特許第6936110号(P6936110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 田村 晋治郎の特許一覧

<>
  • 特許6936110-鉄道模型用信号制御システム 図000011
  • 特許6936110-鉄道模型用信号制御システム 図000012
  • 特許6936110-鉄道模型用信号制御システム 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6936110
(24)【登録日】2021年8月30日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】鉄道模型用信号制御システム
(51)【国際特許分類】
   A63H 19/34 20060101AFI20210906BHJP
【FI】
   A63H19/34
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-200682(P2017-200682)
(22)【出願日】2017年10月16日
(65)【公開番号】特開2019-72215(P2019-72215A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】507325448
【氏名又は名称】田村 晋治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100133802
【弁理士】
【氏名又は名称】富樫 竜一
(74)【代理人】
【識別番号】100197181
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 泰子
(72)【発明者】
【氏名】田村 晋治郎
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−225472(JP,A)
【文献】 特開2007−191140(JP,A)
【文献】 特開昭55−088790(JP,A)
【文献】 LED鉄道信号機 - もけいや松原,[online],2016年10月24日,http://mokei-ya.la.coocan.jp/tetudousingouki.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 19/00−19/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模型列車を走行させる軌道と
軌道の分岐若しくは合流を行う複数の分岐器と
軌道上における模型列車の有無若しくは通過を検知可能に構成した複数の模型列車検知手段と
前記模型列車による分岐器の通過若しくは通過禁止を信号灯の現示によって示す複数の信号機と、
当該信号機の一又は複数と接続して当該接続した信号機の現示を制御する複数の制御手段と、
前記複数の制御手段を通信可能に接続する通信手段を有し、
前記制御手段は、接続している模型列車検知手段が取得した検出情報および信号機の現示情報を含む状態情報を他の制御手段に対して送信可能に構成するとともに、他の制御手段が出力した状態情報に基づいて接続している信号機の現示を制御するように構成したことを特徴とする鉄道模型用信号制御システム。
【請求項2】
前記他の制御手段が出力した状態情報に基づく信号機の現示は、想定される状態情報に対応して予め用意されている連動制御情報に基づいて行われることを特徴とする請求項1記載の鉄道模型用信号制御システム。
【請求項3】
前記送信可能に構成された状態情報は、当該状態情報に対応して記憶されている文字データとして出力されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の鉄道模型用信号制御システム。
【請求項4】
各制御手段は、他の制御手段が出力した文字データと自機が出力する文字データを一連の形で連結した制御用電文を生成するとともに、当該制御用電文を前記通信手段を介して送受信可能に構成したことを特徴とする請求項3記載の鉄道模型用信号制御システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道模型用信号制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々なレイアウトでレール施設して模型列車を走行させる鉄道模型がある。このような鉄道模型には、玩具要素を主にした子供向けのものから、風景や駅舎、鉄道各社が有する路線を再現したような鉄道マニアが独自に構築するものまで様々なものがある。
