(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートとアルコール系硬化剤と非アミン系触媒の硬化物である熱硬化性ポリウレタンからなる保護層、透明基材フィルム、粘着剤層の三層がこの順に積層されており、
前記熱硬化性ポリウレタンのα比が1.05以上1.2以下であることを特徴とする表面保護フィルム。
前記アルコール系硬化剤が、2価アルコール50重量部以上100重量部以下、3価アルコール50重量部以下0重量部以上の混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面保護フィルム。
請求項1〜4のいずれかに記載の表面保護フィルムの前記保護層側表面に離型フィルム、前記粘着剤層側表面に剥離フィルムが積層されていることを特徴とする表面保護フィルム積層体。
ポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートとアルコール系硬化剤とを非アミン系触媒で硬化させた熱硬化性ポリウレタンからなる保護層、透明基材フィルム、粘着剤層の三層がこの順に積層されており、
前記熱硬化性ポリウレタンのα比が1.05以上1.2以下であることを特徴とする表面保護フィルムの製造方法であって、
ポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートとアルコール系硬化剤と非アミン系触媒とを含む材料組成物を、離間して配置された一対のロールにより送り出される第一および第二の間隙維持部材の間隙に流し込み、
前記材料組成物を、前記第一および第二の間隙維持部材の間に保持された状態で熱硬化して前記保護層とし、
前記第一および第二の間隙維持部材の一方を前記透明基材フィルムとすることを特徴とする表面保護フィルムの製造方法。
前記第一および第二の間隙維持部材の一方が離型処理が施されていないフィルム、他方が離型処理が施されているフィルムであることを特徴とする請求項6に記載の表面保護フィルムの製造方法。
前記第一および第二の間隙維持部材の他方が凹凸を有するフィルムであり、該凹凸を有する面で材料組成物を保持することを特徴とする請求項6または7に記載の表面保護フィルムの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、平滑性、光透過性、透明性、耐擦傷性、耐候性、自己修復性に優れた表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための、本発明の構成は以下のとおりである。
1.ポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートとアルコール系硬化剤と非アミン系触媒の硬化物である熱硬化性ポリウレタンからなる保護層、透明基材フィルム、粘着剤層の三層がこの順に積層されていることを特徴とする表面保護フィルム。
2.前記保護層の厚さが100μm以上300μm以下であることを特徴とする1.に記載の表面保護フィルム。
3.前記アルコール系硬化剤が2価アルコール50重量部以上100重量部以下、3価アルコール50重量部以下0重量部以上の混合物であることを特徴とする1.または2.に記載の表面保護フィルム。
4.ヘイズ値が0.1%以上40%以下であることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の表面保護フィルム。
5.1.〜4.のいずれかに記載の表面保護フィルムの前記保護層側表面に離型フィルム、前記粘着剤層側表面に剥離フィルムが積層されていることを特徴とする表面保護フィルム積層体。
6.ポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートとアルコール系硬化剤とを非アミン系触媒で硬化させた熱硬化性ポリウレタンからなる保護層、透明基材フィルム、粘着剤層の三層がこの順に積層されていることを特徴とする表面保護フィルムの製造方法であって、
ポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートとアルコール系硬化剤と非アミン系触媒とを含む材料組成物を、離間して配置された一対のロールにより送り出される第一および第二の間隙維持部材の間隙に流し込み、
前記材料組成物を、前記第一および第二の間隙維持部材の間に保持された状態で熱硬化して前記保護層とし、
前記第一および第二の間隙維持部材の一方を前記透明基材フィルムとすることを特徴とする表面保護フィルムの製造方法。
7.前記第一および第二の間隙維持部材の一方が離型処理が施されていないフィルム、他方が離型処理が施されているフィルムであることを特徴とする6.に記載の表面保護フィルムの製造方法。
