(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6936105
(24)【登録日】2021年8月30日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/30 20180101AFI20210906BHJP
F21V 7/04 20060101ALI20210906BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20210906BHJP
【FI】
F21S43/30
F21V7/04 100
F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-196535(P2017-196535)
(22)【出願日】2017年10月10日
(65)【公開番号】特開2019-71202(P2019-71202A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2020年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小池 陽介
【審査官】
竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−95979(JP,A)
【文献】
特開2014−135158(JP,A)
【文献】
特開2017−98064(JP,A)
【文献】
特開2015−76249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/30
F21V 7/04
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成された灯室内に、少なくとも光源であるLEDと、該LEDから出射する光を所定の方向に反射させるリフレクタと、該リフレクタによって反射した光を透過させるインナレンズを収容して成る車両用灯具において、
前記リフレクタに、その底面よりも下方に延びる延長部を形成し、前記LEDが実装された基板で前記延長部の下面開口部を覆って該延長部内に空間を形成し、該空間内の底部に前記LEDを収容するとともに、
前記延長部の前記リフレクタの反射面に連なる面を反射面としたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
複数の前記LEDを前記基板上に横方向に適当な間隔で並設するとともに、前記リフレクタの底面の各LEDに対応する箇所に、各LEDから出射する光を通過させる孔をそれぞれ形成したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記リフレクタとその延長部の各反射面及び/又は前記インナレンズの入射面及び/又は出射面に拡散ステップを形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源としてLEDを使用する車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の後部左右に配置されるテールランプ等の車両用灯具の光源には、従来のバルブ(電球)に代えてLED(発光ダイオード)が使用されつつある。このLEDは、発光効率が高くて長寿命であり、且つ、省電力である等の利点を有する反面、指向性の強い光を出射するため、その光をそのまま利用すると点発光となってしまう。
【0003】
ところが、光源にLEDを使用した車両用灯具においても、発光面を均一に発光させる面発光に対する要求が高まっている。このような面発光を実現した車両用灯具が特許文献1に提案されている。ここで、特許文献1において提案された車両用灯具を
図5に基づいて以下に説明する。
【0004】
即ち、
図5は特許文献1において提案された車両用灯具の側断面図であり、図示の車両用灯具101は、車両の後部左右に配置されるテールランプとして機能するものであって、ハウジング102とその開口部を覆うアウタレンズ103によって画成された灯室104内に、光源である複数のLED105と、これらのLED105から出射する光を透過させる第1インナレンズ106と、該第1インナレンズ106を透過した光を車両後方(
図5の左方)に向けて反射させるリフレクタ107と、このリフレクタ107で反射した反射光を透過させる第2インナレンズ108を収容して構成されている。
【0005】
ここで、第1インナレンズ106の入射面及び/又は出射面と第2インナレンズ108の入射面及び/又は出射面には、0.5mm以下のピッチを有する拡散ステップがそれぞれ形成され、リフレクタ107の反射面には、ピッチが2mm以下の格子状段差面から成る拡散ステップが形成されている。
【0006】
而して、以上のように構成された車両用灯具101においては、複数のLED105から出射する光は、第1インナレンズ106を透過する際に拡散し、この拡散した光は、リフレクタ107で反射する際に更に拡散する。そして、リフレクタ107で反射した光は、第2インナレンズ108を透過する際に更に拡散し、透明なアウタレンズ103を通過して車両後方へと出射する。このように、この車両用灯具101によれば、LED105による点発光が、第1インナレンズ106とリフレクタ107及び第2インナレンズ108によって面発光に変換されるため、テールランプとして機能する当該車両用灯具101の均一な面発光が実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−076249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1において提案された
