(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6935815
(24)【登録日】2021年8月30日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】照明撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/235 20060101AFI20210906BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20210906BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20210906BHJP
B60Q 1/24 20060101ALI20210906BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20210906BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20210906BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
H04N5/235 400
B60Q1/04 E
B60Q1/14 A
B60Q1/24 B
G08G1/16 C
H04N5/225 600
H04N5/232 290
H04N5/235 600
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-507503(P2019-507503)
(86)(22)【出願日】2018年3月5日
(86)【国際出願番号】JP2018008272
(87)【国際公開番号】WO2018173715
(87)【国際公開日】20180927
【審査請求日】2020年9月28日
(31)【優先権主張番号】特願2017-54163(P2017-54163)
(32)【優先日】2017年3月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 範秀
(72)【発明者】
【氏名】橋村 淳司
【審査官】
高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−281387(JP,A)
【文献】
特開2006−11671(JP,A)
【文献】
特開2011−258121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60Q 1/24
B60Q 1/04
B60Q 1/14
H04N 5/235
H04N 5/232
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点灯することにより照明光を被写体に向けて照射する発光部と、
前記被写体を撮像して画像データを取得する撮像素子を備えたカメラと、
前記カメラが取得した画像データを記憶するメモリーと、
前記カメラが取得した画像データを処理する画像処理部と、
前記発光部と前記カメラとを制御する制御部とを有し、
前記カメラのダイナミックレンジを超えて撮像された高輝度被写体を検出したときは、前記制御部は、所定の点灯タイミングで点灯と消灯又は減光とを繰り返すように前記発光部を制御すると共に、前記発光部が点灯したタイミングで前記被写体を撮像して第1の画像データを取得し、且つ前記発光部が消灯又は減光したタイミングで前記被写体を撮像して第2の画像データを取得するように前記カメラを制御し、
前記画像処理部は、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの差分に基づいて、前記発光部が点灯したときに撮像された被写体から前記高輝度被写体を除去又は低輝度化した第3の画像データを生成する照明撮像装置。
【請求項2】
前記発光部をヘッドライトとして兼用する車両に搭載されている請求項1に記載の照明撮像装置。
【請求項3】
前記発光部は、光源として発光ダイオードまたはレーザーダイオードを有する請求項1又は2に記載の照明撮像装置。
【請求項4】
前記発光部の光源は複数個並べて配置されており、前記光源毎に独立して点灯と消灯又は減光が可能となっている請求項3に記載の照明撮像装置。
【請求項5】
前記発光部は複数に分割された照射領域を持ち、前記第3の画像データに基づいて、分割された照射領域の少なくとも1つを選択して消灯又は減光を行う請求項1〜4のいずれかに記載の照明撮像装置。
【請求項6】
前記画像処理部と前記メモリーとは、単一のチップに組み込まれている請求項1〜5のいずれかに記載の照明撮像装置。
【請求項7】
前記発光部は、少なくとも60Hz以上の周期で点灯と消灯又は減光とを繰り返す請求項1〜6のいずれかに記載の照明撮像装置。
【請求項8】
