(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記刺激制御回路は、前記メモリの中に、前記ASイベント及びAPイベントについて、前記複数の心拍数又は心拍数範囲に対応する前記タイミングパラメータを含む刺激パラメータ表を保存するように構成される、請求項1のシステム。
前記刺激制御回路は、心室センシング部位における第1のセンシングイベントと、前記心室センシング部位とは異なる心室ペーシング部位における第2のセンシングイベントとの間の時間オフセットをさらに使って前記AVD値を特定するように構成される、請求項3〜5の何れか1項のシステム。
前記メモリに保存された前記タイミングパラメータはさらに様々な1日の時刻に対応し、前記刺激制御回路は、心臓の刺激中に使用するために、1日の時刻にさらに対応する前記パラメータを選択するように構成される、請求項1〜7の何れか1項のシステム。
前記メモリに保存された前記タイミングパラメータは患者の姿勢にさらに対応し、前記刺激制御回路は、心臓の刺激中に使用するために、受け取った患者の姿勢にさらに対応する前記パラメータを選択するように構成される、請求項1〜8の何れか1項のシステム。
前記刺激制御回路は、第2の1つ以上の保存されたタイミングパラメータを使って保存された第1のタイミングパラメータを特定又は更新するように構成され、前記第1のタイミングパラメータは第1の心拍数又は第1の心拍数範囲に対応し、前記第2の1つ以上の保存されたタイミングパラメータは各々、前記第1の心拍数又は第1の心拍数範囲とは異なる心拍数又は心拍数範囲に対応する、請求項3〜6の何れか1項のシステム。
前記刺激制御回路は、保存された前記一組の刺激パラメータの少なくとも一部を、固有房室間隔を使って動的に更新するように構成される、請求項1〜10の何れか1項のシステム。
前記刺激制御回路は、保存された前記一組の刺激パラメータの少なくとも一部を、心臓の刺激に対する患者の心臓又は血流力学的反応を使って動的に更新するように構成される、請求項11のシステム。
前記メモリに保存された前記刺激部位パラメータは左室のみ(LV−only)ペーシングであるか、又は両室(BiV)ペーシングであるかの描出を含む、請求項13のシステム。
前記メモリに保存された前記刺激部位パラメータは、シングルサイト左室ペーシング(SSP)であるか、又は両室(BiV)ペーシングであるかの描出を含む、請求項13又は14のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書では、心不全又はその他の心疾患患者を監視し、治療するためのシステム、機器、及び方法が開示される。システムは、心臓の信号を感知することができ、患者の生理学的又は機能的状態に関する情報を受け取る。AVD等のタイミングパラメータの推奨値を含む刺激パラメータ表は、患者の多数の生理学的又は機能的状態で作成され得る。システムは、定期的に患者の生理学的又は機能的状態を再評価し得る。治療プログラマ回路は、心臓信号入力及び刺激パラメータ表を使って、患者の状態に基づいて動的に、LV−onlyペーシングとBiVペーシングとを切り替え、シングルサイトペーシングとマルチサイトペーシングとを切り替え、又は刺激タイミングを調整し得る。HF治療は、特定された刺激部位、刺激モード、及び刺激タイミングに応じて施し得る。
【0019】
HF監視及び治療のためのシステム及び装置
図1は、例としての患者管理システム100と、患者管理システム100が動作し得る環境の一部を示す。患者管理システム100は、1つ以上のリード108A〜108Cを通じて心臓105に電気的に連結され得る携行式医療機器、例えば埋込型医療機器(IMD)110と、IMD110とリンク103を介して通信し得る外部システム120と、を含み得る。IMD110の例としては、ペースメーカ、除細動器、心臓再同期療法(CRT)機器、心臓リモデリング制御療法(RCT)機器、心臓監視若しくはループレコーダ等の診断機器、又は患者監視、その他が含まれ得るが、これらに限定されない。IMD110は、ベッドサイド又はその他の外部監視等の監視用医療機器に連結されてもよく、又はそれに置き換えられてもよい。IMD110に加えて、又はその代わりに、他の携行式医療機器を使用でき、これには皮下監視若しくは診断機器等の皮下医療機器、又は自動体外式除細動器(AED)若しくはホルタ監視;パッチ型機器、スマートウォッチ若しくはスマートアクセサリ等のウェアラブル医療機器;若しくはベッドサイド監視等の体外式監視若しくは治療用医療機器が含まれ得る。
【0020】
IMD110は電子回路を格納し得る密封容器112を含むことができ、電子回路は心臓105内の生理学的信号を感知することができ、1つ以上の治療電気パルスを心臓内等の標的領域へと、例えば1本以上のリード108A〜108Cを通じて送達し得る。患者管理システム100は、108B等の1本のみのリードを含んでいても、又は108A〜B等の2本のリードを含み得る。
【0021】
リード108Aは、IMD110に接続され得る近位端と、心臓105の右心房(RA)131内等の標的位置に設置され得る遠位端とを含み得る。リード108Aは、その遠位端に、又はその付近に配置され得る第1のペーシング−センシング電極141と、電極141に、又はその付近に配置され得る第2のペーシング−センシング電極142を有し得る。電極141及び142は、例えばリード108A内の別々の導体を介してIMD110に電気的に接続されていることができ、それによって例えば右心房の活動の感知と任意選択による心房ペーシングパルスの送達が可能となる。リード108Bは除細動リードであることができ、これはIMD110に接続され得る近位端と、心臓105の右室(RV)132内等の標的位置に設置され得る遠位端とを含み得る。リード108Bは、遠位端に配置され得る第1のペーシング−センシング電極152と、電極152の付近に配置され得る第2のペーシング−センシング電極153と、電極153の付近に配置され得る第1の除細動コイル電極154と、例えば上大静脈(SVC:superior vena cava)留置のために遠位端から離して配置され得る第2の除細動コイル電極155と、を有し得る。電極152〜155は、例えばリード108B内の別々の導体を介してIMD110に電気的に接続され得る。電極152及び電極153により、心室EGMの感知が可能となってもよく、及び任意選択により、1つ以上の心室ペーシングパルスの送達が可能となってもよく、電極154及び155により、1つ以上の心室カルディオバージョン/除細動パルスの送達が可能となってもよい。ある例において、リード108Bは、3つの電極152、154、及び155しか含んでいなくてもよい。電極152及び154は、1つ以上の心室ペーシングパルスを感知又は送達するために使用でき、電極154及び155は、1つ以上の心室カルディオバージョン又は除細動パルスの送達のために使用され得る。リード108Cは、IMD110に接続され得る近位端と、心臓105の左室(LV)134等の標的位置に設置され得る遠位端とを含み得る。リード108Cは、冠静脈洞133を通じて留置されることができ、例えば1つ以上のペーシングパルスをLVに送達できるようにするためにLV上の冠静脈内に留置され得る。リード108Cは、リード108Cの遠位端に配置され得る電極161と、電極161の付近に配置され得る他の電極162を含み得る。電極161及び162は、例えばリード108C内の別々の導体を介してIMD110に電気的に接続されることができ、それによって例えばLV EGMを感知でき、また任意選択で、LVからの1つ以上の再同期ペーシングパルスを送達できる。リード108Cの中又はそれに沿って、さらに別の電極を含んでもよい。ある例において、
図1に示されるように、第3の電極163及び第四の電極164は、リード108内に含まれ得る。幾つかの例(
図1には示さず)では、リード108A〜108Cのうちの少なくとも1本又は、リード108A〜108C以外の別のリードが皮膚表面の下に留置されることができ、少なくとも1つの心腔内又は心臓組織に、若しくはその付近になく得る。
【0022】
IMD110は、生理学的信号を感知する回路を含み得る。生理学的信号はEGM又は心臓105の機械的機能を表す信号を含み得る。密封容器112は、例えば感知又はパルス送達のための電極として機能してもよい。例えば、リード108A〜108Cのうちの1本以上からの電極は、容器筐体112と共に、例えばEGMのユニポーラ感知又は1つ以上のペーシングパルス送達のために使用され得る。リード108Bからの除細動電極は、容器筐体112と共に、例えば1つ以上のカルディオバージョン/除細動パルスを送達するために使用され得る。ある例において、IMD110は、リード108A〜108Cのうちの1本若しくは複数に設置された電極又は容器筐体112間のインピーダンスを感知し得る。IMD110は、1対の電極間に電流を注入し、その結果、同じ又は異なる対の電極間に生じる電圧を感知し、オームの法則を使ってインピーダンスを特定するように構成され得る。インピーダンスは、同じ対の電極が電流注入と電圧感知に使用され得るバイポーラ構成、電流注入のための1対の電極と電圧感知のための1対の電極が1つの共通の電極を共有し得る3極構成、又は電流注入に使用される電極が電圧感知に使用される電極とは異なる4極構成で感知され得る。ある例において、IMD110は、RVリード108B上の電極と容器筐体112との間に電流を注入し、その結果として同じ電極間に、又はRVリード108B上の異なる電極と容器筐体112との間に生じる電圧を感知するように構成され得る。生理学的信号は、IMD110に内蔵され得る1つ以上の生理学的センサから感知され得る。IMD110はまた、1つ以上の外部生理学的センサ、又はIMD110に連結され得る1つ以上の外部電極からの生理学的信号を感知するように構成され得る。生理学的信号の例としては、ECG、心内EGM、心拍数、心拍数変化、胸郭内インピーダンス、心膜内インピーダンス、動脈圧、肺動脈圧、左心房圧、RV圧、LV冠動脈圧、環状動脈血液温度、血中酸素飽和量、1種若しくは複数の心音、身体的活動若しくは労作レベル、活動に対する生理学的応答、姿勢、呼吸、体重、又は体温、その他のうちの1つ以上が含まれ得る。
