(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の側面及び前記第2の側面において、前記第2の内部電極層が露出する露出領域を覆う前記外部電極が低抵抗外部電極である請求項3に記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の積層セラミックコンデンサ及び本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0022】
[積層セラミックコンデンサ]
以下、積層体と外部電極とを備えた本発明の積層セラミックコンデンサについて、例を説明する。
まず、
図1及び
図2を用いて、本発明の積層セラミックコンデンサを構成する積層体及び外部電極について説明する。
図1は、本発明の積層セラミックコンデンサを構成する積層体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明の積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
【0023】
本発明の積層セラミックコンデンサ及び積層体では、長さ方向、幅方向、積層方向を、
図1に示す積層体10及び
図2に示す積層セラミックコンデンサ1においてそれぞれ両矢印L、W、Tで定める方向とする。ここで、長さ方向と幅方向と積層方向は互いに直交する。積層方向は、積層体10を構成する複数のセラミック層20と複数の内部電極層30が積み上げられていく方向である。
図1に示す積層体10及び
図2に示す積層セラミックコンデンサ1では、長さ方向の寸法が幅方向の寸法よりも長くなっている。しかしながら、本発明の積層セラミックコンデンサ及び積層体において、長さ方向の寸法と幅方向の寸法の大小関係は特に限定されず、長さ方向の寸法は、幅方向の寸法よりも大きくてもよく小さくてもよい。
【0024】
積層体10は、6面を有する略直方体形状であり、積層された複数のセラミック層20と複数の内部電極層30を有する。そして、積層体10は、
図1中に両矢印Tで示す積層方向Tに対向する第1の主面11及び第2の主面12と、積層方向Tに直交する、両矢印Wで示す幅方向Wに対向する第1の側面13及び第2の側面14と、積層方向T及び幅方向Wに直交する、両矢印Lで示す長さ方向Lに対向する第1の端面15及び第2の端面16と、を含む。
【0025】
本明細書において、第1の端面15及び第2の端面16に直交し、かつ、積層体10の積層方向と平行な積層体10の断面をLT断面という。また、第1の側面13及び第2の側面14に直交し、かつ、積層体10の積層方向と平行な積層体10の断面をWT断面という。
また、第1の側面13、第2の側面14、第1の端面15及び第2の端面16に直交し、かつ、積層体10の積層方向に直交する積層体10の断面をLW断面という。
【0026】
セラミック層20は、外層部21と内層部22を含む。外層部21は、積層体10の両主面側に位置し、主面と最も主面に近い内部電極層との間に位置するセラミック層である。両外層部21に挟まれた領域が内層部22である。
【0027】
図2に示す積層セラミックコンデンサ1では、
図1に示す積層体10の端面(第1の端面15及び第2の端面16)が外部電極のうち抵抗付外部電極100(以下、単に抵抗付外部電極ともいう)によって覆われており、さらに、積層体10の側面(第1の側面13及び第2の側面14)の一部が外部電極のうち低抵抗外部電極200(以下、単に低抵抗外部電極ともいう)によって覆われている。
本発明の積層セラミックコンデンサでは、露出領域を覆う外部電極の少なくとも1つが抵抗付外部電極であればよく、他の外部電極は抵抗付外部電極であってもよく、低抵抗外部電極であってもよい。
【0028】
続いて、
図3(a)及び
図3(b)を用いて、本発明の積層セラミックコンデンサを構成するセラミック層及び内部電極層について説明する。
図3(a)は、
図2に示す積層セラミックコンデンサのLT断面の一例を模式的に示す断面図である。
図3(a)は、
図2におけるA−A線断面図でもある。
図3(b)は、
図2に示す積層セラミックコンデンサのWT断面の一例を模式的に示す断面図である。
図3(b)は、
図2におけるB−B線断面図でもある。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、複数の内部電極層30は、積層された第1の内部電極層35及び第2の内部電極層36を含む。第1の内部電極層35は第1の端面15及び第2の端面16に露出し、第2の内部電極層36は第1の側面13及び第2の側面14に露出する。第1の内部電極層35と第2の内部電極層36がセラミック層20を挟んで対向する対向電極部で静電容量が発生する。
【0029】
第1の内部電極層35が露出する露出領域は抵抗付外部電極100により覆われている。抵抗付外部電極100は、内部電極層30(第1の内部電極層35)に直接接触する薄膜電極層61と、薄膜電極層61上に設けられた抵抗電極層62と、抵抗電極層62上に設けられた抵抗電極層62よりも電気抵抗率の小さい上層電極層63からなる。
【0030】
第1の内部電極層35は、セラミック層20を挟んで第2の内部電極層36と対向する対向電極部と、対向電極部から第1の端面15又は第2の端面16に引き出された引出電極部とを有し、第1の端面15上及び第2の端面16上には、第1の内部電極層35が露出する領域が形成されている。
第1の内部電極層35(引出電極部)が第1の端面15に露出している領域を第1の露出領域とし、第1の内部電極層35(引出電極部)が第2の端面16に露出している領域を第2の露出領域とする。
【0031】
