特許第6935962号(P6935962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6935962繊維強化プラスチック用溶接棒、及び繊維強化プラスチック用溶接棒を使用する溶接方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6935962
(24)【登録日】2021年8月30日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチック用溶接棒、及び繊維強化プラスチック用溶接棒を使用する溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/12 20060101AFI20210906BHJP
【FI】
   B29C65/12
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2021-70277(P2021-70277)
(22)【出願日】2021年4月19日
【審査請求日】2021年4月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521167062
【氏名又は名称】川本化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】川本 淳生
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−056583(JP,A)
【文献】 特開平11−335653(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第01132766(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00− 65/82
B29C 70/00− 70/88
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の溶接継手に充填され、前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材と同時に溶接棒も溶融する、熱風又は熱板部材の加熱手段により溶融可能な繊維強化プラスチック用溶接棒であって、繊維と熱可塑性樹脂との混合物を棒状に形成し、前記繊維の含有量を、前記混合物を100重量%としたときの1重量%以上〜35重量%以下とすることを特徴とする熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒。
【請求項2】
前記繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維及びセルロースナノファイバーの内のいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒。
【請求項3】
熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の溶接方法であって、母材である熱可塑性繊維強化プラスチック部材の熱可塑性樹脂とアンカーリング効果を生ずる熱可塑性樹脂を含有し、繊維の含有量を1重量%以上〜35重量%以下とする熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒を選択する溶接棒選択ステップと、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒の先端部を、母材である熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の継手部の接合面に適度の押付力で当て、熱風又は熱板部材の加熱手段により前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒及び前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材がそれぞれ含有する熱可塑性樹脂のみを溶融させて、前記継手部の接合面を溶融した熱可塑性樹脂及び溶融していない繊維で充填させながら、かつ前記継手部に沿って前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒の先端部を前記継手部の接合面に押付ながら移動する溶接ステップと、を備えることを特徴とする熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒を使用する溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維及びセルロースナノファイバー等のうちの同一繊維が含有された繊維強化プラスチック部材同士の溶接に使用される繊維強化プラスチック用溶接棒、及び繊維強化プラスチック用溶接棒を使用した溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維を含有したプラスチックの接合法には、一般的に、射出成形や機械加工された、天然樹脂や合成樹脂のプラスチックを、締付等による機械的方法、ゴム系等の接着剤による接着法、超音波や摩擦等の溶着による溶着法があり、前記溶着法には、熱源として超音波、高周波又はレーザー等による波動を熱源とするもの、摩擦熱等による摩擦を熱源とするもの、あるいは、熱風又は熱板による外部加熱を熱源とするものがある。
【0003】
そして、天然樹脂や合成樹脂のプラスチック同士の溶接は、一般的に前記プラスチックと同一組成の溶接棒を用いて、前記溶接棒の下端を継手部の接合面に適する押付力をかけて当てながら、熱風を熱源として前記溶接棒を溶融させて前記継手部の接合面に充填しながら進行させて溶接している。
【0004】
一方、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維又はセルロースナノファイバー等の繊維強化プラスチック部材同士の固定は、接着法や、締付等による機械的固定化が一般的に行われ、溶接は実務では実施されていなかった。
【0005】