前記カメラは、前記撮像素子の線形性を持つ領域で前記被写体を撮像するように露光時間を調整する請求項1〜7のいずれかに記載の照明撮像装置。
【請求項9】
前記カメラの撮像領域を複数に分割したときに、前記画像処理部は、分割された撮像領域から出力された画像データ毎に異なる画像処理を行う請求項1〜8のいずれかに記載の照明撮像装置。
【請求項10】
前記発光部の点灯時間をA,消灯又は減光時間をBとしたときに、A/Bは1である請求項1〜9のいずれかに記載の照明撮像装置。
【請求項11】
前記高輝度被写体が点滅光を発する場合において、前記点滅光の点滅パターンを検出するセンサを有し、前記発光部は、前記センサが検出した前記点滅パターンと異なる点灯タイミングで、点灯と消灯又は減光とを繰り返す請求項1〜10のいずれかに記載の照明撮像装置。
【請求項12】
前記点滅パターンと前記点灯タイミングは、それぞれM系列信号に応じて決定される請求項11に記載の照明撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に搭載することで安全運転に貢献できる照明撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバーの判断ミスを回避し安全運転に貢献すべく、種々の運転支援装置が開発され車両に搭載されている。一例としては、道路上の歩行者等をカメラで撮像し、その特徴量から他の物体と歩行者とを判別してアラームを発する歩行者検知装置が既に開発されている。
ところで、このような運転支援装置は常に万能というわけではなく、使用環境によっては判断ミスを生じる恐れがある。例えば、日中の太陽光や夜間の対向車のヘッドライト光などの高強度光がドライバーの目に入射したような場合など、人間の目の感度に一種の飽和状態が生じ、高強度光の周囲の物体がドライバーから見えなくなる現象が知られている。これは人間に限らず電子カメラにおいても同様であるから、それにより歩行者検知装置が歩行者を検知できなくなる恐れがある。
【0003】
このような現象が生じることを予測して、予めカメラのダイナミックレンジを大きくしたり、画像処理を駆使して高強度光の発光源付近の物体を抽出しやすくする等の工夫がなされている。
しかしながら、高強度光を受光することによって画素が飽和してしまった画像データにおいては、既に被写体情報が失われてしまうことが多いから、上述の工夫では根本的対策にならず、その効果は限定的である。一方で、撮像の際に赤外線照射を行う赤外カメラを用いれば、撮像した赤外線画像に基づきヘッドライトの可視光成分を除去可能であるものの、遠方の被写体を撮像するためには相当な強度の赤外線を照射せねばならず、そのような強力な赤外線照射装置を持つ赤外カメラを例えば車両に搭載することはコスト的に不利となる。
【0004】
これに対し特許文献1には、所定周波数の変調光を生成して、この変調光を被写体に向けて照射するための光源を含み、前記電荷蓄積型感光回路の感度の正負極性が、前記変調光に同期して反転する固体撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−93856号公報
【特許文献2】特開2002−281387号公報
【特許文献3】特開2011−209961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の固体撮像装置によれば、コンピュータ等による複雑な画像処理を必要とせずに、撮影者が望む被写体のみを画像化し、また当該被写体を強調して画像化し、さらには所望の色相のみを強調して画像化することができるとされ、また、逆光等がある場合においてもその影響を解消ないし低減して、被写体を適切に画像化することができるとされる。特許文献1の固体撮像装置は優れた機能を有するが、汎用の撮像装置に比べるとコストが高く、例えば車両に搭載する際にコスト的に不利となる。
【0007】
又、特許文献2に記載のロックイン撮像装置は、2次元配列してなるチャージフィードバック型光センサにロックイン検出機能を集積化した構成を備え、ロックインアンプ周期設定部に予め設定された複数のロックインアンプ周期の内の1つを選択してロックインアンプ周期を設定し、設定したロックインアンプ周期に同期してパルス光源を点滅するものである。パルス光源が点灯している状態で受光した奇数フレームにおける受光量を正電荷として、また偶数フレームにおける受光量を負電荷として蓄積するので、蓄積した電荷量を所定偶数フレーム分に亘って積分することで、撮像対象物のみをS/Nよく画像化することができるとされる。これにより簡単な構成で、夜間のヘッドライトに埋もれた歩行者の認識や、ノイズに埋もれやすい微弱光対象物の光検出、撮像等を行うことができると述べられている。しかしながら特許文献2のロックイン撮像装置も、汎用の撮像装置に比べるとコストが高く、例えば車両に搭載する際にコスト的に不利となる。
