【文献】
DAOJING, Li et al.,"2D-OS-CFAR Detector for Cloud Clutter Suppression",2001 CIE International Conference on Radar Proceedings,IEEE,2001年10月,Cat No.01TH8559,pp.350-353,DOI: 10.1109/ICR.2001.984694
【文献】
GAO, Jue et al.,"Fast two-dimensional subset censored CFAR method for multiple objects detection from acoustic image",IET Radar, Sonar & Navigation,IET,2017年04月,Vol.11, No.3,pp.505-512,DOI: 10.1049/iet-rsn.2016.0322
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記参照領域における信号強度の順序統計量に基づいて、所定の基準よりも自機器から遠い領域に存在するターゲットを検出する際、前記検査領域を基準として前記距離方向における近い方に参照領域を設けたパターンを用いる、請求項1に記載の電子機器。
前記制御部は、前記参照領域における信号強度の順序統計量に基づいて、所定の基準よりも自機器に近い領域に存在するターゲットを検出する際、前記検査領域を基準として前記距離方向における遠い方に参照領域を設けたパターンを用いる、請求項2に記載の電子機器。
前記制御部は、前記受信信号に基づく信号強度であって距離フーリエ変換処理及び速度フーリエ変換処理の少なくとも一方を行ったものの距離方向及び相対速度方向の2次元的な分布において、前記参照領域を設ける、請求項1から3のいずれかに記載の電子機器。
前記制御部は、前記検査領域における検査セル及び前記参照領域における参照セルを含む距離方向及び相対速度方向の2次元的なシフトレジスタを備える、請求項1から7のいずれかに記載の電子機器。
前記シフトレジスタは、所定のサンプリング周期で一方から入力された前記受信信号に基づく信号強度を、先入れ先出し方式によって他方に向けてシフトする、請求項8に記載の電子機器。
前記制御部は、前記データ選択部によって選択された信号強度に基づいて、前記ターゲットの検出に用いる閾値を設定する閾値算出部を備える、請求項11に記載の電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信することにより、当該物体を検出する技術において、ターゲットを検出する精度を向上させることが望ましい。本開示の目的は、ターゲットを検出する精度を向上し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することにある。一実施形態によれば、ターゲットを検出する精度を向上し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することができる。以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の物体をターゲットとして検出することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
【0012】
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、自動運転自動車、バス、タクシー、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、ヘリコプター、トラクターなどの農作業装置、除雪車、清掃車、パトカー、救急車、及びドローンなど、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。一実施形態に係る電子機器は、センサ及び所定の物体の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、センサ及び物体の双方が静止していても、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、本開示に含まれる自動車は、全長、全幅、全高、排気量、定員、積載量などで限定されるものではない。例えば、本開示の自働車には、排気量が660ccより大きい自動車や、排気量が660cc以下の自動車、いわゆる軽自動車なども含む。また、本開示に含まれる自動車は、エネルギーの一部若しくは全部が電気を利用し、モータを利用する自動車も含まれる。
【0013】
まず、一実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサを、移動体に設置した例を示している。
【0015】
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。また、
図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)しているものとする。電子機器1の具体的な構成については後述する。センサ5は、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。また、センサ5は、電子機器1に含まれる制御部10(
図2)の少なくとも一部など、他の機能部の少なくともいずれかを、適宜含んでもよい。
図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。
図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
【0016】
図1に示すように、移動体100には、送信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。
図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、センサ5が移動体100に設置される位置は、
図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、
図1に示すようなセンサ5を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このようなセンサ5の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。センサ5は、移動体100の内部に設置されているとしてもよい。移動体100の内部とは、例えばバンパー内の空間、ボディ内の空間、ヘッドライト内の空間、又は運転スペースの空間などでよい。
【0017】
センサ5は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の物体(例えば
図1に示す物体200)が存在する場合、センサ5から送信された送信波の少なくとも一部は、当該物体によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えばセンサ5の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該物体をターゲットとして検出することができる。
【0018】
送信アンテナを備えるセンサ5は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、センサ5は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係るセンサ5は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
【0019】
