特許第6936058号(P6936058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6936058
(24)【登録日】2021年8月30日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】吸熱体付き導体及び電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/02 20060101AFI20210906BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20210906BHJP
   H01M 10/6553 20140101ALI20210906BHJP
   H01B 5/06 20060101ALI20210906BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20210906BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20210906BHJP
【FI】
   H01B5/02 Z
   H01M10/613
   H01M10/6553
   H01B5/06
   H01M50/20
   H01M50/50
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-126606(P2017-126606)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-9090(P2019-9090A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 喜章
(72)【発明者】
【氏名】小林 真人
(72)【発明者】
【氏名】若槻 豊
(72)【発明者】
【氏名】菱倉 智史
(72)【発明者】
【氏名】栢盛 広輝
【審査官】 中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭41−008103(JP,B2)
【文献】 国際公開第2017/039139(WO,A1)
【文献】 特開2002−280090(JP,A)
【文献】 特開2006−086438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/02
H01M 50/20
H01M 10/613
H01M 50/50
H01M 10/6553
H01B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状の導体本体部と、
前記導体本体部の軸線に沿う方向の両端に設けられ、前記導体本体部の開口端が平坦に潰れて形成された一対の電気接続部と、
前記電気接続部によって前記導体本体部の両開口端が封鎖されて密閉空間となった前記導体本体部の内方に封入され、前記導体本体部より熱容量の大きい吸熱体と、
を備え
各前記電気接続部は、前記導体本体部の幅と同一の幅となるように形成されていることを特徴とする吸熱体付き導体。
【請求項2】
長手方向に延びる矩形板形状の導体本体部と、
前記導体本体部の前記長手方向の両端に設けられる一対の電気接続部と、
前記導体本体部における前記一対の電気接続部に挟まれる中間部に貼り付けられ、前記導体本体部より熱容量の大きい吸熱体と、
を備え
前記導体本体部の幅は、前記長手方向の全域に亘って一定であることを特徴とする吸熱体付き導体。
【請求項3】
一対の板形状の板導体を重ねて固定した導体本体部と、
前記導体本体部の両端に設けられた一対の電気接続部と、
前記一対の板導体の間に挟持され、前記導体本体部より熱容量の大きい吸熱体と、
を備え
前記一対の板導体は、前記吸熱体を挟む部分が外側に台形状となって折り曲げられ、
前記一対の板導体における各前記電気接続部を構成する部分の対向面同士が、互いに接触し、
前記一対の板導体における前記吸熱体を挟む部分の対向面間には、前記吸熱体を収容する間隙が形成されていることを特徴とする吸熱体付き導体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の吸熱体付き導体により一つ以上の回路が接続されたことを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸熱体付き導体及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される電池パックでは、走行時や充電時に大電流・大電圧の通電が行われる。電池パックは、電気自動車等の出力増加に伴い、異常通電時の通電電流も増加する。このため、電池パック部品には、異常通電時の電流による発熱への対策が求められる。