8.前記第一および第二の間隙維持部材の他方が凹凸を有するフィルムであり、該凹凸を有する面で材料組成物を保持することを特徴とする6.または7.に記載の表面保護フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表面保護フィルムは、特定のポリウレタンからなる保護層を用いることにより、光透過性、透明性、耐擦傷性、耐候性、自己修復性に優れている。また、保護層の最表面に凹凸を形成することにより、防眩性を付与することもできる。2価アルコール50重量部以上100重量部以下、3価アルコール50重量部以下0重量部以上をアルコール系硬化剤として用いることにより、機械的強度をさらに高めることができる。
本発明の表面保護フィルムは、保護層が100μm以上300μm以下の厚みを有するにも関わらず、表面保護フィルムとして使用可能な光学特性を有し、100μm以上300μm以下の厚みを有することにより、タッチペンの書き味、滑り性が非常に良好であり、紙と同等の筆記感を有する。
本発明の表面保護フィルムに、離型フィルムと剥離フィルムとを積層した表面保護フィルム積層体は、保護層と粘着剤層とが保護されており、取り扱い性に優れている。
本発明の製造方法により、表面保護フィルムを連続的に製造することができる。さらに、湿式塗布法では製造が困難な100μm以上300μm以下の厚みを有する保護層を、光学特性を低下させることなく製造することができる。また、転写法により、保護層の表面に凹凸を容易に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、本発明の表面保護フィルムを示す。
本発明の表面保護フィルム10は、ポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートとアルコール系硬化剤と非アミン系触媒の硬化物である熱硬化性ポリウレタンからなる保護層1、透明基材フィルム2、粘着剤層3の三層がこの順に積層されていることを特徴とする。
図2に示すように、本発明の表面保護フィルム10は、ディスプレイ最表面に位置する透明基板20上に粘着剤層3で貼り合わせ、透明基板20の傷付き、ひび割れ、汚れ等を防止するために用いられる。なお、
図1、2において、各層の厚さは実際の厚さを意味するものではない。
【0011】
「保護層1」
本発明の保護層1は、ポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートとアルコール系硬化剤と非アミン系触媒の硬化物である熱硬化性ポリウレタンからなる。この特定の熱硬化性ポリウレタンを使用することにより、透明性、光透過性に優れ、かつ耐擦傷性、耐候性、自己修復性に優れる。
【0012】
a.ポリエーテルポリオール
本発明の保護層1を形成する熱硬化性ポリウレタンは、ポリオール成分としてポリエーテルポリオールを用いる。ポリエーテルポリオールから得られる熱硬化性ポリウレタンは、耐加水分解性、柔軟性、耐微生物分解性に優れるとともに、永久歪みが小さい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテトラオール、ポリテトラメチレントリオール、これらの共重合体等のポリアルキレングリコール、これらに側鎖、分岐構造のいずれか、または両方を導入した誘導体、変性体等が挙げられる。これらは単独、または2種以上を併用して用いることができる。これらの中で、ポリテトラメチレングリコールが、力学物性の観点から好ましい。
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、200以上10000以下であることが好ましく、500以上5000以下であることがより好ましく、800以上3000以下であることがさらに好ましい。数平均分子量が200未満では、反応が速すぎて取り扱い性が悪く、また、成形物が柔軟性を失うとともに脆くなる場合がある。一方、数平均分子量が10000より大きいと、粘度が高くなりすぎて取り扱い性に劣り、また、成形物が結晶化して白濁する場合がある。なお、本発明において、数平均分子量は、JIS−K1557に準じて測定したポリオールの水酸基価より算出した分子量を意味する。但し、上記の数値範囲外であっても、本発明の主旨を逸脱しなければ、これを除外するものではない。
【0013】
b.脂肪族イソシアネート
本発明の保護層1を形成する熱硬化性ポリウレタンは、イソシアネート成分として、芳香環を有さず、分子中にイソシアネート基を2個以上有する脂肪族イソシアネートを用いる。脂肪族イソシアネートから得られる熱硬化性ポリウレタンは、黄変しにくく、光源、太陽光線等からの光や熱により、熱硬化性ポリウレタンが変色して透明性が低下することを防ぐことができる。
