(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の昇降装置は、前部のキャスターは自在車輪であり、後部のキャスターは固定車輪である。この場合、旋回(方向転換)時には、後部のキャスターの左右の中央近傍を中心に旋回する。すなわち、後部のキャスターの左右の中央近傍と前端部までの長さを旋回半径として必要とする。このため、狭小な場所での旋回が困難であった。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、容易に取り回すことができる昇降装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の昇降装置は、フレーム、クローラ、及び旋回ユニットを備えている。フレームは駆動ユニットを組み込んでいる。クローラはフレームの左右側方に一対設けられており、駆動ユニットにより駆動される。旋回ユニットは車輪を有している。車輪は、昇降装置の左右に延びて前後方向に直交する回転軸周りに回転自在に支持されつつ回転軸に沿って並んで配されている。また、車輪は、平地を走行する状態におけるクローラの下面よりも下方に位置する突出状態と、側面視においてクローラの外周面内側に位置する収納状態との間を移動自在に設けられている。そして、昇降装置は、旋回時には、車輪を突出状態にすることにより旋回ユニットを利用して旋回する。
【0007】
このような構成により、本発明の昇降装置は、突出状態にある車輪を軸にしてクローラを浮き上がらせることができる。このため、車輪のみを接地させた状態で、車輪の中央近傍を中心に容易に旋回することができる。
【0008】
したがって、本発明の昇降装置は、容易に取り回すことができる。
【0009】
本発明の昇降装置は、ハンドルを備え
ている。ハンドルは昇降装置の後部に配されている。また、旋回ユニットは操作レバーを有し
ている。操作レバーは、ハンドルの前方で前後方向に移動自在に設けられ、前方に移動させることにより車輪を突出状態から収納状態に切り替えるとともに、後方に移動させることにより車輪を収納状態から突出状態に切り替える。この
ため、ハンドルの後方に位置する作業者が、操作レバーを後方に引っ張る操作を行うことにより車輪を突出状態にすることができる。また、操作レバーを前方に押し込む操作を行うことにより車輪を収納状態にすることができる。このように、突出状態と収納状態の切り替え作業を容易に行うことができる。
【0010】
本発明の昇降装置において、旋回ユニットは、下端部に車輪、上端部に操作レバーが夫々配されるとともに、これら車輪と操作レバーの間に配された左右方向に延びて前後方向に直交する回動軸周りに回動自在にフレームに支持され
ている。また、昇降装置は付勢部材を備え
ている。付勢部材は、フレームと旋回ユニットとの間に配置され、車輪が収納状態の位置から突出状態の位置に移動する方向への付勢力を旋回ユニットに付与する。この
ため、車輪を突出状態にする際には、操作レバーに付勢部材の付勢力が補助的に作用する。このため、より小さな力で車輪を突出状態にすることができる。
【0011】
本発明の昇降装置は緩衝部材を備え
ている。緩衝部材は、フレームと旋回ユニットとの間に配置され、車輪が突出状態の位置から収納状態の位置に移動する時に、旋回ユニットに減衰力を作用させる。この
ため、車輪を収納状態にする際の衝撃を緩和することができる。車輪が突出状態にて接地している場合、複数の車輪には昇降装置の荷重がかかっている。すなわち、昇降装置の落下を車輪で支持している。この状態から収納状態にすると、昇降装置にかかる重力が作用し、収納状態の位置に向かって車輪が付勢される。しかし、緩衝部材を備えることで、この付勢力に抗することができ、衝撃を緩和することができる。
【0012】
本発明の昇降装置は、フレームの上方に配されて積載物を載置する荷台を備え得る。そして、車輪は、突出状態において、荷台に積載物を載置した状態且つ平地に置かれた状態にあるときには、全体の重心の位置よりも後方に位置し得る。この場合、接地した状態の車輪とクローラの前部との間に重心が位置するので、平地に置かれた状態を安定して維持することができる。また、ハンドルを下方に押さえることで車輪を軸に装置前部を容易に持ち上げることができるので、旋回可能な状態に容易に移行することができる。
【0013】