【0008】
これに対し特許文献3に記載の車載用撮像装置は、ヘッドライトの点滅周期に同期して、撮像素子がヘッドライト点灯時と消灯時のうち少なくとも消灯時の画像を取り込むように画像の取り込みタイミングを制御し、信号処理部が、前記取り込んだ画像から発光している被写体の判別を行い、該発光している被写体までの距離情報が所定の距離以下である場合には、警告信号を出力するものである。しかるに特許文献3に記載の車載用撮像装置は、汎用の撮像装置を用いて自発光光源である先行車両のテールランプを検知することはできるが、高強度光の周囲にあって検出しにくい物体の情報を取得するよう意図されたものではない。
【0009】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、安価でありながら、例えば夜間の対向車のヘッドライトや日中における太陽光などの高強度光が照射された環境下で、かかる高強度光の周囲の被写体情報を取得できる照明撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の照明撮像装置は、
点灯することにより照明光を被写体に向けて照射する発光部と、
前記被写体を撮像して画像データを取得する撮像素子を備えたカメラと、
前記カメラが取得した画像データを記憶するメモリーと、
前記カメラが取得した画像データを処理する画像処理部と、
前記発光部と前記カメラとを制御する制御部とを有し、
前記カメラのダイナミックレンジを超えて撮像された高輝度被写体を検出したときは、前記制御部は、所定の点灯タイミングで点灯と消灯又は減光とを繰り返すように前記発光部を制御すると共に、前記発光部が点灯したタイミングで前記被写体を撮像して第1の画像データを取得し、且つ前記発光部が消灯又は減光したタイミングで前記被写体を撮像して第2の画像データを取得するように前記カメラを制御し、
前記画像処理部は、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの差分に基づいて、前記発光部が点灯したときに撮像された被写体から前記高輝度被写体を除去又は低輝度化した第3の画像データを生成するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価でありながら、例えば夜間の対向車のヘッドライトや日中における太陽光などの高強度光が照射された環境下で、かかる高強度光の周囲の被写体情報を取得できる照明撮像装置を提供することができる。これにより、例えば歩行者等、所望の被写体のみを固有の特徴量から検出して、更に特定色の枠等で囲って強調化して表示したりすることができ、それによりドライバーに対する注意喚起などを行うことができるから、安全運転に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態にかかる照明撮像装置のブロック図である。
【
図2】ヘッドライトHLを車両前方から見た模式図である。
【
図3】照明撮像装置LCを搭載した車両VHが夜間に走行している状態を、対向車CVと被写体OBJと共に示す図である。
【
図4】(a)はヘッドライトの点灯/消灯(又は減光)タイミングを示すタイムチャートであり、(b)はカメラの撮像タイミングを示すタイムチャートである。
【
図6】(a)は対向車のヘッドライトの点灯/消灯(又は減光)タイミングを示すタイムチャートであり、(b)は自己車両のヘッドライトの点灯/消灯(又は減光)タイミングを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態にかかる照明撮像装置のブロック図である。
図1において、車両(
図3のVH)に搭載される照明撮像装置LCは、車両の前方に向けて照明光を出射する発光部であるヘッドライトHLと、ヘッドライトHLを駆動する駆動回路DRHと、車両前方の被写体を撮像するCCD又はCMOS等の撮像素子(不図示)を備えた可視光用のカメラCAと、カメラCAを駆動する駆動回路DRCと、駆動回路DRHと駆動回路DRCとを制御するコントローラーCONTと、カメラCAから出力された画像データを蓄積する画像メモリーMRと、画像データに対して画像処理を行う画像処理部である画像プロセッサーPROCとを有する。
カメラCAは、複数のフレームからなる動画を撮像できるものであると好ましい。
駆動回路DRHと駆動回路DRCとコントローラーCONTとで、制御部を構成する。
画像メモリーMRと画像プロセッサーPROCとは、単一のチップに組み込まれていると小型化が図れ、演算速度も向上するので好ましい。
【0014】
図2は、ヘッドライトHLを車両前方から見た模式図である。
ヘッドライトHLは、車体のフロント右側に配置された発光ユニットHL1と、車体のフロント左側に配置された発光ユニットHL2とを有する。