【0003】
そこで、例えば図7に示す特許文献1における電池接続具501は、電池セル503の電極端子505を電気的に接続する本体部507と、本体部507の両側縁部に上方へ立ち上がるよう設けた起立面部509と、起立面部509の外側表面に設けた放熱部511とで構成されている。各放熱部511は、所定間隔を置いて配置した上下方向に対し実質的に平行な複数枚の放熱板513より成る。電池接続具501に通電すると、放熱部511から放散される熱で、各放熱板513間の空気が暖められ、上昇気流を生成する。その結果、放熱部511に新鮮空気が供給されることになるので、電池接続具501の放熱が促進される。高い放熱効率が得られるから、熱容量を大きくしても熱が残留することがなくなり、通電時の温度上昇幅を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−245730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した電池接続具501における放熱部511は、起立面部509に放熱板513を設け、上昇気流を生成する空冷方式の冷却部を構成する。その結果、放熱部511は、自然対流を生じさせるため、高さが大きくなり、2次電池ユニット515(電池パック)全体の高さも大きくしてしまう。また、電池接続具501は、多数の放熱板513より成る放熱部511を、複数備えるため、構造が複雑となり、コストを増大させる。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、短時間大電流を通電させた際等の異常通電時における温度上昇を従来構成に比べ簡素な構造で且つ安価に抑制できる吸熱体付き導体及び電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 筒形状の導体本体部と、前記導体本体部の軸線に沿う方向の両端に設けられ、前記導体本体部の開口端が平坦に潰れて形成された一対の電気接続部と、前記電気接続部によって前記導体本体部の両開口端が封鎖されて密閉空間となった前記導体本体部の内方に封入され、前記導体本体部より熱容量の大きい吸熱体と、を備え、各前記電気接続部は、前記導体本体部の幅と同一の幅となるように形成されていることを特徴とする吸熱体付き導体。
【0008】
上記(1)の構成の吸熱体付き導体によれば、導体本体部自体で発生する熱や、電気接続部からの熱伝導による熱が、導体本体部の内方に封入された吸熱体により伝わる。吸熱体は、導体本体部よりも大きな熱容量を有する。導体本体部と吸熱体との間には、熱容量の大きい吸熱体に向かって熱伝導により熱が流れる温度勾配が生じる。この熱の流れは、導体本体部と吸熱体とが熱平衡状態となり、温度勾配が無くなるまで続く。本明細書ではこの熱の流れを吸熱と称す。吸熱体付き導体は、この吸熱作用により、短時間大電流を通電させた際等の異常通電時における導体本体部の温度上昇を、所定時間(即ち、導体本体部と吸熱体とが熱平衡状態となるまでの時間)、抑制することができる。
また、吸熱体付き導体は、筒形状の導体本体部の両開口端を平坦に潰して吸熱体を封入できる。このため、導体本体部と吸熱体との熱伝導構造を作りながら、吸熱体の保護収容構造も実現できる。この構造は、吸熱体が特に流体である場合に有用となる。この他、筒形状の導体本体部は、粉体等の吸熱体の収容にも好適となる。更に、導体本体部を銅や銅合金により製作することにより、導体本体部の両端を潰す加工だけで電気接続部の形成と、吸熱体の封入とが同時に行え、安価に製造することができる。
【0009】
(2) 長手方向に延びる矩形板形状の導体本体部と、前記導体本体部の前記長手方向の両端に設けられる一対の電気接続部と、前記導体本体部における前記一対の電気接続部に挟まれる中間部に貼り付けられ、前記導体本体部より熱容量の大きい吸熱体と、を備え、前記導体本体部の幅は、前記長手方向の全域に亘って一定であることを特徴とする吸熱体付き導体。
【0010】
上記(2)の構成の吸熱体付き導体によれば、上記(1)の構成の作用と同様に、吸熱体の吸熱作用により、短時間大電流を通電させた際等の異常通電時における温度上昇を、所定時間(即ち、導体本体部と吸熱体とが熱平衡状態となるまでの時間)、抑制することができる。
また、この吸熱体付き導体は、吸熱体を貼り付けるだけでよいので、従来構成の複数の放熱板を備える放熱部に比べ、極めて容易、且つ安価に導体の温度上昇を抑制できる。
