特許第6936145号(P6936145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6936145創傷治療用及び表面治療用の細菌製剤の増殖、保存、及び使用のための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6936145
(24)【登録日】2021年8月30日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】創傷治療用及び表面治療用の細菌製剤の増殖、保存、及び使用のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/70 20060101AFI20210906BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20210906BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20210906BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20210906BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20210906BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20210906BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20210906BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20210906BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20210906BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20210906BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20210906BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20210906BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   C12N15/70 ZZNA
   C12N15/31
   C12N1/21
   C12N1/20 B
   C12N1/20 A
   A61K35/74 A
   A61K9/10
   A61K9/19
   A61K47/02
   A61K47/10
   A61K47/18
   A61K47/26
   A61K47/38
   A61P17/02
   A61P31/04
【請求項の数】15
【全頁数】78
(21)【出願番号】特願2017-534254(P2017-534254)
(86)(22)【出願日】2015年12月23日
(65)【公表番号】特表2018-501795(P2018-501795A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】US2015000246
(87)【国際公開番号】WO2016105510
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2018年12月25日
(31)【優先権主張番号】62/096,980
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510033594
【氏名又は名称】コンジュゴン,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ドルシー,カレブ,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ジョシュア,アロン
(72)【発明者】
【氏名】ワット,スティーヴン,ロバート
【審査官】 星 功介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−542302(JP,A)
【文献】 特表2007−530013(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0003454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
A61K 35/00−35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えプラスミドpCON44−74を含む組成物であって、前記プラスミドは、
主鎖ベクターpCON42−31と、
pCON44−66由来のcolE3−aroA−colE7殺傷カセットと、を含む、組成物。
【請求項2】
供与菌細胞であって、
(i)請求項1に記載の前記組換え伝達性プラスミドpCON44−74と、
(ii)受容細胞に伝達性プラスミドを接合伝達する能力を前記供与菌細胞に付与する1以上の伝達遺伝子と、
(iii)前記供与菌細胞を化合物について栄養要求性にする遺伝子における変異と、を含む、前記供与菌細胞。
【請求項3】
サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、エシェリヒア属(Escherichia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、セラチア属(Serratia)、プロテウス属(Proteus)、エルシニア属(Yersinia)、シトロバクター属(Citrobacter)、エドワードシエラ属(Edwardsiella)、プロビデンシア属(Providencia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ハフニア属(Hafnia)、エウィンゲラ属(Ewingella)、クライベラ属(Kluyvera)、モルガネラ属(Morganella)、プラノコッカス属(Planococcus)、ストマトコッカス属(Stomatococcus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ビブリオ属(Vibrio)、アエロモナス属(Aeromonas)、プレシオモナス属(Plessiomonas)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、パスツレラ属(Pasteurella)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ウレアプラズマ属(Ureaplasma)、リケッチア属(Rickettsia)、コクシエラ属(Coxiella)、ロシャリメア属(Rochalimaea)、エールリヒア属(Ehrlichia)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、アエロコッカス属(Aerococcus)、双子菌属(Gemella)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディコッカス属(Pedicoccus)、バチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、アルカノバクテリウム属(Arcanobacterium)、アクチノミセス属(Actinomyces)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、リステリア属(Listeria)、エリジペロスリックス属(Erysipelothrix)、ガードネレラ属(Gardnerella)、ナイセリア属(Neisseria)、カンピロバクター属(Campylobacter)、アルコバクター属(Arcobacter)、ウォリネラ属(Wolinella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、クリセオモナス属(Chryseomonas)、コマモナス属(Comamonas)、エイケネラ属(Eikenella)、フラビモナス属(Flavimonas)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、モラクセラ属(Moraxella)、オリゲラ属(Oligella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、シュワネラ属(Shewanella)、ウィークセラ属(Weeksella)、ザントモナス属(Xanthomonas)、ボルデテラ属(Bordetella)、フランシセラ属(Franciesella)、ブルセラ属(Brucella)、レジオネラ属(Legionella)、アフィピア属(Afipia)、バルトネラ属(Bartonella)、カリマトバクテリウム属(Calymmatobacterium)、カルジオバクテリウム属(Cardiobacterium)、ストレプトバチルス
属(Streptobacillus)、スピリルム属(Spirillum)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、ペプトコッカス属(Peptococcus)、サルシナ属(Sarcinia)、コプロコッカス属(Coprococcus)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、モビルンカス属(Mobiluncus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロチア属(Rothia)、クロストリジウム属(Clostridium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、プレボテラ属(Prevotella)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、バイロフィラ属(Bilophila)、レプトトリキア属(Leptotrichia)、アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)、メガスフェラ属(Megasphaera)、ベイヨネラ属(Veilonella)、ノカルジア属(Norcardia)、アクチノマヅラ属(Actinomadura)、ノカルジオプシス属(Norcardiopsis)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、ミクロポリスポラス属(Micropolysporas)、テルモアクチノミセス属(Thermoactinomycetes)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、トレポネーマ属(Treponema)、ボレリア属(Borrelia)、レプトスピラ属(Leptospira)、またはクラミジア属(Chlamydiae)から成る群から選択される、請求項2に記載の供与菌細胞。
【請求項4】
大腸菌CON31−85Aである、請求項2に記載の供与菌細胞。
【請求項5】
芳香族アミノ酸、リジン及び2,6−ジアミノピメリン酸から成る群から選択される1
以上の化合物について栄養要求性である、請求項2に記載の供与菌細胞。
【請求項6】
ミニ細胞、マキシ細胞または非分裂細胞である、請求項4に記載の供与菌細胞。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の供与菌細胞を含む組成物。
【請求項8】
芳香族アミノ酸を欠いている増殖培地を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
2,6−ジアミノピメリン酸及びリジンが補完された増殖培地を含む、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
50mMのリン酸カリウム緩衝液中に10%(w:v)のトレハロースと、2.0%(w:v)のグリセロールと、0.5%(w:v)のヒドロキシエチルセルロースと、を含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
凍結乾燥された形態の請求項7〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
1ml当たり約5×10〜5×1010の供与菌細胞の供与菌細胞を含有する流体またはゲルである、請求項7〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
組織の表面の治療方法に用いる組成物であって、前記治療方法は、前記組織の表面に前記組成物を適用することを含む、前記組織の表面に請求項7〜10および12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組織は病変を有し、
前記病変は、火傷、傷口、擦り傷、膿瘍、癰、潰瘍、フルンケル、及び水膨れから選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
組織病変の細菌感染の治療方法に用いる組成物であって、
前記治療方法は、組織の面積20mm当たり少なくとも5×10cfuの量で感染病変に前記組成物を適用することを含む、請求項7〜10および12のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本出願は、参照によって本明細書に組み入れられる2014年12月26日に出願された米国仮特許出願番号第62/096,980に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は細菌学の分野に関する。特に、本発明は、組織(例えば、皮膚及び他の軟組織の病変)を治療するための新規の組成物(例えば、抗菌剤)及びその使用方法に関する。一部の実施形態では、本発明は微生物の集団を殺傷すること、または微生物の集団の増殖及び病原性を変化させること(例えば、阻害すること)を含む。
〔背景技術〕
例えば、「ESKAPE」病原体(エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumanii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及びエンテロバクター種(Enterobacter species))のような抗生剤耐性病原体の蔓延によって、感染、特に皮膚及び軟組織の感染の治療はますます困難になっている(H.Boucherら,Clin.Infect.Dis.(2009)48(1):1−12)。
【0003】
例えば、熱創傷ケアの永続的な課題の1つは微生物感染の発生である。ヒトは、無菌環境に生存しているのではなく、細菌及びその他の微生物と共生・共存している。無傷の皮膚及び粘膜の表面は、我々の組織と細菌集団との間での微妙な均衡を維持する役割を果たす。皮膚または粘膜の障壁における破損はこの均衡を変化させるので、細菌が下層組織へのアクセスを得て臨界数を達成できるようにすることによって感染を開始する潜在力を有する。熱傷専門医の主要な治療目標の1つは感染を防ぐことであり、汚染が発生した場合、その目標は、微生物汚染を、感染を開始させて蔓延させるのに必要な臨界数未満に減少させることである。抗生剤の発見によって、熱創傷感染は制御下にあると考えられた。しかしながら、細菌は耐性の発生により抗生剤に打ち勝つことができ、実際打ち勝っていることが発見されている。細菌の耐性株の出現は多数の院内感染の主要な原因となり、熱傷専門医に大きな臨床的難問をもたらしている。
【0004】
抗生剤耐性の課題は、皮膚及び軟組織の感染を含むが、これらに限定されない多数の種類の細菌感染すべてに影響を与える。抗生剤耐性病原体生物の増加蔓延の例が多数存在する。テキサス州コーパスクリスティの病院の1つでは、皮膚及び軟組織の感染で最も頻繁に見られる地域感染型のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は1990年の3%から1999年の10%に緩徐に増加し、その後4年を経て2003年に62%へと急増した(Goodman,J.Clin.Invest.114,1181(2004))。マイアミ病院では、足の潰瘍におけるキノロン耐性の緑膿菌は1992年の19%から2001年の56%に増加した(Valencia etal.,J.Am.Acad.Dermatol.50,845−9(2004))。この分野に関して議論されていない。これらの感染を制御するには新しい治療が必要である。
【0005】
硝酸銀、スルファジアジン銀(シルベルデン(Silverdene)、テルマジン(Thermazine)、フラマジン(Flamazine))、及び酢酸マフェニド(スルファミロン(Sulfamylon))のような抗細菌剤の予防的使用は、熱傷創のような創傷において細菌のコロニー形成を低減するための治療の基準になっている。しかしながら、これらの作用物質には限界がある。例えば、シルベルデンは、創傷治癒を遅らせることが示されているが、サルファ剤に対してアレルギー性である患者に用いることができない。スルファミロンの代謝産物は、炭酸脱水酵素の強力なインヒビターであり、それゆえに、代謝性アシドーシスを引き起こしうる。この化合物の使用は、気道傷害を患っている患者および敗血症を発症した患者には特に禁忌である。
【0006】
細菌のコロニー形成を予防または低減するために用いられる他の抗菌剤は、硫酸ゲンタマイシン、バシトラシン、及びニトロフラントインである。残念なことに、これらの抗菌剤の常時使用により、原因菌の耐性株が出現する。
【0007】
熱傷患者の治療におけるケアの基準としてこれらの抗菌戦略が承認されたにもかかわらず、薬剤耐性細菌感染の発生は、長期入院中の患者(例えば、重症の熱傷患者または慢性潰瘍を伴う糖尿病患者)における重大な臨床的問題を課し続けている。
【0008】
したがって、抗菌治療の代わりとなる戦略の開発が強く必要とされている。特に、薬剤耐性微生物に対処し、それらを効果的に殺傷するまたは弱毒化することができる治療が必要とされる。
〔発明の概要〕
本発明は細菌学及び薬理学の分野に関する。特に、本発明は、微生物の集団を殺傷すること、または微生物の集団の増殖及び病原性を変化させること(例えば、阻害すること)を含む、組織(例えば、皮膚及び他の軟組織の病変)を治療するための新規の組成物(例えば、抗菌剤)及びその使用方法に関する。特に、本技術は、受容病原体細胞に毒性であるプラスミドの接合伝達によって感染を予防する、かつ/または治療する有効用量の非分裂細菌細胞を適用するための組成物を提供する。
【0009】
種々の目的で供与細胞から標的受容細胞に遺伝物質を伝達するための接合について説明されている。例えば、それぞれ、あらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に組み入れられるPCT公開WO02/18605、米国特許出願第20040137002号及び米国特許出願第10/884,257を参照のこと。本発明は、接合伝達を使用して受容細胞の細胞機能を変化させる、例えば、標的細胞を殺傷するかまたは損傷する。
【0010】
本技術は、伝達性プラスミドを安定して維持する方法で供与菌を培養し、供与菌の生存能力及び殺傷能力の双方を維持する方法で供与菌を保存するための組成物及び方法に関する。本技術はさらに、細菌がさらに増殖することはできない(例えば、分裂できない)が、殺傷活性は維持される条件下で治療にて供与菌を使用する方法に関する。
【0011】
一部の実施形態では、本技術は自己伝達性ではなく、かつ供与菌細胞製剤にて安定して維持することができる組換えプラスミドを提供する。特定の実施形態では、プラスミドは以下で詳細に記載されるpCON44−74である。
【0012】
一部の実施形態では、本技術は供与菌細胞、例えば、生細菌、またはミニ細胞、マキシ細胞、または非分裂細胞を提供する。一部の好ましい実施形態では、供与細胞は、伝達性プラスミドを受容細胞に接合伝達する能力を付与する1以上の伝達遺伝子を含み、さらに、供与菌細胞を化合物、例えば、栄養素、アミノ酸等について栄養要求性にする遺伝子における突然変異を含むので、細菌細胞が複製するための欠けている化合物で増殖培地が補完されなければならない。特定の好ましい実施形態では、供与菌細胞は1以上の芳香族アミノ酸、2,6−ジアミノピメリン酸、及び/またはリジンに対して栄養要求性である。
【0013】
供与菌細胞は1つの特定の属に限定されない。一部の実施形態では、供与細胞は、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、エシェリヒア属(Escherichia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、セラチア属(Serratia)、プロテウス属(Proteus)、エルシニア属(Yersinia)、シトロバクター属(Citrobacter)、エドワードシエラ属(Edwardsiella)、プロビデンシア属(Providencia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ハフニア属(Hafnia)、エウィンゲラ属(Ewingella)、クライベラ属(Kluyvera)、モルガネラ属(Morganella)、プラノコッカス属(Planococcus)、ストマトコッカス属(Stomatococcus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ビブリオ属(Vibrio)、アエロモナス属(Aeromonas)、プレシオモナス属(Plessiomonas)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、パスツレラ属(Pasteurella)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ウレアプラズマ属(Ureaplasma)、リケッチア属(Rickettsia)、コクシエラ属(Coxiella)、ロシャリメア属(Rochalimaea)、エールリヒア属(Ehrlichia)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、アエロコッカス属(Aerococcus)、双子菌属(Gemella)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディコッカス属(Pedicoccus)、バチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、アルカノバクテリウム属(Arcanobacterium)、アクチノミセス属(Actinomyces)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、リステリア属(Listeria)、エリジペロスリックス属(Erysipelothrix)、ガードネレラ属(Gardnerella)、ナイセリア属(Neisseria)、カンピロバクター属(Campylobacter)、アルコバクター属(Arcobacter)、ウォリネラ属(Wolinella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、クリセオモナス属(Chryseomonas)、コマモナス属(Comamonas)、エイケネラ属(Eikenella)、フラビモナス属(Flavimonas)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、モラクセラ属(Moraxella)、オリゲラ属(Oligella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、シュワネラ属(Shewanella)、ウィークセラ属(Weeksella)、ザントモナス属(Xanthomonas)、ボルデテラ属(Bordetella)、フランシセラ属(Franciesella)、ブルセラ属(Brucella)、レジオネラ属(Legionella)、アフィピア属(Afipia)、バルトネラ属(Bartonella)、カリマトバクテリウム属(Calymmatobacterium)、カルジオバクテリウム属(Cardiobacterium)、ストレプトバチルス属(Streptobacillus)、スピリルム属(Spirillum)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、ペプトコッカス属(Peptococcus)、サルシナ属(Sarcinia)、コプロコッカス属(Coprococcus)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、モビルンカス属(Mobiluncus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロチア属(Rothia)、クロストリジウム属(Clostridium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、プレボテラ属(Prevotella)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、バイロフィラ属(Bilophila)、レプトトリキア属(Leptotrichia)、アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)、メガスフェラ属(Megasphaera)、ベイヨネラ属(Veilonella)、ノカルジア属(Norcardia)、アクチノマヅラ属(Actinomadura)、ノカルジオプシス属(Norcardiopsis)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、ミクロポリスポラス属(Micropolysporas)、テルモアクチノミセス属(Thermoactinomycetes)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、トレポネーマ属(Treponema)、ボレリア属(Borrelia)、レプトスピラ属(Leptospira)、またはクラミジア属(Chlamydiae)から成る群から選択される。好ましい実施形態では、供与菌細胞は大腸菌であり、特に好ましい実施形態では、供与菌細胞は大腸菌CON31−85Aである。一部の実施形態では、供与菌細胞はミニ細胞、マキシ細胞、または非分裂細胞である。
【0014】
本技術は、上述のような供与菌細胞を含む組成物を含む。一部の実施形態では、組成物は芳香族アミノ酸を欠いている増殖培地を含む一方で、他の実施形態では、組成物は化合物で補完された増殖培地を含む。一部の実施形態では、組成物は、チロシン、トリプトファン及びフェニルアラニン、p−アミノベンゾエート及びp−ヒドロキシベンゾエートの1以上を欠いている増殖培地を含む。一部の好ましい実施形態では、増殖培地は2,6−ジアミノピメリン酸及びリジンで補完された最少培地である。
【0015】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、最適な増殖のために制御された条件下で増殖する供与菌細胞を含む。例えば、一部の実施形態では、細胞はpHが制御される条件で増殖する。好ましい実施形態では、組成物のpHはpH7である。一部の実施形態では、組成物における溶存酸素の量が制御される。例えば、一部の実施形態では、組成物は溶存酸素を約50%で維持する条件下で維持される。
【0016】
一部の実施形態では、供与菌細胞を含む組成物は緩衝液を含むかまたは緩衝液から成る。好ましい実施形態では、緩衝液はリン酸緩衝液を含み、特に好ましい実施形態では、リン酸緩衝液はリン酸ナトリウム及び/またはリン酸カリウムを含む。一部の実施形態では、組成物は、例えば、細胞を保存するまたは凍結するための賦形剤混合物、ならびに保護剤及び緩衝液、ならびに任意でゲル化剤も含む。組成物は1またはいくつかの保護剤を含んでもよく、例示的な保護剤として、例えば、無脂肪乳固形分、トレハロース、グリセロール、ベタイン、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルプロピレン、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸一ナトリウム、ツイーン20界面活性剤、ツイーン80界面活性剤、及びアミノ酸塩酸塩が挙げられる。特定の好ましい実施形態では、保護剤はトレハロース、スクロース及び/またはグルコースの1以上を含む。
【0017】
多数の異なるゲル化剤が知られている。例えば、一部の実施形態では、組成物は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルグアー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、カルボマー、アルギネート、ゼラチン及びポロキサマーから成る群から選択される1以上のゲル化剤を含む。
【0018】
特定の好ましい実施形態では、本発明の供与菌細胞を含む組成物は、50mMのリン酸カリウム緩衝液に溶解した10%(w:v)トレハロース及び2.0%(w:v)グリセロールの組成物中に存在する。一部の実施形態では、この組成物は0.5%(w:v)のヒドロキシエチルセルロースをさらに含む。
【0019】
上述のような供与菌細胞の組成物は、例えば、液体、ゲル、凍結または凍結乾燥の形態を含む、生存能力を維持する任意の形態であってもよいことが企図される。例えば、一部の実施形態では、組成物は、凍結乾燥製剤への水または緩衝液の添加によって形成され、これは供与菌細胞と、緩衝液成分、保護剤、及び/またはゲル化剤の1以上とを含有してもよい。特定の好ましい実施形態では、組成物は、例えば、治療用途のために構成されるml当たり約5×10〜5×1010の供与菌細胞(cfu)、好ましくはml当たり約1×10〜1×1010cfuを含有する流体またはゲルである一方で、他の実施形態では、組成物は、例えば、短期保存のために構成される約1×10cfu/ml未満を含有する流体またはゲルを含む。