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の物体200をターゲットとして検出することができる。例えば、
図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器1は、所定の物体200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。
【0020】
ここで、物体200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、物体200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者などの人間、動物、昆虫その他の生命体、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、マンホール、又は障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、物体200は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、物体200は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。本開示において、センサ5が検出する物体は、無生物の他に、人又は動物などの生物も含む。本開示のセンサ5が検出する物体は、レーダ技術により検知される、人、物、及び動物などを含む物標を含む。
【0021】
図1において、センサ5の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、
図1において、センサ5は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、センサ5は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、センサ5は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。
【0022】
以下、典型的な例として、センサ5の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz〜30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、センサ5の送信アンテナは、77GHz〜81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。
【0023】
図2は、一実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の構成の一例について説明する。
【0024】
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz〜81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、例として、このような実施形態について説明する。
【0025】
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5とECU(Electronic Control Unit)50とから構成される。ECU50は、移動体100の様々な動作を制御する。ECU50は、少なくとも1以上のECUにより構成されるものとしてよい。一実施形態に係る電子機器1は、制御部10を備えている。また、一実施形態に係る電子機器1は、送信部20、受信部30A〜30D、及び記憶部40などの少なくともいずれかのような、他の機能部を適宜含んでもよい。
図2に示すように、電子機器1は、受信部30A〜30Dのように、複数の受信部を備えてよい。以下、受信部30Aと、受信部30Bと、受信部30Cと、受信部30Dとを区別しない場合、単に「受信部30」と記す。
【0026】
制御部10は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、距離速度検出判定部13、到来角推定部14、及び物体検出部15を備えてよい。制御部10に含まれるこれらの機能部については、さらに後述する。
【0027】
送信部20は、
図2に示すように、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23A及び23B、増幅器24A及び24B、並びに、送信アンテナ25A及び25Bを備えてよい。以下、位相制御部23Aと、位相制御部23Bとを区別しない場合、単に「位相制御部23」と記す。また、以下、増幅器24Aと、増幅器24Bとを区別しない場合、単に「増幅器24」と記す。また、以下、送信アンテナ25Aと、送信アンテナ25Bとを区別しない場合、単に「送信アンテナ25」と記す。
【0028】
受信部30は、
図2に示すように、それぞれ対応する受信アンテナ31A〜31Dを備えてよい。以下、受信アンテナ31Aと、受信アンテナ31Bと、受信アンテナ31Cと、受信アンテナ31Dとを区別しない場合、単に「受信アンテナ31」と記す。また、複数の受信部30は、それぞれ、
図2に示すように、LNA32、ミキサ33、IF部34、及びAD変換部35を備えてよい。受信部30A〜30Dは、それぞれ同様の構成としてよい。
図2においては、代表例として、受信部30Aのみの構成を概略的に示してある。
【0029】
上述のセンサ5は、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31を備えるものとしてよい。また、センサ5は、制御部10などの他の機能部の少なくともいずれかを適宜含んでもよい。
【0030】
一実施形態に係る電子機器1が備える制御部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。制御部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。制御部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、制御部10は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。制御部10は、制御部10の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
【0031】
記憶部40は、制御部10において実行されるプログラム、及び、制御部10において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、記憶部40は、制御部10のワークメモリとして機能してよい。記憶部40は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。また、例えば、記憶部40は、本実施形態に係る電子機器1に挿入されたメモリカードのような記憶媒体としてもよい。また、記憶部40は、上述のように、制御部10として用いられるCPUの内部メモリであってもよい。
【0032】
一実施形態において、記憶部40は、送信アンテナ25から送信する送信波T及び受信アンテナ31から受信する反射波Rによって物体を検出する範囲を設定するための各種パラメータを記憶してよい。
【0033】
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御することができる。この場合、制御部10は、記憶部40に記憶された各種情報に基づいて、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御してよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、信号生成部21に信号の生成を指示したり、信号生成部21が信号を生成するように制御したりしてもよい。
