(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6936186
(24)【登録日】2021年8月30日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】人力駆動車用ドライブユニット
(51)【国際特許分類】
B62M 6/55 20100101AFI20210906BHJP
B62M 6/45 20100101ALI20210906BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20210906BHJP
F16D 41/06 20060101ALI20210906BHJP
F16D 41/07 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
B62M6/55
B62M6/45
F16H1/06
F16D41/06 F
F16D41/07 Z
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-103814(P2018-103814)
(22)【出願日】2018年5月30日
(65)【公開番号】特開2019-206315(P2019-206315A)
(43)【公開日】2019年12月5日
【審査請求日】2020年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野田 慎一朗
(72)【発明者】
【氏名】飯干 智介
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝彰
(72)【発明者】
【氏名】井澤 明浩
【審査官】
中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第201678014(CN,U)
【文献】
特開平09−095289(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2910462(EP,A1)
【文献】
特開2014−196036(JP,A)
【文献】
特開平09−188286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/55
B62M 6/45
F16H 1/06
F16D 41/06
F16D 41/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車の推進をアシストする電気モータと、
クランク軸と、
前記クランク軸に連結され、第1回転方向に前記クランク軸が回転する場合、前記第1回転方向に回転し、第2回転方向に前記クランク軸が回転する場合、前記第2回転方向に回転する出力部と、
前記電気モータの回転速度を複数段階で減速する減速機構と、
前記出力部と前記減速機構との間に設けられ、前記減速機構から前記出力部に前記電気モータの回転力を伝達するクラッチ機構と、を含む、人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項2】
前記減速機構は、
前記電気モータの出力軸に設けられる第1歯車と、
前記第1歯車と噛み合う第2歯車と、を含む、請求項1に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項3】
人力駆動車の推進をアシストする電気モータと、
クランク軸と、
前記クランク軸に連結される出力部と
前記電気モータの回転速度を複数段階で減速する減速機構と、
前記出力部と前記減速機構との間に設けられ、前記減速機構から前記出力部に前記電気モータの回転力を伝達するクラッチ機構と、を含み、
前記減速機構は、
前記電気モータの出力軸に設けられる第1歯車と、
前記第1歯車と噛み合う第2歯車とを含み、
前記出力部は、前記クランク軸と一体に回転するように構成される、人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項4】
前記クランク軸から前記出力部までの人力駆動力の伝達経路に設けられる第1ワンウェイクラッチをさらに含む、請求項3に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項5】
前記クラッチ機構は、第2ワンウェイクラッチを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項6】
前記減速機構は、
前記第2ワンウェイクラッチの外周部に設けられる第3歯車と、
前記第3歯車と噛み合う第4歯車と、をさらに含む、請求項5に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項7】
前記クラッチ機構は、第2ワンウェイクラッチを含み、
前記減速機構は、
前記第2ワンウェイクラッチの外周部に設けられる第3歯車と、
前記第3歯車と噛み合う第4歯車と、をさらに含み、
前記出力部および前記第3歯車は、第1回転軸心まわりに回転するように構成され、
前記電気モータの出力軸および前記第1歯車は、前記第1回転軸心に平行な第2回転軸心まわりに回転するように構成され、
前記第2歯車および前記第4歯車は、前記第1回転軸心および前記第2回転軸心に平行な第3回転軸心まわりに回転するように構成され、
前記第1回転軸心、前記第2回転軸心、および、前記第3回転軸心は、同一平面上に配置される、請求項2から4のいずれか一項に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項8】
前記クラッチ機構は、第2ワンウェイクラッチを含み、
前記減速機構は、
前記第2ワンウェイクラッチの外周部に設けられる第3歯車と、
前記第3歯車と噛み合う第4歯車と、をさらに含み、
前記出力部および前記第3歯車は、第1回転軸心まわりに回転するように構成され、
前記電気モータの出力軸および前記第1歯車は、前記第1回転軸心に平行な第2回転軸心まわりに回転するように構成され、
前記第2歯車および前記第4歯車は、前記第1回転軸心および前記第2回転軸心に平行な第3回転軸心まわりに回転するように構成され、
