(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基材(A)が、ガラス、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ尿素−ウレタン、ポリアミド、三酢酸セルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)又はポリ(アリルジグリコールカーボネート)を含む、請求項1に記載の被覆物品。
前記微粒子成分(2)が、前記第一のコーティング層(B)を形成するために使用される前記ゾルゲル組成物中の固形分の総重量に基づいて、18重量%〜50重量%の量で前記ゾルゲル組成物中に存在する、チタン酸化物又はジルコニウム酸化物を含む、請求項3に記載の被覆物品。
前記コーティングが、スロットダイコーティングプロセス、噴霧コーティングプロセス、スピンコーティングプロセス又は浸漬コーティングプロセスによって、各々独立に塗布される、請求項12に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
あらゆる操作実施例中又は別段の記載がある場合以外は、本明細書及び特許請求の範囲中で使用される成分、反応条件などの量を表す全ての数字は、あらゆる事例において、「約」という用語によって修飾されているものと理解すべきである。従って、反対の記載がなければ、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数的パラメータは、本発明によって取得されるべき所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、及び特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数的パラメータは、報告された有効桁数に照らし、通常の丸め技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0011】
本発明の広い範囲を記載している数的範囲及びパラメータが近似値であることに関わらず、具体例中に記載されている数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、あらゆる数値は、それらの各検査の測定において見出される標準偏差に必然的に起因するある程度の誤差を本質的に含んでいる。
【0012】
また、本明細書中に明記されたあらゆる数的範囲は、その中に包含される全ての部分範囲(sub−ranges)を含むことが意図されていることを理解すべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、1という明記された最小値と10という明記された最大値との間(及び1と10を含む)のすなわち、1に等しい又は1より大きい最小値及び10に等しい又は10より小さい最大値を有する全ての部分範囲を含むことが意図される。
【0013】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される冠詞「a」、「an」及び「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されていなければ、複数の指示対象を含む。
【0014】
本明細書中に提示されている本発明の様々な態様及び実施例は、それぞれ、本発明の範囲に関して非限定的であると理解される。
【0015】
本発明の被覆物品は、基材上に被覆された2つ又はそれより多くのコーティング層を備える。複数のコーティング層の各々は、隣接する層とは異なる屈折率を示す。各層の反射率及び厚さは、境界面から反射された光線中に相殺的干渉(destructive interference)を生じるように、そして対応する透過された光線中に増加的干渉(constructive interference)を生じるように選択される。その結果、被覆物品からの総反射率は、被覆されていない基材と比べて著しく低下する。各層の屈折率及び厚さ並びにコーティング積層の配置は、被覆物品からの総反射率の低下の規模が最大化されるように最適化することができる。このため、多層反射防止コーティングは、総反射低下が最大化されるように、反射光線中の相殺的干渉を増加させるように構成されている2つ又はそれより多くの層(それぞれが、選択された屈折率と厚さを有し、層の特定の順序の層を有する)を有する光学コーティング積層と定義される。異なる視点から、コーティング積層は、総透過率増加が最大化されるように、対応する透過された光線中の増加的干渉を増加させるように構成されていると言ってもよい。反射防止コーティングの性能は、他方の面からの反射率を除外することによる単一面からの反射率によって、又は両面からの総反射率によって、又は総透過率によって測定することができるが、反射防止コーティングの効果は、基材の単一面又は両面からの反射率の低下ΔR又は透過率の増加ΔTと、より適切に定義される。反射防止コーティング積層の光吸収は通常無視できるので、反射率の低下は、透過率の増加に概ね等しく、すなわち、ΔR=ΔTである。ΔR又はΔTが大きくなるほど、反射防止コーティングの性能は向上する。ΔR又はΔTは、X−Rite,Inc.から得られるColor i7分光光度計などの分光光度計によって測定される、被覆物品の反射率又は透過率と被覆されていない基材の反射率又は透過率との間の差から計算することができる。基材の単一面上のみのコーティングの場合、コーティングが反射防止と考えられるためには、被覆物品の反射率は被覆されていない基材の反射率より小さく、又は被覆物品の透過率は被覆されていない基材の透過率より大きい。本発明の被覆物品は、典型的には、360nm〜750nmの波長範囲において、2.0%以上、又は通常は2.5%以上、又は最も多くの場合3.0%以上の反射率低下ΔR又は透過率増加ΔTを示す。例えば、2つのコーティング層を有する被覆物品は、360nm〜750nmの波長範囲において、少なくとも2.0%の反射率低下ΔR又は透過率増加ΔTを示し得る。2つのコーティング層を有する被覆物品は、360nm〜750nmの波長範囲において、2.5%より大きい、単一面積算された(single−side integrated)反射率低下ΔR又は透過率増加ΔTを示し得る。3つのコーティング層を有する被覆物品は、360nm〜750nmの波長範囲において、少なくとも2.5%の反射率低下ΔR又は透過率増加ΔTを示し得る。さらに、3つのコーティング層を有する被覆物品は、360nm〜750nmの波長範囲において、3.0%より大きい、単一面積算された反射率低下ΔR又は透過率増加ΔTも示し得る。本発明での考察の目的上、反射防止コーティングの性能は再測定され、X−Rite,Inc.から得られるColor i7分光光度計によって測定された場合の、両面からの透過率の増加、すなわち、ΔTによって表される。
【0016】
本発明の被覆物品において使用するのに適した基材には、金属、又は、より多くの場合、ガラスなどの透明な基材、又はタッチスクリーンとしての使用に適切である、本分野で既知のプラスチック光学基材のいずれもが含まれ得る。「光学基材」という用語は、指定された基材が、少なくとも50%又は少なくとも70%又は少なくとも85%など、少なくとも4%の光透過値(入射光を透過する)を示し;そして、例えば、X−Rite,Inc.から得られるColor i7分光光度計によって、550nmでヘイズ値が測定された場合に、5%未満、例えば、1%未満又は0.5%未満のヘイズ値を示すことを意味する。光学基材としては、レンズ、窓、鏡、アクティブ型又はパッシブ型液晶セル素子又は機器、及び携帯電話、タブレット、GPS、自動投票機、POS(Point−Of−Sale)又はコンピュータスクリーンを含む機器上のタッチスクリーンを含むスクリーンなどの表示素子などの光学物品;ピクチャーフレーム中のディスプレイシート;モニター、ウェアラブルディスプレイ又はセキュリティ素子が挙げられるが、これらに限定されない。光学基材としてはまた、光学層、例えば、光学樹脂層、光学フィルム及び光学コーティング、並びに光に影響を与える特性を有する光学基材も挙げられる。
【0017】
例えば、基材、フィルム、材料及び/又はコーティングに関連して使用される「透明な」という用語は、70%より高い、好ましくは80%より高い、最も好ましくは90%より高い可視光透過率で、向こう側に存在する物体が完全に見えるように、示された基材、コーティング、フィルム及び/又は材料が大幅な散乱なしに光を透過させるという特性を有することを意味する。
【0018】
