特許第6935997号(P6935997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6935997
(24)【登録日】2021年8月30日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】導電ペースト
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20210906BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20210906BHJP
   C08L 29/14 20060101ALI20210906BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   H01G4/30 516
   H01G4/30 201B
   C08K3/00
   C08L29/14
   H01B1/22 A
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-184670(P2016-184670)
(22)【出願日】2016年9月21日
(65)【公開番号】特開2017-63196(P2017-63196A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2019年5月21日
【審判番号】不服2020-12459(P2020-12459/J1)
【審判請求日】2020年9月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-188633(P2015-188633)
(32)【優先日】2015年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛子
(72)【発明者】
【氏名】一谷 基邦
(72)【発明者】
【氏名】山内 健司
(72)【発明者】
【氏名】森口 慎太郎
【合議体】
【審判長】 清水 稔
【審判官】 山本 章裕
【審判官】 須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−72103(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/141623(WO,A1)
【文献】 特開2013−73689(JP,A)
【文献】 特開2012−216488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00
C08L 29/14
H01B 1/22
H01G 4/232
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層セラミックコンデンサの電極に用いられる導電ペーストであって、
ポリビニルアセタール樹脂と、有機溶剤と、導電性粉末とを含有し、
前記ポリビニルアセタール樹脂は、カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を含有し、かつ、平均重合度が800〜1600、カルボキシル基量が0.05〜0.9モル%、水酸基量が16〜25モル%、アセチル基量が0.1〜5モル%、アセトアセタール基量が25モル%以下であり、
前記ポリビニルアセタール樹脂は、重合度の異なる2種類以上の混合ポリビニルアルコール樹脂のアセタール化物であり、
前記混合ポリビニルアルコール樹脂のうち、最も重合度の高いポリビニルアルコール樹脂が、下記式(1−1)で表される構成単位、及び、下記式(1−2)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有し、
前記混合ポリビニルアルコール樹脂は、式(1−1)で表される構成単位、及び、式(1−2)で表される構成単位を何れも有しないカルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂を含有し、前記最も重合度の高いポリビニルアルコール樹脂と、前記カルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂との重合度の差が1200以上である
ことを特徴とする導電ペースト。
【化1】
上記式(1−1)中、R及びRは、それぞれ独立し、炭素数0〜10のアルキレン基、X及びXは、それぞれ独立し、水素原子、金属原子又はメチル基を表す。上記式(1−2)中、R、R及びRは、それぞれ独立し、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数0〜10のアルキレン基、Xは水素原子、金属原子又はメチル基を表す。
【請求項2】
導電性粉末はニッケルからなることを特徴とする請求項1記載の導電ペースト。
【請求項3】
更に、セラミック粉末を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の導電ペースト。
【請求項4】
有機溶剤は、溶解度パラメータが8.0〜11.0(cal/cm0.5であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の導電ペースト。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の導電ペーストを用いて作成されたことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い印刷性を有し、表面平滑性、糸切れ性及びハンドリング性に優れる導電ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子機器に搭載される電子部品の小型化、積層化が進んでおり、多層回路基板、積層コイル、積層セラミックコンデンサ等の積層型電子部品が広く使用されている。
【0003】
なかでも、積層セラミックコンデンサは、一般に次のような工程を経て製造されている。まず、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、エチルセルロース等のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加え、セラミックスラリーを得る。次いで、このセラミックスラリーを離型処理した支持体面に流延して、加熱等により有機溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
次いで、得られたセラミックグリーンシート上に、内部電極を形成するための導電ペーストをスクリーン印刷により塗布し、これを複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を作製する。更に、積層体中に含まれるバインダー樹脂等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行った後、焼成してセラミック焼結体とし、セラミック焼結体の端面に外部電極を形成して、積層セラミックコンデンサを得る。
【0004】
積層セラミックコンデンサの小型化及び高容量化に伴い、内部電極の薄層化、及び電極表面の平滑性が求められてきている。そこで、薄層かつ平滑な内部電極を形成するための導電ペーストとして、例えば特許文献1に開示される導電ペーストのように、粒径を制御した金属材料を用いることにより、電極表面を平滑化することができると記載されている。
しかしながら、近年求められている薄層化した電極層に対しては、従来よりもさらに平滑性を改善する必要があり、上記のように粒径の制御された金属材料を用いても、導電ペーストのその他の構成材料である有機溶剤やバインダー樹脂とのなじみがよくなければ、分散性に不具合をきたし、印刷後の電極表面を平滑化することは極めて困難であった。
【0005】
また、特許文献2では、セラミックグリーンシートへのシートアタックを防止するために低極性の有機溶剤が用いられている。
しかしながら、電極の薄層化には、デラミネーション(層間剥離)を防止できるポリビニルアセタール樹脂を用いることが有効であるところ、従来のポリビニルアセタール樹脂を導電ペーストのバインダーとして用いると、有機溶剤との極性の違いにより、溶解性に非常に劣るため、上記のような低極性の有機溶剤には溶解し難い。従って、電極ペーストへ従来のポリビニルアセタール樹脂を適用すると、無機粉の分散性が悪化し、印刷後の電極表面は荒れてしまい、平滑化することは困難であった。
【0006】
上述の課題に対して、本発明者らは、特定の構造を有するポリビニルアセタールを開発した(特許文献3、4参照)。
しかしながら、上記の樹脂を用いても、樹脂の重合度が高い場合は、高いレベルの平滑性を得ることはできなかった。また、樹脂の重合度を低減した場合は、電極表面の平滑化は達成できても、全体としての粘度も低くなってしまうため、ハンドリング性に劣る場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2010/021202号
【特許文献2】特開2005−243561号公報
【特許文献3】特許第5767923号
