特許第6935862号(P6935862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6935862
(24)【登録日】2021年8月30日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】自動魚釣りシステム及び自動魚釣り方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 79/00 20060101AFI20210906BHJP
【FI】
   A01K79/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-128578(P2017-128578)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-10043(P2019-10043A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151944
【氏名又は名称】株式会社東和電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】浜出 雄一
(72)【発明者】
【氏名】三木 智宏
【審査官】 佐藤 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−087864(JP,A)
【文献】 特開平02−138930(JP,A)
【文献】 特開平10−178992(JP,A)
【文献】 特開2007−104978(JP,A)
【文献】 米国特許第05581930(US,A)
【文献】 ルール・マナー 広島県 大竹市 阿多田 海上釣堀 大漁丸,2017年06月29日,第2頁:マナーの項,https://web.archive.org/web/20170629060810/http://tairyoumaru.blog2.fc2.com/blog-category-6.html
【文献】 海上釣堀の基本タックルと仕掛け,2017年04月29日,第4頁,https://web.archive.org/web/20170429180938/http://success-angler.com/turibori/tackle.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 79/00
A01K 89/00
A01K 91/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸を巻設し、巻下げ方向及び巻上げ方向に回転可能な回転ドラムと、該回転ドラムを巻下げ方向又は巻上げ方向に駆動する駆動モータと、前記駆動モータの回転を前記回転ドラムに伝達する電磁クラッチとを各々が具備している複数の釣り機と、
前記複数の釣り機のいずれかに魚が掛かったことを常に検出している釣獲検出手段と、
前記釣獲検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の釣り機の動作を制御する釣り機制御手段とを備えており、
前記複数の釣り機の各々は、前記回転ドラムの回転速度及び回転方向を検出するための回転検出手段とをさらに備え、
前記釣獲検出手段は、前記回転検出手段の検出結果に基づいて、前記回転ドラムが巻下げ方向の回転である場合の前記釣り糸の単位時間当たりに繰り出された距離を算出する繰り出し距離算出手段を備え、該繰り出し距離算出手段により算出された単位時間当たりに繰り出された距離が予め設定された値以上となった場合に魚が掛かったと検知するように構成されて、
前記釣り機制御手段は、前記釣獲検出手段により前記複数の釣り機のいずれかに魚が掛かったことが検出された場合は直ちに魚が掛かっていない釣り機の回転ドラムを巻上げ方向に回転させ、釣り針を海面又は海面近傍まで巻上げるように制御することを特徴とする自動魚釣りシステム。
【請求項2】
釣り糸を巻設し、巻下げ方向及び巻上げ方向に回転可能な回転ドラムと、該回転ドラムを巻下げ方向又は巻上げ方向に駆動する駆動モータと、前記駆動モータの回転を前記回転ドラムに伝達する電磁クラッチとを各々が具備している複数の釣り機を制御する自動魚釣り方法であって、
前記回転ドラムの回転速度及び回転方向を検出し、