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート、これらの変性体や多量体等が挙げられる。これらは単独、または2種以上を併用して用いることができる。これらの中で、水素化ジフェニルメタンジイソシアネートが、力学物性の観点から好ましい。
【0014】
c.アルコール系硬化剤
本発明の保護層1を形成する熱硬化性ポリウレタンは、硬化剤としては、アルコール系硬化剤を使用する。アルコール系硬化剤は、アミン系硬化剤と比較して人体、環境への悪影響が小さい。
アルコール系硬化剤としては、分子中に2つ以上のヒドロキシ基を有するものであれば、特に制限することなく使用することができる。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、シクロペンタントリオール、シクロヘキサントリオール等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。これらの中で、2価アルコール単独、または、2価アルコールと3価アルコールとを併用することが好ましい。3価アルコールの量が多いと得られる熱硬化性ポリウレタンの強度が低下するため、アルコール系硬化剤の全量に対して、2価アルコール50重量部以上100重量部以下、3価アルコール50重量部以下0重量部以上の範囲で用いることが好ましく、2価アルコール60重量部以上80重量部以下、3価アルコール40重量部以下20重量部以上の範囲で用いることがさらに好ましい。2価アルコールとしては、1,4−ブタンジオール、3価アルコールとしてはトリメチロールプロパンが、取り扱い性、力学物性の観点から好ましい。
【0015】
d.非アミン系触媒
本発明の保護層1を形成する熱硬化性ポリウレタンは、非アミン系触媒の存在下で熱硬化させる。本発明の熱硬化性ポリウレタンは、非アミン系触媒を使用することにより、非着色性、透明性、耐候性に優れている。それに対し、アミン系触媒で熱硬化させた熱硬化性ポリウレタンは、出射光が黄色くなり、また、経時で外観が着色してしまう。
非アミン系触媒としては、例えば、ジラウリル酸ジ−n−ブチル錫、ジラウリル酸ジメチル錫、ジブチル錫オキシド、オクタン錫等の有機錫化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、カルボン酸錫塩、カルボン酸ビスマス塩等が挙げられる。これらの中で、有機錫化合物が、反応速度を調節しやすいため好ましい。
非アミン系触媒は、上記したa.〜c.の総量に対して、0.0005重量%以上3.0重量%以下となるように添加することが好ましい。0.0005重量%未満では、反応速度が十分に速くならず、効率よく成形体を得ることができない場合がある。3.0重量%より大きいと、反応速度が速くなりすぎて、均一な厚みの成形体を得ることができなくなる、成形体の耐熱性や耐候性が低下する、光透過率が低下する、成形体が着色するなどの不具合を生じる場合がある。但し、上記の数値範囲外であっても、本発明の主旨を逸脱しなければ、これを除外するものではない。
【0016】
保護層1を形成する熱硬化性ポリウレタンは、その要求特性を阻害しない範囲で、必要に応じて、着色剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、防黴剤、難燃剤、滑り剤等の各種添加剤を含有することができる。
【0017】
保護層1は、ポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートとアルコール系硬化剤とを、非アミン系触媒で硬化させた熱硬化性ポリウレタンからなる成形体であり、その成形方法は、ワンショット法、プレポリマー法、擬プレポリマー法のいずれでもよい。
【0018】
ワンショット法では、ポリエーテルポリオール、脂肪族イソシアネート、アルコール系硬化剤、任意の添加剤、非アミン系触媒を一括して投入し、硬化させることにより熱硬化性ポリウレタンの成形体を作製すればよい。
プレポリマー法では、ポリエーテルポリオールと化学量論的に過剰量の脂肪族イソシアネートとを反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを予め調製しておき、ここに所定量のアルコール系硬化剤、任意の添加剤、非アミン系触媒を混合して、プレポリマーを硬化させることにより熱硬化性ポリウレタンの成形体を作製すればよい。