鉄道模型には、特許文献1記載の鉄道模型用信号機のように、レール上に信号機や踏切を設け、走行する模型列車の通過に伴ってこの信号機や踏切を動作させるようにしたものがある。実際の鉄道では信号機の現示に従って列車を走行させるが、特許文献1記載の鉄道模型用信号機は、制御を伴わず単純に走行する模型列車の通過に応じて信号機や踏切がそれらしく動作しているように見せかけるものであり、信号機によって模型列車の通過を制御するものではない。
【0003】
また、特許文献2には、実際の鉄道会社で実施されている列車の運行制御方法に関して、中央司令所に設置した地上装置が車両(車上装置)と無線通信を行い、受信した信号をもとに位置検知区間を単位として列車の位置を検知するものが記載されている。これは、設定した区間に列車が存在するか否かを在線管理情報として認識する無線列車制御装置に関するものであり、レール上に設定した位置検出区間に軌道リレーを設けて列車を検出し、無線通信による位置情報との整合性を確認した上で列車の運行を制御するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−237508号公報
【特許文献2】特開2014−83901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前述した特許文献1記載の鉄道模型用信号機は、停止することなく自走する列車に合わせて信号機等を動作させるものであって、信号機によって列車の進行を制御しようとするものではない。
また、特許文献2記載の無線列車制御装置は、複数の列車に関する運行情報を中央司令所に集約し、中央司令所の制御によって各列車の運行制御を行うものである。このような列車運行の中央制御は鉄道各社において行われているところであるが、信号機、分岐器等の増設や撤去等を行う場合には、制御を行うプログラム自体を変更する必要がある。このようなプログラムの変更は、変更に関わる信号機や分岐器等に関わる全ての要素について誤動作が生じないよう細心の注意をもって行われるものである。また、変更後のシステムが正常に動作するかといった検証作業も慎重に行わなければならず時間を要するものとなっている。
【0006】
鉄道模型には、特許文献1に記載されているような自走する模型列車を見て楽しむものもあれば、コントローラーによって模型列車を操作して走行させるものまである。後者は使用者の好みに応じてレール、信号や分岐器等を自由に組み合わせて設けることができ、また信号機の現示にしたがって模型列車を走行させたり停止させたりする等、実際の鉄道のような臨場感を伴った運転操作が可能であることから、マニア向けの鉄道模型ということができる。
このようなマニア向けの鉄道模型においては、レール、信号や分岐器等といった要素を任意に組み合わせたり、組み替えたり、増設することが楽しみの一つであるが、模型列車の進行状態や分岐器の状態等に応じて適切に信号機が動作するように制御設定を変更する必要がある。しかしながら、特許文献2に記載されているような信号システムを鉄道模型に適用し、複雑な制御設定を中央で一括制御しているプログラムの変更によって行うことは現実的ではなく適した方法とは言えないものである。
本発明は、当該事情に鑑みて発明したものであって、軌道(レール)、信号機や分岐器等を任意に組み合わせたり、組み替えたり、増設したりする場合であっても、模型列車の位置や分岐器の状態に応じた信号の現示内容を適切に制御することができる、設定の変更が容易な鉄道模型用信号制御システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、
模型列車を走行させる軌道と
軌道の分岐若しくは合流を行う複数の分岐器と
軌道上における模型列車の有無若しくは通過を検知可能に構成した複数の模型列車検知手段と
前記模型列車による分岐器の通過若しくは通過禁止を信号灯の現示によって示す複数の信号機と、
当該信号機の一又は複数と接続して当該接続した信号機の現示を制御する複数の制御手段と、
前記複数の制御手段を通信可能に接続する通信手段を有し、
前記制御手段は、接続している模型列車検知手段が取得した検出情報および信号機の現示情報を含む状態情報を他の制御手段に対して送信可能に構成するとともに、他の制御手段が出力した状態情報に基づいて接続している信号機の現示を制御するように構成したことを特徴とする鉄道模型用信号制御システム。
【0008】
また、上記鉄道模型用信号制御システムにおいて、
前記他の制御手段が出力した状態情報に基づく信号機の現示は、想定される状態情報に対応して予め用意されている連動制御情報に基づいて行われることを特徴とする。
【0009】
また、上記鉄道模型用信号制御システムにおいて、
前記送信可能に構成された状態情報は、当該状態情報に対応して記憶されている文字データとして出力されることを特徴とする。
【0010】
また、上記鉄道模型用信号制御システムにおいて、