本発明の昇降装置において、車輪は、突出状態において、荷台に積載物を載置した状態且つ旋回可能な状態にあるときには、全体の重心の鉛直下方近傍に位置し得る。この場合、重心位置が車輪の遠方に位置する場合と比較して旋回時の慣性モーメントが小さくなるので、より容易に旋回することができる。また、車輪の鉛直上方に装置全体の重心が位置するのでバランスを取りやすく、旋回可能な状態である車輪のみが接地した状態を容易に維持することができる。
【0014】
本発明の昇降装置は、車輪を照らす照明を備え得る。この場合、夜間や暗所の作業においても、車輪が突出状態及び収納状態のどちらかの状態に確実にあるか否かを容易に視認することができる。
【0015】
本発明の昇降装置において、車輪は複数設けられており、これら複数の車輪のうち両端に位置する車輪同士の間隔は、全体の幅の0.25倍〜0.5倍であり得る。この場合、旋回可能な状態における左右方向の傾きを好適に抑制することができ、安定して旋回させることができる。また、各車輪の旋回中心までの距離、すなわち各車輪の旋回半径は、装置全体の旋回半径よりも抑えられるので、旋回性能の向上を図ることができる。このように、旋回性能と旋回安定性を両立させた昇降装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の昇降装置を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、前後の方向については、階段を下降移動する際の進行方向(
図1では、左方)を昇降装置の前方、上昇移動する際の進行方向(
図1では、右方)を昇降装置の後方と定義する。また、上下方向については、
図1及び
図3に表わされる上下の方向をそのまま昇降装置の上下方向と定義する。
【0018】
<実施形態1>
実施形態1の昇降装置1は、階段を昇降する装置である。昇降装置1は、
図1〜
図3に示すように、フレーム10、クローラ20、旋回ユニット30、荷台40、ハンドル50、及び支持部材(本発明に係る付勢部材及び緩衝部材として例示する。)60を備えている。
【0019】
フレーム10は、
図1〜
図3に示すように、水平部10A、傾斜部10B、モータ取付部10C、クローラガイド部10D、前方軸受部10E、後方軸受部10F、及びハンドル支持部10Gを有している。また、フレーム10には駆動ユニット11が組み込まれている。
【0020】
水平部10Aは、前後方向に延びる部材を左右に平行に配して設けられている。傾斜部10Bは、水平部10Aの後端から後方側斜め上方に延びて形成されている。モータ取付部10Cは、水平部10Aの前端部上方に設けられており、後述する駆動ユニット11のモータ11Aが取り付けられている。クローラガイド部10Dは水平部10A及び傾斜部10Bの左右側方に一対設けられている。クローラガイド部10Dは、下方に開口するとともに前後方向に延びる溝が形成されている。
図1に示すように、クローラガイド部10Dは、側面視において水平部10A及び傾斜部10Bの延びる方向に沿って延びて形成されている。前方軸受部10Eは水平部10Aの左右方向両端部の前端から前方に延びて設けられている。前方軸受部10Eは、後述する駆動ユニット11の駆動軸11Bを軸支する。後方軸受部10Fは傾斜部10Bの左右方向両端部の後端から傾斜部10Bの延びる方向に沿って斜め上方に延びて形成されている。後方軸受部10Fは後述する従動ユニット12の従動軸12Aを軸支する。ハンドル支持部10Gは傾斜部10Bの上端部上方に設けられており、後述するハンドル50の下端部を支持する。
【0021】
図1及び
図2に示すように、駆動ユニット11は、モータ11A、駆動軸11B、及び駆動プーリ11Cを有している。モータ11Aはクローラ20の駆動源であり、図示しないバッテリによって駆動される。駆動軸11Bはフレーム10の前方軸受部10Eに軸支されている。駆動軸11Bはスプロケット及びチェーンによりモータ11Aの動力が伝達されて回転する。駆動プーリ11Cはクローラ20が掛け回される歯付プーリである。また、
図1及び
図3に示すように、フレーム10には従動ユニット12が組み込まれている。従動ユニット12は従動軸12A及び従動プーリ12Bを有している。従動軸12Aはフレーム10の後方軸受部10Fに軸支されている。従動プーリ12Bはクローラ20が掛け回されている。
【0022】
クローラ20はフレーム10の左右側方に一対設けられて駆動ユニット11により駆動される。
