(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
積層された複数のセラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシート間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された内部電極パターンとを含み、積層方向に相対する第1の主面及び第2の主面を有する、積層シート体を作製する工程と、
第1方向の第1の切断線に沿って前記第1の主面から前記積層シート体の少なくとも一部を切断することによって、前記第1の切断線に沿った隙間を形成するとともに、前記第1の切断線に沿う切断によって現れた切断側面に、未焼成の状態にある複数の内部電極を露出させる工程と、
切断後の前記積層シート体の前記第1の主面に、第1樹脂成分及び無機物を含有する第1樹脂シートと第2樹脂成分を含有する第2樹脂シートとが積層された積層樹脂シートを、前記第1樹脂シートが前記第1の主面に接触するように配置する工程と、
前記積層樹脂シートが配置された前記積層シート体を前記積層方向に加熱圧着することによって、前記第1の切断線に沿った前記隙間に前記積層樹脂シートが陥入し、前記第1の主面とともに前記切断側面が前記第1樹脂シートで被覆された、マザーブロックを得る工程と、
前記マザーブロックを得た後、前記第2樹脂シートを除去する工程と、を備えることを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
前記第1樹脂シートに含有される前記第1樹脂成分が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体及びエチレン−アクリル酸エチル共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上のエチレン系共重合体を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
前記第1樹脂シートに含有される前記無機物が、Ba、Ca、Sr及びPbのうち少なくとも1種と、Ti、Zr及びHfのうち少なくとも1種とを含有するペロブスカイト型磁器組成物を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
前記積層樹脂シートは、前記第2樹脂シートの、前記第1樹脂シートが積層されている側とは反対側に積層された第3樹脂シートをさらに有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0023】
本発明の積層セラミック電子部品の製造方法の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの製造方法を例にとって説明する。なお、本発明の製造方法は、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品にも適用することができる。
【0024】
まず、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法によって得られる積層セラミックコンデンサについて説明する。
図1は、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法によって得られる積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示す積層セラミックコンデンサのII−II線断面図である。
図3は、
図1に示す積層セラミックコンデンサのIII−III線断面図である。
【0025】
本明細書においては、積層セラミックコンデンサの積層方向、幅方向、長さ方向を、
図1、
図2及び
図3に示す積層セラミックコンデンサ11においてそれぞれ矢印T、W、Lで定める方向とする。ここで、積層方向と幅方向と長さ方向とは互いに直交する。積層方向は、複数のセラミック層21と複数対の内部電極22及び23とが積み上げられていく方向である。
【0026】
図1に示す積層セラミックコンデンサ11は、部品本体12を備えている。
図1、
図2及び
図3に示すように、部品本体12は、直方体状又は略直方体状をなしており、積層方向Tに相対する第1の主面13及び第2の主面14と、積層方向Tに直交する幅方向Wに相対する第1の側面15及び第2の側面16と、積層方向T及び幅方向Wに直交する長さ方向Lに相対する第1の端面17及び第2の端面18とを有している。
【0027】
図2及び
図3に示すように、部品本体12は、第1の主面13及び第2の主面14の方向に延びかつ第1の主面13及び第2の主面14に直交する方向に積層された複数のセラミック層21と、セラミック層21間の界面に沿って形成された複数対の内部電極22及び23とをもって構成された積層構造を有している。
【0028】
部品本体12は、後述するように、マザーブロックを作製した後、該マザーブロックを切断することにより、複数のグリーンチップに個片化することによって得られる。マザーブロックを作製するためには、まず、表面に導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを所定枚数積層することにより積層シート体を作製し、該積層シート体の少なくとも一部を第1の主面から切断することにより、切断側面に内部電極を露出させる。切断後の積層シート体の第1の主面に、第1樹脂シートと第2樹脂シートとが積層された積層樹脂シートを配置して加熱圧着することにより、第1の主面とともに切断側面が第1樹脂シートで被覆されたマザーブロックを作製することができる。
【0029】
図2及び
図3に示すように、内部電極22と内部電極23とは、セラミック層21を介して互いに対向する。内部電極22と内部電極23とが対向することによって、電気的特性が発現する。すなわち、
図1に示す積層セラミックコンデンサ11においては、静電容量が形成される。
【0030】
内部電極22は、部品本体12の第1の端面17に露出する露出端を持ち、内部電極23は、部品本体12の第2の端面18に露出する露出端を持っている。一方、内部電極22及び23は、部品本体12の第1の側面15及び第2の側面16には露出していない。
【0031】
図1、
図2及び
図3に示すように、積層セラミックコンデンサ11は、さらに、内部電極22及び23の各々の露出端にそれぞれ電気的に接続されるように、部品本体12の第1の端面17に設けられた第1の外部電極24、及び、部品本体12の第2の端面18に設けられた第2の外部電極25を備えている。
【0032】
第1の外部電極24及び第2の外部電極25は、部品本体12の第1の端面17及び第2の端面18上にそれぞれ形成されており、
図1では、第1の主面13及び第2の主面14並びに第1の側面15及び第2の側面16の各一部にまで回り込んだ部分を有している。
【0033】
部品本体の外形及び寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができる。部品本体の外形が直方体状又は略直方体状である場合、通常、部品本体の端面方向の寸法である長さ寸法(
図1中、L方向の長さ)は、0.4mm以上5.6mm以下であり、部品本体の側面方向の寸法である幅寸法(
図1中、W方向の長さ)は、0.2mm以上5.0mm以下であり、部品本体の積層方向の寸法である厚み寸法(
図1中、T方向の長さ)は、0.2mm以上1.9mm以下である。
【0034】
セラミック層を構成するセラミック材料としては、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、ジルコン酸カルシウム等を主成分とする誘電体セラミックを用いることができる。
【0035】
上述のとおり、本発明の製造方法は、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品にも適用することができる。例えば、積層セラミック電子部品が圧電部品の場合には、PZT系セラミック等の圧電体セラミック、サーミスタの場合には、スピネル系セラミック等の半導体セラミックが用いられる。
【0036】
セラミック層の厚さは特に限定されないが、好ましくは3μm以下である。
【0037】
内部電極を構成する導電材料としては、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Au等の金属材料を用いることができる。
【0038】
内部電極の厚さは特に限定されないが、好ましくは1.5μm以下である。
【0039】
外部電極は、下地層と下地層上に形成されるめっき層とで構成されることが好ましい。下地層を構成する導電材料としては、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Au等を用いることができる。下地層は、導電性ペーストを未焼成の部品本体上に塗布して部品本体と同時焼成するコファイア法を適用することによって形成されてもよく、導電性ペーストを焼成後の部品本体上に塗布して焼き付けるポストファイア法を適用することによって形成されてもよい。あるいは、下地層は、直接めっきにより形成されてもよく、熱硬化性樹脂を含む導電性樹脂を硬化させることにより形成されてもよい。
【0040】
下地層上に形成されるめっき層は、Niめっき、及び、その上のSnめっきの2層構造であることが好ましい。
【0041】
外部電極の厚さも特に限定されないが、通常、10μm以上50μm以下である。
【0042】
次に、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法の一例として、
図1に示す積層セラミックコンデンサ11の製造方法について説明する。
【0043】
まず、セラミック層となるべきセラミックグリーンシートを準備する。例えば、セラミック粉末、バインダ及び溶剤を含むセラミックスラリーを準備し、このセラミックスラリーを、キャリアフィルム上で、ダイコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータ等を用いてシート状に成形することにより、セラミックグリーンシートを作製することができる。
【0044】
セラミックグリーンシートの厚みは、3μm以下であることが好ましい。
【0045】
次に、セラミックグリーンシート上に、内部電極となるべき所定パターンの電極層(内部電極パターン)を形成する。内部電極パターンの形成方法は、電極層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、例えば、導電性ペーストを用いたスクリーン印刷法等が用いられる。
【0046】