【0011】
(3) 一対の板形状の板導体を重ねて固定した導体本体部と、前記導体本体部の両端に設けられた一対の電気接続部と、前記一対の板導体の間に挟持され、前記導体本体部より熱容量の大きい吸熱体と、を備え、前記一対の板導体は、前記吸熱体を挟む部分が外側に台形状となって折り曲げられ、前記一対の板導体における各前記電気接続部を構成する部分の対向面同士が、互いに接触し、前記一対の板導体における前記吸熱体を挟む部分の対向面間には、前記吸熱体を収容する間隙が形成されていることを特徴とする吸熱体付き導体。
【0012】
上記(3)の構成の吸熱体付き導体によれば、上記(1)の構成の作用と同様に、吸熱体の吸熱作用により、短時間大電流を通電させた際等の異常通電時における温度上昇を、所定時間(即ち、導体本体部と吸熱体とが熱平衡状態となるまでの時間)、抑制することができる。
また、この吸熱体付き導体は、一対の板導体により吸熱体を挟み込むだけでよいので、従来構成の複数の放熱板を備える放熱部に比べ、容易、且つ安価に導体の温度上昇を抑制できる。また、一対の板導体により吸熱体を挟持するので、吸熱体を保護しつつ、導体本体部と吸熱体との接触面積を大きくして、熱伝導効率を高めることができる。
【0013】
(4) 上記(1)〜(3)の何れか1つの吸熱体付き導体により一つ以上の回路が接続されたことを特徴とする電池パック。
【0014】
上記(4)の構成の電池パックによれば、例えば複数の単電池を接続した電池パックにおいて、単電池の電極同士が吸熱体付き導体により接続される。吸熱体付き導体は、導体本体部を流れるジュール熱や電極を介して伝わる熱を吸熱体により吸熱する。電池パックは、吸熱体付き導体の温度上昇が抑制されることにより、異常通電時等、定格電流よりも大きな電流が通電する際の温度上昇を緩和することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る吸熱体付き導体によれば、短時間大電流を通電させた際等の異常通電時における温度上昇を従来構成に比べ簡素な構造で且つ安価に抑制できる。
【0016】
本発明に係る電池パックによれば、異常通電時におけるバスバーの温度上昇を従来構成に比べ簡素な構造で且つ安価に抑制でき、特定の単電池の劣化を抑制することができる。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る吸熱体付き導体の斜視図である。
図2図1に示した吸熱体付き導体の製造例の一例を示す手順説明図である。
図3】吸熱体付き導体を用いた電池パックの要部斜視図である。
図4】変形例に係る吸熱体付き導体を用いた電気接続箱の要部斜視図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る吸熱体付き導体の斜視図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る吸熱体付き導体の斜視図である。
図7】従来の複数の放熱板から成る放熱部を備えた2次電池ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る吸熱体付き導体100の斜視図である。
本実施形態に係る吸熱体付き導体100は、例えば電池パックや電気接続箱における1つ以上の回路の接続に用いて好適となる。より具体的には、単電池(電池セル)間、電池スタック間、電気接続部の高圧通電回路、電気接続部の分岐(A/C等)回路である。この場合、吸熱体付き導体100は、所謂バスバーとして使用される。なお、吸熱体付き導体100の使用例は、これに限定されない。
【0020】
本第1の実施形態に係る吸熱体付き導体100は、導体本体部11と、電気接続部13と、吸熱体15と、を主要な構成として有する。
導体本体部11は、筒形状に形成される。筒形状の軸線17に直交する断面形状は、円形状に形成されている。なお、筒形状の断面形状は、円形状に限定されない。筒形状の断面形状は、半円形状、楕円形状、四角形状、台形状、三角形状等としてもよい。
【0021】
導体本体部11の材質としては、導電性に優れ、且つ延展性に優れる銅、銅合金、アルミ、アルミ合金等が挙げられる。導体本体部11は、内部を密閉空間とするため、シームレス管であることが好ましい。また、延展性を良好とするのは、軸線17に沿う方向の両開口端を潰した際の気密性を確保するためである。
【0022】