図5に示す車両用灯具101においては、当該車両用灯具101を斜め上方のA方向から見た場合にはリフレクタ107の反射面が見えるが、第1インナレンズ106の裏(下方)側に反射面が存在しないため、斜め上方のB方向から見た場合には、正面視と同等の面発光に見えない。このため、見る方向によっては均一な面発光には見えないという問題がある。
【0009】
又、
図5に示す車両用灯具101においては、面発光を実現するために第1及び第2インナレンズ106,108とリフレクタ107の3部品を要するため、部品点数が増えてコストアップを招くという問題もある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、部品点数の増加を招くことなく、どの方向から見ても均一な面発光を実現することができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成された灯室内に、少なくとも光源であるLEDと、該LEDから出射する光を所定の方向に反射させるリフレクタと、該リフレクタによって反射した光を透過させるインナレンズを収容して成る車両用灯具において、
前記リフレクタに、その底面よりも下方に延びる延長部を形成し、前記LEDが実装された基板で前記延長部の下面開口部を覆って該延長部内に空間を形成し、該空間内の底部に前記LEDを収容するとともに、
前記延長部の前記リフレクタの反射面に連なる面を反射面としたことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、複数の前記LEDを前記基板上に横方向に適当な間隔で並設するとともに、前記リフレクタの底面の各LEDに対応する箇所に、各LEDから出射する光を通過させる孔をそれぞれ形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記リフレクタとその延長部の各反射面及び/又は前記インナレンズの入射面及び/又は出射面に拡散ステップを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、リフレクタに延設された延長部にも反射面を形成したため、車両用灯具をアウタレンズ越しにどの方向から見ても反射面が見えることとなる。従って、車両用灯具をどの方向から見ても当該車両用灯具が正面視と同様に均一発光しているように見えて点灯フィーリングが高められる。又、LEDから出射する光の一部がリフレクタの延長部に形成された反射面によっても反射して発光に供せられるため、光の利用効率が高められる。
【0015】
更に、1つのインナレンズを用いることによって均一な面発光が実現するため、複数のインナレンズを要していた従来の車両用灯具に対して部品点数を削減することができ、当該車両用灯具の軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、リフレクタの底面には、該底面に形成された複数の孔と孔との間にリブ状の仕切りが形成され、この仕切りによって各LEDからの光が遮られるが、各LEDから出射する光は、リフレクタの延長部に形成された反射面によっても反射して当該車両用灯具の均一発光に供せられるため、各仕切りによって発光にダークが発生することがなく、発光面の全体を均一に発光させることができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、LEDから出射する光は、リフレクタとこれに形成された延長部の各反射面でそれぞれ反射する際及び/又はインナレンズを透過する際に拡散ステップによって拡散するため、当該車両用灯具の更なる均一な面発光が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る車両用灯具を含むリアコンビネーションランプの正面図である。
【
図3】本発明に係る車両用灯具のリフレクタの斜視図である。
【
図4】本発明に係る車両用灯具のインナレンズの斜視図である。
【
図5】特許文献1において提案された車両用灯具の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係る車両用灯具を含むリアコンビネーションランプの正面図、
図2は
図1のX−X線断面図、
図3は本発明に係る車両用灯具のリフレクタの斜視図、
図4は同車両用灯具のインナレンズの斜視図である。
【0021】
図1及び
図2に示すリアコンビネーションランプ10は、車両の後部左右に配置されるものであって、
図2に示すように、ハウジング2とその開口部を覆うアウタレンズ3によって画成された灯室4内に、ストップランプ20とターンシグナルランプ30及びテールランプ1を収容して一体に構成されている。尚、リアコンビネーションランプ10の基本構成は左右で同じであるため、以下、一方についてのみ図示及び説明する。
【0022】
リアコンビネーションランプ10においては、
図1に示すように、横方向に細長いストップランプ20が上部に配置されており、その下方に同じく横方向に細長いターンシグナルランプ30が配置されている。そして、これらのストップランプ20とターンシグナルランプ30を周囲から覆うように横L字状のテールランプ1が配置されている。尚、アウタレンズ3は、ストップランプ20とテールランプ1をそれぞれ覆う赤色透明な一体部品とターンシグナルランプ30を覆う白色透明なクリア部品とのインサート成形によって一体に構成されている。
【0023】
而して、テールランプ1が本発明の適用対象とするものであって、このテールランプ1は、
図2に示すように、ハウジング2とアウタレンズ3によって画成された灯室4内に、光源であるLED5と、該LED5を上面に実装する平板状の基板6と、LED5から出射する光を車両後方(
図2の右方)に向けて反射させるリフレクタ7と、該リフレクタ7で反射した光を透過させるインナレンズ8を収容して構成されている。
【0024】
上記リフレクタ7には、湾曲した放物面状の反射面7aが形成されており、このリフレクタ7の光出射方向前方(