擬プレポリマー法では、ポリエーテルポリオールの一部を予めアルコール系硬化剤に混合しておき、残りのポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートによりプレポリマーの調製を行い、ここに予め混合しておいたポリエーテルポリオールとアルコール系硬化剤、任意の添加剤、非アミン系触媒との混合物を混合して硬化させることにより熱硬化性ポリウレタンの成形体を作製すればよい。
【0019】
本発明のポリウレタン組成物では、アルコール系硬化剤に含まれる水酸基(−OH)のモル数と、脂肪族イソシアネートまたはプレポリマーのイソシアネート基(−NCO)のモル数との比(−OH/−NCO:以下、α比という。)が、0.8以上1.2以下であることが好ましい。0.8未満では、力学物性が不安定になり、1.2より大きいと、表面粘着性が増し、良好な書き味が損なわれる。
また、熱硬化性ポリウレタンは、アクリル骨格(アクリル骨格又はメタクリル骨格)を含有しないことが好ましい。すなわち、本発明の保護層1を形成する熱硬化性ポリウレタンは、アクリル変性ポリウレタンを含まないことが好ましい。アクリル骨格を有する熱硬化性ポリウレタンは、ポリウレタンの柔軟性が損なわれるとともに耐摩耗性や引裂強度などの力学的強度が低下することがあり、また、アクリル骨格又はアクリル骨格を導入するために使用した触媒の残渣により、出射光が着色することがある。
【0020】
保護層1の厚みは、100μm以上300μm以下が好ましい。保護層1が100μm以上300μm以下の厚みを有することにより、タッチペンの書き味、滑り性が非常に良好で紙と同等の筆記感を有し、違和感を覚えることなく操作することができる。保護層1の厚みが100μm未満では、書き味、自己修復性が低下し、保護層1の厚みが300μmより厚いと、光透過性、透明性、書き味、滑り性、自己修復性が低下し、また、均一な厚さで成形することが困難となる。100μm以上300μm以下であれば、表面保護フィルムに求められる性能がバランスよく発揮され、また、製造も容易である。保護層1の厚みは、130μm以上270μm以下がより好ましく、150μm以上250μm以下がさらに好ましく、180μm以上220μm以下が最も好ましい。
【0021】
表面保護フィルムのヘイズ値は、0.1%以上40%以下、全光線透過率は90%以上である。ヘイズ値が40%より大きい、または、全光線透過率が90%未満であると、ディスプレイの視認性が低下する。表面保護フィルム10のヘイズ値が0.1%以上3%未満であると、透明性に優れ、クリアな外観にすることができる。表面保護フィルム10のヘイズ値が3%以上40%以下であると、表面保護フィルム10に防眩性を付与することができる。また、防眩性を有する表面保護フィルム10は、保護層1表面に付いた傷が目立ちにくい。表面保護フィルムのヘイズ値を3%以上40%以下とするには、保護層1の最表面に凹凸を形成すればよい。保護層1最表面の凹凸形状は、上記したヘイズ値と全光線透過率を有するものであれば特に限定されず、使用する材料の屈折率や光吸収性等に応じて適宜調整すればよいが、通常、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以上80μm以下程度である。また、算術平均粗さRaは、0.01μm以上0.3μm以下程度、最大高さRzは、0.1μm以上2.0μm以下程度である。
【0022】
「透明基材フィルム2」
透明基材フィルム2は、保護層1を保持するものである。透明基材フィルム2を構成する材料は、透明性、可撓性、機械的強度に優れるものであれば特に制限することなく用いることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィン系樹脂(COP)などを好適に用いることができる。
透明基材フィルム2の厚さは、50μm以上300μm以下であることが好ましい。本発明の表面保護フィルム10の保護層1は、熱硬化性ポリウレタンからなる。保護層1を形成する熱硬化性ポリウレタンの熱膨張係数は、通常、透明基材フィルム2を構成する材料の熱膨張係数よりも大きいため、透明基材フィルム2の厚さが50μm未満では、低温時に保護層1の収縮により、透明基材フィルム2端部に内側への応力が加わり、表面保護フィルム10が透明基板20から剥がれることがある。透明基材フィルム2の厚さが300μmより厚いと、表面保護フィルム10が嵩張り、コストが増加する。また、タッチパネル式のディスプレイ表面に貼り合わせた際の操作性が低下する。なお、下記「保護層1の製造方法」で詳述するが、保護層1は、透明基材フィルム2上に直接成形される。熱硬化性ポリウレタンを熱硬化させて保護層1とする際の加熱時の変形を防ぐために、透明基材フィルム2は厚いほうが好ましい。但し、上記の数値範囲外であっても、本発明の主旨を逸脱しなければ、これを除外するものではない。