【0023】
特定の例において、システム100は、リード108A〜108Cを介してIMD110につながれていない1つ以上のリードレスセンサを含み得る。リードレスの携行式センサは、生理学的信号を感知し、IMD110と無線通信するように構成され得る。幾つかの例において、IMD110はリードレス医療機器であり得る。
図1に示されるようなIMD110等の連結機器とは異なり、リードレス医療機器には電極と機器本体との間に延びるリード、ワイヤ、又はテザを必要としない。リードレス医療機器は、機器本体を標的留置部位、例えば左室、右室、左心房、若しくは左心房のうちの1つの心内膜表面又は心臓の一部の心外膜表面に位置付けるための固着又は固定機構を含み得る。リードレス医療機器は、経静脈経由で送達され、心臓の血管、例えば冠静脈内に位置付けられてもよく、そこでリードレス医療機器の1つ以上の電極は心臓の心外膜表面と直接又は間接に接触し得る。このようなリードレス医療機器の例としては、「より低いパワーモードのセンサを有するリードレス心臓ペースメーカ(LEADLESS CARDIAC PACEMAKER HAVING A SENSOR WITH A LOWER POWER MDOE)」と題する本願と共通の譲受人に譲渡されたメイル(Maile)らによる米国特許出願公開第2016/0051823号明細書において開示されたリードレス心臓ペースメーカ(LCP)を含むことができ、その全体を参照によって本願に援用する。
【0024】
これらのリードと電極の配置及び機能は、限定としてではなく、例として上述した。患者のニーズと埋込型機器の能力に応じてもこれらのリードと電極の上記以外の配置と利用も可能である。
【0025】
患者管理システム100は、動的に制御される刺激回路113を含み得る。動的制御刺激回路113は、患者の現在の生理学的又は機能的状態に動的に応じて治療パラメータを特定し得る。患者の健康状態、HFの進行、リモデリング若しくは非代償性化、心拍数、姿勢、姿勢推移、身体的活動、睡眠/覚醒状態、薬物、水分負荷、食事その他の要因等の患者の状態は、心臓の電気的及び機械的特性に影響を与え、その結果、HF治療の効率に影響を与え得る。ある例において、動的制御刺激回路113は、LV−onlyペーシングであるか若しくはBiVペーシングであるか等の刺激部位、又はSSPであるか若しくはMSPか等の刺激モードをセンサ入力に基づいて特定し得る。動的制御刺激回路113はさらに、AVD又はVVD値等の刺激タイミングをセンサ入力と、任意選択により所定の刺激パラメータ表を使って特定し得る。刺激パラメータ表は、患者の様々な身体的及び生理学的状態の下でのタイミング値(例えば、AVD値)を含む。動的制御刺激回路113は、特定された刺激部位、刺激モード、及び刺激タイミングパラメータに従って心臓に電気刺激を送達し得る。動的制御刺激回路113の例は、例えば
図2において後述する。
【0026】
外部システム120は、IMD110のプログラミングと、通信リンク103を介したIMD110からの情報の受信を可能にする。外部システム120は、ローカル外部IMDプログラマを含み得る。外部システム120は、遠隔患者管理システムを含むことができ、これは例えば離れた場所から患者の状態を監視し、又は1つ以上の治療を調整し得る。遠隔患者管理システムは、収集された患者データを評価し、警告通知を提供し、その他の考え得る機能を果たし得る。ある例において、遠隔患者管理システムは、収集された患者データ保存及び分析のための中央ハブとして機能する中央サーバを含み得る。サーバは、ユニ、マルチ、又は分散型の計算及び処理システムとして構成され得る。遠隔患者管理システムは、追加的又は代替的に、1つ以上のローカルで構成されたクライアント、又はサーバに安全に接続された遠隔クライアントを含み得る。クライアントの例としては、パーソナルデスクトップ、ノートブックコンピュータ、モバイル機器、又はその他の計算機器を含み得る。システムユーザ、例えば臨床医やその他の資格を有する医療専門家は、クライアントを使って、サーバのデータベースに構築された保存済み患者データに安全にアクセスし得る。
【0027】
通信リンク103は、誘導テレメトリリンク、無線周波数テレメトリリンク、又はインタネット接続等の電気通信リンクのうちの1つ以上を含み得る。通信リンク103は、IMD110と外部システム120との間のデータ送信を提供し得る。送信されるデータに含まれ得るものは、例えば、IMD110により取得されたリアルタイムの生理学的データ、IMD110により取得されて内部に保存された生理学的データ、治療経過データ、又は、その他のデータであって、該データは、IMDの動作状態を示すものや、IMD110が、例えばデータ取得、機器の自己診断試験、又は加療を含む1つ以上の動作を実行するように構成するためのIMD110へのプログラミング命令を示すものである。
【0028】
動的制御刺激回路113は、例えばIMD110から抽出されたデータ又は外部システム120内のメモリに保存されたデータを使って、外部システム120で実装され得る。動的制御刺激回路113の一部は、IMD110と外部システム120との間で分散され得る。
【0029】
IMD110又は外部システム120の一部は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアの何れかの組合せを使って実装され得る。IMD110又は外部システム120の一部は、1つ以上の特定の機能を実行するように構築又は構成され得る特定用途回路を使って具現され得る、又は1つ以上の特定の機能を実行するようにプログラムされ、若しくはそれ以外に構成され得る汎用回路を使って具現され得る。このような汎用回路には、マイクロプロセッサ若しくはその一部、マイクロコントローラ若しくはその一部、又はプログラマブルロジック回路若しくはその一部が含まれ得る。例えば、「比較器」は、とりわけ、2つの信号間を比較する特定の機能を実行するように構築され得る電子回路比較器を含むことができ、又は比較器は、2つの信号間の比較を行うように汎用回路の一部に命令するコードにより駆動され得る汎用回路の一部として実装され得る。IMD110に関して説明しているが、患者管理システム100は、皮下医療機器(例えば、皮下ICD、皮下診断機器)、ウェアラブル医療機器(例えば、パッチ式感知システム)、又は他の外部医療機器を備えることができる。
【0030】
図2は、例としての動的制御心臓刺激システム200を示す。動的制御心臓刺激システム200は、例えば患者の各種の生理学的又は機能的状態における心臓状態の変化を含む診断情報を提供し、心臓電気刺激のタイミング、部位、及びモード等の治療パラメータ値を推奨するように構成され得る。動的制御心臓刺激システム200は、心臓センサ回路210、患者の状態レシーバ220、治療プログラマ回路230、メモリ回路240、コントローラ回路250、及びユーザインタフェース260のうちの1つ以上を含み得る。幾つかの例において、動的制御心臓刺激システム200はさらに、心臓電気刺激等の治療を提供又は調整してもよい治療回路270を含み得る。心臓刺激システム200の少なくとも一部は、IMD110等のAMDに実装されても、又はAMDと外部システム120等の外部システムとの間で分散され得る。
【0031】
心臓センサ回路210は、心臓信号を感知するための感知増幅器を含み得る。心臓信号は、異なる心腔、例えばRA、RV、左心房(LA)、又はLVのうちの1つ以上から感知され得る。心臓信号は、心臓に洞調律等の固有調律が生じたとき、又は心臓が、動脈、心室、若しくはその他の部位における所定の速度若しくはタイミングシーケンスのペーシング等の刺激プロトコルに従って刺激された場合に感知され得る。心臓信号の例としては、体表面から非侵襲的に感知されるECG、皮下に設置された電極から感知される皮下ECG、又はリード108A〜108Cの1つ以上上の電極又は容器筐体112から感知される心内EGM等の心臓電気信号が含まれ得る。例えば、限定的ではないが、心房興奮(ASで示される)は、心房電極141又は142の1つを備えるセンシングベクトルを使って感知されることができ、右室興奮(RVSで示される)は、RV電極152〜154の1つを備えるセンシングベクトルを使って感知されることができ、左室興奮(LVSにより示される)は、LV電極161〜164の1つを備えるセンシングベクトルを使って感知され得る。
【0032】
追加的又は代替的に、心臓信号には、心臓の機械的活動又は患者の血流力学的状態を示す信号が含まれ得る。ある例において、心臓信号には、患者の心音を感知するように構成された加速度計又はマイクロフォンから感知される信号が含まれ得る。ある例において、心臓信号には、心臓又は胸郭インピーダンス信号が含まれ得る。心臓機械的信号には、血圧センサ信号又は、心臓の機械的活動若しくは血流力学的状態を示すその他の何れかのセンサ信号が含まれ得る。
【0033】
幾つかの例において、心臓センサ回路210は、LVの複数の部位等、心腔の異なる部位からの2つ又はそれ以上の心臓信号を同時に、又は逐次的に感知してもよい。心臓センサ回路210は、それぞれのセンシングベクトルを使って2つ又はそれ以上のLV部位からLV EGMを感知してもよい。LVセンシングベクトルの例としては、161〜164から選択された1対の電極間等のバイポーラセンシングベクトルが含まれ得る。或いは、LVセンシングベクトルは、電極161〜164の1つと、異なる心腔又は異なるリード上に位置付けられた他の電極(例えば、RVリード108B上の電極152〜155の1つ、又はRAリード108A上の電極141又は142)との間であり得る。LVセンシングベクトルの他の例としては、電極161〜164の1つと容器筐体112との間等のユニポーラセンシングベクトルが含まれ得る。
【0034】