図4は、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートの一例を模式的に示す平面図である。
図4に示すように、セラミック層21となるべきセラミックグリーンシート31上に、所定のパターンをもって導電性ペーストが印刷されることによって、内部電極22及び23の各々となるべき内部電極パターン32が形成される。具体的には、セラミックグリーンシート31上に、帯状の内部電極パターン32が複数列形成される。
【0047】
内部電極パターンの厚みは、1.5μm以下であることが好ましい。
【0048】
その後、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートをずらしながら所定枚数積層し、その上下に内部電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートを所定枚数積層することにより、積層シート体を作製する。必要に応じて、積層シート体は、静水圧プレス等の手段により積層方向にプレスされる。
【0049】
図5(a)は、セラミックグリーンシートを積層する方法の一例を模式的に示す斜視図である。
図5(a)に示すように、内部電極パターン32が形成されたセラミックグリーンシート31を、内部電極パターン32の幅方向(
図5(a)におけるx方向)に沿って所定間隔、すなわち内部電極パターン32の幅方向寸法の半分ずつずらしながら所定枚数積層する。さらに、その上下に内部電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートを所定枚数積層する。
【0050】
図5(b)及び
図5(c)は、セラミックグリーンシートを積層する方法の一例を模式的に示す平面図である。
図5(b)及び
図5(c)は、それぞれ1層目及び2層目のセラミックグリーンシートが拡大して示されている。
図5(b)及び
図5(c)には、帯状の内部電極パターン32が延びる方向と直交する第1方向(
図5(b)及び
図5(c)におけるx方向)の切断線33、及び、これに対して直交する第2方向(
図5(b)及び
図5(c)におけるy方向)の切断線34の各一部が示されている。帯状の内部電極パターン32は、2つ分の内部電極22及び23が各々の引出し部同士で連結されたものが、第1方向(x方向)に沿って連なった形状を有している。
図5(b)及び
図5(c)では、切断線33及び34が共通して示されている。
【0051】
図6は、積層シート体の一例を模式的に示す斜視図である。
図6に示す積層シート体35は、積層された複数のセラミックグリーンシート31と、セラミックグリーンシート31間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された内部電極パターン32とを含み、積層方向に相対する第1の主面35a及び第2の主面35bを有している。
【0052】
以上のように作製した積層シート体の少なくとも一部を、第1方向の第1の切断線に沿って第1の主面から切断することによって、上記第1の切断線に沿った隙間を形成するとともに、第1の切断線に沿う切断によって現れた切断側面に、未焼成の状態にある複数の内部電極を露出させる。積層シート体の切断には、例えば、ブレードを用いた押切り、ダイサーを用いたダイシング、レーザを用いたレーザカット等の方法が適用される。
【0053】
図7は、切断された後の積層シート体の一例を模式的に示す斜視図である。
図7において、積層シート体35は、第1方向の切断線33に沿って第1の主面35aから切断され、行方向に配列された複数のグリーンブロック体19が得られる。なお、
図7では、1個の積層シート体35から3個のグリーンブロック体19が取り出されているが、実際には、より多数のグリーンブロック体19が取り出される。
【0054】
個々のグリーンブロック体19の間には、切断によって生じた隙間が存在している。隙間の大きさ、すなわち、グリーンブロック体19間の距離は、ブレードの刃の厚み等に対応した大きさであり、例えば100μm以上200μm以下程度である。
【0055】
各グリーンブロック体19は、未焼成の状態にある複数のセラミック層(セラミック層21となるべきセラミックグリーンシート31)と複数の内部電極(内部電極22及び23の各々となるべき内部電極パターン32)とをもって構成された積層構造を有している。
【0056】
第1方向の切断線33に沿う切断によって現れるグリーンブロック体19の切断側面19a及び19bには、内部電極22及び23となるべき内部電極パターン32が露出している。
【0057】
なお、
図7に示すように、グリーンブロック体19が行方向に配列されるように、積層シート体35が粘着シート38上に貼り付けられた状態で切断されることが好ましい。粘着シートとしては、例えば、一般的なダイシングシートやダイシングテープ等を用いることができる。
【0058】
図7では、積層シート体35を積層方向において完全に切断することによって、積層シート体35が複数のグリーンブロック体19に分離されているが、未焼成の状態にある複数の内部電極を切断側面に露出させることができれば、積層シート体が分離されるように積層シート体の全部を切断してもよいし、積層シート体が分離されないように積層シート体の一部を切断してもよい。
【0059】
続いて、切断後の積層シート体の第1の主面に、第1樹脂シートと第2樹脂シートとが積層された積層樹脂シートを配置する。このとき、第1樹脂シートが第1の主面に接触するように積層樹脂シートを配置する。
【0060】
積層シート体の第1の主面に積層樹脂シートを配置する方法としては、例えば、積層樹脂シートを積層シート体に重ね合わせる方法等が挙げられる。
【0061】
図8は、積層樹脂シートが配置された積層シート体の一例を模式的に示す斜視図である。
図8では、切断後の積層シート体35の第1の主面に、第1樹脂シート51と第2樹脂シート52とがこの順に積層された積層樹脂シート41が配置されている。積層樹脂シート41は、第1樹脂シート51が第1の主面に接触するように、積層シート体35の第1の主面に配置されている。
【0062】
<積層樹脂シート>
以下、本発明に用いる積層樹脂シートの一実施形態について説明する。
本実施形態の積層樹脂シートは、第1樹脂成分及び無機物を含有する第1樹脂シートと、第2樹脂成分を含有する第2樹脂シートとが積層されて構成されている。
【0063】
(第1樹脂シート)
第1樹脂シートは、第1樹脂成分及び無機物を含有する。
【0064】
第1樹脂シートに含有される第1樹脂成分は特に限定されないが、融点又はガラス転移温度が100℃未満であるものが好ましい。第1樹脂成分の融点又はガラス転移温度は、99℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。第1樹脂成分の融点又はガラス転移温度が100℃未満であることで、切断側面を第1樹脂シートで容易に被覆することができる。
【0065】
一方、第1樹脂成分の融点又はガラス転移温度は、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。第1樹脂成分の融点又はガラス転移温度が40℃以上であることで、積層樹脂シートの製造時における、第1樹脂シートの変形を抑制することができる。
【0066】
なお、第1樹脂成分等の樹脂成分の融点又はガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)装置によって測定される。ガラス転移温度の測定は、JIS K 7121−1987に準じる。
【0067】
第1樹脂成分は、エチレン系共重合体(エチレン系エラストマー)を含むことが好ましく、エチレン系共重合体とそれ以外の他の樹脂(本明細書においては、「任意の第1樹脂」と称することがある)を含んでいてもよいし、エチレン系共重合体のみであってもよい。
なお、本明細書において、「エチレン系共重合体」とは、エチレンから誘導された構成単位を有する共重合体を意味する。
【0068】
上記エチレン系共重合体は、エチレンから誘導された構成単位と、水素原子を置換する置換基として、少なくとも極性基を有するエチレンから誘導された構成単位と、を有する共重合体(以下、「極性基を有するエチレン系共重合体」と称することがある)であることが好ましい。
上記極性基を有するエチレン系共重合体は、金属に対する親和性が高いため、このようなエチレン系共重合体を用いることにより、後述する第1樹脂組成物として、無機物の分散度がより高いものを調製することができ、このような第1樹脂組成物から形成された第1樹脂シートは、同様に無機物の分散度がより高くなり、強度もより高くなる。
【0069】
上述の少なくとも極性基を有するエチレンにおける極性基としては、例えば、アセチルオキシ基等のアルキルカルボニルオキシ基;カルボキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。
上述の少なくとも極性基を有するエチレンにおける、極性基以外の置換基としては、例えば、メチル基等のアルキル基等が挙げられる。
【0070】
上述の少なくとも極性基を有するエチレンとしては、例えば、酢酸ビニル;酢酸イソプロペニル;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸の塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸;無水マレイン酸;マレイン酸塩;マレイン酸エステル等が挙げられる。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念である。
【0071】
上記極性基を有するエチレン系共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、エチレンから誘導された構成単位と、上述の少なくとも極性基を有するエチレンから誘導された構成単位以外に、これらのいずれにも該当しない他の構成単位を有していてもよい。
【0072】
他の構成単位を誘導するモノマーとしては、例えば、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のエチレン以外のα−オレフィン;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの酸塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの4級塩、N−メチロールアクリルアミド及びその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドの酸塩、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドの4級塩、N−メチロールメタクリルアミド及びその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル(酢酸2−プロペニル)、塩化アリル(3−クロロ−1−プロペン)等のアリル化合物(アリル基(2−プロペニル基)を有する化合物);ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物(ビニル基(エテニル基)を有するシリル化合物);等が挙げられる。