各制御手段は、他の制御手段が出力した文字データと自機が出力する文字データを一連の形で連結した制御用電文を生成するとともに、当該制御用電文を前記通信手段を介して送受信可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる鉄道模型用信号制御システムは、設置した信号機の制御を、関連する他の信号機の現示内容および模型列車の検出若しくは通過状況に応じて設定されている複数の連動条件の中から選択することによって行うようになっている。
関連する他の信号機とは、自機を主とした場合に信号機の現示を決定する上で考慮しなければならない他の信号機のことであり、専ら模型列車の進行ルート上に存在する自機の次に設けられている信号機およびさらに次の信号機が対象となる。これは、一の信号機と他の信号機の間の区間に模型列車が存在している場合若しくは存在していると推定される場合には、その区間に他の模型列車を進入させないことを基本とするものである。また、上記の区間の一つ先の区間に列車が存在している場合には、次の信号機は停止信号であるので上記の区間に進入する場合には徐行させるような制御を行うものである。
【0012】
全ての制御を一つのプログラムによって構成すると、分岐を増加させたり省いたりするような変更を加えた場合であっても、プログラム自体を書き換えなければならない。プログラムの作成や変更を行うには知識が必要であり、書き換えに不備があれば正常な動作は行われない。このため、プログラムの作成が不得手の者にとって、プログラム自体を書き換える作業は非常にハードルが高く難しい作業である。
これに対して本発明にかかる鉄道模型用信号制御システムは、上記のように関連する他の信号機や模型列車の検出状況に応じて、自機となる信号機の現示を制御するようにしたものである。これは、信号機の制御を行う制御手段に予め簡単な記述ルールに従った条件設定をしておくだけで可能となるものであり、プログラムの作成知識が無くても行うことができるものである。本発明は、このように軌道を分岐させる分岐器や信号機を増設する等の変更を加えた場合であっても、簡単に信号機の制御内容を変更若しくは追加することが可能であるという効果を有しているものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態に係る鉄道模型の概要を表した説明図である
図2】本実施の形態に用いる制御回路基板の説明図である。
図3】本実施の形態に用いる管理手段の管理画面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
本発明は、実際の鉄道を所定の縮尺で縮小した鉄道模型に関するものである。日本ではNゲージと称される規格の鉄道模型が一般的に親しまれている。このNゲージといった規格の鉄道模型は、サイズを縮小した模型列車に動力を搭載して走行させることができるものであり、コントローラーの操作によって模型列車の発進、停止等を制御することが可能である。また、模型列車を走行させるレール(軌道)は、閉じた単線路として周回状に形成する場合の他、複数の分岐を設けて様々なレイアウトで軌道を構成すると共に複数の模型列車を走行させることができるものである。本実施の形態に係る鉄道模型1は、このような様々なレイアウトで軌道を構成することができる鉄道模型として構成されたものである。
【0015】
本実施の形態に係る鉄道模型1は、実際の鉄道路線のように分岐器によって進行方向を分岐させた支線を複数設けるとともに、分岐器への進入に対する許可や禁止等の指示(現示)を行う信号機を設けたものである。
図1は、駅の構内(場内)に敷設された軌道の一例を示している。この例では、本線である1つの軌道(本線軌道)R0を、親分岐として設けた分岐器B1によって本線軌道R0方向若しくは支線軌道r1(r2)方向に分岐できるように構成している。また、支線軌道r1(r2)方向に分岐した軌道は、さらに子分岐として設けた分岐器B2によって、支線軌道r1若しくは支線軌道r2に模型列車を誘導するように構成している。
親分岐、子分岐を通過した支線軌道r2は、分岐器B3を経て支線軌道r1に合流するように構成されており、支線軌道r1はさらに分岐器B4を経て本線軌道R0に合流するようになっている。
【0016】
分岐器B1を中心とした一定の距離範囲にある区間K1内には、本線軌道R0への進行に対する現示を行う信号機S1と、支線軌道r1への進行に対する現示を行う信号機S2が配置されている。現示とは、信号灯によって行う停止(赤色)、徐行(黄色)、進行(緑色)等の指示内容のことである。信号機S1と信号機S2は共に分岐器B1の手前側に配置され、信号機S1が停止以外の現示であれば直進側への進入が可能であり、信号機S2が停止以外の現示であれば分岐側r1への進入が可能であると判断されるものである。