炭素繊維強化プラスチックの溶接としては、特許文献1には、波長が532nmから1080nmの固体レーザーを用いて、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)同士または炭素繊維強化プラスチック(CFRP)と金属との溶接継手の接合部に溶加材を充填し、該溶加材にレーザービームを照射して該溶加材を溶融しつつレーザー溶接する繊維強化複合材料のレーザー溶接法であって、前記溶加材は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物のうちのいずれか一に、強化炭素繊維、強化ガラスおよびウイスカーの群から選ばれる1種以上を含む強化材を、該溶加材を100重量%として80重量%未満含有する繊維強化複合材料のレーザー溶接方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、プライマーを用いた2つのポリアミドプラスチックの溶接方法であって、プライマーは少なくとも1つの無水マレイン酸または無水マレイン酸誘導体から合成された少なくとも1つのポリマーを含有する、シーム溶接方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、繊維強化プラスチック溶接部における樹脂を溶解除去して強化用繊維を夫々露出させ、その繊維露出空間に別の補強用繊維を充填し、そのあと、またはその繊維同士を溶接したあと、溶融樹脂を前記空間に注入し、凝固させて繊維強化プラスチックを固定させる繊維強化プラスチックの溶接方法が開示されている。
【0008】
特許文献4には、ノズル部に設けられた溶接素材供給管から第1の溶接素材を供給するとともに、気体供給部からセラミックヒーターが内蔵された熱風供給管に気体を供給して前記セラミックヒーターにより前記気体を加熱し熱風とし、前記熱風を前記熱風供給管に接続された熱風放出管に送り出し、前記ノズル部に設けられ前記熱風放出管に接続された熱風導入管に導入し、前記ノズル部に設けられたローラにより前記第1の溶接素材を先端部から後端部まで長さ方向に前記熱風を噴射することにより加熱、押圧して軟化、焼成し、次いで前記ローラを前記第1の溶接素材の先端部に戻した後前記第1の溶接素材の上に幅方向が一部重なり合うように第2の溶接素材を供給し、前記第1の溶接素材と前記第2の溶接素材の重なり合う部分を前記熱風を噴射することにより溶融しながら前記ノズル部に設けられたローラにより前記第1の溶接素材と前記第2の溶接素材の重なり合う部分の先端部から後端部まで長さ方向に圧力を付加して前記第1の溶接素材と前記第2の溶接素材の重なり合う部分を圧着して一体化させ、前記ノズル部に設けられた冷却管から冷却風を供給して前記第1の溶接素材と前記第2の溶接素材の重なり合う部分を冷却する、樹脂、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、又は炭素素材の溶接方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5523260号公報
【特許文献2】特表2018−535850号公報
【特許文献3】特公昭51−1266号公報
【特許文献4】特許第5883235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の発明は、溶加材にレーザービームを照射して溶融させており、一般的にレーザービームは1mm以下のスポットに照射することから、特許文献1に記載されているように、レーザー加工により寸法精度の高い開先形状にしなければならないことや、開先形状を直線状継手ではなく嵌合可能なファスナー状のモザイク継手にしなければならないという問題、さらにレーザー溶接設備は高価であるという問題があり、実用的でないという問題があった。
【0011】
特許文献2の発明は、特許文献2の明細書に記載されているようにシーム溶接を前提にしていることから、シーム溶接設備に不適な起伏のある継手、又は、左右方向に細かい曲線が続く継手には適用できず使用範囲が限定されるため実用的でないという問題があった。
【0012】
特許文献3の発明は、母材の樹脂を溶かし、別の補強繊維を充填し、溶融樹脂を注入するという極めて煩わしい溶接方法であるため実用的でないという問題があった。
【0013】
特許文献4の発明は、特許文献4の段落0034に溶接棒は被溶接材と同種のものを使用すると記載され、段落0035に炭素繊維の場合はこれらの繊維を溶接するためには800〜2000℃程度に温度を上げなければ溶接できないと記載されている。作業者が2000℃の高温に加熱した部位の溶接作業をするのは困難であるため、量産に向く溶接自動化設備にしかできず、個別生産に多い手作業溶接には向かないという問題があった。
【0014】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、作業者による溶接作業であっても繊維強化プラスチック部材同士の溶接を可能にでき、さらに開先形状がいずれの形状の継手であっても溶接でき、安価な設備である熱風等の加温手段で溶融でき、プラスチック製品としての溶接強度が得られる繊維強化プラスチック用溶接棒、及び繊維強化プラスチック用溶接棒を使用する溶接方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒は、熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の溶接継手に充填され、前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材と同時に溶接棒も溶融する、熱風又は熱板部材の加熱手段により溶融可能な繊維強化プラスチック用溶接棒であって、繊維と熱可塑性樹脂との混合物を棒状に形成し、前記繊維の含有量を、前記混合物を100重量%としたときの1重量%以上〜35重量%以下とすることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒は、請求項1において、前記繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維及びセルロースナノファイバーの内のいずれか一つであることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒を使用する溶接方法は、熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の溶接方法であって、母材である熱可塑性繊維強化プラスチック部材の熱可塑性樹脂とアンカーリング効果を生ずる熱可塑性樹脂を含有し、繊維の含有量を1重量%以上〜35重量%以下とする熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒を選択する溶接棒選択ステップと、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒の先端部を、母材である熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