【0023】
「粘着剤層3」
粘着剤層3は、ディスプレイ最表面の透明基板20に、本発明の表面保護フィルム10を貼り合わせるためのものである。粘着剤の種類は特に限定されず、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂を用いることができる。これらの中で、アクリル系樹脂は、防汚処理、低反射処理等の表面処理がなされた表面基板であっても貼り付けることができる。また、シリコン系樹脂は、Wetting性に優れ、透明基板への貼り付け時に気泡が生じにくく、また、再剥離性がよく剥離時に糊残りしにくい。粘着剤層3の厚みは、通常5μm以上60μm以下の範囲内であるが、要求仕様に合わせて適宜調節することができる。
【0024】
本発明の表面保護フィルム10を、生産から透明基板20へ貼付して使用されるまで保護するために、表面保護フィルム10の保護層1側、粘着剤層3側、それぞれの表面に、それぞれ離型フィルム4、剥離フィルム5を貼着し、表面保護フィルム積層体30とすることができる。
図3に表面保護フィルム積層体30を示す。なお、
図3において、各層の厚さは実際の厚さを意味するものではない。
離型フィルム4は、保護層1の汚れや埃付着等を防止するものであり、保護層1と貼り合わせる側の表面に離型処理が施されたフィルムを用いることが好ましい。離型処理が施された離型フィルム4を、保護層1から剥離すると、保護層1表面に離型フィルム4から離型剤が移行し、離型フィルム剥離直後の保護層1表面に滑り性を付与することができ、タッチ操作を違和感なく行うことができる。また、下記「保護層1の製造方法」で詳述するが、保護層1は、離型フィルム4上に直接成形することもできる。この際、熱硬化性ポリウレタンを熱硬化させて保護層1とする際の加熱時の変形を防ぐために、離型フィルム4は50μm以上300μm以下であることが好ましく、厚いほうがより好ましい。
剥離フィルム5は、粘着剤層3を保護して、汚れ、埃付着、粘着力の低下等を防ぐものであり、粘着剤層3と貼り合わせる側の表面に離型処理が施されたフィルムを好適に利用することができる。
【0025】
「保護層1の製造方法」
保護層1は、少なくともポリエーテルポリオール、脂肪族イソシアネート(又は、これらからなるウレタンプレポリマー)、アルコール系硬化剤、任意の添加剤、並びに、非アミン系触媒を含有する材料組成物を、離間して配置された一対のロールにより送り出される間隙維持部材の間隙に流し込み、材料組成物が間隙維持部材の間に保持された状態で加熱装置に導入し、熱硬化することにより製造される。
【0026】
図4に、保護層1の製造方法の模式図を示す。以下、
図4を用いて保護層1の製造方法を説明する。
少なくともポリエーテルポリオール、脂肪族イソシアネート(又は、これらからなるウレタンプレポリマー)、アルコール系硬化剤、任意の添加剤、並びに、非アミン系触媒を含有する材料組成物40aを、注型機41を介して、離間して配置された一対の搬送ロール43a、43bにより送り出される第一、および第二の間隙維持部材42a、42bの間隙に流し込む。第一、および第二の間隙維持部材42a、42bは、その間に材料組成物40aを保持した状態で加熱装置46内に導かれる。材料組成物40aは、第一、および第二の間隙維持部材42a、42bの間に保持された状態で熱硬化して、熱硬化性ポリウレタンのシート状物40となる。
なお、
図4において、44は第一、および第二の間隙維持部材42a、42bを送り出すための搬送ローラ、45は補助ローラ、47は材料組成物40aを保持した第一、および第二の間隙維持部材42a、42bを加熱装置46内で搬送するためのコンベアベルトである。
【0027】
第一、および第二の間隙維持部材42a、42bは、その間に材料組成物40aを保持しながら同一の張力で引っ張られて搬送されるため、その間隙を一定の大きさに維持することができる。材料組成物40aは、第一、および第二の間隙維持部材42a、42bに挟まれ、一定の厚みを維持した状態で硬化するため、厚み精度に優れた熱硬化性ポリウレタンのシート状物40となる。この製造方法により、塗布では困難な30μm以上の厚みを有し、ディスプレイの表面保護フィルムとして実用的な光学特性を有するシート状物40を連続的に成形することができる。
【0028】