【特許文献4】特開2013―73689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高い印刷性を有し、表面平滑性、糸切れ性及びハンドリング性に優れる導電ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、積層セラミックコンデンサの電極に用いられる導電ペーストであって、ポリビニルアセタール樹脂と、有機溶剤と、導電性粉末とを含有し、前記ポリビニルアセタール樹脂は、カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を含有し、かつ、平均重合度が800〜1600であり、前記ポリビニルアセタール樹脂は、重合度の異なる2種類以上の混合ポリビニルアルコール樹脂のアセタール化物であり、前記混合ポリビニルアルコール樹脂のうち、最も重合度の高いポリビニルアルコール樹脂が、下記式(1−1)で表される構成単位、及び、下記式(1−2)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する導電ペーストである。
【0010】
【化1】
上記式(1−1)中、R及びRは、それぞれ独立し、炭素数0〜10のアルキレン基、X及びXは、それぞれ独立し、水素原子、金属原子又はメチル基を表す。上記式(1−2)中、R、R及びRは、それぞれ独立し、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数0〜10のアルキレン基、Xは水素原子、金属原子又はメチル基を表す。なお、炭素数0のアルキレン基とは、R、R又はRの両端の炭素が直接結合しているものを表す。
以下、本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、導電ペーストのバインダー樹脂として、カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を含有し、かつ、特定の構造を有する混合ポリビニルアルコール樹脂のアセタール化物からなるポリビニルアセタール樹脂を用い、平均重合度を所定の範囲内とすることにより、高い印刷性を有しつつ、表面平滑性、糸切れ性及びハンドリング性に優れる導電ペーストとできることを見出した。
また、バインダー樹脂の重合度が高い場合や低い場合でも、上述の効果が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の導電ペーストはポリビニルアセタール樹脂を含有する。
また、ポリビニルアセタール樹脂は、カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する。このようなカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を含有することで、導電性粉末との相互作用を高め、分散性に優れた導電ペーストとすることができる。
本明細書中、カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂とは、下記式(2−1)で表されるアセチル基を有する構成単位と、下記式(2−2)で表される水酸基を有する構成単位と、下記式(2−3)で表されるアセタール基を有する構成単位とに加えて、カルボキシル基を有する構成単位を有する樹脂を意味する。
【0013】
【化2】
【0014】
上記式(2−3)中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【0015】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、重合度の異なる2種類以上の混合ポリビニルアルコール樹脂のアセタール化物である。
また、上記混合ポリビニルアルコール樹脂のうち、最も重合度の高いポリビニルアルコール樹脂(以下、最高重合度ポリビニルアルコール樹脂ともいう)が、上記式(1−1)で表される構成単位、及び、上記式(1−2)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有する。
上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂が、式(1−1)で表される構成単位、及び、式(1−2)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有することで、ポリビニルアセタール樹脂と有機溶剤、及び、ポリビニルアセタール樹脂と導電性粉末の相互作用を効果的に強めることができる。その結果、ポリビニルアセタール樹脂が高重合度であっても、導電ペーストの糸切れ性を悪化させたり印刷性に悪影響したりすることなく、適度な粘度とハンドリング性に適した粘度特性を効果的に付与することができる。
【0016】
上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂は、上記式(1−1)で表される構成単位を有することが好ましい。上記式(1−1)で表される構成単位を有する場合、構成単位中の2つのカルボキシル基が主鎖の炭素を挟む位置に存在するので、得られる導電ペーストは導電性粉末との間で適度な相互作用を持ち、貯蔵安定性をも改善することができる。
【0017】
上記式(1−1)中、R及びRは、それぞれ独立し、炭素数0〜10のアルキレン基を表し、X及びXは、それぞれ独立し、水素原子、金属原子又はメチル基を表す。
【0018】
上記式(1−1)中、R及びRで表されるアルキレン基の炭素数が10を超えるとカルボキシル基が凝集の原因となるため、低極性溶剤に溶解しにくくなる。R及びRで表されるアルキレン基の炭素数の好ましい下限は0、好ましい上限は5、より好ましい下限は1、より好ましい上限は3である。
【0019】
上記R及びRは、同一のものであってもよく、異なったものであってもよいが、異なっているものが好ましい。また少なくとも何れかが炭素数0のアルキレン基であることが好ましい。
【0020】
上記炭素数0〜10のアルキレン基としては、例えば、炭素数0のアルキレン基、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等の直鎖状アルキレン基、メチルメチレン基、メチルエチレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基等の分岐状アルキレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基等の環状アルキレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数0のアルキレン基、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基等の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数0のアルキレン基、メチレン基、エチレン基がより好ましい。
【0021】
上記X及びXのうち少なくとも何れかが金属原子である場合、該金属原子としては、例えば、ナトリウム原子、リチウム原子、カリウム原子等が挙げられる。なかでも、ナトリウム原子が好ましい。
【0022】
上記式(1−1)で表される構成単位は、α−ジカルボキシモノマーに由来するものであることが好ましい。α−ジカルボキシモノマーとしては、例えば、メチレンマロン酸、イタコン酸、2−メチレングルタル酸、2−メチレンアジピン酸、2−メチレンセバシン酸等のラジカル重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸やその金属塩又はそのメチルエステルが挙げられる。なかでも、イタコン酸が好ましく用いられる。
なお、本明細書中、α−ジカルボキシモノマーとは、α位炭素に2つのカルボキシル基を有するモノマーを表す。
【0023】
上記式(1−2)中、R、R及びRは、それぞれ独立し、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは、炭素数0〜10のアルキレン基を表し、Xは、水素原子、金属原子又はメチル基を表す。
【0024】
上記式(1−2)中、R、R及びRのうち少なくとも1つが炭素数1〜10のアルキル基である場合、該アルキル基の炭素数が10を超えると立体障害により原料合成時の重合が起こりにくくなる。R、R及びRで表されるアルキル基の炭素数の好ましい下限は1、好ましい上限は5、より好ましい上限は3である。
【0025】
及びRは、同一のものであってもよく、異なったものであってもよいが、同一のものがより好ましい。また、R、R及びRは水素原子であることが好ましい。
【0026】
上記炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、2−エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0027】
上記式(1−2)中、Rで表されるアルキレン基の炭素数が10を超えるとカルボキシル基が凝集の原因となるため、樹脂が低極性溶剤に溶解しにくくなる。Rで表されるアルキレン基の炭素数の好ましい下限は0、好ましい上限は5、より好ましい下限は1、より好ましい上限は3である。
【0028】
上記式(1−2)中のRとしては、上記式(1−1)中のR及びRで例示したものと同様のものが挙げられ、なかでも、炭素数0のアルキレン基、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基等の直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数0のアルキレン基、メチレン基、エチレン基がより好ましく、炭素数0のアルキレン基が更に好ましい。