の継手部の接合面に適度の押付力で当て、熱風又は熱板部材の加熱手段により前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒及び前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材がそれぞれ含有する熱可塑性樹脂のみを溶融させて、前記継手部の接合面を溶融した熱可塑性樹脂及び溶融していない繊維で充填させながら、かつ前記継手部に沿って前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒の先端部を前記継手部の接合面に押付ながら移動する溶接ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1又は2に記載の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒は、熱風又は熱板部材の安価な加熱手段により熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士を溶接させることができるという効果を奏する。また、開先形状が、起伏状であっても、平面視で直線状、曲線状及び凹凸状であってもいずれの開先形状の継手であっても溶接ができ、開先形状の寸法精度がレーザー切断を要せずNCルーターや汎用旋盤等で機械加工した寸法精度のものでも溶接でき、高価なレーザー溶接設備でなく安価な設備である熱風や熱板等の加温手段で溶融させて溶接でき、繊維強化プラスチック製品としての溶接の引張強度が得られるという効果を奏する。したがって、本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒は実用的であるという効果を奏する。
【0019】
熱風又は熱板部材の安価な加熱手段により、継手個所における、繊維強化プラスチック用溶接棒の先端部の熱可塑性領域、及び母材である繊維強化プラスチック部材の熱可塑性領域をともに溶融するので、前記母材と前記溶接棒との混合部が形成され、混合部における熱可塑性樹脂と繊維とのアンカーリング効果により所定の引張強度を得ることができた。
【0020】
請求項3に記載の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒を使用する溶接方法は、請求項1又は2に記載された熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒が有する効果と同じ効果を有する。よって、熱可塑性繊維強化プラスチック同士の溶接方法として実用的であるという効果を有する。
【0021】
本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒を使用した溶接は、人が実施する溶接にも溶接自動化装置にも適用できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒を使用する溶接方法のフロー図である。
図2】溶接方法の実施形態の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
プラスチック溶接強度に関するJIS規格では、JIS Z 3831:2002にプラスチック溶接技術検定における試験方法及び判定基準が規定され、試験片の種類として、引張降伏応力が50MPa以上のポリ塩化ビニル、ポリプロピレン及び高密度ポリエチレンの3種類しか規定されていない。繊維強化プラスチック溶接に関する規定はないことから、繊維強化プラスチック溶接は一般的に行われていないことを示している。
【0024】
また、例えば炭素繊維強化プラスチックから造られた製品が日本で初めて1972年に鮎釣り用の釣り竿、1973年にゴルフクラブ、1975年に航空機用部材への採用と用途は拡大して、現在まで約50年弱を経過しているが、JIS規格では繊維強化プラスチック溶接に関する規定はない。
【0025】
炭素繊維強化プラスチック製品が市場に流通し始めて約50年経過した今日においても繊維強化プラスチック溶接に係るJIS規格が規定されておらず、かつ炭素繊維強化プラスチック部材同士を固定させる方法として、接着剤による接着法、及び、ボルト等の締付部材による機械的方法が一般的に行われてきたが、溶接については行われてこなかったことから、本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒は熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の溶接を実用的に可能にするという画期的発明である。
【0026】
本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4は、母材5a、5bである熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の溶接継手に充填され、熱風又は熱板部材の加熱手段(図示なし)により溶融可能な繊維強化プラスチック用溶接棒4であって、繊維と熱可塑性樹脂との混合物を棒状に形成し、前記繊維の含有量を、前記混合物を100重量%としたときの1重量%以上〜35重量%以下とする。
【0027】
本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4は、母材5a、5bである熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士を、突合せ溶接、T字型隅肉溶接又はL字型隅肉溶接などの溶接で固定させるときに、母材5a、5bとともに溶融されて継手部の接合面に充填され冷却されて母材5a、5bである熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士をアンカーリング効果により固定させる。
【0028】
本発明における前記アンカーリング効果とは、母材5a、5bである前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材の繊維を含有した熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の繊維を含有した熱可塑性樹脂とが同一の加熱手段によりほぼ同時に溶融して冷却後に固まったときに、母材5a、母材5b及び前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4のそれぞれの繊維と、母材5a、母材5b及び前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4のそれぞれの熱可塑性樹脂とが混ざり合って、母材5aと母材5bとが強く接続する状態になることを意味する。
