって、バキュームブレーカ12とノズル50の間の供給流路180に残った水がノズル50から排出される。
【0059】
その後、切替バルブ13が、流入部24が第1流出部250及び第2流出部251の何れにも連通されない状態に切り替わる。そして、ノズルユニット14の駆動部51が駆動し、ノズル50は、格納位置へ後退する。
【0060】
続いて、衛生洗浄装置1は、ノズル50の洗浄を行う。まず、メインバルブ11が開状態に切り替わる。これによって、供給源10と切替バルブ13とが連通される。その後、切替バルブ13が第1供給流路182と分岐流路181を接続する状態に切り替わる。
【0061】
このとき、本実施形態では、タンク15の流入口33と流出口34が異なる方向に配置されているため、タンク15内の水流が流入口33から流出口34へ向かう直線的な水流ではなく、タンク15内を循環するような水流となりやすい。これによって、タンク15に流入した水がタンク15内で攪拌されるような水流が発生する。
【0062】
さらに、タンク15に流入した水がメッシュバッグ32を通過するときにメッシュバッグ32を通過するため、メッシュバッグ32を避けるような水流となる。これによって、流入した水がタンク15内で攪拌されるような水流が発生する。このとき、タンク15内は除菌剤31が溶け出した水で満たされているため、タンク15に流入した水と除菌剤31が溶け出した水がタンク15内で混ぜ合わされる。これによって、除菌剤31が溶け出した水が、タンク15に流入した水に薄められながらノズル洗浄部16へ供給される。したがって、タンク15内の除菌剤31が溶け出した水が流出口34から早期に流出してしまうことを抑制できる。
【0063】
また、メッシュバッグ32は、除菌剤31とタンク本体35の間に介在し、除菌剤31がタンク本体35に直接接触することを抑制する。このため、メッシュバッグ32によって、タンク本体35の内部で除菌剤31が動き回ることが抑制される。この点で、メッシュバッグ32は、「緩衝部」としても機能する。
【0064】
そして、ノズル洗浄部16は、タンク15から供給された水を噴出口40からノズルユニット14のノズル50へ噴出する。こうして、局部洗浄後のノズル50が除菌成分を有する水によって洗浄される。
【0065】
その後、メインバルブ11が閉状態に切り替わる。これによって、供給源10からバキュームブレーカ12への水の供給が停止されるため、弁体23は重力によって下降する。したがって、流出流路21は、大気連通口22と接続し、流入流路20と接続しない状態となる。これによって、バキュームブレーカ12とノズル洗浄部16との間の第1供給流路182及び分岐流路181と、タンク15との内部に残った水がノズル洗浄部16の噴出口40から排出される。
【0066】
このとき、流出口34が、タンク15の内底面より鉛直上方Y1に設けられているため、タンク15内の水が重力や水流によって全て排出されることを抑制できる。このため、バキュームブレーカ12の作用によって排水されるときに、タンク15内部に水が残留しやすい。
【0067】
また、表面張力によって、タンク15内の水面より鉛直上方Y1に位置するメッシュバッグ32の網目に水の膜ができる。つまり、バキュームブレーカ12の作用によって排水されるときに、メッシュバッグ32の網目に水が残留しやすい。
【0068】
一方、流入口33が流出口34より鉛直下方Y2に位置するため、流入口33から流入した水が流出口34に向かうときには重力に逆らうこととなる。したがって、流入口33から流入した水が直線的に流出口34に向かいにくくなる。これによって、タンク15の内部において、水が攪拌されるような水流が発生する。
【0069】
そして、供給流路180の水の排出が完了すると、切替バルブ13は、流入部24が第1流出部250及び第2流出部251の何れにも連通されない状態に切り替わる。
【0070】
上述した実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0071】
(1)流出口34がタンク15の内底面よりも鉛直上方Y1に設けられているため、タンク15内に水が残留しやすい。つまり、バキュームブレーカ12の作用により、バキュームブレーカ12とノズル洗浄部16との間の流路から水が排出される場合でも、タンク15内に水が残留しやすい。
【0072】
その結果、衛生洗浄装置1を使用していないときに、タンク15内に残留した水に除菌剤31を溶出させることができる。このため、次回のノズル洗浄時にノズル洗浄部16に供給される水の除菌効果を高めることができる。よって、ノズル50を洗浄するノズル洗浄部16の洗浄効果を向上できる。