心臓センサ回路210は検知された心臓信号を処理することができ、これには増幅、デジタル化、フィルタ処理、又はその他の信号コンディショニング作業が含まれる。処理された心臓信号から、心臓センサ回路210は信号の特徴を検出し、又は患者の心臓の状態若しくは治療効果又は刺激により誘導された併発症を示す測定を行い得る。信号の特徴の例としては、体表ECG、皮下ECG、又は心内EGMから検出され得るP波、Q波、R波、QRS複合波、又はT波等の固有の心臓活動を示す時間的又は形態学的特徴、心臓の電気刺激に応答して誘起された電気的又は機械的活動等の誘起心臓活動のタイミング及び強度が含まれ得る。強度の測定の例としては、信号振幅、信号振幅の勾配又は変化率、積分信号等の変換された生理学的信号の振幅、又はパワースペクトル密度等の周波数ドメイン測定が含まれ得る。タイミング測定の例としては、異なる心腔で感知された心臓興奮間の遅延(例えば、心房と心室との間のPRI若しくはAVI、又はRVからLVセンシング間隔)、又は異なるペーシング部位間の遅延(例えば、様々なLV部位間の感知遅延)が含まれ得る。
【0035】
患者の状態レシーバ220は、患者の長期的及び短期的な生理学的又は機能的状態に関する情報を受け取ってもよい。長期的又は短期的な患者の状態の変化は、心臓の電気的及び機械的特性並びに患者の血流力学的応答に影響を与え得る。その結果、変化する患者の状態に対処するように遅滞なく適正に調整しなければ、治療の効果は低下し得る。心臓、肺、神経、又は生化学信号等の生理学的信号は、患者の状態レシーバ220で受け取られ得る。生理学的信号の例としては、ECG、心内EGM、心拍数信号、心拍数変動信号、心血管圧信号、心音信号、呼吸信号、胸郭内インピーダンス信号、呼吸音信号、若しくは血液の化学的測定又は、1つ以上のバイオマーカの表現レベルが含まれ得る。機能信号の例としては、患者の姿勢、歩き方、バランス、又は身体的活動の信号、その他が含まれ得る。センサ回路はモーションセンサ、例えば加速度計、ジャイロスコープ(1軸、2軸、又は3軸ジャイロスコープであっ得る)、磁力計(例えば、コンパス)、傾斜計、角度計、高度計、電磁追跡システム(ETS)、又は全地球測位システム(GPS)センサ、その他を使って機能的信号を感知してもよい。他の例では、機能的信号には、睡眠若しくは覚醒状態、寝返りの頻度若しくは継続時間、睡眠傾斜、又はその他の睡眠の質の指標等の睡眠状態信号に関する情報が含まれ得る。他の例において、機能的信号には、飲食物の摂取(例えば、嚥下)、咳又は呼吸検出に関する情報が含まれ得る。幾つかの例において、患者の生理学的又は機能的状態に関する情報は、電子カルテ(EMR:electronic medical record)システム等の記憶装置に保存され得る。患者の状態レシーバ220は、ユーザの入力に応答して、又は特定のイベントによりトリガされて、記憶装置から患者の状態を受け取るように構成され得る。
【0036】
幾つかの例において、患者の状態レシーバ220は、患者の既往歴、薬物摂取、入院、手術、心臓リモデリング、心不全非代償性化等の心不全悪化イベント、又はHF併存疾患に関する情報を受け取り得る。幾つかの例において、患者の状態レシーバ220は、機器埋込情報、例えば埋込型リードの位置を受け取り得る。例えば、LVリード108Cは、自由壁、前方、側方、又は後方その他の考え得るLV位置に埋め込まれ得る。LVリードの位置は、治療の効率に影響を与える可能性があり、刺激部位、モード、及びタイミングパラメータの特定に使用され得る。幾つかの例において、患者の状態レシーバ220はさらに、患者の超音波心臓検査による測定、例えば駆出分画、心筋収縮性、又は大動脈血流速度、その他の血流力学的パラメータ又はその他の臨床診断を受け取り得る。
【0037】
治療プログラマ回路230は、患者の状態レシーバ220から受け取った患者の特定の生理学的又は機能的状態における心臓状態の変化に関する診断を発生させ、例えば心臓電気信号のタイミング、部位、及びモードを含む治療パラメータ値を推奨し得る。治療プログラマ回路230は、マイクロプロセッサ回路の一部として実装されることができ、これは専用プロセッサ、例えばデジタル信号プロセッサ、特定用途集積回路(ASIC)、マイクロプロセッサ、又は身体的活動情報を含む情報を処理するためのその他の種類のプロセッサ等であり得る。代替的に、マイクロプロセッサ回路は、本明細書に記載の機能、方法、又は技術を実行する命令セットを受け取って実行してもよい汎用プロセッサであり得る。
【0038】
治療プログラマ回路230は、1つ以上のその他の回路又はサブ回路を備える回路群を含むことができ、該回路群は、PRI/AVI推定回路235、刺激部位選択回路231、刺激モードセレクタ232、及び刺激タイミング調整回路233のうちの1つ以上を含む。これらの回路は、単独で、又は組み合わせて、本明細書に記載の機能、方法、又は技術を実行し得る。ある例において、回路群のハードウェアは、特定の作業を実行するように不変的に設計され得る(例えば、ハードワイヤード)。ある例において、回路群のハードウェアは、可変的に接続された物理的コンポーネント(例えば、実行ユニット、トランジスタ、単信回路等)を含むことができ、これには特定の動作の命令を符号化するように物理的に(例えば、磁気的に、電気的に、不変質量粒子の可動的設置等により)改変されたコンピュータ可読媒体が含まれる。物理的コンポーネントの接続において、ハードウェア構成要素の基本的な電気特性は、例えば絶縁体から導体へ、又はその逆へ変更される。命令により、埋め込まれたハードウェア(例えば、実行ユニット又はローディングメカニズム)が可変的な接続を介してハードウェア内の回路群の、動作時に特定の動作の一部を実行するためのメンバを作ることが可能となる。したがって、コンピュータ可読媒体は、機器が動作中である場合に回路群のメンバのその他のコンポーネントに通信可能に連結される。ある例において、物理的コンポーネントの何れも、複数の回路群の複数のメンバの中で使用され得る。例えば、動作中、実行ユニットはある時点で第1の回路群の第1の回路で使用され、別の時点では第1の回路群の第2の回路により、又は第2の回路群の第3の回路により再使用され得る。
【0039】
刺激部位選択回路231は、受け取った患者の状態に応じてペーシング対象の心腔を特定するように構成され得る。ある例において、刺激部位選択回路231は、LV−onlyペーシングかBiVペーシングかを選択し得る。BiVペーシングは、LVとRVの両方を同時に、又は指定された時間オフセットで逐次的に刺激することを指す。患者の中には、BiVペーシングのほうが、LVのみを刺激するように構成されたLV−onlyペーシングよりよい心同調性及び心筋収縮性を提供し得るものがある。しかしながら、患者の生理学的又は機能的状態の変化(例えば、心拍数増大、又は仰臥位から立位への姿勢推移)によって、AV状態、心室収縮性、又はその他の心特性が変化することがあり得る。適正な治療効果を保持するために、他の治療調整のほかに、ペーシング対象心腔を切り替える必要があり得る。刺激部位選択回路231は、患者の状態の変化に応答して刺激部位評価を開始し、LV−onlyペーシングかBiVペーシングかを、心拍数の増加及びAV導通異常の指標、例えばPRI若しくはAVIの延長又はPRI若しくはAVIの不規則性の増大等に基づいて特定し得る。患者の状態の変化に対応するためにLV−onlyペーシングかBiVペーシングの何れかの刺激部位を特定する例について、例えば
図6において後述する。
【0040】
刺激モード選択回路232は、シングルサイトペーシング(SSP)かマルチサイトペーシング(MSP)かを、受け取った患者の状態に従って特定するように構成され得る。MSPは、1つ以上の心腔又は心腔の何れかを取り囲む組織の内部の、又はその心外膜表面上の2つ又はそれ以上の部位で行われ得る。MSP中、パルストレインは2つ又はそれ以上の心臓部位に同時に、又は心周期の、感知された、又はペーシングされた時間間隔値より小さい心室間遅延を設けて逐次的に送達され得る。
【0041】
ある例において、刺激モード選択回路232は、患者の状態の変化に応答して刺激モード評価を開始し、RV部位から、LV電極161〜164に対応するもののような候補となる各種のLV部位までに測定した心室間間隔を使って、2つ又はそれ以上のLV部位におけるSSPペーシングであるかMSPペーシングであるかを特定し得る。心室間間隔は、RV及び各種のLV部位との間の非同期の程度を表す。刺激モード選択回路232は、候補となる複数のLV電極を通じてスキャンし、患者の状態により示される閾値等の特定の条件を満たす、対応する心室間間隔を有するLV部位を識別して、候補の電極の識別に基づいてSSP又はMSPを選択し得る。患者の状態の変化に対処するためにSSPかMSPかの刺激モードを特定する例は、例えば
図7において後述する。
【0042】
刺激タイミング調整回路233は、刺激タイミングパラメータ(例えば、AVD、VVD、又はIL VD)を受け取った患者の状態に応じて特定するように構成され得る。刺激タイミングパラメータは、心臓興奮のタイミングシーケンスを規定し、治療の効力と患者の血流力学的応答に影響を与え得る。ある例において、刺激タイミング調整回路233は、受け取った患者の状態の下でのPRI又はAVIを使ってAVDを特定し得る。前述のように、PRI又はAVIは、患者の様々な生理学的又は機能的状態の下で変化し得る。PRI又はAVIは、患者の特定の状態の下で感知された心臓信号から直接測定され得る。或いは、PRI又はAVIはペーシング中に動的に推定されることができ、例えばPRI/AVI推定回路235により提供される。
【0043】
AVDは、心房センシング(AS)又は心房ペーシング(AP)興奮からRV興奮センシング(RVS)の間の間隔と、AS又はAPからLV興奮センシング(LVS)の間の間隔の一時結合として特定され得る。代替的に、患者の様々な状態の下でのAVD値が動的に創出されてメモリ回路240内に記憶され得る。図表により、AVD値は下記の
図3A〜