【0073】
なお、本明細書において「誘導体」とは、元の化合物の1個又は2個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造を有する化合物を意味する。また、「基」とは、複数個の原子が結合してなる原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
【0074】
上記極性基を有するエチレン系共重合体において、上述の少なくとも極性基を有するエチレンから誘導された構成単位の割合は、すべての構成単位中、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。上記割合が5質量%以上であることで、第1樹脂シートは、充分な量の無機物を含有することができる。また、上記割合が50質量%以下であることで、第1樹脂シートのブロッキングを抑制する効果がより高くなる。
【0075】
上記極性基を有するエチレン系共重合体において、他の構成単位の割合は、すべての構成単位中、10質量%以下であることが好ましく、0質量%であってもよい。上記割合が10質量%以下であることで、切断側面を第1樹脂シートで容易に被覆することができる。
【0076】
上記極性基を有するエチレン系共重合体で好ましいものとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、及びエチレン−アクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、上記極性基を有するエチレン系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)又はエチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)であることがより好ましく、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)又はエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)であることが特に好ましい。
【0077】
上記エチレン系共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、分子鎖中又は分子鎖末端に、水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、トリメトキシシリル基等の官能基を有していてもよい。
【0078】
上記エチレン系共重合体の分子量は、特に限定されない。
ただし、第1樹脂シートの成形性がより良好となる点では、上記エチレン系共重合体の重量平均分子量は、1×10
4以上2×10
6以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0079】
上記エチレン系共重合体の分子量分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、特に限定されないが、第1樹脂シートのべたつきが低減され、外観も良好となる点では、1.0以上3.5以下であることが好ましく、1.1以上3.0以下であることがより好ましい。
【0080】
第1樹脂シートが含有する第1樹脂成分は、1種のみでもよいし2種以上でもよい。2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0081】
第1樹脂成分は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体及びエチレン−アクリル酸エチル共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上のエチレン系共重合体を含むことが好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体及びエチレン−アクリル酸エチル共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上のエチレン系共重合体のみであってもよい。このような第1樹脂成分を用いることで、切断側面を第1樹脂シートで容易に被覆することができる。
【0082】
第1樹脂成分中のエチレン系共重合体の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。エチレン系共重合体の含有量が20質量%以上であることで、第1樹脂シートの機械的強度がより向上する。
なお、第1樹脂シートにおける、第1樹脂成分中のエチレン系共重合体の含有量(質量%)は、後述する第1樹脂組成物における、第1樹脂成分中のエチレン系共重合体の含有量(質量%)と同じである。
【0083】
上記任意の第1樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
変性ポリオレフィン系重合体としては、例えば、エポキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、アミド基、オキサゾリン基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基及びイソシアネート基からなる群より選択される1種又は2種以上の官能基を1分子中に有する変性ポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
また、変性ポリオレフィン系重合体としては、例えば、オレフィン系モノマーと、オレフィン系モノマー及び官能基を有するビニル系モノマー以外の他のビニル系モノマーと、の共重合体及びその水素化共重合体、並びにこれら共重合体の1個又は2個以上の水素原子が上記官能基で置換された構造を有する共重合体等も挙げられる。
【0084】
上記任意の第1樹脂が共重合体である場合、その分子構造は、特に限定されず、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよいが、ブロック共重合体又はグラフト共重合体であることが好ましい。
【0085】
第1樹脂シートが含有する上記任意の第1樹脂は、1種のみでもよいし2種以上でもよい。2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0086】
第1樹脂成分中の任意の第1樹脂の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、0質量%であってもよい。任意の第1樹脂の含有量が50質量%以下であることで、切断側面を第1樹脂シートで容易に被覆することができる。
なお、第1樹脂シートにおける、第1樹脂成分中の任意の第1樹脂の含有量(質量%)は、後述する第1樹脂組成物における、第1樹脂成分中の任意の第1樹脂の含有量(質量%)と同じである。
【0087】
第1樹脂シート中の第1樹脂成分の含有量は、6質量%以上20質量%以下であることが好ましく、9質量%以上14質量%以下であることがより好ましい。第1樹脂シート中の第1樹脂成分の含有量が上記範囲であることで、第1樹脂シートは、高い強度を有するものとなる。
【0088】
第1樹脂シートに含有される無機物は、公知のものでよく、特に限定されない。好ましい無機物としては、例えば、ガラス、雲母、セラミック等の絶縁体が挙げられる。これらの無機物を用いることにより、電極間の短絡を防止できる。
【0089】
上記セラミックは、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、絶縁体セラミックが挙げられる。絶縁体セラミックとしては、例えば、Ba、Ca、Sr及びPbのうち少なくとも1種と、Ti、Zr及びHfのうち少なくとも1種とを含有するペロブスカイト型磁器組成物等が挙げられる。具体的には、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、ジルコン酸チタン酸鉛等が挙げられる。
【0090】
上記ガラス又は雲母は、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、グラスファイバー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、シリカ、合成マイカ、合成マイカのナノフィラー等が挙げられる。ガラス又は雲母を用いることで、第1樹脂シートの機械的強度を向上させることができる。
【0091】
無機物の形状は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、第1樹脂シート、及び後述する第1樹脂組成物における、無機物の分散度がより高くなる点では、無機物の形状は、球状等の粒子状であることが好ましい。また、第1樹脂シートの強度がより向上する点では、無機物の形状は、板状又は鱗片状であることが好ましい。
【0092】
無機物の粒子径は、特に限定されないが、無機物の加重平均粒子径は、0.05μm以上1.2μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。無機物の加重平均粒子径が0.05μm以上であることで、無機物の比表面積が小さくなり、第1樹脂シート、及び後述する第1樹脂組成物における、無機物の分散度がより高くなる。また、無機物の加重平均粒子径が1.2μm以下であることで、無機物間の間隙がより小さくなり、第1樹脂シート、及び後述する第1樹脂組成物の防湿性がより向上する。
【0093】
なお、本明細書において、「無機物の加重平均粒子径」とは、顕微鏡での観察により、100個の無機物の粒子径を測定して算出したものを意味する。板状や鱗片状等の非粒子状の無機物の場合には、これら非粒子状の無機物の短径及び長径を測定して、無機物の断面積を算出し、上記断面積と同じ断面積を有する円の直径を算出して、この直径を粒子径として、粒子状の無機物の場合と同様に、加重平均粒子径を算出する。このように、「無機物の加重平均粒子径」とは、粒子状の無機物の加重平均粒子径だけでなく、非粒子状の無機物の加重平均粒子径も含む。
【0094】