【0073】
(2)流入口33が流出口34より鉛直下方Y2に位置するため、重力の影響により、流入口33から流入した水が直線的に流出口34に向かいにくくなる。このため、タンク15の内部において、水が攪拌されるような水流が発生しやすい。したがって、除菌成分の濃度が高い水が早期に排出されることを抑制できる。
【0074】
(3)流入口33及び流出口34が異なる方向に開口するため、流入口33から流入した水が直線的に流出口に向かいにくくなる。このため、タンク15の内部において、水が攪拌されるような水流がより発生しやすくなる。したがって、除菌成分の濃度が高い水が早期に排出されることをより抑制できる。
【0075】
(4)メッシュバッグ32が除菌剤31を包むため、タンク15内に水が供給されたときに、除菌剤31がタンク15の内壁に直接的に衝突することを抑制できる。これによって、除菌剤31による異音の発生を抑制できる。
【0076】
(5)供給源10から供給された水が水道水だった場合、ノズル洗浄に用いられる水に溶けだした除菌剤31の濃度が高くなると、水道水に含まれる塩化物イオンと、ノズル洗浄に用いられる水に含まれる銀イオンが結合し、塩化銀となりやすい。そして、塩化銀が光に当たると、自己酸化還元反応によって銀に還元されるため、塩化銀が付着していた箇所が黒色化する。
【0077】
したがって、ノズル洗浄部16からノズル50に噴出された水に溶けだした除菌剤31の濃度が高い場合、当該水が付着した状態のノズル50に光が当たると、ノズル50が黒色化するおそれがある。この点、本実施形態のノズル50は、格納位置にいる間は、光を通さない素材でできたノズル収容部52及びシャッター54によって外部から遮蔽されている。その結果、ノズル50の黒色化を抑制できる。
【0078】
以下に、上述した実施形態の別の実施形態を説明する。
【0079】
・タンク15において、流入口33及び流出口34は、同じ方向に開口していてもよい。例えば、流入口33及び流出口34のうち、一方がキャップ30に設けられており、他方が底壁350に設けられていてもよい。また、流入口33及び流出口34がともにキャップ30に設けられていてもよいし、ともに底壁350に設けられていてもよい。
【0080】
・タンク15の流出口34は、内底面よりも鉛直上方Y1であれば、鉛直方向における流入口33と同じ高さ、又は流入口33より鉛直下方Y2に設けられていてもよい。これによって、流入口33から流入した水をノズル洗浄部16へスムーズに供給することができる。
【0081】
・除菌剤31は、メッシュバッグ32に収容されずにタンク15内に配置されていてもよい。例えば、除菌剤31は、タンク15内に直接配置されていてもよい。
【0082】
・局部洗浄を行う場合、ノズル50による局部洗浄を行う前に、ノズル50が格納位置において、ノズル50から水を噴出させてもよい。この場合には、前回の局部洗浄時にノズル50に付着した除菌剤31が溶出した水が、今回の局部洗浄時にノズル50から洗い流される。
【0083】
・分岐流路181におけるタンク15の上流側に、第1供給流路182から分岐流路181に供給された水の供給先を切り替える三方バルブを設けてもよい。この場合、衛生洗浄装置1は、便鉢に水を噴射することで便鉢への汚れの付着を抑制する噴射機構を備えることが好ましい。これによれば、三方バルブは、第1供給流路182から供給された水を、タンク15に供給する状態と、噴射機構に供給する状態と、の何れかに切り替えてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1:衛生洗浄装置
2:便座
3:便蓋
4:便座装置
10:供給源
11:メインバルブ
12:バキュームブレーカ
13:切替バルブ
14:ノズルユニット
15:タンク
16:ノズル洗浄部
17:制御部
180:供給流路
181:分岐流路
182:第1供給流路
183:第2供給流路
20:流入流路
21:流出流路
22:大気連通口
23:弁体
24:流入部
250:第1流出部
251:第2流出部
30:キャップ
300:被覆部
301:挿入部
31:除菌剤
32:メッシュバッグ
33:流入口
34:流出口
35:タンク本体
350:底壁
351:周壁
352:開口部
353:キャップ係止部
36:シールリング
40:噴出口
50:ノズル
500:噴射口
501:接続部
51:駆動部
52:ノズル収容部
520:空間
53:シャッター
60:バルーン
61:弾性壁部
62:気体室
図1
図2
図3
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図8