図3Bに示されるような刺激パラメータ表にまとめられてもよい。刺激タイミング調整回路233は、メモリ回路240に連結され、受け取った患者の状態を刺激パラメータ表から探し、その患者の状態に対応する推奨AVDを明示し得る。刺激タイミング調整回路233は、当てはまる表項目に、患者がその状態にあるときは必ず切り替えることによって動的AVD調整を実行し得る。ある例において、AVDは心拍ごとに調整され得る。患者の状態により示される刺激パラメータ表を使用してAVDを調整する例は、例えば
図3及び
図4において後述する。
【0044】
PRI/AVI推定回路235は、ペーシング中にPRI又はAVIを動的に特定するように構成され得る。PRI/AVI推定回路235は、刺激部位選択回路231、刺激モード選択回路232、又は刺激タイミング調整回路233のうちの1つ以上に連結され得る。回路231〜233は、動的に特定されるPRI又はAVIを使って刺激パラメータ表を更新し、LV−onlyペーシングかBiVペーシングかを特定し、又はSSPかMSPかを特定してもよい。
【0045】
PRI/AVI推定回路235は、
図5に関して後述するように、偽性融合収縮に対応するAVDとPRI又はAVIとのオフセットを、例えば試験プロセスを通じて測定するように構成され得る。オフセットは、将来使用するために保存され得る。患者の生理学的又は機能的状態の変化が検出されると、PRI又はAVIは、偽性融合収縮につながるAVDと保存されたオフセットの組合せを使って推定され得る。そのため、PRI又はAVIは、心室ペーシングを中断せずに推定され得る。ペーシング中のPRI又はAVIの動的特定の例は、例えば
図5において後述する。
【0046】
治療回路270は、治療プログラマ回路230により生成され、推奨されるパラメータ値に応じて治療を生成するように構成され得る。治療は、108A〜108Cの1本以上のリードと、それぞれに取り付けられた電極とを介してペーシング部位に送達される電気刺激を含み得る。治療回路270は、LV−onlyペーシング又はBiVペーシングを行うように構成され得る。追加的又は代替的に、治療回路270は、1つの心臓部位を刺激するためのSSP、又は同じ心周期内で心臓の2つ又はそれ以上の部位を刺激するためのMSPを発生させるように構成され得る。ある例において、MSPはLV中に提供され得る。LV MSPはユニポーラペーシング構成を有してもよく、この場合、1つの電極(例えば、陰極)だけがLV電極であり、他方の電極(例えば、陽極)はIMD容器筐体112である。他の例において、真性双極構成を使用でき、この場合、陰極と陽極の両方がLV電極である。また別の例では、拡張バイポーラ構成を使用でき、この場合、1つの電極(例えば、陰極)がLV電極であり、他方の電極(例えば、陽極)は、例えば電極141又は142の一方等のRA電極、又は電極152〜155のうちの1つ等のRV電極である。他の例において、3極構成を使用でき、これには陰極として一緒に使用される2つのLV電極又は、陽極として一緒に使用されるRA及びRV電極から選択されるような2つの電極が関わり得る。幾つかの例において、1つ以上のLV電極は、1つ以上のLVリード、カテーテル、又はつながれていないペーシングユニットの中に分散され得る。
【0047】
幾つかの例において、治療回路270は、神経組織等の非心臓組織の電気刺激又は、カルディオバージョン療法、除細動療法、又は組織若しくは器官への薬剤送達を含めた薬物療法等、他の種類の治療を開始又は調整し得る。幾つかの例において、治療回路270は既存の治療を変更し、例えば刺激パラメータ又は薬剤投与量を調整し得る。
【0048】
コントローラ回路250は、治療プログラマ回路230、メモリ回路240、治療回路270の動作と、これらのコンポーネント及びそれぞれのサブコンポーネント間のデータフロー及び命令を制御し得る。ある例において、コントローラ回路250は、刺激パラメータ表を更新し得る。刺激パラメータ表は、定期的に、又はトリガイベントに応答して更新され得る。幾つかの例において、コントローラ回路250は、表更新傾向等、表更新履歴に応じた頻度で刺激パラメータ表を更新することができ、それによって次の更新は過去の傾向に応じて予定され得る。刺激パラメータ表の作成と更新の例については、例えば
図4において後述する。コントローラ回路250はさらに、治療回路270を制御して、HF治療を選択された刺激部位、刺激モード、及び刺激タイミングパラメータに応じて施し得る。
【0049】
ユーザインタフェース260は、システムのユーザが電気刺激のため又は心臓信号感知のために使用されるパラメータをプログラムできるようにする入力デバイスを含み得る。入力デバイスの例としては、キーボード、オンスクリーンキーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、タッチスクリーン、又はその他のポインティング若しくはナビゲーションデバイスが含まれ得る。入力デバイスは、システムのユーザがHF治療の自動プログラミング、例えば患者の特定の状態の下での刺激部位、刺激モード、及び刺激タイミングパラメータの自動特定等をアクティベートできるようにしてもよい。入力デバイスはまた、システムのユーザが自動的に特定された治療プログラミングを確認し、拒絶し、又はそれ以外に変更できるようにしてもよい。
【0050】
ユーザインタフェース260は、自動的に特定された刺激部位、刺激モード、及び刺激タイミングパラメータ等の治療プログラミングを表示するためのディスプレイを含み得る。出力ユニット230は、情報のハードコピーを生成するための印刷装置を含み得る。情報は、表、チャート、傾向、略図、又は他の何れかの種類のテキスト、表、若しくはグラフによる提示フォーマットで提示され得る。表示されるその他の情報としては、心臓センサ回路210から感知される心臓信号、感知された心臓信号から導出される信号の特徴若しくは測定値(例えば、PRI又はAVI)、患者の状態レシーバ220から受け取られる患者の生理学的若しくは機能的状態の情報、又はリードインピーダンスや完全性等の装置状態情報、バッテリの残りの寿命等のバッテリ状態、又は心臓刺激閾値、又は1つ以上の心臓部位での刺激に伴う併発症等が含まれ得る。
【0051】
患者の状態により示されるペーシングの最適化
図3A〜
図3Bは、刺激パラメータ表の例を示しており、これには患者の各種の生理学的及び身体的状態における刺激タイミングの推奨値が含まれる。状態の例としては、姿勢(例えば、仰臥位、座位、立位、その他の姿勢、又は姿勢推移)、歩行、ランニング、睡眠、1日の時刻(例えば、日中、夜間、又は1日の中の特定の時間帯)、食事、水分負荷、薬物摂取、心拍数、心拍数変化、不整脈イベント(例えば、心房細動、心室頻脈、心室期外収縮、術後不整脈)、心房興奮モード(例えば、心房ペーシング又は心房センシング)、その他が含まれ得る。本発明者らは、前記状態が個々に、又は組合せて、心臓組織の特性及び患者の血流力学に影響を与え得ることを認めた。その結果、ある状態の下で計画された治療は、異なる状態の下では同等に有効ではない場合がある。患者の異なる状態では異なるAVD値が推奨されて、所望の治療効果と患者の予後が達成されるようにしてもよい。
【0052】
図3Aに示される表300と
図3Bに示される表350は各々、多次元アレイ、関連付けマップ、又はメモリ回路240に保存するためのその他のデータ構造として実現され得る。例えば、限定ではないが、表300は、特定の心拍数(HR)310、姿勢320、及び心房興奮モード330等の刺激タイミング値、例えばAVD値を含んでいる。HR 310は、複数のHR範囲に分類されることができ、姿勢320は仰臥位、座位、又は立位の姿勢のうちの1つ以上を含むことができ、心房興奮モード330は、心房センシング(AS)や心房ペーシング(AP)等の1つ以上を含み得る。ASのためのAVDを以下、AVDセンシングと呼び、APのためのAVDを以下、AVDペーシングと呼ぶ。表300の各項目には、対応する患者の状態での推奨AVD値を含み得る。例えば、表項目301は、60〜70bpmの範囲に含まれる心拍数と立位の姿勢に対応する、AVD
*で示される推奨AVDペーシングを含み得る。AVD
*が治療回路にプログラムされると、心房ペーシングの後、AVD期間内に固有の心室興奮が検出されなければ、心室ペーシングパルスはAVD
*のオフセットで送達され得る。幾つかの例において、表300は、患者の姿勢に関係なく、特定の心拍数(HR)310及び心房興奮モード330での刺激タイミング値(例えば、AVD値)を含み得る。換言すれば、姿勢320は表300から取り除かれてもよい。
図3Bに示される表350は、特定のHR 310、1日の時刻340、及び心房興奮モード330等の刺激タイミング値、例えばAVD値を含んでいる。非限定的な例として、
図3Bに示されるように、1日の時刻340は日中と夜間を含み得る。表350の各項目は、対応する患者の状態での推奨AVD値を含み得る。例えば、表項目302は、夜間の60〜70bpmの範囲に含まれる心拍数に対応する、AVD
*で示される推奨AVDペーシングを含む。ある例において、1日の時刻340は24時間の1日の中の様々な時刻を含み得る。各種の例において、表300又は350は、他の状態を含めて補足され得る。例えば、表300には1日の時刻340を含めることができ、又は表350には患者の姿勢320に関する情報を含めてもよい。本発明者らは、HR 310、姿勢320、心房興奮モード330、及び1日の時刻340を含むがこれらに限定されない患者の状態の様々な組合せ又は順列が表300又は350と同様の刺激パラメータ表として実施されることを想定されており、これも本明細書の範囲に含まれる。
【0053】