前記回転ドラムの回転速度及び回転方向の検出結果に基づいて、前記回転ドラムが巻下げ方向の回転である場合の単位時間当たりに繰り出された距離を算出し、該算出結果に基づいて、前記単位時間当たりに繰り出された距離が予め設定された値以上となった場合に魚が掛かったと検知し、
前記複数の釣り機のいずれかに魚が掛かったことが検出された場合、魚が掛かっていない釣り機の回転ドラムを巻上げ方向に回転させ、釣り針を海面又は海面近傍まで巻上げるように制御することを特徴とする自動魚釣り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船上に搭載され、釣り糸を巻き上げ・巻き下げする回転ドラムを各々が有する複数の釣り機を備える自動魚釣りシステム及び自動魚釣り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の釣り機を搭載している漁船において、一部の釣り機に魚が掛かった場合に、釣り糸や釣り針の絡み防止のために他の釣り機の制御を迅速に行う必要性が生じてきている。例えば、複数の釣り機のうちの一台に魚が掛かった場合に、従来は、乗船員が魚の掛かっていない釣り機のところへ走って行き、この釣り機の動作を停止させ、巻き上げ動作をさせて、釣り糸及び釣り針を海中から出す作業を行わねばならなかった。この作業を行わないと、掛かった魚が海中で走り回った場合に、図9に示すように、魚の掛かっていない他の釣り機の釣り糸及び釣り針に絡む(おまつりする)可能性があり、最悪の場合、掛かった魚を逃がした上に魚の掛かっていない釣り機の漁具(釣り糸、釣り針等)を損傷するおそれがあった。さらに、魚とのやり取りが始まった時にあわてて船内を走り回ることは危険であり、仮に別の人手があったとしても、他の作業(餌取りや船内作業)合の妨げになる可能性があった。ましてや、魚の掛かっていない釣り機が多数ある場合、それらを全て迅速に巻き上げ処理することは非常に困難であった。
【0003】
一方、複数の釣り機を漁船上に設置し、これら複数の釣り機の動作を集中制御装置によって制御する自動魚釣り装置が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されている自動魚釣り装置は、本願の出願人によって提案されたものであり、漁船上に設置された複数の釣り機を複数のグループに分け、集中制御装置によって、各グループの釣り機による釣り針の動作を互いに同期させることにより魚の群れ(魚層)を水面から一定の水深下の誘導水深に誘き寄せようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−289935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、複数の釣り機を搭載した従来の漁船においては、一部の釣り機に魚が掛かった場合に、釣り糸や釣り針の絡み防止のための他の釣り機の制御が全く行われていなかった。
【0006】
特許文献1に記載された自動魚釣り装置は、複数の釣り機を集中制御するものであるが、複数の釣り機による釣り針の水深を互いに同期させることにより魚層を誘導するものであり、魚が掛かった際に釣り機の制御を行うものではなかった。
【0007】
従って、本発明は従来技術の上述した問題点を解消するものであり、その目的は、船上に搭載された複数の釣り機を集中制御し、魚が掛かっている場合、互いの釣り糸及び釣り針の絡みを迅速に防ぐことができる自動魚釣りシステム及び自動魚釣り方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、自動魚釣りシステムは、釣り糸を巻設し、巻下げ方向及び巻上げ方向に回転可能な回転ドラムと、回転ドラムを巻下げ方向又は巻上げ方向に駆動する駆動モータと、駆動モータの回転を回転ドラムに伝達する電磁クラッチとを各々が具備している複数の釣り機と、複数の釣り機のいずれかに魚が掛かったことを常に検出している釣獲検出手段と、釣獲検出手段の検出結果に基づいて、複数の釣り機の動作を制御する釣り機制御手段とを備えている。釣り機制御手段は、釣獲検出手段により複数の釣り機のいずれかに魚が掛かったことが検出された場合は直ちに魚が掛かっていない釣り機の回転ドラムを巻上げ方向に回転させ、釣り針を海面又は海面近傍まで巻上げるように制御する。