【0034】
信号生成部21は、制御部10の制御により、送信アンテナ25から送信波Tとして送信される信号(送信信号)を生成する。信号生成部21は、送信信号を生成する際に、例えば制御部10による制御に基づいて、送信信号の周波数を割り当ててよい。具体的には、信号生成部21は、例えば制御部10によって設定されたパラメータにしたがって、送信信号の周波数を割り当ててよい。例えば、信号生成部21は、制御部10又は記憶部40から周波数情報を受け取ることにより、例えば77〜81GHzのような周波数帯域の所定の周波数の信号を生成する。信号生成部21は、例えば電圧制御発振器(VCO)のような機能部を含んで構成してよい。
【0035】
信号生成部21は、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。以下説明する各機能部も、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、可能な場合には、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。
【0036】
一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号生成部21が生成する信号は、例えば制御部10において予め設定されていてもよい。また、信号生成部21が生成する信号は、例えば記憶部40などに予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号生成部21によって生成された信号は、シンセサイザ22に供給される。
【0037】
図3は、信号生成部21が生成するチャープ信号の例を説明する図である。
【0038】
図3において、横軸は経過する時間を表し、縦軸は周波数を表す。
図3に示す例において、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する線形チャープ信号を生成する。
図3においては、各チャープ信号を、c1,c2,…,c8のように示してある。
図3に示すように、それぞれのチャープ信号において、時間の経過に伴って周波数が線形に増大する。
【0039】
図3に示す例において、c1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含めて、1つのサブフレームとしている。すなわち、
図3に示すサブフレーム1及びサブフレーム2などは、それぞれc1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含んで構成されている。また、
図3に示す例において、サブフレーム1〜サブフレーム16のように16のサブフレームを含めて、1つのフレームとしている。すなわち、
図3に示すフレーム1及びフレーム2などは、それぞれ16のサブフレームを含んで構成されている。また、
図3に示すように、フレーム同士の間には、所定の長さのフレームインターバルを含めてもよい。
図3に示す1つのフレームは、例えば30ミリ秒から50ミリ秒程度の長さとしてよい。
【0040】
図3において、フレーム2以降も同様の構成としてよい。また、
図3において、フレーム3以降も同様の構成としてよい。一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、任意の数のフレームとして送信信号を生成してよい。また、
図3においては、一部のチャープ信号は省略して示している。このように、信号生成部21が生成する送信信号の時間と周波数との関係は、例えば記憶部40などに記憶しておいてよい。
【0041】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、複数のチャープ信号を含むサブフレームから構成される送信信号を送信してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、サブフレームを所定数含むフレームから構成される送信信号を送信してよい。
【0042】
以下、電子機器1は、
図3に示すようなフレーム構造の送信信号を送信するものとして説明する。しかしながら、
図3に示すようなフレーム構造は一例であり、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号は8つに限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のチャープ信号を含むサブフレームを生成してよい。また、
図3に示すようなサブフレーム構造も一例であり、例えば1つのフレームに含まれるサブフレームは16に限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のサブフレームを含むフレームを生成してよい。信号生成部21は、異なる周波数の信号を生成してよい。信号生成部21は、周波数fがそれぞれ異なる帯域幅の複数の離散的な信号を生成してもよい。
【0043】
図2に戻り、シンセサイザ22は、信号生成部21が生成した信号の周波数を、所定の周波数帯の周波数まで上昇させる。シンセサイザ22は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択された周波数まで、信号生成部21が生成した信号の周波数を上昇させてよい。送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば制御部10によって設定されてもよい。また、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば記憶部40に記憶されていてもよい。シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、位相制御部23及びミキサ33に供給される。位相制御部23が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の位相制御部23のそれぞれに供給されてよい。また、受信部30が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の受信部30におけるそれぞれのミキサ33に供給されてよい。
【0044】
位相制御部23は、シンセサイザ22から供給された送信信号の位相を制御する。具体的には、位相制御部23は、例えば制御部10による制御に基づいて、シンセサイザ22から供給された信号の位相を適宜早めたり遅らせたりすることにより、送信信号の位相を調整してよい。この場合、位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの経路差に基づいて、それぞれの送信信号の位相を調整してもよい。位相制御部23がそれぞれの送信信号の位相を適宜調整することにより、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tは、所定の方向において強め合ってビームを形成する(ビームフォーミング)。この場合、ビームフォーミングの方向と、複数の送信アンテナ25がそれぞれ送信する送信信号の制御すべき位相量との相関関係は、例えば記憶部40に記憶しておいてよい。位相制御部23によって位相制御された送信信号は、増幅器24に供給される。
【0045】
増幅器24は、位相制御部23から供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいて増幅させる。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の増幅器24は、複数の位相制御部23のうちそれぞれ対応するものから供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいてそれぞれ増幅させてよい。送信信号のパワーを増幅させる技術自体は既に知られているため、より詳細な説明は省略する。増幅器24は、送信アンテナ25に接続される。