【0029】
上記Xが金属原子である場合、該金属原子としては、例えば、ナトリウム原子、リチウム原子、カリウム原子等が挙げられる。なかでも、ナトリウム原子が好ましい。
【0030】
上記式(1−2)で表される構成単位はモノカルボキシモノマーに由来するものが好ましい。モノカルボキシモノマーとしては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、オレイン酸等のラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸やその金属塩又はそのメチルエステル等が挙げられる。なかでも、クロトン酸が好ましく用いられる。
【0031】
上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂は、重合度が900〜2500であることが好ましい。上記範囲内とすることで、導電ペーストの粘度を効果的に高めることができる。
【0032】
上記混合ポリビニルアルコール樹脂中の最高重合度ポリビニルアルコール樹脂の含有量は、後述するポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量等を達成することができれば特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は90重量%であり、より好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は80重量%であり、特に好ましい下限は30重量%、特に好ましい上限は70重量%である。
【0033】
上記混合ポリビニルアルコール樹脂は、式(1−1)で表される構成単位、及び、式(1−2)で表される構成単位を何れも有しないカルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂を含有することが好ましい。このようなカルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂を含有することで、得られる導電ペーストの粘度比を印刷性に優れたものとすることができる。
なお、上記カルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂は、最も重合度が低いものであることが好ましい。
【0034】
上記カルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂を含有する場合、上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂と、カルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂との重合度の差が600以上であることが好ましい。上記重合度の差が600以上であることで、上記カルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂の重合度を低減することが可能となる。その結果、平滑性や糸切れ性に影響を与えることを防止することができる。上記重合度の差は800以上であることがより好ましく、1000以上であることが更に好ましい。
なお、上記カルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂を2種以上含む場合、上記重合度の差は、最低重合度のカルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂を用いて算出する。
【0035】
上記カルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂は、重合度が200〜800であることが好ましい。上記範囲内とすることで、印刷性に悪影響を与えることなく、粘度比を印刷性に優れたものとすることができる。
【0036】
上記混合ポリビニルアルコール樹脂中のカルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂の含有量は、後述するポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量等を達成することができれば特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は90重量%であり、より好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は80重量%であり、特に好ましい下限は30重量%、特に好ましい上限は70重量%である。
【0037】
上記混合ポリビニルアルコール樹脂は、上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂を含有するものであれば、その構成は特に限定されないが、上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂と上記カルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂とを含有するものであることが好ましい。
また、上記カルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂が、最も重合度が低いものである場合、更に、上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂とカルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂との間の重合度を有するポリビニルアルコール樹脂(以下、他のポリビニルアルコール樹脂ともいう)を含有してもよい。
【0038】
上記他のポリビニルアルコール樹脂は、上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂とカルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂との間の重合度を有するものであれば、特に限定されず、2種以上の異なる樹脂で構成されるものであってもよい。
なお、上記他のポリビニルアルコール樹脂は、上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂と同様に式(1−1)で表される構成単位、及び、式(1−2)で表される構成単位から選択される少なくとも1種を有するものであってもよく、これらを有しないものであってもよい。
【0039】
上記他のポリビニルアルコール樹脂が、未変性ポリビニルアルコール樹脂である場合、重合度が800以下であることが好ましい。未変性ポリビニルアルコール樹脂等の他のポリビニルアルコール樹脂を用いた場合、糸切れ性や印刷性は、重合度が高くなると悪くなるが、上記他のポリビニルアルコール樹脂の重合度が800以下であることで、悪化を最小限に抑えることができる。
【0040】
上記他のポリビニルアルコール樹脂についても、上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂と、他のポリビニルアルコール樹脂との重合度の差が600以上であることが好ましい。上記重合度の差が600以上であることで、上記他のポリビニルアルコール樹脂の重合度を低減することが可能となる。その結果、平滑性や糸切れ性に影響を与えることを防止することができる。上記重合度の差は800以上であることがより好ましく、1000以上であることが更に好ましい。
【0041】
上記混合ポリビニルアルコール樹脂中の他のポリビニルアルコール樹脂の含有量は、後述するポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量等を達成することができれば特に限定されないが、好ましい下限は5重量%、好ましい上限は95重量%であり、より好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は90重量%であり、特に好ましい下限は15重量%、特に好ましい上限は85重量%である。
【0042】
上記カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を合成する方法としては特に限定されないが、例えば、上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂が、上記式(1−1)で表される構成単位を有する場合には、上記式(1−1)で表される構成単位となるα−ジカルボキシモノマーと、酢酸ビニルとを共重合させることによって得られたポリ酢酸ビニルをケン化し得られたポリビニルアルコール樹脂と、2番目またはそれ以下の重合度を持つポリビニルアルコール樹脂とを混合し、従来公知の方法によりアセタール化する方法が挙げられる。
【0043】
また、上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂が上記式(1−2)で表される構成単位を有する場合には、上記式(1−2)で表される構成単位となるモノカルボキシモノマーと、酢酸ビニルとを共重合させることによって得られたポリ酢酸ビニルをケン化し得られたポリビニルアルコール樹脂と、2番目またはそれ以下の重合度を持つポリビニルアルコール樹脂とを混合し、従来公知の方法によりアセタール化する方法が挙げられる。