【0009】
複数の釣り機のいずれかに魚が掛かったことが検出された場合は直ちに魚が掛かっていない釣り機の回転ドラムを巻上げ方向に回転させ、釣り針を海面又は海面近傍まで巻上げるようにすることにより、掛かった魚は海中で走り回った場合に、他の魚の掛かっていない釣り機の釣り糸及び釣り針に絡む(おまつりする)ことを迅速に防ぐことができ、絡むことによって掛かった魚を逃がしたり、魚の掛かっていない釣り機の漁具(釣り糸、釣り針等)を損傷するというリスクを自動的に防止することができる。もちろん、魚の掛かっていない釣り機を乗船員が手動で操作する必要がないため、乗務員の安全性を高めることができ、また、魚の掛かっていない釣り機が多数ある場合にもそれらの釣り糸及び釣り針を全て迅速に巻き上げ処理することができる。
【0010】
複数の釣り機の各々は、回転ドラムの回転速度及び回転方向を検出するための回転検出手段をさらに備え、釣獲検出手段は、回転検出手段の検出結果に基づいて、回転ドラムが巻下げ方向の回転である場合の釣り糸の単位時間当たりに繰り出された距離を算出する繰り出し距離算出手段を備え、繰り出し距離算出手段により算出された単位時間当たりに繰り出された距離が予め設定された値以上となった場合に魚が掛かったと検知するように構成されていることが好ましい。
【0011】
複数の釣り機の各々は、駆動モータの電流を検出するための電流検出手段をさらに備え、回転ドラムの巻き上げ動作時に、釣獲検出手段は、電流検出手段の検出結果に基づいて、駆動モータの電流が予め設定された値以上となった場合に魚が掛かったと検知するように構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、さらに、釣り糸を巻設し、巻下げ方向及び巻上げ方向に回転可能な回転ドラムと、回転ドラムを巻下げ方向又は巻上げ方向に駆動する駆動モータと、駆動モータの回転を回転ドラムに伝達する電磁クラッチとを各々が具備している複数の釣り機を制御する自動魚釣り方法であって、複数の釣り機のいずれかに魚が掛かったことが検出された場合、魚が掛かっていない釣り機の回転ドラムを巻上げ方向に回転させ、釣り針を海面又は海面近傍まで巻上げるように自動魚釣り方法が提供される。
【0013】
回転ドラムの回転速度及び回転方向を検出し、回転ドラムの回転速度及び回転方向の検出結果に基づいて、回転ドラムが巻下げ方向の回転である場合の単位時間当たりに繰り出された距離を算出し、算出結果に基づいて、単位時間当たりに繰り出された距離が予め設定された値以上となった場合に魚が掛かったと検知するように構成されていることが好ましい。
【0014】
回転ドラムの巻き上げ動作時に、駆動モータの電流を検出し、検出された駆動モータの電流が予め設定された値以上となった場合に魚が掛かったと検知するように構成されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の釣り機のいずれかに魚が掛かったことが検出された場合は直ちに魚が掛かっていない釣り機の回転ドラムを巻上げ方向に回転させ、釣り針を海面又は海面近傍まで巻上げるようにすることにより、掛かった魚は海中で走り回った場合に、他の魚の掛かっていない釣り機の釣り糸及び釣り針に絡む(おまつりする)ことを迅速に防ぐことができ、絡むことによって掛かった魚を逃がしたり、魚の掛かっていない釣り機の漁具(釣り糸、釣り針等)を損傷するというリスクを自動的に防止することができる。もちろん、魚の掛かっていない釣り機を乗船員が手動で操作する必要がないため、乗務員の安全性を高めることができ、また、魚の掛かっていない釣り機が多数ある場合にもそれらの釣り糸及び釣り針を全て迅速に巻き上げ処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態における自動魚釣りシステムの構成を概略的に示す船上における配置の平面図である。
図2図1の自動魚釣りシステムの動作状態例を概略的に示す図である。
図3図1の自動魚釣りシステムにおける釣り機の構成を概略的に示す正面図及び側面図である。
図4】釣り機の内部構造を概略的に示す正面図である。
図5】釣り機の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
図6図1の自動魚釣りシステムにおいて釣り糸の繰り出し距離に基づいて釣獲を検出する動作を示すフローチャートである。