【0020】
本技術は、本技術の組成物、例えば、pCON44−74のような伝達性殺菌性プラスミドを含む供与菌細胞、例えば、組成物GN−4474の使用方法を提供する。一部の実施形態では、本技術は、組織の表面に組成物を適用することを含み、一部の実施形態では、組成物を適用した後、例えば、帯具、ガーゼ、布、圧定布等で組織表面を覆うことを含む、該組織の表面を治療する方法を提供する。
【0021】
本組成物及び本方法は病変を有する組織の治療で使用される。病変には、例えば、火傷、傷口、擦り傷、膿瘍、癰、潰瘍、フルンケル、水膨れ等が挙げられる。本技術は上皮組織を含む組織への適用にて特に使用される。
【0022】
本技術は適用の特定の方法に限定されない。例えば、一部の実施形態では、本発明の組成物を組織に適用することは、組成物にて組織を浸すこと、洗浄すること、またはすすぐことを含む。一部の実施形態では、組成物は、組成物を医療用具に適用し、治療される組織に該医療用具を接触させることを含む過程によって適用される。
【0023】
治療は、適用のための任意の特定のプロトコルまたはスケジュールに限定されない。例えば、一部の実施形態では、治療することは組成物を組織に単回適用することを含む一方で、一部の実施形態では、適用は組成物を組織に複数回、例えば、予定された一定の間隔で適用することを含む。適用間の時間の間隔は特定の長さに限定されない。例えば、一部の実施形態では、間隔は1時間〜24時間の長さである一方で、一部の実施形態では、間隔は4時間の長さである。治療のスケジュールにおける時間間隔は同じ長さであっても、または異なる長さであってもよい。特定の好ましい実施形態では、複数回の適用は少なくとも3回の適用を含む。
【0024】
本技術は、例えば、組織上で確立された細菌感染を治療する方法、及び組織を治療して感染を防ぐ方法を提供する。一部の実施形態では、組織病変の細菌感染を治療する方法は、例えば、pCON44−74を含む供与菌細胞を含む組成物を、20mmの組織面積当たり少なくとも5×10cfuの量で感染した病変に適用することを含む。好ましい実施形態では、治療は、一定の間隔、例えば、約1時間〜24時間の長さで少なくとも1回、好ましくは2回、さらに好ましくは3回繰り返される。特定の好ましい実施形態では、治療は4時間の間隔で適用される。
【0025】
本技術は、本技術の細菌供与細胞を調製して保存する方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、例えば、4℃での短期保存のために構成される製剤を対象とし、該方法は、
(a)細菌供与細胞を提供することであって、該細菌供与細胞が、
(i)組換え伝達性プラスミドであって、
(1)該プラスミドが受容細胞にて殺菌性タンパク質をコードする遺伝子を発現するように構成されるようにプロモータに操作可能に連結された少なくとも1つの殺菌性タンパク質をコードする該遺伝子、
(2)選択可能なマーカー
を含む、該組換え伝達性プラスミドと、
(ii)少なくとも1つの免疫タンパク質が該細菌供与細胞で発現されるようにプロモータに操作可能に連結され、該少なくとも1つの免疫タンパク質が該少なくとも1つの殺菌性タンパク質を阻害する、該少なくとも1つの免疫タンパク質をコードする遺伝子、
(iii)供与菌細胞を化合物について栄養要求性にする遺伝子における突然変異、
(iv)該組換え伝達性プラスミドを受容細胞に接合伝達する能力を該供与菌細胞に付与する1以上の伝達遺伝子を含む、
該提供することと、
(b)該選択可能なマーカーを選択する条件下にて該化合物で補完された増殖培地にて供与菌細胞から培養物を調製することと、
(c)増殖培地から供与菌細胞を分離して回収された供与菌細胞を作製することと、
(d)ml当たり1×10cfu未満の濃度で回収された供与菌細胞を保存培地にて再浮遊させることであって、該保存培地がトレハロース及び/またはスクロースを含む溶液;リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムから選択されるリン酸緩衝液を含む溶液;及び補完されたまたは補完されないM9媒体から成る群から選択されることと、を含む、該再浮遊させることと、
さらに、
(e)回収された供与菌細胞を冷蔵下で、好ましくは約4℃で最大14日間該保存培地にて保存することと、を含む。
【0026】
特定の好ましい実施形態では、保存培地はさらにグリセロールを含み、特に好ましい実施形態では、保存培地は50mMのKPO緩衝液、10%(w:v)のトレハロース及び2%(w:v)のグリセロールを含む。一部の実施形態では、保存培地は0.5%のヒドロキシエチルセルロースをさらに含む。
【0027】
一部の実施形態では、組換え伝達性プラスミドはpCON44−74であり、かつ/または細菌供与細胞は大腸菌細胞である。特定の好ましい実施形態では、大腸菌は大腸菌CON31−85Aであり、増殖培地は2,6−ジアミノピメリン酸及びリジンで補完される。
【0028】
一部の実施形態では、本技術は、さらに培養することなく、治療用途の細菌供与細胞の凍結組成物を調製する方法であって、
(a)細菌供与細胞を提供することであって、該細菌供与細胞が、
(i)組換え伝達性プラスミドであって、
(1)該プラスミドが受容細胞にて殺菌性タンパク質をコードする遺伝子を発現するように構成されるようにプロモータに操作可能に連結された少なくとも1つの殺菌性タンパク質をコードする該遺伝子、
(2)選択可能なマーカーを含む、該組換え伝達性プラスミド、
(ii)少なくとも1つの免疫タンパク質が細菌供与細胞にて発現されるようにプロモータに操作可能に連結され、該少なくとも1つの免疫タンパク質が該少なくとも1つの殺菌性タンパク質を阻害する、該少なくとも1つの免疫タンパク質をコードする遺伝子、
(iii)供与菌細胞を化合物について栄養要求性にする遺伝子における突然変異を含む、該提供することと、
(b)該選択可能なマーカーを選択する条件下にて該化合物で補完された増殖培地で供与菌細胞から培養物を調製することと、
(c)増殖培地から供与菌細胞を分離して、回収された供与菌細胞を作製することと、
(d)ml当たり少なくとも1×1010cfuの濃度で回収された供与菌細胞を賦形剤培地にて再浮遊させることであって、該賦形剤培地がトレハロース及び/またはスクロース及びグリセロールを含む、該再浮遊させることと、
(e)回収された供与菌細胞を保存培地にて急速凍結することと、を含む、該方法を提供する。
【0029】
好ましくは、急速凍結は45℃未満、好ましくは−50℃未満、−60℃未満、−70℃未満、または−80℃未満の温度で実施される。
【0030】
特定の好ましい実施形態では、賦形剤培地は約1%〜2%(w:v)のグリセロールを含み、特に好ましい実施形態では、賦形剤培地は50mMのKPO緩衝液、pH7、10%(w:v)のトレハロース及び2%(w:v)のグリセロールを含む。一部の実施形態では、賦形剤培地はゲル化剤、例えば、約0.5%(w:v)のヒドロキシエチルセルロースをさらに含む。
〔図面の簡単な説明〕
図1は、例示的な主鎖ベクターの生成を記載する工程系統図であり、主鎖ベクターpCON42−31のプラスミド地図を提供する。
【0031】
図2は、例示的な殺菌性殺傷カセットの生成を記載する工程系統図であり、殺傷カセットpCON44−66を含有するベクターのプラスミド地図を提供する。
【0032】
図3は、例示的な殺菌性供与キラーベクターの生成を記載する図であり、供与キラーベクターpCON44−74のプラスミド地図を提供する。
【0033】
図4Aは、GN−4474で処理した後の筋肉穿孔試料から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
【0034】
図4Bは、GN−4474で処理した後の脾臓組織から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
【0035】
図5Aは、後にGN−4474または溶媒対照で処理される感染を引き起こす2つの異なる緑膿菌MAKI接種菌を用いた筋肉穿孔試料から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
【0036】
図5Bは、後にGN−4474または溶媒対照で処理される感染を引き起こす2つの異なる緑膿菌MAKI接種菌を用いた脾臓組織から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
【0037】
図6Aは、GN−4474で2回処理した後、筋肉穿孔試料から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
【0038】
図6Bは、GN−4474で2回処理した後、脾臓組織から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
【0039】
図7Aは、GN−4474で連続処理した後、筋肉穿孔試料から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
【0040】
図7Bは、GN−4474で連続処理した後、脾臓組織から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
【0041】
図8は、GN−4474で処理した後、痂皮及び筋肉穿孔試料から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
【0042】
図9は、GN−4474または生理食塩水対照と緑膿菌MAKIとの同時適用の後、筋肉穿孔試料から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
【0043】
図10は、様々な量(cfu)のGN−4474を菌叢に適用し、その後、包帯で覆い、様々な用量の殺傷効果を評価した培養プレートを示す図である。
【0044】
図11は、様々な量(cfu)のGN−4474に予め浸した包帯を適用することによって様々な量(cfu)のGN−4474を菌叢に適用し、様々な用量の殺傷効果を評価した培養プレートを示す図である。
【0045】
図12は、特定の遺伝子変化を有する様々な株を生成するのに使用された中間株及びプラスミドを含む、大腸菌CON31−85Aの構築のための略図である。
【0046】
図13は、自殺プラスミドpCON1−96を用いて大腸菌MG1655におけるmsbBを欠失させ、msbBをlacIで置き換える2段階相同組換え事象を示す略図である。
【0047】
図14は、大腸菌MG1655にてmsbBの欠失及びlacIの挿入を作製するのに使用したpCON1−96自殺ベクターのプラスミド地図を示す図である。pykA及びyebAの一部をベクターに含めて相同組換えを促進する。正の選択遺伝子CamR及び対抗選択遺伝子sacBも地図上に示す。AscI制限酵素の消化を用いてoriを切り出し、その後、大腸菌MG1655を形質転換するのに先立ってT4DNAリガーゼによって再環化した。この遺伝子置換工程はmsbBコード領域の756bpまたは大半を欠失させ、代わりにmsbBの場所にlacIを含有する1197bpの断片を挿入した。
【0048】
図15は、自殺プラスミドpCON30−31を用いて大腸菌CON30−12におけるdapAを欠失させ、dapAをimmE3−Arc/mntで置き換える2段階相同組換え事象を示す略図である。
【0049】
図16は、大腸菌CON30−12にてdapAの欠失及びimmE3−Arc/mntの挿入を作製するのに使用したpCON30−31自殺ベクターのプラスミド地図を示す図である。nlpB及びgcvRの部分をベクターに含めて相同組換えを促進する。正の選択遺伝子CamR及び対抗選択遺伝子sacBも地図上に示す。この自殺ベクターはR6Kガンマ複製開始点を利用するが、それはこのプラスミドまたはCON30−12株には見いだされないPiタンパク質を必要とするので、プラスミドは複製することができず、自殺ベクターと見なされる。
【0050】
図17は、自殺プラスミドpCON29−93を用いて大腸菌CON30−41にてaroAを欠失させ、aroAをimm×10−lacIで置き換える2段階の相同組換え事象を示す略図である。
【0051】
図18は、大腸菌CON30−41にてaroAの欠失及びimm×10−lacIの挿入を作製するのに使用したpCON29−93自殺ベクターのプラスミド地図を示す図である。serC及びΔaroAの一部をベクターに含めて相同組換えを促進する。正の選択遺伝子CamR及び対抗選択遺伝子sacBも地図上に示す。AscI制限酵素の消化を用いてoriを切り出し、その後、大腸菌CON30−41を形質転換するのに先立ってT4DNAリガーゼによって再環化した。この遺伝子置換工程はaroAコード領域の内部の756bpまたは大半を欠失させ、これを挿入されるimm×10及びlacIの遺伝子で置き換えた。
【0052】
図19は、attB部位で組み込まれたRK2tra遺伝子を含有するpCON32−30の模式図である。以下の相同組換えは、プラスミドから選択遺伝子、対抗選択遺伝子及び他の望ましくない遺伝子を排除した。この工程はまたattLも排除し、attB遺伝子座からの断片の切り出しは不可逆性になった。2つのプライマーcon32−8Aとcon32−8Cを用いて相同組換えをモニターした。
【0053】
図20は、大腸菌CON32−16におけるtraの組込みを作製するのに使用したpCON32−20自殺ベクターのプラスミド地図を示す図である。ラムダ組込みについてのattP認識配列をプラスミドにクローニングした。また、ybhCの一部をベクターに含めて最初のラムダベースの組込みの後の第2の相同組換えを促進した。正の選択遺伝子CamRまたはKanR及び対抗選択遺伝子sacBも地図上で示す。
【0054】
図21は、自殺プラスミドpCON31−45を用いて大腸菌CON32−27AにてrecAを欠失させる2段階相同組換え事象の模式図を示す。
【0055】
図22は、大腸菌CON32−27AにおけるrecAの欠失を作製するのに使用したpCON31−45自殺ベクターのプラスミド地図を示す図である。mltBのC末端、ygaDのすべて、oraAのすべて及びalaSのN末端をベクターに含めて相同組換えを促進する。正の選択遺伝子CamR及び対抗選択遺伝子sacBも地図上で示す。AscI制限酵素の消化を用いてoriを切り出した後、大腸菌CON32−27Aを形質転換するのに先立ってT4DNAリガーゼによって再環化した。この遺伝子置換工程はrecAコード領域の大半を欠失させた。
【0056】
図23は、皮膚火傷における緑膿菌PA14に対するGN−4474の用量反応及び有効性試験を示す図である。
【0057】
図24Aは、E.クロアカエ(E.cloacae)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、A.バウマニ(A.baumannii)、大腸菌(E.coli)、及び緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株に対するGN−4474の殺傷有効性を示すグラフである。各病原体の臨床分離株の数が示される。グラフはx軸上に試験した各分離株の殺傷された割合を示し、y軸上に各割合の範囲内に入る特定の病原体の分離株の数を示す。
【0058】
図24Bは、E.クロアカエ(E.cloacae)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、A.バウマニ(A.baumannii)、大腸菌(E.coli)、及び緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株に対するGN−4474の殺傷有効性を示すグラフである。各病原体の臨床分離株の数が示される。グラフは、x軸上に試験した各分離株の殺傷された割合を示し、y軸上に各割合の範囲内に入る特定の病原体の分離株の数を示す。
【0059】
図24Cは、E.クロアカエ(E.cloacae)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、A.バウマニ(A.baumannii)、大腸菌(E.coli)、及び緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株に対するGN−4474の殺傷有効性を示すグラフである。各病原体の臨床分離株の数が示される。グラフは、x軸上に試験した各分離株の殺傷された割合を示し、y軸上に各割合の範囲内に入る特定の病原体の分離株の数を示す。
【0060】
図24Dは、E.クロアカエ(E.cloacae)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、A.バウマニ(A.baumannii)、大腸菌(E.coli)、及び緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株に対するGN−4474の殺傷有効性を示すグラフである。各病原体の臨床分離株の数が示される。グラフは、x軸上に試験した各分離株の殺傷された割合を示し、y軸上に各割合の範囲内に入る特定の病原体の分離株の数を示す。
【0061】
図24Eは、E.クロアカエ(E.cloacae)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、A.バウマニ(A.baumannii)、大腸菌(E.coli)、及び緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株に対するGN−4474の殺傷有効性を示すグラフである。各病原体の臨床分離株の数が示される。グラフは、x軸上に試験した各分離株の殺傷された割合を示し、y軸上に各割合の範囲内に入る特定の病原体の分離株の数を示す。
【0062】
図25は、GN−4474の生存能力及び接合効率に対する短期保存の影響を示す図である。図25Aは、4℃でのWAVE反応器バッグにおける使用済みM9培養培地での0〜80時間の保存の後のGN−4474の生存能力を示す。図25Bは、試験管内での殺傷効率に対する24時間または72時間の保存(4℃でのWAVE反応器バッグにおけるmM9培養培地)の影響を示す図である。
【0063】
図26は、GN−4474の生存能力及び接合効率に対する短期保存中の細菌濃度の影響を示す図である。図26Aは、4℃での賦形剤緩衝液における保存後のGN−4474の生存能力を示す図である。細菌を濃縮し、実施例7にて記載されているように種々の濃度で賦形剤緩衝液にて再浮遊させた。図26Bは、同じGN−4474試料の試験管内での殺傷効率を示す図である。
【0064】
図27は、GN−4474の生存能力及び接合効率に対する4℃での保存のための様々な保存培地の影響を示す図である。細菌は、4℃での保存に先立ってHECゲル化剤がない状態で、Cultibagに残し、または無菌の円錐試験管に移し、ペレット化し、使用済み培地または凍結乾燥用賦形剤緩衝液のいずれかに再浮遊させた。種々の時点で細菌を各保存条件から取り出し、希釈し、LB+Dapプレートに播種し、生細菌を定量化した(図27A)。図27Bは、4℃にて種々の培地で保存したGN−4474の接合をベースにした殺傷効率の傾向を示す。
【0065】
図28は、GN−4474の長期生存能力及び殺傷効率に対する制御凍結の影響を示す図である。図28Aは、−20℃での保存の後、賦形剤緩衝液にて「制御凍結された」GN−4474の試料のCFUs/mlとして経時的に表された生存能力を示す図である。図28Bは、陽性対照、陰性対照、または「制御凍結された」GN−4474の試料で処理した後に回収したPA14の平均CFUs/mlとして表された殺傷効率を示す図である。図28Cは、陽性対照、陰性対照、または「制御凍結された」GN−4474の試料で処理した後のPA14の生存率として表された殺傷効率を示す図である。
【0066】
図29は、GN−4474の長期生存能力及び殺傷効率に対する15mlのポリプロピレン試験管における急速凍結の影響を示す図である。図29Aは、CFUs/mlのGN−4474として表された生存能力を示す図である。図29Bは、陽性対照、陰性対照、または「急速凍結した」GN−4474の試料で処理した後に回収したPA14の平均CFUs/mlとして表された殺傷効率を示す図である。
【0067】
図30は、GN−4474の長期生存能力及び殺傷効率対するガラスバイアルにおける急速凍結の影響を示す図である。図30A、CFUs/mlのGN−4474として表された生存能力を示す図である。図30Bは、陽性対照、陰性対照、または「急速凍結した」GN−4474の試料で処理した後に回収したPA14の平均CFUs/mlとして表された殺傷効率を示す図である。図30Cは、陽性対照、陰性対照、または「急速凍結した」GN−4474の試料で処理した後のPA14の生存率として表された殺傷効率を示す図である。
定義
本発明を容易に理解するために、多数の用語及び語句を以下で定義する。
【0068】
本明細書で使用されるとき、用語「対象」は本発明の方法または組成物で治療される個体(例えば、ヒト、動物、または他の生物)を指す。対象には哺乳類(例えば、ネズミ類、サル類、ウマ類、ウシ類、ブタ類、イヌ類、ネコ類等)が挙げられるが、これらに限定されず、最も好ましくはヒトが挙げられる。本発明の分野では、用語「対象」は一般に、病原性細菌の存在、または病原性細菌への曝露の可能性の予測を特徴とする状態について治療(例えば、供与細胞、及び任意で1以上の他の作用物質の投与)を受けることになる、または受けている個体を指す。
【0069】
用語「診断される」は本明細書で使用されるとき、その兆候及び症状(例えば、従来の治療法に対する耐性)、または遺伝子解析、病理解析、組織学的解析等による疾患(例えば、病原性細菌の存在が原因となり生じる)の認識を指す。
【0070】
本明細書で使用されるとき、用語「試験管内」は、人工的な環境及び人工的な環境の範囲内で生じる過程または反応を指す。試験管内の環境には、試験管及び細胞培養が挙げられるが、これらに限定されない。用語「生体内」は、天然の環境(例えば、動物または細胞)及び天然の環境の範囲内で生じる過程または反応を指す。
【0071】
本明細書で使用されるとき、用語「接合」は1つの細胞から別の細胞へのDNAの伝達の過程を指す。接合には複雑な細胞機構が介在し、必須のタンパク質成分はプラスミドにて一連の遺伝子としてコードされることが多い(例えば、プラスミドRK2のためのtra遺伝子)。これらの遺伝子産物の一部が集合して直接的な細胞間相互作用(例えば、交配対の形成)を促進し、それらの一部はDNA及び関連するタンパク質分子を伝達するのに役立ち、DNA分子を複製するのに役立つ(例えば、DNA伝達/複製)。oriTは、DNA分子の伝達が接合の過程で開始するDNA配列である。接合伝達は細菌種全体にわたって発生する現象であり、グラム陽性の属及びグラム陰性の属双方で利用され得る接合伝達系の広範な宿主範囲は既知である。
【0072】
よく特徴付けられた細菌の接合系はすべて一緒にタイプIV分泌系(TIVSS)にグループ分けされる。接合伝達に必要とされるタンパク質は3つのグループに分類される。移動タンパク質(MOb及びニッカーゼ、DNA分子と複合する場合「レラクソソーム」と呼ばれることが多い)はその同族体oriTsに特異的に結合し、接合伝達が開始するDNAでニックを生成する。伝達タンパク質(Tra)は、とりわけ、輸送関連の活性の中で、繊毛の形成及び細胞表面へのその突き出しに必要とされる交配対形成装置(Mpf)と呼ばれる多タンパク質複合体を形成する。Traタンパク質はそれらが作用するoriTと同じプラスミドでコードされる必要はない。それらは、それらプラスミドが同族のレラクソソームも含有するという条件で、無関係なoriTsを含有するプラスミドの伝達を促進することができる。
【0073】
プラスミドDNAがいったん伝達用に調製されると、それは供与側の細胞質膜を介して受容側に輸送される。本技術は作用の任意の特定のメカニズムに限定されないが、DNAは、プラスミドDNAのプロセシングをTIVSSと共役させるためにそのように呼ばれる共役タンパク質により供与側の膜を横断すると一般的に考えられている。自由生活性(浮遊性の)グラム陰性細菌及び表面に結合したグラム陰性細菌はプラスミドを伝達することができ、接合系におけるわずかな多様化する要素の1つは接合を促すように生成されて使用される繊毛の型である。一部の繊毛は密集して柔軟性である一方で、他のものは長くて硬い。繊毛は顕著な引っ込める能力を有し、広範な領域にわたる細胞表面の密接な会合を促進することが可能になり、、これにより剪断力に対して交配対が安定化する。
【0074】
一部のよく研究されたグラム陽性の接合系は、プラスミド供与側を潜在的な受容株と接触させるために異なる戦略を採用する。繊毛を使用することではなく、フェロモンと呼ばれる小分子は細胞間接触を促進することが知られている(例えば、pCF10)。これらのフェロモンは通常、7または8のアミノ酸のペプチドであり、交配過程を開始するのに必要とされる供与株当たり1〜10分子の極少量で分泌される。所与のフェロモンは特定のプラスミド型の接合伝達系を特異的に活性化する。プラスミドが得られると、関連するフェロモンの分泌が抑えられる一方で、無関係なフェロモンが生成され続け、他の潜在的な供与細胞を「引き付ける」。フェロモンが接合中に発現されることに応答して表面に露出した凝集タンパク質を産生する(試験管内及び生体内で)いくつかのプラスミドの能力は十分に証明されており、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)の場合、プラスミドを有する生物の病理と機能的に関連している。
【0075】
一部のプラスミドでは、伝達機能は自然に上方制御される。意外なことに、それらの抑制解除されたプラスミド系は、100%に近い効率で接合DNA伝達を持続させることができる(例えば、グラム陰性F及びグラム陽性pCF10プラスミド)。接合は通常、複数の供与細胞及び受容細胞の凝集体の中で生じ、場合によっては20の、他の場合では数千の凝集細胞及び接合細胞細胞が観察された。
グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌は自然界では異なる方法を用いて接合に備える一方で、生じる接合は細菌の型すべてで同じである。したがって、細菌を殺傷するメカニズムとしての殺菌性キラープラスミドの接合伝達は接合細菌すべてと共に使用することができる。
【0076】
また、接合は細菌細胞から高等及び下等な真核細胞までに生じる(Waters,Nat.Genet.29:375−376(2001);Nishikawa et al.,Jpn J Genet.65:323−334(1990))。例えば、細菌から哺乳類細胞及び酵母細胞への生物界間の接合は周知である。例えば、Bates et al.,J.Bacteriol180,6538−6543(1998);Waters,Nat Genet 29,375−376(Dec,2001)を参照のこと。
【0077】
本明細書で使用されるとき、用語「接合供与株」及び「供与細胞」は相互交換可能に使用されて、プラスミドを運ぶ細胞、例えば、細菌細胞を指すが、この場合、該プラスミドは接合を介して別の細胞に伝達されることができる。供与細胞の例には、自己伝達性プラスミドまたは非自己伝達性プラスミド含有する大腸菌株が挙げられるが、これらに限定されない。接合伝達を介して供与細胞からプラスミドまたは他の細胞性物質を受ける細胞は「受容細胞」と呼ばれる。本明細書で使用されるとき、用語「伝達性プラスミド」は接合を介して供与細胞から受容細胞に移すことができるプラスミドを指す。
【0078】
本明細書で使用されるとき、用語「自己伝達性プラスミド」は接合に介在するのに必要とされる遺伝子すべてをコードするプラスミドを指す。自己伝達性プラスミドの受容株は能力のある供与株となり、自己伝達性プラスミドを別の受容細胞にさらに伝達する。
【0079】
本明細書で使用されるとき、用語「非自己伝達性プラスミド」または「可動性プラスミド」は接合に介在するのに必要とされる遺伝子の一部を欠いているプラスミドを指す。非自己伝達性プラスミドを運ぶ細胞は、失った遺伝子(複数可)が同一細胞内にてトランスで供給されない限り、接合を介してDNAを伝達しない。したがって、失った遺伝子(複数可)を欠いている受容細胞は、非自己伝達性プラスミドを受ける場合、能力のある接合供与株にはならない。
【0080】
本明細書で使用されるとき、用語「伝達開始点」または「oriT」は、DNA伝達に必要とされるシス作用性部位を指し、oriTの非伝達性プラスミドへの組込みはそれを可動性プラスミドに変換する(Lanka and Wilkins,Annu Rev Biochem,64:141−169(1995))。
【0081】