【0044】
更に、最も重合度の高いポリビニルアルコール樹脂をメルカプトプロピオン酸等のカルボキシル基を有する化合物と反応させて後変性し得られたカルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂を、従来公知の方法によりアセタール化する方法等も挙げられる。
【0045】
また、上記最高重合度ポリビニルアルコール樹脂と、カルボン酸未変性ポリビニルアルコール樹脂と、他のポリビニルアルコール樹脂とを、従来公知の方法でそれぞれアセタール化した後、平均重合度が所定の範囲内となるように、それぞれのポリビニルアルコール樹脂のアセタール化物を混合する方法を用いてもよい。
【0046】
上記アセタール化反応としては特に限定されず、従来公知の方法で行うことができる。例えば、酸触媒の存在下でポリビニルアルコールの水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
上記アルデヒドは特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドのなかでは、ブチルアルデヒドを単独で用いるか、またはアセトアルデヒドとブチルアルデヒドを組み合わせて用いることが好ましい。
【0047】
本発明で使用されるポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度の下限が800、上限が1600である。平均重合度を800以上とすることで、粘度を高めて、ハンドリング性を向上させることが可能となる。1600以下とすることで、糸曳きが生じることを防止して、印刷性を高めることが可能となる。また、表面平滑性が向上する。上記ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度の好ましい下限は850、好ましい上限は1500であり、より好ましい下限は900、より好ましい上限は1400である。
【0048】
本明細書中、ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、原料であるポリビニルアルコールの平均重合度から求められる。
また、本明細書中、ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度とは、ポリビニルアセタール樹脂全体の見かけの平均重合度を意味する。即ち、例えば、ポリビニルアセタール樹脂が異なる平均重合度を有する複数の樹脂を含有する場合、ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、各樹脂の平均重合度にその樹脂の含有比率を掛け合わせることにより得られる各値を、合計することにより求められる。
【0049】
上記ポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量は、好ましい下限が0.05モル%、好ましい上限が1モル%である。カルボキシル基量が0.05モル%以上とすることで、上記ポリビニルアセタール樹脂がカルボキシル基を有することによる効果が得られ、導電ペーストの印刷性が向上し表面平滑性が改善したり、無機粉が沈降して貯蔵時の安定性が悪くなることを防止したりできる。カルボキシル基量を1モル%以下とすることで、上記ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤に対する溶解性が向上したり、カルボキシル基と導電性粉末の相互作用が適度なものとなるため、導電ペーストを作製しやすくなり、ゲル化して安定性が悪くなったりすることを防止できる。上記ポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量の好ましい下限は0.07モル%、好ましい上限は0.9モル%であり、より好ましい下限は0.1モル%、より好ましい上限は0.8モル%である。
【0050】
本明細書中、ポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量とは、ポリビニルアセタール樹脂の構成単位全体に占めるカルボキシル基を有する構成単位の割合を意味する。例えば、上記式(1−1)で表される構成単位にはカルボキシル基が2つ存在しているが、1つの構成単位に存在するカルボキシル基の数にかかわらず、ポリビニルアセタール樹脂の構成単位全体に占めるカルボキシル基を有する構成単位の割合を、カルボキシル基量とする。
【0051】
また、本明細書中、ポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量とは、ポリビニルアセタール樹脂全体の見かけのカルボキシル基量を意味する。即ち、例えば、ポリビニルアセタール樹脂が異なるカルボキシル基量を有する複数の樹脂を含有する場合、ポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量は、各樹脂のカルボキシル基量にその樹脂の含有比率を掛け合わせることにより得られる各値を、合計することにより求められる。
特に、例えば、ポリビニルアセタール樹脂が、カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂と未変性ポリビニルアセタール樹脂とを含有する場合、ポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量は、下記式(3)により算出される。
A=B×(C/D) (3)
上記式(3)中、Aはポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量(モル%)を表し、Bはカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量(モル%)を表し、Cはカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂の重量を表し、Dはポリビニルアセタール樹脂全体の重量を表す。
【0052】
上記式(3)においてBで表されるカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量は、上述したポリビニルアセタール樹脂のカルボキシル基量等を達成することができれば特に限定されないが、好ましい下限が0.03モル%、好ましい上限が4モル%である。
【0053】
上記ポリビニルアセタール樹脂が、アセトアセタール基を含有する場合、アセトアセタール基量の上限は25モル%であることが好ましい。アセトアセタール基量が25モル%以下であることで、上記ポリビニルアセタール樹脂の低極性の有機溶剤に対する溶解性を向上させ、導電ペーストの作製が容易になる。上記ポリビニルアセタール樹脂のアセトアセタール基量の好ましい上限は22モル%であり、より好ましい上限は20モル%である。
なお、アセトアセタール基とは、上記式(2−3)で表されるアセタール基を有する構成単位に含まれるアセタール基のうちの、Rがメチル基である場合のアセタール基である。また、本明細書中、ポリビニルアセタール樹脂のアセトアセタール基量とは、ポリビニルアセタール樹脂全体の見かけのアセトアセタール基量を意味する。
【0054】
上記ポリビニルアセタール樹脂が、ブチラール基を含有する場合、ブチラール基量の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は80モル%である。ブチラール基量が40モル%以上であることで残存水酸基量が多くなりすぎず、ポリビニルアセタール樹脂の低極性溶剤への溶解性を改善できる。80モル%以下とすることで残存水酸基量が高くなり、得られる導電ペーストの粘度が低くなりすぎず、貯蔵安定性を改善できる。上記ポリビニルアセタール樹脂のブチラール基量のより好ましい下限は50モル%、より好ましい上限は70モル%である。
なお、ブチラール基とは、上記式(2−3)で表されるアセタール基を有する構成単位に含まれるアセタール基のうちの、Rがプロピル基である場合のアセタール基である。また、本明細書中、ポリビニルアセタール樹脂のブチラール基量とは、ポリビニルアセタール樹脂全体の見かけのブチラール基量を意味する。
【0055】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、水酸基量の好ましい下限は16モル%、好ましい上限は25モル%である。上記水酸基量が16モル%以上であることで、導電性粉末の凝集を防止して、得られた導電ペーストの分散性が改善し、平滑な印刷塗膜が得られる。上記水酸基量が25モル%以下であることで、本発明で用いられる低極性の有機溶剤への溶解性が向上する。上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量の好ましい下限は17モル%、好ましい上限は23モル%である。また、本明細書中、ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量とは、ポリビニルアセタール樹脂全体の見かけの水酸基量を意味する。