注型機41のヘッド部41aの位置は、搬送ロール43a、43bの中央部(第一、および第二の間隙維持部材42a、42bがなす間隙の中央部)より、いずれか一方の加熱ロール側に偏在していることが好ましく、また、偏在距離が搬送ロールの半径以下であることが好ましい。すなわち、注型機41のヘッド部41aの直下は、一対の搬送ロール43a、43bの中央部から一方の搬送ロールの中心軸までの間に位置することが好ましい。また、ヘッド部41aの先端部と、搬送ロールの表面との最短距離は、5cm以下であることが好ましい。ヘッド部41aをこのように配設することにより、熱硬化性ポリウレタンのシート状物40の厚み精度がより向上するとともに、第一、および第二の間隙維持部材42a、42bの間隙に流し込まれた未硬化の材料組成物40aに気泡が混入しにくく、また、混入した気泡が抜けやすい。
【0029】
搬送ロール43a、43bは、単に搬送機能のみを有するものでもよいが、加熱ロールであることが好ましい。搬送ロールが加熱ロールであると、材料組成物40aを、第一、および第二の間隙維持部材42a、42bの間隙に保持された直後から硬化させることができ、樹脂組成物40aが加熱装置46内に導入されるまでに厚さをより均一に維持することができ、より厚み精度に優れる熱硬化性ポリウレタンのシート状物40を成形することができる。搬送ロールを加熱する際の搬送面温度は、10℃以上60℃以下に設定することが好ましい。10℃未満では、材料組成物の粘度が高くなって気泡が抜けにくくなるとともに、硬化反応が遅くなってシート状物40の厚み精度が低下する。60℃を超えると、搬送ロール上で材料組成物40aが硬化したり、シート状物40に気泡が入ったりすることがある。
【0030】
加熱装置46は、ヒータを備えた加熱炉であり、材料組成物40aの硬化温度まで炉内温度を上昇させることができるものであればよい。また、加熱装置46内での加熱条件(硬化条件)は特に限定されず、材料組成物40aの組成に応じて適宜設定すればよく、例えば、40℃以上160℃以下、1分以上180分以下の条件で行えばよい。
【0031】
加熱装置46からは、第一の間隙維持部材42a、熱硬化性ポリウレタンのシート状物40、第二の間隙維持部材42bがこの順に積層した長尺状積層体が搬出される。そして、シート状物40が本発明の表面保護フィルム10の保護層1となり、第一の間隙維持部材42a、第二の間隙維持部材42bの一方が、本発明の表面保護フィルム10の透明基材フィルム2となる。以下、第一の間隙維持部材42aが、透明基材フィルム2となる場合を例として説明する。
第二の間隙維持部材42bは、本発明の表面保護フィルム積層体30の離型フィルム4として利用することができる。この際、透明基材フィルム2となる第一の間隙維持部材42aは離型処理が施されていないフィルム、離型フィルム4となる第二の間隙維持部材42bは離型処理が施されているフィルムを使用することが好ましい。
また、第二の間隙維持部材42bとして凹凸を有するフィルムを用い、凹凸を有する面で材料組成物40aを保持することにより、保護層1となるシート状物40の最表面に凹凸を転写することができる。
【0032】
加熱装置から搬出された長尺状積層体の透明基材フィルム2となる第一の間隙維持部材42a表面に、塗布により粘着剤層3を形成し、粘着剤層3上に剥離フィルム5を貼り合わせることにより、長尺状の本発明の表面保護フィルム積層体30が得られる。
なお、予め、長尺状の透明基材フィルムに粘着剤層3を介して剥離フィルム5を貼り合わせ、透明基材フィルム2、粘着剤層3、剥離フィルム5がこの順に積層した積層体を作製し、この積層体を第一間隙維持部材42aとして用いることもできる。
本製造方法により、表面保護フィルム積層体30をいわゆるロールtoロールで連続的に製造することができる。製造された表面保護フィルム積層体30は、両面にそれぞれ離型フィルム4と剥離フィルム5とを有し、表面保護フィルム10の傷付き、汚染等を防ぐことができ、取り扱い性に優れている。表面保護フィルム積層体30として出荷するのであれば、長尺状の表面保護フィルム積層体30をロール状に巻回して出荷してもよく、シート状に裁断してから出荷してもよい。また、第一の間隙維持部材42a、熱硬化性ポリウレタンのシート状物40、第二の間隙維持部材42bからなる長尺状積層体、またはこの積層体を裁断してから出荷し、ディスプレイ工場等で粘着剤層3を塗布により形成し、ディスプレイの透明基板に貼り合わせることもできる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
「実施例1」
ポリテトラメチレングリコールをポリオール成分、水素化ジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするプレポリマー(NCO%=10%)100gに対して、1,4−ブタンジオール/トリメチロールプロパン=60/40の重量比からなるアルコール系硬化剤を11.6g、非アミン系触媒として有機錫化合物を250ppm添加し、撹拌・混合を行った。