図7図1の自動魚釣りシステムにおいて釣獲(魚が掛かったこと)を検出した際の制御動作を示すフローチャートである。
図8図1の自動魚釣りシステムにおいて釣獲を検出した際の釣り機における処理動作を示すフローチャートである。
図9】従来の複数の魚釣り機を用いて、魚釣りを行う際の動作状態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る自動魚釣りシステム及び釣り機の制御方法の実施形態を、図を参照して説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態における自動魚釣りシステム1000の構成を示しており、図2はこの自動魚釣りシステム1000の動作状態例を示している。図2(a)は1つの釣り機に魚が掛かっていることが検出されて他の釣り機100が巻き上げを開始した状態を示しており、図2(b)はその他の釣り機100が釣り針を海面まで巻き上げた状態示している。ただし、図2においては、各釣り機100の片側の回転ドラム30のみが表されている。図3及び図4はこの自動魚釣りシステム1000における釣り機100の構成を示しており、図5はこの釣り機100の電気的構成を示している。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る自動魚釣りシステム1000は、漁船1に搭載された複数の釣り機100と、魚が掛かったことを常に検出している釣獲検出手段200と、釣獲検出手段200が魚の掛かったことを検出した場合に直ちに複数の釣り機100の動作を制御する釣り機制御手段としての集中制御装置300とを備えている。
【0020】
図3及び図4に示すように、釣り機100は、釣り機本体10と、ドラム取付け軸20と、このドラム取付け軸15を介して釣り機本体10に取付けられた1対の回転ドラム30と、1対の釣り糸40と、1対の錘50とを備えている。
【0021】
図4に示すように、釣り機本体10は、ハウシング11と、ハウシング11の内部に配置され、図3に示す回転ドラム30を駆動する駆動モータ12と、駆動モータ12の回転を回転ドラムに伝達する電磁クラッチ13と、回転ドラム30の回転速度及び回転方向を検出する回転検出器(回転検出手段)14と、回転検出器14の検出結果に基づいて駆動モータ12及び電磁クラッチ13を制御する図5に示す制御部15とを備えている。
【0022】
ハウジング11には、図3(a)に示すように、制御部15の操作パネルが取付けられており、この操作パネルには入力部15a、表示部15b及び電源スイッチ15c等が設けられている。
【0023】
駆動モータ12は、図4に示すように、ハウシング11の下部に設置され、この駆動モータ12の駆動力が電磁クラッチ13及び伝動ギアを介してドラム取付け軸20及び可動軸17に伝達される。可動軸17はドラム取付け軸20を左右に振りながら回転するように構成されている。また、回転検出器14はチェーン16を介して可動軸17に連結される。
【0024】
電磁クラッチ13としては、例えばパウダークラッチが用いられている。パウダークラッチは、駆動側の回転子と被駆動側の回転子との間に細かな鉄粉が充填され、これら回転子部分を外部から電磁石によって磁化できるように構成されている。クラッチが切れた状態では回転子同士が直接的に接触していないため、通常は動力の伝達が行われないが、回転子が磁化されると回転子の間隙にパウダー(細かな鉄粉)が吸い寄せられこの間隙が埋められるので、動力が伝達される仕組みである。このタイプのクラッチでは回転子部分に印加する磁力を調節することで伝達する連結トルクを細かく可変制御できる。なお、電磁クラッチ13は、パウダークラッチに限定されるものではなく、同様の機能を有するものであれば良い。
【0025】
回転検出器14は、回転ドラム30の回転速度及び回転方向を検出するための回転検出器としてのロータリエンコーダである。
【0026】