【0056】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、アセチル基量の下限は0.1モル%、上限は5モル%であることが好ましい。上記アセチル基量が0.1モル%以上であることで、アセタール化反応が容易となり、5モル%以下であることで、本発明で用いられる低極性の有機溶剤への溶解性を高めることができる。上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル基量の好ましい下限は0.2モル%、好ましい上限は4モル%である。また、本明細書中、ポリビニルアセタール樹脂のアセチル基量とは、ポリビニルアセタール樹脂全体の見かけのアセチル基量を意味する。
【0057】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、上記カルボキシル基量、アセタール化度(アセトアセタール基量とブチラール基量の合計)、水酸基量及びアセチル基量の合計量は99.1モル%以上であることが好ましい。
上記合計量が99.1モル%以上であることで、他の構成単位の含有量が少なくなり、本発明の効果をより一層好適に発現することができる。
【0058】
本発明の導電ペーストは、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、上記ポリビニルアセタール樹脂に加えて、アクリル樹脂、エチルセルロース等の他の樹脂を含有してもよい。
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、カルボキシル基の効果により、通常のポリビニルアセタール樹脂に比べて、他の樹脂との相溶性にも優れる。
【0059】
本発明の導電ペーストは、導電性粉末を含有する。
上記導電性粉末は特に限定されず、例えばニッケル、アルミニウム、銀、銅、銀塩およびこれらの合金等からなる粉末が挙げられる。これらの導電性粉末は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中では、導電性に優れていることから、ニッケルが好ましい。
【0060】
上記ニッケル粉末の平均粒子径は、50〜300nmであり、かつ、形状が略球状であることが好ましい。平均粒子径が50nm未満であると、ニッケル粉末の比表面積が大きくなり、凝集したニッケル粉末が分散できなくなることがある。平均粒子径が300nmを超えると、印刷後の表面を平滑にできなくなることがある。なお、略球状とは、真球形状のほか、球形に近い形状の粒子も含む。
【0061】
上記導電性粉末の配合量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する好ましい下限は100重量部、好ましい上限は10000重量部である。上記導電性粉末の配合量が100重量部未満であると、導電ペーストにおける上記導電性粉末の密度が低くなり、導電性が低下することがある。上記導電性粉末の配合量が10000重量部を超えると、導電ペーストにおける上記導電性粉末の分散性が低下し、印刷性が低下することがある。上記導電性粉末の配合量は、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対するより好ましい下限が200重量部、より好ましい上限が5000重量部である。
【0062】
本発明の導電ペーストは、上記導電性粉末に加えて、さらにセラミック粉末を含有することが好ましい。セラミック粉末を含有することで、焼成する際の導電性粉末の収縮挙動を、セラミックグリーンシートと合わせやすくなる。
上記セラミック粉末としては特に限定されないが、グリーンシートに用いられるチタン酸バリウムが好ましい。セラミック粉末の粒径としては特に限定されないが、上記導電性粉末の粒径よりも小さいものであることが好ましく、具体的には30nm〜200nmであることが好ましい。
【0063】
本発明の導電ペーストは、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤は一般的に導電ペーストに用いられる有機溶剤を使用することができるが、特にシートアタック現象を防止するためには、セラミックグリーンシートに含まれるポリビニルブチラール樹脂を膨潤または溶解させない、非相溶の低極性の有機溶剤であり、その溶解度パラメータは8.0〜11.0(cal/cm0.5であることが好ましい。なお、溶解度パラメータは、Fedors法によって計算したものを用いる。
上記有機溶剤としては、例えば、ターピニルアセテート、イソボニルアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルメチルエーテル、ターピニルメチルエーテル等のテルピネオール(ターピネオール)誘導体、ミネラルスピリット等の炭化水素溶剤、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルおよびエステルが挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
上記有機溶剤の配合量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する好ましい下限は100重量部、好ましい上限は10000重量部である。上記有機溶剤の配合量が100重量部未満であると、導電ペーストの粘度が高くなり、印刷性が低下することがある。上記有機溶剤の配合量が10000重量部を超えると、導電ペーストにおいて上記ポリビニルアセタール樹脂の性能が充分に発揮されないことがある。上記有機溶剤の配合量は、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対するより好ましい下限が200重量部、より好ましい上限が5000重量部である。
【0065】
本発明の導電ペーストは、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤、分散剤、界面活性剤等を適宜含有してもよい。
【0066】
上記可塑剤としては特に限定されないが、例えば、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸ジエステル、ジオクチルアジペート等のアジピン酸ジエステル、トリエチレングリコール2−エチルヘキシル等のアルキレングリコールジエステル等が挙げられる。
【0067】
上記分散剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪酸、脂肪族アミン、アルカノールアミド、リン酸エステルが好適である。また、シランカップリング剤等を配合してもよい。
上記脂肪酸としては特に限定されず、例えば、ベヘニン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、ヤシ脂肪酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸、牛脂脂肪酸、ヒマシ硬化脂肪酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。なかでも、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が好適である。
上記脂肪族アミンとしては特に限定されず、例えば、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アルキル(ヤシ)アミン、アルキル(硬化牛脂)アミン、アルキル(牛脂)アミン、アルキル(大豆)アミン等が挙げられる。
上記アルカノールアミドとしては特に限定されず、例えば、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
上記リン酸エステルとしては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステルが挙げられる。
【0068】
上記界面活性剤としては、特に限定されないが、陰イオン系界面活性剤としては、カルボン酸系として脂肪酸のナトリウム塩等、スルホン酸系として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやラウリル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシ硫酸塩等、リン酸系としてはモノアルキルリン酸塩等があげられる。陽イオン系界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩やジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等があげられ、両性界面活性剤としてはアルキルジメチルアミンオキシドやアルキルカルボキシベタイン等があげられ、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルや脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等があげられる。
上記分散剤や界面活性剤は、ペーストまたは樹脂溶液の経時粘度上昇抑制にも効果がある。
【0069】
本発明の導電ペーストの粘度については、各印刷プロセスによって異なるため、適宜調整すればよいが、シェアレート60s−1の時の粘度η60が0.1〜10Pa・sであることが好ましい。
特に、スクリーン印刷に使用する場合は、η60が1.0〜10.0Pa・sであることが好ましく、グラビア印刷に使用する場合はη60が0.1〜1.0Pa・sであることが好ましい。
【0070】