前記第3回転軸心は、前記第1回転軸心および前記第2回転軸心を含む平面から離間する、請求項2から4のいずれか一項に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項9】
前記第1回転軸心と前記第2回転軸心との最短距離は、前記第1回転軸心と前記第3回転軸心との最短距離よりも長い、請求項7または8に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項10】
前記第1回転軸心に平行な方向から見た場合、前記第3歯車は、前記電気モータからオフセットして配置される、請求項7から9のいずれか一項に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項11】
前記クラッチ機構は、外輪体および内輪体を含み、
前記外輪体は、前記第3歯車に設けられ、
前記内輪体は、前記出力部に設けられる、請求項6から10のいずれか一項に記載の人力駆動車用のドライブユニット。
【請求項12】
前記第2ワンウェイクラッチは、ローラ式ワンウェイクラッチ、ラチェット式ワンウェイクラッチ、および、スプラグ式ワンウェイクラッチの少なくとも1つを含む、請求項5から11のいずれか一項に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項13】
前記減速機構は、前記電気モータの回転速度を歯車のみで減速するように構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項14】
前記電気モータを制御する制御部の少なくとも一部が設けられる回路基板をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項15】
前記回路基板は、前記クランク軸の軸方向に交差する方向に延びる、請求項14に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項16】
前記クランク軸の軸方向に交差する方向において、前記回路基板は前記減速機構に重なるように配置される、請求項15に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項17】
前記回路基板は、凹部を含み、
前記凹部には、前記電気モータの出力軸の一部が配置される、請求項14から16のいずれか一項に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項18】
前記クランク軸の少なくとも一部を収容するハウジングをさらに含み、
前記クランク軸の軸方向から見て、前記クランク軸の回転軸心および前記電気モータの回転軸心を含む平面上において、前記クランク軸の回転軸心から前記ハウジングの外面までの最短距離は、70mm以下である、請求項1から17のいずれか一項に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【請求項19】
前記クランク軸と、前記出力部のうち前記クラッチ機構が連結される部分と、の間の人力駆動力の伝達経路に設けられ、前記人力駆動力を検出する検出部をさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の人力駆動車用ドライブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用ドライブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車用ドライブユニットは、人力駆動車の推進をアシストする電気モータを含む。クランク軸に入力された人力駆動力と電気モータの回転力とは、出力部に入力される。電気モータは、減速機構を介して出力部に回転力を伝達するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4906982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている人力駆動車用ドライブユニットでは、電気モータが停止している場合であっても、人力駆動力が減速機構および電気モータに伝達されるため、減速機構および電気モータの回転抵抗によって人力駆動力の損失が大きくなる。
本発明の目的の1つは、人力駆動力の損失を低減できる人力駆動車用ドライブユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1側面に従う人力駆動車用ドライブユニットは、人力駆動車の推進をアシストする電気モータと、クランク軸と、前記クランク軸に連結され、第1回転方向に前記クランク軸が回転する場合、前記第1回転方向に回転し
、第2回転方向に前記クランク軸が回転する場合、前記第2回転方向に回転する出力部と、前記電気モータの回転速度を複数段階で減速する減速機構と、前記出力部と前記減速機構との間に設けられ、前記減速機構から前記出力部に前記電気モータの回転力を伝達するクラッチ機構と、を含む、人力駆動車用ドライブユニット。
第1側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、クラッチ機構が出力部と減速機構との間に設けられるため、電気モータの駆動が停止している場合には、人力駆動力は出力部よりも電気モータ側に伝達されないようにできる。このため、人力駆動力の損失を低減できる。また、クランク軸が第1回転方向および第2回転方向のいずれに回転する場合であっても、クランク軸の回転を出力部に伝達できる。
【0006】
本開示の第1側面に従う第2側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記減速機構は、前記電気モータの出力軸に設けられる第1歯車と、
前記第1歯車と噛み合う第2歯車と、を含む。
第2側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、第1歯車と第2歯車によって減速機構を簡単な構造で構成できる。
【0007】