各種の例において、表300又は350の少なくとも幾つかの項目は追加的又は代替的に、AVD以外の刺激タイミングパラメータの推奨値を含み得る。ある例において、表項目は、心拍数、姿勢、及び心房興奮モードの、対応する患者の状態の下での推奨RV−LV遅延(VVD)を含み得る。VVDは、システムのユーザにより選択された、又は刺激部位選択回路231により特定された等のBiVペーシング又はCRT療法のための心周期内のLVペーシングパルスとRVペーシングパルスとの間のオフセットを表す。幾つかの例において、VVDはゼロに設定して、LVペーシングとRVペーシングが同時に行われるようにすることが可能である。他の例では、少なくとも幾つかの表項目は、推奨されるLV内時間オフセット(ILVD)を含み得る。ILVDは、LV MSPがシステムのユーザにより選択された、又は刺激モード選択回路232により特定された場合に、心周期内で異なるLV部位に別々に送達されるLVペーシングパルス間のオフセットを表す。LV MSPは、
図1に示されるようなLV電極161〜164のうちの2つ又はそれ以上を介して送達され得る。
【0054】
表300又は350は、刺激タイミングパラメータ以外の情報を含めて補足され得る。ある例において、表300又は350の少なくとも幾つかの項目は、追加的又は代替的に、LV−onlyペーシングであるかBiVペーシングであるかの描出等の、刺激部位に関する情報、又はSSPであるかMSPであるかの描出等の、刺激モードに関する情報を含み得る。
図2に関して前述したように、LV−onlyペーシングであるかBiVペーシングであるかの選択、又はSSPであるかMSPであるかの選択は、患者の身体的及び生理学的状態の違いによって変わり得る。補足された表300又は350はそれゆえ、様々な患者の状態における刺激部位、モード、及びタイミング値に関する総合的な治療推奨を提供する。ある例において、補足された表300又は350の項目は、刺激部位、モード、及びタイミングパラメータの1つ以上の値を含むメモリ回路240内の分類構造として構築され得る。例えば、1つの表項目は(AVD、LV−onlyペーシング)を含んでもよく、他の表項目は(AVD、BiVペーシング、VVD、MSP、ILVD)を含み得る。ある例において、表項目の1つの要素(例えば、AVD値、BiVペーシング、又はMSP)は、共通の状態を共有する多数の表項目に当てはめられ得る。例えば、座位の姿勢、AS、及び100bpmを超えるHRにより規定される状態に対してBiVペーシングが推奨される場合、BiVペーシングは、心拍数の範囲、又は心房興奮モード(AS又はAP)に関係なく、「座位」の姿勢を含むかぎり、すべての状態に対して推奨され得る。他の例では、立位の姿勢、AS、及び70〜80bpmのHRにより規定される状態に対してMSPが推奨される場合、MSPは、心拍数範囲又は心房興奮モードに関係なく、「立位」の姿勢を含むかぎり、すべての状態に対して推奨され得る。
【0055】
幾つかの例において、刺激タイミングパラメータ値の複数の表が構築され、メモリ回路240に保存されることができ、これは例えば各種の患者の状態の下でのAVD値のみを含むAVD表、各種の患者の状態の下でのVVD値のみを含むVVD表、又は各種の患者の状態の下でのILVD値のみを含むILVD表である。表は、患者の様々な生理学的又は機能的状態を含み得る。ある例において、刺激タイミング調整回路233は、例えば刺激部位選択回路231を介してBiVペーシングが選択された場合に、VVD表を参照して、特定の患者の状態の下での最適なVVD値を特定し得る。他の例では、刺激タイミング調整回路233は、例えば刺激モード選択回路232を介してMSPモードが選択された場合、ILVD表を参照して、特定の患者の状態の下での最適なILVD値を特定し得る。刺激タイミング調整回路233は、刺激部位の選択及び刺激モードの選択にかかわらず、AVD表を参照し得る。
【0056】
図4A及び
図4Bは、表300又は350等の刺激パラメータ表を初期化及び更新する方法を示す。表の初期化及び更新方法は、
図2に示されるようなコントローラ回路250において、それによって実行されるように実装され得る。
図4Aのフローチャート410に示されているように、表の初期化は411から始まり、表に含めるべき患者の生理学的及び身体的状態が受け取られる。患者の状態が心臓応答及び患者の血流力学に与える影響が分析され得る。ある例において、患者の状態の影響は、患者の特定の生理学的又は機能的状態の下でのP波とR波の間隔(PRI)(例えばECG又は心内EGMから測定される)、胸郭内インピーダンス、心音、又はパルス伝達時間における、それぞれのベースライン測定値からの変化を使って評価され得る。患者の血流力学的応答又は心臓応答に対する影響を有する患者の状態は刺激パラメータ表に含まれ得る。
【0057】
412において、試験プロトコルが実行され得る。試験プロトコルは様々な患者の状態を確立すること、例えば患者に特定の姿勢を維持させること、患者の心拍数を(例えば、心房ペーシングを通じて、又は管理下での運動を通じて)特定の心拍数範囲へと誘導すること、又はその他の患者の状態を確立することを含み得る。心房センシングAS中のPRI又は心房ペーシングAP中のAVIが測定され得る。PRI又はAVIの測定は、RVセンシング(RVS)部位の1つ以上又はLVセンシング(LVS)部位における心室応答を、例えばRV電極(例えば、152〜154の1つ)を備えるRVセンシングベクトル又はLV電極(例えば、161〜164の1つ)を備えるLVセンシングベクトルを使って感知することを含み得る。RV又はLVセンシングベクトルは、陰極としてのRV又はLVセンシング電極と陽極としての装置容器112を備えるユニポーラセンシングベクトルであり得る。ある例において、412で測定されるPRI又はAVIは、AS−RVS間隔、AS−LVS間隔、AP−RVS間隔、及びAP−LVS間隔の1つ以上を含み得る。幾つかの例において、試験プロトコルは、患者の超音波心臓検査から得られた測定値又は各種の患者の状態の下でのその他の血流力学的パラメータ若しくは臨床診断等の追加の情報を取得することを含み得る。
【0058】
413において、1つ以上の刺激タイミングパラメータ、例えばAVDが、PRI又はAVI測定値を使って、又は任意選択により412で取得されたその他の情報と共に使って計算され得る。AVDセンシング及びAVDペーシングは各々、RV及びLVで測定されたPRI又はAVIの組合せを使って計算され得る。ある例において、AVDは例えば次式のような加重結合を使って特定される:
AVD=k1
*AV
R+k2
*AV
L+k3 (1)
式(1)中、AV
RはAS又はAPとRVSとの間隔を指し、AV
LはAS又はAPとLVSとの間隔を指す。ある例において、RVとLVとの間の心室間間隔、Δ
LV=AV
L−AV
Rがゼロ未満であると、AVDはAV
Lのみを使って計算されることができ、すなわち、AVD=k2
*AV
Lである。ある例において、k2は約0.5〜1である。Δ
LRがゼロと等しいかそれより大きい場合、AVDは上式(1)で与えられるようにAV
RとAV
Lの加重結合として計算され得る。重み係数k1及びk2とスカラバイアスk3は、LV及びRVセンシングの同調性に応じて選択され得る。ある例において、重み係数は、患者集団からのペーシングデータ、超音波心臓検査から得られるデータ、又はその他の臨床診断を使って演繹的に特定され得る。ある例において、重み係数は、異なる心室刺激部位(LV−only又はBiV)について、又は異なるLVリード位置(例えば、前方LV又は自由壁)について、それぞれ生成され、そのAVDを計算するために使用され得る。
【0059】
幾つかの例において、AVDの計算はさらに、心拍スクリーニングプロセスを含み得る。より信頼できるAVDセンシングを得るためには、AS中に感知基準を満たすのに十分な数(例えば、3〜20)のLVS又はRVS心拍が必要である。同様に、より信頼できるAVDペーシングを得るために、AP中に感知基準を満たすのに十分な数(例えば、3〜20)のLVS又はRVS心拍が必要である。ある例において、複数のPRI又はAVI測定に関する中央値、平均、又はその他の中心傾向を使って、例えば式(1)に応じてAVDが特定される。幾つかの例において、特定の時間又は数の心周期内に十分なLV又はRVS心拍がない場合、AVDペーシングは、AVDセンシングを使って特定できる。ある例において、Δ
LRがゼロミリ秒(msec)より大きい場合、AVDセンシングは、AVDセンシングより約60msec長いものとして特定され得る。Δ
LRがゼロmsecと等しいか、それより短い場合、AVDセンシングは、AVDセンシングより約45msec長いものとして特定され得る。
【0060】
特定されたAVDは、このようにRVS又はLVSに依存する。幾つかの例において、RV又はLVセンシング電極はRV又はLVペーシング電極と異なっていてもよい。AVDはRV又はLVセンシング電極からの測定値を使って推定されるため、推定AVDは、異なるRV又はLFペーシング電極に適用されてペーシング治療を施す場合は最適でないことがあり、これは少なくとも、センシング電極部位及びペーシング電極部位における心臓興奮間の時間オフセット(Δ
SP)による。
図1を参照すると、限定ではなく例として、センシング電極LV1 161はAV
L(AS又はAPとLVSとの間隔)を測定するために使用され、LVペーシングは、異なる電極LV3 163及び容器112を備えるLVペーシングベクトルを介して行われる。電極LV1とLV3の間のセンシング−ペーシング電極時間オフセットΔ
SPは、既知の患者の状態の下で測定され、他の患者条件に適用され得る。限定ではなく例として、Δ
SPは、比較的容易に管理可能な患者の状態の下で測定されることができ、例えば患者が伏臥位にあるときの心拍数下限(LRL)でのペーシングである。測定されたΔ
SPは、将来使用するためにメモリ回路240に保存され得る。
【0061】
414において、RV又はLVセンシング電極がRV又はLVペーシング電極と異なると特定された場合、415において、そのΔ
SPが特定されたときのように容易に管理可能な状態とは異なる状態を含めた様々な患者の状態でのAVDが、センシング−ペーシング電極時間オフセットΔ
SPを加えることによって補正され得る。416において、補正されたAVDが刺激パラメータ表に追加され得る。414で同じ心室電極が心室センシングと心室ペーシングに使用される場合、AVD補正は不要であり、416において、413で計算されたAVDが刺激パラメータ表に追加され得る。幾つかの例において、AVDが計算されたときの状態、例えば