第2の内部電極層36は、セラミック層20を挟んで第1の内部電極層35の対向電極部と対向する対向電極部と、対向電極部から第1の側面13又は第2の側面14に引き出されて露出する引出電極部とを有し、第1の側面13には、第2の内部電極層36が露出する第3の露出領域が形成されており、第2の側面14には、第2の内部電極層36が露出する第4の露出領域が形成されている。第3の露出領域及び第4の露出領域は、それぞれ、抵抗電極層を有さない低抵抗外部電極200によって覆われている。
【0032】
図4は、
図3(a)において破線で囲んだ抵抗付外部電極近傍の領域の拡大断面図である。
図4に示すように、第1の内部電極層35が露出する露出領域において、第1の内部電極層35が薄膜電極層61と直接接触している。第1の端面15において第1の内部電極層35が露出する第1の露出領域は、最も外側に形成されている2つの第1の内部電極層35を含む領域(
図4中、両矢印X
2で示される領域)である。これに対して、薄膜電極層61が形成された領域(
図4中、両矢印X
3で示される領域)は、第1の露出領域を完全に覆っていることが好ましい。
また、積層体の稜線部から薄膜電極層61までの距離は、所定の長さ(
図4中、両矢印X
1で示される長さ)だけ離れており、積層体の稜線部から第1の露出領域までの距離は、所定の長さ(
図4中、両矢印X
4で示される長さ)だけ離れている。
【0033】
続いて、積層体の端面において内部電極層が露出する露出領域、該露出領域上に形成される薄膜電極層について
図5を用いて説明する。
図5は、
図3に示す第1の端面の内部電極層30、薄膜電極層61及び積層体の状態を模式的に示した説明図である。
図5では、薄膜電極層が形成されている領域を二点鎖線で示している。
図5に示すように、第1の内部電極層35が露出する領域は、幅方向(W方向)に伸びる両矢印X
2Wと、積層方向(T方向)に伸びる両矢印X
2Tによって示される略矩形形状の領域である。この領域が第1の露出領域である。
第1の露出領域を覆うように、薄膜電極層61が形成されている(
図5中、薄膜電極層61が覆う領域を二点鎖線で示している)。薄膜電極層61が形成されている領域は、幅方向(W方向)に伸びる両矢印X
3Wと、積層方向(T方向)に伸びる両矢印X
3Tで示される略矩形形状の領域であり、第1の露出領域を完全に覆っている。
薄膜電極層61が第1の露出領域を完全に覆っていると、第1の内部電極層35と薄膜電極層61との接触抵抗が低減される。
【0034】
第2の主面12から第1の内部電極層35までの長さをX
4Tで示す。両矢印X
4Tで示される長さをTギャップともいう。一方、第1の側面13から第1の内部電極層35までの長さを両矢印X
4Wで示す。両矢印X
4Wで示される長さは、Wギャップともいう。
【0035】
第2の主面12から薄膜電極層61までの距離は両矢印X
1Tで示される。X
1Tで示される長さがX
4Tで示される長さよりも小さければ、薄膜電極層61はT方向において第1の露出領域の全てを覆うことができるため、好ましい。さらには、X
1Tで示される長さがX
4Tで示される長さの1/3以上(すなわち、第2の主面12から薄膜電極層61までの距離が、Tギャップの1/3以上)であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましく、9/10以上であることがさらに好ましい。第1の主面11から薄膜電極層61までの距離についても同様である。
【0036】
第1の側面13から薄膜電極層61までの距離は両矢印X
1Wで示される。X
1Wで示される長さがX
4Wで示される長さよりも小さければ、薄膜電極層61はW方向において第1の露出領域の全てを覆うことができるため、好ましい。さらには、X
1Wで示される長さがX
4Wで示される長さの1/3以上(すなわち、第1の側面13から薄膜電極層61までの距離が、Wギャップの1/3以上)であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましく、9/10以上であることがさらに好ましい。第2の側面14から薄膜電極層61までの距離についても同様である。
積層体の側面又は主面から薄膜電極層までの距離が、それぞれWギャップ又はTギャップの9/10以上であると、薄膜電極層61が積層体10の稜線部近傍(以下、エッジ部分ともいう)から離れた領域に形成されることとなるため、薄膜電極層上に形成される抵抗電極層の厚さがエッジ部分においてばらつく影響を受けにくくなる。
【0037】
ただし、
図6に示すように、本発明の積層セラミックコンデンサにおいて、薄膜電極層61は第1の端面15を完全に覆っていてもよいし、薄膜電極層61の一部が他の面に回り込んでいてもよい。
図6は、本発明の積層セラミックコンデンサの別の一例を模式的に示すLT断面図である。
図6に示す積層セラミックコンデンサでは、第1の端面15に形成された薄膜電極層61の一部が第1の端面15からはみ出すように、第1の主面11及び第2の主面12上に回り込んで形成されている。
【0038】
なお、本明細書では、第1の端面15及び第2の端面16に第1の内部電極層が露出し、第1の側面13及び第2の側面14に第2の内部電極層が露出する積層体を用いた積層セラミックコンデンサについて説明したが、本発明の積層セラミックコンデンサを構成する積層体は、上記構成を有する積層体に限定されない。例えば、第1の端面15に第1の内部電極層35が露出し、第2の端面に第2の内部電極層36が露出し、第1の側面13、第2の側面14に内部電極層が露出していない積層体を用いたとしても、第1の端面15及び/又は第2の端面16に露出する露出領域を外部電極で覆い、そのうちの少なくとも1つを抵抗付外部電極100としたものは、本発明の積層セラミックコンデンサである。
【0039】