本開示の第3側面に従う人力駆動車用ドライブユニットは、人力駆動車の推進をアシストする電気モータと、クランク軸と、前記クランク軸に連結される出力部と前記電気モータの回転速度を複数段階で減速する減速機構と、前記出力部と前記減速機構との間に設けられ、前記減速機構から前記出力部に前記電気モータの回転力を伝達するクラッチ機構と、を含み、前記減速機構は、前記電気モータの出力軸に設けられる第1歯車と、前記第1歯車と噛み合う第2歯車とを含む。
第3側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、クラッチ機構が出力部と減速機構との間に設けられるため、電気モータの駆動が停止している場合には、人力駆動力は出力部よりも電気モータ側に伝達されないようにできる。このため、人力駆動力の損失を低減できる。また、第1歯車と第2歯車によって減速機構を簡単な構造で構成できる。
【0008】
本開示の第3側面に従う第4側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記クランク軸から前記出力部までの人力駆動力の伝達経路に設けられる第1ワンウェイクラッチをさらに含む。
第4側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、クランク軸が第2回転方向に回転する場合に出力部に回転が伝達されない。
【0009】
本開示の第1〜第4側面のいずれか1つに従う第5側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記クラッチ機構は、第2ワンウェイクラッチを含む。
第5側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、第2ワンウェイクラッチによって、減速機構から出力部に電気モータの回転力を好適に伝達できる。
【0010】
本開示の第5側面に従う第6側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記減速機構は、前記第2ワンウェイクラッチの外周部に設けられる第3歯車と、前記第3歯車と噛み合う第4歯車と、をさらに含む。
第6側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、第3歯車と第4歯車によって減速機構を簡単な構造で構成できる。
【0011】
本開示の第2〜第4側面のいずれか1つに従う第7側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記クラッチ機構は、第2ワンウェイクラッチを含み、前記減速機構は、前記第2ワンウェイクラッチの外周部に設けられる第3歯車と、前記第3歯車と噛み合う第4歯車と、をさらに含み、前記出力部および前記第3歯車は、第1回転軸心まわりに回転するように構成され、前記電気モータの出力軸および前記第1歯車は、前記第1回転軸心に平行な第2回転軸心まわりに回転するように構成され、前記第2歯車および前記第4歯車は、前記第1回転軸心および前記第2回転軸心に平行な第3回転軸心まわりに回転するように構成され、前記第1回転軸心、前記第2回転軸心、および、前記第3回転軸心は、同一平面上に配置される。
第7側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、第1回転軸心、第2回転軸心、および、第3回転軸心が含まれる平面と交差する方向のサイズを小型化しやすい。
【0012】
本開示の第2〜第4側面のいずれか1つに従う第8側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記クラッチ機構は、第2ワンウェイクラッチを含み、前記減速機構は、前記第2ワンウェイクラッチの外周部に設けられる第3歯車と、前記第3歯車と噛み合う第4歯車と、をさらに含み、前記出力部および前記第3歯車は、第1回転軸心まわりに回転するように構成され、前記電気モータの出力軸および前記第1歯車は、前記第1回転軸心に平行な第2回転軸心まわりに回転するように構成され、前記第2歯車および前記第4歯車は、前記第1回転軸心および前記第2回転軸心に平行な第3回転軸心まわりに回転するように構成され、前記第3回転軸心は、前記第1回転軸心および前記第2回転軸心を含む平面から離間する。
第8側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、第1回転軸心および第2回転軸心を含む平面に沿う方向で、かつ第1回転軸心および第2回転軸心と直交する方向のサイズを
小型化しやすい。
【0013】
本開示の第7または第8側面に従う第9側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記第1回転軸心と前記第2回転軸心との最短距離は、前記第1回転軸心と前記第3回転軸心との最短距離よりも長い。
第9側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、減速機構の中間の歯車の回転軸心を、第1回転軸心と第3回転軸心との間の領域に配置できる。
【0014】
本開示の第7〜第9側面のいずれか1つに従う第10側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記第1回転軸心に平行な方向から見た場合、前記第3歯車は、前記電気モータからオフセットして配置される。
第10側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、第1回転軸心に平行な方向におけるサイズを小型化しやすい。
【0015】
本開示の第5〜第9側面のいずれか1つに従う第11側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記第2ワンウェイクラッチは、ローラ式ワンウェイクラッチ、ラチェット式ワンウェイクラッチ、および、スプラグ式ワンウェイクラッチの少なくとも1つを含む。
第11側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、ローラ式ワンウェイクラッチ、ラチェット式ワンウェイクラッチ、および、スプラグ式ワンウェイクラッチの少なくとも1つによって人力駆動力が電気モータ側に伝達されることを好適に抑制できる。