第1樹脂シートが含有する無機物は、1種のみでもよいし2種以上でもよい。2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0095】
例えば、第1樹脂シートは、加重平均粒子径が異なる2群以上の無機物を併用してもよい。このように無機物を併用することにより、第1樹脂シートの無機物の含有量をより多くすることが可能となる。例えば、2群の無機物を併用する場合には、上述の効果がより顕著に得られる点から、無機物の一方の群の加重平均粒子径は0.05μm以上0.3μm以下であり、かつ、無機物の他方の群の加重平均粒子径は0.3μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
【0096】
第1樹脂シート中の無機物の含有量は、40体積%以上であることが好ましく、40体積%以上70体積%以下であることがより好ましく、45体積%以上65体積%以下であることが特に好ましい。第1樹脂シート中の無機物の含有量が上記範囲内であることで、第1樹脂シートは柔軟性と加熱時の流動性が充分に高く、切断側面の間隔が狭い場合でも、第1樹脂シートで容易に切断側面を被覆することができる。さらに、第1樹脂シート中の無機物の含有量が40体積%以上であることで、後述する焼結前の第1樹脂シートの体積と、焼結して得られた層(例えば、誘電体層)の体積と、の差がより小さくなり、このような層をより安定して形成できる。また、第1樹脂シート中の無機物の含有量が70体積%以下であることで、第1樹脂シートの機械的強度がより向上する。
なお、本明細書において、第1樹脂シート中の無機物の含有量(体積%)は、好ましくは常温での含有量である。ここで、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15℃以上25℃以下の温度等が挙げられる。
【0097】
上記無機物は、Ba、Ca、Sr及びPbのうち少なくとも1種と、Ti、Zr及びHfのうち少なくとも1種とを含有するペロブスカイト型磁器組成物を含むことが好ましく、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム及びジルコン酸チタン酸鉛からなる群より選択される1種又は2種以上の絶縁体セラミックを含むことがより好ましく、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム及びジルコン酸チタン酸鉛からなる群より選択される1種又は2種以上の絶縁体セラミックのみであってもよい。
【0098】
第1樹脂シートは、本発明の効果を損なわない範囲内において、第1樹脂成分及び無機物以外に、他の成分を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
他の成分としては、例えば、第1樹脂成分以外の他の樹脂成分、各種添加剤等が挙げられる。
【0099】
第1樹脂シートが含有する他の成分は、1種のみでもよいし2種以上でもよい。2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0100】
第1樹脂シート中の他の成分の含有量は、例えば、無機物の含有量が40体積%以上となるようにする等、他の成分の種類に応じて、適宜調節すればよい。
【0101】
上記第1樹脂成分以外の他の樹脂成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0102】
上記添加剤としては、例えば、塩化銅、ヨウ化第一銅(ヨウ化銅(I))、酢酸銅、ステアリン酸セリウム等の金属塩安定剤;ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系、アクリレート系、リン系有機化合物等の酸化防止剤又は耐熱安定剤;ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤又は耐候剤;光安定剤;離型剤;滑剤;結晶核剤;粘度調節剤;顔料、染料等の着色剤;蛍光顔料、蛍光染料等の蛍光剤;シランカップリング剤等の表面処理剤;着色防止剤;赤燐、金属水酸化物系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、上記ハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモンとの混合物等の難燃剤;木材粉;もみがら粉;くるみ粉;古紙;蓄光顔料;ホウ酸ガラス、銀系抗菌剤等の抗菌剤又は抗カビ剤;マグネシウム−アルミニウムヒドロキシハイドレート等のハイドロタルサイト等の金型腐食防止剤;帯電防止剤;アンチブロッキング剤;界面活性剤;消臭剤;可塑剤;分散剤等が挙げられる。
上記添加剤は、後述する第1樹脂組成物の柔軟性が向上する点では、可塑剤であることが好ましい。
【0103】
上記可塑剤としては、例えば、芳香族カルボン酸エステル、脂肪族モノカルボン酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル、脂肪族トリカルボン酸エステル、リン酸トリエステル、石油樹脂、ポリアルキレングリコール系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ヒマシ油系可塑剤等が挙げられる。
上記可塑剤として、より具体的には、例えば、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ(2−エチルブチレート)、ポリオキシエチレンジアセテート、ポリオキシエチレンジ(2−エチルヘキサノエート)、ポリオキシプロピレンモノラウレート、ポリオキシプロピレンモノステアレート、ポリオキシエチレンジベンゾエート、ポリオキシプロピレンジベンゾエート等のポリオールエステル;オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル;アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸エトキシカルボニルメチルジブチル、クエン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル等のオキシ酸エステル;大豆油、大豆油脂肪酸、大豆油脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油、菜種油、菜種油脂肪酸、菜種油脂肪酸エステル、エポキシ化菜種油、亜麻仁油、亜麻仁油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸エステル、エポキシ化亜麻仁油、ヤシ油、ヤシ油脂肪酸等の植物油系化合物;ペンタエリスリトール;ソルビトール;ポリアクリル酸エステル;シリコーンオイル;パラフィン類等が挙げられる。
【0104】
第1樹脂シートにおいて、無機物以外の成分の総含有量に対する、可塑剤の含有量の割合は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、0質量%であってもよい。可塑剤の含有量の割合が70質量%以下であることで、第1樹脂シートは、強度を損なうことなく柔軟性が向上する。
【0105】
第1樹脂シートは1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。第1樹脂シートが複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0106】
なお、本明細書においては、第1樹脂シートの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0107】
第1樹脂シートの厚さは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、50μm以上150μm以下であることがより好ましい。第1樹脂シートの厚さが10μm以上であることで、第1樹脂シートの強度がより向上する。また、第1樹脂シートの厚さが200μm以下であることで、第1樹脂シートの厚さが過剰とはならずに、切断側面の間隔が狭い場合でも、第1樹脂シートで容易に切断側面を被覆することができる。
第1樹脂シートが複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい第1樹脂シートの厚さとなるようにするとよい。
【0108】
(第2樹脂シート)
第2樹脂シートは、第2樹脂成分を含有する。
【0109】
第2樹脂シートに含有される第2樹脂成分は特に限定されないが、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)系樹脂等の汎用樹脂、又は熱可塑性エラストマー(TPE)(以下、これら重合体を包括的に「第2重合体」と称することがある)を含むことが好ましく、第2重合体とそれ以外の他の樹脂(本明細書においては、「任意の第2樹脂」と称することがある)を含んでいてもよいし、第2重合体のみであってもよい。
【0110】
上記第2樹脂成分のうち、上記汎用樹脂として、より具体的には、例えば、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンターポリマー、ブチルゴム、イソブチレンゴム、軟質ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂組成物、エチレンプロピレンラバー、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル/アクリルゴム/スチレン(AAS)樹脂、アクリロニトリル/エチレンゴム/スチレン(AES)樹脂、(メタ)アクリル酸エステル/スチレン(MS)樹脂、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)樹脂、スチレン/イソプレン/ブタジエン/スチレン(SIBS)樹脂等が挙げられる。
上記第2樹脂成分のうち、上記熱可塑性エラストマーとして、より具体的には、例えば、オレフィン系エラストマー(TPO)、ポリ塩化ビニル系エラストマー(TPVC)、スチレン系エラストマー(SBC)、ウレタン系エラストマー(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリアミド系エラストマー(TPAE)等が挙げられる。
【0111】
上記第2重合体の分子量は、特に限定されない。
ただし、第2樹脂シートの成形性がより良好となる点では、上記第2重合体の重量平均分子量は、1×10
4以上2×10
6以下であることが好ましい。
【0112】