本発明の導電ペーストは、シェアレート60s−1の条件で測定した粘度η60と、シェアレート600s−1の条件で測定した粘度η600との比(η60/η600、以下TI値ともいう)は、2.0以上、4.5未満であることが好ましい。上記η60/η600が2.0以上であると、塗工時の粘度が低すぎて均一に塗り広げられなかったり、版のパターン内に入った導電ペーストの静置粘度が高すぎてパターン内に均一に広がらなかったりする不具合を防止できる。上記η60/η600が4.5未満であると、塗工時の粘度が高すぎて均一に塗り広げられなかったりすることを防止できる。好ましい下限は2.3、好ましい上限は3.5である。
なお、η60/η600は、チキソトロピー性を示す指数のひとつである。
ハンドリング性を確保するためには、塗工時あるいは清掃時に容易に塗り広げあるいは回収できるように、ある程度高い粘度が必要である。一方で、版のパターン内に入った導電ペーストが偏ることなくパターン中に均一に充填され、均一に印刷されるためには充分に粘度が低い必要がある。すなわち、プロセスの前後で大きな粘度変化が必要となる。このような性質をチキソトロピー性といい、η60/η600を上述の範囲内とすることで、チキソトロピー性に優れる導電ペーストとすることができる。
【0071】
本発明の導電ペーストを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を含有するポリビニルアセタール樹脂、上記導電性粉末、上記有機溶剤及び必要に応じて添加される他の成分を、ボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の混合機を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0072】
本発明の導電ペーストをセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷やダイコート、グラビアオフセット等の印刷プロセスにより塗布し、これを複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を作製した後、脱脂処理を行い、焼成してセラミック焼結体とし、更にセラミック焼結体の端面に外部電極を形成することにより、積層セラミックコンデンサを得ることができる。このような積層セラミックコンデンサもまた本発明の1つである。
【0073】
本発明の導電ペーストを印刷する方法としては特に限定されないが、上述したようなスクリーン印刷やダイコート、グラビア印刷等の印刷プロセスにて行うことができる。
【0074】
本発明の導電ペーストは、上述のようなカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂を含有するポリビニルアセタール樹脂を含有することにより、低極性の有機溶剤を用いても印刷後の表面を平滑にすることができるので、積層セラミックコンデンサの薄層化が可能であり、かつ、優れた導電性を得ることができる。
【発明の効果】
【0075】
本発明によれば、高い印刷性を有し、表面平滑性、糸切れ性及びハンドリング性に優れる導電ペーストを提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0077】
(実施例1)
(ポリビニルアセタール樹脂の作製)
カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A(平均重合度2500、カルボキシル基量1.0モル%、アセチル基量1.5モル%、一般式(4−1)で表される構成単位(Xはナトリウムイオン)を有する)30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J(平均重合度200、アセチル基量2.2モル%)70gとを、純水1000gに加えて90℃の温度で約2時間攪拌し、溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、塩酸(濃度35重量%)90gとアセトアルデヒド20gとn−ブチルアルデヒド55gとを溶液に添加した。液温を10℃に下げ、この温度を保持してアセタール化反応を行った。反応を完了させたのち、中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度890、アセチル基量2.0モル%、残存水酸基量20.7モル%、アセトアセタール基量23.5モル%、ブチラール基量53.5モル%、カルボキシル基量0.3モル%)の白色粉末を得た。
【0078】
【化3】
【0079】
(導電ペーストの作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂10重量部をジヒドロテルピネオールアセテート90重量部で溶解することにより、樹脂溶液を得た。導電性粉末としてニッケル粉180重量部、チタン酸バリウム20重量部と、ジヒドロテルピネオールアセテート50重量部とを混合させた後、得られた樹脂溶液を混合し、三本ロールにて分散させることにより、導電ペーストを得た。
【0080】
(実施例2)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A50gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J50gとを用い、アセタール化反応を行う際に用いるアルデヒドを、n−ブチルアルデヒド80gに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1350、アセチル基量1.9モル%、残存水酸基量22.0モル%、ブチラール基量75.6モル%、カルボキシル基量0.5モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0081】
(実施例3)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂B(平均重合度900、カルボキシル基量1.0モル%、アセチル基量2.5モル%、一般式(4−1)で表される構成単位(Xはナトリウムイオン)を有する)90gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J10gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度830、アセチル基量2.5モル%、残存水酸基量20.8モル%、アセトアセタール基量23.2モル%、ブチラール基量52.6モル%、カルボキシル基量0.9モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0082】
(実施例4)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A6gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂K(平均重合度800、アセチル基量2.0モル%)94gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度902、アセチル基量2.0モル%、残存水酸基量21.2モル%、アセトアセタール基量23.5モル%、ブチラール基量53.2モル%、カルボキシル基量0.06モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0083】
(実施例5)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと未変性ポリビニルアルコール樹脂K70gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1310、アセチル基量1.9モル%、残存水酸基量21.5モル%、アセトアセタール基量24.0モル%、ブチラール基量52.3モル%、カルボキシル基量0.3モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0084】
(実施例6)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂B10gと未変性ポリビニルアルコール樹脂K90gとを用い、アセタール化反応を行う際に用いるアルデヒドを、n−ブチルアルデヒド80gに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度810、アセチル基量2.1モル%、残存水酸基量22.2モル%、ブチラール基量75.6モル%、カルボキシル基量0.1モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0085】
(実施例7)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂B90gと未変性ポリビニルアルコール樹脂K10gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度890、アセチル基量2.5モル%、残存水酸基量22.0モル%、アセトアセタール基量23.8モル%、ブチラール基量50.8モル%、カルボキシル基量0.9モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0086】