図1に示すように、クローラ20は側面視において略三角形の環状をなして、駆動プーリ11C、従動プーリ12B及びクローラガイド部10Dに掛け回されている。クローラ20はゴムクローラである。クローラ20は、その裏面に所定間隔の複数の歯が設けられており、これらの歯が駆動プーリ11Cの歯と噛み合ってモータ11Aの動力が伝達されて駆動される。また、クローラ20の表面(階段昇降時に階段に接触する面)には波状の起伏が形成されている。
図4に示すように、クローラ20は、階段S昇降時には、クローラガイド部10Dによりガイドされる側(
図1に示す下側)の部位において階段Sの角部に当接する。この状態で駆動ユニット11を作動させて一対のクローラ20を駆動することにより、昇降装置1は、クローラガイド部10Dがクローラ20の裏面上を摺動して階段Sを昇降する。各クローラ20は、階段Sを昇降する際に接地面となる部位が、階段Sの少なくとも2つ以上の角部に跨る長さで掛け回されている。
【0023】
旋回ユニット30は車輪31を有している。本実施形態では、旋回ユニット30は2つの車輪31を有している。各車輪31は、前後方向に直交する方向(
図2及び
図3の左右方向)に延びる回転軸A1周りに回転自在に支持されつつ、回転軸A1の延びる方向に沿って並んで配されている。
図2及び
図3に示すように、これら2つの車輪31同士の間隔Dは、昇降装置1の左右幅Wの1/3程度とされている。車輪31は、平地を走行する状態におけるクローラ20の下端よりも下方に位置する突出状態と、側面視においてクローラ20の外周面内側に位置する収納状態との間を移動自在に設けられている。また、旋回ユニット30は操作レバー32を有している。操作レバー32は、前後方向に移動自在にハンドル50の前方に設けられている。操作レバー32は、前方に移動させることにより車輪31を突出状態から収納状態に切り替え、後方に移動させることにより車輪31を収納状態から突出状態に切り替える。
【0024】
本実施形態において、旋回ユニット30は、
図5に示す回動軸A2周りに回動自在にフレーム10に支持されている。詳細には、
図5に示すように、旋回ユニット30は、後述する荷台40の載置面部41を介してフレーム10に支持されている。回動軸A2は、前後方向に直交する方向に延びる軸であり、回転軸A1に平行な軸である。旋回ユニット30は、この回動軸A2を挟んで、下端部に車輪31、上端部に操作レバー32を夫々配して設けられている。このため、旋回ユニット30は、操作レバー32を前後方向に移動操作することにより、車輪31を含むその全体が回動軸A2周りに回動する。旋回ユニット30は、この回動により、車輪31の突出状態と収納状態とを切り替える。
【0025】
また、
図5に示すように、旋回ユニット30は第1ロック機構33を有している。第1ロック機構33は、車輪31を収納状態でロックする。具体的には、第1ロック機構33は、第1係止部33A及び第1被係止部33Bを具備している。第1係止部33Aは操作レバー32の上端と下端の間に設けられている。第1被係止部33Bは後述する荷台40の側部に設けられている。第1ロック機構33は、操作レバー32を前方に移動させ、第1係止部33Aに第1被係止部33Bを係止することによりロック状態とされる。操作レバー32は、第1ロック機構33のロック状態において前方に移動した状態が保持される。そして、旋回ユニット30は、操作レバー32が前方に移動した状態が保持されることにより、車輪31の収納状態がロックされる。本実施形態では、第1ロック機構33として、車両の扉などに使用されるロック機構と同様のロック機構を採用している。第1係止部33AはU字状の切欠きを形成しており、第1被係止部33Bは断面円形状の環状の受け金具であり、これらは第1係止部33Aの切欠きに第1被係止部33Bを径方向から差し込むことにより係止される。なお、第1係止部33Aと第1被係止部33Bの係止の解除は、
図5に示す解除レバー33Cを操作することによりなされる。
【0026】
また、
図5に示すように、旋回ユニット30は第2ロック機構34を有している。第2ロック機構34は、車輪31を突出状態でロックする。第2ロック機構34は、第1ロック機構33の第1係止部33A及び第1被係止部33Bと同様の第2係止部34A及び第2被係止部34Bを具備している。第2係止部34Aは後述するハンドル50の把持部51下方に設けられており、第2被係止部34Bは操作レバー32の上端部に設けられている。第2ロック機構34は、操作レバー32を後方に移動させ、第2係止部34Aに第2被係止部34Bを係止することによりロック状態とされる。操作レバー32は、第2ロック機構34のロック状態において後方に移動した状態が保持される。そして、旋回ユニット30は、操作レバー32が後方に移動した状態が保持されることにより、車輪31の突出状態がロックされる。第2係止部34Aと第2被係止部34Bの係止の解除は、