【0046】
送信アンテナ25は、増幅器24によって増幅された送信信号を、送信波Tとして出力(送信)する。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の送信アンテナ25は、複数の増幅器24のうちそれぞれ対応するものによって増幅された送信信号を、それぞれ送信波Tとして出力(送信)してよい。送信アンテナ25は、既知のレーダ技術に用いられる送信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0047】
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナ25を備え、送信アンテナ25から送信波Tとして送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。ここで、電子機器1を構成する各機能部のうちの少なくとも1つは、1つの筐体に収められてもよい。また、この場合、当該1つの筐体は、容易に開けることができない構造としてもよい。例えば送信アンテナ25、受信アンテナ31、増幅器24が1つの筐体に収められ、かつ、この筐体が容易に開けられない構造となっているとよい。さらに、ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、送信アンテナ25は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部に送信波Tを送信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で送信アンテナ25を覆うことにより、送信アンテナ25が外部との接触により破損したり不具合が発生したりするリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0048】
図2に示す電子機器1は、送信アンテナ25を2つ備える例を示している。しかしながら、一実施形態において、電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25を備えてもよい。一方、一実施形態において、電子機器1は、送信アンテナ25から送信される送信波Tが所定方向にビームを形成するようにする場合、複数の送信アンテナ25を備えてよい。一実施形態において、電子機器1は、任意の複数の送信アンテナ25を備えてもよい。この場合、電子機器1は、複数の送信アンテナ25に対応させて、位相制御部23及び増幅器24もそれぞれ複数備えてよい。そして、複数の位相制御部23は、シンセサイザ22から供給されて複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信波の位相を、それぞれ制御してよい。また、複数の増幅器24は、複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信信号のパワーを、それぞれ増幅してよい。また、この場合、センサ5は、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。このように、
図2に示す電子機器1は、複数の送信アンテナ25を備える場合、当該複数の送信アンテナ25から送信波Tを送信するのに必要な機能部も、それぞれ複数含んで構成してよい。
【0049】
受信アンテナ31は、反射波Rを受信する。反射波Rは、送信波Tが所定の物体200に反射したものとしてよい。受信アンテナ31は、例えば受信アンテナ31A〜受信アンテナ31Dのように、複数のアンテナを含んで構成してよい。受信アンテナ31は、既知のレーダ技術に用いられる受信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。受信アンテナ31は、LNA32に接続される。受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号は、LNA32に供給される。
【0050】
一実施形態に係る電子機器1は、複数の受信アンテナ31から、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)として送信された送信波Tが所定の物体200によって反射された反射波Rを受信することができる。このように、送信波Tとして送信チャープ信号を送信する場合、受信した反射波Rに基づく受信信号は、受信チャープ信号と記す。すなわち、電子機器1は、受信アンテナ31から反射波Rとして受信信号(例えば受信チャープ信号)を受信する。ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、受信アンテナ31は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部から反射波Rを受信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で受信アンテナ31を覆うことにより、受信アンテナ31が外部との接触により破損又は不具合が発生するリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0051】
また、受信アンテナ31が送信アンテナ25の近くに設置される場合、これらをまとめて1つのセンサ5に含めて構成してもよい。すなわち、1つのセンサ5には、例えば少なくとも1つの送信アンテナ25及び少なくとも1つの受信アンテナ31を含めてもよい。例えば、1つのセンサ5は、複数の送信アンテナ25及び複数の受信アンテナ31を含んでもよい。このような場合、例えば1つのレーダカバーのようなカバー部材で、1つのレーダセンサを覆うようにしてもよい。
【0052】
LNA32は、受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号を低ノイズで増幅する。LNA32は、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)としてよく、受信アンテナ31から供給された受信信号を低雑音で増幅する。LNA32によって増幅された受信信号は、ミキサ33に供給される。
【0053】
ミキサ33は、LNA32から供給されるRF周波数の受信信号を、シンセサイザ22から供給される送信信号に混合する(掛け合わせる)ことにより、ビート信号を生成する。ミキサ33によって混合されたビート信号は、IF部34に供給される。
【0054】
IF部34は、ミキサ33から供給されるビート信号に周波数変換を行うことにより、ビート信号の周波数を中間周波数(IF(Intermediate Frequency)周波数)まで低下させる。IF部34によって周波数を低下させたビート信号は、AD変換部35に供給される。
【0055】
AD変換部35は、IF部34から供給されたアナログのビート信号をデジタル化する。AD変換部35は、任意のアナログ−デジタル変換回路(Analog to Digital Converter(ADC))で構成してよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、制御部10の距離FFT処理部11に供給される。受信部30が複数の場合、複数のAD変換部35によってデジタル化されたそれぞれのビート信号は、距離FFT処理部11に供給されてよい。
【0056】