【0016】
本開示の第1〜第11側面のいずれか1つに従う第12側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記減速機構は、前記電気モータの回転速度を歯車のみで減速するように構成される。
第12側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば
、歯車によって減速機構を簡単な構造で構成できる。
【0017】
本開示の第1〜第12側面のいずれか1つに従う第13側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記電気モータを制御する制御部の少なくとも一部が設けられる回路基板をさらに含む。
第13側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、回路基板を人力駆動車用ドライブユニットに設けることができる。
【0018】
本開示の第13側面に従う第14側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記回路基板は、前記クランク軸の軸方向に交差する方向に延びる。
第14側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、回路基板をドライブユニットに好適に配置することができる。
【0019】
本開示の第14側面に従う第15側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記クランク軸の軸方向に交差する方向において、前記回路基板は前記減速機構に重なるように配置される。
第15側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、回路基板をドライブユニットに好適に配置することができる。
【0020】
本開示の第13〜第15側面のいずれか1つに従う第16側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記回路基板は、凹部を含み、前記凹部には、前記電気モータの出力軸の一部が配置される。
第16側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、回路基板を電気モータの出力軸のまわりにも配置できる。
【0021】
本開示の第1〜第16側面のいずれか1つに従う第17側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記クランク軸の少なくとも一部を収容するハウジングをさらに含み、前記クランク軸の軸方向から見て、前記クランク軸の回転軸心および前記電気モータの回転軸心を含む平面上において、前記クランク軸の回転軸心から前記ハウジングの外面までの最短距離は、70mm以下である。
第17側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、クランク軸から駆動輪の軸心までの距離を抑制できる。
【0022】
本開示の第1〜第17側面のいずれか1つに従う第18側面の人力駆動車用ドライブユニットにおいて、前記クランク軸と、前記出力部のうち前記クラッチ機構が連結される部分と、の間の人力駆動力の伝達経路に設けられ、前記人力駆動力を検出する検出部をさらに含む。
第18側面の人力駆動車用ドライブユニットによれば、トルクセンサによって人力駆動力を好適に検出できる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の人力駆動車用ドライブユニットは、人力駆動力の損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態の人力駆動車用ドライブユニットの斜視図。
【
図2】
図1の人力駆動車用ドライブユニットの右側面図。
【
図3】
図1の人力駆動車用ドライブユニットの左側面図。
【
図6】
図2の人力駆動車用ドライブユニットに第1回転軸心、第2回転軸心、および、第3回転軸心の位置を示した右側面図。
【
図7】
図2から第1ハウジングを外した状態の人力駆動車用ドライブユニットの右側面図。
【
図10】第1変形例の人力駆動車用ドライブユニットに第1回転軸心、第2回転軸心、および、第3回転軸心の位置を示した右側面図。
【
図11】第2変形例の人力駆動車用ドライブユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜
図9を参照して、実施形態の人力駆動車用ドライブユニット10について説明する。以後、人力駆動車用ドライブユニット10を、単にドライブユニット10と記載する。ドライブユニット10は、人力駆動車に設けられる。人力駆動車は、少なくとも人力駆動力によって駆動することができる車である。人力駆動車は、車輪の数が限定されず、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する車も含む。人力駆動車は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車、ならびに、電動アシスト自転車(E−bike)を含む。以下、実施の形態において、人力駆動車を、自転車として説明する。
【0026】
ドライブユニット10は、人力駆動車の推進をアシストする電気モータ12と、クランク軸14と、出力部16と、電気モータ12の回転速度を複数段階で減速する減速機構18と、クラッチ機構20とを含む。出力部16は、クランク軸14に連結される。出力部16は、第1回転方向にクランク軸14が回転する場合、第1回転方向に回転し、第2回転方向にクランク軸14が回転する場合、第2回転方向に回転する。クラッチ機構20は、出力部16と減速機構18との間に設けられ、減速機構18から出力部16に電気モータ12の回転力を伝達するように構成される。第1回転方向は、人力駆動車を前進させる場合のクランク軸14の回転方向である。
【0027】
減速機構18は、好ましくは、電気モータ12の出力軸22に設けられる第1歯車24と、第1歯車24と噛み合う第2歯車26とを含む。好ましくは、第1歯車24の直径は、第2歯車26の直径よりも小さく、第1歯車24の歯数は、第2歯車