積層体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。角部は、積層体の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体の2面が交わる部分である。
なお、稜線部から薄膜電極層までの距離は、稜線部に丸みが付けられている場合であっても、稜線部に丸みが付けられていないと仮定した場合の稜線部からの距離とする。
【0040】
積層体10のL方向の長さは、0.4mm以上5.7mm以下であることが好ましく、0.46mm以上4.6mm以下であることがより好ましく、0.46mm以上3.2mm以下であることがさらに好ましい。積層体10のW方向の長さは、0.2mm以上5.0mm以下であることが好ましく、0.28mm以上2.75mm以下であることがより好ましく、0.28mm以上2.5mm以下であることがさらに好ましい。積層体10のT方向の長さは、0.19mm以上2.7mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2.5mm以下であることがより好ましく、0.2mm以上1.95mm以下であることがさらに好ましい。
【0041】
セラミック層の枚数は、50枚以上600枚以下であることが好ましく、100枚以上600枚以下であることがより好ましい。なお、セラミック層の枚数には、外層部を構成するセラミック層の枚数を含めない。
セラミック層のうち内層部を構成する各セラミック層の厚さは、0.4μm以上3.0μm以下であることが好ましい。また、外層部の厚さは、片側20μm以上80μm以下であることが好ましく、30μm以上80μm以下であることがより好ましい。
上記したような積層体の各寸法の測定はマイクロメータにより行うことができ、セラミック層の枚数のカウントは光学顕微鏡を用いて行うことができる。
【0042】
各セラミック層としては、チタン酸バリウム(BaTiO
3)に代表される、一般式AmBO
3(AサイトはBaであって、Ba以外にSr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。BサイトはTiであって、Ti以外にZr及びHfからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。Oは酸素。mはAサイトとBサイトのモル比。)で表されるペロブスカイト型化合物を好ましく使用することができる。またチタン酸カルシウム(CaTiO
3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)またはジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)等を主成分とするセラミック材料を用いても良い。また、各セラミック層は、主成分よりも含有量の少ない副成分として、Mn、Mg、Si、Co、Ni、V、Alまたは希土類元素等を含んでいてもよい。
【0043】
内部電極層は、Ni、Cu、Ag、Pd、Ag−Pd合金又はAu等の金属材料を含んでいることが好ましい。また、セラミック層に含まれるセラミック材料と同一組成系の誘電体材料を含んでいることも好ましい。
【0044】
内部電極層の枚数は、50枚以上600枚以下であることが好ましく、100枚以上600枚以下であることがより好ましい。また、内部電極層の平均厚さは、0.3μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
【0045】
本発明の積層セラミックコンデンサにおいて、第1の内部電極層が露出する露出領域を覆う外部電極の全て、又は、第2の内部電極層が露出する露出領域を覆う外部電極の全てが抵抗付外部電極であることが好ましい。
第1の内部電極層が露出する露出領域が2箇所以上あり、そのうちの1箇所以上が抵抗付外部電極ではない外部電極で覆われている場合、第1の内部電極層が露出する露出領域のうち抵抗付外部電極ではない外部電極により覆われている露出領域に優先的に電流が流れ、積層セラミックコンデンサ全体としての抵抗値を設計することが困難となる。第2の内部電極層が露出する露出領域についても同様である。
【0046】
本発明の積層セラミックコンデンサにおいて、露出領域は外部電極に覆われている。
外部電極としては、抵抗付外部電極と低抵抗外部電極が挙げられる。
抵抗付外部電極は、薄膜電極層、抵抗電極層及び抵抗電極層よりも電気抵抗率の小さい上層電極層を含む。抵抗付外部電極は、積層体に形成された露出領域の少なくとも1つを覆っている。薄膜電極層は、第1の内部電極層又は第2の内部電極層と直接接触しており、抵抗電極層は薄膜電極層上に設けられており、上層電極層は抵抗電極層上に設けられている。
【0047】
本発明の積層セラミックコンデンサにおいては、内部電極層が露出する露出領域を覆う外部電極の少なくとも1つが、薄膜電極層、抵抗電極層及び上層電極層からなる抵抗付外部電極である。露出領域には内部電極層が露出しており、薄膜電極層は該内部電極層と直接接触している。
本発明の積層セラミックコンデンサの等価回路を考えた場合に、複数個あるコンデンサ要素部分から薄膜電極層によって1箇所にまとめられた配線が、抵抗電極層に接続されているとみなすことができる。一方、内部電極層が抵抗電極層と直接接触している場合には、コンデンサ要素部分と抵抗要素部分が直列に接続された回路が複数個並列で接続されているとみなすことができる。そのため、本発明の積層セラミックコンデンサにおいては、内部電極層が抵抗電極層と直接接触している場合と比較して、接続性が安定すると考えられる。
【0048】
薄膜電極層は、電気抵抗率が1.65×10
−6Ω・cm以上1.65×10
−4Ω・cm以下であることが好ましい。また、薄膜電極層は、抵抗電極層よりも電気抵抗率が小さいことが好ましい。