【0017】
また、区間K1内の信号機S1の近傍には本線軌道R0へ進入しようとする模型列車を検出する模型列車検知手段としてセンサSe1を設け、信号機S2の近傍には支線軌道r1へ進入しようとする模型列車を検出するセンサSe2を設けている。原則として信号機の設置位置にセンサを設けるのが好ましいが、物理的な制約により困難な場合には信号機を設置した付近に設ける。
一例としてセンサSe1、Se2は模型列車に取り付けたリフレクタ(反射板)に検出光を照射してその反射光を検出する検出器によって構成されている。模型列車の検出方法には、模型列車の近接に反応するリードスイッチを使用する方法や、模型列車の車体や車輪による物理的な接触を検出する方法や、車輪によるレール間の電気的な導通を検出する方法など様々の方法があり上記の例に限らないものである。
模型列車検知手段として上記のようなセンサを使用すると、信号機の設置位置(設置位置の付近を含む)に模型列車が到達したことを検出することができる。また、模型列車が信号機(センサの設置位置)を通過したか否かを、検出開始(検出信号High)から検出終了(検出信号Low)までの時間や、検出信号の波形から判断することが可能になっている。
【0018】
上記分岐器B1と同様に、分岐器B2を中心とした区間K2には、支線軌道r1への進行に対する指示を行う信号機S3と、分岐した支線軌道r2への進行に対する指示を行う信号機S4が設けられている。また、信号機S3の近傍には模型列車を検出するセンサSe3を設け、信号機S4の近傍には模型列車を検出するセンサSe4を設けている。センサの配置、形式、作用等は上記のセンサSe1、Se2と同様である。
また、信号機S3と信号機S4は、前述した信号機S1、S2と同様に信号機の先にある場内への入場について許可または不許可の管理を行う役割を有しており、場内信号機と呼ばれるものである。
【0019】
本線軌道R0および支線軌道r1から分岐した支線軌道r2は、進行方向において分岐器B3によって再び支線軌道r1と合流し、支線軌道r1は分岐器B3の先に配置された分岐器B4によって本線軌道R0と合流するように構成されている。
本線軌道R0と支線軌道r1を合流させる分岐器B4を中心とした区間K3には、分岐器B4手前の本線軌道R01上に存在する模型列車に対して進行等を指示する信号機S5を設けている。
また、分岐器B4を通過した後の本線軌道R01上には信号機S8を設けている。これらの信号機S5、S8を配置した位置若しくは配置位置の直近には、それぞれ模型列車を検出するセンサSe5、Se8を設けている。
【0020】
分岐器B3を中心とした区間K4には、分岐器B3の手前の支線軌道r1に信号機S6を設け、分岐器B3の手前の支線軌道r2に信号機S7を設けている。また、これらの信号機S6、S7を配置した位置若しくは配置位置の直近には、それぞれ模型列車を検出するセンサSe6、Se7を設けている。
上記の信号機S5〜S7は「出発信号機」と呼ばれるものであり、各々の信号機を設けた場内の番線からの出発について許可または不許可を現示する役割を有している。
また、信号機S8は場内(駅)外を想定した閉塞信号機と呼ばれるものであり、信号機S8から先への進入についての許可または制限を管理するために設置されている。
【0021】
上記各区間K1〜区間K4に配置した各分岐器、信号機、センサ等の各手段は、各区間K1〜区間K4に対応して設置した制御手段C1〜C4に接続されている。
各制御手段C1〜C4は、シリアル通信インターフェースの規格の一つであるRS−232C規格の通信ケーブルTによって接続されており、末端にある制御手段C1は同じく同仕様の通信ケーブルTによって管理手段C0に接続されている。
すなわち、管理手段C0と各制御手段C1〜C4は同仕様の通信ケーブルTに直列的に接続されており、これにより各手段間において情報の送受信が可能になっている。なお、本実施の形態においては4個の制御手段C1〜C4のみを表しているが、4個に限るわけではなく4個以上の複数個(N個)を設けてもよい。
【0022】
各制御手段C1〜C4は同一構成の制御回路基板2を有している。この制御回路基板2は、図2に示すように信号機と接続する2つの信号機接続用コネクタ3(3a、3b)を有している。
さらに制御回路基板2は、分岐器に設けた分岐方向検出器(図示せず)と接続するための分岐方向検出器用コネクタ4、列車の通過を検出するために各信号機の近傍に設置したフォトリフレクタ検出器(模型列車検知手段)と接続するためのフォトリフレクタ用コネクタ5(5a、5b)、列車検出を車輪フランジ接触等の電圧検知により実施する場合に接続する場合に使用する電圧検知用コネクタ6、通信ケーブルTを接続するための通信用コネクタ(通信ポート)7(7a、7b)、電源接続用のコネクタ8等を有するとともにプログラムの実行によって各手段を制御する演算手段9を搭載している。この演算手段は、RICS CPUによって構成されている。電源接続用のコネクタには、DC5V出力のAC/DCアダプタからのケーブルを差し込むようになっている。