【0029】
前記アンカーリング効果が生ずる形態として、第一に母材5a、5bの継手部の接合面にある細かな凹凸部に熱可塑性樹脂が入り込むことにより強固に接続される形態、第二に繊維自体に細かな凹凸があり、この凹凸に熱可塑性樹脂が入り込むことにより強固に接続される形態、又は、第三に熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の繊維が母材5a、5bの接合面に刺さり強固に接続される形態がある。
【0030】
まず、母材5a、5bである前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材について説明する。前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材は、繊維と熱可塑性樹脂との混合物であり、熱可塑性繊維強化プラスチックから造られた部品である。前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材は、例えば、熱可塑性炭素繊維強化プラスチックの場合は、軽量、高強度及び高リサイクル性を兼ね備えており、製品の用途としては、例えば、ゴルフクラブのシャフト、航空機の尾翼、自動車のモノコックフレーム、風力発電の回転羽根、アシストスーツなど広範囲に使用されている。
【0031】
そして、前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材に含有される繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維及びセルロースナノファイバーの内のいずれか一つの繊維、又は少なくとも一つ以上の繊維である。
【0032】
また、繊維として炭素を前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材に含有させた熱可塑性炭素繊維強化プラスチック部材の前記炭素繊維としては、最も使用されているPAN系炭素繊維、他にピッチ系炭素繊維又はレーヨン系炭素繊維があるがいずれでもよい。
【0033】
また、前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材に含有する前記熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネイト、ポリオレフィン等があり、熱可塑性樹脂であればいずれでもよい。
【0034】
母材5a、5bである熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士を固定させる継手としては、突合せ継手、T字型隅肉継手又はL字型隅肉継手などがある。
【0035】
次に、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒について説明する。前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒は、繊維と熱可塑性樹脂との混合物を棒状に形成し、前記繊維の含有量を、前記混合物を100重量%としたときの1重量%以上〜35重量%以下の重量%とする。
【0036】
前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒に含有される前記繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維及びセルロースナノファイバーの内のいずれか一つ又は少なくとも一つ以上である。
【0037】
また、炭素繊維については、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維又はレーヨン系炭素繊維のうちの1つの種類でもよく、1つ以上の種類にしてもよい。
【0038】
また、前記母材5a、5bの繊維の種類との関係でいえば、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の繊維の種類については、好ましいのは母材5a、5bが含有する繊維と同一種類の繊維であるが、アンカーリング効果は母材5a、5bが含有する繊維の種類と異なっても生ずるので、アンカーリング効果があり、製品として品質上問題がないという要件を満足する範囲の繊維であれば母材5a、5bと異なる種類の繊維でもよい。
【0039】
実験として炭素繊維が含有された前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材の溶接を行ったが、炭素繊維以外の繊維を含有させた前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材の溶接の場合も、例えばガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維及びセルロースナノファイバーの内のいずれの場合であっても、本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4を適用させることができる。
【0040】
前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒に含有される前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネイト、ポリオレフィン等があり、熱可塑性樹脂であればいずれでもよいが、前記母材5a、5bの熱可塑性樹脂の種類との関係でいえば、加温したときに融点の差が小さい熱可塑性樹脂であれば、加温により前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の熱可塑性樹脂と前記母材5a、5bの熱可塑性樹脂とがほぼ同時に溶融するため、母材5a、5bの熱可塑性樹脂の種類と、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の熱可塑性樹脂の種類との組み合わせは、好ましいのは同一種類の組み合わせであるが、アンカーリング効果が得られるという要件を満足する場合に限り異なる種類の組み合わせでもよい。
【0041】