基材は、典型的には、少なくとも1つの平らな表面を有し、多くの場合、2つの
反対の表面を有する。1つ又は両方の表面が、コーティングで被覆され得る。適切な金属基材には、高度に研磨されたステンレス鋼基材が含まれる。適切なガラス基材には、Fisherから販売されているソーダ石灰シリカスライドガラスなどのソーダ石灰シリカガラス、又はCorning Incorporatedから得られるGorilla(登録商標)ガラス若しくはAsahi Glass Co.,Ltd.から得られるDragontrail(登録商標)ガラスなどのアルミノシリケートガラスが含まれる。本発明の特定の態様において、基材は透明であり、少なくとも1つの平らな表面を有する。プラスチック基材の適切な例としては、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、例えば、PPG Industries,Inc.によって、CR−39の商標で販売されている、ポリ(ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート))などのポリ(アリルジグリコールカーボネート);例えば、ポリウレタンプレポリマーとジアミン硬化剤の反応によって調製されるポリ尿素−ポリウレタン(ポリ尿素ウレタン)ポリマー、PPG Industries,Inc.によってTRIVEX(登録商標)の商標で販売されている、1つのこのようなポリマー用の組成物;ポリオール(メタ)アクリロイル末端カーボネートモノマーのポリマー;ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー;エトキシ化フェノールメタクリレートモノマー;ジイソプロペニルベンゼンモノマー;エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー;エチレングリコールビスメタクリレートモノマー;ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー;ウレタンアクリレートモノマー;ポリ(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート);ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(塩化ビニル);ポリ(塩化ビニリデン);ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリウレタン;ポリチオウレタン;ビスフェノールAとホスゲンに由来するカーボネートで連結された樹脂などの熱可塑性ポリカーボネート、LEXANの商標で販売されている1つのこのような材料;MYLARの商標で販売されている材料などのポリエステル;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリビニルブチラール;PLEXIGLASの商標で販売されている材料などのポリ(メチルメタクリレート)、並びに、単独重合された又はポリチオール、ポリイソシアネート、ポリイソチオシアネート及び必要に応じて、エチレン性不飽和モノマー若しくはハロゲン化芳香族含有ビニルモノマーと共重合及び/若しくは三元共重合された(terpolymerized)ポリチオール又はポリエピスルフィドモノマーと、多官能性イソシアネートとを反応させることによって調製されたポリマーが挙げられる。例えば、相互貫入ネットワーク生成物を形成するために、このようなモノマーのコポリマー及び記載されたポリマー及びコポリマーの、他のポリマーとのブレンドも適切である。ポリアミド、三酢酸セルロース(TAC)及びシクロオレフィンポリマー(COP)などの基材もまた適切である。
【0019】
本発明は、上述されているもののいずれかなどの基材(A)と、前記基材の少なくとも1つの表面に塗布された第一のコーティング層(a)であって、前記第一のコーティングが、少なくともアルコキシシランを含むゾルゲル組成物から形成されており、1.62〜1.85の「中程度の」屈折率を示す第一のコーティング層(a);及び前記第一のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された第二のコーティング層(b)であって、前記第二のコーティング層が、シランを含む酸性ゾルゲル組成物から形成されており、1.40〜1.48の「低い」屈折率を示す第二のコーティング層(b)を備える多層反射防止コーティング積層(B)とを備える被覆物品を提供する。被覆物品は、第二のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された汚損防止コーティング層C)をさらに含む。本発明において調製される異なるコーティング層の屈折率は、Filmetrics(サンディエゴ、カリフォルニア州)から得たF20−UV薄膜分析器を用いて、20℃〜24℃で測定された。
【0020】
第一のコーティングは、典型的には、ハードコート層又は接着促進層などの介在層なしに、基材表面に直接塗布される。
【0021】
第一のコーティング層は、
(1)樹脂成分であって、
(i)テトラアルコキシシランと;
(ii)エポキシ官能性トリアルコキシシランと;
(iii)金属含有触媒と;
(iii)溶媒成分と
を含む樹脂成分;及び
(2)少なくとも2.0の屈折率を示す金属酸化物を含む微粒子成分
を含む硬化性ゾルゲル組成物から形成され得る。この硬化性ゾルゲル組成物は、ガラス又はポリメチルメタクリレート基材に対して特に適している。「硬化性」は、表記された組成物が、例えば、熱(常温硬化を含む)、触媒、電子線、化学的フリーラジカル開始、及び/又は、紫外光若しくはその他の化学線への曝露などによる光開始を含むが、これらに限定されない手段によって、官能基を通じて重合可能又は架橋可能であることを意味する。常温条件は、熱又はその他のエネルギーの補助なしに、例えば、オーブン中で焼くこと、強制空気の使用などなしに、コーティングが熱硬化反応を経ることを意味する。通常、常温は、典型的な室温、72°F(22.2℃)など、60〜90°F(15.6〜32.2℃)の範囲である。
【0022】
組成物のゾルゲル性状のために、テトラアルコキシシラン(i)は加水分解され、層の硬化前に部分的に縮合される。ゾルゲル層中の加水分解されたテトラアルコキシシランは、典型的には、テトラメトキシシラン及び/又はテトラエトキシシランを含む。
【0023】
適切なエポキシ官能性トリアルコキシシラン(ii)は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び3−(グリシジルオキシプロピル)トリエトキシシランから選択され得る。エポキシ官能性トリアルコキシシランは、水で部分的に加水分解され得る。
【0024】
適切な金属含有触媒(iii)は、アルミニウム含有触媒であり得る。例としては、アルミニウムヒドロキシクロリド又はアルミニウムアセチルアセトネートが挙げられる。コロイド状アルミニウムヒドロキシクロリド触媒は、Summit ReheisからSUMALCHLOR 50として、及びNALCOからNALCO 8676として入手可能である。
【0025】
溶媒成分は、水と、1種又はそれより多種の極性有機溶媒(環状エーテル、グリコールエーテルなどのエーテル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどの1〜6個の炭素原子を有するアルコールなどが挙げられる)とを含み得る。プロピレングリコール、メチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエ−テルが一般的に使用され;基材がポリメチルメタクリレートを含むとき、極めて多くの場合において、ゾルゲル組成物中の溶媒成分(d)は1−プロパノールを含む。
【0026】
少なくとも2.0の屈折率を示す例示的な金属酸化物には、二酸化チタンなどのチタン酸化物、二酸化ジルコニウム、亜鉛酸化物又はスズ酸化物が含まれる。微粒子成分は通常、第一のコーティング層を形成するために使用される硬化性ゾルゲル組成物中の固形分の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、又は少なくとも14重量%、又は少なくとも18重量%及び多くとも90重量%、又は多くとも75重量%、又は多くとも60重量%の量で、硬化性ゾルゲル組成物中に存在する。
【0027】