図5に示す解除レバー34Cを操作することによりなされる。
【0027】
荷台40は、フレーム10の上方に配されて積載物Bを載置する。
図1に示すように、荷台40は載置面部41及び下部受部42を有している。載置面部41は下端部から上端部に向かって後方斜め上方に延びて設けられている。載置面部41は、その下端部がフレーム10の水平部10Aに支持されるとともに、上端部がフレーム10の傾斜部10Bに支持されており、側面視において傾斜部10Bに略平行な角度で傾斜して設けられている。下部受部42は、載置面部41の下端から前方斜め上方に延びて設けられている。荷台40は、これら載置面部41及び下部受部42により、側面視略L字形状に形成されている。下部受部42は、載置面部41に積載物Bが載置されたときに積載物Bの下部を受ける。なお、本実施形態1に係る昇降装置1は、積載物Bとしてポリタンクを搭載する。
図1に示すように、載置面部41及び下部受部42の間には、1段あたり2つの20リッターポリタンクを載置可能な2段棚43が取り付けられており、荷台40には最大4つのポリタンクを載置可能である。
【0028】
ハンドル50は昇降装置1の後部に配されている。本実施形態では、ハンドル50は荷台から後方に延びて形成されている。詳細には、
図1に示すように、ハンドル50は、下端が荷台40の載置面部41の上端部に回動自在に連結され、後方斜め上方に延びて形成されている。ハンドル50の上端には左右外側方向に略水平に延びる2つの把持部51が設けられている。2つの把持部51は、操縦者が把持して進行方向の変更や旋回等の操縦が行う部位である。把持部51の左右内側端部には、駆動ユニット11の駆動を操作する操作スイッチ51Aが設けられている。操作スイッチ51Aは、2つの把持部51の夫々に設けられている。また、ハンドル50には、下端部から分岐してフレーム10のハンドル支持部10Gに連結される角度調整部52が設けられている。角度調整部52は、ハンドル支持部10Gとの連結長さを調整することによりハンドル50の全体をハンドル50の下端部を中心に回動させてハンドル50の角度調整をすることができる。
【0029】
操作スイッチ51Aは、押圧状態を解除すると自動的に初期状態に回復する所謂モーメンタリ動作式の押ボタンスイッチを採用している。操作スイッチ51Aは、図示しない制御部に電気的に接続されている。制御部では、2つの操作スイッチ51Aを同時に押圧操作することにより駆動ユニット11のモータ11Aを作動させるとともに、この状態でどちらか一方の操作スイッチ51Aの押圧状態を解除してもモータ11Aが作動した状態を継続させ、2つの操作スイッチ51Aの押圧状態を解除することによりモータ11Aを停止させる制御を行う。
【0030】
支持部材60は、フレーム10と旋回ユニット30との間に伸縮自在に配置されている。本実施形態において、支持部材60は油圧ダンパであり、伸長時には圧縮ガスのガス圧により付勢力を作用させつつ伸長し、収縮時には作動油の流体抵抗による減衰力を作用させつつ収縮する。支持部材60は、一端が荷台40に取着されている。すなわち、支持部材60の一端は、荷台40を介してフレーム10に取り付けられている。また、支持部材60の他端は旋回ユニット30の操作レバー32に取着されている。そして、支持部材60は、車輪31が収納状態の位置から突出状態の位置に移動する方向への付勢力を旋回ユニット30に付与している。具体的には、支持部材60は、フレーム10に固定支持された荷台40と旋回ユニット30の操作レバー32との間に配置されており、操作レバー32が後方に移動する方向への付勢力を付与している。この付勢力により、旋回ユニット30は、回動軸A2周りに回動する付勢力が付与されている。そして、この付勢力は、車輪31が収納状態の位置から突出状態の位置に移動する方向への付勢力である。また、支持部材60は、車輪31が突出状態の位置から収納状態の位置に移動する時には減衰力を作用させる。具体的には、支持部材60は、操作レバー32が前方に移動する時に収縮して減衰力を作用させる。
【0031】
また、昇降装置1は照明71,72を備えている。照明71は、