母材5a、5bとなる前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材の熱可塑性樹脂の種類と、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4に含有される熱可塑性樹脂の種類が、同一種類の場合は例えば母材5a、5bに含有されている熱可塑性樹脂がポリアミドで熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4に含有されている熱可塑性樹脂もポリアミドの場合をいい、異種類の場合は例えば母材5a、5bに含有されている熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル(融点が85℃〜210℃)で熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4に含有されている熱可塑性樹脂がアクリル樹脂(融点が160℃)の場合をいう。
【0042】
また、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の繊維と熱可塑性樹脂との混合割合は、母材5a、5bである前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材に含有された繊維と熱可塑性樹脂との混合割合とは関係なく、溶接品質の引張強度を満足できる混合割合になるように設定する。
【0043】
次に、加熱手段について説明する。前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4、及び母材5a、5bである前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材を溶融させる加熱手段は、熱風又は熱板部材による加熱手段である。前記加熱手段はプラスチック溶接の溶接棒を溶融させるために、高価な設備を必要とするレーザービーム照射を必要とせずに、熱風又は熱伝導による熱板を加熱手段とするので、一般的に使用されている既存の加熱手段をそのまま使用することができる。
【0044】
次に、本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4を使用して実験したときの引張強度について説明する。本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4を使用して、引張試験を行うため、代表例として、炭素繊維を含有させた熱可塑性炭素繊維強化プラスチック用溶接棒4(棒径3mm)を使用して、幅20mm、長さ30mm、板厚2mmの試験片を2枚突き合わせ溶接したときの引張速度50mm/分での引張試験結果を表1に示す。表1において平均値とは3回実施した平均値を示している。表1において、使用した前記試験片(母材5に相当する。)は熱可塑性炭素繊維強化プラスチック部材の炭素繊維の含有量が、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック部材を100重量%として40重量%である。また、表1における炭素繊維含有量は、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック用溶接棒4における炭素繊維含有量である。
【0045】
【表1】
【0046】
表1から、炭素繊維含有量が40重量%の熱可塑性炭素繊維強化プラスチック部材同士の溶接において、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック用溶接棒4の炭素繊維の含有量を0重量%としたときは熱可塑性プラスチック用溶接棒が母材の熱可塑性樹脂より先に溶融したため、両者の混合された状態の溶融がうまくできない現象が発生し、前記炭素繊維の含有量を10重量%としたときは引張強度が49.8MPaと最も大きく、前記炭素繊維の含有量を20重量%としたときは引張強度が42.3MPaとやや引張強度が低下(10重量%のときに対して約15%低下)し、前記炭素繊維の含有量を30重量%としたときは引張強度が33.1MPaとさらに低下(10重量%のときに対して約33%低下)し、前記炭素繊維の含有量を母材と同じ40重量%としたときはさらに引張強度が低下し極めて小さくなったことが示されている。
【0047】
また、一般的に実施されている、繊維を含有しないプラスチック部材同士の溶接においては、溶接棒の先端部を継手部の接合面に押し付けながら溶接棒と母材とを溶融させ継手部の接合面に充填させる。ところが、熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の溶接において、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック用溶接棒の炭素繊維含有量を0重量%で熱可塑性樹脂含有量を100重量%としたときは、炭素繊維の有無の違いのみで溶融する温度に大きな差が出たため、熱可塑性プラスチック用溶接棒が母材よりあまりにも先に溶融しすぎて溶接することが極めて困難であった。
【0048】
一方、一般的に行われているプラスチック溶接では、母材と同じ成分からなる溶接棒を使用する。この一般的に行われている母材と同じ成分の溶接棒を使用すると、例えば、母材が40重量%の炭素繊維を含有する熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士を溶接する場合は40重量%を含有する熱可塑性炭素繊維強化プラスチック用溶接棒4を使用することになる。この条件で溶接し引張強度を測定すると、炭素繊維含有量が多すぎるため熱可塑性樹脂の溶融量が少なくなって、アンカーリング効果の部分が極めて狭い範囲にとどまってしまい極めて小さい引張力で溶接部が母材から離れてしまった。
【0049】
よって、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック用溶接棒4の炭素繊維の含有量の下限を、実験を行ったときの炭素繊維含有量が0重量%、10重量%、20重量%及び30重量%の中では、10重量%のときの引張強度が最大であったこと、及び、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック用溶接棒4に炭素繊維が1%でも含有されれば融点が高くなり、母材5の溶融温度との差が小になることから、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック用溶接棒4の繊維含有量の下限を1重量%以上とする。
【0050】