26の歯数よりも少ない。
【0028】
ドライブユニット10は、好ましくは、クランク軸14の少なくとも一部を収容するハウジング28をさらに含む。ハウジング28は、第1ハウジング30および第2ハウジング32を含む。第1ハウジング30および第2ハウジング32の一方は、クランク軸14の軸方向A1において、ドライブユニット10の第1側面を含み、第1ハウジング30および第2ハウジング32の他方は、クランク軸14の軸方向A1において、ドライブユニット10の第2側面を含む。ハウジング28は、ドライブユニット10を人力駆動車のフレームに取り付けるための取付部34を含む。取付部34は、第1ハウジング30に設けられることが好ましい。取付部34は、複数設けられることが好ましい。取付部34は、ハウジング28のクランク軸14まわりの外周部に突出する凸部28Aに設けられる。取付部34は、ドライブユニット10をフレームに取り付けるためのボルトが挿入される孔34Aを含む。
【0029】
図4に示されるとおり、第1ハウジング30および第2ハウジング32は、第1ハウジング30の第1取付面30Sと、第2ハウジング32の第2取付面32Sとが重ね合わせられた状態でボルト28Bによって互いに取り付けられている。第1ハウジング30と第2ハウジング32とによって形成される空間Sに、電気モータ12の一部、クランク軸14の一部、出力部16の一部、減速機構18、および、クラッチ機構20が収容されている。空間Sに配置される電気モータ12の一部は、電気モータ12の出力軸22の一部を含む。空間Sに配置されるクランク軸14の一部は、クランク軸14の軸方向A1の第1端部14Aおよび第2端部14Bを除く中間部分を含む。空間Sに配置される出力部16の一部は、クランク軸14の軸方向A1における出力部16の第1端部16Aを除く部分を含む。
【0030】
ハウジング28は、電気モータ12を収容するためのモータハウジング36をさらに含む。モータハウジング36は、第2ハウジング32の外面に取り付けられる。モータハウジング36と第2ハウジング32とは、一体に形成されていてもよい。ハウジング28は、金属によって形成されていてもよく、樹脂によって形成されていてもよく、金属と樹脂との両方によって形成されていてもよい。ハウジング28を、金属と樹脂との両方によって形成する場合、例えば第1ハウジング30および第2ハウジング32を金属によって形成し、モータハウジング36を樹脂によって形成することができる。
【0031】
図2および
図4に示されるとおり、第1ハウジング30は、クランク軸14の第1端部14Aおよび出力部16の第1端部16Aが突出する第1孔30Aを含む。空間Sには、第1孔30Aの近傍に、第1ハウジング30と出力部16とに接触する第1シール部材29Aが設けられる。
【0032】
図3および
図4に示されるとおり、第2ハウジング32は、クランク軸14の第2端部14Bが突出する第2孔32Aを含む。空間Sには、第2孔32Aの近傍に、第2ハウジング32とクランク軸14とに接触する第2シール部材29Bが設けられる。第2ハウジング32は、電気モータ12の出力軸22が挿入される第3孔32Bを含む。第1シール部材29Aおよび第2シール部材29Bは、弾性を有する樹脂材料によって形成される。弾性を有する樹脂材料は、たとえば合成ゴムを含む。
【0033】
図4に示されるとおり、出力部16は、中空軸であり、クランク軸14の第1回転軸心C1と出力部16の回転軸心とが等しくなるようにクランク軸14のまわりに配置される。出力部16は、クランク軸14と一体に回転するようにクランク軸14に設けられることが好ましい。出力部16は、例えば、スプライン嵌合によってクランク軸14に取り付けられる。出力部16は、好ましくは、クランク軸14に対して、第1回転軸心C1まわりに相対回転しないようにクランク軸14に取り付けられる。出力部16は、クランク軸14に対して所定角度の回転可能にクランク軸14に取り付けられてもよい。所定角度は、例えば、10度未満である。出力部16は、第1ハウジング30の第1孔30Aの付近かつハウジング28の内部に設けられる第1軸受38によってハウジング28に対して回転可能に支持される。第1軸受38は、例えば転がり軸受を含む。本実施形態では、出力部16の第2端部16Bは、クランク軸14の軸方向A1において、クランク軸14の中央よりもクランク軸14の第2端部14B側に配置される。出力部16の第2端部16Bの内周部は、スプラインを有し、クランク軸14の外周部に結合される。
【0034】
クランク軸14の第1端部14Aは、出力部16の内周部に設けられる第2軸受40を介して出力部16に支持される。第2軸受40は、例えばすべり軸受を含む。クランク軸14の第2端部14Bは、第2ハウジング32の第2孔32Aの付近かつハウジング28の内部に設けられる第3軸受42によってハウジング28に対して回転可能に支持される。第3軸受42は、例えば転がり軸受を含む。
【0035】
電気モータ12は、インナロータ型のモータであることが好ましい。電気モータ12は、ステータ12Aおよびロータ12Bを含む。本実施形態の場合、ロータ12Bに出力軸22が固定される。ステータ12Aおよびロータ12Bは、モータハウジング36に収容される。ステータ12Aは、モータハウジング36の内面に固定して設けられる。出力軸22の中間部は、第2ハウジング32の第3孔32Bの内周部に設けられる第4軸受44によってハウジング28に対して回転可能に支持される。第4軸受44は、例えば転がり軸受を含む。出力軸22の第1端部22Aは、モータハウジング36に設けられる第5軸受46によってハウジング28に対して回転可能に支持される。第5軸受46は、例えば転がり軸受を含む。
【0036】
クラッチ機構20は、好ましくは、第2ワンウェイクラッチ48を含む。第2ワンウェイクラッチ48は、好ましくは、ローラ式ワンウェイクラッチ、ラチェット式ワンウェイクラッチ、および、スプラグ式ワンウェイクラッチの少なくとも1つを含む。第2ワンウェイクラッチ48は、例えば、内輪体48A、外輪体48Bおよび内輪体48Aと外輪体48Bとの間に設けられる伝達体48Cとを含む。伝達体48Cは、例えば、ローラ、爪、および、スプラグを含む。第2ワンウェイクラッチ48は、出力部16の第1回転軸心C1まわりの外周部に設けられる。第2ワンウェイクラッチ48の内輪体48Aが出力部16の外周部に設けられる。第2ワンウェイクラッチ48の内輪体