一部の実施形態では、供与細胞は細菌細胞(グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌)である。供与細胞の例には、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、エシェリヒア属(Escherichia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、セラチア属(Serratia)、プロテウス属(Proteus)、エルシニア属(Yersinia)、シトロバクター属(Citrobacter)、エドワードシエラ属(Edwardsiella)、プロビデンシア属(Providencia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ハフニア属(Hafnia)、エウィンゲラ属(Ewingella)、クライベラ属(Kluyvera)、モルガネラ属(Morganella)、プラノコッカス属(Planococcus)、ストマトコッカス属(Stomatococcus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ビブリオ属(Vibrio)、アエロモナス属(Aeromonas)、プレシオモナス属(Plessiomonas)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、パスツレラ属(Pasteurella)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ウレアプラズマ属(Ureaplasma)、リケッチア属(Rickettsia)、コクシエラ属(Coxiella)、ロシャリメア属(Rochalimaea)、エールリヒア属(Ehrlichia)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、アエロコッカス属(Aerococcus)、双子菌属(Gemella)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディコッカス属(Pedicoccus)、バチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、アルカノバクテリウム属(Arcanobacterium)、アクチノミセス属(Actinomyces)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、リステリア属(Listeria)、エリジペロスリックス属(Erysipelothrix)、ガードネレラ属(Gardnerella)、ナイセリア属(Neisseria)、カンピロバクター属(Campylobacter)、アルコバクター属(Arcobacter)、ウォリネラ属(Wolinella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、クリセオモナス属(Chryseomonas)、コマモナス属(Comamonas)、エイケネラ属(Eikenella)、フラビモナス属(Flavimonas)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、モラクセラ属(Moraxella)、オリゲラ属(Oligella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、シュワネラ属(Shewanella)、ウィークセラ属(Weeksella)、ザントモナス属(Xanthomonas)、ボルデテラ属(Bordetella)、フランシセラ属(Franciesella)、ブルセラ属(Brucella)、レジオネラ属(Legionella)、アフィピア属(Afipia)、バルトネラ属(Bartonella)、カリマトバクテリウム属(Calymmatobacterium)、カルジオバクテリウム属(Cardiobacterium)、ストレプトバチルス属(Streptobacillus)、スピリルム属(Spirillum)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、ペプトコッカス属(Peptococcus)、サルシナ属(Sarcinia)、コプロコッカス属(Coprococcus)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、モビルンカス属(Mobiluncus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロチア属(Rothia)、クロストリジウム属(Clostridium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、プレボテラ属(Prevotella)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、バイロフィラ属(Bilophila)、レプトトリキア属(Leptotrichia)、アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)、メガスフェラ属(Megasphaera)、ベイヨネラ属(Veilonella)、ノカルジア属(Norcardia)、アクチノマヅラ属(Actinomadura)、ノカルジオプシス属(Norcardiopsis)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、ミクロポリスポラス属(Micropolysporas)、テルモアクチノミセス属(Thermoactinomycetes)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、トレポネーマ属(Treponema)、ボレリア属(Borrelia)、レプトスピラ属(Leptospira)、またはクラミジア属(Chlamydiae)から成る群から選択される細菌の属の細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
一部の実施形態では、供与細胞は、細菌のミニ細胞、マキシ細胞、または非分裂細胞を含むが、これらに限定されない生育不能細胞である。
【0083】
本明細書で使用されるとき、用語「マキシ細胞」は、例えば、UV照射及び長期インキュベートによって染色体分解を最大化するように処理されている細胞を指す。マキシ細胞は大抵プラスミドDNAを含有し、マキシ細胞内でのタンパク質の合成は本質的に専ら細胞におけるプラスミドDNAから生じる。
【0084】
本明細書で使用されるとき、用語「非分裂細胞」または「ND細胞」は細胞の染色体DNAを優先的に損傷する(例えば、UVまたはその他の照射によって)ように選択された方法で処理される細胞を指すが、この場合、該細胞はさらに、例えば、DNA損傷処理後の急速冷却によって処理されて染色体分解を最小限に抑える。「ND細胞」は、供与菌内での殺菌性タンパク質(例えば、ColE3)の一時的な発現のような過程で得ることもできる。したがって、一部の実施形態では、タンパク質(例えば、ColE3)誘導により、細胞にてタンパク質合成が破壊されて細胞死がもたらされる一方で、接合装置及びColE3の合成に先立って合成された染色体DNAは無傷のままである。ND細胞は、染色体DNA及びプラスミドDNAの双方を含有するが、細胞の機能は、例えば、UV照射によって十分に変化し、該ND細胞は分裂する能力をほとんど有さないか、または全く有さない。
【0085】
用語「標的細胞」、「標的」、「受容細胞」、及び「受容株」は本明細書では相互交換可能に使用される。好ましい実施形態では、本発明の組成物及び方法についての標的細胞には、接合伝達を介して供与細胞から物質を受けることができる病原性生物(例えば、病原性細菌)のような微生物が挙げられるが、これらに限定されない。病原性細菌には、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、エシェリヒア属(Escherichia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、セラチア属(Serratia)、プロテウス属(Proteus)、エルシニア属(Yersinia)、シトロバクター属(Citrobacter)、エドワードシエラ属(Edwardsiella)、プロビデンシア属(Providencia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ハフニア属(Hafnia)、エウィンゲラ属(Ewingella)、クライベラ属(Kluyvera)、モルガネラ属(Morganella)、プラノコッカス属(Planococcus)、ストマトコッカス属(Stomatococcus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ビブリオ属(Vibrio)、アエロモナス属(Aeromonas)、プレシオモナス属(Plessiomonas)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、パスツレラ属(Pasteurella)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ウレアプラズマ属(Ureaplasma)、リケッチア属(Rickettsia)、コクシエラ属(Coxiella)、ロシャリメア属(Rochalimaea)、エールリヒア属(Ehrlichia)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、アエロコッカス属(Aerococcus)、双子菌属(Gemella)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディコッカス属(Pedicoccus)、バチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、アルカノバクテリウム属(Arcanobacterium)、アクチノミセス属(Actinomyces)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、リステリア属(Listeria)、エリジペロスリックス属(Erysipelothrix)、ガードネレラ属(Gardnerella)、ナイセリア属(Neisseria)、カンピロバクター属(Campylobacter)、アルコバクター属(Arcobacter)、ウォリネラ属(Wolinella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、クリセオモナス属(Chryseomonas)、コマモナス属(Comamonas)、エイケネラ属(Eikenella)、フラビモナス属(Flavimonas)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、モラクセラ属(Moraxella)、オリゲラ属(Oligella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、シュワネラ属(Shewanella)、ウィークセラ属(Weeksella)、ザントモナス属(Xanthomonas)、ボルデテラ属(Bordetella)、フランシセラ属(Franciesella)、ブルセラ属(Brucella)、レジオネラ属(Legionella)、アフィピア属(Afipia)、バルトネラ属(Bartonella)、カリマトバクテリウム属(Calymmatobacterium)、カルジオバクテリウム属(Cardiobacterium)、ストレプトバチルス属(Streptobacillus)、スピリルム属(Spirillum)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、ペプトコッカス属(Peptococcus)、サルシナ属(Sarcinia)、コプロコッカス属(Coprococcus)、ルミノコッカス属(Ruminococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、モビルンカス属(Mobiluncus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロチア属(Rothia)、クロストリジウム属(Clostridium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、プレボテラ属(Prevotella)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、バイロフィラ属(Bilophila)、レプトトリキア属(Leptotrichia)、アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)、メガスフェラ属(Megasphaera)、ベイヨネラ属(Veilonella)、ノカルジア属(Norcardia)、アクチノマヅラ属(Actinomadura)、ノカルジオプシス属(Norcardiopsis)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、ミクロポリスポラス属(Micropolysporas)、テルモアクチノミセス属(Thermoactinomycetes)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、トレポネーマ属(Treponema)、ボレリア属(Borrelia)、レプトスピラ属(Leptospira)、及びクラミジア属(Chlamydiae)が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、標的細胞は継続して培養された細胞である。一部の実施形態では、標的細胞は、その自然環境(例えば、創傷または感染の部位)に存在する、または患者の組織(例えば、生検を介して)から得られる培養されていない細胞である。好ましい実施形態では、標的細胞は病的な成長または増殖を示す。
【0086】
本明細書で使用されるとき、用語「病原性」は、例えば、生じる疾患の重症度または対象の組織を侵襲するその能力によって示されるような微生物の病原性の程度を指す。これは一般に、半致死量(LD50)または半感染量(LD50)によって実験的に測定される。この用語は病理学的効果を生じる任意の感染性因子の能力を指すためにも使用される。
【0087】
用語「キラー遺伝子」は、感受性細胞での発現の際、細胞を殺傷する産物を生成する遺伝子を指す。
【0088】
用語「キラープラスミド」は1以上のキラー遺伝子を含み、それを発現するように構成されるプラスミドを指す。
【0089】
本明細書で使用されるとき、用語「弱毒化させる」及び「弱毒化」は、例えば、受容細胞または標的細胞の特徴を参照して本明細書で使用されるとき、その特徴を軽減するもしくは弱めること、またはその特徴(複数可)の効果を軽減することを指す。例えば、標的細胞の病原体または病原性を参照して使用される場合、弱毒化は一般に病原体の病原性の低減を指す。病原体の弱毒化は低減される病原性の任意の特定のメカニズムに限定されない。一部の実施形態では、低減された病原性は、例えば、分泌経路の崩壊によって達成され得る。他の実施形態では、低減された病原性は、細胞の代謝を変化させ、薬剤、例えば、病原体の病原性を弱毒化するかまたは病原体を殺傷する薬剤への反応性または感受性を高めることによって達成されてもよい。一部の実施形態では、弱毒化は、細胞の集団の特徴、例えば、病原性を指す。例えば、本発明の一部の実施形態では、病原体細胞の集団は、例えば、本発明の方法または組成物によって治療されるので、細胞の集団は病原性が低下する。例えば、そのそれぞれの全体があらゆる目的で参照によって本明細書に組み入れられる、2005年5月26日に出願された同時係属出願番号第11/137,948号及びPCT出願PCT/US2006/020582を参照のこと。
【0090】
本明細書で使用されるとき、用語「有効量」は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な組成物(例えば、供与細胞)の量を指す。有効量は、1回以上の投与、適用または投与量で投与することができ、特定の製剤または投与経路に限定されないように意図される。
【0091】
本明細書で使用されるとき、用語「投与」は、生理的な系(例えば、対象または生体内、試験管内、もしくは生体外の細胞、組織、及び臓器)に薬剤、プロドラッグ、もしくは他の作用物質、または治療処置(例えば、本発明の組成物)を与える行為を指す。人体への投与の例示的な経路は、眼(眼科)、口(経口)、皮膚(例えば、局所、皮下、経皮)、鼻(鼻内)、肺(吸入)、口腔粘膜(頬内)、耳を介するもの、注射(例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内等)によるもの、腸管への導入(直腸)によるもの、膀胱への導入によるもの、皮膚または粘膜等の表面への局所的なものとすることができる。
【0092】
本明細書で使用されるとき、用語「組織」は、投与の部位を参照して使用されるが、任意の上皮組織または上皮組織の層を指す。例えば、皮膚組織は、表皮、真皮、皮下組織、及び/または、例えば、創傷によって露出された皮膚の任意の部分を含む。
【0093】
本明細書で使用されるとき、用語「皮膚創傷」及び「皮膚病変」は相互交換可能に使用され、皮膚または皮膚の副層に対する任意の破損または損傷を含む。皮膚創傷として、例えば、火傷、傷口、擦り傷、膿瘍、癰、潰瘍、フルンケル、水膨れ等の1以上が挙げることができる。火傷は熱傷に限定されず、例えば、化学火傷、放射線火傷等も含まれる。膿瘍は体内で構築された膿汁及び細胞残渣の堆積である。膿瘍は通常、細菌感染が原因で生じ、体内のいたる場所でも発生し得る。皮膚及び軟組織における膿瘍は特に一般的であり、実際近年さらに一般的になっているが、その種の膿瘍の標準治療は、膿瘍の切開及び流体の排出である。感染をさらに限定するために抗生剤が処方されることが多い。癰及びフルンケルは、感染した毛包に関与することが多い膿瘍の型であり、癰(よう)の方が2つのうちでは大きい。フルンケルは炎症性の腫れ物と呼ばれることがある。潰瘍は組織の崩壊に伴う皮膚または粘膜における糜爛として定義され、潰瘍は表皮を完全に喪失させ、しばしば真皮及び皮下脂肪の一部を完全に喪失させることができ、さらにこれらの領域を依然として細菌に感染し易い状態にする。褥瘡性潰瘍(床擦れ)及び糖尿病性足潰瘍は、全域または手足の壊疽及び切断の原因となり得る重篤な潰瘍の2つの例である。膿痂疹は、幼児及び小児で最もよくみられる、細菌が原因で生じる伝染性の皮膚感染症であり、顔、首、手、及びおむつのあたる部分で水膨れまたは糜爛を引き起こし、膿痂疹は非水疱性(痂皮性)及び水疱性(大きな水膨れ)のいずれかに分類される。膿痂疹は、患部が小さい場合は局所抗生剤で治療することができ、患部が大きい場合または細菌が耐性である場合は経口抗生剤で治療することができる。
【0094】
本明細書で使用されるとき、用語「表面を治療すること」は、本発明の1以上の組成物に表面を暴露する行為を指す。表面を治療する方法には、噴霧すること、霧状で吹き付けること、沈めること、及びコーティングするまたは覆うこと(すなわち、製品で予備処理したまたはそれに浸した帯具またはガーゼ)が挙げられるが、これらに限定されない。表面は、例えば、組織表面または用具の表面であってもよい。
【0095】
用語「帯具」は、例えば、創傷または治療された領域を覆うための包帯を参照して使用されるとき、創傷被覆に一般に使用される医療型包帯のすべて、例えば、ガーゼ片、ガーゼパッド、布、接着性帯具、泡状パッド、ヒドロ繊維、ヒドロゲル、テープ等を指すのに広く使用される。
【0096】
本明細書で使用されるとき、用語「共投与」は、対象への少なくとも2つの作用物質(複数可)(例えば、それぞれ異なるプラスミドを含む2つの別々の供与菌)または治療薬の投与を指す。一部の実施形態では、2以上の作用物質または治療薬は同時に共投与する。他の実施形態では、第1の作用物質/治療薬を投与した後に、第2の作用物質/治療薬を投与する。当業者は、種々の作用物質もしくは治療薬の製剤及び/または投与経路は変えてもよいことを理解する。共投与に適する投与量は当業者によって容易に決定することができる。一部の実施形態では、作用物質または治療薬が共投与される場合、各作用物質または治療薬が、その投与単独に適する投与量よりも低い投与量で投与される。したがって、共投与は、作用物質または治療薬の共投与が潜在的に有害な(例えば、毒性の)作用物質(複数可)の必要な投与量を減少させる実施形態では、特に望ましい。
【0097】
本明細書で使用されるとき、用語「毒性の」は、毒性物質の投与前の同じ細胞または組織と比較した、対象、細胞(原核または真核)または組織に対する任意の有害なまたは害になる効果を指す。
【0098】
本明細書で使用されるとき、用語「医薬組成物」は、組成物を試験管内、生体内または生体外での診断用途または治療用途に特に好適なものにする不活性または活性キャリアとの活性剤(例えば、供与菌細胞)の組み合わせを指す。
【0099】
用語「薬学上許容できる」または「薬理学上許容できる」は本明細書で使用されるとき、対象に投与された際に有害反応、例えば、毒性反応、アレルギー反応、または免疫反応を実質的に引き起こさない組成物を指す。
【0100】
本明細書で使用されるとき、用語「局所に」は、皮膚及び粘膜細胞及び粘膜組織(例えば、歯槽、頬、舌、咀嚼器官、または鼻粘膜、ならびに中空臓器または体腔、例えば、膀胱、結腸、腸、食道等を覆う他の組織及び細胞)の表面への本発明の組成物の適用を指す。
【0101】
本明細書で使用されるとき、「薬学上許容できるキャリア」は、リン酸緩衝化生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水または水/油エマルション)、及び種々の種類の湿潤剤、任意の及びすべての溶媒、分散媒、コーティング、ラウリル硫酸ナトリウム、等張剤及び吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)、等を含むが、これらに限定されない標準の医薬キャリアのいずれかを指す。組成物は安定剤及び保存剤も含むことができる。キャリア、安定剤、及び補助剤の例については(例えば、参照によって本明細書に組み入れられるMartin,RemingtonのPharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,Pa.(1975)を参照のこと)。さらに、特定の実施形態では、本発明の組成物は園芸用途または農業用途のために製剤化されてもよい。そのような製剤には、洗浄液、スプレー、種子粉衣、茎部注入剤、スプレー、及びミストが挙げられる。
【0102】
本明細書で使用されるとき、用語「薬学上許容できる塩」は、標的対象(例えば、哺乳類対象、及び/または生体内または生体外の細胞、組織または臓器)にて生理的に認容される本発明の化合物の任意の塩(例えば、酸または塩基との反応によって得られる)を指す。本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸及び塩基に由来してもよい。酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、スルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。シュウ酸のような他の酸は、それ自体薬学上許容できるのものではないが、本発明の化合物及びその薬学上許容できる酸付加塩を得ることにおいて中間体として有用な塩の調製で採用されてもよい。
【0103】
塩基の例には、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニア、及び式NW(式中、WはC1−4アルキルである)の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコペンタン酸、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。塩の他の例には、例えば、Na、NH及びNW(式中、WはC1−4アルキル基である)等のような好適なカチオンと共に調合される本発明の化合物のアニオンが挙げられる。治療用途については、本発明の化合物の塩は薬学上許容できるものとして企図される。しかしながら、薬学上許容できない酸及び塩基の塩も、例えば、薬学上許容できる化合物の調製または精製にて使用されてもよい。
【0105】
治療用途については、本発明の化合物の塩は薬学上許容できるものとして企図される。しかしながら、薬学上許容できない酸及び塩基の塩も、例えば、薬学上許容できる化合物の調製または精製にて使用されてもよい。
【0106】
本明細書で使用されるとき、用語「医療用具」には、例えば、(例えば、疾患または外傷のための)薬物療法の過程で対象または患者の身体の上で、中でまたはそれを介して使用される任意の物質または用具が含まれる。医療用具には、例えば、医療インプラント、創傷ケア用具、薬剤送達用具、ならびに体腔及び個人保護用具等の物品が挙げられるが、これらに限定されない。医療インプラントには、尿カテーテル、血管内カテーテル、透析用シャント、創傷排液チューブ、皮膚縫合糸、代用血管、埋め込み可能なメッシュ、眼内用具、心臓弁等が挙げられるが、これらに限定されない。創傷ケア用具には、一般的な創傷包帯、生物移植物質、テープ封止及び包帯、及び外科切開掛け布が挙げられるが、これらに限定されない。薬剤送達用具には、針、薬剤送達用皮膚貼付剤、薬剤送達用粘膜貼付剤、及び医療用スポンジが挙げられるが、これらに限定されない。体腔及び個人保護用具には、タンポン、スポンジ、手術用手袋及び実験用手袋、及び歯ブラシが挙げられるが、これらに限定されない。避妊用具には子宮内用具(IUD)、ペッサリー、及びコンドームが挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
本明細書で使用されるとき、用語「治療剤」は、病原性微生物に接触した対象にて感染性、罹患率、もしくは死亡の発生を減少させるか、または病原性微生物に接触した宿主にて感染性、罹患率、もしくは死亡の発生を予防する組成物を指す。本明細書で使用されるとき、治療剤は、想定される将来の病原体への曝露を考慮して、予防的に、例えば、病原体の非存在下で使用される作用物質を包含する。そのような作用物質はさらに、薬学上許容できる化合物(例えば、補助剤、賦形剤、安定剤、希釈剤等)を含んでもよい。一部の実施形態では、本発明の治療剤は局所用組成物、注射用組成物、摂取可能な組成物等の形態で投与される。経路が局所である場合、形態は、例えば、溶液、クリーム、軟膏、膏薬または噴霧剤であってもよい。
【0108】
本明細書で使用されるとき、用語「病原体」は宿主にて病態(例えば、感染症、癌等)を引き起こす生物由来物質を指す。「病原体」には、ウイルス、細菌、古細菌、真菌、原虫、マイコプラズマ、プリオン、及び寄生生物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
用語「細菌(複数)」及び「細菌(単数)」は、原核生物界における門すべての範囲内のものを含む原核生物を指す。その用語は、マイコプラズマ(Mycoplasma)、クラミジア(Chlamydia)、アクチノマイセス(Actinomyces)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、及びリケッチア(Rickettsia)を含む細菌と見なされる微生物すべてを包含することが意図される。球菌、桿菌、スピロヘータ、スフェロプラスト、プロトプラスト等を含む細菌の形態すべてがこの定義の範囲内に含まれる。また、この用語の範囲内には、グラム陽性またはグラム陰性である原核生物が含まれる。「グラム陰性」及び「グラム陽性」は、当該技術で周知であるグラム染色法による染色パターンを指す(例えば、Finegold and Martin,Diagnostic Microbiology,6th Ed.,CV Mosby St.Louis,pp.13−15(1982)を参照のこと)。「グラム陽性細菌」は、染色された細胞を顕微鏡下で一般に紺青色から紫色に見せるグラム染色で使用される主要色素を保持する細菌である。「グラム陰性細菌」はグラム染色で使用される主要色素を保持しないが、対比染色で染色される。したがって、グラム陰性細菌は一般に赤く見える。
【0110】
本明細書で使用されるとき、用語「微生物」は、細菌、古細菌、真菌、原虫、マイコプラズマ及び寄生生物を含むが、これらに限定されない微生物の任意の種または種類を指す。本発明は、それに包含される多数の微生物も対象に対して病原性であることを企図する。
【0111】
本明細書で使用されるとき、用語「真菌」は、二形性真菌を含む、カビ及び酵母のような真核生物を参照して使用される。
【0112】
本明細書で使用されるとき、用語「非ヒト動物」は、例えば、齧歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ類、ウシ類、反芻動物、ウサギ目動物、ブタ類、ヤギ類、ウマ類、イヌ類、ネコ類、鳥類等のような脊椎動物を含むが、これらに限定されないすべての非ヒト動物を指す。
【0113】
本明細書で使用されるとき、用語「核酸分子」は、DNAまたはRNAを含むが、これらに限定されない、分子を含有する任意の核酸を指す。この用語は、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシl−メチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、及び2,6−ジアミノプリンを含むが、これらに限定されないDNA及びRNAの既知の塩基類似体のいずれかを含む配列を包含する。
【0114】
用語「遺伝子」は、ポリペプチド、前駆体、またはRNA(例えば、rRNA、tRNA)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNAまたはRNA)配列を指す。ポリペプチドは、完全長のコード配列によってコードされることができ、または完全長もしくは断片の所望の活性もしくは機能的特性(例えば、酵素活性、リガンドの結合、シグナル伝達、免疫原性等)が保持される限り、コード配列の任意の部分によってコードされることができる。その用語はまた、構造遺伝子のコード領域、及び遺伝子が完全長mRNAの長さに対応するようにいずれかの末端での約1kb以上の距離の5’及び3’末端の双方におけるコード領域に隣接して位置する配列を包含する。コード領域の5’に位置し、mRNAに存在する配列は、5’非翻訳配列または5’隣接配列と呼ばれる。コード領域の3’または下流に位置し、mRNAに存在する配列は3’非翻訳配列または3’隣接配列と呼ばれる。用語「遺伝子」は遺伝子のcDNA及び遺伝子のゲノム形態の双方を包含する。遺伝子のゲノムの形態またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列によって中断されるコード領域を含有する。イントロンはプレmRNAに転写される遺伝子の断片であり、イントロンはエンハンサのような調節性要素を含有してもよい。イントロンは一般に一次転写物(プレmRNA)から除かれる、または「スプライシングで外される」ので、イントロンは一般にメッセンジャーRNA(mRNA)転写物には存在しない。mRNAは翻訳中、新生ポリペプチドにてアミノ酸の配列及び順を特定するように機能する。