硬化性ゾルゲル組成物は、あるいは、少なくとも2.0の屈折率を示す金属酸化物を含む微粒子成分を置き換えるために、高い屈折率を有する加水分解されたチタンアルコキシド又はジルコニウムアルコキシドを含み得る。適切なチタンアルコキシドには、チタンイソ−プロポキシド及びチタンブトキシドが含まれる。適切なジルコニウムアルコキシドには、ジルコニウム(IV)プロポキシド及びジルコニウム(IV)tert−ブトキシドが含まれる。
【0028】
硬化性フィルム形成ゾルゲル組成物は、以下に開示されているものの任意のものなど、様々な必要に応じた成分、着色剤及び/又は添加剤を含むことができる。
【0029】
硬化性フィルム形成ゾルゲル組成物は、典型的には、硬化性フィルム形成組成物の総重量に基づいて、0.1重量%〜35重量%、しばしば、0.5重量%〜15重量%、さらにしばしば、1重量%〜8重量%の固形分含量を有する。
【0030】
第一のコーティング層として使用され得る適切な硬化性ゾルゲル組成物には、HI−GARD 1080及びHI−GARD 1080Sが含まれ、いずれもPPG Industries,Inc.から市販されている。また、ゾルゲル組成物は、上に記載されているような適切な溶媒を用いてさらに希釈され得る。
【0031】
第二のコーティング層は、第一のコーティング層の少なくとも1つの表面上に塗布され、典型的には、「低い」、すなわち、1.40〜1.48の範囲の屈折率を示す。第二のコーティング層は、(i)テトラアルコキシシランを含む酸性ゾルゲル組成物から形成され得る。同じく、組成物のゾルゲル性状のために、アルコキシシランは、使用されるときに加水分解され、層の硬化前に部分的に縮合される。酸性ゾルゲル組成物中の加水分解されたテトラアルコキシシランは、典型的には、テトラメトキシシラン及び/又はテトラエトキシシランを含む。テトラアルコキシシランは、典型的には、酸性ゾルゲル組成物の総重量に基づいて、7重量%未満、しばしば、6重量%未満、さらにしばしば、5.5重量%未満の量で、酸性ゾルゲル組成物中に存在する。
【0032】
酸性ゾルゲル組成物は、(ii)アルキルトリアルコキシシランをさらに含み得る。例としては、メチルトリメトキシシラン及びメチルトリエトキシシランが挙げられる。アルキルトリアルコキシシランは、典型的には、酸性ゾルゲル組成物の総重量に基づいて、0.1重量%〜2.5重量%の量で、酸性ゾルゲル組成物中に存在する。
【0033】
酸性ゾルゲル組成物は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,148,487 B2号及び米国特許第8,507,631 B2号中で特定されているような、(iii)シラン官能性アクリルポリマーをさらに含み得る。「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマー、並びにオリゴマーを含むポリマーを意味する。適切なシラン官能性アクリルポリマーは、アクリルポリマー 少なくとも1つかつ最大3つまでの加水分解可能な基を有するシラン置換基 から選択され得る。例としては、アクリル酸ヒドロキシプロピルとメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの反応生成物が挙げられる。シラン官能性アクリルポリマーは、典型的には、酸性ゾルゲル組成物の総重量に基づいて、0.05重量%〜7.50重量%の量で、酸性ゾルゲル組成物中に存在する。
【0034】
酸性ゾルゲル組成物は、(iv)無機酸化物粒子をさらに含み得る。粒子は、コロイド状、ヒュームド若しくは非晶質形態のシリカ、アルミナ若しくはコロイド状アルミナ、二酸化チタン、セシウム酸化物、イットリウム酸化物、コロイド状イットリア、ジルコニア、例えば、コロイド状若しくは非晶質のジルコニア、亜鉛酸化物などの単一の無機酸化物、及び前述のもののうちのいずれかの混合物;又はある1種類の無機酸化物(この無機酸化物の上に別の種類の無機酸化物を堆積させる)を含むことができる。
【0035】
粒子は、典型的には、酸性ゾルゲル組成物の総固形分重量に基づいて、0.05重量%〜2.0重量%の量で、酸性ゾルゲル組成物中に存在する。
【0036】
酸性ゾルゲル組成物は、(v)鉱酸をさらに含み得る。適切な鉱酸には、硫酸、硝酸、塩酸などが含まれる。硝酸が、最もしばしば使用される。鉱酸は、典型的には、シランに対する鉱酸の重量比率が、0.01を超える、しばしば、0.04を超える、さらにしばしば、0.08を超える、最もしばしば、0.1を超えるような量で存在する。
【0037】
酸性ゾルゲル組成物は、(vi)水、及びグリコールエーテル又は低級アルコールなどの(vii)溶媒を追加的に含み得る。適切な低級アルコールには、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどが含まれ、これらの混合物を含む。グリコールエーテルの例としては、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。リスト中で使用される場合、「及び/又は」という句は、リスト中の各個別の成分を含む代替実施形態、及び成分のあらゆる組み合わせを含む代替実施形態を包含することが意図されることに留意されたい。例えば、「A、B及び/又はC」というリストは、A又はB又はC又はA+B又はA+C又はB+C又はA+B+Cを含む7つの別個の実施形態を包含することが意図される。
【0038】
水(f)は、典型的には、酸性ゾルゲル組成物の総重量に基づいて、0.1重量%〜35.0重量%の量で、酸性ゾルゲル組成物中に存在し、溶媒は、典型的には、酸性ゾルゲル組成物の総重量に基づいて、60重量%〜98重量%の量で、酸性ゾルゲル組成物中に存在する。これは、少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.5重量%、又は少なくとも2.0重量%の総固形分含量;及び多くとも35重量%、又は多くとも20重量%、又は多くとも10重量%の総固形分含量を可能にする。例えば、酸性ゾルゲル組成物は、典型的には、酸性ゾルゲル組成物の総重量に基づいて、0.1重量%〜10重量%、しばしば、0.5重量%〜10重量%、さらにしばしば、1重量%〜8重量%、通常は、7重量%未満又は5重量%未満の固形分含量を有する。
【0039】
本発明のある特定の実施例において、酸性ゾルゲル組成物から調製された第二のコーティング層は、本質的にフッ素を含まない。材料を「本質的に含まない」とは、組成物が所定の材料のほんの僅かな又は付随的な(incidental)量を有するに過ぎないこと、及び当該材料が組成物の任意の特性に影響を及ぼすのに十分な量で存在していないことを意味する。これらの材料は組成物にとって不可欠ではなく、従って、組成物は、任意の相当な量又は不可欠な量でこれらの材料を含まない。これらの材料が存在する場合には、付随的な量に過ぎず、典型的には組成物中の固形分の総重量に基づいて、0.1重量%未満である。
【0040】
第一及び第二のコーティング層はいずれも、以下に記載されている方法のいずれかによって、基材の少なくとも1つの表面に独立して塗布され得る。様々なシナリオにおいて、第一のコーティング層は基材の1つの表面に塗布され得、かつ第二のコーティング層は第一の層上に塗布され得;第一のコーティング層は基材の2つの
反対の表面に塗布され得、かつ第二のコーティング層はただ1つの表面の上の第一の層上に塗布され得;又は第一のコーティング層は基材の2つの
反対の表面に塗布され得、かつ第二のコーティング層は両表面の上の第一の層上に塗布され得る。
【0041】
本発明は、
(A)上記されているもののいずれかなどの基材;
(B)多層反射防止コーティング積層であって、
(a)前記基材の少なくとも1つの表面に塗布された第一のコーティング層であって、前記第一のコーティング層がシランを含むゾルゲル組成物から形成されており、前記第一のコーティング層が1.62〜1.85の「中程度の」屈折率を示す、第一のコーティング層と;
(b)前記第一のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された第二のコーティング層であって、前記第二のコーティング層がシランを含むゾルゲル組成物から形成されており、前記第二のコーティング層が1.90〜2.10の「高い」屈折率を示す、第二のコーティング層と;
(c)前記第二のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された第三のコーティング層であって、前記第三のコーティング層がシランを含む酸性ゾルゲル組成物から形成されており、前記第三のコーティング層が1.40〜1.48の「低い」屈折率を示す、第三のコーティング層と;
を備える多層反射防止コーティング積層;及び