図3A〜
図3Bに示されるようなHR範囲、患者の姿勢、心房興奮モード(例えば、AS又はAP)、又は1日の時刻は、それぞれの相互作用する限界に照らしてスクリーニングされ得る。例えば、特定の患者の状態の下で、AVDは、ペーシング速度が心拍数下限(LRL)及び/又は最大トラッキング速度(MTR)により限定される場合に特定され得る。相互作用する限界が、試験プロトコルを実行するシステム又は機器にプログラムされ得る。このような患者の状態に関する相互作用する限界は、表の初期化における試験プロトコルの実行中及び表中のAVD値による電気刺激治療中の安全な動作にとって有利であり得る。
【0062】
図4Bは、方法410を使って作られた表等の刺激パラメータ表を更新する方法を示すフローチャート420である。表は、毎分、数分ごと、1時間ごと、毎日、指定の日数ごと、毎週、毎月等、特定の間隔で定期的に更新され得る。幾つかの例において、表更新の頻度は、例えば表更新の傾向等、表更新履歴を使って特定され得る。すると、次回の表更新はこれまでの傾向に応じて予定され得る。例えば、次回の表更新は、患者の病歴における期間(例えば、1年)内で最も短い更新周期(すなわち、2回の連続する更新間の時間間隔)又はそれ以下で予定され得る。
【0063】
刺激パラメータ表の更新は、表全体又は、表の一部、例えば1つの特定の状態(例えば、立位の姿勢)に対応する表項目等について実行され得る。表更新の頻度は、表の異なる部分ごとに異なっていてもよく、それによって表の1つの部分はその表の他の部分より頻繁に更新され得る。ある例において、より一般的に発生する状態、例えばより低いHR範囲(例えば、<100bpm)に対応する表項目は、より高い心拍範囲(例えば、>100bpm)等、稀な、又はより実現されにくい状態に対応する表項目より頻繁に更新され得る。
【0064】
追加的又は代替的に、表更新は特定のイベントによりトリガされ得る。421において、表更新のためのトリガイベントが監視され、これには例えば、患者が特定の期間に受けたペーシング治療の数(例えば、パーセンテージ)、心不全の悪化又は非代償性化イベント、CRTに対する血流力学的応答の傾向、心拍数、姿勢、身体的活動、心音、固有心拍の発生、推奨AVDの突然の大きな変更、その他が含まれる。ある例において、表更新頻度は、特定の患者の状態の下でのPRI又はAVIの変動に基づいて特定され得る。ある例において、ちらばり、標準偏差、範囲、又はその他の広がりの尺度が、特定の患者の状態の下での複数のPRI又はAVIから計算され得る。PRIの変動がより高いこと、例えば特定の閾値を超えた時等は、特定の患者の状態の下でAV導通が不規則であり、心機能がより十分でないことを示し得る。これは、刺激パラメータ表の評価と更新をトリガし得る。
【0065】
422において、1つ以上のトリガイベントが発生し、特定の条件(例えば、閾値を超えた、又は特定の値範囲内に含まれる)を満たした場合、423において、患者の生理学的又は機能的状態が評価され、それらが患者の心臓又は血流力学的応答に引き続き影響を与えるか否かが特定され得る。影響に応じて、表から既存の状態が削除されるか、又は新しい状態が表中に組み込まれてもよい。424において、AS中のPRI又はAP中のAVIが更新された状態の下で再測定され、AVDは、又は他のタイミングパラメータと共に、例えば
図4Aに関して前述したものと同様の方法を使って特定され得る。
【0066】
AVD又は他の刺激タイミングパラメータ等の表項目の更新には、RV又はLV活動(それぞれ、RVS又はLVS)を感知し、PRI又はAVIを測定する必要がある。従来、これには、心室ペーシング療法を少なくとも一時的に中断する必要があり得る。これは、短時間ペーシングを停止しただけでも、患者の予後にとって有害となり得るため、不利なことがある。表更新中にペーシングが確実に中断されないようにするために、動的にPRI又はAVIを特定する方法を使用でき、例えばこれは、
図5において後述するものである。ペーシング療法を中断せずに、又はそれ以外に継続中のペーシング療法を損なわずに、PRI又はAVIが推定されることができ、刺激パラメータ表が更新され得る。
【0067】
ペーシング中のPRI/AVI特定
図5は、ペーシング中にPRI又はAVIを動的に特定する方法500を示す。方法500は、システム200内に実装され、それによって実行され得る。PRI又はAVIの動的特定は、心室ペーシング療法を中断せずに刺激パラメータ表を更新し、LV−onlyペーシングとBiVペーシングとを切り替え、SSPとMSPとを切り替え、又はPRI若しくはAVIの推定を必要とするその他のプロセスのために使用され得る。
【0068】
方法500は、管理された患者の状態、例えば既知の心拍数範囲と既知の姿勢の下でのオフセット(Δ
I−PF)を推定するためのプロセス510を備える。オフセットΔ
I−PFは、偽性融合収縮に対応するAVDとPRI又はAVIとの間で特定され得る。偽性融合収縮は、固有心脱分極、例えばECG上の自発性QRS複合波又は心室EGM上の固有心室性収縮上に無効なペーシング刺激が重ねられた場合に発生する、心臓脱分極の心電図表現である。偽性融合は、固有心拍数がペーシングレートに非常に近い場合に発生する。AVDに従って送達されるRVペーシングスパイク又はLVペーシングスパイク等のペーシング刺激は、それが一時的に自発性QRSの絶対不応期内に発生するため不十分である。
【0069】
511において、AVDは徐々に調整されることができ、心室ペーシングは調整されたAVDに応じて行われ得る。ある例において、AVDはPRIより短い小さい値に合わせて初期化され、約5〜10msec等の特定の刻み幅で徐々に増大され得る。他の例では、AVDはPRIを超える大きい初期値から初めて、特定の刻み幅で徐々に減少され得る。心室ペーシングは、徐々に調整されるAVD値の各々で行われ得る。心室ペーシングに応答して誘起された心臓応答は、ECGから、心内EGMから、又は生理学的センサ信号から監視され得る。ある例において、誘起された心臓応答は、RV又はLVセンシング電極により感知される心臓電気信号の形態を含む。他の例では、誘起された心臓応答は、心音信号又はペーシングに対する心臓の機械的応答を表す信号の形態を含む。偽性融合は、固有QRS複合波又は固有の心室形態に重ねられたペーシングスパイクを有する特徴的な形態を有する。513において、形態学上、偽性融合が発生したことを示している場合、重ねられた波形の形態から、個別化されたオフセットΔ
I−PFがAVD
PFと固有PRIとの間の間隔として計算されることができ、すなわちΔ
I−PF=PRI−AVD
PFであり、式中、AVD
PFは偽性融合を誘発したAVDを表す。513で偽性融合が発生していなければ、511でAVDの調整が続けられ得る。幾つかの例において、オフセットΔ
I−PFは約10〜15msecの範囲であり得る。オフセットΔ
I−PFは、将来使用するためにメモリ回路240に保存され得る。
【0070】
PRI又はAVIの動的特定のプロセスは520から始めることができ、ここで、ペーシング療法(例えば、CRT又はMSP)中のPRI推定が周期的にトリガされ得る。PRI推定をトリガするイベントとしては、刺激パラメータ表の更新、刺激部位の更新(例えば、LV−onlyペーシングとBiVペーシングとの切り替え)、又は刺激モードの更新(例えば、SSPとMSPとの切り替え)、その他が含まれ得る。530において、現在の、継続中のペーシング療法のAVDは、例えば約5〜10msecの特定の刻み幅で徐々に増大され得る。心室ペーシング形態はペーシング中に、徐々にAVDを長くしながら監視され得る。540において、偽性融合の形態が検出された場合、AVD調整プロセスが終了されることができ、偽性融合に対応する現在のAVD、すなわちAVD
PF’が記録され得る。AVD
PF’は現在の患者の状態の下で測定されることに留意されたく、これはAVD
PF及びΔ
I−PFが513で特定されたときの患者の状態とは異なり得る。550において、現在の患者の状態での推定PRI、すなわちePRIは、AVD
PF’と保存されたオフセットΔ
I−PFを使って以下のように推定され得る:
ePRI=AVD
PF’+Δ
I−PF (2)
式(2)によるPRIの推定は、Δ
I−PFが変化する患者の状態により実質的に影響を受けないことを前提としている。530でAVD拡張は偽性融合で(この時点ではペーシング療法が依然として提供されている)に停止され、その点を一切超えないため、ペーシング療法は、PRI特定プロセス中に有効に保持できる。追加的に、事前に保存されたΔ
I−PFにより、PRI又はAVI計算のための時間も短縮され、バッテリのパワーも節約され、計算リソースも節約され得る。
【0071】
推定PRI又はAVIは、例えば式(1)によるAVD等、刺激タイミングパラメータを更新するために使用でき、又は患者の各種の生理学的若しくは機能的状態に基づいてLV−onlyペーシングとBiVペーシングとの間の刺激部位を再評価して、選択するために使用でき、これについては
図6に関して説明する。RVセンシング部位と1つ以上のLVセンシング部位との間の心室間遅延は、推定PRI又はAVIから導き出すことができる。心室間間隔は、各種の患者の状態に基づいてSSPかMSPかの刺激モードの選択を評価するために使用でき、これについては
図7において後述する。
【0072】
LV−onlyペーシングとBiVペーシングとの間の刺激部位の動的切替
図6は、LV−onlyペーシングかBiVペーシングかを特定する方法600の例を示す。方法600は、
図2に示されるように、刺激部位選択回路231において実装され、それによって実行され得る。ある例において、方法600は、心拍ごとに刺激部位(LV−onlyペーシング又はBiVペーシング)を特定するために、又は刺激部位を特定のタイミングで周期的に調整するために使用され得る。
【0073】