薄膜電極層は、導電性ペーストが焼き付けられた層とは異なり、原子が堆積された原子層であり、めっき、スパッタ、蒸着等の薄膜形成法により形成することができる。これらの方法では、薄膜電極層の厚さのばらつきを抑えつつ、所望の厚さの薄膜電極層を形成することができる。
薄膜電極層の電気抵抗率、接着性及び製造容易性等の観点から、めっきにより形成されためっき電極であることが好ましい。
なお、めっき法により形成した薄膜電極層をめっき電極、スパッタにより形成した薄膜電極層をスパッタ電極、蒸着により形成した薄膜電極層を蒸着電極ともいう。
なお、薄膜電極層は上記めっき電極、スパッタ電極、蒸着電極のうちの少なくとも1種の電極を用いて複数層積層されたものであってもよい。
薄膜電極層の好ましい厚さ(後述する)を達成しようとする場合には、上記薄膜形成法が適当である。上記の薄膜形成法以外の方法、例えばペーストディップによって形成される電極層は厚さの平坦性が充分ではなく、ペースト粘度との関係で好ましい厚さ(後述する)を達成することが困難である。
【0049】
薄膜電極層を構成する金属としては、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金及びAuからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含むことが好ましく、Cuを含むことがさらに好ましい。なお、薄膜電極層はガラスを含まない層であることが好ましく、単位体積あたりの金属の含有割合が99体積%以上であることが好ましい。
【0050】
薄膜電極層の厚さは、特に限定されないが、0.5μm以上9μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましく、2μm以上3μm以下であることがさらに好ましい。
薄膜電極層の厚さは、積層セラミックコンデンサを切削してLT断面を露出させ、マイクロスコープで観察することによって測定することができる。内部電極層が露出する露出領域上における1つの薄膜電極層をT方向に4等分して得られる5つの地点(分割した薄膜電極層同士の境界である3つの地点、及び、T方向の両端部である2つの地点)における薄膜電極層の厚さを算出する操作を6サンプルで行い、30点の平均値を薄膜電極層の厚さとする。
【0051】
薄膜電極層は、積層体をL方向から平面視したときに、積層体における露出領域が形成された面内に配置されていることが好ましい。抵抗電極層の厚みは積層体の稜線部付近(エッジ部ともいう)において薄くなりやすく、また厚みがばらつきやすい。薄膜電極層が露出領域が形成された面外まで延長形成されると、稜線部付近の抵抗電極層を通じて流れる電流が増えるため、積層セラミックコンデンサの抵抗値がばらつく、あるいは、積層セラミックコンデンサ全体としての抵抗値を設計することが困難となる。
【0052】
抵抗電極層は、抵抗成分に加えて、必要に応じてガラス、金属及び金属酸化物が添加される。
抵抗成分とは、一般的な外部電極に含まれる金属やガラスを除く、電気抵抗率の比較的高い成分を指し、具体的には、ガラスを除く金属酸化物やカーボンなどである。
抵抗成分を構成する金属酸化物(以下、第1の金属酸化物ともいう)としては、例えば、In−Sn複合酸化物(ITO)、La−Cu複合酸化物、Sr−Fe複合酸化物、Ca−Sr−Ru複合酸化物等の複合酸化物等を用いることができる。
カーボンとしては、カーボンブラック等の無定形炭素やグラファイト等を用いることができる。
【0053】
ガラスとしては、B−Si系ガラス、B−Si−Zn系ガラス、B−Si−Zn−Ba系ガラス、B−Si−Zn−Ba−Ca−Al系ガラス等を使用することができる。
抵抗電極層中の第1の金属酸化物とガラスとの体積割合は、30:70〜70:30であることが好ましい。
【0054】
金属としては、Ag、Ni、Cu、Au及びPdからなる群から選択された少なくとも1種の金属からなることが好ましい。これらの中ではNiを含むことがより好ましい。Niは粒径を細かくできるためである。
【0055】
第1の金属酸化物以外の金属酸化物(以下、第2の金属酸化物ともいう)としては、例えば、Al
2O
3、ZrO
2、TiO
2、ZnO等が挙げられる。
【0056】
抵抗成分、ガラス、金属及び第2の金属酸化物によって抵抗電極層の電気抵抗率及び抵抗電極層の緻密性を調整することができる。
例えば、金属を添加すると抵抗電極層の電気抵抗率は低下し、第2の金属酸化物を添加すると抵抗電極層の電気抵抗率は増加する。
また、Ni、Cu等の金属やAl
2O
3、TiO
2を添加すると抵抗電極層の緻密化を促進することができる。一方、Mo、Cr、Nb等の金属やZrO
2、ZnO等の第2の金属酸化物を添加すると、抵抗電極層の緻密化を抑制することができる。
なお、緻密化の抑制とは、抵抗電極層の過焼結によるブリスタの発生を防止するという意味合いがある。
【0057】
抵抗電極層の厚さは、特に限定されないが、5μm以上25μm以下であることが好ましい。なお、抵抗電極層の厚さは、薄膜電極層の厚さと同様、内部電極層が露出する露出領域をT方向に4等分することによって得られる5つの地点における抵抗電極層の厚さを6つのサンプルで測定した30点の平均値とする。
また、薄膜電極層の直上に形成されている抵抗電極層の厚さはばらついていないことが好ましい。さらに、薄膜電極層の直上に形成されている抵抗電極層の厚さについて、厚さの最も厚い箇所(
図4において両矢印Y
1で示す箇所)と、厚さの最も薄い箇所(
図4において両矢印Y
2で示す箇所)との厚さの差が15μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0058】