その後、離型フィルム4としてシリコン処理した厚み125μmのPETフィルム、透明基材フィルム2として厚み100μmのPETフィルム、粘着剤層3として厚み50μmのシリコン系粘着剤、剥離フィルム5としてシリコン処理した厚み75μmのPETフィルムを使用し、上記成形方法により、保護層の厚みが100μmの表面保護フィルム積層体1を得た。
【0034】
「実施例2」
実施例1と同様にして、保護層の厚みが150μmの表面保護フィルム積層体2を得た。
「実施例3」
実施例1と同様にして、保護層の厚みが200μmの表面保護フィルム積層体3を得た。
「実施例4」
実施例1と同様にして、保護層の厚みが250μmの表面保護フィルム積層体4を得た。
【0035】
「実施例5」
離型フィルム4としてシリコン処理した厚み100μm、Ra0.186μm、Rz1.541μm、RSm35.61μmの凹凸転写PETを用いた以外は、実施例1と同様にして、保護層の厚みが200μmで、最表面に凹凸を有する表面保護フィルム積層体5を得た。
「実施例6」
離型フィルム4としてシリコン処理した厚み125μm、Ra0.081μm、Rz0.586μm、RSm20.336μmの凹凸転写PETを用いた以外は、実施例5と同様にして、保護層の厚みが200μmで、最表面に凹凸を有する表面保護フィルム積層体6を得た。
【0036】
「比較例1」
1,4−ブタンジオール/トリメチロールプロパン=40/60の重量比からなるアルコール系硬化剤を10.5g用いた以外は、実施例4と同様にして、保護層の厚みが250μmの表面保護フィルム積層体7を得た。
「比較例2」
離型フィルム4としてシリコン処理した厚み100μm、Ra0.475μm、Rz2.48μm、RSm34.687μmの凹凸転写PETを用いた以外は、実施例5と同様にして、保護層の厚みが200μmで、最表面に凹凸を有する表面保護フィルム積層体8を得た。
【0037】
「荷重−変位測定」
保護層の厚さの下限を判断する為に、実施例1、3で得られた表面保護フィルム積層体1、3から、離型フィルム、剥離フィルムを剥がした後、それぞれ厚みが100μm、200μmである保護層を、粘着剤層を介して測定台に貼り付け、一点に荷重をかけた際の変位量を測定した。
また、一般的なコピー用紙(厚さ:0.09mm、坪量:67g/m
2)を1枚、2枚重ね、5枚重ねにし、積層による紙の隙間を抑えるため、円環状の100gfの重りで紙を押さえつけ、円環中心の一点に荷重をかけた際の変位量を測定した。
測定は、角度85度の円錐に、0gfから、一般的な人の筆圧の上限である500gfまで荷重を加えて行った。
【0038】
図5に、荷重−変位測定のグラフを示す。
紙1枚では最大約47μm沈み込み、紙2枚では最大約105μm沈み込み、紙5枚では最大約179μm沈み込む変位量が確認された。よって、紙に筆記を行っているかのような感触を得るには47μmを越える沈み込み変位量が必要であり、特に2枚以上重ねた紙に筆記を行っているかのような感触を得るには105μmを越える沈み込み変位量が必要であることが確認できた。
厚さが100μmである保護層は、最大約93μm沈み込むことが分かった。この変位量は紙1.8枚相当と考えられ、紙1枚分の変位量を十分に超えており、紙2枚分に近いことが確かめられた。また、厚さが200μmである保護層は、最大約174μm沈み込むことが分かった。厚さ200μmである保護層は、紙5枚重ねと同等の沈み込み変位量を示し、重ね合わせた紙と同等の筆記感を得ることができた。
以上の結果より、特に2枚以上重ねた紙に筆記を行っているような感触を得るために、紙1枚分の変位量を充分に超えることが出来るフィルム厚が必要であり、保護層の厚さは100μm以上が適切であると判断できる。
【0039】
上記で得られた表面保護フィルム積層体1〜8を用いて、以下に示す評価を行った。評価結果を表1に示す。
「評価方法」
<国際ゴム硬さ(IRHD)>
作成した表面保護フィルム積層体から1cm角のサンプルを裁断し、離型フィルム、剥離フィルムを剥がした後、保護層側の硬さをIRHDゴム硬度計(ヒルデブランド社製)を用いて測定した。
<沈み込み深さ>
作成した表面保護フィルム積層体から、離型フィルム、剥離フィルムを剥がした後、保護層側に、幅0.6mm、高さ0.7mmの凸形状を有する金属板を、荷重350gで5分間押し付けた。
金属板を取り除いて1分後、15分後に、凹んだ部分について接触式表面粗さ計(株式会社ミツトヨ製、装置名:SV−3000)を用い、以下の条件で沈み込み深さを測定した。1分後の沈み込み深さにより、書き味を評価することができ、沈み込み深さが大きいほど書き味が良好となる。15分後の沈み込み深さにより、自己修復性を評価することができ、小さいほど自己修復性に優れている。