図5に示すように、制御部15は、キーボード又は液晶タッチパネル等からなる入力部15aと、液晶ディスプレイ又は液晶タッチパネル等からなる表示部15bと、CPU15cと、ROM15dと、RAM15eと、回転検出器14の出力信号から回転ドラム30の回転速度を算出する回転速度算出手段15fと、回転検出器14の出力信号から、回転ドラム30が巻上げ方向の回転(正回転)であるか巻下げ方向の回転(逆回転)であるかという、回転ドラム30の回転方向を判別する回転方向判別手段15gと、回転方向判別手段15gにより回転ドラム30が巻下げ方向の回転になったと判別された場合、回転速度算出手段15fから得られた回転速度に基づいて、回転速度を所定の回転速度に保つために必要とされる電磁クラッチ13への印加電圧の変更分を算出する印加電圧変更分算出手段15hと、予め設定された印加電圧に対して印加電圧変更分算出手段15hにより算出された印加電圧の変更分を増加又は減少させて印加電圧を調整する印加電圧調整手段15iと、釣り糸の単位時間当たりに繰り出された距離を算出する繰り出し距離算出手段15jとを備えている。
【0027】
CPU15cは、ROM15dに格納された制御プログラムに従って、RAM15eをワークエリアとして使用しながら、釣り機100の全体の動作を制御する。
【0028】
印加電圧変更分算出手段15hは、回転ドラム30が逆回転になったと判断される場合、得られた回転速度に基づいて、釣り糸の巻下げ速度を所定値に保つために必要とされる電磁クラッチ13への印加電圧の変更分を算出するように構成されている。例えば、印加電圧変更分算出手段15hは、回転速度算出手段15fから得られた回転速度とこの回転速度に対応する所定の定数との積を電磁クラッチ13への印加電圧の変更分として算出するようになされる。
【0029】
印加電圧調整手段15iは、電磁クラッチ13を駆動するための所定の電圧設定値(又は巻上力設定値)に、印加電圧変更分算出手段15hが算出した印加電圧の変更分を加算又は減算して得られる印加電圧を電磁クラッチ13に印加する。
【0030】
繰り出し距離算出手段15jは、回転検出器14の検出結果に基づいて、回転ドラムが巻下げ方向に回転する場合、釣り糸の単位時間当たりに繰り出された距離を算出するようになされる。
【0031】
制御部15は、回転方向判別手段15gにより回転ドラム30が巻下げ方向に回転していると判別された場合であって、回転速度算出手段15fから得られた回転速度が所定の回転速度未満の場合は、駆動モータ12により回転ドラム30を巻下げ方向に駆動し、回転ドラム30の回転速度が所定の回転速度以上となった場合は、駆動モータ12を停止するように制御する。また、制御部15は、回転ドラム30が巻下げ方向に回転していると判別された場合であって、回転ドラム30の回転速度が所定の回転速度未満の場合は、電磁クラッチ13を連結し、回転ドラム30の回転速度が所定の回転速度以上となった場合は、電磁クラッチ13の連結を解除するように制御する。さらに、制御部15は、釣獲検出手段200により釣獲(魚が掛かったこと)を検知した場合、その検知結果を直ちに集中制御装置300に送信する。
【0032】
また、制御部15は、電磁クラッチ13の連結トルクをクラッチ補助動作モードの連結トルクに自動で設定可能である。クラッチ補助動作モードの連結トルクの設定は、後述するように制御部15が自動的に行っても良いし、操作者が手動で行っても良い。手動で行う場合、回転ドラム30が巻き下げ方向に回転するように駆動モータ12を回転させた状態で、電磁クラッチ13の連結トルクをゼロから徐々に上げ、回転ドラム30が回転し始めた際のトルク値をクラッチ補助動作モード用連結トルクとして電磁クラッチ13に設定する。
【0033】
図3及び図4に示すドラム取付け軸20は、釣り機本体10のハウシング11を挿通するように設けられている。ドラム取付け軸20の両端には、それぞれ回転ドラム30が装着されている。
【0034】
回転ドラム30は、本実施形態では、釣り糸が巻回されている巻き取り部31の軸断面形状が円形のドラムである。これら回転ドラム30が釣り機本体10によって、適宜の方向に回転駆動されることにより、釣り糸40が巻上げ又は巻下げされる。釣り糸40には、枝針や連結針のような疑似餌付の釣り針が取り付けられている。また、釣り糸40の先端に錘50が取付けられている。
【0035】