抵抗電極層の電気抵抗率は、0.01Ω・cm以上100Ω・cm以下であることが好ましく、0.05Ω・cm以上10Ω・cm以下であることがより好ましく、0.05Ω・cm以上1Ω・cm以下であることがさらに好ましい。
【0059】
抵抗電極層は、抵抗電極層の直下に配置されている薄膜電極層の全体を覆っていることが好ましい。薄膜電極層の一部が抵抗電極層で覆われていない場合、覆われていない領域に優先的に電流が流れ、積層セラミックコンデンサ全体としての抵抗値を設計することが困難となる。
【0060】
抵抗電極層は、積層体をL方向から平面視したときに、積層体における露出領域が形成された面内に配置されていることが好ましい。抵抗電極層が、積層体における露出領域が形成された面内に配置されていると、抵抗電極層が積層体の稜線部を超えて他の面に配置されることがない。そのため、抵抗電極層の厚みが積層体の稜線部付近(エッジ部ともいう)においてばらつくことを抑制することができる。
【0061】
上層電極層は、抵抗電極層よりも電気抵抗率が小さければよく、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金及びAuからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含むことが好ましく、Cuを含むことがさらに好ましい。なお、薄膜電極層はガラスを含まない層であることが好ましく、単位体積あたりの金属の含有割合が99体積%以上であることが好ましい。
【0062】
上層電極層の厚さは特に限定されないが、積層体の端面に抵抗付外部電極が形成されている場合には、これを構成する上層電極層の厚さは5μm以上50μm以下であることが好ましい。また、抵抗付外部電極が積層体の側面に形成されている場合には、これを構成する上層電極層の厚さは5μm以上40μm以下であることが好ましい。
上層電極層の厚さは、薄膜電極層の厚さと同様、第1の内部電極層が露出する露出領域をT方向に4等分することによって得られる5つの地点における上層電極層の厚さを6つのサンプルで測定した30点の平均値とする。
【0063】
本発明の積層セラミックコンデンサにおいて、積層体に形成された露出領域を覆う外部電極のうちのいくつかは、低抵抗外部電極であってもよい。
低抵抗外部電極は、抵抗電極層を有さない外部電極であり、電気抵抗率の小さい材料で構成されていれば特に限定されないが、例えば、導電性ペーストを塗布し、焼成したものが挙げられる。
低抵抗外部電極は、抵抗電極層よりも電気抵抗率が小さいことが好ましい。
【0064】
[積層セラミックコンデンサの製造方法]
以下に、本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法を説明する。
本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法は、積層された複数のセラミック層と複数の内部電極層を備え、複数の上記内部電極層が露出する露出領域を2つ以上有する略直方体形状の積層体を形成する積層体形成工程と、外部電極によって上記露出領域を覆う被覆工程と、を備え、前記被覆工程は、薄膜電極層と、上記薄膜電極層上に設けられた抵抗電極層と、上記抵抗電極層上に設けられた上記抵抗電極層よりも電気抵抗率の小さい上層電極層を有する抵抗付外部電極によって上記露出領域の少なくとも1つを覆う第1の被覆工程を有し、上記第1の被覆工程において、露出する上記内部電極層上に直接、薄膜電極層を形成することを特徴とする。
【0065】
まず積層体形成工程について説明する。
積層体形成工程では、積層された複数のセラミック層と複数の内部電極層からなり、複数の内部電極層が露出する露出領域を2つ以上有する略直方体形状の積層体を形成する。
このような積層体を形成する方法としては、例えば、セラミック層となるセラミックグリーンシート上に内部電極層となる内部電極パターンを形成したものを所定枚数積層し、圧縮してグリーンシート積層体とした後、焼成する方法等が挙げられる。
【0066】
セラミックグリーンシートは、例えば、セラミック層の原料となる金属酸化物と有機物及び溶媒等が混合されたセラミックスラリーを、PETフィルム等のキャリアフィルム上に、スプレーコーティング、ダイコーティング、スクリーン印刷等の方法によってシート状に塗布することによって得ることができる。
セラミックグリーンシートの厚さは、0.4μm以上3.0μm以下が好ましい。
セラミック層の原料となる金属酸化物としては、本発明の積層セラミックコンデンサにおけるセラミック層を構成する原料と同様のものを好適に用いることができる。
【0067】
内部電極層となる導電性ペーストは、Ni粉等の金属材料、溶剤、分散剤及びバインダからなり、セラミックグリーンシート上にスクリーン印刷、グラビア印刷等の方法で印刷することにより、内部電極パターンを作製することができる。
印刷された内部電極パターンの厚さは、0.3μm以上1.0μm以下が好ましい。
圧縮方法としては、例えば、剛体プレスや静水圧プレス等が挙げられる。
なお、プレス時に最外層に一定厚みの樹脂シートを配置することで内部電極パターンが形成されていない部分にも充分に圧力が加わりセラミックグリーンシート同士の接着力を高めることができる。
【0068】
その後、得られたグリーンシート積層体を、必要に応じて、内部電極層が2箇所以上に露出するように切り出し、所定の条件で焼成することにより、積層体が得られる。
なお、所定形状に切り出したグリーンシート積層体と研磨剤をバレルに収容して、バレルに回転運動を与えることで積層体の角部及び稜線部を丸める、バレル研磨を行うことが好ましい。
【0069】
続いて、被覆工程について説明する。
被覆工程は、露出領域を外部電極によって覆う工程であり、後述する第1の被覆工程を有する。
【0070】