上記第2重合体の分子量分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、特に限定されないが、第2樹脂シートのべたつきが低減され、外観も良好となる点では、1.0以上3.5以下であることが好ましく、1.1以上3.0以下であることがより好ましい。
【0113】
第2樹脂シートが含有する第2樹脂成分は、1種のみでもよいし2種以上でもよい。2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0114】
第2樹脂成分は、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンターポリマー、ブチルゴム、イソブチレンゴム、軟質ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂組成物、エチレンプロピレンラバー、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル/アクリルゴム/スチレン(AAS)樹脂、アクリロニトリル/エチレンゴム/スチレン(AES)樹脂、(メタ)アクリル酸エステル/スチレン(MS)樹脂、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)樹脂、スチレン/イソプレン/ブタジエン/スチレン(SIBS)樹脂、オレフィン系エラストマー(TPO)、ポリ塩化ビニル系エラストマー(TPVC)、スチレン系エラストマー(SBC)、ウレタン系エラストマー(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)及びポリアミド系エラストマー(TPAE)からなる群より選択される1種又は2種以上の第2重合体を含むことが好ましく、これら1種又は2種以上の第2重合体のみであってもよい。このような第2樹脂成分を用いることで、切断側面を積層樹脂シートで容易に被覆することができる。
【0115】
第2樹脂成分中の第2重合体の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。第2重合体の含有量が20質量%以上であることで、第2樹脂シートの機械的強度がより向上する。
なお、第2樹脂シートにおける、第2樹脂成分中の第2重合体の含有量(質量%)は、後述する第2樹脂組成物における、第2樹脂成分中の第2重合体の含有量(質量%)と同じである。
【0116】
上記任意の第2樹脂としては、例えば、上記任意の第1樹脂と同じものが挙げられる。
【0117】
上記任意の第2樹脂が共重合体である場合、その分子構造は、特に限定されず、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよいが、ブロック共重合体又はグラフト共重合体であることが好ましい。
【0118】
第2樹脂シートが含有する上記任意の第2樹脂は、1種のみでもよいし2種以上でもよい。2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0119】
第2樹脂成分中の任意の第2樹脂の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、0質量%であってもよい。任意の第2樹脂の含有量が50質量%以下であることで、切断側面を第1樹脂シートで容易に被覆することができる。
なお、第2樹脂シートにおける、第2樹脂成分中の任意の第2樹脂の含有量(質量%)は、後述する第2樹脂組成物における、第2樹脂成分中の任意の第2樹脂の含有量(質量%)と同じである。
【0120】
第2樹脂シート中の第2樹脂成分の含有量は、40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。第2樹脂シート中の第2樹脂成分の含有量が上記範囲であることで、第2樹脂シートは、強度がより向上する。
【0121】
第2樹脂シートは、本発明の効果を損なわない範囲内において、第2樹脂成分以外に、他の成分を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
他の成分としては、例えば、各種添加剤等が挙げられる。
【0122】
第2樹脂シートが含有する他の成分は、1種のみでもよいし2種以上でもよい。2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0123】
第2樹脂シート中の他の成分の含有量は、他の成分の種類に応じて、適宜調節すればよい。
【0124】
第2樹脂シートに含有される添加剤としては、例えば、第1樹脂シートに含有される添加剤と同じものが挙げられる。
上記添加剤は、第2樹脂シートの粘度V2の調節が容易となる点では、可塑剤であることが好ましい。
【0125】
上記可塑剤を用いる場合、第2樹脂シート中の可塑剤の含有量は、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。可塑剤の含有量が1質量%以上であることで、可塑剤を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、可塑剤の含有量が60質量%以下であることで、第2樹脂シートの強度がより向上する。
【0126】
第2樹脂シートは1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。第2樹脂シートが複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0127】
第2樹脂シートの厚さは、20μm以上1000μm以下であることが好ましく、150μm以上800μm以下であることがより好ましい。第2樹脂シートの厚さが20μm以上であることで、第2樹脂シートの強度がより向上する。また、第2樹脂シートの厚さが1000μm以下であることで、第2樹脂シートの厚さが過剰とはならずに、取り扱い性が良好となる。
第2樹脂シートが複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい第2樹脂シートの厚さとなるようにするとよい。
【0128】
本発明に用いる積層樹脂シートは、温度80℃、せん断速度7.6s
−1の条件下での、第1樹脂シートの粘度をV1[kPa・s]、第2樹脂シートの粘度をV2[kPa・s]としたときに、Log(V2)/Log(V1)(以下、単に「粘度の対数比」と略記することがある)が0.7以上1.4以下であることが好ましい。
粘度の対数比が上記範囲である場合、第1の切断線に沿った隙間に積層樹脂シートが陥入しやすいため、切断側面の間隔が狭い場合でも、切断側面を第1樹脂シートで容易に被覆することができる。
【0129】
第1樹脂シートによる切断側面の被覆がより容易になる点から、積層樹脂シートにおいては、上記粘度の対数比が0.72以上1.37以下であることがより好ましい。
【0130】
第1樹脂シートの粘度V1は特に限定されないが、1500kPa・s以下であることが好ましく、1200kPa・s以下であることがより好ましく、1000kPa・s以下であることが特に好ましい。V1が1500kPa・s以下であることで、第1樹脂シートによる切断側面の被覆がより容易になる。
【0131】
一方、第1樹脂シートの粘度V1は、1kPa・s以上であることが好ましく、5kPa・s以上であることがより好ましく、10kPa・s以上であることが特に好ましい。V1が1kPa・s以上であることで、第1樹脂シートの強度がより向上するとともに、変形がより抑制される。
【0132】
第1樹脂シートの粘度V1は、例えば、第1樹脂シートの含有成分の種類若しくはその含有量、又は、第1樹脂シートの厚さ等を調節することで調節することができる。
【0133】
第2樹脂シートの粘度V2は特に限定されないが、第1樹脂シートの粘度V1と同じであってもよいし、異なっていてもよいが、V1に対して同等以下であることが好ましい。
【0134】
すなわち、第2樹脂シートの粘度V2は、1500kPa・s以下であることが好ましく、1200kPa・s以下であることがより好ましく、900kPa・s以下であることが特に好ましい。V2が1500kPa・s以下であることで、第1樹脂シートによる切断側面の被覆がより容易になる。
【0135】
一方、第2樹脂シートの粘度V2は、0.5kPa・s以上であることが好ましく、1kPa・s以上であることがより好ましく、5kPa・s以上であることが特に好ましい。V2が0.5kPa・s以上であることで、第2樹脂シートの強度がより向上するとともに、変形がより抑制される。
【0136】
第2樹脂シートの粘度V2は、例えば、第2樹脂シートの含有成分の種類若しくはその含有量、又は、第2樹脂シートの厚さ等を調節することで調節することができる。
【0137】
V1及びV2は、例えば、粘度測定装置(例えば、東洋精機社製「キャピログラフ」等)を用いて、下記方法により測定することができる。
(粘度の測定方法)
加熱されたシリンダーの中に、ペレット状に加工した第1樹脂シート又は第2樹脂シート(以下、「樹脂ペレット」と略記する)を充填し、これを充分に予熱後、一定速度のプランジャーでシリンダー下部に備えられたオリフィス(2mmφ×10mmL)から、80℃に加熱された樹脂ペレットを押出し、そのとき測定された応力から、溶融粘度を算出する。このとき、プランジャーの降下速度を変化させて測定を行ない、樹脂ペレットのせん断速度に対する溶融粘度の変化曲線から、せん断速度が7.6s
−1の場合の溶融粘度を求め、この値をV1又はV2として採用する。
【0138】
なお、第1樹脂シート及び第2樹脂シートがそれぞれ上記のような粘度の条件を満たす場合、第1樹脂シート及び第2樹脂シート、換言すると積層樹脂シートの使用温度は、80℃に限定されるものではなく、目的に応じて任意に設定することができる。
【0139】
本発明に用いる積層樹脂シートは、上述の実施形態に限定されず、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0140】
具体的には、積層樹脂シートは、第1樹脂シート及び第2樹脂シート以外の層(シート)を有していてもよい。例えば、積層樹脂シートは、第2樹脂シートの、第1樹脂シートが積層されている側とは反対側に積層された第3樹脂シートを有していてもよい。
【0141】
図9は、積層樹脂シートが配置された積層シート体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図9では、切断後の積層シート体35の第1の主面に、第1樹脂シート51と第2樹脂シート52と第3樹脂シート53とがこの順に積層された積層樹脂シート42が配置されている。積層樹脂シート42は、第1樹脂シート51が第1の主面に接触するように、積層シート体35の第1の主面に配置されている。