図2に示すように、フレーム10の後部に設けられている。詳細には、照明71は、左右の傾斜部10Bの上端部に設けられて前方斜め下方に向けて光を照射し、車輪31を照らす。この照明71により、車輪31が突出状態又は収納状態のどちらかの状態に確実に切り替えられているか否かを操縦者に認識させることができる。また、照明71は、傾斜部10Bの上端から前方斜め後方に向けて光を照射しているので、操縦者の足元前方を照らすことができる。照明71は、左右方向に並んで配された複数のLED光源を有して構成されている。照明72はフレーム10の側部に設けられている。詳細には、照明72は、
図1に示すように、水平部10Aの側部に設けられて荷台40を固定する左右一対の固定プレート10Hに夫々取り付けられている。照明72は側方斜め下方に向けて光を照射し、昇降装置1の周辺部の左右を照らす。照明72は前後方向に並んで配された複数のLED光源を有して構成されている。
【0032】
次に、上記構成を有する昇降装置1の作用について説明する。
昇降装置1は、階段を昇降する際には、一対のクローラ20にて走行する。階段を昇降させるにあたっては、最初に、旋回ユニット30の車輪31を突出状態から収納状態に切り替える。詳細には、
図5に示すように、まず、解除レバー34Cを操作して第2ロック機構34のロックを解除する。この時、昇降装置1にかかる重力が車輪31を収納状態の位置へ付勢する力として作用するが、支持部材60の付勢力と減衰力が作用することにより、車輪31の収納状態の方向への急激な移動、換言すると、昇降装置1の急激な落下が緩和される。そして、操作レバー32を前方に移動させる。この時、操作レバー32を、第1係止部33Aが第1被係止部33Bに係止するまで確実に前方に移動させる。第1係止部33Aと第1被係止部33Bとを係止させることで第1ロック機構33がロックされ、車輪31の収納状態が確実にロックされる。
【0033】
次に、駆動ユニット11を作動させる。具体的には、2つの操作スイッチ51Aを押圧操作する。駆動ユニット11は、2つの操作スイッチ51Aの両方が同時に押圧状態とされたときに駆動を開始するので、一方の操作スイッチ51Aのみが意図せず押圧状態になったとしても、不意に駆動してしまうことが防止される。このようにして駆動ユニット11を作動させると、クローラ20が回転する。そして、一対のクローラ20が階段Sの角部に当接すると、
図4に示すように、階段Sの角部に沿って進行して階段Sを昇降する。この時、2つの操作スイッチ51Aのどちらか一方の押圧操作を解除しても駆動ユニット11の駆動は保持される。このため、階段昇降中の操縦が容易である。昇降が完了し、クローラ20の回転を停止させるには、2つの操作スイッチ51Aの押圧操作を両方とも解除する。これにより、駆動ユニット11が停止する。
【0034】
また、階段の踊り場などの狭小な場所で旋回(方向転換)を行う場合には、昇降装置1は旋回ユニット30の車輪31にて旋回する。すなわち、昇降装置1は、旋回時には、車輪31を突出状態にして接地させることにより旋回する。車輪31を収納状態から突出状態に切り替えるには、まず、解除レバー33Cを操作して第1ロック機構33によるロックを解除する。そして、操作レバー32を後方側(ハンドル50側)に移動させる(
図5参照)。この時、操作レバー32を、第2被係止部34Bが第2係止部34Aに係止されるまで確実に後方に移動させる。第2係止部34Aと第2被係止部34Bとを係止させることで第2ロック機構34がロックされ、車輪31の突出状態が確実にロックされる。また、この時、付勢部材としての支持部材60が伸長することにより、車輪31を突出状態の位置に移動させる方向への付勢力が作用するので切り替えが容易である。
【0035】
また、
図6に示すように、荷台40に積載物を載置した状態且つ平地に置かれた状態において、突出状態となった車輪31は、昇降装置1全体の重心Gの位置よりも後方に位置している。換言すると、この状態における昇降装置1の重心Gは、車輪31と、昇降装置1の前端との間に位置している。これにより、昇降装置1は、接地した車輪31とクローラ20の前端部との間に重心Gが位置し、安定した状態で静止することができる。
【0036】
次に、ハンドル50の把持部51を把持して下方に押し下げ、車輪31を軸にして昇降装置1の前部を持ち上げる。これにより、