電気接続部13は、導体本体部11の軸線17に沿う方向の両端に設けられる。本実施形態の導体本体部11は、円筒形状であるので、軸線17を挟む位置で直径方向の両側から半径方向内側に導体本体部11の開口端が平坦に潰れて形成される。なお、電気接続部13は、導体本体部11の直径と同一の幅Wとなるように形成されることが好ましい。このため、電気接続部13の成形時には、金型が用いられてもよい。電気接続部13は、金型を用いたプレス加工で成形されることにより、平坦な1枚の板状に形成される。
【0023】
電気接続部13には、例えば単電池の電極ボルトが挿通されるボルト挿通穴19が穿設される。この他、電気接続部13は、ボルト挿通穴19が形成されない平坦面であってもよい。この場合、電気接続部13は、溶接により相手端子等に接続される。また、電気接続部13は、雄端子形状に形成されてもよい。この場合、電気接続部13は、雌端子を収容した雌コネクタを用いてコネクタ接続することができる。
【0024】
吸熱体15は、電気接続部13により両端が封鎖されて密閉空間となった導体本体部11の内方に封入される。この吸熱体15は、導体本体部11より熱容量の大きいもので設定される。吸熱体15は、金属、非金属、流体、半流動体等の何れであってもよい。より具体的には、吸熱体15の材質としては、ポリプロピレン(樹脂材料)、ラミネートフィルム(樹脂材料)、水、油、コンクリート、セラミック、グラファイト、ゲルシート等が挙げられる。
【0025】
図2図1に示した吸熱体付き導体100の製造例の一例を示す手順説明図である。
吸熱体付き導体100を製造するには、先ず、中空パイプ21を用意する(St1)。中空パイプ21は、軸線17が鉛直方向に配置されると、吸熱体15の充填に都合がよい。この状態で、中空パイプ21の下端における開口端を直径方向の両側から押圧して平坦に潰し、一方の電気接続部13を成形する(St2)。
次いで、開放している中空パイプ21の上端から液体或いは粉体等の吸熱体15を充填する(St3)。
吸熱体15を充填した後、中空パイプ21の上端における開口端を下端と同様に、直径方向の両側から押圧して平坦に潰し、他方の電気接続部13を成形する(St4)。
その後、上下端の電気接続部13に、打ち抜き加工等によりボルト挿通穴19を穿設して吸熱体付き導体100の製造が完了する(St5)。
【0026】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本第1の実施形態に係る吸熱体付き導体100では、導体本体部11における温度の上昇が、一定の期間抑制可能となる。導体本体部11の発熱要因は、大きく2つが考えられる。一つは、一対の電気接続部13の間を電子が移動することによる抵抗熱、即ち、ジュール熱である。もう一つは、一対の電気接続部13に端子や電極を介して伝わる発熱源(単電池やリレー)からの熱伝導による熱である。単電池の発熱要因としては、電池内活物質の化学変化による熱やエントロピー変化による電池反応による熱がある。特に多数の単電池を接続した組電池や、複数の組電池を更に接続した電池パックでは、電気量を大量に消費することから、発熱量が多く、電池温度が電池内活物質の特性に悪影響を与えるほど上昇する場合がある。
【0027】
本第1の実施形態に係る吸熱体付き導体100では、導体本体部自体で発生する熱や、電気接続部13からの熱伝導による熱が、導体本体部11に付設された吸熱体15により伝わる。吸熱体15は、導体本体部11よりも大きな熱容量を有する。
【0028】
熱容量[J/K]は、物体の温度を1K上げるのに必要な熱量である。熱容量は、質量[kg]に比例する。一方、単位質量の温度を1K上げるのに必要な熱容量は、比熱[J/kg・K]である。なお、1J=1N・mである。
従って、吸熱体15は、導体本体部11と比熱が同一であるとき、導体本体部11より質量が大きく設定される。逆に、吸熱体15は、導体本体部11よりも比熱が大きいものであるとき、導体本体部11より質量を小さく設定できる。
【0029】
導体本体部11と吸熱体15との間には、熱容量の大きい吸熱体15に向かって熱伝導により熱が流れる温度勾配が生じる。なお、吸熱体15を流体とした場合には、熱は、導体本体部11から吸熱体15へ熱伝達により流れる。
この熱の流れは、導体本体部11と吸熱体15とが熱平衡状態となり、温度勾配が無くなるまで続く。本明細書ではこの熱の流れを吸熱と称す。吸熱体付き導体100は、この吸熱作用により、短時間大電流を通電させた際等の異常通電時における導体本体部11の温度上昇を、所定時間(即ち、導体本体部11と吸熱体15とが熱平衡状態となるまでの時間)、抑制することができる。
【0030】