(C)前記第三のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された汚損防止コーティング層
を備える被覆物品も提供する。
【0042】
第一、第二及び第三のコーティング層のそれぞれは、任意の必要に応じた成分を含む、上記組成物のいずれかを独立に含み得、異なる屈折率は、シラン対無機酸化物粒子の重量比を調整することによって達成される。
【0043】
第一及び/又は第二のコーティング層は、
(1)樹脂成分であって、
(a)テトラアルコキシシランと;
(b)エポキシ官能性トリアルコキシシランと;
(c)金属含有触媒と;
(d)溶媒成分と
を含む樹脂成分;及び
(2)硬化性ゾルゲル組成物中の固形分の総重量に基づいて、10重量%〜90重量%の量で硬化性ゾルゲル組成物中に存在する、チタン酸化物を含む微粒子成分
を含む硬化性ゾルゲル組成物から独立に形成され得る。樹脂成分(1)は、各成分に関して上述されている材料のいずれかを含み得る。第一及び第二のコーティング層の両方としての上記組成物の使用は、2つの
反対の表面を有するシートを備える基材に対して特に有用である。この例では、第一及び第二の層の各々における樹脂成分(1)対微粒子成分(2)の重量比は、異なる屈折率を可能とするために異なっており、被覆物品は、典型的には、360nm〜750nmの波長範囲において、2.0%又はそれを超える透過率増加を示す。
【0044】
第三のコーティング層(c)は、(i)テトラアルコキシシラン;(ii)アルキルトリアルコキシシラン;(iii)シラン官能性アクリルポリマー;(iv)無機酸化物粒子;(v)鉱酸;(vi)水;及び(vii)溶媒を含む硬化性ゾルゲル組成物から形成され得る。本発明のある特定の例において、酸性ゾルゲル組成物から調製された第三のコーティング層は、本質的にフッ素を含まない。
【0045】
本発明の多層反射防止コーティング積層が3つの層を含む場合、第一のコーティング層は、典型的には、44nm〜64nmの乾燥膜厚を有し、第二のコーティング層は、通常、70nm〜90nmの乾燥膜厚を有し、第三のコーティング層は、通常、74nm〜94nmの乾燥膜厚を有する。
【0046】
本発明の多層被覆物品の各層中で使用されるゾルゲル組成物の各々は、最終的な被覆物品の具体的な用途にいくらか依存する、様々な、必要に応じた成分及び/又は添加剤を独立に含むことができる。例えば、組成物のいずれかが光に影響を及ぼす特性を呈し得る。その他の必要に応じた成分には、レオロジー調節剤、界面活性剤、開始剤、触媒、硬化阻害剤、還元剤、酸、塩基、防腐剤、フリーラジカル供与体、フリーラジカル消去剤及び熱安定剤が含まれ、これらの補助的材料は当業者に既知である。
【0047】
典型的には、ゾルゲル組成物は無色及び透明であるが、ゾルゲル組成物は着色剤を含み得る。また、ゾルゲル組成物は、通常、光学的に透き通っており、光沢レベルに応じて、少なくとも70%の光透過を有し、又は50%未満のヘイズ値を示す。
【0048】
本発明の被覆物品は、最外側コーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された汚損防止コーティング層をさらに含む;すなわち、多層反射防止コーティング積層が2つのコーティング層を含む場合、汚損防止コーティング層は第二のコーティング層上に塗布される。多層反射防止コーティング積層が3つのコーティング層を含む場合、汚損防止コーティング層は第三のコーティング層上に塗布される。さらに、1つ又はそれより多くのコーティング層が基材の2つの
反対の表面に塗布される場合、汚損防止層は、被覆された表面の一方又は両方に塗布され得る。汚損防止コーティング層は、以下に開示されている方法のいずれかを用いて、塗布され得る。適切な汚損防止コーティング組成物として、本分野において既知のもののうち任意のものが挙げられる。
【0049】
2つのコーティング層を有する多層反射防止コーティング積層を備える上記被覆物品は、
(A)90nm〜150nmの乾燥膜厚を有する第一のコーティング層を形成するために、基材の少なくとも1つの表面にゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記ゾルゲル組成物が少なくともシランを含み、前記第一のコーティング層が1.62〜1.85の屈折率を示す、工程;
(B)87nm〜97nmの乾燥膜厚を有する第二のコーティング層を形成するために、前記第一のコーティング層の少なくとも1つの表面に酸性ゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記酸性ゾルゲル組成物がシランを含み、前記第二のコーティング層が1.40〜1.48の屈折率を示す、工程;
(C)前記第二のコーティング層に汚損防止コーティング層を塗布する工程
を含む、本発明のプロセスによって調製され得る。それぞれのコーティング層の各々は、上記のとおりである。
【0050】
3つのコーティング層を有する多層反射防止コーティング積層を備える上記被覆物品は、
(A)第一のコーティング層を形成するために、基材の表面に第一のゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記第一のゾルゲル組成物が少なくともシランを含み、前記第一のコーティング層が44nm〜64nmの乾燥膜厚を有し、かつ1.62〜1.85の屈折率を示す、工程;
(B)第二のコーティング層を形成するために、第一のコーティング層に第二のゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記第二のゾルゲル組成物がシランを含み、前記第二のコーティング層が70nm〜90nmの乾燥膜厚を有し、かつ1.90〜2.10の屈折率を示す、工程;
(C)第三のコーティング層を形成するために、第二のコーティング層に酸性ゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記酸性ゾルゲル組成物がシランを含み、前記第三のコーティング層が74nm〜94nmの乾燥膜厚を有し、かつ1.40〜1.48の屈折率を示す、工程;並びに
(D)前記第三のコーティング層に汚損防止コーティング層を塗布する工程;
を含む、本発明のプロセスによって調製され得る。それぞれのコーティング層の各々は、上記のとおりである。
【0051】
コーティング層を形成する組成物はそれぞれ、基材の表面上への、噴霧コーティング、浸漬コーティング(液浸)、スピンコーティング、スロットダイコーティング又はフローコーティングなどの多数の方法の1つ又は複数によって基材に塗布され得る。超音波噴霧塗布、精密噴霧塗布及び空気霧化(air atomized)噴霧塗布などの噴霧がもっともしばしば使用される。コーティング組成物は、塗布直前に、常温に保たれ得る。同じく、基材の少なくとも1つの表面が被覆される;基材が2つの
反対の表面を有する場合、一方又は両方の表面が被覆され得る。
【0052】
ゾルゲル層の塗布後に、次いで、被覆された基材は、ゾルゲル層の硬化を実施し、反射防止被覆物品を形成するのに十分な時間にわたって条件に供される。硬化された組成物又は硬化性組成物との関連で使用される用語「硬化」、「硬化された」又は類似の用語(例えば、ある具体的な記述の「硬化された組成物」)は、硬化性組成物を形成する任意の重合可能かつ/又は架橋可能な成分の少なくとも一部が重合され、そして/又は架橋されていることを意味する。さらに、組成物の硬化は、上に列挙されているものなどの硬化条件に前記組成物を供し、組成物の反応性官能基の反応を引き起こすことを表す。「少なくとも部分的に硬化された」という用語は、組成物の反応性基の少なくとも一部の反応が起こる硬化条件に組成物を供することを意味する。実質的に完全な硬化が達成され、さらなる硬化が、硬度などの物理的特性の著しいさらなる改善をもたらさないような硬化条件に、組成物を供することもできる。例えば、被覆された基材は、組成物の継続的な重合を促進するために、少なくとも0.5時間、少なくとも120℃の温度に加熱され得る。具体的な例では、被覆された基材は、少なくとも3時間、120℃の温度に加熱され得、又は被覆された基材は、少なくとも1時間、少なくとも150℃の温度に加熱され得、又は被覆された基材は、少なくとも0.5時間、少なくとも450℃の温度に加熱され得る。
【0053】
本発明の多層反射防止コーティング積層が2つの層を含む場合、第一のコーティング層は、典型的には、90nm〜150nmの乾燥膜厚を有し、第二のコーティング層は、通常、87nm〜97nmの乾燥膜厚を有する。
【0054】
2つのコーティング層を有する多層反射防止コーティング積層で被覆された基材において、