その他、制御回路基板2には、フォトカプラ接続用ソケット10、信号機の輝度を調節するためのボリュームスイッチ11(11a、11b)、フォトリフレクタ感度調整ボリューム12等を設けている。
【0023】
各制御手段C1〜C4で伝送される通信データは通信ケーブルTによってRS232C規格で相互に送受信される。また、シリアル接続された各制御手段の末端に配置されている制御手段C1には、所謂パーソナルコンピュータ等によって構成された管理手段C0が接続されている。
管理手段C0および各制御手段C1〜C4間で送受信(伝送)される情報は、主として列車検知情報・列車通過情報・分岐器開通情報・信号機現示番号の4種であり、電源が切断されるまで各管理手段間において繰り返し送受信されるようになっている。
【0024】
図1に示した鉄道模型1の場合、信号機が一つの制御手段(C1〜C4)に最大2機割り当てられている。制御手段は、信号機管理システムCTCや訓練システムが存在する場合と存在しない場合の2種に対応しており、管理手段C0が無い状態でも運用可能となっている。
また、管理用PCに接続する制御手段の信号機のIDは必ず1を含むものとし、以降は信号機にユニークなID番号を割り当てる。ただし、列車検知に関係しない従属的な信号機(中継信号機、遠方信号機等)の場合にはIDを90以上に設定する。
【0025】
前述のように管理手段C0および各制御手段C1〜C4間で送受信(伝送)される情報は、主として列車検知情報・列車通過情報・分岐器開通情報・信号機現示番号の4種であり、各管理手段によって8ビットからなる一つの情報として生成される。具体的には、以下の通りである。
1ビット目:普段”0”、管理用PCからの現示制御時に”1”(訓練システム、CTC制御用)
2ビット目:”1”固定
3ビット目:列車検知ON時”1”、OFF時”0”
4ビット目:列車通過完了時”1”,それ以外は”0”
5ビット目:分岐器開通時”1”、非開通時”0”(ただし信号種別が親分岐か子分岐のみ)
6ビット目〜8ビット目:現示番号(ビットから演算した整数が現示番号)
【0026】
制御回路基板2に搭載したマイクロコンピュータによって構成される演算手段9には、上記8ビットの情報と制御文字を対応させた表1に示す内容のデータテーブルが記憶されている。演算手段9は、自機が管理する列車検知等の8ビット情報を取得すると、これに対応する制御文字(A、K、a)をデータテーブルから取得し、この制御文字を出力するようになっている。
【表1】
【0027】
例えば、取得した8ビット情報が[01000001]であればこれを代替する制御文字は「A」である。すなわち、制御文字Aは、列車検知OFF、通過なし、分岐器非開通、現示番号1を表している。
また、取得した8ビット情報が[01001011]であればこれを代替する制御文字は「K」である。すなわち、制御文字Kは、列車検知OFF、通過なし、分岐器開通、現示番号3を表している。
また、取得した8ビット情報が[01101001]であればこれを代替する制御文字は「a」である。すなわち、列車検知ON,通過なし、分岐器非開通、現示番号1を表している。
【0028】
制御文字として取得される上記の情報は、他の制御手段が出力した同様の制御文字とともに、「@AAKAAaAAAK」のような連続した制御用電文の一要素として加えられ、各制御手段C1〜C4および管理手段C0との間で送受信されるものである。
この制御用電文は、他の制御手段が管轄している信号機等の各手段の状態を取得することができる情報(状態情報)と、自機が管轄している各手段の状態を他の制御手段に対して出力することができる情報(状態情報)を含む情報となっている。
【0029】
信号機は、列車の進行方向に他の列車が存在する場合には、追突を防止するために停止や徐行を指示する現示を行わなければならない。このような制御を行うには、これから通過しようとする区間内(一の信号機から次の信号機までの間)に、先行列車が存在しているか否か、またさらに次の区間に先行列車が存在しているか否かといった情報を取得する必要がある。
一つの制御手段は、上記の電文を受信することによって、他の制御手段が管轄する領域における列車検知、分岐器の開通もしくは非開通情報、信号の現示状態を認識することができる。制御手段は、このような他の制御手段が所管する各手段の状態に応じて自ら所管する領域に設けた信号機等の各手段を制御するようになっており、さらに自機が所管する状態情報を制御用電文に含めて他の制御手段に送信することが可能になっている。