方法600は610から始まり、ここで患者の生理学的又は機能的状態が識別される。心拍数、患者の姿勢、身体的活動、心房興奮モード、その他の患者の状態は、LV−onlyペーシング又はBiVペーシング中の血流力学的結果に影響を及ぼし得る。620において、PRI又はAVIが測定される。PRIは体表ECGから測定されることができ、AVIは心房センシング(AS)又は心房ペーシング(AP)イベントから右室センシング(RVS)イベントまで測定され得る。ある例において、PRI又はAVIは、ペーシング療法を保持しながら、例えば方法500を使って偽性融合検出に基づいて推定され得る。630において、トリガイベントが検出される。トリガイベントとしては、患者の生理学的又は機能的状態の変化、例えば姿勢の変化、身体的活動の強さの変化、又は非代償性化イベント等の患者のHF状態の慢性的変化が含まれ得る。ある例において、トリガイベントは、患者が現在の生理学的又は身体的状態を保持しているときの心拍数の増加を含む。例えば、Y拍のうちのX回が心拍数閾値を超えた場合、刺激部位評価がトリガされ得る。ある例において、5回の連続する心拍のうちの3回が毎分100拍(bpm)の心拍カットオフを超えた場合、刺激部位評価がトリガされ得る。代替的に、630において、刺激部位評価は特定のタイミングで周期的に行われ得る。
【0074】
630で心拍基準が満たされると、640において、測定されたPRIがPRI閾値、PRI
THと比較され得る。ある例において、PRI
THはほぼ250〜270msecの範囲内である。幾つかの例において、閾値PRI
THは、超音波心臓検査のデータ又はその他の心不全診断を使って、演繹的に各種の患者の状態に対して特定され得る。PRI
THは、患者の状態に依存していてもよく、それによって、ある患者の状態でのPRI
THは、他の異なる患者の状態でのPRI
THとは異なり得る。ある例において、PRI
THは心拍数に依存していてもよい。機器の心拍数下限(LRL)でのPRI
THは、例えば約270msec等の第1の値に設定され得る。機器の最大追跡心拍数(MTR)でのPRI
THは、例えば約200msecと、それより低い値に設定され得る。LRLとMTRとの間の心拍数におけるPRI
THは、線形、区分的線形、指数的、又はその他の非線形曲線を使って200msecから270msecまでの間で内挿され得る。PRIが患者の状態により示される閾値PRI
THを超える場合、650でBiVペーシングが推奨される。
【0075】
PRIが閾値PRI
THを超えない場合、660でPRIの変動が評価され得る。変動は、ばらつき、標準偏差、範囲、又はその他の広がりの尺度を使って、特定の患者条件の下での複数のPRI又はAVIから測定され得る。660でPRI変動が患者の状態により決まるPRI変動閾値PRIvar
THを超える場合、650でBiVペーシングが推奨される。変動がより大きいPRIは、AV導通が不規則で、心機能が低下していることを示すことがあり、この場合、向上した同期心室収縮と改善された心機能を提供するために、LV−onlyペーシングよりBiVペーシングが好ましい可能性がある。PRIが実質的に長くならず(例えば、閾値PRI
THより低い)、変動がより小さい(例えば、変動閾値PRIvar
THより小さい)と、670でLV−onlyペーシングが推奨され得る。
【0076】
刺激部位選択、すなわちLV−onlyとBiVペーシングとの切替は、心拍ごとに行われ得る。代替的に、PRI及びPRI変動の測定をより信頼性の高いものとするために、PRI及びPRI変動が複数のN回の心拍について分析されることができ、Nは正の整数である。ある例において、Nは10〜20拍である。N拍は連続する心拍であり得る。代替的に、N拍は不連続であり得る。例えば、心拍は、5〜15秒ごとに感知されて、PRIが心拍から計算され、N個のPRIがN拍から計算され得る。640及び660での決定は、N回の心拍のうちの少なくともM回がPRIの延長(640で)又は変動の増大(650で)を示すことに基づき得る。ある例において、MはNの50%と等しいか、又はそれより大きい。他の例では、LV−only又はBiVペーシングの決定は、複数のN拍について評価され得る。N拍全部についてLV−onlyペーシングが推奨される場合、670ではLVが推奨される。N拍の全部についてBiVペーシングが推奨されるか、又はN拍にわたりLV−onlyペーシングとBiVペーシングの混合が推奨される場合、650ではBiVペーシングが推奨される。
【0077】
方法600は、PRI若しくはAVIの延長又は変動の増大を含むAV導通特性に基づいてLV−onlyペーシングかBiVペーシングかを特定する。方法600はさらに、感知した心室間間隔を使って刺激部位を特定し得る。心室間間隔は、LVとRVとの間の興奮遅延を表し、(1)ASとRVSとの間隔と(2)ASとLVSとの間隔との差、又は(1)APとRVSとの間隔と(2)APとLVSとの間隔との差として計算され得る。ある例において、心室間間隔が閾値(例えば、20msec)未満である場合(これは左脚ブロックがないことを示し得る)、650ではBiVペーシングが推奨される。心室間間隔が閾値と等しいか、又はそれより大きい場合(RV興奮がLV興奮より、例えば20msecを超えて実質的に遅れていることを示す)、640及び660でのPRI及びPRI変動基準が適用されて、LV−onlyペーシングかBiVペーシングかが特定される。
【0078】
幾つかの例において、LVリード位置に関する情報が、刺激部位を特定するために方法600の中に含まれ得る。リード位置は、ユーザにより提供されても、患者の状態レシーバ220を通じて受け取られてもよい。ある例において、640及び660でPRI及びPRI変動基準がBiVペーシングを推奨しているとしても、LVリードが前方位置にあれば、LV−onlyペーシングがその代わりに推奨される。
【0079】
SSPとMSPとの間の刺激モードの動的切替
図7は、SSPペーシングかMSPかを特定する方法700の例を示す。方法700は、
図2に示される刺激モード選択回路232において実装され、それによって実行され得る。ある例において、方法700は、心拍ごとに刺激モード(SSP又はMSP)を特定するため、又は刺激部位を特定のタイミングで周期的に調整するために使用され得る。
【0080】
方法700は710から始まり、そこで患者の生理学的又は機能的状態が識別される。患者の状態、例えば心拍数、患者の姿勢、身体的活動、心房興奮モード、その他は、SSP又はMSP中の血流力学的結果に影響を及ぼし得る。720において、心室間間隔が複数の候補となるLV部位{LV(i)}でそれぞれ測定され得る。その結果として得られる心室間間隔{D(i)}はそれぞれ、RVと様々なLV部位{LV(i)}との非同期の程度を表す。ある例において、RVSは、RV電極152〜154の1つを備えるRVセンシングベクトルを使って感知されることができ、LVSは、それぞれLV電極161〜164の1つを備えるセンシングベクトルを使って2つ又はそれ以上のLV部位で感知され得る。心室間間隔は、(1)ASとRVSとの間隔と(2)ASとLVSとの間隔との差として計算され得る。代替的に、心室間間隔は、(1)APとRVSとの間隔と(2)APとLVSとの間隔との差として計算され得る。例えば、特定のLV部位LV(j)について、対応する心室間間隔D(j)=AV
R−AV
L(j)であり、式中、AV
RはAS又はAPとRVSとの間の遅延を示し、AV
L(j)は、j番目のLV部位LV(j)で感知されたAS又はAPとLVSとの間の遅延を示す。ある例において、AV
R又はAV
Lは、ペーシング療法を継続中に、例えば方法500を使って偽性融合検出に基づいて測定され得る。
【0081】
730において、トリガイベントが検出される。トリガイベントには、患者の生理学的又は機能的状態の変化、例えば姿勢の変化、身体的活動の強さの変化、又は非代償性化イベント等の患者のHF状態の慢性的変化が含まれ得る。ある例において、トリガイベントは心拍数の増加を含む。Y拍のうちのX回が心拍数閾値を超えた場合、刺激部位評価がトリガされ得る。ある例において、5回の連続する心拍のうちの3回が100bpmの心拍カットオフを超えた場合、刺激モード評価がトリガされ得る。代替的に、刺激モード評価は特定のタイミングで周期的に行われ得る。
【0082】
730において心拍基準が満たされると、740において、刺激モード評価がトリガされ、LV部位{LV(i)}に対応する心室間間隔{D(i)}が各々、心室間遅延閾値D
THと比較される。ある例において、閾値D
THは様々な患者の状態について、例えば超音波心臓検査のデータ又はその他の心不全診断を使って特定され得る。閾値D
THは患者の状態に依存していてもよく、それによって、ある患者の状態での閾値D
THは、他の異なる患者の状態でのPRI
THとは異なり得る。LV部位、例えばLV(i)は、対応する心室間間隔D(i)が閾値D
THを超えた場合に、ペーシングを行うために選択され得る。例えば、閾値D
THは患者の状態に依存するため、LV部位LV(i)は伏臥位の姿勢について選択されることができ、その一方で異なるLV部位LV(j)は立位の姿勢について選択され得る。740において、2つ又はそれ以上のLV部位が心室間間隔の基準を満たす場合、760でこれらのLV部位のLV電極がMSPを送達するために選択される。1つのLV部位だけが心室間間隔基準を満たす場合、750でその部位でのLV電極を使用したSSPが推奨される。LV部位に心室間間隔基準を満たすものがない場合、750では、候補であるLV部位{LV(i)}の中から最も長い心室間間隔に対応するLV電極を使用するSSPが推奨される。
【0083】
非一時的機械可読媒体
図8は、本明細書で論じられている技術(例えば、方法論)の何れか1つ以上がその上で実行され得る、例としての機械800のブロック図を示す。この説明の一部は、LCPデバイス、IMD、又は外部プログラマの様々な部分のコンピューティングフレームワークに適用され得る。
【0084】