基材はガラスを含み得、被覆物品は、360nm〜750nmの波長範囲において、2.5%より大きい透過率増加を示す。
【0055】
本発明の多層反射防止コーティング積層が3つの層を含む場合、第一のコーティング層は、典型的には、44nm〜64nmの乾燥膜厚を有し、第二のコーティング層は、通常、70nm〜90nmの乾燥膜厚を有し、第三のコーティング層は、通常、74nm〜94nmの乾燥膜厚を有する。
【0056】
3つの層を有する多層反射防止コーティング積層を備える本発明の被覆物品は、しばしば、360nm〜750nmの波長範囲において、3.0%より大きい透過率増加を示す。例えば、基材がガラスである場合、被覆物品は、360nm〜750nmの波長範囲において、3.0%より大きい透過率増加を示し得る。
【0057】
本発明の被覆物品は、物品を通じて見られたディスプレイの解像度を低下させることなく、低下した反射を示す。これは、被覆物品が、電話、モニター、タブレットなどの電子機器用のスクリーン、特にタッチスクリーンなどの光学物品である場合に特に有利である。
【0058】
上記態様及び特徴並びにこれらの組み合わせの各々が、本発明によって包含されると言われ得る。従って、例えば、本発明は、以下の非限定的な態様に引き寄せられる。
1. (A)基材;
(B)多層反射防止コーティング積層であって、
(a)前記基材の少なくとも1つの表面に塗布された第一のコーティング層であって、前記第一のコーティング層が90nm〜150nmの乾燥膜厚を有し、かつ少なくともアルコキシシランを含むゾルゲル組成物から形成されており、前記第一のコーティング層が1.62〜1.85の屈折率を示す、第一のコーティング層と;
(b)前記第一のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された第二のコーティング層であって、前記第二のコーティング層が87nm〜97nmの乾燥膜厚を有し、かつシランを含む酸性ゾルゲル組成物から形成されており、前記第二のコーティング層が1.40〜1.48の屈折率を示す、第二のコーティング層と;
を備える多層反射防止コーティング積層;及び
(C)前記第二のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された汚損防止コーティング層
を備える、被覆物品。
2. 前記基材(A)が、ガラス、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ尿素−ウレタン、ポリアミド、三酢酸セルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)又はポリ(アリルジグリコールカーボネート)を含む、態様1に記載の被覆物品。
3. 前記基材(A)がガラス又はポリメチルメタクリレートを含み;前記第一のコーティング層(B)が、
(1)樹脂成分であって、
(i)テトラアルコキシシランと;
(ii)エポキシ官能性トリアルコキシシランと;
(iii)金属含有触媒と;
(iv)溶媒成分と;
を含む樹脂成分;及び
(2)少なくとも2.0の屈折率を示す金属酸化物を含む微粒子成分
を含むゾルゲル組成物から形成されており、前記基材がポリメチルメタクリレートを含む場合には、前記ゾルゲル組成物中の前記溶媒成分(d)が1−プロパノールを含む、態様1に記載の被覆物品。
4. 前記微粒子成分(2)が、前記第一のコーティング層(B)を形成するために使用されるゾルゲル組成物中の固形分の総重量に基づいて、18重量%〜50重量%の量でゾルゲル組成物中に存在する、チタン酸化物又はジルコニウム酸化物を含む、態様1〜3のいずれかに記載の被覆物品。
5. 前記第二のコーティング層(C)が、
(i)テトラアルコキシシランと;
(ii)アルキルトリアルコキシシランと;
(iii)シラン官能性アクリルポリマーと;
(iv)無機酸化物粒子と;
(v)鉱酸と;
(vi)水と;
(vii)溶媒と
を含む酸性ゾルゲル組成物から形成される、態様1〜4のいずれかに記載の被覆物品。
6. 前記基材がガラスを含み、前記被覆物品が、360nm〜750nmの波長範囲において、2.5%より大きい、単一面積算された反射率低下又は透過率増加を示す、態様1〜5のいずれかに記載の被覆物品。
7. 前記基材が、2つの
反対の表面を有する、態様1〜6のいずれかに記載の被覆物品。
8. 前記コーティング(a)、(b)及び汚損防止コーティング(C)の各々が、前記基材の
両方の
反対の表面上に被覆されている、請求項7に記載の被覆物品。
9. 前記被覆物品が、表示素子、窓、鏡並びに/又はアクティブ型及びパッシブ型液晶セル素子若しくは機器を備える光学物品である、態様1〜8のいずれかに記載の被覆物品。
10. 前記第二のコーティング層(b)が本質的にフッ素を含まない、態様1〜9のいずれかに記載の被覆物品。
11. 前記被覆物品が、360nm〜750nmの波長範囲において、少なくとも2.0%の透過率増加ΔTを示す、態様1〜10のいずれかに記載の被覆物品。
12. (A)基材;
(B)多層反射防止コーティング積層であって、
(a)前記基材の少なくとも1つの表面に塗布された第一のコーティング層であって、前記第一のコーティング層が44nm〜64nmの乾燥膜厚を有し、かつシランを含むゾルゲル組成物から形成されており、前記第一のコーティング層が1.62〜1.85の屈折率を示す、第一のコーティング層と;
(b)前記第一のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された第二のコーティング層であって、前記第二のコーティング層が70nm〜90nmの乾燥膜厚を有し、かつシランを含むゾルゲル組成物から形成されており、前記第二のコーティング層が1.90〜2.10の屈折率を示す、第二のコーティング層と;
(c)前記第二のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された第三のコーティング層であって、前記第三のコーティング層が74nm〜94nmの乾燥膜厚を有し、かつシランを含む酸性ゾルゲル組成物から形成されており、前記第三のコーティング層が1.40〜1.48の屈折率を示す、第三のコーティング層と
を備える多層反射防止コーティング積層;及び
(C)前記第三のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された汚損防止コーティング層
を備える、被覆物品。
13. 前記基材(A)が、ガラス、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ尿素−ウレタン、ポリアミド、三酢酸セルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)又はポリ(アリルジグリコールカーボネート)を含む、態様11に記載の被覆物品。
14. 前記第一のコーティング層(a)が、ゾルゲル組成物から形成されており、前記ゾルゲル組成物が、
(1)樹脂成分であって、
(i)テトラアルコキシシランと;
(ii)エポキシ官能性トリアルコキシシランと;
(iii)金属含有触媒と;
(iv)溶媒成分と
を含む樹脂成分;及び
(2)前記第一のコーティング層(a)を形成するために使用される前記ゾルゲル組成物中の固形分の総重量に基づいて、20重量%〜70重量%の量で前記ゾルゲル組成物中に存在する、酸化チタン又は酸化ジルコニウムを含む微粒子成分
を含む、態様12〜13のいずれかに記載の被覆物品。
15. 前記第二のコーティング層(b)が、ゾルゲル組成物から形成されており、前記ゾルゲル組成物が、
(1)樹脂成分であって、
(i)テトラアルコキシシランと;
(ii)エポキシ官能性トリアルコキシシランと;
(iii)金属含有触媒と;
(iv)溶媒成分と
を含む樹脂成分;及び
(2)前記第二のコーティング層(C)を形成するために使用される前記ゾルゲル組成物中の固形分の総重量に基づいて、40重量%〜95重量%の量で前記ゾルゲル組成物中に存在する、酸化チタン又は酸化ジルコニウムを含む微粒子成分
を含む、態様12〜14のいずれかに記載の被覆物品。
16. 前記第三のコーティング層(c)が、
(i)テトラアルコキシシランと;
(ii)アルキルトリアルコキシシランと;
(iii)シラン官能性アクリルポリマーと;
(iv)無機酸化物粒子と;
(v)鉱酸と;
(vi)水と;
(vii)溶媒と
を含む酸性ゾルゲル組成物から形成される、態様12〜15のいずれかに記載の被覆物品。
17. 前記基材がガラスを含み、前記被覆物品が、360nm〜750nmの波長範囲において、3.0%より大きい透過率増加を示す、態様12〜16のいずれかに記載の被覆物品。