また、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック用溶接棒の炭素繊維の含有量の上限を、炭素繊維含有量が10重量%、20重量%、30重量%及び40重量%のうちでは炭素繊維含有量が増加するにつれ引張強度が低下し、30重量%のときの引張強度が10重量%のときに比較して約33%低下したこと、炭素繊維の含有量が40重量%のときには極めて小さい引張強度であったことから35重量%とする。
【0051】
従来のプラスチック溶接では、熱可塑性プラスチックの母材の熱可塑性樹脂の種類と、溶接棒の熱樹脂の種類は、同一とすることがプラスチック溶接業界において常識的かつ不文律的に実施されてきているが、本発明は、熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒の熱可塑性樹脂の種類は熱可塑性繊維強化プラスチック部材の熱可塑性樹脂の種類とは異なってもアンカーリング効果が生じる組み合わせであればよいとした。
【0052】
さらに、従来のプラスチック溶接では、熱可塑性プラスチックの母材の熱可塑性樹脂の種類と、溶接棒の熱可塑性樹脂の種類は、同一とすることが常識的かつ不文律的に実施されているというプラスチック溶接業界の常識を繊維強化プラスチックの溶接に当てはめると、溶接棒の繊維含有割合は母材と同一の割合のものを使用すべきとなるが、この場合は実験により表1から40重量%のときは溶接ができていなかったことから、本発明は、熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒の繊維の含有量を、母材の熱可塑性繊維強化プラスチック部材の繊維の含有量とは関係なく溶接棒の繊維含有量を設定するとした。
【0053】
以上から、本発明は繊維を溶融せずに熱可塑性樹脂の部分を溶融させてアンカーリング効果を生じさせて固定させることからいずれの種類の繊維にも適用できる。また、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の繊維の含有量は、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4を100重量%としたときに、前記繊維の含有量を、1重量%以上〜35重量%以下、好ましくは3重量%以上〜30重量%以下とする。
【0054】
また、溶接強度として引張強度は、表1から33.1〜49.8MPaであったことが示されている。これは、JIS Z 3831:2002プラスチック溶接の溶接部の引張試験の合否判定基準は、溶接棒の棒径3mmで、試験片が幅20mm、長さ60mm、板厚5mmの突合せ溶接の場合で、引張速度50mm/分での引張強さが、ポリ塩化ビニル板が30MPa以上、ポリプロピレン板が15MPa以上、ポリエチレン板が12MPa以上と規定されていることに比較して、より強い引張強度を得ることができた。
【0055】
また、引張強度の比較として、繊維強化プラスチック部材同士の固定化に一般的に行われている接着剤による接着法の場合の引張せん断力を試験した結果を表2に示す。試験材料は熱可塑性炭素繊維強化プラスチック部材で、継手面積400mmで、試験片幅20mm、長さ60mm、厚さ1mmで、引張速度0.5mm/分で卓上万能試験機を使用して行った。
【0056】
【表2】
【0057】
表2から、引張力と引張せん断力とは、異質な力であるので単純には比較はできないが、接着面積と溶接面積との広さの比較から、本発明の熱可塑性炭素繊維強化プラスチック用溶接棒を使用した溶接は十分な引張強度を有することが示唆されている。
【0058】
熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の固定化に、本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4を使用して溶接することは、使用する熱可塑性樹脂の融点まで加熱して両方の熱可塑性樹脂を溶融させて、溶融させない繊維と溶融させた熱可塑性樹脂とでアンカーリング効果を生じさせ固定させることから、繊維の種類にこだわらずに溶接ができることを示している。
【0059】
本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒は、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック、熱可塑性ガラス繊維強化プラスチック、熱可塑性ボロン繊維強化プラスチック、熱可塑性アラミド繊維強化プラスチック、熱可塑性ポリエチレン繊維強化プラスチック、熱可塑性変性ポリフェニレンエーテル繊維強化プラスチック、又は、熱可塑性セルロースナノファイバー強化プラスチックの各部材同士の溶接にも、含有する繊維の種類を、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維、又は、セルロースナノファイバーから少なくとも一つ以上選択することにより溶接ができる。
【0060】
本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒を使用する溶接方法1は、図1又は図2に示すように、熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の溶接方法1であって、母材5a、5bである熱可塑性繊維強化プラスチック部材の熱可塑性樹脂とアンカーリング効果を生ずる熱可塑性樹脂を含有し、繊維の含有量を1重量%以上〜35重量%以下とする熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4を選択する溶接棒選択ステップ2と、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の先端部を、母材5a、5bである熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の継手部の接合面に適度の押付力で当て、熱風又は熱板部材の加熱手段(図示なし)により前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4及び前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材5a、5bがそれぞれ含有する熱可塑性樹脂のみを溶融させて、前記継手部の接合面を溶融した熱可塑性樹脂及び溶融していない繊維で充填させながら、かつ前記継手部に沿って前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の先端部を前記継手部の接合面に押付ながら移動する溶接ステップ3と、を備える。