発光ユニットHL1,HL2は、それぞれn行m列で縦横に並べた発光ダイオードLd(又はレーザーダイオード)を有している。各発光ダイオードLdは、駆動回路DRHにより独立して点灯又は消灯(減光)するように制御される。
図2の例では、ハッチングで示す発光ダイオードLdは消灯され、それ以外の発光ダイオードLdは点灯している。
尚、「点灯」とは必ずしも最高照度で照明することに限られず、任意の照度の照明であって良いが、「減光」とは「点灯」に比べて照明光量が低いことをいう。又、「消灯」とは照明光量が略ゼロであることをいう。
【0015】
発光ユニットHL1,HL2に発光ダイオードLd(又はレーザーダイオード)を用いる理由は、例えば60Hz以上の周波数で点灯/消灯を行える高応答性を有しているからである。但し、このような高応答性を有する発光体であれば、これらの代わりに用いることができる。
【0016】
発光ダイオードLdの一部が消灯されたとき、それに対応する照射領域にはヘッドライトHLからの出射光が到達しないこととなる。すなわち、駆動回路DRHは、発光ダイオードLdの点灯制御を行うことで、ヘッドライトHLの分割された複数の照射領域のうち、少なくとも一部の照射領域のみに光を出射することができる。
尚、複数の照射領域を選択して照射を行う構成としては、以上に限られず、例えばヘッドライトの一部をマスクで遮光したり、アクチュエータで光軸をチルトさせたりするものもある。
【0017】
次に、照明撮像装置LCの動作について説明する。
図3を参照して、照明撮像装置LCを搭載した車両VHが夜間に単独で走行している場合、駆動回路DRHにより駆動されたヘッドライトHLは、一定光量の光LB(ハイビームでも良い)を車両前方に出射する。
このとき、道路や歩行者等の被写体OBJからの反射光は、カメラCAにより撮像され、その画像データがフレーム毎に画像メモリーMRを介して画像プロセッサーPROCに入力される。画像プロセッサーPROCは、カメラCAにより画像データを分析し、歩行者等の被写体OBJを特徴量から検出した場合には、不図示の表示装置(例えばヘッドアップディスプレイなど)を介してドライバーに報知することができる。
対向車のヘッドライトがない場合、画像プロセッサーPROCが,後述する差分などの演算制御を通さないで被写体OBJを認識するので、認識速度の点で有利となる。
【0018】
これに対し、
図3に示すように対向車CVが接近してきたものとする。
かかる場合、対向車CVのヘッドライトから出射される高強度光が、歩行者等の被写体OBJに近い場合、この高強度光を受光したカメラCAの撮像素子の画素が飽和することで、歩行者等の被写体OBJの画像を撮像できなくなる恐れがある。
そこで、本実施の形態の画像プロセッサーPROCは、以下のような制御を行う。
【0019】
画像プロセッサーPROCは、カメラCAにより1フレームの画像データを分析し、高強度光が入射したと判断した場合、コントローラーCONTに検出信号を送信する。
ここで、「高強度光」とは、カメラCAのダイナミックレンジを超えた高輝度の被写体から出射される光をいう。具体的には、1フレームの画像内において、画素に蓄積された電荷が飽和状態になることで生じる白飛びと、画素に蓄積された電荷が略ゼロの黒つぶれが同時に発生した場合において、画像プロセッサーPROCは、白飛びが発生した画素に高輝度被写体からの高強度光が入射したと判断するのである。1フレームの画像内において白飛びと黒つぶれが生じているか否かは、階調の分布を示すヒストグラムによって判断することができる。白飛びの画素が単独であるとノイズの可能性もあるので、複数個の連続した画素で白飛びが発生した場合に限り、高輝度被写体として検出するようにしても良い。
【0020】
画像プロセッサーPROCから検出信号を入力したコントローラーCONTは、駆動回路DRHを制御して、
図4の(a)に示すように、60Hz以上の周波数でヘッドライトHLに対し点灯/消灯制御を行う。但し、一点鎖線で示すように、ヘッドライトHLに対し点灯/減光制御を行っても良い。
これと同時に、コントローラーCONTは、ヘッドライトHLの点灯/消灯制御に同期して駆動回路DRCを制御し、
図4の(b)に示すように所定のタイミングで、カメラCAに撮像を行わせる。
【0021】
具体的には、
図4の時刻t1でヘッドライトHLが点灯した後、時刻t2でカメラCAの撮像を開始し、時刻t3でカメラCAの撮像を終えた後、時刻t4でヘッドライトHLが消灯(又は例えば50%以下、より好ましくは30%以下の光量に減光)し、かかる状態から、時刻t5でカメラCAの撮像を開始し、時刻t6でカメラCAの撮像を終えた後、時刻t7でヘッドライトHLが点灯する。
【0022】
以上を繰り返すのであるが、60Hz以上の高い周波数で点灯と消灯(又は減光)を繰り返すことで、ドライバーはチラつきなどの違和感を覚える恐れが少ないという利点がある。