18. 前記基材が2つの
反対の表面を有する、態様12〜17のいずれかに記載の被覆物品。
19. 前記被覆物品が、表示素子、窓、鏡並びに/又はアクティブ型及びパッシブ型液晶セル素子若しくは機器を備える光学物品である、態様12〜18のいずれかに記載の被覆物品。
20. 前記被覆物品が、360nm〜750nmの波長範囲において、少なくとも2.5%の透過率増加ΔTを示す、態様12〜19のいずれかに記載の被覆物品。
21. 反射防止特性を示す被覆物品を形成するプロセスであって、前記プロセスが、
(A)90nm〜150nmの乾燥膜厚を有する第一のコーティング層を形成するために、基材の少なくとも1つの表面にゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記ゾルゲル組成物が少なくともシランを含み、前記第一のコーティング層が1.62〜1.85の屈折率を示す、工程と;
(B)90nm〜150nmの乾燥膜厚を有する第二のコーティング層を形成するために、前記第一のコーティング層の少なくとも1つの表面に酸性ゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記酸性ゾルゲル組成物がシランを含み、前記第二のコーティング層が1.40〜1.48の屈折率を示す、工程と;
(C)前記第二のコーティング層に汚損防止コーティング層を塗布する工程と
を含む、プロセス。
22. 前記コーティングが、スロットダイコーティングプロセス、噴霧コーティングプロセス、スピンコーティングプロセス又は浸漬コーティングプロセスによって、各々独立に塗布される、態様21に記載のプロセス。
23. 反射防止特性を示す被覆物品を形成するプロセスであって、前記プロセスが、
(A)第一のコーティング層を形成するために、基材の少なくとも1つの表面に第一のゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記第一のゾルゲル組成物が少なくともシランを含み、前記第一のコーティング層が44nm〜64nmの乾燥膜厚を有し、かつ1.62〜1.85の屈折率を示す、工程と;
(B)第二のコーティング層を形成するために、前記第一のコーティング層の少なくとも1つの表面に第二のゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記第二のゾルゲル組成物がシランを含み、前記第二のコーティング層が70nm〜90nmの乾燥膜厚を有し、かつ1.90〜2.10の屈折率を示す、工程と;
(C)第三のコーティング層を形成するために、前記第二のコーティング層の少なくとも1つの表面に酸性ゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記酸性ゾルゲル組成物がシランを含み、前記第三のコーティング層が74nm〜94nmの乾燥膜厚を有し、かつ
1.40〜1.48の屈折率を示す、工程と;
(D)前記第三のコーティング層に汚損防止コーティング層を塗布する工程と
を含む、プロセス。
24. 前記コーティングが、スロットダイコーティングプロセス、噴霧コーティングプロセス、スピンコーティングプロセス又は浸漬コーティングプロセスによって、各々独立に塗布される、態様23に記載のプロセス。
【0059】
以下の実施例は、本発明の様々な態様を例示することが意図されており、決して本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0060】
実施例1:チタン酸化物ゾルの調製
きれいな1000mLのプラスチック容器中において、100gのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)を100gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)と混合した。撹拌しながら、PM/PMA混合物中に、200gのチタンイソプロポキシド(97%、Sigma Aldrich)を添加することによって、ゾルゲル前駆体溶液を調製した。別のきれいな1000mLのプラスチック容器中において、酸性溶液を形成するために、400gの脱イオン水中に40gの70%硝酸を添加した。この酸性溶液を、激しく撹拌しながら、上記前駆体溶液中に添加した。酸性溶液を添加すると、白色沈殿が生じ、24時間の撹拌後、加水分解された溶液は、沈殿又はゲル化なしに透明となった。将来の使用のために、チタン酸化物ゾルを冷凍庫中で保存した。
実施例2:1.68±0.02の屈折率を有するゾルゲル由来コーティングのためのゾルゲル溶液の調製
【0061】
1000mLのプラスチック容器中で、618.15gのイソプロピルアルコール及び181.85gの脱イオン水を混合することによって溶液Aを調製した。事前に調製した113.44gのチタン酸化物ゾルを1000mLのきれいなプラスチック容器中に加えた後、撹拌しながら1時間、8.32gのアセチルアセトン(≧99%)、32.32gのPPGから市販されているHi−Gard 1080s、288.8gの溶液A、0.8gのBYK306(BYKから入手可能)及び443.68gの1−プロパノールと混合した。チタン酸化物ゾルを安定化するために、アセチルアセトンを添加した後、Hi−Gard 1080sの添加した。Filmetrics(サンディエゴ、カリフォルニア州)から得たF20−UV薄膜分析器によって、20℃〜24℃で測定すると、このゾルから調製した薄膜の屈折率は1.66〜1.70であった。
実施例3:1.78±0.02の屈折率を有するゾルゲル由来コーティングのためのゾルゲル溶液の調製
【0062】
事前に調製した116.64gのチタン酸化物ゾル(実施例1)を1000mLのきれいなプラスチック容器中に加えた後、撹拌しながら1時間、8.64gのアセチルアセトン、15.58gのHi−Gard1080s、259.68gの溶液A、0.64gのBYK306及び401.18gの1−プロパノールと混合した。Filmetrics(サンディエゴ、カリフォルニア州)から得たF20−UV薄膜分析器によって、20℃〜24℃で測定すると、このゾルから調製した薄膜の屈折率は1.76〜1.80であった。
実施例4:1.97±0.03の屈折率を有するゾルゲル由来コーティングのためのゾルゲル溶液の調製
【0063】
事前に調製した174.4gのチタン酸化物ゾル(実施例1)を1000mLのきれいなプラスチック容器中に加えた後、撹拌しながら1時間、12.8gのアセチルアセトン、259.68gの溶液A、0.64gのBYK306及び401.18gの1−プロパノールと混合した。Filmetrics(サンディエゴ、カリフォルニア州)から得たF20−UV薄膜分析器によって、20℃〜24℃で測定すると、このゾルから調製した薄膜の屈折率は1.94〜2.00であった。
実施例5:n=1.44±0.01を有するコーティングのための低屈折率ゾルゲル溶液の調製
【0064】
パートA:きれいな容器中で、11.5部のオルトケイ酸テトラエチル(98%純度、Sigma−Aldrich Corporation)を0.75部のシラン官能性アクリルポリマーと混合する。シラン官能性アクリルポリマーは、米国特許第8,507,631号の実施例1に従って調製したが、以下が相違する:アゾビスイソブチロニトリルに代えて、ペルオキシ−2−エチルヘキサン酸t−アミルを開始剤として使用し、82℃(180°F)に代えて120℃(248°F)のオーブン中に一晩この溶液を置き、1.72部のコロイド状シリカMT−ST(Nissan Chemical)及び2.8部のメチルトリメトキシシラン(Evonik)。30分間混合した後、シランを加水分解するために、6.8部の2−プロパノール(99.5%純度、Sigma−Aldrich Corporation)、2.1部の脱イオン水及び2.5部のHNO
3水溶液(水中4.68重量%の硝酸)の混合物を第一の混合物に添加した。30分の加水分解後、この混合物に、0.25部のアルミニウムアセチルアセトネート(99%純度、Sigma−Aldrich Corporation)及び0.3部のBYK−306(BYK USA Inc.)を添加した。最後に、溶液を希釈するために、混合しながら、71.28部の量の2−プロパノールを添加する。
【0065】
パートB:きれいな容器中で、上記パートAにおける溶液13.33部を、86.67部のn−プロパノールと30分間混合する。
Filmetrics(サンディエゴ、カリフォルニア州)から得たF20−UV薄膜分析器によって、20℃〜24℃で測定すると、この組成物から調製した薄膜の屈折率は1.43〜1.45であった。