図2の右方)に前記インナレンズ8が配置されている。尚、リフレクタ7の反射面7aには、光拡散用の多数の拡散ステップ(不図示)が形成されている。
【0025】
ここで、リフレクタ7には、その底面7bよりも下方に延びる筒状の延長部7Aが一体に形成されており、この延長部7Aの反射面7aに連なる面には、反射面7aと同様の放物面状の別の反射面7cが形成されている。そして、この反射面7cにも、反射面7aと同様に多数の拡散ステップ(不図示)が形成されている。
【0026】
そして、
図2に示すように、リフレクタ7に一体に形成された延長部7Aの下面開口部は、水平に配置された前記基板6によって覆われており、これによって延長部7Aの内部には空間Sが形成されている。ここで、基板6の中央部上面には、7つのLED5(
図2には1つのみ図示)が横方向(
図2の紙面垂直方向)に適当な間隔で並設されている。尚、各LED5は、基板6上に、その光出射方向が鉛直上方となる向きに実装されている。
【0027】
ところで、本実施の形態においては、
図3に示すように、リフレクタ7の底面7bの計7つの各LED5に対応する箇所には、各LED5から上方に向かって出射する光を通過させるための孔7dがそれぞれ形成されており、各LED5は、孔7dよりも奥の空間S内の底部に配置されている。このため、各LED5を外部から直接視認することができない。
【0028】
又、リフレクタ7よりも光出射方向前方のアウタレンズ3の内側に配置された前記インナレンズ8は、光透過性の高いアクリルやポリカーボネイト等の透明樹脂によって構成されており、その入射面(内面)8aには、光拡散用の多数の拡散ステップ(不図示)が形成されている。尚、本実施の形態では、インナレンズ8の入射面8aのみに拡散ステップを形成したが、拡散ステップは、出射面(外面)8bのみ、或いは入射面8aと出射面8bの双方に形成しても良い。
【0029】
而して、以上のように構成されたテールランプ1において、不図示の電源から各LED5に電流が供給されてこれらのLEDがそれぞれ起動されると、各LED5から上方に向かって出射する光の一部L1やL2は、リフレクタ7の反射面7aで反射し、他の光L3は、リフレクタ7に形成された延長部7Aの反射面7cで反射するが、これらの光L1,L2,L3は、反射する際、各反射面7a,7cにそれぞれ形成された拡散ステップによって拡散する。そして、反射によって拡散した光L1,L2,L3は、インナレンズ8を透過して車両後方へと進み、最終的にアウタレンズ3を通過して赤色光として車両後方に向かって出射するため、テールランプ1が点灯して本来の機能を発揮する。
【0030】
以上のように、本実施の形態に係るテールランプ1においては、リフレクタ7の反射面7aに加えて、該リフレクタ7に延設された延長部7Aにも反射面7cを形成したため、テールランプ1をアウタレンズ3越しにどの方向から見ても反射面7a,7cが見えることとなる。従って、テールランプ1をどの方向から見ても当該テールランプ1が正面視と同様に均一発光しているように見えてその点灯フィーリングが高められる。又、LED5から出射する光の一部L3がリフレクタ7の延長部7Aに形成された反射面7cによっても反射して発光に供せられるため、各LED5からの光の利用効率が高められる。
【0031】
そして、本実施の形態に係るテールランプ1においては、各LED5から出射する光は、リフレクタ7とこれに形成された延長部7Aの各反射面7a,7cでそれぞれ反射する際に拡散ステップによって拡散し、この拡散した光は、インナレンズ8を透過する際に拡散ステップによって更に拡散するため、当該テールランプ1の更なる均一な面発光が実現するという効果が得られる。
【0032】
更に、本実施の形態に係るテールランプ1においては、1つのインナレンズ8を用いることによって均一な面発光が実現するため、複数のインナレンズを要していた従来の車両用灯具(
図5参照)に対して部品点数を削減することができ、当該テールランプ1の軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0033】
ところで、本実施の形態に係るテールランプ1においては、
図3に示すように、リフレクタ7の底面7bには、該底面7bに形成された複数の孔7dと孔7dとの間にリブ状の仕切り7eが形成され、この仕切り7eによって各LED5からの光が遮られるが、各LED5から出射する光は、前述のようにリフレクタ7の延長部7Aに形成された反射面7cによっても反射して当該テールランプ1の均一発光に供せられるため、各仕切り7eによって発光にダークが発生することがなく、発光面の全体が均一に発光するために問題は発生しない。
【0034】
尚、以上は本発明をリアコンビネーションランプに備えられたテールランプに対して適用した形態について説明したが、本発明は、テールランプ以外の例えばヘッドランプ、DRL(Day Running Lamp)、ライセンスランプ等の任意の車両用灯具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【0035】
又、以上の実施の形態では、リフレクタ7の反射面7aと延長部7Aの反射面7c及びインナレンズ8の入射面8aに拡散ステップを設けたが、拡散ステップはリフレクタ7の反射面7a,7cとインナレンズ8の何れか一方に設けても良い。ここで、拡散ステップとしては、魚眼カット等のレンズアレイやシボ等が利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 テールランプ(車両用灯具)
2 ハウジング
3 アウタレンズ
4 灯室
5 LED
6 基板
7 リフレクタ
7A リフレクタの延長部
7a リフレクタの反射面
7b リフレクタの底面
7c 延長部の反射面
7d リフレクタの孔
7e リフレクタの孔の間の仕切り
8 インナレンズ
8a インナレンズの入射面
8b インナレンズの出射面
L1〜L3 光
S 空間