48Aは、出力部16に一体に形成されてもよい。第2ワンウェイクラッチ48の内輪体48Aの外径は、出力部16の外径よりも大きい。
【0037】
減速機構18は、好ましくは、第2ワンウェイクラッチ48の外周部に設けられる第3歯車50と、第3歯車50と噛み合う第4歯車52と、をさらに含む。好ましくは、第3歯車50の直径は、第4歯車52の直径よりも大きく、第3歯車50の歯数は、第4歯車52の歯数よりも多い。第2ワンウェイクラッチ48の外輪体48Bは、第3歯車50の内周部に設けられる。第2ワンウェイクラッチ48の外輪体48Bは、第3歯車50と一体に形成されてもよい。減速機構18は、電気モータ12の回転速度を歯車のみで減速するように構成されることが好ましい。本実施形態の減速機構18は、電気モータ12の回転速度を2段階で減速するが、3段階以上で減速する構成にしてもよい。第1歯車24および第2歯車26は、好ましくは、ヘリカルギアを含む。第1歯車24は、電気モータ12の出力軸22に一体に形成されてもよく、電気モータ12の出力軸22とは別体に形成され、出力軸22に取り付けられてもよい。第1歯車24および第2歯車26は、平歯車を含んでいてもよい。第3歯車50および第4歯車52は、好ましくは、ヘリカルギアを含む。第3歯車50および第4歯車52は、平歯車を含んでいてもよい。
【0038】
減速機構18は、第2歯車26と第4歯車52とが設けられる回転体54をさらに含む。第2歯車26と第4歯車52とは、一体に回転するように構成される。好ましくは、第2歯車26の直径は、第4歯車52の直径よりも大きく、第2歯車26の歯数は、第4歯車52の歯数よりも多い。回転体54は、好ましくは、金属材料によって形成される。回転体54の第1端部54Aは、第1ハウジング30の内面に設けられる第6軸受56によってハウジング28に対して回転可能に支持される。第6軸受56は、例えば転がり軸受を含む。第6軸受56は、クランク軸14の軸方向A1において第1軸受38に少なくとも一部が重なる位置に配置される。回転体54の第2端部54Bは、第2ハウジング32の内面に設けられる第7軸受58によってハウジング28に対して回転可能に支持される。第7軸受58は、例えば転がり軸受を含む。第2歯車26は、内径部が外径部よりもクランク軸14の軸方向A1における幅が小さくなるように構成される。第7軸受58は、クランク軸14の軸方向A1において、第2歯車26の幅方向の両端の間に配置されることが好ましい。第7軸受58は、実質的にその全体が第2歯車26の外径部と回転体54の第2端部54Bの外周部との間に形成される空間に配置される。これによって、クランク軸14の軸方向A1における第2歯車26の外径部の幅を大きくしても、クランク軸14の軸方向A1において回転体54が第2ハウジング32側に長くなることを抑制することができる。このため、クランク軸14の軸方向A1におけるドライブユニット10の幅を小型化できる。好ましくは、第1端部54Aおよび第2端部54Bの直径は、第4歯車52の直径と実質的に等しい。第6軸受56および第7軸受58の外輪体の外径は、好ましくは、第2歯車26の直径と実質的に等しい。回転体54は、第3回転軸心C3を有する。クランク軸14の軸方向A1において、第2歯車26は、第4歯車52よりも電気モータ12に近い位置に配置される。第3歯車50の内径部のうちのクランク軸14の軸方向A1の一端部50Aは、クランク軸14の軸方向A1において第2ワンウェイクラッチ48の内輪体48Aと第1軸受38の内輪体との間に配置される。本実施形態では、第3歯車50の内径部のうちのクランク軸14の軸方向A1の一端部50Aは、出力部16の外周部の段差部16D(
図5参照)と第1軸受38の内輪体との間に配置される。これによって、第3歯車50をクランク軸14の軸方向A1において位置決めすることができる。
【0039】
好ましくは、第4歯車52は、回転体54の第3回転軸心C3まわりの外周部に一体に形成される。第4歯車52は、好ましくは、金属材料によって形成される。第4歯車52は、好ましくは、回転体54の第3回転軸心C3まわりの外周部に一体成形される。第4歯車52と、第2歯車26とは、回転体54の第3回転軸心C3の延びる方向において隣り合う。第2歯車26は、好ましくは樹脂材料を含む。第4歯車52を形成するための凹凸は、第3回転軸心C3方向に延び、第2歯車26が設けられる部分にも形成される。第4歯車52を形成するための凹凸のうちの第2歯車26が設けられる部分よりも第1端部54A側の部分が第4歯車52として機能する。第4歯車52を形成するための凹凸に第2歯車26の内周部が設けられることによって、第2歯車26の回転体54に対する回転が抑制される。回転体54には、第3回転軸心C3まわりの外周部に、径方向に凹む凹部54Cが形成されている。凹部54Cは、環状に形成されていてもよく、第3回転軸心C3まわりに断続的に設けられていてもよく、1つのみ設けられていてもよい。第2歯車26の内周部が凹部54Cに設けられることによって、第2歯車26の回転体54に対する第3回転軸心C3の延びる方向への移動が抑制される。回転体54の第1端部54Aおよび第2端部54Bの外径は、好ましくは、第4歯車52の外径よりも小さくなるように構成される。本実施の形態では、回転体54および第4歯車52は、金属材料によって一体に形成され、第2歯車26は、樹脂材料によって形成される。第2歯車26は、好ましくは、回転体54の外周部にインサート成形によって設けられる。具体的には、第4歯車52を形成するための凹凸および凹部54Cが切削および転造等によって一体成形された金属の回転体54に、樹脂が凹部54Cおよび第4歯車52を形成するための凹凸に入り込むようにインサート成形を行うことによって、第2歯車26が回転体54の外周部に設けられる。好ましくは、凹部54Cは、クランク軸14の軸方向A1において、回転体54の中央部に形成される。
【0040】
図4および
図6を参照して、電気モータ12、クランク軸14、出力部16、および、減速機構18の位置関係について説明する。