実施例6:スピンコーティングによって調製した二層反射防止(AR)系
【0066】
ソーダ石灰ガラス基材又は顕微鏡のスライドガラス基材をイソプロピルアルコールによってきれいにし、ATTOプラズマ処理器(Diener Electronics、ドイツ)を用いて、15分間窒素プラズマ処理で前処理した。Cee 200Xスピンコート装置(Brewer Science,Inc.)を用いて、実施例2の溶液由来のコーティングからなる第一の層で基材上を被覆した後、150℃で1時間硬化させた。異なるスピン速度(500〜2000rpm)を使用することによって、膜厚を調整し、最適な厚さは、100nm〜140nmの範囲であった。15分間の窒素プラズマ処理後に、実施例5の溶液から得たコーティングからなる第二の層を、第一の層上にスピンコートした。第二の層の膜厚は70nm〜90nmの範囲であった。被覆された試料は、360nm〜750nmの可視光波長範囲において、積算された透過率の2.7%〜3%増加を示した。ヘイズは観察されなかった。その後、Prism Ultra−Coat超音波噴霧被覆装置を用いて、PPGからEC1103として入手可能な汚損防止コーティングを塗布した後、150℃で1時間硬化させた。水の接触角が、16°から110°超に増加した。
表1は、X−Rite,Inc.から得たColor i7分光光度計によって測定された場合の、被覆されていないガラス基材と比較した被覆物品の透過率T及びヘイズを示している。反射防止効果は、被覆されていないガラス基材の透過率増加と比較した被覆物品の透過率増加として計算された透過率の増加ΔTによって示される。
【表1】
実施例7:超音波噴霧によって調製した二層反射防止(AR)系
【0067】
ソーダ石灰ガラス基材をイソプロピルアルコールできれいにし、ATTOプラズマ処理器(Diener Electronics、ドイツ)を用いて、15分間、窒素プラズマ処理で前処理し、超音波噴霧によって、第一の層として、実施例2の溶液由来のコーティング(n=1.68)で被覆し、第二の層として、実施例5における溶液由来の第二のコーティング(n=1.44)で被覆した。ヘッド速度及び流速を調節することによって、膜厚を調整し、±10nmの膜厚の変動が観察された。第一の層の膜厚はおよそ80nm〜100nmであり、第二の層の膜厚はおよそ70nmであった。各コーティングプロセス後に、150℃で1時間、試料を硬化させた。被覆された試料は、360nm〜750nmの可視光波長範囲において、積算された透過率の3%増加を示した。その後、Prism Ultra−Coat超音波噴霧被覆装置を用いて、PPGからEC1103として入手可能な汚損防止コーティングを塗布し、150℃で1時間硬化させた。
実施例7:超音波噴霧による二層ARコーティングの光学データ
【表2】
実施例8:スロットダイコーティングプロセスによって調製した二層反射防止(AR)系
【0068】
ソーダ石灰ガラス基材をイソプロピルアルコールできれいにし、特別に設計されたプラスチックのシム(shim)中に嵌め込み、真空チャネルを有する大理石上に置いた。第一の層として実施例2における溶液で、第二の層として実施例5における溶液を用いた二層ARコーティングで、順次、ソーダ石灰ガラス上を被覆し、コーティングプロセス後に、150℃で1時間、各層を硬化させた。膜厚は、流速及びダイと基材間の隙間によって調整することができる。スロットダイコーティングによって、±2nmの最良の膜厚の均一性が達成された。第一の層については107±2nmの、第二の層については84±2nmのコーティング積層を、基材上に首尾よく調製した。調製した状態のままの試料は、360nm〜750nmの可視光波長範囲において、積算された透過率の3%増加を示し、0.45%のヘイズを有していた。次いで、Prism Ultra−Coat超音波噴霧被覆装置を用いて、PPGからEC1103として入手可能な汚損防止コーティングを塗布し、100℃で10分間硬化させた。
実施例8:スロットダイコーティングプロセスによる二層AR試料の光学データ
【表3】
実施例9:スピンコーティングによって調製した三層反射防止(AR)コーティング積層
【0069】
ソーダ石灰ガラス基材をイソプロピルアルコールできれいにし、ATTOプラズマ処理器(Diener Electronics、ドイツ)を用いて、15分間、窒素プラズマ処理で処理した。実施例3における溶液由来のコーティングを、第一の層として、ガラス基材上にスピンコートした。次いで、80℃で20分間、コーティングを乾燥した。実施例4における溶液由来の第二のコーティングを、第二の層としてスピンコートした後、80℃で20分間乾燥した。その後、実施例5における溶液由来のコーティングを、第三の層として被覆した。次いで、最後のコーティング積層を500℃で1時間硬化させた。次いで、Prism Ultra−Coat超音波噴霧被覆装置を用いて、PPGからEC1103として入手可能な汚損防止コーティングを塗布し、100℃で10分間硬化させた。多層反射防止コーティングの第一の層、第二の層及び第三の層の平均膜厚はそれぞれ、53nm、88nm及び82nmであった。EC1103コーティングを有する三層ARコーティング積層は、360nm〜750nmの可視光波長範囲において、積算された透過率の3.1%増加を示した。
実施例9:スピンコーティングによる三層ARコーティング積層の光学データ
【表4】
実施例10:三層反射防止コーティングのTF−Calcシミュレーション
実施例10−A〜10−Eは、Software Spectra,Inc.から得たTF−Calcソフトウェアを用いた、シミュレーションされた三層反射防止コーティングである。シミュレーションは、各コーティング層について予め設定された膜厚と屈折率を使用し、ガラス表面上の様々な単一面三層コーティングの透過率(T)を計算する。被覆されていないガラスは91.83%の透過率を有し、実施例10−Aは、95.19%の透過率を有し、3.36%のΔTであり、実施例10−Bは95.24%の透過率を有し、3.41%のΔTであり、実施例10−Cは95.39%の透過率を有し、3.56%のΔTである。しかしながら、第二の層の膜厚が105nmであり、第三の層の膜厚が110nm(すなわち、本発明の被覆物品中の第二及び第三の層の範囲外)である場合には、比較例10−Dは、94.28%の透過率を有し、2.45%のΔTに過ぎない。比較例10−Eについては、その透過率は93.52%であり、1.69%のΔTに過ぎない。これは、いずれのコーティング層の膜厚も、上に明記された範囲外にある場合には、透過率が著しく低下すると予想され、そして/または透過率増加ΔTが著しく低下することを示している。
【表5】
【0070】
本発明の具体的な実施形態を例示目的で上述してきたが、添付の特許請求の範囲中に規定されている本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の細部に多数の変更がなされ得ることが当業者には自明である。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
(A)基材と;
(B)前記基材の少なくとも1つの表面に直接塗布された第一のコーティング層であって、前記第一のコーティング層が90nm〜150nmの乾燥膜厚を有し、かつ少なくともアルコキシシランを含むゾルゲル組成物から形成されており、前記第一のコーティング層が1.62〜1.85の屈折率を示す、第一のコーティング層と;
(C)前記第一のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された第二のコーティング層であって、前記第二のコーティング層が87nm〜97nmの乾燥膜厚を有し、かつシランを含む酸性ゾルゲル組成物から形成されており、前記第二のコーティング層が1.40〜1.48の屈折率を示す、第二のコーティング層と;
(D)前記第二のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された汚損防止コーティング層と
を備える、被覆物品。
(項目2)
前記基材(A)が、ガラス、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ尿素−ウレタン、ポリアミド、三酢酸セルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)又はポリ(アリルジグリコールカーボネート)を含む、項目1に記載の被覆物品。
(項目3)
前記基材(A)がガラス又はポリメチルメタクリレートを含み;前記第一のコーティング層(B)が、