第1の被覆工程では、薄膜電極層と、薄膜電極層上に設けられた抵抗電極層と、抵抗電極層上に設けられた上層電極層からなる抵抗付外部電極によって露出領域の少なくとも1つを覆う。このとき、内部電極層上に直接、薄膜電極層を形成する。
【0071】
内部電極層上に直接薄膜電極層を形成する方法としては、めっき、蒸着、スパッタ等が挙げられるが、薄膜電極層をめっき法により形成することが好ましい。
薄膜電極層の材料としては、本発明の積層セラミックコンデンサで説明した薄膜電極層の材料を好適に用いることができる。
なお、内部電極層上に直接薄膜電極層を形成するにあたって、内部電極層の表面に触媒等を付着させてもよい。
内部電極層の表面に触媒等を付着させることで、薄膜電極層が形成される領域を制御しやすくなる。
【0072】
薄膜電極層は、内部電極層が露出している面以外に形成しないことが好ましい。また、積層体のW方向における積層体の稜線部から薄膜電極層までの距離が、積層体のWギャップの1/3以上となるように薄膜電極層を形成することが好ましく、1/2以上となるように薄膜電極層を形成することがより好ましく、9/10以上となるように薄膜電極層を形成することがさらに好ましい。さらに、積層体のT方向における積層体の稜線部から薄膜電極層までの距離が、積層体のTギャップの1/3以上となるように薄膜電極層を形成することが好ましく、1/2以上となるように薄膜電極層を形成することがより好ましく、9/10以上となるように薄膜電極層を形成することがさらに好ましい。
【0073】
薄膜電極層の厚さは、特に限定されないが、続く工程により形成される抵抗電極層よりも薄いことが好ましく、0.5μm以上9μm以下であることがより好ましい。
【0074】
続いて、薄膜電極層上に抵抗電極層を形成する。
薄膜電極層上に抵抗電極層を形成する方法としては、例えば、薄膜電極層が形成されている積層体の端面(又は側面)を抵抗電極層となる抵抗電極ペーストに含浸させた後に焼成する方法や、抵抗電極層となる抵抗電極ペーストをシート状に加工したものを薄膜電極層の表面に付与した後に焼成する方法などが挙げられる。
薄膜電極層上に形成される抵抗電極ペーストの厚さは、特に限定されないが、焼成後の抵抗電極層の厚さが5μm以上25μm以下となる厚さであることが好ましい。
【0075】
抵抗電極ペーストは、例えば、金属酸化物粉末、ガラス、分散剤、溶媒等を含み、一定の粘度を有していることが好ましい。
抵抗電極ペーストをシート状に加工する方法としては、抵抗電極ペーストをキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させた後、キャリアフィルムを剥離する方法が挙げられる。
抵抗電極ペーストを構成する金属酸化物及びガラスは、本発明の積層セラミックコンデンサにおいて説明した抵抗電極層を構成する材料と同様のものを好適に用いることができる。
【0076】
抵抗電極ペースト又は抵抗電極ペーストをシート状に加工したものを第1の焼成工程により焼成することにより、薄膜電極層上に抵抗電極層が形成される。
第1の焼成工程における焼成温度は、特に限定されないが、700℃以上800℃以下であることが好ましく、さらに、第1の焼成工程における最高温度は、後述する第2の焼成工程における最高温度よりも高いことが好ましい。
【0077】
続いて、抵抗電極層上に上層電極層を形成する。
抵抗電極層上に上層電極層を形成する方法としては、例えば、上層電極層を構成する金属粒子を溶媒中に分散させた上層電極ペーストを抵抗電極層上に塗布し焼成する方法や、上層電極ペーストをシート状に成形した上層電極ペーストシートを抵抗電極層上に付与し焼成する方法が挙げられる。
また、上層電極層を構成する金属粒子と熱硬化性樹脂を含んだ導電性樹脂ペーストを抵抗電極層上に塗布し、熱処理することで樹脂を熱硬化させ、上層電極層を形成してもよい。
抵抗電極層上に塗布又は付与される上層電極ペーストの厚さは、特に限定されないが、焼成後の上層電極層の厚さが、端面の場合には5μm以上50μm以下となる厚さ、側面の場合には5μm以上40μm以下となる厚さであることが好ましい。
【0078】
上層電極層となる上層電極ペーストとしては、抵抗電極層よりも上層電極層の電気抵抗率が小さくなるような組成であればよく、例えば、金属粒子、ガラス、分散剤、溶媒等を含み、一定の粘度を有していることが好ましい。
上層金属層を構成する金属粒子の平均粒子径は小さいほうが好ましく、平均粒子径が0.1μm以上3μm以下のものがより好ましい。
金属粒子の平均粒子径が小さい程、抵抗電極層との接触面積が多くなり、また、低温でも焼結が進みやすい。
上層電極ペーストを構成する金属粒子及びガラスは、本発明の積層セラミックコンデンサにおいて説明した上層電極層を構成する材料と同様のものを好適に用いることができる。
【0079】
上層電極ペーストを構成する金属粒子は、扁平形状の金属粒子を含むことが好ましい。扁平形状の金属粒子を含むことで、積層体の稜線部近傍に形成された抵抗電極層を覆う上層電極層の厚さを厚くすることができるため、積層セラミックコンデンサの抵抗値が設計値からばらつくことを抑制できる。
【0080】
抵抗電極層上に上層電極ペーストを塗布する方法は特に限定されないが、抵抗電極層が形成されている積層体の端面(又は側面)を上層電極層となる上層電極ペーストに含浸させる方法や印刷などの方法が挙げられる。
【0081】
上層電極ペースト又は上層電極ペーストをシート状に加工したものを第2の焼成工程により焼成することにより、抵抗電極層上に上層電極層が形成される。
第2の焼成工程における最高温度は、特に限定されないが600℃以上700℃以下であることが好ましく、第2の焼成工程における最高温度が、第1の焼成工程における最高温度よりも低いことがより好ましい。第2の工程における最高温度が第1の焼成工程における最高温度よりも高いと、一旦形成された抵抗電極層が第2の焼成工程により劣化してしまうおそれがある。