図7に示すように、前端部が浮き上がり、突出状態の車輪31のみが接地した旋回可能な状態となる。この状態でハンドル50を左右に動かすことにより、昇降装置1は2つの車輪31の中間位置を中心に旋回することができる。この時、2つの車輪31の間隔Dを全体の幅Wの1/3としたことにより、左右方向の傾きが好適に抑制され、クローラ20が接地してしまうことなく好適に旋回することができる。
【0037】
また、昇降装置1の前部を持ち上げた時、重心Gの位置は、車輪31を軸に回動する。本実施形態の昇降装置1は、これにより重心Gが車輪31の上方へと移動する。すなわち、重心Gの鉛直下方近傍に車輪31が位置する。このため、昇降装置1の前部を浮かせた状態を維持するための大きな力を必要とせず、前後の傾きの制御も容易である。
【0038】
以上説明したように、昇降装置1は、フレーム10、クローラ20、及び旋回ユニット30を備えている。フレーム10は駆動ユニット11を組み込んでいる。クローラ20はフレーム10の左右側方に一対設けられており、駆動ユニット11により駆動される。旋回ユニット30は車輪31を有している。車輪31は、昇降装置1の左右に延びて前後方向に直交する回転軸A1周りに回転自在に支持されつつ回転軸A1に沿って並んで配されている。また、車輪31は、平地を走行する状態におけるクローラ20の下面よりも下方に位置する突出状態と、側面視においてクローラ20の外周面内側に位置する収納状態との間を移動自在に設けられている。そして、昇降装置1は、旋回時には、車輪31を突出状態にすることにより旋回ユニット30を利用して旋回する。
【0039】
このような構成により、昇降装置1は、突出状態にある車輪31を軸にしてクローラ20を浮き上がらせることができる。このため、車輪31のみを接地させた状態で、車輪31の中央近傍を中心に容易に旋回することができる。
【0040】
したがって、昇降装置1は、容易に取り回すことができる。
【0041】
また、昇降装置1は、後部にハンドル50を備えている。また、旋回ユニット30は操作レバー32を有している。操作レバー32は、ハンドル50の前方で前後方向に移動自在に設けられ、前方に移動させることにより車輪31を突出状態から収納状態に切り替えるとともに、後方に移動させることにより車輪31を収納状態から突出状態に切り替える。このため、ハンドル50の後方に位置する作業者が、操作レバー32を後方に引っ張る操作を行うことにより車輪31を突出状態にすることができる。また、操作レバー32を前方に押し込む操作を行うことにより車輪31を収納状態にすることができる。このように、突出状態と収納状態の切り替え作業を容易に行うことができる。
【0042】
また、昇降装置1は、旋回ユニット30が下端部に車輪31、上端部に操作レバー32を夫々配しているとともに、これら車輪31と操作レバー32の間に配された左右方向に延びて前後方向に直交する回動軸A2周りに回動自在にフレーム10に支持されている。また、昇降装置1は付勢部材としての支持部材60を備えている。支持部材60は、フレーム10と旋回ユニット30との間に配置され、車輪31が収納状態の位置から突出状態の位置に移動する方向への付勢力を旋回ユニット30に付与する。このため、車輪31を突出状態にする際には、操作レバー32に支持部材による付勢力が補助的に作用する。この付勢力は、昇降装置1全体の傾き(前後方向)に関わらず作用する。これにより、より小さな力で車輪31を突出状態にすることができる。
【0043】
また、昇降装置1は緩衝部材としての支持部材60を備えている。支持部材60は、フレーム10と旋回ユニット30との間に配置され、車輪31が突出状態の位置から収納状態の位置に移動する時に、旋回ユニット30に減衰力を作用させる。このため、車輪31を収納状態にする際の衝撃を緩和することができる。車輪31が突出状態にて接地している場合、車輪31には昇降装置1全体の荷重がかかっている。すなわち、昇降装置1の落下を車輪31で支持している。この状態から収納状態にすると、昇降装置1にかかる重力が作用し、収納状態の位置に向かって車輪31が付勢される。しかし、支持部材60の減衰力によりこの付勢力に抗することができ、衝撃を緩和することができる。
【0044】
また、昇降装置1は、フレーム10の上方に配されて積載物Bを載置する荷台40を備えている。そして、突出状態において、荷台40に積載物Bを載置した状態且つ平地に置かれた状態にあるときには、車輪31が昇降装置1全体の重心Gの位置よりも後方に位置している。このため、接地した状態の車輪31とクローラ20の前部との間に重心Gが位置するので、平地に置かれた状態を安定して維持することができる。また、ハンドル50を下方に押さえることで車輪31を軸に昇降装置1の前部を容易に持ち上げることができるので、旋回可能な状態に容易に移行することができる。