【0115】
本明細書で使用されるとき、用語「遺伝子発現」は、遺伝子にコードされた遺伝情報を遺伝子の「転写」を介して(すなわち、RNAポリメラーゼの酵素作用を介して)RNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA、またはsnRNA)に変換し、タンパク質をコードする遺伝子についてはmRNAの「翻訳」を介してタンパク質に変換する過程を指す。過程の多数の段階で遺伝子発現を調節することができる。「上方制御」または「活性化」は、遺伝子発現の産物(すなわち、RNAまたはタンパク質)の産生を高める調節を指す一方で、「下方制御」または「抑制」は産生を減少させる調節を指す。上方制御または下方制御に関与する分子(例えば、転写因子)はそれぞれ「活性化因子」及び「抑制因子」と呼ばれることが多い。
【0116】
用語「野生型」は天然に存在する供給源から単離される形態の遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、集団にて最も頻繁に観察されるので、任意で遺伝子の「正常な」または「野生型」の形態とされるものである。対照的に、用語「修飾された」または「変異体」は、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較した、配列及びまたは機能特性の変更(すなわち、特徴の変化)を示す遺伝子または遺伝子産物を指す。天然に存在する変異体を単離することができ、これらは、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較した、特徴の変化(核酸配列の変化等)によって特定することに留意されたい。
【0117】
本明細書で使用されるとき、用語「コードする核酸分子」、「コードするDNA配列」及び「コードするDNA」は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列を指す。これらデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。したがって、DNAにおけるヌクレオチドの配列は対応するポリペプチドにおけるアミノ酸の配列をコードする。
【0118】
本明細書で使用されるとき、用語「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」及び「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」は、遺伝子のコード領域を含む核酸配列、または言い換えれば、遺伝子産物をコードする核酸配列を意味する。コード領域は、cDNA、ゲノムDNAまたはRNAの形態で存在してもよい。DNAの形態で存在する場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖(すなわち、センス鎖)であっても、または二本鎖であってもよい。例えば、エンハンサ/プロモータ、スプライス接合、ポリアデニル化シグナル等のような好適な制御要素は、必要に応じて遺伝子のコード領域に近接して置かれて転写を適切に開始させ、かつ/または一次RNA転写物を正しくプロセシングさせてもよい。代替として、本発明の発現ベクターで利用されるコード領域は、内在性のエンハンサ/プロモータ、スプライス接合、介在配列、ポリアデニル化シグナル等、または内在性制御要素と外来性制御要素との組み合わせを含有してもよい。
【0119】
用語「相同性」は、例えば、核酸分子のような分子間の類似性の程度を指す。部分相同性または完全相同性(すなわち、同一性)が存在してもよい。部分的に相補性の配列は、完全に相補性の核酸分子が「実質的に相同である」標的核酸とハイブリッド形成するのを少なくとも部分的に阻害する核酸分子である。完全に相補性である配列の標的配列とのハイブリッド形成の阻害は、ストリンジェンシーの低い条件下でハイブリッド形成アッセイ(サザンブロットまたはノーザンブロット、溶液ハイブリッド形成等)を用いて調べられてもよい。実質的に相同の配列またはプローブは、ストリンジェンシーの低い条件下で完全に相補性である核酸分子の標的への結合(すなわち、ハイブリッド形成)について競合することになり、それを阻害することになる。ストリンジェンシーの低い条件は、非特異的な結合を許容するものであり、かつ2つの配列の互いへの結合が特異的な(すなわち、選択的な)相互作用であることを必要とするものであるというわけではない。非特異的な結合の不在は、実質的に相補性ではない(例えば、約30%未満の同一性)第2の標的の使用によって試験されてもよく、非特異的な結合の不在下では、プローブは第2の非相補性の標的とハイブリッド形成しないことになる。
【0120】
例えば、cDNAまたはゲノムのクローンのような二本鎖核酸配列を参照して使用されるとき、用語「実質的に相同の」とは、任意の核酸が上述のようなストリンジェンシーの低い条件下で二本鎖核酸配列の一方の鎖または双方の鎖とハイブリッド形成することができることを指す。一本鎖核酸配列を参照して使用されるとき、用語「実質的に相同の」とは、任意の核酸が上述のようなストリンジェンシーの低い条件下で一本鎖核酸配列の相補体とハイブリッド形成することができる(すなわち、その相補体である)ことを指す。
【0121】
遺伝子は、一次RNA転写物の差次的なスプライシングによって生成される複数のRNA種を産生してもよい。同一遺伝子のスプライス変異体であるcDNAは、配列同一性または完全な相同性の領域(双方のcDNAにおける同一エクソンまたは同一エクソンの一部の存在を表す)及び完全な非同一性の領域(例えば、cDNA1においてエクソン「A」が存在し、この場合cDNA2が代わりにエクソン「B」を含有することを表す)を含有することになる。2つのcDNAは配列同一性の領域を含有するので、それらは双方のcDNAで見いだされる配列を含有する遺伝子全体または遺伝子の一部に由来するプローブと双方ともハイブリッド形成し、したがって2つのスプライス変異体はそのようなプローブ及び互いに対して実質的に相同である。
【0122】
本明細書で使用されるとき、用語「ハイブリッド形成」は相補性の核酸の対合を参照して使用される。ハイブリッド形成及びハイブリッド形成の強さ(すなわち、核酸間の会合の強さ)は、例えば、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドのT、及び核酸内のG:C比のような因子に影響される。その構造内に相補性核酸の対合を含有する単一分子は「自己ハイブリッド形成型」と言われる。
【0123】
本明細書で使用される用語「一部」は、ヌクレオチド配列を参照するとき(「所与のヌクレオチド配列の一部」のような)、その配列の断片を指す。断片のサイズは、4つのヌクレオチド〜ヌクレオチド配列全体−ヌクレオチド1つの範囲であってよい(10ヌクレオチド、20、30、40、50、100、200等)。
【0124】
用語「操作可能な組み合わせで」、「操作可能な順序で」、及び「操作可能に連結される」は、本明細書で使用されるとき、所与の遺伝子の転写及び/または所望のタンパク質分子の合成を指向することができる核酸分子が産生されるような方法での核酸配列の連結を指す。その用語はまた、機能的なタンパク質が産生されるような方法でのアミノ酸配列の連結も指す。
【0125】
用語「単離された」は、「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド」のように核酸に関連して使用されるとき、その天然供給源では通常それが会合している少なくとも1つの成分または混入物から特定されて分離される核酸配列を指す。単離された核酸は、それが自然界で見いだされるものとは異なる形態または設定で存在する。対照的に、単離されていない核酸は、自然界でそれらが存在する状態で見いだされるDNA及びRNAのような核酸である。例えば、所与のDNA配列(例えば、遺伝子)は隣接する遺伝子の近傍にて宿主細胞の染色体上で見いだされ、例えば、特定のタンパク質をコードする特定のmRNA配列のようなRNA配列は、多数のタンパク質をコードする多数の他のmRNAとの混合物として細胞にて見いだされる。しかしながら、所与のタンパク質をコードする単離された核酸には、例として、その所与のタンパク質を通常発現している細胞におけるそのような核酸が含まれ、そこで、核酸は天然の細胞のものとは異なる染色体の位置にあるか、またはさもなければ自然界で見いだされるものとは異なる核酸配列が隣接する。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドは一本鎖の形態または二本鎖の形態で存在してもよい。タンパク質を発現させるのに単離された核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが利用されるべきである場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは少なくともセンス鎖またはコーディング鎖を含有することになるが(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖であってもよい)、センス鎖及びアンチセンス鎖の双方を含有してもよい(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは二本鎖であってもよい)。
【0126】
本明細書で使用されるとき、用語「精製された」または「精製すること」は試料からの成分(例えば、混入物)の除去を指す。例えば、抗体は混入している非免疫グロブリンタンパク質の除去によって精製され、それらはまた標的分子に結合しない免疫グロブリンの除去によっても精製される。非免疫グロブリンタンパク質の除去及び/または標的分子に結合しない免疫グロブリンの除去により、試料における標的反応性の免疫グロブリンの割合が上昇する。別の例では、組換えポリペプチドが細菌宿主細胞にて発現され、そのポリペプチドは宿主細胞のタンパク質の除去によって精製され、それによって組換えポリペプチドの割合が試料にて上昇する。さらに別の例では、試料における核酸は試料から1以上の成分を除去するまたは減らすことによって精製される。精製にて減少させるまたは除去する成分は他の核酸、損傷した核酸、タンパク質、塩等を含む。
【0127】
「アミノ酸配列」及び、例えば、「ポリペプチド」または「タンパク質」のような用語は、引用されるタンパク質分子に関連する完全な天然アミノ酸配列にそのアミノ酸配列を限定しないことにする。
【0128】
本明細書で使用されるとき、用語「細胞培養」は細胞の任意の試験管内での培養を指す。この用語に含まれるのは、連続細胞株(例えば、不死の表現型を持つ)、初代細胞培養、形質転換された細胞株、有限細胞株(例えば、形質転換されていない細胞)、細菌培養(例えば、液体または固体の培地を用いた)、及び試験管内で維持される任意の他の細胞集団である。
【0129】
本明細書で使用されるとき、用語「真核生物」は、「原核生物」とは区別可能な生物を指す。その用語は、例えば、核膜による境界があり、その中に染色体がある真核の存在、膜に結合する細胞小器官の存在、及び真核生物にて一般に観察される他の特徴のような真核生物の通常の特徴を示す細胞を持つ生物すべてを包含することが意図される。したがって、その用語は、真菌、原虫、及び動物(例えば、ヒト)のような生物を含むが、これらに限定されない。
【0130】
本明細書で使用されるとき、用語「トランスドミナントネガティブ変異遺伝子」は、変異していない(すなわち、野生型配列を有する)同じ遺伝子または遺伝子産物の他のコピーが適切に機能する(例えば、野生型タンパク質の機能を阻害することによって)のを阻止するタンパク質産物をコードする遺伝子を指す。トランスドミナントネガティブ変異遺伝子の産物は、本明細書中で「ドミナントネガティブ」または「DN」(例えば、ドミナントネガティブタンパク質またはDNタンパク質)と呼ばれる。
【0131】
本明細書で使用されるとき、用語「キット」は、物質を送達するための任意の送達系を指す。供与細胞のような反応物質の文脈で、そのような送達系には、反応試薬(例えば、適当な容器における細胞、緩衝液、選択試薬等)及び/または支持物質(例えば、培地、物質を用いて実施するための書面での指示等)の1つの位置から別の位置への保存、輸送、または送達を可能にする系が挙げられる。例えば、キットは、関連する反応試薬及び/または支持物質を含有する1以上の筐体(例えば、箱)を含む。本明細書で使用されるとき、用語「断片化キット」は、キット全体の成分の副部分をそれぞれ含有する2以上の別々の容器を含む送達系を指す。容器は意図される受容側に一緒にまたは別々に送達されてもよい。例えば、第1の容器は、特定の用途の細胞を含有してもよい一方で、第2の容器は選択培地を含有する。用語「断片化キット」は、米国連邦食品・医薬品・化粧品法の520(e)項のもとで規制された検体特異的な試薬(ASR’s)を含有するキットを包含するように意図されるが、これらに限定されない。実際、キット全体の成分の副部分をそれぞれ含有する2以上の別々の容器を含む任意の送達系は、用語「断片化キット」に包含される。対照的に、「統合されたキット」は特定の用途に必要とされる反応物質の成分のすべてを単一容器(例えば、所望の成分のそれぞれを格納する単一の箱)にて含有する送達系を指す。用語「キット」は、断片化キット及び統合されたキットの双方を含む。
【0132】
本明細書で使用されるとき、用語「細胞の代謝機能」は、ゲノムの複製以外の細胞によって実施される任意のまたはすべての過程(例えば、細胞の機能に関連する酵素的または化学的な過程)を指す。
〔発明を実施するための形態〕
本技術は、毒素の病原体への接合送達に使用できる細菌供与細胞に関する。本技術は、感染の予防及び治療のためのならびに感染に関連する敗血症の予防のための組織病変、例えば、火傷のような皮膚創傷の治療にて特定の適用を見いだす。
【0133】
供与細胞の増殖及び保存は、細胞が治療目的で使用される場合、特定の問題を課す。例えば、本技術の組成物は、例えば、組織創傷での使用の間、プロバイオティック生物は増殖することができず、それは治療部位で細菌供与細胞のさらなる増殖を必要としない有効な投与量で投与されなければならないように構成される。以下の本明細書で議論されるように、cfu/mlで報告される、特定の好ましい実施形態で使用される供与菌細胞の濃度は通常、1×10cfu/mlを超える。しかしながら、技術の開発中、供与菌の静止相へ過剰増殖、または治療範囲でのもしくは治療範囲を超える濃度での供与菌の冷蔵により細胞の接合能力が低下することが観察された。
【0134】
本明細書の開示は特定の説明された実施形態を参照するが、これらの実施形態は例示の目的で提示されるものであり、限定の目的で提示されるものではないことが理解されるべきである。
【0135】
本明細書で提供されるのは、さらに増殖させることなく直接使用のために好適な治療濃度で供与菌を有する製剤を得ながら、生存能力及び接合殺傷能力を保護するように供与菌細胞を増殖させて保存する方法である。提供されるのはまた、治療用途に対して安定な組成物を提供する特定の伝達性プラスミド及び供与菌、及び種々の細菌病原体による感染の治療または予防のための投薬計画である。
【0136】
病変、例えば、皮膚病変について治療されている多数の種類の患者は、長期の入院、複数回の手術、内科的介入及び輸血(例えば、火傷の犠牲者または慢性潰瘍のある糖尿病患者)を必要とする。いくつかの試験では、外傷の重症度及び手術とこれらの患者の敗血症を発症する素因との間の因果関係を示している(例えば、Angele and Faist,Crit.Care,6,298(2002);Roumen et al.,Ann Surg 218,769(1993)を参照のこと)。
【0137】
未回復の敗血症は、多臓器不全、最終的には死をもたらす。臓器不全は外傷及び手術の患者における死亡の主要原因である。過剰な炎症反応及び細胞性免疫の低下はこれらの患者の感染性合併症の素因である(例えば、Angele and Faist,Crit Care 6,298(2002);Faist,Curr Top MicrobiolImmunol 216,259(1996);and Schinkel et al.,J Trauma 44,743(1998)を参照のこと)。
【0138】
近年、いくつかの多剤耐性細菌株の出現によって瀕死の怪我の患者における院内感染の治療が極めて困難になっている。例えば、「ESKAPE」病原体(エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumanii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及びエンテロバクター種(Enterobacter species))のような病原体における抗生剤耐性の広がりによって感染、特に皮膚及び軟組織の感染の治療はますます困難になっている(H.Boucher et al.,ClinInfectDis.(2009)48(1):1−12)。
【0139】
したがって、一部の実施形態では、本技術は、1以上のプラスミド(例えば、自己伝達性プラスミドまたは非自己伝達性プラスミド)を含む供与菌細胞(例えば、病原性または非病原性の細菌、非分裂細胞)を含む治療処置を提供し、プラスミドは供与細胞から標的/受容細胞(例えば、病原性微生物)に伝達され(例えば、接合を介して)、標的においてその遺伝物質を発現するプラスミドが生じ得る。
【0140】
一部の実施形態では、本技術は、例えば、皮膚創傷及び火傷感染の局所治療にて使用するための細菌細胞及び伝達性キラープラスミドの安定な製剤を提供する。特に、本技術は、本明細書の以下で記載されている方法及び適用で使用するのに必要とされる機能を保持し、図3にて模式的に示されている「pCON44−74」と呼ばれる伝達性キラープラスミドまたはその変異体を含む供与細胞を提供する。pCON44−74プラスミドの使用は供与細胞の特定の株での使用に限定されない一方で、本明細書の以下で考察される実施形態では、pCON44−74は大腸菌供与細胞と共に使用される。本明細書で使用されるとき、用語「GN−4474」は、pCON44−74プラスミドを含有する細菌株、大腸菌CON31−85Aを指す。本技術の態様はGN−4474を増殖させて保存する方法ならびに感染の予防及び治療でGN−4474を使用するための製剤及び治療プロトコルに関する。
【0141】
凍結乾燥を伴うまたは伴わない凍結によって細菌細胞を保存する方法は既知であるが、再構成される細胞がさらに培養されることを予測して一般に実施される。細胞が使用のためにさらに培養される場合、生細胞の主要部分の喪失は容認される。本技術の態様は、有効使用のために細菌の増殖をさらに必要としない保存及び投与のための製剤である。
A.接合に基づく殺傷製剤の要素
1.伝達性プラスミド
RK2伝達系は、いったん発現されると、グラム陰性細菌宿主(例えば、大腸菌)に由来するプラスミドDNAを伝達することにおいて非常に有能である遺伝子のセットを保有する。したがって、機能的なRK2接合機構は、多数のグラム陰性細菌宿主からプラスミドDNAを動員することができる。適正な栄養複製開始点が導入される限り、プラスミドは、これらの供与株(大腸菌及び他のグラム陰性供与株)から他のグラム陰性標的株及びさらにグラム陽性標的株(例えば、Giebelhaus et al.,J.Bacteriol178,6378−6381(1996)を参照のこと)に動員されることが可能であり、接合完了体を生成することが示されている。本発明の接合系は、接合性プラスミドの大半が強い類似性を共有するので、RK2に限定されず、任意の他の系が送達系として役立ってもよい。
(a)キラー遺伝子
メカニズムの理解は本発明を実践するのに必要とされず、かつ本発明は作用の特定のメカニズムに限定されないが、一部の実施形態では、供与細胞は標的に接合伝達される伝達性プラスミドを含むことが企図され、この場合、プラスミドによってコードされる1以上の産物が発現され(例えば、mRNA、タンパク質を作製するために)、標的細胞が殺傷されるかまたはその増殖が阻害される。一部の実施形態では、供与細胞はさらにヘルパープラスミドを含む。一部の実施形態では、伝達性プラスミドは、自己伝達性プラスミドである。
【0142】
一部の実施形態では、供与細胞は、殺菌性である1以上のポリアミノ酸(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)をコードする核酸を含む伝達性プラスミドを含む。好ましい実施形態では、供与細胞はさらに、供与細胞内の非自己伝達性プラスミドのポリアミノ酸の殺菌特性を中和することができるポリアミノ酸(例えば、免疫タンパク質、例えば、実施例2及び4を参照)をコードする核酸を含む。好ましい実施形態では、中和するポリアミノ酸をコードする遺伝子は供与細胞の染色体上にある一方で、他の実施形態では、それはヘルパープラスミド上にある。一部の実施形態では、殺菌性ポリアミノ酸を中和することができるポリアミノ酸は構成的プロモータの制御下にある。一部の実施形態では、殺菌性ポリアミノ酸を中和することができるポリアミノ酸は誘導性プロモータの制御下にある。メカニズムの理解は本発明を実践するのに必要とされず、かつ本発明は作用の特定のメカニズムに限定されないが、一部の実施形態では、殺菌性ポリアミノ酸を中和することができるポリアミノ酸及び殺菌性ポリアミノ酸は、供与菌の中で非毒性の複合体を形成することが企図される。
【0143】
一部の実施形態では、殺菌性ポリアミノ酸はcolE3遺伝子によってコードされる。本発明は使用される殺菌性遺伝子の型によって限定されない。実際、colA、colB、colD、colIa、colIb、colK、colN、colE1、colE2、colE4、colE5、colE6、colE7、colE8、colE19、及びリゾチーム、リゾスタフィン、ストレプトリジンまたはリステリオリジンO等をコードする遺伝子を含むが、これらに限定されない種々の殺菌性遺伝子が企図される。一部の実施形態では、自己伝達性プラスミドまたは非自己伝達性プラスミドは、殺菌性ポリアミノ酸(複数可)の発現それぞれを推進するプロモータ(例えば、lacプロモータ/オペレータ)を含む。プラスミドが1を超える殺菌性タンパク質遺伝子を含有する一部の実施形態では、プロモータはすべて同一標的細胞にて毒素を発現するように構成される一方で、他の実施形態では、伝達性プラスミドは、第1の型の受容細胞に伝達される場合は第1の殺菌性タンパク質を発現するように、第2の型の受容細胞に伝達される場合は第2の殺菌性タンパク質を発現するように構成されることになる。
【0144】
コリシンのような殺菌性タンパク質は細菌に対してのみ致死性である。コリシンは「殺菌性タンパク質」と呼ばれるが、コリシンタンパク質は、例えば、DNA分解酵素やRNA分解酵素のように細胞に対して一般に毒性である酵素である(Bowman et al(1971)PNAS 68:964−968;Tomita et al(2000)PNAS 97:8278−8283;Schaller and Nomura(1976)PNAS 73:3989−3993)。
【0145】
自然界では、コリシンのような殺菌性タンパク質の送達は、標的細胞の表面上での毒素−解毒剤複合体の認識によって通常制御される。コリシンはコリシン産生細菌によって毒素−解毒剤複合体として細胞外空間に分泌され、毒素−解毒剤複合体は特異的な表面分子を保有する標的細胞にのみ結合する。毒素分子のみが標的細胞に取り込まれ、細胞を殺傷する。自然界では、コリシンのような殺菌性タンパク質による殺傷は正しい表面分子を保有する標的細胞に限定される。本明細書にて提供されている本技術は、接合を用いて毒素をコードするDNA分子を直接標的細胞に送達することによってこの制約的な表面認識工程をバイパスし、標的細胞上での特異的な表面分子の認識を必要としない。したがって、殺菌性毒素は、接合伝達を用いて非細菌細胞、例えば、真核細胞を標的とすることに使用されてもよい。
【0146】
一部の実施形態では、ヘルパープラスミドは、殺菌性遺伝子の発現を阻害することができるリプレッサタンパク質(例えば、lacI)をコードする。他の実施形態では、リプレッサタンパク質は供与株の染色体でコードされる。一部の実施形態では、リプレッサタンパク質は構成的プロモータの制御下にある。一部の実施形態では、リプレッサタンパク質は誘導性プロモータの制御下にある。
(b)ベクター
一部の実施形態では、本発明は極度に毒性のタンパク質の発現のために構成されるプラスミドを使用する。好ましい実施形態では、本発明のベクターは強力な細菌プロモータの上流でrrnBT1T2転写ターミネータを含む。本発明はrrnBT1T2転写ターミネータの使用に限定されない。他の既知の転写ターミネータが利用されてもよい。
【0147】
一部の実施形態では、ラクトースのプロモータ及びオペレータが利用される。一部の実施形態では、LacIリプレッサタンパク質がプラスミドに含まれる。他の実施形態では、それは別個のベクター、F’要素または染色体上で提供される。本発明はラクトースのプロモータ及びオペレータの使用に限定されない。テトラサイクリン、PBAD、T7、及びT5プロモータを含むが、これらに限定されない他の好適なプロモータが利用されてもよい。
【0148】
一部の実施形態では、本発明はハイブリッドプロモータ/オペレータ系を含むベクターを提供する。1つのハイブリッドプロモータ/オペレータは、基礎的な足場としてサルモネラバクテリオファージP22に由来するArc及びMntのリプレッサタンパク質を利用する(例えば、参照によって本明細書に組み入れられるWO2005/072092を参照のこと)。Arc及びMntのリプレッサタンパク質は構造的な類似性を伴った小型の転写調節タンパク質である。Arcタンパク質及びMntタンパク質は双方とも2つの機能的ドメイン−オペレータDNAを結合する二量体のN末端ドメインと、タンパク質の四量体化に介在し、機能に必須であるC末端のコイル化コイルドメインとを含有する(Knight and Sauer.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:797−801,{1989})(図12にて示される)。Arc及びMntの四量体化はオペレータ部位についての結合親和性と特異性の双方を高める共同的相互作用を提供する(Berggrun and Sauer.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.98:2301−2305{2001})。この構造的類似性があったとしても、Arc及びMntは共通して21塩基対のうちわずか6塩基対によってほぼ完全に異なるオペレータ配列を認識する(Vershon et al.JMol.Biol.195:323−31{1987};Vershon et al.J.Mol.Biol.195:311−322{1987})。
【0149】
本技術で使用されるプロモータ/リプレッサ系については、2つのリプレッサタンパク質、野生型Mntリプレッサ、及び変異体Mnt−Arcタンパク質の同時発現が利用される。変異体Mnt−Arcタンパク質はMntに由来する野生型C末端の二量体化ドメインを含有するが、N末端のDNA結合ドメイン内の6つの残基はArcリプレッサに由来する9つの対応する残基で置き換えられている(Knight and Sauer.Proc.Natl.Sci.USA,86:797−801,{1989})。Mnt−Arcのホモ二量体は野生型の四量体化能力を保持するが、今やMntオペレータ(O1)の代わりにArcオペレータの配列(O2)を認識する。本発明の新規のリプレッサヘテロ四量体は野生型Mntホモ二量体1つ及びハイブリッドMnt−Arcホモ二量体1つから成る。
【0150】
病原性細菌によるMnt及び/またはArcリプレッサの獲得は以下の理由のために毒性遺伝子の発現に対する耐性を容易に付与しない:(1)野生型Mnt四量体はハイブリッドオペレータ配列を認識しない。(2)野生型Arc四量体はハイブリッドオペレータ配列を認識しない。(3)獲得されたArcとMntのタンパク質との間での相同組換えによって形成されるMnt−Arcタンパク質は野生型のコピーを排除するが、それは依然として抑制に必要とされる。加えて、バクテリオファージP22はサルモネラ種に制約され、このファージに由来する遺伝子に大腸菌及び他の病原体が曝露される可能性は低い。したがって、本発明のハイブリッドプロモータ/リプレッサ系は、任意の細菌種にて遺伝子及びRNAの発現を調節するには理想的である。
【0151】
追加の好ましい実施形態では、ベクターは少ないコピー数の複製開始点を含んでもよい(例えば、少ないコピーの修飾されたpSC101またはRK2)。他の例示的な複製開始点には野生型のpSC101、p15a、pACYCが挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
本技術で使用されるプラスミドは、対象とする遺伝子及び選択可能なマーカー(例えば、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン等のような抗生剤耐性遺伝子)、及び/またはタンパク質精製タグ(例えば、Hisタグ、GSTタグ、インテインタグ)をコードする核酸の挿入のための多重クローニング部位も含んでもよい。
【0153】