点灯時間をA,消灯又は減光時間をBとしたときに、A/Bは1(デューティ比が1:1)であると好ましい。但し、これに限らずデューティ比は任意の値をとることができ、また時間A,Bは常に一定である必要はなく、それぞれ異なっていても良い。
この場合、例えば点灯と消灯または減光それぞれの状態での継続時間と明るさの積(積分値)が同じとなるように設定すれば、それぞれの状態で画像データ(後述する第1の画像データと第2の画像データ)を取得した際の露出を同じとする事が出来、差し引きの処理を適切に行うことができる。一方で、上記のような積を必ずしも同じにしなくても、それぞれの継続時間と明るさの積の差を考慮した差分を取り、必要に応じて重み付けなどすれば、同様の処理が可能になる場合もある。すなわち、第1の画像データと第2の画像データとを適切に得ることができれば足りる。
【0023】
近年、一般的なビデオカメラは高精細化、高感度化が進み、十分な画素数の画像を1kHz以上の極めて高いフレームレートで撮影することが可能となっている。一方、光源もLED化などの技術進歩により、高い周波数で点滅させることが可能となった。
その為、背景を除去して求める被写体のみを画像化したい場合には、求める被写体を光源によって照明し、それと同期した撮像画像をディジタルデータの形で取り込み、画像処理を介して被写体と共に画一的に画像化された背景を除去するといった処理も可能となっている。
特に、人間の目で自動車のヘッドライトの点滅が認識できると不快感を覚えることが多い為、少なくとも30Hz程度の点滅が好ましく、望ましくは60Hz以上の点滅である。ビデオカメラのフレームレートはその2倍以上であると好ましく、すなわち、60FPS以上、望ましくは120FPS以上である。
【0024】
尚、ヘッドライトの点灯と消灯(又は減光)を一定周期で単純に交互に繰り返すパターンのみでなく、所定のパターンで点灯と消灯(又は減光)を繰り返すことが望ましい場合もある。例えば対向車CVが同様の照明撮像装置を搭載していた場合、自己の車両VHのヘッドライトHLの出射光LBを検出することで、同様なヘッドライトの点滅制御を開始してしまう場合がある。かかる場合に、同じ周期でヘッドライトの点灯と消灯(又は減光)を繰り返すと、第2の画像データにおいて高輝度被写体HDを検出できなくなる恐れがある。
【0025】
このような場合、センサとして機能する画像プロセッサーPROCが、
図6の(a)に示すような対向車CVのヘッドライトの点滅パターンを検出したときは、この点滅パターンの情報を含む信号をコントローラーCONTに出力することができる。
かかる信号を入力したコントローラーCONTは、駆動回路DRHを制御して、
図6の(b)に示すように、対向車CVのヘッドライトの点滅パターンとは異なる点滅周期(点灯パターン)で、自己の車両VHのヘッドライトHLを点滅させることができる。それにより、後述する第1の画像データと第2の画像データとを適切に得ることができる。
このような自己の車両の点灯パターンと、対向車の点滅パターンとは、例えばM系列信号に応じて決定されると好ましい。或いは、ランダムなパターンでヘッドライトを点滅させることもできる。
【0026】
以上により、ヘッドライトHLの点灯中の撮像により第1の画像データが得られ、ヘッドライトHLの消灯(又は減光)中の撮像により第2の画像データが得られることとなる。画像データは、1フレームの画像に対応するものでも良いし、複数フレームからなる動画に対応するものでも良い。又、1回の点灯で1フレームの画像を形成しても良いし、複数の点灯を繰り返した後に1フレームの画像を形成することもできる。
尚、対向車CVのヘッドライト光が強すぎて、カメラCAの撮像素子においてハレーションなどの感度の飽和が起きたりするなど、感度の線形性が保たれない場合には、電子的な感度調整や、またシャッター速度を露光時間の調整を行うなどして、線形性を保つ領域で被写体を撮像することが望ましい。
【0027】
画像プロセッサーPROCは、第1の画像データに基づいて画像を生成すると、例えば
図5Aに示すものとなる。
図5Aに示す画像においては、自己の車両VHのヘッドライトHLの出射光により、対向車CVの画像と、歩行者等の被写体OBJの画像とが形成されることとなるが、対向車CVのヘッドライトに相当する高輝度被写体HDの近傍の被写体の画像は失われてしまう恐れがある。
【0028】
そこで、画像プロセッサーPROCは、第2の画像データに基づいて画像を生成すると、例えば
図5Bに示すものが得られる。
図5Bに示す画像においては、自己の車両VHのヘッドライトHLを消灯(又は減光)するので、自発光しない被写体は対向車CVのヘッドライトの影響で見えにくい状態になり、対向車CVのヘッドライトに相当する高輝度被写体HDのみが主として撮像されることとなる。
【0029】
更に、画像プロセッサーPROCは、第1の画像データと第2の画像データとの差分を取り、第3の画像データを得る。