本実施形態における釣獲検出手段200は、回転検出手段としての回転検出器14と、回転速度算出手段15fと、回転方向判別手段15gと、繰り出し距離算出手段15jとから構成されている。繰り出し距離算出手段15jは、回転方向判別手段15g及び回転速度算出手段15fの処理結果に基づいて、回転ドラム30が巻下げ方向に回転していると判別された場合、釣り糸40が魚により引っ張られて単位時間当たりに繰り出された距離を算出する。繰り出し距離算出手段15jにより算出された単位時間当たりに繰り出された距離を予め設定された設定値と比較して、算出された単位時間当たりに繰り出された距離が予め設定された値以上となった場合、直ちに、釣獲があった(魚が掛かった)として検知するように構成されている。そして、釣獲検知信号を集中制御装置300に送信する。なお、本実施形態において、設定値(単位時間当たりに繰り出された距離)は、回転ドラム30の各動作モード(停止時、シャクリ動作時、巻き上げ動作時、及び繰り出し動作時)に対して、同一値を用いたが、これに限定されるものではない。回転ドラム30の動作モードによって異なる値(例えば、停止時は小さめの値、巻き上げ動作時は大きめの値)を用いるようにしても良い。
【0036】
集中制御装置300は、入力手段と、記録手段と、データ処理手段と、制御手段と、表示手段と、送信手段と、受信手段と、出力手段とを備えるコンピュータから構成されている。制御手段は、魚が掛かった釣り機100の釣獲検出手段200から送られた釣獲検知信号を受信した場合は、魚が掛かっていない釣り機100の動作を一旦停止させ、さらに、これらの釣り機100の回転ドラム30を巻上げ方向に回転させ、釣り針を海面又は海面近傍(釣り針が魚の掛かった釣り機の釣り糸又は釣り針とおまつりしない位置)まで巻上げるように制御する。
【0037】
次に、図面を参照しながら、自動魚釣りシステム1000における制御方法について説明する。図6は釣り糸40の繰り出し距離に基づいて釣獲を検出する際の動作を示しており、図7は釣獲を検出した際、集中制御装置300の制御動作を示しており、図8は釣獲を検出した際、釣り機100における処理(歯止め処理)の動作を示している。
【0038】
図6に示すように、釣り糸40の単位時間あたりの繰り出し距離に基づいて、常に釣獲を検出する際に、まず、回転ドラム30が繰り出し方向に回転したか否かを判断する(ステップS11)。ここで、回転ドラム30が繰り出し方向に回転したと判断された場合(YESの場合)は、ステップS12で、単位時間当たりの繰り出し距離が設定値より大きいであるか否かを判断する。ステップS12において、単位時間当たりの繰り出し距離が設定値より大きいと判断された場合(YESの場合)は、釣獲検知フラグをONにし、集中制御装置300に送信する(ステップS13)。そして、釣獲検出動作を終了する。
【0039】
次に、複数(1、2・・・N)の釣り機100を有する自動魚釣りシステム1000において釣獲を検出した際、集中制御装置300の制御動作を説明する。図7に示すように、まず、釣獲を検出した際に、他の釣り機100に対して歯止めを行う歯止めモード(動作を一旦停止、そして釣り針を海面まで巻上げる)であるか否かを判断する(ステップS21)。歯止めモードであると判断された場合は、ステップS22で、1号機が釣獲検知フラグがONであるか否かを判断する。1号機が釣獲検知フラグがONであると判断された場合は、ステップS25へ進む。一方、1号機が釣獲検知フラグがONではないと判断された場合は、ステップS23で、2号機が釣獲検知フラグがONであるか否かを判断する。2号機が釣獲検知フラグがONであると判断された場合は、ステップS25へ進む。一方、2号機が釣獲検知フラグがONではないと判断された場合は、ステップS24で、N号機が釣獲検知フラグがONであると判断された場合は、ステップS25へ進む。一方、N号機が釣獲検知フラグがONではないと判断された場合は、処理動作を終了する。ステップS22、S23又はS24で釣獲検知フラグがONであると判断された場合は、ステップS25で、釣獲を検出した釣り機100以外の他の釣り機100に対して歯止め指令を行う。
【0040】