吸熱体付き導体100は、短時間大電流の通電が解消すると、導体本体部11の温度が下がる。導体本体部11が吸熱体15よりも低温となると、温度勾配が逆となり、吸熱体15に蓄熱された熱は、導体本体部11へ流れて放熱される。放熱された吸熱体15は、常温に戻り、次の吸熱に備えることができる。
【0031】
また、吸熱体付き導体100は、筒形状の導体本体部11の両開口端を平坦に潰して吸熱体15を封入できる。このため、導体本体部11と吸熱体15との熱伝導構造を作りながら、吸熱体15の保護収容構造も実現できる。
この構造は、吸熱体15が特に流体である場合に有用となる。この他、筒形状の導体本体部11は、粉体等の吸熱体15の収容にも好適となる。
【0032】
更に、導体本体部11を銅や銅合金により製作することにより、導体本体部11の両端を潰す加工だけで電気接続部13の形成と、吸熱体15の封入とが同時に行え、安価に製造することができる。
【0033】
本実施形態に係る電池パックは、何れか1つの吸熱体付き導体100により一つ以上の回路が接続される。例えば複数の単電池を接続した電池パックにおいて、吸熱体付き導体100は、単電池の電極同士を接続する。
【0034】
図3は吸熱体付き導体100を用いた電池パック23の要部斜視図である。
図3に示すように、複数の単電池25を並設して組電池27が構成され、電池パック23は、この組電池27の端子29を複数接続して構成される。この場合、吸熱体付き導体100は、この組電池27同士の間の接続に用いることができる。
【0035】
本実施形態に係る電池パック23では、例えば複数の単電池25を接続した電池パック23において、単電池25の電極同士が吸熱体付き導体100により接続される。吸熱体付き導体100は、導体本体部11を流れるジュール熱や電極を介して伝わる熱を吸熱体15により吸熱する。電池パック23は、吸熱体付き導体100の温度上昇が抑制されることにより、異常通電時等、定格電流よりも大きな電流が通電する際の温度上昇を緩和することができる。
【0036】
図4は変形例に係る吸熱体付き導体100Aを用いた電気接続箱の要部斜視図である。
変形例に係る吸熱体付き導体100Aは、電気接続箱に用いることもできる。電気接続箱のケース31には、複数のリレー33を装着するための複数のソケット35が設けられる。
この電気接続箱に用いられる吸熱体付き導体100Aは、導体本体部11の軸線17に直交する断面形状が半円形状に形成されている。そして、吸熱体付き導体100Aは、ケース31の側壁37とソケット35との間に配置される。吸熱体付き導体100Aは、一方の電気接続部39がL形に立ち上がり形成され、他方の電気接続部41がクランク形に形成される。電気接続部39は、例えばソケット35の端子に接続される。電気接続部41は、例えばケース31に設けられた端子に接続される。
【0037】
この電気接続箱は、吸熱体付き導体100Aの温度上昇が抑制されることにより、異常通電時等、定格電流よりも大きな電流が通電する際の温度上昇を緩和することができる。これに加え、導体本体部11に、一体的に電気接続部39及び電気接続部41を形成することにより、ケース31のバスバーを省略することができる。
【0038】
図5は本発明の第2の実施形態に係る吸熱体付き導体200の斜視図である。
なお、本第2の実施形態に係る吸熱体付き導体200において上記第1の実施形態に係る吸熱体付き導体100と同一の構成には、同一の符号を付し重複する説明は省略する。
本第2の実施形態に係る吸熱体付き導体200は、板形状の導体本体部43と、導体本体部43の両端に設けられる一対の電気接続部13と、導体本体部43における一対の電気接続部13に挟まれる中間部である中央部45に貼り付けられ、導体本体部43より熱容量の大きい吸熱体47と、を備える。
【0039】
導体本体部43は、導電性の良好な矩形状の金属板とすることができる。この導体本体部43には、長手方向の中央部45の表裏面に、矩形シート状の吸熱体47が貼り付けられる。なお、吸熱体47は、中央部45の表面または背面の何れか一方に貼り付けられてもよい。吸熱体47としては、例えば貼着面に粘着層が形成されたゲルシートや樹脂シート等を用いることができる。
【0040】
本第2の実施形態に係る吸熱体付き導体200では、上記第1の実施形態に係る吸熱体付き導体100の作用と同様に、吸熱体47の吸熱作用により、短時間大電流を通電させた際等の異常通電時における温度上昇を、所定時間(即ち、導体本体部43と吸熱体47とが熱平衡状態となるまでの時間)、抑制することができる。
【0041】