本実施の形態に係る鉄道模型1は、各制御手段の間において上述した制御用電文を逐次書き換えながら送受信を行うようになっている。このため、各制御手段が管轄している各手段の状態をリアルタイムで認識しつつ、これに対応した信号等の各手段の制御を行うことが可能になっている。
【0030】
本実施の形態では、信号機の一例として緑(G)、黄(Y)、赤(R)の三色の現示を示す色灯式信号機を用いている。この信号機では、現示番号1が赤(R)の灯色であり「停止」を示し、現示番号2が黄(Y)の灯色であり「徐行」を示し、現示番号3が緑(G)の灯色であり「進行」を示している。
なお、当然ながら信号機の灯色数は3色に限るわけではなく、点灯や点滅を組み合わせて現示を行うものでも差し支えない。この場合、使用する信号機の種類に応じた現示制御が行われるものである。
【0031】
各信号機は、それぞれ自機以外の信号機の現示内容、信号機に近接して設置したセンサによる列車検知や列車の通過完了、分岐器が開通もしくは非開通であるか等の情報(状態情報)に基づいて制御されるようになっている。この自機以外の状態情報は、前述した制御用電文によってリアルタイムに取得することができる。
制御用電文を取得した制御手段は、当該制御用電文から自機に関連する他の制御手段が所管する各手段の状態情報を取得すると、これに対応する連動制御情報を演算手段9に記憶したデータテーブルから取得して実行する。
【0032】
連動制御情報は、動作条件と動作内容を記述した制御情報であり、以下に示す記述方式によって演算手段9に記憶される。この連動制御情報は、専用プログラムを使用して使用者等によって書き換えることが可能な情報であり、各IDによって識別される信号機ごとに設定される制御情報となっている。
連動制御情報は、制御回路基板2に設けた通信用コネクタ(通信ポート)7のポート番号(1若しくは2)+関連付けイベント表現記号(T,E,P,F,C,D)+関連付け信号機IDとその現示番号+自身の連動現示番号から構成される。
【0033】
通信用コネクタ(通信ポート)7のポート番号1には、その制御手段が所管する信号機の進入側方向に配置された他の制御手段が接続され、通信用コネクタ(通信ポート)7のポート番号2には、その制御手段が所管する信号機の進行方向側に配置された他の制御手段が接続されるようになっている。
連動制御情報には、この接続先信号機ポート番号が記述されるようになっており、ポートの接続先が進入方向側に設けた制御手段によるものか、進行側に設けた制御手段によるものであるかを区別するようになっている。
また、関連付けイベント表現記号のTは列車検知、Eは列車編成後端が内方に入った場合、Pは分岐状態による制御、Fは単純な信号機現示連動、Cは場内信号機と連動する中継信号機および遠方信号機との連動、Dは閉塞信号機と連動する中継信号機および遠方信号機との連動を表している。
【0034】
連動制御情報の設定例を示すと以下の通りである。
“1T0311”:信号機03が列車検知かつ現示番号が1の時に自身の現示を1に切り替える
“1E0312”: 信号機03が列車通過完了かつ現示番号が1の時に自身の現示番号を2に切り替える
“2P0418”:信号機04のルートにある分岐器開通時、自身のルートも開通、現示番号は列車位置関係に従う(現示指定番号はダミー)
“1F0318”:信号機03の現示番号に従って自身の現示を決定する(3現示方式の場合、03がRの時にはY、Yの時にはG)※現示指定はダミー
“1C0211”:場内信号機02の現示番号1に従って自身を指定現示1に切り替える
“1D0222”:閉塞信号機02の現示番号2に従って自身を指定現示2に切り替える
【0035】
上記の連動制御情報は、上記に示した記述データを、設置対象の路線線型と信号機設置設計に合わせて構成するものであり、設置した各信号機に対応したデータを登録することで、各信号機同士が連携して動作を行うことが可能になっている。
制御手段によって制御する信号機の現示内容は、連動制御情報に基づいて行われるものであり、この連動制御情報は、他の制御手段から取得した制御用電文を解読して得られる状態情報に応じて選択されるものである。
連動制御情報は、模型列車が進行する上で関連する各手段の状態に応じて定められる相対的な条件であり、その記述方法も簡易であり書き換えも容易となっている。このため、信号機追加や削除、位置変更、または連動条件が変更となった場合でも機器構成やプログラム改修を行うことなく、変更に対応した信号機等の制御設定を行うことを可能としている。
【0036】
図1に示した路線モデルを例として、設置した信号機(S1〜S8)に関する具体的な連動制御情報の設定例を説明する。
各信号機S1〜S8には固有のIDが設定される。信号機S1にはID1、信号機S2にはID2、信号機S3にはID3、信号機S4にはID4、信号機S5にはID5、信号機S6にはID6、信号機S7にはID7、信号機S8にはID8が割り当てられている。