次に、自動魚釣りシステム1000において釣獲を検出した際、釣り機100における歯止め処理の動作を説明する。図8に示すように、釣り機100において、集中制御装置300からの歯止め指示があったか否かを判断する(ステップS31)。ステップS31において、歯止め指示があったと判断された場合(YESの場合)は、駆動モータ12を制御して回転ドラム30に巻き上げ動作を行わせる(ステップS32)。次いで、釣り針の現在水深=0か否かを判断する(ステップS33)。ステップS33において、釣り針の現在水深=0ではないと判断された場合(NOの場合)は、繰り返しこの判断を行う。一方、ステップS33において、釣り針の現在水深=0と判断された場合(YESの場合)は、回転ドラム30の回転を停止させる(ステップS34)。以上で歯止め指令による動作を終了する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の自動魚釣りシステム1000は、複数の釣り機100と、魚が掛かったことを常に検出している釣獲検出手段200と、釣獲検出手段の検出結果に基づいて、複数の釣り機100の動作を制御する釣り機制御手段としての集中制御装置300とを備えている。集中制御装置300は、釣獲検出手段により複数の釣り機100のいずれかに魚が掛かったことが検出された場合は直ちに他の魚が掛かっていない釣り機100の回転ドラム30を巻上げ方向に回転させ、釣り針を海面又は海面近傍(釣り針が魚の掛かった釣り機の釣り糸又は釣り針とおまつりしない位置)まで巻上げるように制御する。
【0042】
これにより、掛かった魚は海中で走り回った場合に、他の魚の掛かっていない釣り機100の釣り糸40及び釣り針に引っ掛かって絡むことを防ぐことができ(図2(b)参照)、絡むことにより掛かった魚を逃がし、さらに魚の掛かっていない釣り機100の漁具(釣り糸、釣り針等)を損傷するというリスクを自動的に防止することができる。もちろん、魚の掛かっていない釣り機を乗船員が手動で操作する必要がないため、乗務員の安全性を高めることができ、また、魚の掛かっていない釣り機が多数ある場合にもそれらの釣り糸及び釣り針を全て迅速に巻き上げ処理することができる。
【0043】
また、釣獲検出手段200は、回転検出器14の検出結果に基づいて、釣り糸40の単位時間当たりに繰り出された距離を算出する繰り出し距離算出手段15jを備え、繰り出し距離算出手段15jにより算出された単位時間当たりに繰り出された距離が予め設定された値以上となった場合、釣獲として直ちに検知するように構成されていることで、迅速な自動制御を容易に実現できる。
【0044】
なお、上述した実施形態の釣り機100においては、釣り糸40の単位時間当たりに繰り出された距離を算出する繰り出し距離算出手段15jを有し、繰り出し距離算出手段15jにより算出された単位時間当たりに繰り出された距離が予め設定された値以上となった場合、釣獲として検知する構成例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複数の釣り機100の各々には、駆動モータの電流を検出するための電流検出手段を設け、回転ドラム30の巻き上げ動作時に、電流検出手段の検出結果に基づいて、駆動モータ12の電流が予め設定された値以上となった場合、釣獲として検知するように構成されても良い。この場合、回転ドラム30の停止時の釣獲検出は、単位時間当たりに繰り出された距離で検知する。
【0045】
また、上述した実施形態の釣り機100は、魚釣り機の例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、イカ釣り機にも本発明を適用できる。
【0046】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、漁船に限らず、遊漁船や個人の船舶において、複数の釣り機で魚釣りを行う場合に利用可能であり、釣り機同士の釣り糸及び釣り針のおまつりを自動的に防止することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 漁船
10 釣り機本体
11 ハウシング
12 駆動モータ
13 電磁クラッチ
14 回転検出器
15 制御部
15a 入力部
15b 表示部
15c CPU
15d ROM
15e RAM
15f 回転速度算出手段
15g 回転方向判別手段
15h 印加電圧変更分算出手段
15i 印加電圧調整手段
15j 繰り出し距離算出手段
20 ドラム取付け軸
30 回転ドラム
40 釣り糸
50 錘
100 釣り機
200 釣獲検出手段
300 集中制御装置
1000 自動魚釣りシステム
図1
図2
図3
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図9