【0142】
第3樹脂シートは、シート状の形状を維持できる程度の樹脂を含有するものであれば、特に限定されず、目的に応じて任意に設定できる。
例えば、第3樹脂シートは、樹脂成分のみを含有していてもよいし、樹脂成分とそれ以外の成分をともに含有していてもよい。第3樹脂シートの含有成分は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0143】
第3樹脂シートに含有される樹脂成分は、特に限定されず、例えば、第1樹脂成分又は第2樹脂成分として挙げた樹脂成分と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0144】
第3樹脂シートが含有する樹脂成分及びそれ以外の成分は、いずれも1種のみでもよいし、2種以上でもよい。2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0145】
第3樹脂シートは、表面処理されたものであってもよい。このような第3樹脂シートとしては、例えば、樹脂シートの一方の面又は両方の面が離型処理されている離型シートが挙げられる。
離型シートが含有する樹脂成分で好ましいものとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
離型シートの離型処理は、シリコーン処理剤等の公知の離型処理剤を用いて行うことができる。
第3樹脂シートが離型シートである場合、第3樹脂シートは、少なくとも離型処理面が第2樹脂シートと接触するように配置されていることが好ましい。
【0146】
第3樹脂シートは1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。第3樹脂シートが複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0147】
第3樹脂シートの厚さは、第3樹脂シートの種類に応じて適宜選択すればよいが、通常は、12μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0148】
<積層樹脂シートの製造方法>
本発明に用いる積層樹脂シートは、例えば、第1樹脂シートと第2樹脂シートとを積層することで製造できる。
第1樹脂シートは、第1樹脂成分、無機物、及び、必要に応じて他の成分が配合されてなる第1樹脂組成物を、シート状に成形することで製造できる。
また、第2樹脂シートは、第2樹脂成分、及び、必要に応じて他の成分が配合されてなる第2樹脂組成物を、シート状に成形することで製造できる。
【0149】
なお、第1樹脂組成物における、溶媒以外の全成分の総含有量(質量部)に対する、溶媒以外の特定の一成分の含有量(質量部)の割合は、第1樹脂シート中の特定の一成分の含有量(質量%)と同じとなる。
同様に、第2樹脂組成物における、溶媒以外の全成分の総含有量(質量部)に対する、溶媒以外の特定の一成分の含有量(質量部)の割合は、第2樹脂シート中の特定の一成分の含有量(質量%)と同じとなる。
【0150】
第1樹脂組成物は、例えば、第1樹脂成分等の樹脂成分を、融点又はガラス転移温度以上の温度になるまで加熱して溶融状態(液体状態)又はゴム状態とし、これに無機物と、必要に応じて他の成分等の非樹脂成分を添加して、混練することにより製造できる。
同様に、第2樹脂組成物は、例えば、第2樹脂成分等の樹脂成分を、融点又はガラス転移温度以上の温度になるまで加熱して溶融状態(液体状態)又はゴム状態とし、必要に応じて、これに他の成分等の非樹脂成分を添加して、混練することにより製造できる。
【0151】
樹脂成分を融点又はガラス転移温度以上の温度になるまで加熱する方法は、特に限定されず、公知の方法を適用できるが、密閉式混練機、いわゆるインターナルミキサーを用いて加熱する方法であることが好ましい。
また、溶融状態又はゴム状態とした樹脂成分に非樹脂成分を添加して混練する方法は、特に限定されず、公知の方法を適用できるが、オープンロール、単軸押出機、二軸混練機、ニーダー又はバンバリーミキサー等の混練機を用いて混練する方法であることが好ましい。
【0152】
混練後に混練物として得られた第1樹脂組成物又は第2樹脂組成物は、例えば、さらに造粒、冷却処理等を行うことにより、ペレット状又はタブレット状とすることができる。
【0153】
第1樹脂シートの製造時において、第1樹脂組成物をシート状に成形する方法は、特に限定されないが、具体例としては、Tダイを備えた押出装置を用いて成形する方法等が挙げられる。
同様に、第2樹脂シートの製造時において、第2樹脂成分又は第2樹脂組成物をシート状に成形する方法は、特に限定されないが、具体例としては、Tダイを備えた押出装置を用いて成形する方法等が挙げられる。
【0154】
第1樹脂シートと第2樹脂シートとの積層は、公知の方法で行えばよく、例えば、これらのシートを熱ラミネート等でラミネートすることで積層樹脂シートが得られる。
【0155】
積層樹脂シートとして、先に説明したような、第3樹脂シートが積層されたもの等、第2樹脂シートの、第1樹脂シートが積層されている側とは反対側に、さらに1以上の樹脂シートが積層されたものは、例えば、以下の方法で製造できる。
すなわち、まず、第1樹脂シート又は第2樹脂シートの場合と同じ方法で、1以上の樹脂シート(例えば、第3樹脂シート)を製造する。このとき、1以上の樹脂シート(例えば、第3樹脂シート)は、配合成分が異なる点以外は、第1樹脂組成物の場合と同じ方法で樹脂組成物(例えば、第3樹脂組成物)を製造し、この樹脂組成物を用いることで製造できる。
次いで、第2樹脂シートの、第1樹脂シートが積層されている側又は積層される予定の側とは反対側に、1以上の樹脂シートを積層する工程を、上述の積層樹脂シートの製造方法において、適したタイミングで追加して行うことで、目的とする積層樹脂シートを製造できる。あるいは、上述のように第1樹脂シートと第2樹脂シートをラミネートするときに、1以上の樹脂シートも同時にラミネートすることでも、目的とする積層樹脂シートを製造できる。
【0156】
積層樹脂シートの製造時においては、第1樹脂シート、第2樹脂シート及び第3樹脂シートは、いずれも、任意のタイミングで積層することができる。
【0157】
上述した積層樹脂シートが配置された積層シート体を積層方向に加熱圧着する。加熱圧着の方法としては、例えば、剛体プレスや静水圧プレス等の手段により積層方向にプレスする方法等が挙げられる。これによって、第1の切断線に沿った隙間に積層樹脂シートが陥入し、第1の主面とともに切断側面が第1樹脂シートで被覆されたマザーブロックが得られる。
【0158】
上述のように、積層樹脂シートのうち、第1樹脂シートは無機物を含有しているため、第1樹脂成分が焼失した後、セラミック層として機能する。したがって、内部電極が露出した切断側面にセラミック層を形成することができるため、小型で大容量の積層セラミック電子部品を効率良く製造することができる。
【0159】
図10は、マザーブロックの一例を模式的に示す斜視図である。
図8に示した積層樹脂シート41が配置された積層シート体35を積層方向に加熱圧着した場合、
図10に示すマザーブロック36のように、積層樹脂シート41中の第1樹脂シート51が、第1方向の切断線33に沿った隙間(
図8参照)に陥入し、第1の主面とともに切断側面を被覆する。なお、第1樹脂シート51が上記隙間に陥入するときには、
図10に示すように、第2樹脂シート52も、切断側面には接触することなく上記隙間に陥入する。典型的には、第2樹脂シート52は、上記隙間の半分以上の深さにまで陥入する。
【0160】
積層樹脂シートが配置された積層シート体を加熱圧着する際には、積層樹脂シートの上面、及び、積層シート体の第2の主面のいずれか一方又は両方の上に、緩衝シートを介して、圧力を加えるための加圧板を配置(積層)し、この加圧板に圧力を加えることにより加圧してもよい。緩衝シートは、加圧時に、積層樹脂シート又は積層シート体の損傷を抑制するためのものである。
【0161】
このように、緩衝シート及び加圧板を用いる場合には、積層樹脂シートと緩衝シートとの間、又は、積層シート体と緩衝シートとの間に、さらに離型シートを配置(積層)してもよい。離型シートとは、緩衝シートの貼り付きを防止するためのものであり、例えば、樹脂フィルムの一方の面又は両方の面が離型処理されているものが挙げられる。
上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が挙げられる。また、上記離型処理としては、例えば、シリコーン処理剤等の公知の離型処理剤を用いて行うもの等が挙げられる。このように、離型シートとしては、第3樹脂シートとして先に説明したものと同じものが挙げられる。
すなわち、離型シートを用いて行う積層樹脂シートの加圧は、第3樹脂シートが離型シートである場合の積層樹脂シートの加圧と同じことを意味する。
【0162】
積層樹脂シートが配置された積層シート体の加熱圧着は、少なくとも積層樹脂シートを加熱しながら行うことが好ましく、積層樹脂シートの全体、又は、積層樹脂シートが配置された積層シート体の全体を加熱しながら行ってもよい。このようにすることで、積層樹脂シート中の第1樹脂シートで切断側面をより容易に被覆することができる。
【0163】
加熱圧着時の温度は、第1樹脂成分及び第2樹脂成分の融点又はガラス転移温度等を考慮して適宜調節すればよいが、通常は、70℃以上100℃以下であることが好ましい。
【0164】
加熱圧着時の圧力は、加熱圧着時の温度や積層樹脂シートの種類等を考慮して適宜調節すればよいが、通常は、50kg/cm
2以上1000kg/cm
2以下であることが好ましい。
また、加熱圧着の時間は、加熱圧着時の温度や圧力等を考慮して適宜調節すればよいが、通常は、1分以上30分以下であることが好ましい。
【0165】
以上のようにマザーブロックを得た後、積層樹脂シートの第2樹脂シートを除去する。
第2樹脂シートを除去する方法は特に限定されず、例えば、第2樹脂シートを剥離する方法、第2樹脂シートを熱処理によって分解除去する方法等が挙げられる。これらの方法を組み合わせてもよい。
【0166】
第2樹脂シートを除去する第1の方法としては、マザーブロックから第2樹脂シートを除去する方法が挙げられる。例えば、マザーブロックから第2樹脂シートを剥離してもよいし、マザーブロックを熱処理することによって第2樹脂シートを分解除去してもよい。
【0167】
図11は、第2樹脂シートが除去された後のマザーブロックの一例を模式的に示す斜視図である。
図11に示すマザーブロック36aでは、
図10に示すマザーブロック36から第2樹脂シート52が除去されており、第1の主面とともに切断側面が第1樹脂シート51で被覆されている。