(実施例8)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂C(平均重合度1400、カルボキシル基量1.0モル%、アセチル基量2.0モル%、一般式(4−1)で表される構成単位(Xは水素原子)を有する)10gと未変性ポリビニルアルコール樹脂K90gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度860、アセチル基量2.0モル%、残存水酸基量20.3モル%、アセトアセタール基量24.0モル%、ブチラール基量53.6モル%、カルボキシル基量0.1モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0087】
(実施例9)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂C90gと未変性ポリビニルアルコール樹脂K10gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1340、アセチル基量2.0モル%、残存水酸基量21.0モル%、アセトアセタール基量23.5モル%、ブチラール基量52.6モル%、カルボキシル基量0.9モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0088】
(実施例10)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂D(平均重合度1700、カルボキシル基量1.0モル%、アセチル基量1.8モル%、一般式(4−1)で表される構成単位(Xはナトリウムイオン)を有する)30gと未変性ポリビニルアルコール樹脂L(平均重合度500、アセチル基量2.0モル%)70gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度860、アセチル基量1.9モル%、残存水酸基量21.5モル%、アセトアセタール基量22.8モル%、ブチラール基量53.5モル%、カルボキシル基量0.3モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0089】
(実施例11)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂D50gと未変性ポリビニルアルコール樹脂L50gを用い、反応時に用いたアルデヒドをアセトアルデヒド15gとn−ブチルアルデヒド70gに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1100、アセチル基量1.9モル%、残存水酸基量20.8モル%、アセトアセタール基量13.8モル%、ブチラール基量63.0モル%、カルボキシル基量0.5モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0090】
(実施例12)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂D90gと未変性ポリビニルアルコール樹脂L10gを用い、反応時に用いたアルデヒドをアセトアルデヒド5gとn−ブチルアルデヒド75gに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1580、アセチル基量1.8モル%、残存水酸基量22.0モル%、アセトアセタール基量4.5モル%、ブチラール基量70.8モル%、カルボキシル基量0.9モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0091】
(実施例13)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂H(平均重合度1700、カルボキシル基量1.0モル%、アセチル基4.0モル%、一般式(4−2)で表される構成単位(Xはナトリウムイオン)を有する)30gと未変性ポリビニルアルコール樹脂L70gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度860、アセチル基量2.6モル%、残存水酸基量22.1モル%、アセトアセタール基量23.0モル%、ブチラール基量52.0モル%、カルボキシル基量0.3モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0092】
【化4】
【0093】
(実施例14)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂H70gと未変性ポリビニルアルコール樹脂L30gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1340、アセチル基量3.4モル%、残存水酸基量21.8モル%、アセトアセタール基量22.5モル%、ブチラール基量51.6モル%、カルボキシル基量0.7モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0094】
(実施例15)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂E(平均重合度1700、カルボキシル基量0.5モル%、アセチル基量1.5モル%、一般式(4−1)で表される構成単位(Xはナトリウムイオン)を有する)30gと未変性ポリビニルアルコール樹脂L70gとを用い、反応時に用いたアルデヒドをアセトアルデヒド15gとn−ブチルアルデヒド70gに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度860、アセチル基量1.9モル%、残存水酸基量20.6モル%、アセトアセタール基量13.4モル%、ブチラール基量64.0モル%、カルボキシル基量0.2モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0095】
(実施例16)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂E90gと未変性ポリビニルアルコール樹脂L10gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1580、アセチル基量1.6モル%、残存水酸基量22.4モル%、アセトアセタール基量22.4モル%、ブチラール基量53.2モル%、カルボキシル基量0.4モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0096】
(実施例17)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂F(平均重合度800、カルボキシル基量0.5モル%、アセチル基量2.0モル%、一般式(4−1)で表される構成単位(Xは水素原子)を有する)30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J40gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1070、アセチル基量1.9モル%、残存水酸基量21.3モル%、アセトアセタール基量21.7モル%、ブチラール基量54.6モル%、カルボキシル基量0.5モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0097】
(実施例18)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂K30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J40gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1070、アセチル基量1.9モル%、残存水酸基量22.9モル%、アセトアセタール基量23.0モル%、ブチラール基量51.9モル%、カルボキシル基量0.3モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0098】
(実施例19)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂C50gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J50gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度800、アセチル基量2.1モル%、残存水酸基量23.3モル%、アセトアセタール基量23.3モル%、ブチラール基量50.8モル%、カルボキシル基量0.5モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用い、溶剤をジヒドロターピネオールに変更した以外は実施例1と同様にして、導電ペーストを得た。
【0099】
(実施例20)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂E50gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂K50gとを用い、アセタール化反応を行う際に用いるアルデヒドを、n−ブチルアルデヒド80gに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1250、アセチル基量1.8モル%、残存水酸基量21.1モル%、ブチラール基量76.9モル%、カルボキシル基量0.3モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用い、溶剤をジヒドロターピネオールに変更した以外は実施例1と同様にして、導電ペーストを得た。