上述のように、好ましい実施形態では、本発明の供与細胞は伝達性プラスミドによって発現される殺菌性タンパク質を阻害するかまたは中和する免疫タンパク質を含む。殺菌性タンパク質と対応する免疫タンパク質の多数の対が当該技術で既知である。本発明では、以上に列挙した殺菌性タンパク質はそれぞれ対応するコリシンA、コリシンB、コリシンD、コリシンIa、コリシンIb、コリシンK、コリシンN、コリシンE1、コリシンE2、コリシンE3、コリシンE4、コリシンE5、コリシンE6、コリシンE7、コリシンE8、及びコリシンE9の免疫タンパク質によって阻害される。殺菌性タンパク質(例えば、バクテリオシン)と中和する免疫タンパク質とのさらなる他の組み合わせは当該技術で既知である(例えば、ワールドワイドウェブサイトus.expasy.org/cgi−bin/get−entries?KW=Bacteriocin%20immunity,ExPASy(Expert Protein Analysis System)バイオインフォマティクスのスイス研究所(SIB)のプロテオミクスサーバーにおけるバクテリオシン免疫タンパク質の例示的な表を参照のこと)。一部の実施形態では、免疫タンパク質をコードする遺伝子はプロモータの制御下にあり、この場合、該プロモータは構成的に活性である一方で、他の実施形態では、免疫タンパク質をコードする遺伝子は誘導性であるプロモータの制御下にある。
【0154】
種々の自己伝達性プラスミドまたは非自己伝達性プラスミドが本発明で企図される。本発明のプラスミドを含む組成物は研究用途及び治療用途で使用されることが企図される。
2.供与細胞
(a)供与菌
本発明では任意の種類の細菌(例えば、グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌)を供与細胞として使用することができることが企図される(例えば、実施例1を参照)。多数のアプローチを利用して供与菌の広がり(例えば、増殖)を阻止してもよい。供与株として非分裂細胞を使用すること(例えば、あらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に組み入れられる2004年7月2日に出願された米国特許出願第10/884,257号を参照のこと)に加えて、いくつかの他のアプローチとして、温度感受性の変異(例えば、アミノアシル−tRNA合成酵素及びリボヌクレアーゼPの変異)、栄養要求性の変異(例えば、dapA及びaroA)、セリン変異、及び/またはアミノ酸合成における他の変異もしくは欠乏を伴う供与株を使用することが挙げられるが、これらに限定されない。これらの例は本発明の範囲を限定することにはならない。当業者は、供与菌を弱毒化するのに使用されてもよい代替のアプローチがあることを直ちに理解するであろう。これらの変異は当該技術で分析されており、周知であり、これらの変異を新しく得た供与菌へ導入することは十分に当業者の能力の範囲内である。
【0155】
一部の実施形態では、本発明の供与菌細胞は温度感受性の変異(複数可)を含む。温度感受性の変異体は、同系の野生型細菌に比べて特定の温度の範囲内で異常に増殖する。変異体では、RNAまたはタンパク質における変異は、変異体がその許容できる温度で研究室にて増殖できるが、許容できない(例えば、高い)温度(例えば、体温)では深刻な増殖欠損がもたらされるように温度に感受性である効果をもたらし、例えば、立体構造における変化をもたらす。
【0156】
これらの変異の例にはアミノアシル−tRNA合成酵素(例えば、Sakamoto et al.,J Bacteriol186,5899−5905(2004);Martin et al.,J.Bacteriol179,3691−3696(1997))、及びリボヌクレアーゼP(Li,Rna 9,518−532(2003);Li and Altman,ProcNatl Acad Sci USA,100,13213−13218(2003)を参照のこと)が挙げられる。アミノアシル−tRNA合成酵素は、対応するtRNAの3’末端アデノシンへの特定のアミノ酸のエステル化を触媒し、リボヌクレアーゼPは生物すべてにおいてtRNAの成熟5’末端を生成する不可欠なリボヌクレアーゼである(Gopalan et al.,J Biol Chem 277,6759−6762(2002))。これらの酵素機能の欠損は細胞におけるタンパク質合成を阻止する。
【0157】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のプラスミド及び供与細胞にて特定の特徴を採用して環境におけるDNAまたは遺伝子操作された生物の使用に関連する潜在的なリスクを最小限に抑える。例えば、環境的に感受性の状況では、非自己伝達性プラスミドを利用することが好ましくてもよい。したがって、一部の実施形態では、プラスミドは接合機構によって可動性ではあるが、自己伝達性ではない。本明細書で考察されているように、これは一部の実施形態では、その産物が接合機構の組み立てに必要であるtra遺伝子すべてを宿主染色体に組み込むことによって達成されてもよい。そのような実施形態では、プラスミドは伝達開始点(oriT)のみを有するように構成される。この特徴は、受容株が、死ぬ前に、または死んだ後でさえ、プラスミドをさらに伝達するのを妨げる。
【0158】
別の生物安全性の特徴は所定の宿主範囲を伴った接合系を利用することを含む。以上で考察されているように、特定の要素はわずかな関連する細菌(狭い宿主範囲)でのみ機能することが知られおり、他は多数の無関係な細菌(広い宿主範囲または広宿主域)で機能することが知られる(del Solar et al.,Mol.Microbiol.32:661−666,(1996);Zatyka and Thomas,FEMS Microbiol.Rev.21:29,1 319,(1998))。また、それらの接合系の多くはグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌のいずれかで機能することができるが、一般に双方では機能できない(del Solar,1996,上記;Zatyka and Thomas,1998,上記)。
【0159】
一部の実施形態では、本発明の供与菌細胞は栄養要求性の変異体(複数可)を含む。当該技術で既知の多数の栄養要求性の変異体がある。そのような表現型をもたらす遺伝子の例は、dapA及びaroAである。dapAは植物及び細菌におけるリジンの生合成に重要な酵素である、酵素ジヒドロピコリナーゼシンターゼをコードし(例えば、Ledwidge and Blanchard,Biochemistry,38,3019−3024(1999)を参照のこと)、aroAは芳香族アミノ酸の合成における重要な段階を触媒する酵素5−エノルピルビルシキメート3−ホスフェートシンターゼをコードする(例えば、Rogers et al.,Appl Environ Microbiol46,37−43(1983)を参照のこと)。これらの変異体は、これらの細菌に欠いているアミノ酸を補完した実験室の条件下で増殖することができる。しかしながら、適用の際、これらの変異体は重要な栄養因子を欠損しているので好適に増殖することができない。これらはほんの2つの例であり、当業者に利用可能であると知られる多数の類似の栄養要求性の変異がある。
【0160】
一部の実施形態では、本発明は供与株として環境的に安全な細菌を利用する。安全な細菌は当該技術で既知である。例えば、弱毒化した細胞内グラム陽性及びグラム陰性の細菌によるDNAワクチンの送達が報告されている(Dietrich et al.,2001,Vaccine,19,2506−2512;Grillot−Courvalin et al.,1999,Current Opinion in Biotech.10,477−481)。加えて、供与株は、身体の無菌ではない部分(例えば、皮膚、消化管、泌尿生殖器、口、鼻腔、喉、及び上気道系)に定着する何千もの有害な細菌の1つであることができる。一部の好ましい実施形態では、病原性の低い株が使用される。
(b)生育不能供与細胞
別の戦略では、生細胞の代わりに生育不能供与株を利用する。例えば、ミニ細胞及びマキシ細胞は代謝上活性があるが、生育不能な細菌細胞の十分に試験されたモデル系である。ミニ細胞は染色体DNAを欠き、DNAを複製することなく細胞分裂を受ける特殊な変異細胞によって生成される。細胞が複数コピーのプラスミドを含有している場合、ミニ細胞の多くはプラスミドを含有することになる。ミニ細胞は分裂しないし、増殖もしない。しかしながら、接合プラスミドを持つミニ細胞は生きている受容細胞へのプラスミドDNAの接合複製及び伝達が可能である(例えば、米国特許第4,968,619号を参照のこと)。
【0161】
マキシ細胞は、その染色体DNAを破壊するように処理される一方で、それらが含有するプラスミドの機能を保持する細胞である。マキシ細胞は、重要なDNA修復経路における変異体(recA、uvrA及びphr)を保有する大腸菌の株から得ることができる。マキシ細胞はそのように多数のDNA修復機能を欠くため、低用量のUV光に曝露されると死滅する。重要なことに、UV照射を受けていないプラスミド分子(例えば、pBR322)は複製し続ける。転写及び翻訳(プラスミドが指向性)はそのような条件下で効率よく生じることができ(Sancar et al.,J.Bacteriol.137:692−693(1979))、照射に先立って作製されたタンパク質は接合を持続するのに十分なはずである。このことは、以下の2つの観察:(i)ストレプトマイシンで殺傷された細胞は依然として活性供与株であること、及び(ii)接合性プラスミドの伝達はデノボ遺伝子発現を阻止する抗生剤の存在下で発生することができること(例えば、Heineman and Ankenbauer,J.Bacteriol.175.583−588(1993);Cooper and Heineman,Plasmid,43,171−175(2000))によって支持される。したがって、UV処理したマキシ細胞はプラスミドDNAを生きている受容株に伝達することができる。細菌間でのrecA遺伝子及びuvrA遺伝子の保存は、大腸菌以外の供与株のマキシ細胞を得ることを可能にするはずであることも理解されるべきである。
【0162】
一部の実施形態では、本発明は供与細胞として非分裂細胞(例えば、あらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に組み入れられる2004年7月2日に出願された米国特許出願番号10/884,257にて記載されている)を利用する。非分裂細胞は一般に、分裂して増殖する能力が取り除かれるが、接合効率は保護されるように処理される。好ましい実施形態では、非分裂細胞は染色体DNAが損傷されるが、マキシ細胞を作り出されるのと同じ程度までには破壊されないように処理される。
B.GN−4474製剤の構築及び使用
本技術の特定の実施形態、例えば、GN−4474を用いてこれらの種類の皮膚感染症のいずれかを治療することができる。適用の方法の1つはGN−4474を軟膏として局所に適用することであり、この適用方法は膿痂疹のような感染症に適合する。代替として、GN−4474を感染した組織に直接注射するまたは注入することができ、この適用方法は膿瘍及び潰瘍に特に適合する。GN−4474の局所への適用及び注射での適用は一部の状況では有利である。
1.大腸菌CON31−85Aの構築
実施例1は大腸菌CON31−85Aを作出するために行われた遺伝子操作を詳述する。得られた株は遺伝子型:
K−12大腸菌MG1655 ΔmsbB::lacIQ,ΔdapA::immE3−Arc/mnt,ΔaroA::imm×10−lacIQ,attB::tra−P−Mnt,ΔrecA
を有する。
2.pCON44−74プラスミド及びGN−4474の構築
図1〜3は殺傷プラスミドpCON44−74の構築の詳細な工程系統図を提供する。当業者は、本技術における機能を変えることなく、修飾、例えば、プラスミドの接合の機能、複製、または毒素の機能に影響を与えない核酸の一部を取り除くことをプラスミドに対して行うことができることを十分に理解するであろう。さらに、プラスミドは様々な種類の非病原性供与細胞または大腸菌の変異株に形質転換されてもよい。本技術はpCON44−74及びGN−4474双方のそのような変異体を包含することが企図される。例えば、あらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に組み入れられるWO2006/128089を参照のこと。
3.感染の予防及び治療のためのGN−4474の投与
GN−4474における有効成分は、いったん発現されると受容菌を殺傷する「キラープラスミド」を標的細菌に伝達することができる接合機構を持つ大腸菌の無害な遺伝子操作された株である。通常、経口で服用されるまたは注射される抗生剤が1日複数回投与される量(グラム、ミリグラム等)として投与される。ネオスポリンのような局所抗生剤は特定の量(1.0gのネオスポリン当たり3.5mgのネオマイシン、5,000単位のポリミキシンB及び400単位のバシトラシン)における各抗生剤の単位の数として投与される。
【0163】
GN−4474のような組成物にとって投薬の測定単位はいずれも適当ではない。投与量を示すために最終製剤にて活性物質、すなわち、大腸菌GN−4474細菌の質量または重量を使用することは実践的ではない。むしろ、本明細書で使用されるような投与量指標は、通常、製剤の容積または治療されたまたは治療される面積の単位に関連して示されるコロニー形成単位(cfu)である。
(a)予防投薬:局所
GN−4474組成物は、予防剤として使用されると、すなわち、病原体への曝露と同時に適用されると、感染を予防するのに有効であることが示されている。火傷のマウスに1×10及び1×10cfuの病原体(緑膿菌またはアシネトバクター・バウマニ)を感染させると、マウスの死亡を防ぎ、火傷部位から病原体を除去するGN−4474の用量反応が観察されることが明らかにされた。
【0164】
緑膿菌を感染させたマウスについては、約20mmの火傷面積に対する6.0×10cfuのGN−4474による処理によってマウスのおよそ50%の生き残りが生じた。図23に示すように、これらの条件下での処理により以下の結果が生じた。
【0165】
7.0×10cfuのGN−4474による処理によっておよそ75%の生き残りが達成された。5×10cfuのGN−4474による処理によって85%を超える生存性が達成された。5×10cfuのGN−4474に90%を超える生存性が達成され、4.9×10cfu以上の用量によって100%の生存性が達成された。
【0166】
一部の実施形態では、組織損傷は治療に先立って創傷清拭を行ってもよい一方で、一部の実施形態では、本発明の製剤は創傷清拭を行わずに適用されてもよい。
(b)治療投薬:局所
本技術の開発中に、GN−4474が確定した感染症を治療するのに使用できると判定された。特定の好ましい実施形態では、感染病変の局所治療は20mmの組織面積の病変について1×1010cfuのGN−4474の少なくとも1回の投与を含む。一部の実施形態では、この投与量での治療は2回、好ましくは3回以上繰り返される。特定の好ましい実施形態では、治療は、一定の間隔で、例えば、4〜6時間ごとに繰り返される。
【0167】
確定した感染症の治療はさらに、通常、予防的治療よりも多いまたはさらに頻繁な投薬を必要とすると判定された。したがって、既存の感染症に適用できる治療計画は予防的治療としても有用である。
(c)痂皮下の治療
一部の実施形態では、火傷の治療は火傷創傷を創傷清拭することなく実施される。GN−4474は、例えば、痂皮の下、ただし、下にある筋肉組織の上への注入によって適用される。特定の実施形態では、痂皮下の注射による治療により、感染を治療するまたは予防するのに必要とされるGN−4474の投与量が減少する。例えば、20mmの火傷部位に1.0×10cfuのGN−4474の単回用量を注射することにより、生存している病原生物の数のほぼ1対数が減少した。
C.GN−4474の増殖及び保存
本技術の組成物は増殖するための補足のアミノ酸を必要とするように構成されるので、使用の際、例えば、皮膚病変に適用されるとき、それらは必須のアミノ酸を奪われ、さらに分裂することができない。特に、GN−4474は増殖するためには2,6−ジアミノピメリン酸を必要とする。組織、例えば、皮膚病変に適用されるとき、2,6−ジアミノピメリン酸は利用できないので、供与菌は適用部位で増殖することができない(すなわち、それはその部位で定着することができず、またはさもなければ増殖することができない)。しかしながら、供与細胞の接合機能は維持されるので、毒素遺伝子を保有する伝達性プラスミドは受容病原体細胞に伝達されてもよい。プラスミドは感受性の標的病原体にてコードされた毒素を発現し、病原体を殺傷するように構成される。
【0168】
異なる種類の細菌は通常、「操作される」ことなく限られた時間の間、依然として単に生存可能である。ほとんどの適用については、相対的に少量の生菌が成長し、増殖して細菌の所望の数を達成するので、細菌は最適化条件を必要としない状態(または条件のセット)で保存することができる。しかしながら、GN−4474組成物は、例えば、抗生剤耐性の細菌を処理するための局所治療剤として使用されるように意図される生存する生菌大腸菌である。治療用途については、GN−4474は「再増殖」できず、それは病院の設定で使用されるように意図される最終的な製剤及び濃度でなければならない。本技術の開発中、治療レベルを達成するには、GN−4474は通常高濃度(例えば、およそ1×1010cfu/ml)で適用されることが示されている。
【0169】
細菌を保存する多数の異なる方法があり、グリセロールまたは他の糖に凍結させた保存、凍結乾燥粉末での保存、またはさらに短期間にわたる寒天プレート上での保存があるが、使用に先立ってさらなる増殖及び成長を必要とせずに必要な高濃度の生細胞を維持するレベルではない。一部の実施形態では、本技術は、非常に高いレベルの生存能力及び接合効率を維持しながら、GN−4474を短期間(約2週間)及び長期間(>1年)保存する方法に関する、かつ。実際、一部の典型的な細菌の保存条件は生存能力を維持してもよいが、これらの同じ条件は接合効率を維持しなくてもよい。
(a)短期間保存:液体にて4℃
本技術の開発中、接合伝達用に構成される大腸菌が短期保存(例えば、凍結または凍結乾燥に先立って)中に維持される濃度は大腸菌の生存能力及びそれが受容細胞と接合できる効率の双方に対して有意な効果をもたらすと判定された。大腸菌、例えば、本明細書で提供されるようなGN−4474については、1×10〜約1×10cfu/ml、好ましくは1×10〜1×10cfu/mlが保存に用いられてもよく、1×10cfu/mlが短期保存に特に好ましい濃度であり、それによって有意にさらに濃縮された製剤に比べて生存能力の維持及び接合効率が有意に改善する。
(b)保存製剤
好ましい濃度にて、保存培地の組成物は接合に影響を与えるが、生存能力にはほとんど影響を与えないと考えられる。非常に驚いたことに、細菌は、栄養要素が枯渇し、老廃物で満ちた環境から取り出されるとさらに健康であり、さらに安定であるはずだと通常考えられるため、細胞が新鮮な緩衝液ではなく使用済み培地で維持されると接合効率が短期保存でさらに良好であった。したがって、短期保存用の大腸菌GN−4474の安定性には複数の因子が影響を与え、いったん適正な保存濃度が維持されると、正確な緩衝液組成は接合効率に影響を与えるが、生存能力にはほとんど影響を与えないことは明らかである。このことは、複数の実験を介して、大腸菌の濃度が1×10cfu/ml以下で維持される限り、4℃での細菌の生存能力は使用済み培地、またはHECを伴ったもしくは伴わない賦形剤緩衝液にて維持することができることを示している。しかしながら、4℃での細菌の接合効率は、HECを有するまたは有さない緩衝液ではなく、使用済み培地で良好に維持される。
(c)4℃での短期保存
短期保存の温度は生存能力及び接合効率の双方に影響を与える。様々な糖も生存能力に影響を与える。実施例8にて以下で考察されているように、短期保存培地における糖としてのグルコースは、生存能力を維持するためにはスクロースまたはトレハロースほど良好ではない。しかしながら、これら3つの糖はすべて4℃で保存されると接合効率を維持する。これらのデータは、生存能力と接合効率とは直接関連せず、条件、例えば、糖を変えることは他に影響を与えずに1つの特徴に影響し得ることを示している。
(d)長期及び短期の保存のための制御凍結
一般に、細菌は凍結されると、細胞は代謝上不活性である(細菌が解凍され、大腸菌については通常少なくとも30℃であるその適当な温度でインキュベートされるまで生物学的過程は生じない)と考えられる。したがって、制御凍結実験について示されたデータは、生存能力が実験の過程全体を通して維持された(細菌の感知できる死亡はなかった)ので全くの驚きである。実験の最初の14日間、制御凍結された細菌は優れた接合効率を維持し、実際、新鮮に調製されたGN−4474と区別できなかった。しかしながら、28日目で開始して、接合効率は低下し始め、終了するまで実験の経過全体にわたって悪化し続けた。この凍結された−20Cの温度では細菌は本質的に生物学的に不活性であるはずだと理解されるので、生存能力が依然として一定であったとしても、接合効率は低下した。この低下は明らかに生存能力の喪失の結果ではない。また、接合効率は最初の2週間影響を受けなかったので、これは「凍結手順の当初のストレス」の結果でもなかった。
(e)急速凍結
休息凍結または瞬間凍結は、試料を非常に迅速に超低温、例えば、−70℃未満に低下させる過程である。急速凍結には通常ドライアイスまたは液体窒素の使用が伴う。実施例9に記載されている急速凍結のプロトコルは、−80℃にて長時間、賦形剤緩衝液(50mMKPO緩衝液、10%トレハロースまたはスクロース、2%グリセロール)にてGN−4474の生存能力及び殺傷効率の双方を維持する。典型的な細菌凍結プロトコルで使用されるものよりもはるかに低い比率のグリセロール(典型的な15〜40%に対して2%)を用いて生存能力及び殺傷効率の双方を維持する急速凍結のプロトコルが開発されている。
(d)凍結乾燥
実施例10は、賦形剤緩衝液(50mMKPO緩衝液、10%トレハロースまたはスクロース、2%グリセロール及び0.5%HEC)にて凍結乾燥されたGN−4474が生存能力及び殺傷効率の双方を維持しながら−80℃で長時間保存されてもよいことを示している。
実験
本発明の特定の好ましい実施形態及び態様を実証してさらに説明するために以下の実施例を提供するが、それらはその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書での本技術の開発中、GN−4474が種々の異なる適用戦略を用いた火傷におけるグラム陰性細菌の感染の予防及び治療双方のための治療剤である用量範囲を決定した。以下で提供されるのは、広い範囲の火傷の包帯及び帯具と組み合わせてGN−4474を適用するための例示的な方法である。
【0170】
後に続く実験の開示では、以下の略記が適用される:℃(摂氏度);cm(センチメートル);g(グラム);lまたはL(リットル);μg(マイクログラム);μl(マイクロリットル);μm(マイクロメートル);μM(マイクロモル);μmol(マイクロモル);mg(ミリグラム);ml(ミリリットル);mm(ミリメートル);mM(ミリモル);mmol(ミリモル);M(モル);mol(モル);ng(ナノグラム);nm(ナノメートル);nmol(ナノモル);N(規定);pmol(ピコモル);bp(塩基対);cfu(コロニー形成単位);Invitrogen(Invitrogen,Carlsbad,CA);lacOP(大腸菌lacオペレータ/プロモータをコードする領域);Kan(カナマイシン耐性の決定基);Cm(クロラムフェニコール耐性の決定基);Tra1(接合伝達に関与する遺伝子をコードする領域);Control(制御領域をコードする領域);oriV(栄養複製開始点をコードする領域);oriT(接合伝達の開始点をコードする領域);tetR(tetAのリプレッサをコードする遺伝子);tetA(テトラサイクリンに対する耐性をコードする遺伝子);Rep(複製に関与する遺伝子をコードする領域);Primase(複製に関与する遺伝子をコードする領域);Tra2(交配対形成に関与する遺伝子をコードする領域);colE3(コリシンE3をコードする遺伝子);col×10(コリシンをコードする遺伝子×10);immE3(コリシンE3のための免疫タンパク質をコードする遺伝子);immE7(コリシン×10のための免疫タンパク質をコードする遺伝子);repA,repB及びrepC(プラスミドRSF1010の栄養複製に必須のタンパク質をコードする);mobA,mobB及びmobC(RSF1010の動員に関与するタンパク質をコードする);イテロンをコードする領域,ssiA及びssiB(栄養複製の開始点);lacIQ(lacリプレッサタンパク質をコードする遺伝子);Arc/Mnt(ハイブリッドリプレッサ系);msbB(リポ多糖にミリストイル基を連結することに関与する酵素をコードする遺伝子);dapA(ジヒドロピコリナーゼシンターゼをコードする遺伝子);aroA(5−エノールピルビルシキメート3−ホスフェートシンターゼをコードする遺伝子);recA(recAのDNA組換えタンパク質をコードする遺伝子)。
【実施例】
【0171】
実施例1
供与菌の構築:大腸菌CON31−85Aの構築
この実施例は例示的な供与株である大腸菌CON31−85Aの構築を記載する。この株は図12に示す工程に従って野生型大腸菌株MG1655に由来した。大腸菌MG1655は大腸菌の最初に完全に配列決定された株だった(Blattner et al,Science.1997,Sep5;277(5331):1453−62.)。
1.msbBの欠失及びlacIの挿入
大腸菌MG1655に対する最初の遺伝子変化は、msbBの欠失及びmsbBに代わるlacIの挿入だった。msbB遺伝子は、細菌の内毒素の主要成分であるリポ多糖(LPS)の脂質Aにおけるアシル基の連結に関与する酵素をコードする。大腸菌のこの変異株はアシル基を欠いているLPSを依然として合成し、この修飾されたLPSは有意に低下した(およそ100万倍)内毒素効果を表す。大腸菌CON31−85Aにおけるこの修飾は、ヒトに適用される際、GN−4474の内毒素効果を有意に低下させることになる。
【0172】
標準の2段階相同組換え法を用いてMG1655におけるmsbB遺伝子を欠失させた。この遺伝子欠失(またはノックアウト(KO))は、遺伝子置換プラスミド(pCON1−96)を用いてmsbB遺伝子に代わるlacIの挿入と組み合わせた。colE3の発現はLacIによって抑制されるので、lacIの第2のコピーを導入することによってlacIの過剰発現を設計した。lacIはそのプロモータ領域にて点突然変異を有し、lacIの高い発現を生じることに留意のこと。この遺伝子置換の要約を図13にて示す。表1には、pCON1−96自殺ベクターを作製し、msbB遺伝子を欠失させ、置換でlacI遺伝子を挿入する相同組換え事象を検出するのに使用された個々のプライマー及び対応するプライマー配列を列挙する。
表1.自殺ベクターpCON1−96を作製し、msbBの欠失及びlacIの挿入を検出するのに使用したプライマーの名称及びプライマーの対応する配列
【0173】
【表1】
【0174】
msbB遺伝子置換のベクターpCON1−96の構築は図14にて示す。それぞれプライマー対、con1−4C/con1−4D、及びcon1−4A/con1−4Bを用いてmsbBの5’及び3’の隣接領域をPCRでクローニングした。プライマーcon1−8A/con1−8Bの対を用いて大腸菌JM109からlacI領域もPCRでクローニングした。クローニングしたDNA断片をDNA配列決定によって検証した。これらの断片をプラスミドpCON1−96に組み立てた(図14)。このベクターはプラスミド上に選択可能なマーカーCamR及び対抗選択可能なマーカーsacBの双方を有する。形質転換に先立って、pCON1−96をAscIで消化してプラスミドの複製開始点(ori)を取り除き、大腸菌MG1655を形質転換するのに先立ってレプリコンのないプラスミドをT4リガーゼによって環化した。50μg/mLのクロラムフェニコール(Cam、50μg/mL)を含有するルリア・ベルタニ寒天上で形質転換体を選択し、増殖しているコロニーをPCRによって解析し、msbBの5’または3’隣接領域のいずれかでの相同組換えを検証した。この解析に使用したPCRプライマーは上記表1に列挙され、これらプライマーの位置は図13にて示す。組み込まれたpCON1−96を含有する候補コロニーをその後、7%のスクロース(クロラムフェニコールを伴わない)を含有するLBブロス培養にて一晩増殖させた。次いで培養物を2日間継代培養し、希釈し、クロラムフェニコール選択なしで7%スクロースを含有するLB寒天上に播種してsacB含有細菌細胞を対抗選択した。プレート上で増殖するコロニーはmsbB欠失変異体または野生型への復帰変異体のいずれかであり、それは表2に列挙したプライマー対を用いたPCRによって検証した。
【0175】
組み換えられた相同領域は表現型(スクロース非感受性及びクロラムフェニコール感受性)及びこれらの組換えに特異的なPCR産物によって検証される。プライマー及びPCR産物のサイズを以下の表2に列挙する。
表2.相同組換えに続くmsbBの欠失及びlacIの挿入を検出するPCR解析で使用したPCRプライマーの組み合わせ。得られた大腸菌CON30−12株について正しいアンプリコンのサイズが示される一方で、親株大腸菌MG1655の増幅はいななるアンプリコンも生じない。
【0176】
【表2】
【0177】
2.dapAの欠失及びimmE3−arc/mntの挿入
大腸菌MG1655に対する第2の遺伝子変化は、dapAに代わるimmE3−arc/mntの挿入を伴ったdapAの欠失だった。dapA遺伝子は菌細胞壁とリジンの合成に部分的に関与する酵素をコードする。dapA変異体は、生合成経路の前駆体である化合物ジアミノピメリン酸(DAP)で補完された培地で増殖することができる。標準の2段階相同組換え法を用いて大腸菌CON30−12におけるdapA遺伝子を欠失させた。遺伝子置換プラスミドであるpCON30−31を用いてdapA遺伝子の欠失をimmE3及びmnt/arcの組込みと組み合わせた。LacIはプラスミドpCON44−74における殺菌性遺伝子colE3の発現を抑制する。しかしながら、colE3の漏出発現は宿主の生存に有害な効果を引き起こし得るので、immE3を宿主染色体に組み込んでCON31−85A宿主細胞内での最少量のColE3であってもその毒性を中和した。dapAの欠失遺伝子型を導入してDAP限定環境での宿主株の増殖を抑制したので、それは細菌の広がりを阻止する。この過程がdapAコード領域内での833bpの欠失を引き起こした。しかしながら、immE3及びMnt/Arc遺伝子はこの部位に組み込まれた。この遺伝子置換戦略の要約を図15にて示す。