【0037】
本実施の形態における信号機の制御は、一の制御手段が制御対象とする信号機(基準信号機)と、模型列車が通過する予定の次の信号機(第2信号機)およびさらに次の信号機(第3信号機)との間に、先行する模型列車が存在しているか否かという点を最も基本的な判断基準として連動制御情報を設定している。また、上記次の信号機(第2信号機)およびさらに次の信号機(第3信号機)について連動制御情報を設定する場合には、さらにその先に設置してある信号機との間における模型列車の存在や通過状況に応じて現示内容を決定する。
【0038】
各信号機S1(ID1)〜S8(ID8)設定される連動制御情報である「連動条件文」の一例を示すと表2〜表9のようになる。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0039】
本実施の形態に係る鉄道模型1は、図1に示されている軌道の分岐や信号機の配置などに追加や削除等の変更が生じた場合、その変更によって影響がおよぶ範囲にある制御手段の連動制御情報(連動条件文)を変更することによって適切な信号制御を行うようになっている。
連動条件文の新規登録若しくは書き換えが必要な信号機を「主」、この信号機の制御に影響を与える他の信号機(連動対象信号機)を「副」とした時、主の連動条件文は現示を決定する全ての副との関連付を整理した上で、上記した所定の記述書式に従って構築する。
【0040】
例えば、次の信号機までの区間に他の列車が存在している場合(次の信号機が列車を検知している場合、あるいは列車の通過を確認していない場合)に、信号の現示1(赤)にして列車を停止させる。また、次の信号までの区間には他の列車が存在していないが、さらに次の信号までの区間に他の列車が存在している可能性がある場合には信号を現示2(黄)にして進行する列車に注意を促す。また、次の信号までの区間に他の列車が存在しておらず、さらに次の信号までの区間に他の列車が存在していないことが確認されている場合には信号を現示3(青)にして、次の信号機までの区間に関して通常運転での走行を許可するような連動条件文の設定が行われる。
上記の連動条件文の設定は、基本的な動作プログラムを変更する必要がなく、変更が必要な制御手段のみについて連動条件文を書き換えれば良いものであるから、システム全体に影響を及ぼすような事態が起こる可能性は極めて低く、プログラムの破壊やバグの発生を誘発する危険性も限りなく少ないものとなっている。
【0041】
前述した通り、連動条件文は制御手段が有する演算手段9内部の記憶メモリの中に登録されるようになっている。
システムを起動した直後は、メモリに登録された初期現示データに従って現示を行った後に待機状態になり、その後、接続された他の制御手段から受信した制御用電文を受信する。制御用電文によって、各制御手段が所管する各手段の現示番号、分岐開通状態、列車検知有無、列車通過有無等の状態情報が取得されるので、この状態情報に基づき連動条件文を選択し管轄する信号機の現示制御を行うようになっている。制御用電文は、それぞれの制御手段において状態情報に変動が生じたタイミングで送信されるようになっており、他の制御手段は常に最新の情報を取得できるようになっている。
なお、連動条件文が複数検索される場合を想定し、予め実行する連動条件文の優劣を設定しておいても良い。例えば、停止や注意を現示する連動条件文と進行を現示する連動条件文が検索された場合には、安全性の観点から停止若しくは注意を現示する連動条件文の制御を優先した現示が行われる。
【0042】
路線内に存在する各信号機の現示情報は、通信ケーブルTを介して制御用PCで構成される管理手段C0によって受信される。
管理手段C0が有する表示手段の画面上には図3に示す信号機の現示状態が表示されるようになっており、現示情報を受信すると直ちにその内容に応じた現示状態を表示するようになっている。また、本鉄道模型1では、別途設けている自動制御踏切制御装置の動作状態の監視も行うように構成されている。
【0043】
本実施の形態に係る鉄道模型1では、管理手段C0が分岐器B1〜B4の制御を行うようになっている。なお、分岐器B1〜B4の操作については使用者が手動で行えるようにしても良く、さらに別個の制御手段を設けて行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、模型列車を走行させる鉄道模型に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 鉄道模型
2 制御回路基板
3 信号機接続用コネクタ
4 分岐方向検出器用コネクタ
5 フォトリフレクタ用コネクタ
7 通信用コネクタ(通信ポート)
9 演算手段

図1
図2
図3