【0100】
(実施例21)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂H50gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂K50gとを用い、反応時に用いたアルデヒドをアセトアルデヒド15gとn−ブチルアルデヒド70gに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1250、アセチル基量1.8モル%、残存水酸基量21.4モル%、アセトアセタール基量12.8モル%、ブチラール基量63.5モル%、カルボキシル基量0.5モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用い、溶剤をジヒドロターピネオールに変更した以外は実施例1と同様にして、導電ペーストを得た。
【0101】
(比較例1)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、未変性ポリビニルアルコール樹脂M(平均重合度1700、アセチル基量1.5モル%)50gと、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂G(平均重合度500、カルボキシル基量1.0モル%、アセチル基量2.5モル%、一般式(4−1)で表される構成単位(Xはナトリウムイオン)を有する)50gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1100、アセチル基量2.0モル%、残存水酸基量21.5モル%、アセトアセタール基量22.9モル%、ブチラール基量53.1モル%、カルボキシル基量0.5モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0102】
(比較例2)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂F50gと未変性ポリビニルアルコール樹脂K50gとを用い、反応時に用いたアルデヒドをアセトアルデヒド5gとn−ブチルアルデヒド75gに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度800、アセチル基量2.0モル%、残存水酸基量22.0モル%、アセトアセタール基量13.5モル%、ブチラール基量62.3モル%、カルボキシル基量0.3モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0103】
(比較例3)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A70gと、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂F30gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1990、アセチル基量1.7モル%、残存水酸基量20.7モル%、アセトアセタール基量23.8モル%、ブチラール基量53.0モル%、カルボキシル基量0.9モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0104】
(比較例4)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂B50gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J50gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度550、アセチル基量2.3モル%、残存水酸基量22.2モル%、アセトアセタール基量24.0モル%、ブチラール基量51.0モル%、カルボキシル基量0.5モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0105】
(比較例5)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂C100gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1400、アセチル基量2.0モル%、残存水酸基量21.6モル%、アセトアセタール基量22.5モル%、ブチラール基量52.9モル%、カルボキシル基量1.0モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0106】
(比較例6)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂B100gを用い、アセタール化反応を行う際に用いるアルデヒドを、n−ブチルアルデヒド80gに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度900、アセチル基量2.5モル%、残存水酸基量22.5モル%、ブチラール基量74.0モル%、カルボキシル基量1.0モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして導電ペーストを得た。
【0107】
(比較例7)
実施例1において、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂A30gと、未変性ポリビニルアルコール樹脂J70gの代わりに、未変性ポリビニルアルコール樹脂M50gと、カルボン酸変性ポリビニルアルコール樹脂F50gとを用い、反応時に用いたアルデヒドをアセトアルデヒド15gとn−ブチルアルデヒド70gに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度850、アセチル基量1.8モル%、残存水酸基量23.0モル%、アセトアセタール基量12.1モル%、ブチラール基量62.9モル%、カルボキシル基量0.3モル%)の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用い、溶剤をジヒドロターピネオールに変更した以外は実施例1と同様にして、導電ペーストを得た。
【0108】
【表1】
【0109】
<評価>
実施例、比較例で得られたポリビニルアセタール樹脂、又は、導電ペーストについて以下の評価を行った。結果を表2に示した。
【0110】
(1)樹脂の溶剤溶解性
実施例、比較例で得られたポリビニルアセタール樹脂10重量部をジヒドロターピネオールアセテート90重量部に溶解し、得られた溶液のヘイズ値をヘイズメーターにて測定し、以下の基準にて評価した。
○:ヘイズ値が8.0未満
△:ヘイズ値が8.0以上15.0未満
×:ヘイズ値が15.0以上
【0111】
(2)ペースト粘度比
実施例、比較例で得られた導電ペーストの20℃における粘度をシェアレート60s−1、および、シェアレート600s−1の条件でそれぞれ測定した。シェアレート60s−1で測定した粘度η60と、シェアレート600s−1の条件で測定した粘度η600との比(η60/η600)を以下の基準で評価した。
○:2.3以上3.5未満
△:2.0以上2.3未満、あるいは3.5以上4.5未満
×:2.0未満、あるいは4.5以上
【0112】
(3)糸切れ性評価
実施例、比較例で得られた導電ペーストの糸切れ性を、伸張粘度計(HAAKE製、Caber1)を用いて20℃で測定し以下の基準で評価した。
○:糸切れ時間が1.0秒未満
△:糸切れ時間が1.0秒以上3.0秒未満
×:糸切れ時間が3.0秒以上
【0113】
(4)印刷性評価
スクリーン印刷機(MT−320TV、マイクロテック社製)とスクリーン版(東京プロセスサービス社製、ST500、乳剤2μm、2012パターン、スクリーン枠320mm×320mm)、印刷ガラス基板(ソーダーガラス、150mm×150mm、厚み1.5mm)を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下にて導電ペーストの印刷を行い、100℃30分の条件下で送風オーブンにて溶剤乾燥を行った。印刷パターンを目視又は拡大顕微鏡で観察し、印刷面の端の形状を確認し、下記の基準により評価した。
○:印刷パターン通り印刷されており、印刷端部が糸状に乱れた部分が確認されなかった。
△:印刷パターン通り印刷されており、印刷端部が糸状に乱れた部分が1か所確認された。
×:印刷パターン通り印刷されていない、または印刷端部が糸状に乱れた部分が2か所以上確認された。
【0114】
(5)表面粗さ評価
「(4)印刷性評価」で得られた導電ペーストの印刷パターンを用いて、表面粗さ計(サーフコム、東京精密社製)にて10か所測定し、下記の基準により評価した。
○:10か所の平均の表面粗さRaが0.125μm未満
△:10か所の平均の表面粗さRaが0.125μm以上0.150μm未満
×:10か所の平均の表面粗さRaが0.150μm以上
【0115】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明によれば、高い印刷性を有し、表面平滑性、糸切れ性及びハンドリング性に優れる導電ペーストを提供することができる。