【0045】
また、昇降装置1は、突出状態において、荷台40に積載物Bを載置した状態且つ旋回可能な状態にあるときには、車輪31が昇降装置1全体の重心Gの鉛直下方近傍に位置している。このため、重心Gの位置が車輪31の遠方に位置する場合と比較して旋回時の慣性モーメントが小さくなるので、より容易に旋回することができる。また、車輪31の鉛直上方に昇降装置1全体の重心Gが位置するのでバランスを取りやすく、旋回可能な状態である車輪31のみが接地した状態を容易に維持することができる。
【0046】
また、昇降装置1は、車輪31を照らす照明71を備えている。このため、夜間や暗所の作業においても、車輪31が突出状態及び収納状態のどちらかの状態に確実にあるか否かを容易に視認することができる。
【0047】
また、昇降装置1は、車輪31は2つ設けられており、これら2つの車輪31同士の間隔Dが、全体の幅Wの約1/3とされている。このため、旋回可能な状態における左右方向の傾きを好適に抑制することができ、安定して旋回させることができる。また、各車輪31の旋回中心までの距離、すなわち各車輪31の旋回半径は、昇降装置1全体の旋回半径よりも抑えられるので、旋回性能の向上を図ることができる。このように、旋回性能と旋回安定性を両立させた昇降装置1を実現することができる。
【0048】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態1に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1では、車輪が所定の回動軸周りに回動することにより突出状態と収納状態とが切り替えられる形態を例示したが、これは必須ではない。車輪が突出状態と収納状態とに切り替えられる形態は特に限定されず、例えば、車輪が上下方向に直線的に移動することにより切り替えられる形態等であってもよい。
(2)実施形態1では、旋回ユニットが、車輪の突出状態と収納状態を切り替える操作レバーを有する形態を例示したが、これは必須ではない。車輪の突出状態と収納状態とを切り替えるための構成は特に限定されない。
(3)実施形態1では、車輪が収納状態の位置から突出状態の位置に移動する方向への付勢力を旋回ユニットに付与する付勢部材としての支持部材を備える形態を例示したが、これは必須ではない。付勢部材を備える場合、付勢部材の種類やそれによる付勢力の付与形態等は特に限定されない。
(4)実施形態1では、車輪が突出状態の位置から収納状態の位置に移動する時に減衰力を作用させる緩衝部材としての支持部材を備える形態を例示したが、これは必須ではない。緩衝部材を備える場合、緩衝部材の種類やそれにより減衰力を作用させる形態等は特に限定されない。
(5)実施形態1では、荷台に積載物を載置した状態且つ平地に置かれた状態における車輪が、突出状態において全体の重心の位置よりも後方に位置する形態を例示したが、これは必須ではない。
(6)実施形態1では、荷台に積載物を載置した状態且つ旋回可能な状態における車輪が、突出状態において全体の重心の位置の鉛直下方近傍にある形態を例示したが、これは必須ではない。
(7)実施形態1では、車輪を照らす照明を備える形態を例示したが、これは必須ではない。
(8)実施形態1では、車輪が複数(2つ)設けられており、複数の車輪のうち両端に位置する車輪の間隔を昇降装置全体の幅の1/3程度とする形態を例示したが、これは必須ではない。この間隔は、装置全体の幅の0.25倍〜0.5倍であることができ、好ましくは、0.3倍〜0.35倍である。これらの場合、車輪により旋回を行う際の昇降装置の左右方向の傾きを好適に抑制することができる。
(9)実施形態1では、車輪の数を2つとしたが、1つ又は3つ以上であってもよい。
(10)実施形態1では、クローラとしてゴムクローラを例示したが、金属製のクローラ等の他の材料を用いたクローラやそれらの材料の組み合わせにより形成されたクローラを採用してもよい。
(11)実施形態1では、クローラを、階段を昇降する際に接地面となる部位が階段の少なくとも2つ以上の角部に跨がる長さでクローラガイド部に掛け回す形態を例示したが、昇降時の安定性の観点では、階段の3つ以上の角部に跨がる長さであることが好ましい。