【0082】
以上の工程により、露出領域を覆う抵抗付外部電極が形成される。
なお、抵抗付外部電極の最外層である上層電極層上にさらに、めっき層を形成してもよい。めっき層を形成することにより、ハンダ濡れ性が向上し、積層セラミックコンデンサの実装が容易となる。めっき層の組成は特に限定されないが、Ni/Snめっきであることが好ましい。
また上層電極層上にめっき層を形成する際には、上層電極層の表面にブラスト処理等の粗面化処理を施してもよい。粗面化処理を施すことで、めっき付き性が向上する。
【0083】
本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法において、被覆工程は、さらに第2の被覆工程を備えていてもよい。
第2の被覆工程は、内部電極層が露出している露出領域に対して、内部電極層上に低抵抗外部電極を直接形成する工程である。
例えば、積層体形成工程において、第1の内部電極層が露出する第1の露出領域及び第1の露出領域と対向する第2の露出領域、並びに、第2の内部電極層が露出する第3の露出領域及び上記第3の露出領域と対向する第4の露出領域を有する積層体を形成した場合、被覆工程は、該積層体の第1の露出領域及び第2の露出領域を覆うように抵抗付外部電極を形成する第1の被覆工程に加えて、第3の露出領域及び第4の露出領域に露出する第2の内部電極層に直接、低抵抗外部電極を形成する第2の被覆工程を備えていてもよい。
【0084】
第2の被覆工程としては、例えば、内部電極層が露出した露出領域に対して、導電性ペーストを塗布し、焼成する方法が挙げられる。
第2の被覆工程に用いることのできる導電性ペーストとしては、第1の被覆工程において用いる上層電極ペーストを好適に用いることができる。
内部電極層が露出した露出領域の表面に上層電極ペーストを塗布した後、第3の焼成工程を行うことで、内部電極層が露出した露出領域の表面に低抵抗外部電極を直接形成することができる。
第3の焼成工程の最高温度は特に限定されないが、第2の焼成工程の最高温度よりも高いことが好ましい。
低抵抗外部電極の表面には、必要に応じて、めっき層を形成してもよい。めっき層を形成することにより、ハンダ濡れ性が向上し、積層セラミックコンデンサの実装が容易となる。めっき層の組成は特に限定されないが、Ni/Snめっきであることが好ましい。
【0085】
第1の被覆工程及び第2の被覆工程の順序は特に限定されず、第1の被覆工程を先に行ってもよく、第2の被覆工程を先に行ってもよく、第1の被覆工程の最中に第2の被覆工程の一部を行ってもよく、第2の被覆工程の最中に第1の被覆工程の一部を行ってもよい。
ただし、形成される電極の緻密性及び焼成温度を考慮すると、第2の被覆工程を先に行うことが好ましい。
【実施例】
【0086】
以下、本発明の積層セラミックコンデンサをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0087】
(実施例1)
(積層体の作製)
セラミック原料としてのBaTiO
3に、ポリビニルブチラール系バインダ、可塑剤及び有機溶剤としてのエタノールを加え、これらをボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを作製した。次いで、このセラミックスラリーをリップ方式によりシート成形し、矩形のセラミックグリーンシートを得た。次に、上記セラミックグリーンシート上に、Niを含有する導電性ペーストをスクリーン印刷し、Niを主成分とする内部電極パターンを形成した。次に、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを、内部電極層の引き出されている側が互い違いになるように複数枚積層し、コンデンサ本体となるべき生の積層シートを得た。次に、この生の積層シートを、加圧成形し、ダイシングにより分割してチップを得た。得られたチップをN
2雰囲気中にて1200℃で加熱して、バインダを燃焼させた後、H
2、N
2及びH
2Oガスを含む還元性雰囲気中において焼成し、焼結した積層体を得た。積層体の構造は、複数のセラミック層と複数の内部電極層を有する構造である。積層体の寸法は、L方向0.92mm×W方向0.55mm×T方向0.39mmであった。L方向の端面である第1の端面及び第2の端面には第1の内部電極層が露出する露出領域が形成されており、W方向の端面である第1の側面及び第2の側面には第2の内部電極層が露出する露出領域が形成されていた。
内部電極層の平均厚みは0.55μm、内部電極層に挟まれるセラミック層の平均厚みは0.75μmであり、内部電極の枚数は266枚であった。
【0088】
(第2の被覆工程)
第1の側面及び第2の側面に露出する第2の内部電極層の表面に対して、銅粉末を含有する導電性ペーストを塗布し、850℃で焼成することで、第1の側面及び第2の側面にそれぞれ低抵抗外部電極を形成した。
【0089】
(第1の被覆工程)
(1)薄膜電極層の作製
第1の端面及び第2の端面に対してサンドブラスト加工を行い、第1の端面及び第2の端面における内部電極層の露出度を向上させて、めっき付き性を向上させた。
その後積層体全体に対して湿式銅めっきを行い、第1の端面及び第2の端面に第1の内部電極層と直接接続された厚さ2μmの薄膜電極層を形成するとともに、第1の側面及び第2の側面の低抵抗外部電極上にめっき層を形成した。このとき、第1の端面及び第2の端面に形成された薄膜電極層の稜線部からの距離は、W方向でWギャップの0.95倍、T方向でTギャップの0.95倍であった。
(2)抵抗電極層の作製
In−Sn複合酸化物、ガラス及びNi粉末を40wt%:50wt%:10wt%の割合で混合した混合粉末を溶媒に分散させて抵抗電極ペーストを作製した。ガラスとしてはB−Si−Zn−Ba−Ca−Al系ガラスを用いた。