そして、この吸熱体付き導体200は、吸熱体47を貼り付けるだけでよいので、図7に示した従来構成の電池接続具501における複数の放熱板513を備える放熱部511に比べ、極めて容易、且つ安価に導体の温度上昇を抑制できる。
【0042】
図6は本発明の第3の実施形態に係る吸熱体付き導体300の斜視図である。
なお、本第3の実施形態に係る吸熱体付き導体300において上記第1の実施形態に係る吸熱体付き導体100と同一の構成には、同一の符号を付し重複する説明は省略する。
本第3の実施形態に係る吸熱体付き導体300は、一対の板形状の板導体49を重ねて固定した導体本体部51と、導体本体部51の両端に設けられた一対の電気接続部13と、一対の板導体49の間に挟持され、導体本体部51より熱容量の大きい吸熱体53と、を備える。
【0043】
吸熱体53には、上記第2の実施形態で用いたゲルシートや樹脂シート等と同様のものを用いることができる。一対の板導体49は、吸熱体53を挟む部分が外側に台形状となって折り曲げられる。この曲げ形状により、一対の板導体49の対向面間には、吸熱体53を収容する間隙が形成される。一対の板形状の板導体49に挟持された吸熱体53は、吸熱体付き導体300の延在方向に沿う両側の側面が表出する。
【0044】
本第3の実施形態に係る吸熱体付き導体300では、上記第1の実施形態に係る吸熱体付き導体100の作用と同様に、吸熱体53の吸熱作用により、短時間大電流を通電させた際等の異常通電時における温度上昇を、所定時間(即ち、導体本体部51と吸熱体53とが熱平衡状態となるまでの時間)、抑制することができる。
【0045】
そして、この吸熱体付き導体300は、一対の板導体49により吸熱体53を挟み込むだけでよいので、図7に示した従来構成の電池接続具501における複数の放熱板513を備える放熱部511に比べ、容易、且つ安価に導体の温度上昇を抑制できる。また、一対の板導体49により吸熱体53を挟持するので、吸熱体53を保護しつつ、導体本体部51と吸熱体53との接触面積を大きくして、熱伝導効率を高めることができる。
【0046】
従って、本実施形態に係る吸熱体付き導体100,100A,200,300によれば、短時間大電流を通電させた際等の異常通電時における温度上昇を従来構成に比べ簡素な構造で且つ安価に抑制できる。
また、本実施形態に係る電池パック23によれば、異常通電時におけるバスバーの温度上昇を従来構成に比べ簡素な構造で且つ安価に抑制でき、特定の単電池25の劣化を抑制することができる。
【0047】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0048】
例えば上記実施形態の構成例では、導体本体部の延在方向の中央部一箇所に吸熱体が設けられる場合を説明したが、本発明に係る吸熱体付き導体は、導体本体部が長尺に形成され、その長手方向の中間部における複数箇所に吸熱体が設けられてもよい。
【0049】
ここで、上述した本発明に係る吸熱体付き導体及び電池パックの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 筒形状の導体本体部(11)と、
前記導体本体部の軸線(17)に沿う方向の両端に設けられ、前記導体本体部の開口端が平坦に潰れて形成された一対の電気接続部(13)と、
前記電気接続部によって前記導体本体部の両開口端が封鎖されて密閉空間となった前記導体本体部の内方に封入され、前記導体本体部より熱容量の大きい吸熱体(15)と、
を備えることを特徴とする吸熱体付き導体(100,100A)。
[2] 板形状の導体本体部(43)と、
前記導体本体部の両端に設けられる一対の電気接続部(13)と、
前記導体本体部における前記一対の電気接続部に挟まれる中間部(中央部45)に貼り付けられ、前記導体本体部より熱容量の大きい吸熱体(47)と、
を備えることを特徴とする吸熱体付き導体(200)。
[3] 一対の板形状の板導体(49)を重ねて固定した導体本体部(51)と、
前記導体本体部の両端に設けられた一対の電気接続部(13)と、
前記一対の板導体の間に挟持され、前記導体本体部より熱容量の大きい吸熱体(53)と、
を備えることを特徴とする吸熱体付き導体(300)。
[4] 上記[1]〜[3]の何れか1つに記載の吸熱体付き導体(100,200,300)により一つ以上の回路が接続されたことを特徴とする電池パック(23)。
【符号の説明】
【0050】
11…導体本体部
13…電気接続部
15…吸熱体
17…軸線
23…電池パック
100…吸熱体付き導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7