【0168】
マザーブロックから第2樹脂シートを除去する場合、第2樹脂シートが除去された後のマザーブロックを、互いに直交する第1方向の第2の切断線、及び、第2方向の第3の切断線に沿って切断することによって、複数のグリーンチップを得る。なお、第1方向の第2の切断線に沿う切断は、省略することもできる。マザーブロックの切断には、例えば、ブレードを用いた押切り、ダイサーを用いたダイシング、ギロチンカット、レーザを用いたレーザカット等の方法が適用される。
【0169】
図12は、切断された後のマザーブロックの一例を模式的に示す斜視図である。
図12においては、
図11に示すマザーブロック36aが、互いに直交する第1方向の切断線33及び第2方向の切断線34に沿って切断され、行及び列方向に配列された複数のグリーンチップ20aが得られる。この際、第1方向の切断線33に沿う切断によって現れた切断側面が第1樹脂シート51で被覆されるように、マザーブロックが切断される。例えば、
図11に示すマザーブロック36aを切断するために用いるブレードの刃等の厚みを、
図7に示す積層シート体35を切断するために用いるブレードの刃等の厚みよりも小さくする方法等が挙げられる。なお、第1方向の切断線33に沿う切断は、省略することもできる。
図12では、1個のマザーブロックから6個のグリーンチップ20aが取り出されているが、実際には、より多数のグリーンチップ20aが取り出される。
【0170】
個々のグリーンチップ20aの間には、切断によって生じた隙間が存在している。隙間の大きさ、すなわち、グリーンチップ20a間の距離は、ブレードの刃の厚み等に対応した大きさであり、特に限定されないが、例えば100μm以下程度である。
【0171】
マザーブロックから個片化されたグリーンチップ20aは、後述する焼成を経て、最終的に、
図1、
図2及び
図3に示す積層セラミックコンデンサ11を構成する部品本体12となる。各グリーンチップ20aは、未焼成の状態にある複数のセラミック層(セラミック層21となるべきセラミックグリーンシート31)と複数の内部電極(内部電極22及び23の各々となるべき内部電極パターン32)とをもって構成された積層構造を有している。
【0172】
図2と同様、第1方向の切断線33に沿う切断によって現れるグリーンチップ20aの両方の側面には、内部電極22及び23となるべき内部電極パターン32は露出していない。また、第2方向の切断線34に沿う切断によって現れるグリーンチップ20aの一方の端面には、内部電極22となるべき内部電極パターン32のみが露出し、他方の端面には、内部電極23となるべき内部電極パターン32のみが露出している。
【0173】
なお、
図12に示すように、グリーンチップ20aが行及び列方向に配列されるように、マザーブロックが粘着シート38上に貼り付けられた状態で切断されることが好ましい。粘着シートとしては、例えば、一般的なダイシングシートやダイシングテープ、加熱により伸長するエキスパンドシート等を用いることができる。
【0174】
第2樹脂シートを除去する第2の方法としては、マザーブロックを個片化することによって得られるグリーンチップから第2樹脂シートを除去する方法が挙げられる。例えば、グリーンチップから第2樹脂シートを剥離してもよいし、グリーンチップを熱処理することによって第2樹脂シートを分解除去してもよい。この熱処理は、後述する焼成処理とは異なる熱処理であってもよいし、焼成処理であってもよい。すなわち、焼成処理によって、第2樹脂シートの除去とグリーンチップの焼成が同時に行われてもよい。
【0175】
グリーンチップから第2樹脂シートを除去する場合、第2樹脂シートが除去される前のマザーブロックを、互いに直交する第1方向の第2の切断線、及び、第2方向の第3の切断線に沿って切断することによって、複数のグリーンチップを得る。なお、第1方向の第2の切断線に沿う切断は、省略することもできる。マザーブロックの切断には、例えば、ブレードを用いた押切り、ダイサーを用いたダイシング、ギロチンカット、レーザを用いたレーザカット等の方法が適用される。
【0176】
図13は、切断された後のマザーブロックの別の一例を模式的に示す斜視図である。
図13においては、
図10に示すマザーブロック36が、互いに直交する第1方向の切断線33及び第2方向の切断線34に沿って切断され、行及び列方向に配列された複数のグリーンチップ20が得られる。この際、第1方向の切断線33に沿う切断によって現れた切断側面が第1樹脂シート51で被覆されるように、マザーブロックが切断される。例えば、
図10に示すマザーブロック36を切断するために用いるブレードの刃等の厚みを、
図7に示す積層シート体35を切断するために用いるブレードの刃等の厚みよりも小さくする方法等が挙げられる。なお、第1方向の切断線33に沿う切断は、省略することもできる。
図13では、1個のマザーブロックから6個のグリーンチップ20が取り出されているが、実際には、より多数のグリーンチップ20が取り出される。
【0177】
個々のグリーンチップ20の間には、切断によって生じた隙間が存在している。隙間の大きさ、すなわち、グリーンチップ20間の距離は、ブレードの刃の厚み等に対応した大きさであり、特に限定されないが、例えば100μm以下程度である。
【0178】
マザーブロックから個片化されたグリーンチップ20は、第2樹脂シートの除去、及び、後述する焼成を経て、最終的に、
図1、
図2及び
図3に示す積層セラミックコンデンサ11を構成する部品本体12となる。各グリーンチップ20は、未焼成の状態にある複数のセラミック層(セラミック層21となるべきセラミックグリーンシート31)と複数の内部電極(内部電極22及び23の各々となるべき内部電極パターン32)とをもって構成された積層構造を有している。
【0179】
図2と同様、第1方向の切断線33に沿う切断によって現れるグリーンチップ20の両方の側面には、内部電極22及び23となるべき内部電極パターン32は露出していない。また、第2方向の切断線34に沿う切断によって現れるグリーンチップ20の一方の端面には、内部電極22となるべき内部電極パターン32のみが露出し、他方の端面には、内部電極23となるべき内部電極パターン32のみが露出している。
【0180】
なお、
図13に示すように、グリーンチップ20が行及び列方向に配列されるように、マザーブロックが粘着シート38上に貼り付けられた状態で切断されることが好ましい。粘着シートとしては、例えば、一般的なダイシングシートやダイシングテープ、加熱により伸長するエキスパンドシート等を用いることができる。
【0181】
マザーブロックから第2樹脂シートを除去する場合、及び、グリーンチップから第2樹脂シートを除去する場合のいずれの場合においても、各グリーンチップを焼成する。焼成温度は、セラミックグリーンシート及び未焼成の保護層に含まれるセラミック材料や内部電極に含まれる金属材料にもよるが、例えば900℃以上1300℃以下の範囲である。
【0182】
例えば、
図12に示すグリーンチップ20aは、焼成されることによって、
図1、
図2及び
図3に示す積層セラミックコンデンサ11を構成する部品本体12となる。なお、第1樹脂シート51は、セラミックグリーンシート31とともにセラミック層21の一部となる。したがって、焼成により得られる部品本体12においては、第1樹脂シート51に由来する部分とセラミックグリーン31に由来する部分との境界が明瞭に現れなくてもよい。
【0183】
なお、焼成前の各グリーンチップに対して脱バインダ処理を行ってもよい。この場合、脱バインダ処理の熱によって、第2樹脂シートを分解除去することができる。
【0184】
第2樹脂シートを除去する第3の方法としては、第2樹脂シートが除去される前のマザーブロックを焼成する方法が挙げられる。この場合、焼成時の熱によって第2樹脂シートを除去することができるとともに、マザーブロックをグリーンチップに個片化することができる。
【0185】
なお、焼成前のマザーブロックに対して脱バインダ処理を行ってもよい。この場合、脱バインダ処理の熱によって、第2樹脂シートを分解除去することができる。
【0186】
第2樹脂シートを除去するいずれの方法においても、焼成後、熱処理(アニール処理)を行ってもよい。
【0187】
また、第1樹脂シート、又は、第2樹脂シートに由来するセラミック層が不要な箇所に形成されている場合には、余分な部分を適宜取り除いてもよい。
【0188】
焼成により得られる部品本体の両端面に導電性ペーストを塗布し、焼き付け、さらに、必要に応じて、めっきが施されることによって、第1の外部電極及び第2の外部電極が形成される。なお、導電性ペーストの塗布は、未焼成の部品本体に対して実施されてもよく、未焼成の部品本体の焼成時に、導電性ペーストの焼き付けを同時に行うようにしてもよい。
【0189】
以上より、
図1に示す積層セラミックコンデンサ11が製造される。
このようにして製造された積層セラミックコンデンサは、はんだ付け等によりプリント基板上等に実装され、各種電子機器等に使用される。
【0190】
上述のとおり、本発明の製造方法は、積層セラミックコンデンサを製造する方法に限定されず、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品を製造する方法にも適用することができる。
【0191】
本発明の積層セラミック電子部品の製造方法では、切断後の積層シート体の第1の主面だけでなく、切断側面も第1樹脂シートで被覆される。第1樹脂シートに含まれるセラミックは、セラミック層を形成するためのセラミックグリーンシートに含まれるセラミックと同じ組成であってもよいが、異なる組成であってもよい。例えば、上記第1樹脂シートに含まれるセラミックとして、セラミックグリーンシートに含まれるセラミックよりも粒径の大きいセラミック粉末を用いることができる。
【0192】
また、上記第1樹脂シートに含まれるセラミックをセラミックグリーンシートに含まれるセラミックと異なる組成にすることにより、例えば、第1樹脂シートに由来する部分を他のセラミック層と異なる色にすることができる。この場合、色の違いによって他の面と区別することができるため、積層セラミック電子部品の方向を外観から識別することができる。
【0193】
したがって、下記の特徴を有する積層セラミック電子部品もまた、本発明の1つである。