図5Cに、第3の画像データに基づく画像を示す。
図5Cに示す画像によれば、
図5Aに示す画像から高輝度被写体HDのみを除去したものとなり、ヘッドライト以外の対向車CVの画像や、歩行者等の被写体OBJの画像を明瞭に得ることができる。
尚、高輝度被写体HDを完全に除去することなく、例えば低輝度化して白色物体画像もしくはマーキング画像に置換することもできる。
【0030】
更に、画像プロセッサーPROCは、第3の画像データに基づいて、対向車CVの固有の特徴量からフロントスクリーンの範囲を求め、或いは歩行者等の被写体OBJの固有の特徴量から顔の範囲を求めて、その範囲を示す信号をコントローラーCONTに出力することができる。
かかる信号を入力したコントローラーCONTは、駆動回路DRHを制御して、例えば対向車CVのフロントスクリーンを照射領域とする発光ダイオードLdの発光を停止(又は任意の出射光量に減光)し、或いは歩行者等の被写体OBJの顔を照射領域とする発光ダイオードLdの発光を停止(又は任意の出射光量に減光)することで、対向車CVのドライバーや歩行者が眩しさを感じないように調光制御を行うこともできる。
又、
図5Cに示す画像から歩行者等の被写体OBJの画像を検出したときは、ドライバーが視認できる不図示の表示装置において、検出した被写体OBJを赤枠で囲ったり色づけするなどして強調処理を行いつつ表示することで、ドライバーの注意を喚起することもできる。
【0031】
対向車CVが通り過ぎた場合、カメラCAに高強度光が入射しなくなるので、画像プロセッサーPROCから出力される非検出信号に基づいて、コントローラーCONTはヘッドライトHLが連続点灯するように駆動回路DRHの制御を切り替えることとなる。
【0032】
例えば、信号機などを人間の目で観察した際に、残像により信号灯が点灯し続けているように見えるが、実際には一定の周波数(50Hzまたは60Hz)で点滅を繰り返している。この周波数にカメラCAの撮像タイミングが一致すると、カメラCAから出力される画像データ中で信号灯の光の情報が失われてしまう恐れがある。
【0033】
かかる場合、道路に対する信号機の位置が予め決まっていることを利用して、或いは信号機の特徴量に基づいて信号機の信号灯を含む撮像領域Xを決定し、この撮像領域Xから出力された画像データと、それ以外の撮像領域Yから出力された画像データとで、画像プロセッサーPROCの画像処理を異ならせることもできる。具体的には、複数回の撮像で1枚のフレームを形成することを前提とするが、まずコントローラーCONTが、少なくともヘッドライトHLの点滅を信号機の点滅周波数と異ならせるように制御を行った後、上述のようにして、カメラCAの全画素から画像データを取得するが、撮像領域X,Y毎に画像データを分けて画像メモリーMRに記憶する。更に、信号機を含まない撮像領域Yからの画像データについては、画像プロセッサーPROCが上述と同様の画像処理を行うことで、高輝度被写体の排除を行う。一方、信号灯を含む撮像領域Xから出力された画像データについては、画像プロセッサーPROCが信号機の消灯タイミングと一致する撮像による画像データを間引いて画像処理を行う。この場合には、合成後の1フレームの画像に一体感を与えるため、撮像領域X,Y毎にゲインを変更することが望ましい。その後、画像処理された双方の画像データを合成すれば、例えば対向車のヘッドライトの光を消しつつ、信号灯の光を残存させた画像を得ることができる。これにより、不図示の表示装置を介して前方の信号灯の色を、ドライバーに情報として伝達できる。
【0034】
本発明は、明細書に記載の実施例に限定されるものではなく、他の実施例・変形例を含むことは、本明細書に記載された実施例や思想から本分野の当業者にとって明らかである。
例えば、本発明の照明撮像装置は、自動車のみならず重機や作業機械の他、飛行機や船舶にも用いることが出来る。又、本発明が対象とする高輝度被写体としては、対向車のヘッドライトに限らず、西日などの太陽光であっても良い。
又、上記実施の形態では、発光部を車両のヘッドライトと兼用しているが、照明撮像装置に専用の発光部を設けても良いし、或いはロードランプ、フォグランプ、デイタイムランニングランプ、シグネチャーランプなどの補助ランプと兼用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば車両に搭載することで安全運転に貢献できる照明撮像装置を提供することに適している。
【符号の説明】
【0036】
CA カメラ
CONT コントローラー
CV 対向車
DRC 駆動回路
DRH 駆動回路
HD 高輝度被写体
HL ヘッドライト
HL1,HL2 発光ユニット
LB 出射光
LC 照明撮像装置
Ld 発光ダイオード
MR 画像メモリー
OBJ 被写体
PROC 画像プロセッサー
VH 車両