表3はpCON1−96自殺ベクターを作製し、msbB遺伝子を欠失させ、置換でlacIを挿入する相同組換え事象を検出するのに使用した個々のプライマー及び対応するプライマー配列を列挙する。自殺ベクターpCON30−31を作製し、dapAの欠失及びimmE3−Arc/mntの挿入を検出するのに使用したプライマーの名称及び対応するプライマーの配列。
【0178】
【表3】
【0179】
dapA遺伝子置換ベクターpCON30−31の構築は以下の図16にて示す。それぞれプライマーcon8−59A/con8−59B及びcon8−59C/con8−59Dの2つの対を用いて大腸菌MG1655の染色体DNAからdapAの5’及び3’の隣接領域をPCRでクローニングした(図15)。プライマーの2つの対を用いてimmE3及びarc/mntのハイブリッド遺伝子をPCRでクローニングした。これらの断片をプラスミドpCON30−31にて集合させた(図16)。このベクターはプラスミド上で選択可能なマーカーCamR及び対抗選択可能なマーカーsacBの双方を有する。これらの株はR6K複製開始点に必要とされるPi複製タンパク質をコードするpir遺伝子を有さないので、自殺プラスミドpCON30−31は大腸菌MG1655(またはCON30−12)を複製することができないガンマR6K複製開始点を有する。次いでこのpCON30−31自殺ベクターを大腸菌CON30−12にエレクトロポレーションした。100μg/mlの2,6−ジアミノピメリン酸及び50μg/mlのクロラムフェニコール(Cam、50μg/ml)を含有するルリアベルタニ寒天上で形質転換体を選択し、増殖しているコロニーをPCRで解析してdapAの5’または3’の隣接領域いずれかでの相同組換えを検証した。この解析で使用したPCRプライマーは上記の表3に列挙し、これらプライマーの位置は図15にて示す。組み込まれたpCON30−31を含有する候補コロニーを100μg/mlの2,6−ジアミノピメリン酸及び7%のスクロース(クロラムフェニコールを含まず)を含有するLBブロス培養で一晩増殖させた。これらの一晩培養物を次いで2日間継代培養し、希釈し、クロラムフェニコール選択なしで100μg/mlの2,6−ジアミノピメリン酸及び7%のスクロースを含有するLB寒天上に播種してsacBを含有する細菌細胞を対抗選択した。プレート上で増殖しているコロニーはdapA欠失変異体または野生型への復帰変異体のいずれかであり、これを表4に列挙したプライマー対を用いてPCRによって検証した。加えて、第2の対抗選択が成功した分離体は2,6−ジアミノピメリン酸の補完なしでLB寒天では単独で増殖できないはずなので、LB寒天上に複製を単独で播種することによって増殖しているコロニーを表現型的に確認した。
【0180】
組み換えられた相同領域を表現型(スクロース非感受性かつクロラムフェニコール感受性)及びこれらの組換えに特異的なPCR産物によって検証した。プライマー及びPCR産物のサイズは以下の表4に列挙する。この過程はdapAコード領域内での832bpの欠失を生じた。しかしながら、immE3及びmnt/arc遺伝子はこの部位に組み込まれた。
【0181】
表4.相同組換えに続くdapAの欠失及びimmE3−arc/mntの挿入を検出するPCR解析で使用したプライマーの組み合わせ。正しいアンプリコンのサイズが得られた大腸菌CON30−41株について示される一方で、親株大腸菌CON30−12の増幅ではアンプリコンを得られない。
【0182】
【表4】
【0183】
3.aroAの欠失及びimm×10−lacIQの挿入
大腸菌MG1655への第3の遺伝子変化はaroAに代わるimm×10−lacIQの挿入を伴ったaroAの欠失だった。aroA遺伝子の破壊は大腸菌のシキミ酸経路の遮断を生じる。この経路は主として芳香族アミノ酸の生合成に関与するが、それは葉酸、エンテロケリン、及びキニンの生合成の前駆体を提供することができる。大腸菌のaroA変異体の公開された報告は、これらの株は、最少培地で増殖させる際、芳香族アミノ酸、p−アミノベンゾエート、及びp−ヒドロキシベンゾエートの添加を必要とすることを明らかにした。aroA遺伝子型を用いてアミノ酸の基に応じた宿主株を作製したので、aroAは殺菌性プラスミドの選択可能なマーカーとして使用された。合成培養培地では、aroAを保有する殺菌性キラープラスミドは安定して維持されることが実証された。この遺伝子置換の要約は図17にて示す。
表5.自殺ベクターpCON29−93を作製し、aroAの欠失及びimm×10−lacIの挿入を検出するのに使用したプライマーの名称及びプライマーの対応する配列。
【0184】
【表5】
【0185】
aroA遺伝子置換ベクターpCON29−93の構築は図18にて示す。それぞれプライマーcon29−28A/con29−28B及びcon29−28E/con29−28Fの2つの対を用いて大腸菌MG1655の染色体DNAからaroAの5’及び3’の隣接領域をPCRでクローニングした。imm×10及びlacI遺伝子をこれらの断片と組み合わせ、プラスミドにクローニングしてpCON29−93を生成した。このベクターはプラスミド上で選択可能なマーカーCamR及び対抗選択可能なマーカーsacBの双方を有する。aroAの隣接配列及びimm×10−lacIQ挿入物のクローニングに続いて、pCON29−93プラスミドをAscIで消化し、プラスミドから複製開始点を取り除いてレプリコンのないプラスミドを生成した。得られたレプリコンのないプラスミドをT4DNAリガーゼによって環化し、CON30−41に形質転換した。プラスミドはレプリコンがないので、この株ではそのプラスミドをプラスミドとして安定して維持することができない。DNA断片の最初の組込みの陽性の選択可能なマーカーとしてクロラムフェニコール耐性を用い、第2の相同組換えの対抗選択可能なマーカーとしてsacBを用いた。100μg/mlの2,6−ジアミノピメリン酸及び50μg/mlのクロラムフェニコール(Cam、50μg/ml)を含有するルリアベルタニ寒天上で最初の形質転換体を選択し、増殖しているコロニーをPCRで解析してaroAの5’または3’の隣接領域のいずれかでの相同組換えを検証した。この解析で使用したPCRプライマーは上記の表5に列挙し、これらプライマーの位置は図17にて示す。組み込まれたpCON29−93を含有する候補コロニーをその後、クロラムフェニコールなしで100μg/mlの2,6−ジアミノピメリン酸及び7%のスクロースを含有するLBブロスにて一晩培養した。次いで、クロラムフェニコールなしで同じ培地にてこれらの培養物を2日間継代培養し、その後希釈し、クロラムフェニコール選択なしで100μg/mlの2,6−ジアミノピメリン酸及び7%のスクロースを含有するLB寒天上に播種して、sacBを含有する細菌細胞を対抗選択した。正しい組換え体はPCR及びaroAマイナスの表現型によって検証した。これらのプレート上で増殖しているコロニーは、aroA欠失変異体または野生型への復帰変異体のいずれかであり、これは、表6で列挙したプライマー対を用いてPCRによって検証した。加えて、M9最少培地、及び芳香族アミノ酸(チロシン、トリプトファン及びフェニルアラニン(各100μg/ml))、p−アミノベンゾエート(20μg/ml)及びp−ヒドロキシベンゾエート(20μg/ml)で補完されたM9培地に複製を播種することによって、増殖しているコロニーを表現型的に確認した。正しいaroA欠失を持つコロニーはM9最少培地では表現型的にそれ自体で増殖することはできないが、正しいaroA欠失変異体は、芳香族アミノ酸及びp−アミノベンゾエート及びp−ヒドロキシベンゾエートを伴ったM9最少培地で増殖することができる。
表6.相同組換えに続くaroAの欠失及びimm×10−lacIの挿入を検出するPCR解析に使用したPCRプライマーの組み合わせ。得られた大腸菌CON32−16株について正しいアンプリコンのサイズが示される一方で、親株大腸菌CON30−41の増幅ではアンプリコンを得られない。
【0186】
【表6】
【0187】
4.欠失を伴わないtraの組込み
大腸菌MG1655への第4の遺伝子変化は、ラムダバクテリオファージ結合部位attBにおける大腸菌MG16556の染色体へのtraオペロンの組込みだった(図19)。殺菌性プラスミドpCON44−74は、供与細胞(大腸菌CON31−85A)から受容細胞へのその伝達に介在するtra遺伝子のセットを必要とする可動性プラスミドである。プラスミドpCON44−74はその伝達及び複製にRSF1010を利用し、RK2tra遺伝子の産物はこの過程を効率的に促進することができる。RK2tra遺伝子を含有する自殺プラスミドを構築し、宿主大腸菌ゲノムのattB部位に組み込んだ。attBとattPの間でのDNA分子の組換えは可逆的であり、ラムダバクテリオファージのInt−Xis系によって触媒される。供与株からの別の細菌株への潜在的な遺伝子伝達を回避するために、組み込んだプラスミドをさらに修飾してその切り出し過程を阻止する(図19における戦略を参照)。簡潔に、attB部位に隣接する大腸菌染色体のDNA断片、ybhC遺伝子の一部を保有する自殺プラスミドを同様にこの自殺ベクターにクローニングした。attB部位でのプラスミドの部位特異的な組込みに続いて、2つのybhC断片間の相同組換えが生じる。この過程がattLを取り除き、この位置で組み込まれたプラスミドDNAの潜在的な切り出しを阻止した。このプラスミド組込みの略図を図19にて示す。
【0188】
traを組み込んでいる自殺プラスミドpCON32−20の構築を図20にて示す。CON31−85Aにて染色体遺伝子の欠失を生成するのに使用された他の自殺ベクターで使用された同じ特徴の多くがpCON32−20においても使用された。プラスミドpCON32−20は43kbを超える大きなプラスミドである。このプラスミドにクローニングされたtra1及びtra2の領域は最終的な供与株でプラスミドを伝達するのに必要な接合機構を提供することに関与する。tra1及びtra2の領域はCON31−85Aの染色体に挿入されるか、または組み込まれなければならない。これらの領域は非常に大きいので、標準の2段階相同組換えを用いてこれらの領域を染色体に挿入することは実現可能ではない。したがって、pCON32−20自殺プラスミドは、ラムダバクテリオファージのInt−XIs系及び宿主染色体における対応するattB部位及びpCON32−20におけるattP部位を利用するように設計され、これはこの自殺ベクターに特異的にクローニングされた。attB/attP部位での組換え事象は通常、自然界では可逆的である。ConjuGonにより、組み込まれた時点での宿主染色体からの切断を阻止するためにpCON32−20が設計された。これを達成するために、pCON32−20自殺ベクターはattB部位に隣接する宿主大腸菌染色体のDNA断片(ybhC遺伝子の一部)を保有するように設計された。染色体におけるattB部位でのpCON32−20プラスミドの部位特異的な組込みに続いて、2つのybhC遺伝子断片間の相同組換えが生じる。ybhC遺伝子でのこの相同組換え事象の間に、attL遺伝子は排除され、この位置に組み込まれるプラスミドDNAの潜在的な切断が阻止される。
【0189】
自殺ベクターpCON32−20はいくつかの重要な特徴を有する(図20)。Tra1、Tra2、及び制御の領域(すべて接合に必要とされる)は、好適に特徴付けられているプラスミドRK2からクローニングされた。RK2に由来するTra1、Tra2及び制御の領域全体がtrbKを除いてクローニングされた。trbK遺伝子の発現は受容細胞にて接合効率を劇的に低下させることが示されている。trbKのCON31−85Aから細菌病原体への望ましくない遺伝子伝達を阻止するために、その遺伝子を欠失させた。供与株CON31−85AにおけるtrbKの排除は供与株の接合効率に影響を与えない。2つの別々の抗生剤耐性マーカーである、カナマイシンに対する耐性についてのKanR及びクロラムフェニコール耐性についてのCamRを、第1の相同組換え事象についての陽性選択に使用されるpCON32−20プラスミドにクローニングした(図19)。sacB遺伝子もpCON32−20にクローニングし、陰性選択に使用してpCON32−20プラスミドを対抗選択したが、これは第2の相同組換え事象を強制することになる(図19)。immE3遺伝子のコピーをpCON32−20自殺プラスミドにクローニングしたが、immE3はこのプラスミドの開発の目的に必須でなく、遺伝子置換過程の後、immE3は欠失されるように設計された。Intタンパク質の発現はattBとattPの間での組換えに必須である。プラスミドpJW27からトランスでタンパク質が発現され、これにより熱誘導性プロモータのもとでIntを発現する。プラスミドpJW27は最終的な供与株CON31−85Aに伝達されず、実際、最終的な株に対して選択される。RK2に由来するTra1、Tra2及び制御の領域全体をクローニングするのに先立って、伝達開始点(oriT)を変異させた。ConjuGOnがoriTを特異的に変異させてCON31−85Aから病原性の標的細菌への染色体DNAの潜在的な伝達を阻止した。自殺ベクターpCON32−20はまた、構成的に発現されているラムダPプロモータの制御下にあるMntリプレッサタンパク質も保有する。このリプレッサタンパク質は、CON31−85A供与株にてcol×10の発現を調節するのに使用されるConjuGonの新規のArc/Mntハイブリッドプロモータ/リプレッサ系の一部である。自殺プラスミドpCON32−20は大腸菌MG1655(またはCON31−85A)を複製することができないガンマR6Kの複製開始点を有するのは、これらの株はR6Kの複製開始点に必要とされるPi複製タンパク質をコードするpir遺伝子を有さないためである。プラスミドの構築の間、Piタンパク質は特異的なベクター−構築宿主のゲノムからトランスで提供された。プラスミドCON32−16の受容株はPiタンパク質を発現しなかったため、プラスミドは複製することできず、したがって組み込まれたプラスミドのみが抗生剤、クロラムフェニコール及びカナマイシンに対する耐性を提供し得る。
【0190】
tra組込みベクター(pCON32−20)はCON32−16の染色体にてattB部位に組み込まれなければならない(図19)。大腸菌CON32−16またはpCON32−20ベクターは組込みに必要とされるラムダインテグラーゼ遺伝子を含有しないので、ラムダインテグラーゼはトランスで供給される必要がある。温度感受性のレプリコン及び熱誘導性のラムダインテグラーゼを含有するプラスミドpJW27が大腸菌CON32−16に形質転換された。この形質転換に続いて、エレクトロコンピテントな大腸菌CON32−16/pJW27が調製された。tra組込みベクターpCON32−20をエレクトロコンピテントな大腸菌CON32−16/pJW27細胞に形質転換した。エレクトロポレーションの後、細菌細胞を43℃で1時間インキュベートし(ラムダインテグラーゼを誘導し、かつpJW27の株を養生する)、次いで100μg/mlの2,6−ジアミノピメリン酸及び50μg/mlのカナマイシン(Kn、50μg/ml)を含有するLB寒天上に拡散させた。これらのプレートを37℃で一晩インキュベートした。組込み株から1987bpのアンプリコンを生成し、CON32−16からのアンプリコンを有さないことになるプライマー対con32−8Aとcon32−8D(図19及び表7)を用いたPCRで得られたコロニーを解析し、attB部位でのpCON32−20の最初の組込みを検証した。次いでPCR陽性のクローン(attB部位でpCON32−20の組込みを持つもの)を、抗生剤なしで100μg/mlの2,6−ジアミノピメリン酸及び7%のスクロースを含有するLBブロスにて一晩増殖させた。次いでこれらの培養物を同じ培地で2日間継代培養し、その後希釈し、抗生剤選択なしで100μg/mlの2,6−ジアミノピメリン酸及び7%のスクロースを含有するLB寒天上に播種して、sacBを含有する細菌細胞を対抗選択した。100μg/mlの2,6−ジアミノピメリン酸及び7%のスクロースを伴ったLBブロスにおけるこの培養はybhC領域間での相同組換えを促進した(図19)。相同組換えは、いずれの抗生剤マーカーも含まないTra含有株を生成するpCON32−20AのimmE3−KanR−ガンマori−CamR−sacBの部分を排除するはずである。attB部位でのpCON32−20の組込み及び第2の工程の相同組換えは接合効率及びPCRの解析によって検証した。可動性プラスミドpCON15−49を潜在的組換え体に形質転換し、その接合効率をよく研究されている大腸菌S17−1と比較した。接合の効率はこれらの株間で同じだったので、tra遺伝子はすべて宿主染色体に適切に組み込まれた。PCRプライマーの対であるcon32−8Aとcon32−8Cを用いてybhC領域での第2の工程の相同組換え特定した。これらプライマーの位置は上記図19にて示し、その実際の配列は以下の表7で示す。第2の工程の相同組換え事象が生じる場合、プライマーcon32−8A及びcon32−8Cを用いたPCR解析は1695bpのアンプリコンを生じるであろう。組み込まれたtra遺伝子を含有する得られた株はCON32−27Aと呼ばれた。
表7.tra遺伝子の組込みを検出するためのプライマーの名称及びプライマーの対応する配列
【0191】
【表7】
【0192】
【表8】
【0193】
5.挿入のないrecAの欠失
大腸菌MG1655への最後の遺伝子変化はrecAに代わるいななる挿入もないrecAの欠失だった。ΔrecAの遺伝子型を導入して組換えによる潜在的な遺伝的不安定性を最低限に抑え、また宿主株の適応度も減衰させた。これは供与株に対する最後の遺伝子変化であったが、これは上記で列挙した他の欠失及び挿入はこれらの遺伝子欠失及び供与株染色体への挿入を促進するのに役立つRecAを必要としたためである。標準の2段階相同組換えを用いて大腸菌MG1655におけるrecA遺伝子を欠失させた。この遺伝子置換の要約は図21にて示す。
表9.自殺ベクターpCON31−45を作製し、ゲノムにおけるrecAの欠失を検出するのに使用したプライマーの名称及びプライマーの対応する配列
【0194】
【表9】
【0195】
ΔrecA遺伝子欠失の自殺ベクターpCON31−45の構築はここに記載されている。それぞれプライマーの2つの対であるcon31−10A/con31−10B及びcon31−10C/con31−10Dを用いてrecAの5’及び3’の隣接領域をPCRでクローニングした。クローニングしたDNA断片をDNAの配列決定によって検証した。これらの断片をプラスミドpCON31−45に集合させた(図22)。このベクターはプラスミド上に選択可能なマーカーCamR及び対抗選択可能なマーカーsacBの双方を有する。形質転換に先立って、pCON31−45をAscIで消化してプラスミドの複製開始点(ori)を取り除いた。大腸菌CON32−27Aを形質転換するのに先立ってレプリコンのないプラスミドをT4リガーゼによって環化した。2,6−ジアミノピメリン酸(100μg/ml)及びクロラムフェニコール(Cam、50μg/ml)を含有するLB寒天上で形質転換体を選択し、増殖しているコロニーをPCRで解析してrecAの5’または3’隣接領域のいずれかでの相同組換えを検証した。この解析で使用したPCRプライマーを上記表9に列挙し、これらプライマーの位置を図21にて示す。その後、組み込まれたpCON31−45を含有する候補コロニーを、2,6−ジアミノピメリン酸(100μg/ml)及び7%スクロース(クロラムフェニコールを含まない)を含有するLBブロスで一晩増殖させた。次いでこれらの培養物を2日間継代培養し、希釈し、クロラムフェニコール選択なしで2,6−ジアミノピメリン酸(100μg/ml)及び7%スクロースを含有するLB寒天上に播種してsacBを含有する細菌細胞を対抗選択した。これらの寒天プレートで増殖するコロニーはrecA欠失変異体または親株への復帰変異体のいずれかであり、以下の表10に列挙したプライマー対を用いたPCRによってこれをスクリーニングした。
【0196】
組み換えられた相同領域を表現型(スクロース非感受性及びクロラムフェニコール感受性)及びこれらの組換えに特異的なPCR産物によって検証する。プライマー及びPCR産物のサイズは以下の表10に列挙する。PCR解析に加えて、recAの表現型はUV光に対する株の感受性によって検証した。この遺伝子欠失過程はrecAのコード領域全体の1098bpを取り除いた。
表10.相同組換えに続くrecAの欠失を検出するPCR解析で使用された特異的なプライマーの組み合わせ。得られた大腸菌CON31−85A株について正しいアンプリコンのサイズが示される一方で、親株大腸菌MG1655及びCON32−27Aの増幅は1kb大きい。
【0197】
【表10】
【0198】
GN−4474による病原体の試験管内の殺傷
上記で言及されたように、プラスミドpCON44−74で形質転換された大腸菌CON31−85Aは「GN−4474」と呼ばれる。これらの実験では、GN−4474を陰性対照株CON37−55Aと比較して異なる標的病原体を殺傷することにおけるその効果を評価する。
【0199】
実験のこれらのセットでは、病原体株はすべて凍結ストックから一晩培養した。GN−4474及びCON37−55Aも凍結ストックから一晩培養した。一晩の増殖の後、培養物の密度を分光光度計で基準化した。次いで標的病原体をGN−4474またはCON37−55Aのいずれかと別々に混合し、次いで浮遊液を遠心分離機で沈殿させてペレット化し、上清を取り除き、得られた「混合した」細胞ペレットを生理食塩水に再浮遊させた。次いで、得られた浮遊液を0.9%生理食塩水寒天プレートの上に置いたニトロセルロースの濾紙円板上でスポットし、細菌の増殖が確実にプレート自体の上で直接生じないようにした。次いで生理食塩水寒天プレートを層流フードで素早く乾燥させ、次いで37℃で2時間置いて、接合を発生させた。
【0200】
2時間後、プレートをインキュベータから取り出し、濾紙円板(標的病原体及び処理細胞を依然として含有する)を寒天プレートの表面から外し、次いで1.0mlの無菌生理食塩水を含有する1.5mlの遠心管に入れた。次いで管をボルテックスして、濾紙円板から細菌細胞を放出した。次いで連続希釈液を調製し、ルリアベルタニ培地に播種した。この培地は試験された病原体すべて(クレブシエラ、シュードモナス、アシネトバクター、エンテロバクター、大腸菌)の増殖を可能にするが、この培地は2,6−ジアミノピメリン酸で補完されていないので、GN−4474もCON37−55A対照も増殖することができず、標的病原体のみが確実に回収されることになる。プレートを37℃で一晩インキュベートし、その後、得られた病原体コロニーを計数した。結果は図24A〜24Eにて「GN−4474によって殺傷された試験株の割合」として報告する。
【0201】
CON37−55A陰性対照プレートのカウントをベースラインとして使用した。GN−4474の殺傷効率は、GN−4474で処理した回収された標的病原体のcfu/mlをCON37−55Aで処理した回収された標的病原体のcfu/mlで割り、100で乗算して図24A〜24Eにて示すような生存する細菌の%を得ることによって算出した。
【0202】
【表11】
【0203】
これらのデータは、以下の実施例で示されるようにGN−4474が緑膿菌を治療することに限定されないが、様々な異なる病原体による感染を治療することに使用されることを示している。
実施例2
火傷におけるグラム陰性細菌感染の治療
これらの実験はマウスの火傷における緑膿菌MAKIの抑制及び殺傷のためのGN−4474の投与量及び投与の方式についての試験を記載している。
【0204】
以下は、本発明の組成物を試験するための標準的なプロトコルを記載している。
A.標準の創傷清拭の火傷治療
a.0日目にマウスをほぼ9:00amに熱湯で火傷を負わせ、全層火傷を形成させた。火傷を冷やして乾燥させた後、火傷に約3500cfuの緑膿菌MAKIを感染させる。
b.1日目に(火傷及び感染の開始から24時間後)、火傷を創傷清拭し、GN−4474を溶解させた完全賦形剤緩衝液(50mMのKPO緩衝液、10%のトレハロース、2%のグリセロール及び0.5%のHEC)または溶媒対照(賦形剤緩衝液)によって治療を開始する。この日、溶媒対照またはGN−4474のいずれかの治療が1〜3回8時間にわたって適用された。
c.2日目に(火傷及び感染の48時間後)、マウスを屠殺する。感染した火傷部位から筋肉生検を採取する。脾臓(全身性の感染を示す)も採取する。組織を無菌のLB培地にてホモジナイズし、LB寒天プレート上に播種して計数した。
d.試験した改変プロトコル
i.緑膿菌MAKIの異なる感染接種菌
ii.第2日の治療(GN−4474及び溶媒対照の双方)を2日目(火傷及び感染の48時間後)に行い、その後3日目(火傷及び感染の72時間後)にマウスを屠殺し、組織を採取した。
【0205】
e.各群のマウスはそれぞれ8〜11匹の範囲であった。
【0206】
f.実験動物に、85℃の湯に9秒間浸すことによって12%TBSA(全体表面積)の第三度の背面熱湯火傷を負わせた。12%TBSAはおよそ20mmである。
このプロトコルに対する変更及び結果を以下で考察する。
治療1
「治療モデル」を定義する第1の実験では、病原体の接種菌の時間及び負荷が定義される。この実験では、0日目にマウスに火傷を負わせ、次いで200μlの容積で送達される7400cfuの緑膿菌MAKIを感染させた。24時間後(1日目)、各群8匹のマウスからなる4つの群を以下のように治療した:
−第1群:帯具なしで溶媒対照(賦形剤緩衝液)のみによって治療した;
−第2群:帯具なしで低用量のGN−4474を溶解させた賦形剤緩衝液(3.78×10cfuを動物の創傷に適用した)によって治療した;
−第3群:帯具なしで高用量のGN−4474を溶解させた賦形剤緩衝液(2.91×1010cfuを動物の創傷に適用した)によって治療した;
−第4群:賦形剤緩衝液のみを染み込ませた帯具で治療した。
【0207】
2日目(感染の48時間後)、マウスを屠殺し、筋肉生検を採取し、ホモジナイズし、プレートに播種して生菌数を計測した。脾臓も採取し、ホモジナイズし、プレートに播種して生菌数を計測した。
【0208】
この実験に使用された大腸菌GN−4474は増殖の最適な段階(中対数のOD600=1.8)まで増殖させた。次いで、GN−4474細菌は、創傷清拭された火傷部位に適用するちょうど4時間前に濃縮した。濃縮された形態での長期の保存は接合効率を低下させることに留意されたい。
【0209】
結果を図4A及び4Bにて示す。これらのデータは、高用量の治療薬の使用と緩衝液のみまたは帯具+緩衝液のいずれかの治療の使用との間に有意差があることを示している。さらに、図4Aに見られるように、高用量投与後、緑膿菌負荷に注目すべき低下が認められる。低用量投与群は緑膿菌負荷の低下を示さない。
【0210】
脾臓のデータ(図4B)は、緑膿菌負荷に差異がないということを示し、治療が敗血症の発生を阻止しなかったことを示している。しかしながら、治療に先立って敗血症が存在するのかどうかは判定されず、予め存在する敗血症がこの局所治療に屈することを予測することにはならない。
治療2
B.修正された創傷清拭の火傷治療
この実験では、2つの異なる病原体接種菌量を用いて感染を引き起こすことによって実施例1で記載されているプロトコルを改変した。治療1のデータは大きすぎる緑膿菌MAKIの接種菌を用いてこの感染をもたらしていることを示唆した。この実験に使用された大腸菌GN−4474は前の実験のものと実質的に完全に同じように調製した。大腸菌GN−4474は増殖の最適な段階(中対数OD600=1.7)まで増殖させた。次いで、GN−4474細菌は、創傷清拭された火傷部位に適用されるちょうど4時間前に濃縮した。
【0211】
各群8匹のマウスからなる2つの群に緑膿菌(MAKIの6893cfu)の接種菌を投与した。各群8匹のマウスからなる他の2つの群に他の2つの群のおよそ半分(MAKIの3492cfu)の緑膿菌MAKIの接種菌を投与した。24時間後(1日目)、各群8匹からなる4つの群は以下のように治療された:
−第1群:高接種菌量の緑膿菌を溶媒対照(賦形剤緩衝液)で治療した;
−第2群:高接種菌量の緑膿菌を、単回用量のGN−4474を溶解させた賦形剤緩衝液(3.70×1010cfuを動物の創傷に適用した)で治療した;
−第3群:低接種菌量の緑膿菌を溶媒対照(賦形剤緩衝液)で治療した;
−第4群:低接種菌量の緑膿菌を、単回用量のGN−4474を溶解させた賦形剤緩衝液(3.70×1010cfuを動物の創傷に適用した)で治療した。

2日目(感染の48時間後)に、マウスを屠殺し、筋肉生検を採取し、ホモジナイズし、プレートに播種して生菌数を計測した。脾臓も採取し、ホモジナイズし、プレートに播種して生菌数を計測した。結果を図5A及び5Bに示す。
【0212】
得られたデータは、最初に異なる接種菌量(高量に対する低量の緑膿菌MAKIの接種菌)を使用して感染をもたらしたとしても、治療薬として賦形剤緩衝液のみを得た群における緑膿菌MAKIの数はほとんど同等であることを示している。感染は双方とも結局、1.7×10〜3.5×10cfuであった(図5A)。GN−4474を高接種菌量の緑膿菌MAKIの群に適用したとき、緑膿菌MAKIのcfuは3.8×10cfuに低下した。同じ量のGN−4474治療薬を低接種菌量の緑膿菌MAKIのマウスに適用したとき、残りの感染でさらに大きな低減が観察されたため、回収された細菌は6.1e5cfuだった。
【0213】