出力部16および第3歯車50は、第1回転軸心C1まわりに回転するように構成される。電気モータ12の出力軸22および第1歯車24は、第1回転軸心C1に平行な第2回転軸心C2まわりに回転するように構成される。第2歯車26および第4歯車52は、第1回転軸心C1および第2回転軸心C2に平行な第3回転軸心C3まわりに回転するように構成される。第1回転軸心C1、第2回転軸心C2、および、第3回転軸心C3は、同一平面上に配置される。
【0041】
好ましくは、第1回転軸心C1と第2回転軸心C2との最短距離L1は、第1回転軸心C1と第3回転軸心C3との最短距離L2よりも長い。第2回転軸心C2と第3回転軸心C3との最短距離L3は、好ましくは、第1回転軸心C1と第3回転軸心C3との最短距離L2よりも短い。第1回転軸心C1と第2回転軸心C2との最短距離L1は、第1回転軸心C1と第3回転軸心C3との最短距離L2と等しくてもよい。第2回転軸心C2と第3回転軸心C3との最短距離L3は、第1回転軸心C1と第3回転軸心C3との最短距離L2と等しくてもよい。
【0042】
好ましくは、クランク軸14の軸方向A1から見て、クランク軸14の回転軸心C1および電気モータ12の回転軸心C2を含む平面上において、クランク軸14の回転軸心C1からハウジング28の外面までの最短距離L4は、70mm以下である。人力駆動車が、前輪および後輪を有し、かつ、後輪を駆動輪とする場合、ドライブユニット10は、好ましくは、クランク軸14が電気モータ12の出力軸22よりも人力駆動車の後方側に配置される状態で、人力駆動車のフレームに取り付けられる。
【0043】
第1回転軸心C1に平行な方向から見た場合、第3歯車50は、好ましくは、電気モータ12からオフセットして配置される。第1回転軸心C1に平行な方向から見た場合、第3歯車50は、電気モータ12のステータ12Aと重ならないように配置される。この場合、減速機構18を構成する歯車を大きくすることができるので、減速機構18の減速比について設計の自由度が向上する。第1回転軸心C1に平行な方向から見た場合、第3歯車50は、電気モータ12のステータ12Aと重なるように配置されていてもよい。この場合、第1回転軸心C1および第3回転軸心C3を含む平面に沿う方向におけるドライブユニット10の寸法を小型化できる。
【0044】
図4および
図7に示されるとおり、ドライブユニット10は、好ましくは、電気モータ12を制御する制御部の少なくとも一部が設けられる回路基板60をさらに含む。制御部は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。回路基板60には、好ましくは記憶部がさらに設けられる。記憶部には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。回路基板60には、電子部品61が実装される。回路基板60には、基板の厚み方向の両面に電子部品61が実装されてもよい。電子部品61は、例えばマイクロプロセッサ、コンデンサおよび抵抗器などを含む。
【0045】
回路基板60は、好ましくは、クランク軸14の軸方向A1に交差する方向に延びる。クランク軸14の軸方向A1と交差する方向から見て、回路基板60は、電気モータ12に重なるように配置される。回路基板60は、第1ハウジング30と第2ハウジング32によって形成される空間Sに収容される。クランク軸14の軸方向に交差する方向において、回路基板60は、好ましくは、減速機構18に重なるように配置される。例えば、クランク軸14の軸方向A1に交差する方向において、回路基板60は、第1歯車24および第2歯車26に重なるように配置される。クランク軸14の軸方向A1に交差する方向は、クランク軸14に直交する方向を含む。回路基板60は、好ましくは、凹部60Aを含み、凹部60Aには、電気モータ12の出力軸22の一部が配置される。凹部60Aは、回路基板60の外周部に形成される。回路基板60の周縁は、第1歯車24および第2歯車26の外周部に近接して配置され、第1歯車24および第2歯車26の外周の一部に沿うように形成されている。電気モータ12の電気端子12Cは、第2ハウジング32に形成される貫通穴を通過して、回路基板60に直接接続される。
【0046】
ドライブユニット10は、好ましくは、人力駆動力を検出する検出部62を含む。検出部62は、好ましくは、クランク軸14と、出力部16のうちクラッチ機構20が連結される部分16Cと、の間の人力駆動力の伝達経路に設けられる。検出部62は、トルクセンサを含む。トルクセンサは、人力駆動力のトルクを検出するために用いられる。トルクセンサは、例えば、歪センサ62Aを含む。歪センサ62Aは、例えば歪ゲージおよび半導体ひずみセンサなどを含む。歪センサ62Aは、出力部16の外周面に設けられる。歪センサ62Aは、複数設けられてもよい。歪センサ62Aが2つ設けられる場合、例えば第1回転軸心C1まわりで180°離れた位置に配置される。検出部62には、フレキシブルプリント配線基板を介して、第1回路基板64が接続されている。第1回路基板64には、検出部62から出力される信号を処理する第1信号処理回路と、第1信号処理回路に接続される第1アンテナ部が設けられる。第1回路基板64は、基板ホルダ65を介して出力部16に取り付けられる。ハウジング28の空間Sには、第1回転軸心C1方向において第1回路基板64に対向し、第1回路基板64との間に隙間をあけて配置される第2回路基板66が設けられる。第2回路基板66は、例えば基板ホルダ67を介してハウジング28に取り付けられるが、ハウジング28に直接取り付けられていてもよい。第2回路基板66には、第1アンテナ部に対向する第2アンテナ部が設けられる。第2回路基板66には、第2アンテナ部が受信する信号を処理する第2信号処理回路と、第2アンテナ部を介して、第1アンテナ部に電力を供給する電力供給回路とが設けられる。第2回路基板66は、回路基板60に電気ケーブルを介して電気的に接続される。検出部62の出力は、第1アンテナ部を介して第2アンテナ部に無線送信される。制御部は、検出部62の出力に応じて電気モータ12を制御することが好ましい。例えば制御部は、検出部62によって検出される人力駆動力に対応する信号に応じて、人力駆動力と電気モータ12による推進力とが予め定める比率となるように電気モータを駆動する。トルクセンサは、歪センサ62Aに代えて、磁歪センサを含んでいてもよい。この場合、磁歪素子を人力駆動力の伝達経路に設けて、磁歪センサを磁歪素子の周囲に設け、第1回路基板64および第2回路基板66を省略することができる。