本発明の積層セラミック電子部品は、積層方向に配置された複数のセラミック層と複数の内部電極とを含み、上記積層方向に相対する第1の主面及び第2の主面と、上記積層方向に直交する幅方向に相対する第1の側面及び第2の側面と、上記積層方向及び上記幅方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面及び第2の端面とを有する部品本体と、上記部品本体の上記第1の端面に設けられた第1の外部電極と、上記部品本体の上記第2の端面に設けられた第2の外部電極と、を備えた積層セラミック電子部品であって、上記部品本体の上記第1の側面及び上記第2の側面を構成するセラミックは、上記部品本体の上記第1の主面を構成するセラミックと同一の組成であり、上記部品本体の上記第2の主面を構成するセラミックと異なる組成であることを特徴とする。
【0194】
本明細書において、「異なる組成」とは、セラミックが含有する元素の種類が異なる場合はもちろんのこと、セラミックが含有する元素の種類が同一であったとしても、その含有量が異なる場合も含まれる。ただし、製造工程上のばらつき程度の差異は含まないものとする。
【0195】
また、本発明の積層セラミック電子部品において、幅方向の寸法は、長さ方向の寸法より短くてもよいし、長くてもよい。
【実施例】
【0196】
以下、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0197】
1)樹脂シートの作製
<第1樹脂シートの作製>
[参考例1]
エチレン−アクリル酸メチル共重合体(日本ポリエチレン社製「EB440H」、融点77℃、メルトフローレート18g/10min)と、チタン酸バリウム(日本化学工業社製「BTC−4FA」)と、パラフィンオイル(出光興産社製「PW90」)と、を混合し、23℃でのチタン酸バリウムの含有量が55体積%であり、チタン酸バリウム以外の成分の総含有量に対する、パラフィンオイルの含有量の割合が30質量%である第1樹脂組成物を調製した。次いで、この第1樹脂組成物を加熱プレスすることにより、第1樹脂シート(厚さ200μm)を作製した。
得られた樹脂シートの粘度V1は300kPa・sであった。結果を表1に示す。
【0198】
[参考例2]
チタン酸バリウム以外の成分の総含有量に対する、パラフィンオイルの含有量の割合を、30質量%に代えて40質量%とした点以外は、参考例1と同じ方法で第1樹脂組成物を調製し、この第1樹脂組成物を用いた点以外は、参考例1と同じ方法で、第1樹脂シート(厚さ200μm)を作製した。
得られた樹脂シートの粘度V1は130kPa・sであった。結果を表1に示す。
【0199】
[参考例3]
チタン酸バリウム以外の成分の総含有量に対する、パラフィンオイルの含有量の割合を、30質量%に代えて60質量%とした点以外は、参考例1と同じ方法で第1樹脂組成物を調製し、この第1樹脂組成物を用いた点以外は、参考例1と同じ方法で、第1樹脂シート(厚さ200μm)を作製した。
得られた樹脂シートの粘度V1は20kPa・sであった。結果を表1に示す。
【0200】
[参考例4]
チタン酸バリウムの含有量を、55体積%に代えて70体積%とした点以外は、参考例1と同じ方法で第1樹脂組成物を調製し、この第1樹脂組成物を用いた点以外は、参考例1と同じ方法で、第1樹脂シート(厚さ200μm)を作製した。
得られた樹脂シートの粘度V1は2600kPa・sであった。結果を表1に示す。
【0201】
<積層樹脂シートの作製>
[実施例1]
(第1樹脂シート及び第2樹脂シートの作製)
参考例1と同じ方法で第1樹脂組成物を調製し、この第1樹脂組成物を加熱プレスすることにより、第1樹脂シート(厚さ80μm)を作製した。
また、別途、第2樹脂成分として、ポリオレフィン系エラストマー(三井化学社製「8032NS」、軟化点120℃)を用意し、これを加熱プレスすることにより、第2樹脂シート(厚さ200μm)を作製した。
【0202】
第1樹脂シートの粘度V1は300kPa・sであり、第2樹脂シートの粘度V2は60kPa・sであり、粘度の対数比(Log(V2)/Log(V1))は0.72であった。結果を表1に示す。
【0203】
(積層樹脂シートの作製)
次いで、上記で得られた第1樹脂シートと第2樹脂シートとを加熱プレスすることにより、第1樹脂シート及び第2樹脂シートが積層されてなる積層樹脂シートを作製した。
【0204】
[実施例2]
参考例2と同じ方法で第1樹脂組成物を調製し、この第1樹脂組成物を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、第1樹脂シート(厚さ80μm)及び第2樹脂シート(厚さ200μm)が積層されてなる積層樹脂シートを作製した。
第1樹脂シートの粘度V1は130kPa・sであり、第2樹脂シートの粘度V2は60kPa・sであり、粘度の対数比(Log(V2)/Log(V1))は0.84であった。結果を表1に示す。
【0205】
[実施例3]
参考例3と同じ方法で第1樹脂組成物を調製し、この第1樹脂組成物を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、第1樹脂シート(厚さ80μm)及び第2樹脂シート(厚さ200μm)が積層されてなる積層樹脂シートを作製した。
第1樹脂シートの粘度V1は20kPa・sであり、第2樹脂シートの粘度V2は60kPa・sであり、粘度の対数比(Log(V2)/Log(V1))は1.37であった。結果を表1に示す。
【0206】
[実施例4]
参考例4と同じ方法で第1樹脂組成物を調製し、この第1樹脂組成物を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、第1樹脂シート(厚さ80μm)及び第2樹脂シート(厚さ200μm)が積層されてなる積層樹脂シートを作製した。
第1樹脂シートの粘度V1は2600kPa・sであり、第2樹脂シートの粘度V2は60kPa・sであり、粘度の対数比(Log(V2)/Log(V1))は0.52であった。結果を表1に示す。
【0207】
[実施例5]
第2樹脂成分として、上記ポリオレフィン系エラストマーに代えてポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製「F522NH」)を用いた点以外は、実施例2と同じ方法で、第1樹脂シート(厚さ80μm)及び第2樹脂シート(厚さ200μm)が積層されてなる積層樹脂シートを作製した。
第1樹脂シートの粘度V1は130kPa・sであり、第2樹脂シートの粘度V2は3000kPa・sであり、粘度の対数比(Log(V2)/Log(V1))は1.64であった。結果を表1に示す。
【0208】
2)積層ブロックの作製
セラミック原料としてのBaTiO
3に、ポリビニルブチラール系バインダ、可塑剤及び有機溶剤としてのエタノールを加え、これらをボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを作製した。次いで、このセラミックスラリーをリップ方式によりシート成形し、厚み4μmの矩形のセラミックシートを得た。次に、上記セラミックシート上に、Niを含有する導電性ペーストをスクリーン印刷し、Niを主成分とする内部電極となるべき厚み1μmの導電膜を形成した。
【0209】
次に、導電膜が形成されていないセラミックシートを25枚積層し、その上に導電膜が形成されたセラミックシートを、導電膜の引き出されている側が互い違いになるように200枚積層し、その上に導電膜が形成されていないセラミックシートを3枚積層し、コンデンサの部品本体となるべき未焼成の積層シート体を得た。
【0210】
上記未焼成の積層シート体を0.2mmのラバーではさんだ状態で、温度80℃、圧力1.0トン/cm
2の条件での静水圧プレスにより加熱・加圧して、積層ブロックを得た。
【0211】
この積層ブロックをダイシングにより一方向切断し、
図7に示すような複数のグリーンブロック体を得た。個々のグリーンブロック体の間には、切断によって生じた隙間が存在するとともに、切断によって現れた切断側面には導電膜が露出していた。
【0212】
各参考例で作製した第1樹脂シート又は各実施例で作製した積層樹脂シートをグリーンブロック体の上面に設置し、剛体板の温度80℃及び圧力1.0トン/cm
2の条件の剛体プレスにより加熱・加圧して、マザーブロックを得た。各樹脂シートの樹脂組成物が上記隙間に充填されることによって、マザーブロックの上面だけでなく、側面にも未焼成の保護層が形成された。
【0213】
3)マザーブロックの切断及びチップの焼成
マザーブロックをダイシングにより切断し、グリーンチップを得た。参考例については、2方向(第1方向および第2方向)の切断を行った。実施例については、第2樹脂シートをマザーブロックから剥離した後、1方向(第2方向)の切断を行った。
【0214】
得られたグリーンチップをN
2雰囲気中にて250℃で加熱して、バインダを燃焼させた後、H
2、N
2及びH
2Oガスを含む還元性雰囲気中において1200℃で焼成し、焼結した部品本体を得た。得られた部品本体の寸法は、長さ方向(D
L)が1.0mm、幅方向(D
W)が0.5mm、高さ方向(D
T)が0.5mmである。
【0215】
4)外部電極の形成
焼成後の部品本体に対して、下地電極層(焼付け層)とめっき層とを含む構造の外部電極を形成した。下地電極層(焼付け層)を形成するための材料はCuとガラスとを含み、850℃で焼付けを行った。また、めっき層を形成するためにCuめっきを行った。
【0216】
<側面被覆性の評価>
焼成した部品本体に対して、各20個について熱硬化性樹脂を用いて保持した後、断面研磨を行い、顕微鏡にて観察し、以下の判定基準で側面被覆性を評価した。側面被覆性の評価では、部品本体の第1および第2の側面が、均一な厚みで形成されているかを判断した。
◎判定:全ての断面において、第1および第2の側面が均一に形成されている。
○判定:1個の部品本体に側面被覆不足箇所が見られる。
△判定:2個以上20個未満の部品本体に側面被覆不足箇所が見られる。
×判定:20個すべての部品本体に側面被覆不足箇所が見られる。
なお、歩留まりとしては、1個以下の不良であれば、実用上問題ないと判断する。
【0217】
<界面剥がれの評価>
焼成した部品本体に対して、各20個について外観検査を実施し、内部電極と保護層との界面部分の剥がれを確認し、以下の判定基準で界面剥がれを評価した。
◎判定:界面剥がれがない。
○判定:1個の部品本体に界面剥がれが見られる。
△判定:2個以上20個未満の部品本体に界面剥がれが見られる。
×判定:20個すべての部品本体に界面剥がれが見られる。
なお、歩留まりとしては、1個以下の不良であれば、実用上問題ないと判断する。
【0218】
【表1】
【0219】
上述のように、参考例1〜4では、2方向の切断が必要であったのに対し、実施例1〜5では、切断が1方向でよく、加工時間の短縮が図れている。
【0220】
また、表1に示すように、実施例1〜5では、側面被覆性に優れるとともに、界面の剥がれが抑制されており、この傾向は、特に実施例1〜3で良好である。