脾臓からのcfuのデータ(全身性の広がりを示す)を調べると(図5B)、高接種菌量の緑膿菌MAKI株(3.0×10に比べた5.6×10)で感染させたマウス間で差異が実際に見られず、高接種菌量の緑膿菌MAKI株が投与されたことによって、GN−4474による治療が開始される前にマウスはすでに敗血症になり始めており、GN−4474の局所適用は全身性の細菌のcfuを低下させないことが示唆される。しかしながら、低接種菌量の緑膿菌MAKI株をマウスに投与して感染を確立させると、GN−4474による治療は、血流に入る緑膿菌MAKIを抑制するかまたは少なくともその量を減少させ、それによって敗血症を部分的に抑制すると考えられる(図5B)。
標準化された低接種菌量のプロトコル
低用量の接種菌量の緑膿菌MAKIをGN−4474治療の追加の特徴付けに使用した。追加試験の標準のプロトコルは以下のとおりである:
− 0日目:マウスの群に火傷を負わせ、約3500cfuの緑膿菌MAKIで感染させる。
− 1日目:24時間後、マウスを創傷清拭し、GN−4474または溶媒対照(賦形剤緩衝液)によって治療する。実施される特定の実験に応じて、GN−4474による単回治療が朝(例えば、9:00AM)に実施される。一部の実験では、1日目にGN−4474の複数回の適用が行われる(ほぼ9:00am〜4:00pmに2〜3回適用する)。
− 2日目:次いで翌日(感染の48時間後)、マウスを屠殺し、火傷部位から筋肉穿孔試料を採取し、脾臓を採取する。
治療3
この実験は、同じ濃度のGN−4474製品を複数回適用することにより火傷部位にて緑膿菌の細菌負荷が減少するかどうかを調べた。GN−4474は治療1及び2のように調製し、増殖させ、濃縮した。
【0214】
各群8匹のマウスからなる4群に火傷を負わせ、3400cfuの緑膿菌MAKIを感染させた。24時間後、マウスを各群8匹からなる4群に分けた。群を以下のように治療した:
−第1群:火傷を負わせ、3400cfuの緑膿菌MAKIを感染させ、賦形剤緩衝液1回投与した;
−第2群:火傷を負わせ、3400cfuの緑膿菌MAKIを感染させ、単回用量のGN−4474を溶解させた賦形剤緩衝液(1.38×1010cfuを動物の創傷に適用した)によって治療した;
−第3群:火傷を負わせ、3400cfuの緑膿菌MAKIを感染させ、賦形剤緩衝液を2回投与した(ほぼ9:00amに最初の1回を行い、5時間後にもう1回を行った);
−第4群:火傷を負わせ、3400cfuの緑膿菌MAKIを感染させ、GN−4474を溶解させた賦形剤緩衝液(1.38×1010cfuを動物の創傷に適用した)を2回投与した(9:00amに最初の1回を行い、5時間後にもう1回を行った)。
【0215】
2日目(感染の48時間後)にマウスを屠殺し、筋肉生検を採取し、ホモジナイズし、プレートに播種して生菌数を計測した。脾臓も採取し、ホモジナイズし、プレートに播種して生菌数を計測した。このセットの実験のデータを図6A及び6Bにて示す。
【0216】
賦形剤緩衝液を1回投与した群における回収された緑膿菌MAKIの数は、組織の3.51×10cfu/グラム(図6A)であった。1.38×1010CFUのGN−4474を1回投与した群にて緑膿菌MAKIの小さな低下(筋肉組織の2.63×10cfu/グラム)が認められた。前の動物実験では、GN−4474の単回投与後、火傷部位で緑膿菌MAKIがさらに良好に排除され、この実験では、排除は十分ではなかったことが示されているが、治療薬として適用されたGN−4474のCFUが前の実験よりも少なかったことに留意されたい。
【0217】
マウスにGN−4474を約5時間の間隔を空けて2回投与した場合、賦形剤緩衝液を2回投与した場合と比べて、火傷視野における緑膿菌MAKIの有意な減少が認められた。GN−4474を2回投与した後、緑膿菌MAKIの平均cfu/組織のグラムは、賦形剤緩衝液を2回投与した場合は2.45×10cfu/グラムの組織であるのに対して、組織の1.39×10cfu/グラムであった(図6A)。ここで、GN−4474を2回投与した8匹のマウスのうち4匹では緑膿菌MAKIが火傷部位から完全に排除され、この群の残りのマウスのうち2匹では火傷部位の緑膿菌MAKIの負荷が有意に低下したことに留意されたい。
【0218】
類似の傾向は脾臓のデータ(図6B)で観察された。再度、GN−4474のみを単回投与したところ、これらのマウスの脾臓で回収された緑膿菌のCFUの数(賦形剤緩衝液を1回投与した場合は1.59×10CFU/グラムの脾臓組織であるのに対して、GN−4474を1回投与した場合は1.70×10CFU/グラムの脾臓組織である)に有意差は認められなかった(図6B)。
【0219】
これらのデータは、1.38×1010CFUのGN−4474を1回投与しても敗血症は阻止されないが、GN−4474を2回投与したマウスは、2.63×10CFU/グラムの脾臓組織の緑膿菌MAKIの平均負荷を有し、賦形剤緩衝液を2回投与したマウスの対照群は7.12e5CFU/グラムの脾臓組織の緑膿菌MAKIの平均負荷を有したことを示している(図6B)。GN−4474を2回投与した群のマウス8匹のうち5匹は、その脾臓に検出可能な緑膿菌MAKIを有していなかった。この群の残り3匹のマウスのうち1匹では同様に、緑膿菌MAKIの負荷が有意に低下した。
治療4
この実験では8時間の間で1回、2回、及び3回、感染した火傷部位を治療する効果を調べた。上記のように、0日目にマウスに火傷を負わせ、3500cfuの緑膿菌MAKIを感染させた。次いで24時間後、溶媒対照またはGN−4474の投与を開始した。試験群は以下のとおりであった:
−第1群:9:00amに賦形剤緩衝液を1回投与した;
−第2群:9:00amにGN−4474を1回投与した;
−第3群:9:00am及び12:00pmの2回GN−4474を投与した;
−第4群:9:00、12:00pm、及び2:00pmの3回GN−4474を投与した。
【0220】
前の治療とは対照的に、この実験に新しく調製したGN−4474製品を使用するのではなく、凍結乾燥したGN−4474の再浮遊させた製剤を使用した。
【0221】
GN−4474の再浮遊させたバイアルを使用することにより、創傷部位に適用されるGN−4474の用量が有意に変化した。前の実験では、約1〜3×1010cfuの新しく培養したGN−4474を創傷部位に適用した。再浮遊させた凍結乾燥GN−4474を使用するこの実験では、33分の1のGN−4474(1.1×10cfu)を各治療時間に各火傷部位に適用した。
【0222】
再浮遊させた製剤による治療は、治療の適用回数にかかわらず、筋肉または脾臓の組織から回収した緑膿菌MAKIのcfuの阻害も低下も示さなかった(データは示さず)。
治療5
GN−4474の投与回数を増加させることにより火傷部位及び脾臓における緑膿菌MAKI病原体が減少し続けることになるという仮説によって、この実験は治療3のプロトコルを繰り返す。この実験はやや異なるセットの条件下で増殖させたGN−4474を利用した。
【0223】
GN−4474の3種の培養物を増殖させ、2.2〜2.5のOD600で培養を止め、動物を治療する日の朝に調製した。培養物を最適条件よりも長く増殖させ、早朝に濃縮し、適用するまで氷上で保存した。各群10匹のマウスからなる4つの群に火傷を負わせ、次いで3489CFUの緑膿菌MAKIを感染させた。24時間後、痂皮を取り除き、各10匹のマウスからなる4つの群を以下のように治療した:
−第1群:150μlの賦形剤緩衝液をピペットで取り、火傷部位に1回(1×)投与した;
−第2群:単回用量(1.04×1010cfu)のGN−4474を適用して創傷部位に投与した;
−第3群:適用される用量(1.04×1010cfu)のGN−4474を適用して創傷部位に2回(2×)投与した。最初の1回目の投与の2時間後に2回目のGN−4474投与を行った;
−第4群:用量(1.04×1010cfu)のGN−4474を3回(3×)投与した。最初の1回目の投与の2時間後に2回目のGN−4474投与を行い、2回目の投与の3時間後に3回目の投与を行った(合計5時間)。
治療した動物を屠殺し、組織を上述のように処理した。結果を以下の表12及び13ならびに図7A及び7Bにて示す。
【0224】
【表12】
【0225】
【表13】
【0226】
これらのデータは、筋肉及び脾臓の組織双方における病原体の数がGN−4474投与回数の増加に伴って減少すること、ならびに3回投与により火傷部位の感染が改善するだけでなく、脾臓組織によって示されるように敗血症も減少することを示している。3回投与群のマウス10匹のうちの3匹は、脾臓組織に検出可能な緑膿菌がないことを示す。
【0227】
さらに、これらの知見はすべてにより、感染した火傷に対するGN−4474の投与のための適用及び投与手順が定義される。火傷部位を創傷清拭し、治療せずに16時間超放置した場合、治療は、感染を排除することに有効であるにしても、最低限のものになることが認められた。しかしながら、治療が創傷清拭の直後に開始され、次いで約4時間の間隔で継続された場合、GN−4474を用いた治療の有効性は、GN−4474製品の濃度が上昇し、かつ適用の回数が増加するにつれて上昇した。
実施例3
痂皮下注射を用いた火傷におけるグラム陰性細菌感染の治療のための投薬
この実験は、創傷清拭を行わずに焼痂の下にGN−4474製品を適用することを調査した。このアプローチでは、痂皮を定位置に置き、針を使用してGN−4474製品を痂皮の下に注入する。
【0228】
痂皮下注射には以下の手順を使用した。
【0229】
マウスに熱傷を負わせ、次いで緑膿菌MAKIを感染させ、24時間放置する。翌日、感染させたマウスの群に、300μlの賦形剤緩衝液(溶媒対照)または300μlの再浮遊させた凍結乾燥GN−4474を痂皮の下に、ただし筋肉組織の上に針及び注射器を用いて注入する。
注入治療1
凍結乾燥させたGN−4474を無菌水に再浮遊させた。凍結乾燥バイアルにおけるGN−4474の濃度に基づいて、マウスの痂皮下に注入される300μlの投与で、1.0×10cfuのGN−4474が注入されることを計算した。各群6匹のマウスからなる2つの群を以下のように治療した:
−第1群:火傷を負わせ、緑膿菌MAKIを感染させ、24時間放置し、次いで痂皮の下に300μlの賦形剤緩衝液を1回注入することによって治療した(溶媒対照);
−第2群:火傷を負わせ、緑膿菌MAKIで感染させ、24時間放置し、次いで凍結乾燥バイアルから300μl用量の再浮遊させたGN−4474(1×10cfu/300μl)を単回注入することによって治療した。
【0230】
次いで回収可能な緑膿菌MAKIについて治療したマウスの痂皮及び筋肉組織をアッセイした。結果を図8にて示す。
【0231】
これらのデータは、痂皮下注射による治療が痂皮自体の細菌負荷を減少させなかった(痂皮自体における細菌負荷に影響を与えることは期待されなかった、また期待すべきではない)が、火傷部位での筋肉組織における細菌負荷を有意に減少させたことを示している。さらに、創傷清拭治療のプロトコルに比べて、焼痂自体の下にGN−4474製品を投与することにより、有意に少ないGN−4474(1.0×10cfu)を用いて単回投与治療を行うことで、筋肉における緑膿菌MAKI細菌負荷が有意に減少した。さらに、この治療は創傷の創傷清拭を必要としない。
実施例4
火傷におけるグラム陰性細菌の感染の予防
この実験は、創傷部位への緑膿菌MAKI及びGN−4474の投与による感染の予防を調べた。マウスを以下のように治療した:4匹のマウスからなる2つの群を使用して、実施例2に記載されているような火傷及び局所投与を行った。次いでマウスを以下のように治療した:
−第1群:火傷を負わせ、緑膿菌MAKIを感染させ、直後に賦形剤緩衝液を1回投与した。
−第2群:火傷を負わせ、緑膿菌MAKIを感染させ、治療当たり5.0×10cfuの再浮遊させた凍結乾燥GN−4474を単回投与して治療した。
【0232】
データを図9にて示す。これらのデータは、GN−4474が単回用量及び実施例1に記載されている既存の感染に有効であることが認められたものより低い濃度で使用された場合でさえ、GN−4474を直ちに投与することで、緑膿菌MAKIによる感染が有意に減少したことを示している。
【0233】
5.0×10のGN−4474を単回投与すると、この予防モデル中の火傷部位での病原体の数の1.5対数の減少が生じた。この同じ投与量により、生存率が90%を超えた。
実施例5
マウスの火傷/敗血症モデルの単回投与治療の用量反応
この実験は、熱傷及び感染の直後に様々な量のGN−4474を投与したマウスの用量反応を検査した。
【0234】
実験動物に、85℃の湯に9秒間浸すことによって12%TBSA(全体表面積)の第三度の背面熱湯火傷を負わせた。次いで緑膿菌PA14を熱創傷に局所適用した。病原体を熱創傷中に取り込ませ、次いでGN−4474を火傷表面に適用した。この溶液の大半は同様に熱創傷に取り込まれた。マウスを10日間追跡し、死亡率を監視した。
【0235】
指示された用量のGN−4474の投与に先立って、1×10〜1×10cfuの病原体(緑膿菌またはアシネトバクター・バウマニ)をマウスに感染させた。結果を図23にて示す。
【0236】
緑膿菌を感染させたマウスについては、6.0×10cfuのGN−4474で治療したマウスの生存率は約50%であった。7.0×10cfuのGN−4474での治療では約75%の生存率が達成された。5×10cfuのGN−4474での治療では85%超の生存率が達成された。5×10cfuのGN−4474では90%超の生存率が達成され、4.9×10cfu以上の用量では100%の生存率が達成された。
【0237】
アシネトバクター・バウマニが火傷部位を感染させるのに使用された標的病原体だった場合、類似の数が観察された。
【0238】
動物を屠殺し、生検を採取し、治療部位で生存する病原体について分析した。
【0239】
これらのデータはGN−4474がマウスの死亡を防ぐことを示し、生検はGN−4474による治療が用量依存的に病原体の創傷部位を清浄することを示した。
実施例6
帯具を用いた火傷におけるグラム陰性細菌の感染の治療及び予防のための投与
これらの実験では、帯具、包帯に付着させるために、かつ創傷部位へ直接適用するためにGN−4474を薄いゲルに製剤化する。これらの実験で使用されるゲルの製剤は動物の感染及び予防の試験で使用された同じ製剤であることに留意のこと。
【0240】
単一濃度(標準化されたものの10−3希釈の100μl)の緑膿菌は、治療が存在しないのであれば、寒天表面にて細菌の完全な菌叢を生成するのに有効であると判定された。標準化した緑膿菌PA14の10e−3希釈100μlをLB寒天プレートすべてに拡散させる。GN−4474を以下のように調製して適用した。
1. GN−4474をOD600=1.5まで増殖させる。1.0LのGN−4474の培養物を4本の別々の250mlの遠心瓶で6000rpmにて15分間ペレット化させた。
2. 上清をデカントし、各GN−4474細胞ペレットを25.0mlの完全な1×賦形剤緩衝液に再浮遊させる。再浮遊させたペレットを一緒に合わせる。このとき、これは10×に濃縮される。
3. 賦形剤緩衝液にて10×GN−4474を10回希釈する(2.5mlの10×GN−4474を22.5mlの無菌賦形剤緩衝液に入れる)ことによって1×GN−4474製剤を調製する。
4. 賦形剤緩衝液にて1×GN−4474を10回希釈する(2.5mlの1×GN−4474を22.5mlの無菌賦形剤緩衝液に入れる)ことによって0.1×GN−4474製剤を調製する。
5. 標準化したPA14の10−3希釈液100μlを予め拡散させた12枚のLB寒天プレートを利用する。
6. 1×賦形剤緩衝液に3枚の別々の1”×1”の10層の幅広メッシュの帯具を完全に浸す(完全に浸すと1”×1”の10層の幅広メッシュの帯具は約2.0mlを保持するはずである)。PA14を拡散させた3枚の別々のLB寒天プレートそれぞれの上に1枚の浸した帯具を置く。
7. 0.1×GN−4474に完全に浸した3枚の別々の1”×1”の10層の幅広メッシュの帯具を用いて工程(6)を繰り返す。
8. 1.0×GN−4474に完全に浸した3枚の別々の1”×1”の10層の幅広メッシュの帯具を用いて工程(6)を繰り返す。
9. 10.0×GN−4474に完全に浸した3枚の別々の1”×1”の10層の幅広メッシュの帯具を用いて工程(6)を繰り返す。
10. 標準化したPA14の10−3希釈液100μlを予め拡散させた残りの12枚のLB寒天プレートを利用し、これらを実験の「オーバーレイ」部分に使用する。
11. PA14の希釈物を拡散させたこれらのLB寒天プレート3枚を利用し、1×賦形剤緩衝液625μlをピペットで取り、これら3枚の寒天プレートの中央表面上に載せ、直ちに賦形剤緩衝液のスポット上に乾燥した1”×1”の10層の幅広メッシュの帯具を置く。
12. PA14の希釈物を拡散させたこれらのLB寒天プレート3枚をさらに利用し、0.1×GN−4474の625μlをピペットで取り、これら3枚の寒天プレートの中央表面上に載せ、直ちに0.1×GN−4474のスポット上に乾燥した1”×1”の10層の幅広メッシュの帯具を置く。
13. PA14の希釈物を拡散させたこれらのLB寒天プレート3枚をさらに利用し、1.0×GN−4474の625μlをピペットで取り、これら3枚の寒天プレートの中央表面上に載せ、直ちに1.0×GN−4474のスポット上に乾燥した1”×1”の10層の幅広メッシュの帯具を置く。
14. PA14の希釈物を拡散させたこれらのLB寒天プレートの最後の3枚を利用し、10×GN−4474の625μlをピペットで取り、これら3枚の寒天プレートの中央表面上に載せ、直ちに10×GN−4474のスポット上に乾燥した1”×1”の10層の幅広メッシュの帯具を置く。
15. プレートすべてを37℃のインキュベータに2時間入れる。プレートを裏返さず、むしろ、寒天側を上にした状態で保持する。
16. 全プレートの寒天表面から各帯具を慎重に取り外し、寒天プレートを上向きにして37℃のインキュベータに戻し、一晩インキュベートする。
17. 16〜18時間の全インキュベートの後、プレートを取り出して視覚化する。
【0241】
図10は、帯具を置くのに先立って寒天表面にGN−4474を直接適用した結果を示し、横列A〜Dは以下のとおりである:
A. 0.1×試験プレート:100μlのPA14(10−3)をLB寒天プレート上に拡散させた。625μlの0.1×GN−4474を溶解させた賦形剤緩衝液(約2×10cfu/ml)を表面上にスポットし、1インチ×1インチの10層幅広メッシュの帯具を治療薬の上にオーバーレイし、これを37℃で2時間インキュベートした。
B. 1×試験プレート:100μlのPA14(10−3)をLB寒天プレート上に拡散させた。625μlの1×GN−4474を溶解させた賦形剤緩衝液(約2×10cfu/ml)を表面上にスポットし、1インチ×1インチの10層幅広メッシュの帯具を治療薬の上にオーバーレイし、これを37℃で2時間インキュベートした。
C. 10×試験プレート:100μlのPA14(10−3)をLB寒天プレート上に拡散させた。625μlの10×GN−4474を溶解させた賦形剤緩衝液(約2×10cfu/ml)を表面上にスポットし、1インチ×1インチの10層幅広メッシュの帯具を処理の上にオーバーレイし、これを37℃で2時間インキュベートした。
D. 対照プレート:100μlのPA14(10−3)をLB寒天プレート上に拡散させた。625μlの完全賦形剤緩衝液を表面上にスポットし、1インチ×1インチの10層幅広メッシュの帯具を処理の上にオーバーレイし、これを37℃で2時間インキュベートした。
【0242】
最下列の、GN−4474を有さない対照は、帯具自体が緑膿菌の増殖を検出可能に阻害しなかったことを示している。横列Cにおけるプレートでは、10倍の濃度のGN−4474を適用することにより、緑膿菌の抑制または殺傷を示すプレート上の明瞭な区域が生じたことは明らかである。1/10の投与量を有する横列Bにおけるプレートは少なくとも1枚のプレートで明瞭な区域を示し、治療薬の用量に関連する効果を示唆している。
【0243】
図11は、寒天表面上に置くのに先立ってB−4474の製剤に帯具を浸した結果を示し、横列A〜Dは以下のとおりである:
A. 0.1×試験プレート:LB寒天プレート上に拡散させた100μlのPA14(10−3)。0.1×GN−4474(約2×10cfu/ml)を溶解させた賦形剤緩衝液に浸した1インチ×1インチの10層幅広メッシュの帯具を拡散寒天プレートの表面上に置き、それを37℃で2時間インキュベートした。
B. 1.0×試験プレート:LB寒天プレート上に拡散させた100μlのPA14(10−3)。1×GN−4474(約2×10cfu/ml)を溶解させた賦形剤緩衝液に浸した1インチ×1インチの10層幅広メッシュの帯具を拡散寒天プレートの表面上に置き、それを37℃で2時間インキュベートした。
C. 10×試験プレート:LB寒天プレート上に拡散させた100μlのPA14(10−3)。10×GN−4474(約2×10cfu/ml)を溶解させた賦形剤緩衝液に浸した1インチ×1インチの10層幅広メッシュの帯具を拡散寒天プレートの表面上に置き、それを37℃で2時間インキュベートした。
D. 対照プレート:LB寒天プレート上に拡散させた100μlのPA14(10−3)。完全な1×賦形剤緩衝液に浸した1インチ×1インチの10層幅広メッシュの帯具を拡散寒天プレートの表面上に置き、それを37℃で2時間インキュベートした。
【0244】
最下列の、GN−4474を有さない対照は帯具自体が緑膿菌の増殖を検出可能に阻害しなかったことを示している。横列Cのプレートでは、10倍の濃度のGN−4474に浸した帯具を適用することにより、緑膿菌の抑制または殺傷を示すプレート上の明瞭な区域が生じたことは明らかである。1/10の投与量を有する横列Bのプレートは3枚すべてのプレートで明瞭な区域を示し、治療薬の用量依存性の効果を示唆している。
【0245】
1層の細いメッシュ、2層、4層、及び10層の幅広メッシュ、10層の細いメッシュ、及び6層の「波状に見える」幅広メッシュを含む様々な種類の帯具材を用いて、GN−4474が寒天に直接適用される記載されている実験を繰り返した。結果は図10及び11で示したデータに非常に類似しており、10×の適用は明瞭な区域を示し、GN−4474の1×希釈はほとんど効果を示さなかった(データは示さず)。帯具材のみでは緑膿菌の菌叢の増殖を阻害せず、GN−4474組成物の殺傷能力に影響を与えるとは考えられなかった。
実施例7
短期保存:4℃
後期指数増殖期(細胞が正常に回収される増殖の段階)まで増殖させ、その後4℃の冷蔵庫に移したGN−4474の安定性(生存能力及び接合能力)を調べた。約6×10cfu/mlの濃度で使用済み培地にて増殖チャンバーで細菌を保持した。図25Aに示すように、24時間または72時間の時点では、細胞の生存能力に有意な低下は認められなかった。しかしながら、図25Bに示すように、試験管内のアッセイにおけるGN−4474の緑膿菌PA14を効率的に殺傷する能力は、4℃で72時間保存した後、わずかに低下する。この実験では、この特定の生物反応器を用いてpHも溶存酸素も制御することができなかった。
【0246】
濃度の効果を調べるために、GE HealthcareのWAVEシステムで細菌を後期指数増殖期まで増殖させ、回収し、以下:[低]=約5.0×10cfu/ml;[低〜高]=約5.0×10;[中〜高]=1.0×1010cfu/ml;及び[高]=約5.0×1010cfu/mlのような種々の濃度で完全賦形剤緩衝液(10%トレハロース+2.0%グリセロール+0.5%ヒドロキシエチルセルロースすべてを溶解させた50mMのリン酸カリウム、pH7.0)にて再浮遊させた。細菌は氷上、冷蔵庫に4℃で保存した。1日目(24時間)、2日目(48時間)、3日目(72時間)、6日目(144時間)、7日目(168時間)、及び10日目(240時間)に相当する時点で4つの濃度のそれぞれからアリコート(3つ組)を取り出し、細菌の生存能力(図26A)及び試験管内での殺傷効率(図26B)を測定した。
【0247】
図26Aで分かるように、GN−4474細菌はすべての濃度で最大72時間(3日間)生存し続けた。しかしながら、144時間(6日間)までに、[高]は生存能力の有意な低下を示していた。10日間までに、GN−4474の[低]のみが全体的に生存能力があり、生存能力を有意に低させなかったのに対して、他の3つの用量の細菌は死滅し始めた。同様に、図26Bで提示されたデータは、GN−4474([低])による試験管内殺傷は1日目〜10日目を通して不変だったことを示している([低]試料と新鮮なキラー対照反応について7日目の異常なデータ点を除く)。試験管内殺傷の最大の低下はGN−4474の[高]濃度から得られた。[高]濃度で保存すると、GN−4474は、わずか24時間の保存の後、効率的に接合する能力を失った。
【0248】
他の実験は、大腸菌GN−4474が、1×1010cfu/ml以上の濃度で賦形剤緩衝液に保存されると、生存能力の点で安定ではなく、ヒドロキシエチルセルロースの排除により、保存された細胞の生存能力及び殺傷能力が低下しなかったことを示している。生存能力のデータ及び試験管内殺傷のデータに基づいて、このデータは、短期の保存では細菌の濃度が好ましくは<10cfu/mlで維持されるべきであることを示唆している。
実施例8
保存用製剤
短期保存のための様々な保存用の培地及び緩衝液製剤の影響を調査した。この実験では、ヒドロキシエチルセルロースゲル化剤を伴わない賦形剤緩衝液(50mMのKPO緩衝液、pH7.0、10%w/vのトレハロース、2%(w/v)のグリセロール及び0.5%(w/v))または使用済みM9培地にて大腸菌GN−4474を保存した。短期保存での生存能力及び接合効率の双方に対して様々な保存用緩衝液の組成物が与える影響を調べた。
【0249】
GN−4474を最適な条件下(O.D.600nm=1.8まで50%溶存酸素及びpH7.0)で増殖させ、細胞を3つの方法:(1)使用済み培地にて、遠心分離せずに細胞をCultibagに残したまま(2)使用済み培地にて、ただし、無菌の円錐試験管に移し、ペレット化し、上清に再浮遊させて遠心分離について操作して、かつ(3)遠心分離によってペレット化して、上述の凍結乾燥賦形剤緩衝液にて再浮遊させて保存した。データは図27A及び27Bにて示す。
【0250】
図27Aにて示すように、GN−4474の濃度が1×10cfu/mlである限り、4℃で14日間にわたり上述の使用済み培地(バッグまたは別の容器にて)または賦形剤緩衝液にて保存されたGN−4474の生存能力の有意な低下は認められなかった。大腸菌の濃度が1×10cfu/ml以下で維持される限り、4℃での細菌の生存能力は、使用済み培地にて、またはHECを含むもしくは含まない賦形剤緩衝液にて維持できることが複数の実験で観察された。
【0251】
図27Bにて示すように、使用済み培地にて保存された細菌について試験管内アッセイによって測定されたとき、接合に基づく殺傷の効率性に顕著な差異は認められなかった。驚くべきことに、賦形剤緩衝液にて保存された細菌は、24時間以内に接合に基づく殺傷の効率性の低下を示し、効率性は経時的に低下し続けた。
【0252】
好ましい実施形態では、短期保存用の緩衝液は、凍結乾燥しようがすまいが、GN−4474が凍結される最終賦形剤(複数可)緩衝液と実質的に異ならない。緩衝液製剤の1つは凍結目的で特定された(10%トレハロース+2.0%グリセロール+0.5%ヒドロキシエチルセルロースすべてを溶解させた50mMのリン酸カリウム緩衝液、pH7.0)。他の製剤は短期保存の目的で試験した。
【0253】
本技術の開発中、調べた成分の1つは存在する糖(単数)または糖(複数)、例えば、グルコース、スクロース、及びトレハロースだった。生存能力のデータは、−20℃でこれらの緩衝液のいずれかでGN−4474を保存することで、適度な保護効果がもたらされることを示した。−20℃での保存のわずか3日後、3種の糖を含有する緩衝液のそれぞれのGN−4474の生存能力は70%超低下したが、これらの同じ緩衝液にて4℃で保存されたGN−4474の生存能力の方が−20℃で保存された試料よりもはるかに良好だった。3日後、10%スクロース(100%の回収)または10%トレハロース(96%の回収)のいずれかでは、生存能力の損失が認められなかった。10%グルコースでの生存能力はそれほど良好ではなかった(3日後、GN−4474のわずか44%が生存していた)。10%トレハロースまたは10%スクロースのいずれでのGN−4474の生存能力は5日目及び7日目で低下した。
【0254】
緩衝化された糖保存溶液へのグリセロールの添加をGN−4474の生存能力及び試験管内の殺傷効率について調べた。以下の4つの糖及びグリセロールを含有する50mMのリン酸緩衝液の1つにてGN−4474を4℃で保存した:
・10%スクロース+1%グリセロール;
・10%スクロース+2%グリセロール;
・10%トレハロース+1%グリセロール;及び
・10%トレハロース+2%グリセロール。
【0255】
10%スクロース+1%または2%グリセロールで保存されたGN−4474は当初、良好な生存性を有したが、生存能力は3日目から低下した。1日目〜2日目では、10%スクロース+1%または2%グリセロールでのGN−4474の回収はそれぞれ、84%から59%に、または104%から76%に低下した(表2及び図3)。10%トレハロース+1%または2%グリセロールにおけるGN−4474の生存能力には3日間で有意な低下は認められなかった。6日目までにGN−4474の生存能力はいずれの緩衝液でも低下した。
【0256】
【表14】
【0257】
試験管内の殺傷データは、トレハロース+1%もしくは2%グリセロールまたはスクロース+1%もしくは2%グリセロールにて保存された場合、4℃で保存されたGN−4474は有効であることを裏付けている。以上で考察されたように、大腸菌の濃度が1×10cfu/ml以下で維持される限り、4℃で保存された細菌の生存能力及び殺傷効率は使用済み増殖培地でも維持することができる。
実施例9
GN−4474の凍結製剤
賦形剤緩衝液にて凍結されたGN−4474の安定性を調べるために実験を実施した。−20℃または−80℃での凍結状態で長期保存した際の生存能力及び接合に基づく殺傷能力の維持に関して、制御された冷却凍結を急速凍結と比較した。
制御凍結