【0047】
図3、
図8、および、
図9を参照して、第2ハウジング32の製造方法について説明する。
第2ハウジング32の製造方法は、第1工程および第2工程を含む。
第1工程は、第2ハウジング32の製造工程を含む。第1工程において、第2ハウジング32の外周部には、外周に向かって突出する凸部32Cが形成される。凸部32Cは、2つ以上形成されることが好ましい。凸部32Cは、第2ハウジング32の第2取付面32Sから離れた位置に設けられる。凸部32Cは、クランク軸14の軸方向A1において、凸部28Aに対向する位置に設けられる。凸部28Aは、第1取付面30Sよりも第2ハウジング32側に突出するように形成される。
図3に示される凸部28Aには、凸部32Cが嵌まる凹部28Cが形成される。第1ハウジング30と第2ハウジング32とを取り付けた状態で、凸部32Cは凹部28Cに嵌まることによって、凸部32Cがハウジング28の外観に影響を与えることを抑制することができる。
【0048】
第2工程は、第2ハウジング32の第2取付面32Sの切削工程を含む。第2工程では、第2ハウジング32の凸部32Cを治具Dによって挟み込んで保持した状態で、第2取付面32Sが平面になるように、第2取付面32Sが切削される。治具Dを第2取付面32Sよりも凸部32C側に配置することによって、凸部32Cおよび治具Dは、第2取付面32Sの切削を阻害しにくい。
【0049】
(変形例)
実施形態に関する説明は、本発明に従う人力駆動車用ドライブユニットが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う人力駆動車用ドライブユニットは、例えば以下に示される変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
・
図10に示されるように、第3回転軸心C3は、第1回転軸心C1および第2回転軸心C2を含む平面から離間するように配置されてもよい。この場合も、好ましくは、第1回転軸心C1と第2回転軸心C2との最短距離L1は、第1回転軸心C1と第3回転軸心C3との最短距離L2よりも長い。ドライブユニット10をフレームに取り付けた状態で、クランク軸14の軸方向A1から見て、第3回転軸心C3は、第1回転軸心C1および第2回転軸心C2を含む平面よりも下方に設けられるように配置されてもよい。好ましくは、第1回転軸心C1は、クランク軸14の軸方向A1から見て、取付部34の孔34Aの中心を結ぶ三角形の領域R内に配置される。クランク軸14の軸方向A1から見て、取付部34の孔34Aの中心を結ぶ三角形の領域R内に、第3回転軸心C3Xが配置されていてもよい。第2回転軸心C2と第3回転軸心C3との最短距離L3は、好ましくは、第1回転軸心C1と第3回転軸心C3との最短距離L2よりも短い。
図10に示す変形例では、第1回転軸心C1に平行な方向から見た場合、第3歯車50は、電気モータ12のステータ12Aと重なるように配置されてもよい。第1回転軸心C1に平行な方向から見た場合に、第3歯車50と電気モータ12とが重なる領域に、第2歯車26の少なくとも一部が重なるように配置される。
【0051】
・
図11に示されるように、ドライブユニット10は、クランク軸14から出力部16までの人力駆動力の伝達経路に設けられる第1ワンウェイクラッチ68をさらに含んでいてもよい。
図11に示す変形例では、第1ワンウェイクラッチ68は、出力部16に設けられる。出力部16は、第1端部16Aを含む第1部分16Xと、第2端部16Bを含む第2部分16Yとに分割される。第1部分16Xと、第2部分16Yとの間に、第1ワンウェイクラッチ68が設けられる。第1ワンウェイクラッチ68は、第1回転方向にクランク軸14が回転する場合、第2部分16Yを第1回転軸心C1まわりの第1回転方向に回転させ、第2回転方向にクランク軸14が回転する場合、第2部分16Yを第1回転軸心C1まわりの第2回転方向に回転させない。第1ワンウェイクラッチ68は、ローラ式ワンウェイクラッチ、ラチェット式ワンウェイクラッチ、および、スプラグ式ワンウェイクラッチの少なくとも1つを含む。この場合、検出部62は、出力部16の第2部分16Yに設けられる。第1ワンウェイクラッチ68の一部は、第1部分16Xおよび第2部分16Yの少なくとも一方と一体に形成されていてもよい。
【0052】
・クラッチ機構20は、出力部16と減速機構18との間の回転力を伝達可能な状態と、伝達不能な状態とを切り替えるように構成されていてもよい。この場合、ドライブユニット10は、クラッチ機構20を動作させるためのアクチュエータをさらに含み、回路基板60に設けられる制御部によってアクチュエータが制御されて、クラッチ機構20の状態が切り替えられることが好ましい。クラッチ機構20は、ワンウェイクラッチに代えて、ツーウェイクラッチを含んでいてもよい。
【0053】
・減速機構18は、歯車以外によって電気モータ12の回転速度を減速する構成を含んでいてもよい。減速機構18は、プーリおよびベルトによって回転速度を減速してもよい。例えば、第3歯車50および第4歯車52をそれぞれプーリに置き換え、2つのプーリをベルトまたはチェーンによって連結してもよい。また、第1歯車24および第2歯車26をそれぞれプーリに置き換え、2つのプーリをベルトまたはチェーンによって連結してもよい。減速機構18は、遊星歯車機構を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…人力駆動車用ドライブユニット、12…電気モータ、22…出力軸、14…クランク軸、16…出力部、18…減速機構、24…第1歯車、26…第2歯車、50…第3歯車、52…第4歯車、20…クラッチ機構、48…第2ワンウェイクラッチ、28…ハウジング、60…回路基板、60A…凹部、62…検出部、68…第1ワンウェイクラッチ。