測定条件
測定長さ:2.85mm、速度:0.05mm/s、ピッチ:0.2μm
評価条件
規格:JIS2001、評価曲線種別:PJ01、基準長さ:0.25mm、区間数:5、λs:0.0025mm、フィルタ種別:Gaussian、評価長さ:1.25mm、助走:0.8mm、後走:0.8mm
【0040】
<摩擦係数>
作成した表面保護フィルム積層体から、15cm×5cmのサンプルを裁断し、離型フィルム、剥離フィルムを剥がした後、保護層側の静摩擦係数、動摩擦係数、動摩擦係数のバラツキを下記条件で測定した。
表面性測定機(新東科学株式会社製、装置名:TYPE14)
荷重 :153g
速度 :700mm/min
相手材:POM(先端形状 曲率半径0.65mm)
角度 :75度
静摩擦係数 :測定時のピーク値
動摩擦係数 :10cm移動時の平均値
動摩擦係数のバラツキ:10cm移動時の動摩擦係数の最大値と最小値と
の差
<耐擦傷性>
作成した表面保護フィルム積層体から、10cm角のサンプルを裁断し、離型フィルム、剥離フィルムを剥がした後、保護層側に相手材を接触させ、下記条件で10,000回転させた後の傷の有無を目視で確認した。なお、試験前のサンプル表面にはシリコンスプレー(株式会社タイホーコーザイ製 シリコーンスプレー400、成分:ジメチルシリコーンオイル)を少量塗布後、試験を行った。
相手材 :POM(先端形状 曲率半径0.65mm)
荷重 :500g
回転数 :20rpm
回転中心からの距離:3cm
【0041】
<全光線透過率、ヘイズ>
作成した表面保護フィルム積層体から5cm角のサンプルを裁断し、離型フィルム、剥離フィルムを剥がし、保護層表面が光源側にくるようにサンプルをセットし、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、装置名:NDH−2000)を用いて測定した。
<表面粗さ>
保護層の最表面が凹凸を有する表面保護フィルム積層体5、6、8と、保護層の厚みが同じ表面保護フィルム積層体3について、離型フィルムを剥がした保護層表面の表面形状を、以下の方法で測定した。
作成した表面保護フィルム積層体から2cm角のサンプルを裁断し、離型フィルム、剥離フィルムを剥がし、保護層側が上にくるようにレーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、装置名:VK−9710)の観察台にセットした。対物レンズ50倍を用いて、焦点を合わした後、Z測定ピッチ:0.02μm、測定モード:表面形状、測定エリア:面、測定品質:高速、として測定を行った。レーザー明るさ調整は自動調整モードとした。
レーザー顕微鏡測定で得られた画像について、傾き補正として2次曲面補正(自動)モードを選択し、画像処理を行った。その後、線粗さ測定モードを選択し、固定長250μmとして、2点指定モードにて画像内においてランダムに3回測定を行った。得られた測定値(Ra,Rz、RSm)に対してそれぞれの平均値を算出した。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例1〜4で得られた本発明の表面保護フィルムは、平滑性、光透過性、透明性、耐候性等、表面保護フィルムとして優れた性能を有していた。また、実施例5、6で得られた本発明の表面保護フィルムは、さらに防眩性を有する優れた表面保護フィルムであった。
比較例1で得られた表面保護フィルム7は、使用した熱硬化性ポリウレタンの強度が十分でなく、耐擦傷性に劣っていた。比較例2で得られた表面保護フィルム8は、ヘイズ値が60%以上であり、防眩性を有するものの視認性が低下していた。
【0044】
実施例1〜4より、保護層が厚いほど、1分後の沈み込み深さが大きくなった。また、保護層が厚いほど、15分後の沈み込み深さも大きくなる傾向が見られたが、保護層の厚さが100μmの実施例1は、保護層の厚さが150μmの実施例2よりも15分後の沈み込み深さが大きかった。また、保護層が厚いほど、静摩擦係数、動摩擦係数、動摩擦係数のバラツキのいずれもが大きくなった。
1分後の沈み込み深さが大きいほど書き味に優れるが、15分後の沈み込み深さが大きいと自己修復性が低下する。また、摩擦係数が大きいほどタッチペンの滑り性が悪くなり、動摩擦係数のバラツキが大きいほどタッチペンが引っかかりやすくなる。実施例1〜4で得られた本発明の表面保護フィルムは、タッチペン使用時の操作性、使用感が良好であったが、特に、保護層の厚みが200μmである実施例3が優れていた。