【0061】
前記溶接棒選択ステップ2は、母材5a、5bである熱可塑性繊維強化プラスチック部材の熱可塑性樹脂の種類とアンカーリング効果を生ずる種類の熱可塑性樹脂を含有し、いずれかの種類の繊維の含有量を1重量%以上〜35重量%以下とする熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4を選択する。
【0062】
前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4は、母材5a、5bである熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の溶接継手に充填され、熱風又は熱板部材の加熱手段により溶融可能な繊維強化プラスチック用溶接棒4であって、繊維と熱可塑性樹脂との混合物を棒状に形成した溶接棒4である。そして、繊維の含有割合は、 1重量%以上〜35重量%以下である。
【0063】
また、前記繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維及びセルロースナノファイバーの内のいずれか一つ、又は少なくとも一つ以上である。前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4に含有された繊維の種類は、母材5a、5bと同一の繊維が好ましいが、異なる種類の繊維であっても、強度などの品質が製品としての品質基準を満足させられる繊維であればよい。
【0064】
前記熱風又は熱板部材の加熱手段は、熱可塑性樹脂を溶融可能に加温できる加熱手段であればいずれの加熱手段でもよい。
【0065】
前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4に含有される熱可塑性樹脂の種類については、前記アンカーリング効果を有する熱可塑性樹脂の組み合わせであればよく、同一種類の組み合わせの場合と異なる種類の組み合わせの場合がある。
【0066】
前記溶接ステップ3は、図2に示すように、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の先端部を、母材5a、5bである熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の継手部の接合面に適度の押付力で当て、熱風又は熱板部材の加熱手段により前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4及び母材5a、5bの前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材の熱可塑性樹脂のみを溶融させる温度で溶融させて溶融部8を造りながら、前記継手部の接合面に溶融した熱可塑性樹脂及び溶融していない繊維を充填させながら、前記継手部に沿って矢印方向Hへ移動する。移動した跡にはきれいなビード9が形成される。
【0067】
前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の先端部を、母材5a、5bである熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の継手部の接合面に適度の押付力で当てる。この継手部の接合面に当接させないで溶融をすると前記継手部の接合面に充填しないため、ピンホール等の品質不良が発生しやすい。前記適度の押付力とは、前記継手部に沿って進行させながら前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の先端部を前記継手部の接合面に当接し続けられる押付力であればよい。
【0068】
また、前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒4の先端部の熱可塑性樹脂を、及び母材5a、5bである前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材の継手部の接合面の熱可塑性樹脂を、例えば溶接ガン6の先端部6aから噴射される熱風により前記熱可塑性樹脂のみを溶融させる温度で溶融させて、前記継手部の接合面に溶融した熱可塑性樹脂及び溶融していない繊維を充填させる。前記熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒と、母材5a、5bである前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材との熱可塑性樹脂を溶融させることにより、アンカーリング効果を生じさせるので溶接強度である引張強度が確保される。
【0069】
本発明の熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒を使用する溶接方法1は、前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の溶接を従来の繊維が含まれていないプラスチック部材同士の溶接のときと同じ温度の加温でよいので、人による溶接作業ができ溶接設備でもできるという効果を有し、前記熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の継手の形状を、嵌合可能なファスナー状のモザイク継手にする必要がなく図2に示すようにほぼ直線状のシンプル形状の継手でもよいという効果も奏する。
【符号の説明】
【0070】
1 溶接方法
2 溶接棒選択ステップ
3 溶接ステップ
4 溶接棒
5 母材
6 溶接ガン
6a 先端部
8 溶融部
9 ビード
H 方向
【要約】
【課題】繊維強化プラスチック部材同士の溶接を可能にでき、さらに継手部の接合面がいずれの形状の継手であっても溶接でき、安価な設備である熱風等の加温手段で溶融でき、プラスチック製品としての溶接強度が得られる、かつ実用的な繊維強化プラスチック用溶接棒及び繊維強化プラスチック用溶接棒を使用する溶接方法を提供することを課題とする。
【解決手段】熱可塑性繊維強化プラスチック部材同士の溶接継手に充填され、熱風又は熱板部材の加熱手段により溶融可能な繊維強化プラスチック用溶接棒であって、繊維と熱可塑性樹脂との混合物を棒状に形成し、前記繊維の含有量を、前記混合物を100重量%としたときの1重量%以上〜35重量%以下とする熱可塑性繊維強化プラスチック用溶接棒、及び前記繊維強化プラスチック用溶接棒を使用する溶接方法により課題解決できた。
【選択図】 図1
図1
図2