得られた抵抗電極ペーストを第1の端面及び第2の端面に形成された薄膜電極層を完全に覆うように、かつ、第1の端面及び第2の端面からそれぞれはみ出さないように、ディスペンサーで塗布し、770℃で焼成した。
(3)上層電極層の作製
平均粒子径1μmの銅粒子(球状粒子と扁平粒子との混合物)とガラスとの混合物を溶媒に分散させて上層電極ペーストを作製した。このとき、上層電極ペーストを焼成して得られる上層電極層の電気抵抗率が、抵抗電極ペーストを焼成して得られる抵抗電極層の電気抵抗率よりも低くなるように上層電極ペーストの組成を調整した。
ガラスとしては、抵抗電極ペーストと同様のB−Si−Zn−Ba−Ca−Al系ガラスを用いた。
得られた上層電極ペーストに第1の端面及び第2の端面を浸漬して抵抗電極層上に上層電極ペーストを塗布し、その後650℃で焼成した。形成された上層電極層の厚さは最も厚い箇所で20μmであった。
以上の手順により、第1の端面及び第2の端面を薄膜電極層、抵抗電極層及び上層電極層からなる抵抗付外部電極で覆った。
【0090】
(積層体の研磨)
この積層体を積層体よりも目の細かいメッシュの網カゴに収容した後、網カゴを回転させながら、圧力0.05MPaで20分間、ジルコニア粉を積層体にぶつけることによって研磨を行い、第1の端面及び第2の端面に形成された上層電極層の表面のガラスを除去し、めっき付き性を向上させた。
【0091】
(めっき処理)
研磨を経た積層体に対してまずNiめっきを行い、続いてSnめっきを行い、第1の端面及び第2の端面に形成された上層電極層上、並びに、第1の側面及び第2の側面に形成された低抵抗外部電極上にそれぞれ、Ni/Snめっき層を形成した。
以上の手順により、実施例1に係る積層セラミックコンデンサを得た。
なお、抵抗電極層の組成及び厚さを調整して、実施例1に係る積層セラミックコンデンサのESRを約50mΩに調整した。
【0092】
(実施例2)
第1の被覆工程の(2)抵抗電極層の作製において、抵抗導電性ペーストに第1の端面及び第2の端面を浸漬することで、第1の端面及び第2の端面からはみ出すように抵抗電極ペーストを塗布した。それ以外は実施例1と同様の手順で、実施例2に係る積層セラミックコンデンサを製造した。
【0093】
(実施例3)
第1の被覆工程の(1)薄膜電極層の作製よりも前に、第1の端面及び第2の端面の全面に触媒であるパラジウム粒子を付与し、その後薄膜電極層を形成することにより、第1の端面及び第2の端面からはみ出すように、第1の側面、第2の側面、第1の主面、第2の主面の一部に薄膜電極層を形成した。それ以外は、実施例2と同様の手順で、実施例3に係る積層セラミックコンデンサを製造した。
【0094】
(比較例1)
第1の被覆工程における(1)薄膜電極層の作製を行わず、(2)抵抗電極層の作製において用いる抵抗電極ペーストの組成を変更した。それ以外は、実施例1と同様の手順で、比較例1に係る積層セラミックコンデンサを製造した。また、(2)抵抗電極層の作製において抵抗電極ペーストの組成を変更することにより、比較例1に係る積層セラミックコンデンサのESRを約50mΩに調整した。
【0095】
(比較例2)
第1の被覆工程における(1)薄膜電極層の作製を行わず、(2)抵抗電極層の作製において用いる抵抗電極ペーストの組成を変更した。それ以外は、実施例2と同様の手順で、比較例2に係る積層セラミックコンデンサを製造した。また、(2)抵抗電極層の作製において抵抗電極ペーストの組成を変更することにより、比較例2に係る積層セラミックコンデンサのESRを約50mΩに調整した。
【0096】
(端面における抵抗付外部電極の観察)
実施例1〜3及び比較例1〜2に係る積層セラミックコンデンサの周囲を樹脂で固め、LT側面に対して研磨を行い、W方向の1/2の深さまで研磨することで、LT断面を露出させた。この研磨面に対してイオンミリングを行って研磨によるダレを除去することで、観察用の断面を得た。この観察用の断面をマイクロスコープで観察することによって、各電極層(薄膜電極層、抵抗電極層及び上層電極層)の形成されている領域を観察した。結果を表1に示す。
【0097】
(ESLの測定)
実施例1〜3及び比較例1〜2に係る積層セラミックコンデンサをそれぞれ20個ずつ準備し、これを実装基板上に実装し、ネットワークアナライザー(アジレント社製 E5071B)を用いてESLを測定し、20個の平均値を求めた。測定周波数帯域は100MHzとした。結果を表1に示す。
【0098】
(ESRの測定)
実施例1〜3及び比較例1〜2に係る積層セラミックコンデンサをそれぞれ20個ずつ準備し、LCRメータ(アジレント社製 E4980A)を用いてESRを測定し、20個の平均値及びESRのばらつき(ESR_CV)を求めた。測定条件は1MHz、0.01Vrmsとした。結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1の結果より、本発明の積層セラミックコンデンサは、ESLが低く、内部電極層と外部電極との接続性が安定していることが確認できた。また、薄膜電極層及び/又は抵抗電極層を、抵抗付外部電極を形成する積層体の面内(すなわち端面のみ)に形成することで、ESRのばらつき(ESR_CV)を抑制することができることも確認できた。
なお、実施例1〜3では薄膜電極層をめっき法により形成したが、スパッタ及び蒸着によって薄膜電極層を形成したものであっても、低ESL化及びESRのばらつきを抑制する効果がめっき法の場合と同様であることを確認した。さらに、薄膜電極層の厚さを2μmから、0.5μm、9μmにそれぞれ変更した場合であっても、低ESL化及びESRのばらつきを抑制する効果が実施例1〜3の場合(厚さ2μmの場合)と同様であることを確認した。