代替的な実施形態において、機械800は独立したデバイスとして動作しても、他の機械に接続されても(例えば、ネットワーク接続されても)よい。ネットワーク型の配置では、機械800はサーバマシン、クライアントマシン、又はサーバ−クライアントネットワーク環境の両方で動作し得る。ある例において、機械800はピア・ツー・ピア(P2P)(又はその他の分散型)ネットワーク環境のピアマシンとして機能してもよい。機械800は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ウェブアプライアンス、ネットワークルータ、スイッチ若しくはブリッジ、又はその機械で行われるべき動作を特定する命令(逐次的又はその他)を実行することのできる何れの機械であり得る。さらに、1つの機械だけが示されているが、「機械」という用語は個々に又は共同で命令群(又は複数の群)を実行して、本明細書で論じられている方法論の何れか1つ以上を実行する機械のあらゆる集合も含むと理解されるものとし、これは例えばクラウドコンピューティング、SaaS(software as a service)、その他のコンピュータクラスタ構成である。
【0085】
本明細書に記載されているように、例は、ロジック若しくは複数のコンポーネント又はメカニズムを含むことができ、又はそれによって動作され得る。回路群は、ハードウェア(例えば、単信回路、ゲート、ロジック等)を含む有形の実体に実装される回路の集合である。回路群のメンバ構成は、時間及び基本となるハードウェアの可変性に対して柔軟であり得る。回路群は、単独で、又は組合せにより、動作時に特定の動作を実行し得るメンバを含む。ある例において、回路群のハードウェアは、特定の動作を実行するように不変的に設計されてもよい(例えば、ハードワイヤード)。ある例において、回路群のハードウェアは可変的に接続された物理的コンポーネント(例えば、実行ユニット、トランジスタ、単信回路等)を含むことができ、これには、特定の動作の命令を符号化するために物理的に(例えば、磁気的に、電気的に、不変質量粒子の可動的設置等により)改変されたコンピュータ可読媒体が含まれる。物理的コンポーネントの接続において、ハードウェア構成要素の基本的な電気特性は、例えば絶縁体から導体へ、又はその逆へ変更される。命令により、埋め込まれたハードウェア(例えば、実行ユニット又はローディングメカニズム)が可変的な接続を介してハードウェア内の回路群の、動作時に特定の動作の一部を実行するためのメンバを作ることが可能となる。したがって、コンピュータ可読媒体は、機器が動作中である場合に回路群のメンバのその他のコンポーネントに通信可能に連結される。ある例において、物理的コンポーネントの何れも、複数の回路群の複数のメンバの中で使用され得る。例えば、動作中、実行ユニットはある時点で第1の回路群の第1の回路で使用され、別の時点では第1の回路群の第2の回路により、又は第2の回路群の第3の回路により再使用され得る。
【0086】
機械(例えば、コンピュータシステム)800は、ハードウェアプロセッサ802(例えば、中央処理ユニット(CPU)、グラフィクス処理ユニット(GPU)、ハードウェア処理コア、又はそれらの何れかの組合せ)、メインメモリ804及びスタティックメモリ806を含むことができ、それらの幾つか又は全部はインタリンク(例えば、バス)808を介して相互に通信してもよい。機械800は、表示ユニット810(例えば、ラスタディスプレイ、ベクトルディスプレイ、ホログラフィディスプレイ等)、英数字入力装置812(例えば、キーボード)、及びユーザインタフェース(UI)ナビゲーション装置814(例えば、マウス)をさらに含み得る。ある例において、表示ユニット810、入力装置812、及びUIナビゲーション装置814は、タッチスクリーンディスプレイであり得る。機械800は、それに加えて、記憶装置(例えば、ドライブユニット)816、信号生成装置818(例えば、スピーカ)、ネットワークインタフェースデバイス820、及び1つ以上のセンサ821、例えば全地球測位システム(GPS)センサ、コンパス、加速度計、又はその他のセンサを含み得る。機械800は、出力コントローラ828、例えばシリアル(例えば、USB)、パラレル、又はその他のワイヤード若しくはワイヤレス(例えば、赤外線(IR)、近距離無線通信(NFC)等)接続を含み、1つ以上の周辺機器(例えば、プリンタ、カードリーダ等)と通信し、又はそれを制御してもよい。
【0087】
記憶装置816は、機械可読媒体822を含むことができ、その上に、本明細書に記載の技術又は機能の何れか1つ以上を具現化し、又はそれによって利用されるデータ構造又は命令824(例えばソフトウェア)の1つ以上の群が保存される。命令824はまた、機械800によりその実行中に、完全に、又は少なくとも部分的に、メインメモリ804の中、スタティックメモリ806の中、又はハードウェアプロセッサ802の中にあり得る。ある例において、ハードウェアプロセッサ802、メインメモリ804、スタティックメモリ806、又は記憶装置816の1つ又は何れかの組合せは、機械可読媒体を構成してもよい。
【0088】
機械可読媒体822は、1つの媒体として示されているが、「機械可読媒体」という用語は、1つ以上の命令824を保存するように構成された1つの媒体又は複数の媒体(例えば、中央集中型又は分散型データベース、及び/又は関連するキャッシュ及びサーバ)を含み得る。
【0089】
「機械可読媒体」という用語は、機械800により実行され、機械800に、本発明の技術の何れか1つ以上を実行させる命令を保存し、符号化し、若しくは担持できる、又はそのような命令により使用される、若しくはそれに関連するデータ構造を保存し、符号化し、若しくは担持できるあらゆる媒体を含み得る。非限定的な機械可読媒体の例としては、ソリッドステートメモリ並びに光及び磁気媒体が含まれ得る。ある例において、質量機械可読媒体は、不変(例えば、静止)質量を有する複数の粒子を有する機械可読媒体を備える。したがって、質量機械可読媒体は、一時的伝搬信号ではない。質量機械可読媒体の具体的な例としては、半導体メモリデバイス(例えば、EPROM(Electrically Programmable Read−Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory))やフラッシュメモリデバイス等の不揮発性メモリ、内部ハードディスクやリムーバブルディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク、並びにCD−ROM及びDVD−ROMディスクが含まれ得る。
【0090】
命令824はさらに、様々な伝送プロトコル(例えば、フレームリレー、IP(internet protocol)、TCP(transmission control protocol)、UDP(user datagram protocaol)、HTTP(hypertext transfer protocol)、等)の何れかを利用して、ネットワークインタフェースデバイス820を介して伝送媒体を使って通信ネットワーク826上で送受信され得る。例示的な通信ネットワークとしては、LAN(local area network)、WAN(wide area network)、パケットデータネットワーク(例えば、インタネット)、携帯電話ネットワーク(例えば、セルラネットワーク)、POTS(Plain Old Telephone)ネットワーク、及び無線データネットワーク(例えば、WiFi(登録商標)として知られる米国電気電子学会(Institute of Electrical and Electronics Engineers(IEEE)802.11標準ファミリ、WiMax(登録商標)として知られるIEEE 802.16標準ファミリ)、IEEE 802.15.4標準ファミリ、ピア・ツー・ピア(P2P)ネットワーク、その他が含まれ得る。ある例において、ネットワークインタフェースデバイス820は、通信ネットワーク826と接続するための1つ以上の物理的ジャック(例えば、イーサネット、同軸、若しくは電話ジャック)又は1つ以上のアンテナを含み得る。ある例において、ネットワークインタフェースデバイス820は、SIMO(single−input multiple−output)、MIMO(multiple−input multiple−output)、又はMISO(multiple−input single−output)技術のうちの少なくとも1つを使って無線通信するための複数のアンテナを含み得る。「通信媒体」という用語は、機械800により実行される命令を保存し、符号化し、又は担持することのできるあらゆる無形媒体を含むと解釈されるものとし、デジタル若しくはアナログ通信信号又は、そのようなソフトウェアの通信を容易にするためのその他の無形媒体を含む。
【0091】
各種の実施形態が上記の図面に中に示されている。これらの実施形態の1つ以上からの1つ以上の特徴を組み合わせてその他の実施形態を形成してもよい。
本明細書に記載の方法の例は、少なくとも一部が機械又はコンピュータ実装可能である。幾つかの例は、電子機器又はシステムを上述の例に記載された方法を実行するように構成するように動作可能な命令が符号化されたコンピュータ可読媒体又は機械可読媒体を含み得る。このような方法の実装形態は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、より高水準言語コード、又はそのようなコードを含み得る。このようなコードは、各種の方法を実行するためのコンピュータ可読命令を含み得る。コードは、コンピュータプログラム製品の一部を形成することが可能である。さらに、コードは、実行中又はその他の時点で、1つ以上の揮発性又は不揮発性コンピュータ可読媒体上に有形に保存できる。
【0092】
以上の詳細な説明は、限定的ではなく例示的とされている。開示の範囲は応じて、付属の特許請求の範囲と、そのような特許請求の範囲に適用される等価物の全体的範囲を考慮して特定されるべきである。