これらの実験について、GN−4474を50mMのKPO緩衝液、10%トレハロース、2%グリセロール及び0.5%ヒドロキシエチルセルロースにて製剤化した。4℃で一晩保存した後、使用済み培地におけるGN−4474の培養物を取り出し、手動で撹拌して細菌が完全に浮遊していることを確認した。次いでGN−4474細菌を洗浄し、完全賦形剤緩衝液にて約3×1010cfu/mlに濃縮した。次いで、試験管における濃縮されたGN−4474を以下の冷却凍結プロトコル/パラメータの対象とした。
1.試験管を4℃のインキュベータに移し、90分間冷却した。
2.インキュベータの温度自動調節器を−10℃に変更した(インキュベータが−10℃に達するのに82分要した)。
3.試料を−10℃で90分間インキュベートした(一部のバイアルは不凍結のままであった)。
4.すべてのバイアルを−20℃のフリーザーに移し、生存能力及び試験管内の殺傷効率について分析されるまで−20℃で保存した。
「制御凍結」生成物の分析
モニターされる各時点(0日目、1日目、2日目、5日目、6日目、15日目、27日目、45日目、51日目、及び65日目)の前日に大腸菌GN−4474(陽性対照)及び大腸菌CON37−55(陰性対照)ならびに緑膿菌PA14(標的病原体)の制御培養を開始し、一晩培養した。翌日、OD600nmが1.5〜1.9であるとき制御培養物を氷上に置いた。緑膿菌PA14培養物は通常、3.0〜4.0のOD600nmを有した。賦形剤緩衝液で凍結したGN−4474の1.0mlの単一のアリコートを−20℃のフリーザーから取り出し、生存能力試験または試験管内の殺傷実験で使用するのに先立って室温で1時間置いた。
連続希釈により測定した生存能力及び生菌数計測
1.無菌の生理食塩水を用いて融解した制御凍結GN−4474の10倍連続希釈液を調製した。
2.試験する各試料について10〜8の希釈を介して2つの別々の希釈系列を調製した。
3.バイアルについての10−5、10−6、10−7及び10−8の連続希釈液をLB+Dapプレートに入れた。
4.各希釈系列から単一の10−1希釈液をLB寒天に入れて混入を探した。
5.プレートを37℃のインキュベータに入れてコロニーを増殖させた(約48時間)。
試験管内でのフィルターに基づく接合殺傷アッセイによって測定した殺傷効率
標準のプロトコルに従って、陽性及び陰性の対照培養物、ならびに解凍した凍結GN−4474を溶解させた賦形剤緩衝液を用いた試験管内での殺傷アッセイ(標的病原体緑膿菌PA14を用いる)を行った。賦形剤緩衝液における陽性対照、陰性対照、及び解凍した制御凍結GN−4474は、OD600nm=5.0に調整したその容積及び濃度を有してアッセイへの入力を基準化した。それぞれの試験管内での殺傷反応(PA14+陰性対照、PA14+陽性対照、及びPA14+解凍した制御凍結GN−4474を溶解させた賦形剤緩衝液)を2つ組で実施した。試験した時点は、−20℃で保存した0、1、2、5、6、15、27、45、51及び65日目であった。
【0258】
制御凍結実験から得られた生存能力及び接合効率の結果を図28A〜28Cに示す。GN−4474のこれらの「制御凍結」試料の生存能力は、実験の経過全体にわたって安定したままであった(−20Cでの凍結保存の65日後)。図28Aは、65日間全体を通して調べた試料すべての生存能力が、依然として9×10cfu/ml〜3.0×1010cfu/ml(すべて互いの標準偏差の範囲内)であったことを示す。単にこの生存能力データに基づいて、試みた「制御凍結」プロトコルは効果があり、賦形剤緩衝液にて凍結したGN−4474細胞の生存能力を安定化して維持した。
【0259】
図28B〜28Cで示した試験管内での殺傷効率のデータは、新しく培養した陽性対照(GN−4474)が予想どおり標的緑膿菌PA14病原体を殺傷し、PA14の生存率は20%を超えなかったことを明確に示している。GN−4474の制御凍結試料は、保存の最初の27日間を通して陽性対照の新しく培養したGN−4474と同様のレベルで標的PA14病原体を殺傷した。しかしながら、保存した制御凍結GN−4474試料は、保存の約30日後、その接合に基づく殺傷効率を失い始めた。試験管内での殺傷効率についてGN−4474の凍結試料を凍結の65日まで断続的に確認した。これらの試料の試験管内での殺傷効率は約30日後有意に低下し、65日目に実験が終了するまで効果が少ないままであることが確認された。
急速凍結
4℃での一晩の保存に続いて、使用済み培地におけるGN−4474の培養物を取り出し、手動で撹拌して細菌が完全に浮遊していることを確認した。次いでGN−4474細菌を洗浄し、完全賦形剤緩衝液(50mMのKPO緩衝液、10%トレハロース、2%グリセロール及び0.5%HEC)にて約1×1010cfu/mlに濃縮した。製剤化したGN−4474を15mlのポリプロピレン製の円錐試験管にて等分(10.0ml)した。ドライアイス/エタノール槽を準備し、試料が完全に凍結するまで(90秒間)アリコートをこの槽に沈めた。「急速凍結」の後、アリコートを−80℃のフリーザーに移して保存した。
【0260】
凍結試料の生存能力及び殺傷効率を上述のように分析する。急速凍結実験から得られた生存能力及び接合効率の結果を図29A及び29Bにて示す。GN−4474のこれら急速凍結試料の生存能力は実験のこの経過(−80℃での凍結保存後410日)全体を通して一貫したままだった(約1×1010cfu/ml)。図29Aは、410日間全体を通して調べた試料すべての生存能力が6.3×10cfu/ml〜1.4×1010cfu/ml(すべて互いの標準偏差の範囲内)のままだったことを示している。単にこの生存能力データに基づいて、試みた急速凍結プロトコルは効果があり、賦形剤緩衝液にて凍結したGN−4474細胞の生存能力を1年以上の間安定化して維持した。
【0261】
図29Bにて示す試験管内での殺傷効率のデータは、新しく培養した陽性(GN−4474)が予想どおり標的緑膿菌PA14病原体を殺傷し、緑膿菌PA14の生存率は20%を超えなかったことを明確に示している。GN−4474の急速凍結試料は、保存の410日間全体を通して陽性対照の新しく培養したGN−4474と同様のレベルで標的緑膿菌PA14病原体を殺傷した。1つの時点(28日目)を除くすべての時点で、生存する標的病原体のレベルはすべて15%の生存率を下回った。
【0262】
これらのデータは、この「急速凍結」プロトコルが−80℃の保存温度で少なくとも1年間、賦形剤緩衝液におけるGN−4474の生存能力及び殺傷効率の双方を維持することを示している。言及したように、細菌を急速凍結するのに通常使用されるもの(15〜20%)より実質的に少ないグリセロール(2%)を使用する。
【0263】
50mlの円錐試験管(同じ10mlの容積を含有する)及びガラス製の凍結乾燥バイアル(Wheatonの20mlガラス製の血清バイアル、WEST Pharmaceuticalの灰色のWESTAR(登録商標)RS 1M/PKストッパーでキャップした)を用いてそれぞれ最大103日間または141日間−80℃で保存して、このプロトコルを繰り返した(データは示さず)。さらに大きな円錐試験管で凍結して保存した細胞は、新しく培養したGN−4474と同様の生存能力及び殺傷効率を維持したが(<5%の緑膿菌の生存率)、ガラスでの保存では双方の活性のわずかな低下を示した(9.95%〜27.86%の緑膿菌の生存率)という点で、類似の結果が観察された。
実施例10
凍結乾燥
一部の実施形態では、例えば、安定性のために生成物を凍結乾燥させ、創傷、包帯等に適用するために患者のベッドサイドで再浮遊させる。凍結乾燥(凍結−乾燥と呼ぶこともある)は通常、物質を(1)凍結し、昇華の過程によって真空下で水を取り除き、次いで(2)依然として真空下で凍結を上回る温度に温める2段階工程であり、残留する水は脱離の工程によって取り除かれる。
【0264】
凍結乾燥サイクル中の最初の凍結相は、以下の温度、温度変化の速度を有し、30分間5℃/分の速度で5℃の状態を保ち、40分間5℃/分の速度で−5℃の状態を保ち、240分間5℃/分の速度で−45℃の状態を保つ。
【0265】
特定の好ましい実施形態では、凍結乾燥サイクルの一次及び二次の乾燥工程は、以下の温度、温度変化の速度、保持時間、及び真空(mT)を有する:60.0mTの真空にて0.1℃/分の速度で−30.0℃の状態を4000分間保ち;60.0mTの真空にて0.1℃/分の速度で−28.0℃の状態を2250分間保ち;60.0mTの真空にて0.1℃/分の速度で−10.0℃の状態を600分間保ち;60.0mTの真空にて0.1℃/分の速度で5.0℃の状態を720分間保ち;60.0mTの真空にて0.1℃/分の速度で10.0℃の状態を480分間保ち;60.0mTの真空にて0.1℃/分の速度で20.0℃の状態を480分間保つ。
【0266】
追加の凍結乾燥製剤及びそれらを作製して使用する方法は、あらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に組み入れられる、例えば、米国特許第8,715,639号に記載されている。
実施例11
GN−4474の大規模培養
上記に加えて、実験を実施して、Sartorius CultiBag RM生物反応器にて増殖させ、透析濾過を用いて50mmのKPO緩衝液、pH=7.0で洗浄し、その後濃度を1×10cfu/mlに濃縮したGN−4474の安定性を評価した。GN−4474を37℃の温度、8°のプラットフォーム角度、25rpmの初期振動速度、及び1.01pmの空気流にて増殖させた。1.0NのNaOHの添加によってpHを維持した。Sartorius CultiBag RMタワーによって制御される2つの別々のカスケードを用いて溶存酸素を制御した。溶存酸素が50%に低下すると、2つの別々のカスケードが溶存酸素を50.0%で維持するように起動する。第1のカスケードは添加される純粋酸素の混合物を増加させる。このカスケード工程が溶存酸素を50%で維持するのに不十分である場合、振動速度を上昇させる第2のカスケードが起動する。
【0267】
培養物は培養物のOD600nmが1.55に達するまで増殖させたが、それには約18時間を要した。次いでGN−4474培養物を含有するCultibag全体を振動プラットフォームから取り外し、4℃で約16時間(一晩)置いた。翌朝、GE Healthcareの0.45μMの微量濾過カートリッジ(CFP4−E−8A)及びWatson Marlow620Sのペリスタポンプを用いてGN−4474の培養物を7.5リットルから約1.0リットルに濃縮した。培養物を約1.0リットルに濃縮すると直ちに透析濾過を開始した。予め4℃に冷却した20リットルの50mMリン酸カリウム緩衝液、pH7.0によって培養物を透析濾過した。次いで同じ微量濾過カートリッジ及びポンプの設定を用いて、透析濾過した培養物を約750mlに濃縮した。次いで、得られた透析濾過したGN−4474を4℃で(透析濾過緩衝液がその中にある同じ無菌のバイオプロセスバッグに)入れた。
【0268】
透析濾過したGN−4474試料の生存能力は実験のこの経過(透析濾過及び4℃での保存の14日後)全体を通して完全に一貫したままだった。この時間過程全体を通したGN−4474の生存能力は、1.33×10cfu/ml〜2.86×10cfu/mlにとどまった(データは示さず。GN−4474を約1×10cfu/mlの濃度に濃縮して透析濾過した)。濾過及び透析濾過により使用済み培地及び代謝老廃物及び分解生成物を取り除くことで、GN−4474はこの濃度で非常に安定する。これらの生存能力データは、この濃度でのGN−4474が時間過程全体を通して良好な生存能力保持したことを示している。
【0269】
試験管内での殺傷効率は、新しく培養した陽性対照(GN−4474)が標的緑膿菌PA14病原体を非常に効率的に殺傷したこと、及び緑膿菌PA14の生存率が、予想通り5%を超えかったことを示した。保存され、透析濾過したGN−4474試料は、14日間を通して陽性対照と同様のレベルで標的緑膿菌PA14病原体を殺傷した(データは示さず)。試験透析濾過したGN−4474によって処理された緑膿菌PA14は、処理後の生存率が20%を超えなかった。
【0270】
これらのデータをまとめると、GN−4474は、Sartorius CultiBag RMシステムにおいて相対的に大きなバッチ量(少なくとも最大50L)で調製することができ、次いで以下で記載されている製造方法に従って処理することができることが示される。これらのデータは、透析濾過したGN−4474は1×10cfu/mlの濃度で最大2週間は安定であり、例えば、遠心分離を用いてさらに濃縮し、完全賦形剤緩衝液にて再浮遊させ、その後、凍結乾燥を行いまたは行わずに急速凍結を行うことによって、最終処理のために保存するかまたは別の施設に移すことができることを示している。
実施例12
製造され、凍結乾燥されたGN−4474の安定性
凍結乾燥バイアルは凍結保存(−80℃)した状態で10ヵ月間保持した。凍結乾燥の直後、それに続いて製造の2ヵ月後及び10ヵ月後に生存能力を測定した。以下は生存能力試験を記載している。
方法
ケーキの再浮遊
1. バイアルの周りの圧着安全リングを外し、バイアルの外側全体を70%エタノールで拭った。
2. 20ゲージで1.5インチの長針を装着した10mlの注射器で8.5mlの室温の無菌水を吸引した。針をゴムのストッパーに挿入し、水をバイアルの中に放出した。
3. 水を添加した直後に、バイアルを反転させ、手動で30秒間振盪させた。
4. バイアルを5分間室温で静置した。その後、バイアルを反転させて、全速力で1分間ボルテックスした。
5. バイアルをさらに5分間室温で静置した。その後、バイアルを反転させて、全速力で1分間ボルテックスした。
【0271】
次いでバイアルを視覚的に調べ、ケーキが完全に再浮遊していることかどうかを判定した。
生存能力及び試験管内での殺傷アッセイ
凍結乾燥の後、生存能力及び試験管内での殺傷を調べた。製造後0、2ヵ月及び10ヵ月の時点で、3種の別々の凍結乾燥バイアルを再浮遊させて試験した。再浮遊させた後、無菌の0.9%生理食塩水にて生成物の連続希釈液を調製し、試料をLB+Dap寒天プレートに載せた。
【0272】
それぞれを標準化して試験管内での殺傷アッセイを行うために、再浮遊バイアルのそれぞれの光学密度を測定した。このアッセイでは、入力をOD600nm=5.0に標準化する。バイアルを調製するのに先立って、標的病原体(緑膿菌PA14)を適切な培養培地で一晩増殖させ、OD600nmに基づいて細胞密度を調整した。通常、陽性対照(GN−4474)及び陰性対照(接合遺伝子またはキラープラスミドを含まないGN−4474と同一であるCON37−55A)を同様に一晩培養し、細胞密度を調整する。陽性対照及び陰性対照、ならびに試験試料を標的病原体と混合し、寒天プレートの表面上に置いたフィルター円板上に細胞浮遊液をスポットし、フィルター接合を開始する。アッセイを37℃で2時間インキュベートする。
【0273】
インキュベートに続いて、細胞をフィルターから回収し、連続希釈し、播種してコロニー形成単位(cfu)を測定する。1cfuは細菌1つを表し、対照と比較した標的病原体の数の減少は、試験する生成株の殺傷効率を示す。寒天プレートは、GN−4474の増殖に必須の補完剤であるジアミノピメリン酸(DAP)を欠くので、生存する標的病原体のみが計数されることになる。WASP II(Microbiology International,Frederick,MD)を用いて連続希釈物をプレート上に拡散させ、コンピュータ支援のコロニー計数器であるProtoCOL(Microbiology International,Frederick,MD)を用いてcfuを計数する。
結果及び結論
生存能力(GMPで製造されたGN−4474ロット番号0999−135−0002凍結乾燥製品)
【0274】
【表15】
【0275】
試験管内での殺傷効率(GMPで製造されたGN−4474ロット番号0999−135−0002凍結乾燥製品)
【0276】
【表16】
【0277】
これらのデータは、10ヵ月間の保存の後、生存能力及び試験管内での殺傷効率に有意な変化が認められないことを示している。
【0278】
上記明細書で言及された出版物及び特許はすべてあらゆる目的で参照によって本明細書に組み入れられる。本発明の記載されている組成物及び方法の種々の改変及び変更は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態と関連付けて記載されているが、特許請求される本発明はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、関連分野の当業者に自明である、記載されている発明の実施の形態の種々の改変は、本発明の範囲内あるように意図される。
【図面の簡単な説明】
【0279】
図1】例示的な主鎖ベクターの生成を記載する工程系統図であり、主鎖ベクターpCON42−31のプラスミド地図を提供する。
図2】例示的な殺菌性殺傷カセットの生成を記載する工程系統図であり、殺傷カセットpCON44−66を含有するベクターのプラスミド地図を提供する。
図3】例示的な殺菌性供与キラーベクターの生成を記載する図であり、供与キラーベクターpCON44−74のプラスミド地図を提供する。
図4】AはGN−4474で処理した後の筋肉穿孔試料から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図であり、Bは、GN−4474で処理した後の脾臓組織から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
図5】Aは、後にGN−4474または溶媒対照で処理される感染を引き起こす2つの異なる緑膿菌MAKI接種菌を用いた筋肉穿孔試料から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図であり、Bは、後にGN−4474または溶媒対照で処理される感染を引き起こす2つの異なる緑膿菌MAKI接種菌を用いた脾臓組織から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
図6】Aは、GN−4474で2回処理した後、筋肉穿孔試料から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図であり、Bは、GN−4474で2回処理した後、脾臓組織から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
図7】Aは、GN−4474で連続処理した後、筋肉穿孔試料から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図であり、Bは、GN−4474で連続処理した後、脾臓組織から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
図8】GN−4474で処理した後、痂皮及び筋肉穿孔試料から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
図9】GN−4474または生理食塩水対照と緑膿菌MAKIとの同時適用の後、筋肉穿孔試料から回収した病原体(緑膿菌MAKI)を示す図である。
図10】様々な量(cfu)のGN−4474を菌叢に適用し、その後、包帯で覆い、様々な用量の殺傷効果を評価した培養プレートを示す図である。
図11】様々な量(cfu)のGN−4474に予め浸した包帯を適用することによって様々な量(cfu)のGN−4474を菌叢に適用し、様々な用量の殺傷効果を評価した培養プレートを示す図である。
図12】特定の遺伝子変化を有する様々な株を生成するのに使用された中間株及びプラスミドを含む、大腸菌CON31−85Aの構築のための略図である。
図13】自殺プラスミドpCON1−96を用いて大腸菌MG1655におけるmsbBを欠失させ、msbBをlacIで置き換える2段階相同組換え事象を示す略図である。
図14】大腸菌MG1655にてmsbBの欠失及びlacIの挿入を作製するのに使用したpCON1−96自殺ベクターのプラスミド地図を示す図である。pykA及びyebAの一部をベクターに含めて相同組換えを促進する。正の選択遺伝子CamR及び対抗選択遺伝子sacBも地図上に示す。AscI制限酵素の消化を用いてoriを切り出し、その後、大腸菌MG1655を形質転換するのに先立ってT4DNAリガーゼによって再環化した。この遺伝子置換工程はmsbBコード領域の756bpまたは大半を欠失させ、代わりにmsbBの場所にlacIを含有する1197bpの断片を挿入した。
図15】自殺プラスミドpCON30−31を用いて大腸菌CON30−12におけるdapAを欠失させ、dapAをimmE3−Arc/mntで置き換える2段階相同組換え事象を示す略図である。
図16】大腸菌CON30−12にてdapAの欠失及びimmE3−Arc/mntの挿入を作製するのに使用したpCON30−31自殺ベクターのプラスミド地図を示す図である。nlpB及びgcvRの部分をベクターに含めて相同組換えを促進する。正の選択遺伝子CamR及び対抗選択遺伝子sacBも地図上に示す。この自殺ベクターはR6Kガンマ複製開始点を利用するが、それはこのプラスミドまたはCON30−12株には見いだされないPiタンパク質を必要とするので、プラスミドは複製することができず、自殺ベクターと見なされる。
図17】自殺プラスミドpCON29−93を用いて大腸菌CON30−41にてaroAを欠失させ、aroAをimm×10−lacIで置き換える2段階の相同組換え事象を示す略図である。
図18】大腸菌CON30−41にてaroAの欠失及びimm×10−lacIの挿入を作製するのに使用したpCON29−93自殺ベクターのプラスミド地図を示す図である。serC及びΔaroAの一部をベクターに含めて相同組換えを促進する。正の選択遺伝子CamR及び対抗選択遺伝子sacBも地図上に示す。AscI制限酵素の消化を用いてoriを切り出し、その後、大腸菌CON30−41を形質転換するのに先立ってT4DNAリガーゼによって再環化した。この遺伝子置換工程はaroAコード領域の内部の756bpまたは大半を欠失させ、これを挿入されるimm×10及びlacIの遺伝子で置き換えた。
図19】attB部位で組み込まれたRK2tra遺伝子を含有するpCON32−30の模式図である。以下の相同組換えは、プラスミドから選択遺伝子、対抗選択遺伝子及び他の望ましくない遺伝子を排除した。この工程はまたattLも排除し、attB遺伝子座からの断片の切り出しは不可逆性になった。2つのプライマーcon32−8Aとcon32−8Cを用いて相同組換えをモニターした。
図20】大腸菌CON32−16におけるtraの組込みを作製するのに使用したpCON32−20自殺ベクターのプラスミド地図を示す図である。ラムダ組込みについてのattP認識配列をプラスミドにクローニングした。また、ybhCの一部をベクターに含めて最初のラムダベースの組込みの後の第2の相同組換えを促進した。正の選択遺伝子CamRまたはKanR及び対抗選択遺伝子sacBも地図上で示す。
図21】自殺プラスミドpCON31−45を用いて大腸菌CON32−27AにてrecAを欠失させる2段階相同組換え事象の模式図を示す。
図22】大腸菌CON32−27AにおけるrecAの欠失を作製するのに使用したpCON31−45自殺ベクターのプラスミド地図を示す図である。mltBのC末端、ygaDのすべて、oraAのすべて及びalaSのN末端をベクターに含めて相同組換えを促進する。正の選択遺伝子CamR及び対抗選択遺伝子sacBも地図上で示す。AscI制限酵素の消化を用いてoriを切り出した後、大腸菌CON32−27Aを形質転換するのに先立ってT4DNAリガーゼによって再環化した。この遺伝子置換工程はrecAコード領域の大半を欠失させた。
図23】皮膚火傷における緑膿菌PA14に対するGN−4474の用量反応及び有効性試験を示す図である。
図24】Aは、E.クロアカエ(E.cloacae)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、A.バウマニ(A.baumannii)、大腸菌(E.coli)、及び緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株に対するGN−4474の殺傷有効性を示すグラフである。各病原体の臨床分離株の数が示される。グラフはx軸上に試験した各分離株の殺傷された割合を示し、y軸上に各割合の範囲内に入る特定の病原体の分離株の数を示す。Bは、E.クロアカエ(E.cloacae)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、A.バウマニ(A.baumannii)、大腸菌(E.coli)、及び緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株に対するGN−4474の殺傷有効性を示すグラフである。各病原体の臨床分離株の数が示される。グラフは、x軸上に試験した各分離株の殺傷された割合を示し、y軸上に各割合の範囲内に入る特定の病原体の分離株の数を示す。Cは、E.クロアカエ(E.cloacae)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、A.バウマニ(A.baumannii)、大腸菌(E.coli)、及び緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株に対するGN−4474の殺傷有効性を示すグラフである。各病原体の臨床分離株の数が示される。グラフは、x軸上に試験した各分離株の殺傷された割合を示し、y軸上に各割合の範囲内に入る特定の病原体の分離株の数を示す。Dは、E.クロアカエ(E.cloacae)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、A.バウマニ(A.baumannii)、大腸菌(E.coli)、及び緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株に対するGN−4474の殺傷有効性を示すグラフである。各病原体の臨床分離株の数が示される。グラフは、x軸上に試験した各分離株の殺傷された割合を示し、y軸上に各割合の範囲内に入る特定の病原体の分離株の数を示す。Eは、E.クロアカエ(E.cloacae)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、A.バウマニ(A.baumannii)、大腸菌(E.coli)、及び緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株に対するGN−4474の殺傷有効性を示すグラフである。各病原体の臨床分離株の数が示される。グラフは、x軸上に試験した各分離株の殺傷された割合を示し、y軸上に各割合の範囲内に入る特定の病原体の分離株の数を示す。
図25】GN−4474の生存能力及び接合効率に対する短期保存の影響を示す図である。図25Aは、4℃でのWAVE反応器バッグにおける使用済みM9培養培地での0〜80時間の保存の後のGN−4474の生存能力を示す。図25Bは、試験管内での殺傷効率に対する24時間または72時間の保存(4℃でのWAVE反応器バッグにおけるmM9培養培地)の影響を示す図である。
図26】GN−4474の生存能力及び接合効率に対する短期保存中の細菌濃度の影響を示す図である。図26Aは、4℃での賦形剤緩衝液における保存後のGN−4474の生存能力を示す図である。細菌を濃縮し、実施例7にて記載されているように種々の濃度で賦形剤緩衝液にて再浮遊させた。図26Bは、同じGN−4474試料の試験管内での殺傷効率を示す図である。
図27】GN−4474の生存能力及び接合効率に対する4℃での保存のための様々な保存培地の影響を示す図である。細菌は、4℃での保存に先立ってHECゲル化剤がない状態で、Cultibagに残し、または無菌の円錐試験管に移し、ペレット化し、使用済み培地または凍結乾燥用賦形剤緩衝液のいずれかに再浮遊させた。種々の時点で細菌を各保存条件から取り出し、希釈し、LB+Dapプレートに播種し、生細菌を定量化した(図27A)。図27Bは、4℃にて種々の培地で保存したGN−4474の接合をベースにした殺傷効率の傾向を示す。
図28】GN−4474の長期生存能力及び殺傷効率に対する制御凍結の影響を示す図である。図28Aは、−20℃での保存の後、賦形剤緩衝液にて「制御凍結された」GN−4474の試料のCFUs/mlとして経時的に表された生存能力を示す図である。図28Bは、陽性対照、陰性対照、または「制御凍結された」GN−4474の試料で処理した後に回収したPA14の平均CFUs/mlとして表された殺傷効率を示す図である。図28Cは、陽性対照、陰性対照、または「制御凍結された」GN−4474の試料で処理した後のPA14の生存率として表された殺傷効率を示す図である。
図29】GN−4474の長期生存能力及び殺傷効率に対する15mlのポリプロピレン試験管における急速凍結の影響を示す図である。図29Aは、CFUs/mlのGN−4474として表された生存能力を示す図である。図29Bは、陽性対照、陰性対照、または「急速凍結した」GN−4474の試料で処理した後に回収したPA14の平均CFUs/mlとして表された殺傷効率を示す図である。
図30】GN−4474の長期生存能力及び殺傷効率対するガラスバイアルにおける急速凍結の影響を示す図である。図30A、CFUs/mlのGN−4474として表された生存能力を示す図である。図30Bは、陽性対照、陰性対照、または「急速凍結した」GN−4474の試料で処理した後に回収したPA14の平均CFUs/mlとして表された殺傷効率を示す図である。図30Cは、陽性対照、陰性対照、または「急速凍結した」GN−4474の試料で処理した後のPA14の生存率として表された殺傷効率を示す図である。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図21
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図23
図24-1】
図24-2】
図24-3】
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]