(1)樹脂成分であって、
(a)テトラアルコキシシランと;
(b)エポキシ官能性トリアルコキシシランと;
(c)金属含有触媒と;
(d)溶媒成分と
を含む樹脂成分;及び
(2)少なくとも2.0の屈折率を示す金属酸化物を含む微粒子成分;
を含むゾルゲル組成物から形成されており、前記基材がポリメチルメタクリレートを含む場合には、前記ゾルゲル組成物中の前記溶媒成分(d)が1−プロパノールを含む、項目1に記載の被覆物品。
(項目4)
前記微粒子成分(2)が、前記第一のコーティング層(B)を形成するために使用される前記ゾルゲル組成物中の固形分の総重量に基づいて、18重量%〜50重量%の量で前記ゾルゲル組成物中に存在する、チタン酸化物又はジルコニウム酸化物を含む、項目3に記載の被覆物品。
(項目5)
前記第二のコーティング層(C)が、
(a)テトラアルコキシシランと;
(b)アルキルトリアルコキシシランと;
(c)シラン官能性アクリルポリマーと;
(d)無機酸化物粒子と;
(e)鉱酸と;
(f)水と;
(g)溶媒と
を含む酸性ゾルゲル組成物から形成される、項目1に記載の被覆物品。
(項目6)
前記基材がガラスを含み、前記被覆物品が、360nm〜750nmの波長範囲において、2.5%より大きい透過率増加を示す、項目1に記載の被覆物品。
(項目7)
前記基材が、2つの反対の表面を有する、項目1に記載の被覆物品。
(項目8)
前記コーティング(B)、(C)及び汚損防止コーティング(D)の各々が、前記基材の両方の反対の表面上に被覆されている、項目7に記載の被覆物品。
(項目9)
前記被覆物品が、表示素子、窓、鏡並びに/又はアクティブ型及びパッシブ型液晶セル素子若しくは機器を備える光学物品である、項目1に記載の被覆物品。
(項目10)
前記第二のコーティング層が本質的にフッ素を含まない、項目1に記載の被覆物品。
(項目11)
前記被覆物品が、360nm〜750nmの波長範囲において、少なくとも2.0%の透過率増加ΔTを示す、項目1に記載の被覆物品。
(項目12)
(A)基材と;
(B)前記基材の少なくとも1つの表面に塗布された第一のコーティング層であって、前記第一のコーティング層が44nm〜64nmの乾燥膜厚を有し、かつシランを含むゾルゲル組成物から形成されており、前記第一のコーティング層が1.62〜1.85の屈折率を示す、第一のコーティング層と;
(C)前記第一のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された第二のコーティング層であって、前記第二のコーティング層が70nm〜90nmの乾燥膜厚を有し、かつシランを含むゾルゲル組成物から形成されており、前記第二のコーティング層が1.90〜2.10の屈折率を示す、第二のコーティング層と;
(D)前記第二のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された第三のコーティング層であって、前記第三のコーティング層が74nm〜94nmの乾燥膜厚を有し、かつシランを含む酸性ゾルゲル組成物から形成されており、前記第三のコーティング層が1.40〜1.48の屈折率を示す、第三のコーティング層と;
(E)前記第三のコーティング層の少なくとも1つの表面に塗布された汚損防止コーティング層と
を備える、被覆物品。
(項目13)
前記基材(A)が、ガラス、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ尿素−ウレタン、ポリアミド、三酢酸セルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)又はポリ(アリルジグリコールカーボネート)を含む、項目12に記載の被覆物品。
(項目14)
前記第一のコーティング層(B)が、ゾルゲル組成物から形成されており、前記ゾルゲル組成物が、
(1)樹脂成分であって、
(a)テトラアルコキシシランと;
(b)エポキシ官能性トリアルコキシシランと;
(c)金属含有触媒と;
(d)溶媒成分と
を含む樹脂成分;及び
(2)前記第一のコーティング層(B)を形成するために使用される前記ゾルゲル組成物中の固形分の総重量に基づいて、20重量%〜70重量%の量で前記ゾルゲル組成物中に存在する、チタン酸化物又はジルコニウム酸化物を含む微粒子成分
を含む、項目12に記載の被覆物品。
(項目15)
前記第二のコーティング層(C)が、ゾルゲル組成物から形成されており、前記ゾルゲル組成物が、
(1)樹脂成分であって、
(a)テトラアルコキシシランと;
(b)エポキシ官能性トリアルコキシシランと;
(c)金属含有触媒と;
(d)溶媒成分と
を含む樹脂成分;及び
(2)前記第二のコーティング層(C)を形成するために使用される前記ゾルゲル組成物中の固形分の総重量に基づいて、40重量%〜95重量%の量で前記ゾルゲル組成物中に存在する、チタン酸化物又はジルコニウム酸化物を含む微粒子成分
を含む、項目12に記載の被覆物品。
(項目16)
前記第三のコーティング層(D)が、
(a)テトラアルコキシシランと;
(b)アルキルトリアルコキシシランと;
(c)シラン官能性アクリルポリマーと;
(d)無機酸化物粒子と;
(e)鉱酸と;
(f)水と;
(g)溶媒と
を含む酸性ゾルゲル組成物から形成される、項目12に記載の被覆物品。
(項目17)
前記基材がガラスを含み、前記被覆物品が、a、または360nm〜750nmの波長範囲において3.0%より大きい透過率増加を示す、項目12に記載の被覆物品。
(項目18)
前記基材が、2つの反対の表面を有する、項目12に記載の被覆物品。
(項目19)
前記被覆物品が、表示素子、窓、鏡並びに/又はアクティブ型及びパッシブ型液晶セル素子若しくは機器を備える光学物品である、項目12に記載の被覆物品。
(項目20)
前記被覆物品が、360nm〜750nmの波長範囲において、少なくとも2.5%の透過率増加ΔTを示す、項目12に記載の被覆物品。
(項目21)
反射防止特性を示す被覆物品を形成するプロセスであって、
(A)90nm〜150nmの乾燥膜厚を有する第一のコーティング層を形成するために、基材の少なくとも1つの表面にゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記ゾルゲル組成物が少なくともシランを含み、前記第一のコーティング層が1.62〜1.85の屈折率を示す、工程;
(B)87nm〜97nmの乾燥膜厚を有する第二のコーティング層を形成するために、前記第一のコーティング層の少なくとも1つの表面に酸性ゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記酸性ゾルゲル組成物がシランを含み、前記第二のコーティング層が1.40〜1.48の屈折率を示す、工程;並びに
(C)前記第二のコーティング層に汚損防止コーティング層を塗布する工程を含む、プロセス。
(項目22)
前記コーティングが、スロットダイコーティングプロセス、噴霧コーティングプロセス、スピンコーティングプロセス又は浸漬コーティングプロセスによって、各々独立に塗布される、項目21に記載のプロセス。
(項目23)
反射防止特性を示す被覆物品を形成するプロセスであって、
(A)第一のコーティング層を形成するために、基材の少なくとも1つの表面に第一のゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記第一のゾルゲル組成物が少なくともシランを含み、前記第一のコーティング層が44nm〜64nmの乾燥膜厚を有し、かつ1.62〜1.85の屈折率を示す、工程;
(B)第二のコーティング層を形成するために、前記第一のコーティング層の少なくとも1つの表面に第二のゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記第二のゾルゲル組成物がシランを含み、前記第二のコーティング層が70nm〜90nmの乾燥膜厚を有し、かつ1.90〜2.10の屈折率を示す、工程;
(C)第三のコーティング層を形成するために、前記第二のコーティング層の少なくとも1つの表面に酸性ゾルゲル組成物を塗布する工程であって、前記酸性ゾルゲル組成物がシランを含み、前記第三のコーティング層が74nm〜94nmの乾燥膜厚を有し、かつ1.40〜1.48の屈折率を示す、工程;並びに
(D)前記第三のコーティング層に汚損防止コーティング層を塗布する工程を含む、プロセス。
(項目24)
各コーティングが、スロットダイコーティングプロセス、噴霧コーティングプロセス、スピンコーティングプロセス又は浸漬コーティングプロセスによって、独立に塗布される、項目23に記載のプロセス。