距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との間の距離を推定する。距離FFT処理部11は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、距離FFT処理部11は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。
【0057】
距離FFT処理部11は、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号に対してFFT処理を行う(以下、適宜「距離FFT処理」と記す)。例えば、距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、信号強度(電力)の時間変化として表すことができる。距離FFT処理部11は、このようなビート信号にFFT処理を行うことにより、各周波数に対応する信号強度(電力)として表すことができる。距離FFT処理部11は、距離FFT処理によって得られた結果においてピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の物体200があると判断してもよい。例えば、一定誤警報確率(CFAR(Constant False Alarm Rate))による検出処理のように、外乱信号の平均電力又は振幅から閾値以上のピーク値が検出された場合、送信波を反射する物体(反射物体)が存在するものと判断する方法が知られている。
【0058】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tとして送信される送信信号、及び、反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体200をターゲットとして検出することができる。
【0059】
距離FFT処理部11は、1つのチャープ信号(例えば
図3に示すc1)に基づいて、所定の物体との間の距離を推定することができる。すなわち、電子機器1は、距離FFT処理を行うことにより、
図1に示した距離Lを測定(推定)することができる。ビート信号にFFT処理を行うことにより、所定の物体との間の距離を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果(例えば距離の情報)は、速度FFT処理部12に供給されてよい。また、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果は、距離速度検出判定部13及び/又は物体検出部15などにも供給されてよい。
【0060】
速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との相対速度を推定する。速度FFT処理部12は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、速度FFT処理部12は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。
【0061】
速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に対してさらにFFT処理を行う(以下、適宜「速度FFT処理」と記す)。例えば、速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。速度FFT処理部12は、チャープ信号のサブフレーム(例えば
図3に示すサブフレーム1)に基づいて、所定の物体との相対速度を推定することができる。上述のようにビート信号に距離FFT処理を行うと、複数のベクトルを生成することができる。これら複数のベクトルに対して速度FFT処理を行った結果におけるピークの位相を求めることにより、所定の物体との相対速度を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理を行うことにより、
図1に示した移動体100と所定の物体200との相対速度を測定(推定)することができる。距離FFT処理を行った結果に対して速度FFT処理を行うことにより、所定の物体との相対速度を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果(例えば速度の情報)は、到来角推定部14に供給されてよい。また、速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果は、距離速度検出判定部13及び/又は物体検出部15などにも供給されてよい。
【0062】
距離速度検出判定部13は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果、及び/又は、速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果に基づいて、距離及び/又は相対速度についての判定処理を行う。距離速度検出判定部13は、所定の距離及び/又は所定の相対速度において、ターゲットを検出したか否かを判定する。距離速度検出判定部13については、さらに後述する。
【0063】
到来角推定部14は、速度FFT処理部12によって速度FFT処理が行われた結果に基づいて、所定の物体200から反射波Rが到来する方向を推定する。電子機器1は、複数の受信アンテナ31から反射波Rを受信することで、反射波Rが到来する方向を推定することができる。例えば、複数の受信アンテナ31は、所定の間隔で配置されているものとする。この場合、送信アンテナ25から送信された送信波Tが所定の物体200に反射されて反射波Rとなり、所定の間隔で配置された複数の受信アンテナ31はそれぞれ反射波Rを受信する。そして、到来角推定部14は、複数の受信アンテナ31がそれぞれ受信した反射波Rの位相、及びそれぞれの反射波Rの経路差に基づいて、反射波Rが受信アンテナ31に到来する方向を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理が行われた結果に基づいて、
図1に示した到来角θを測定(推定)することができる。
【0064】
速度FFT処理が行われた結果に基づいて、反射波Rが到来する方向を推定する技術は各種提案されている。例えば、既知の到来方向推定のアルゴリズムとしては、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Technique)などが知られている。したがって、公知の技術についてのより詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。到来角推定部14によって推定された到来角θの情報(角度情報)は、物体検出部15に供給されてよい。
【0065】
物体検出部15は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、及び到来角推定部14の少なくともいずれかから供給される情報に基づいて、送信波Tが送信された範囲に存在する物体を検出する。物体検出部15は、供給された距離の情報、速度の情報、及び角度情報に基づいて例えばクラスタリング処理を行うことにより、物体検出を行ってもよい。データをクラスタリングする際に用いるアルゴリズムとして、例えばDBSCAN(Density-based spatial clustering of applications with noise)などが知られている。クラスタリング処理においては、例えば検出される物体を構成するポイントの平均電力を算出してもよい。物体検出部15において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、例えばECU50などに供給されてもよい。この場合、移動体100が自動車である場合、例えばCAN(Controller Area Network)のような通信インタフェースを用いて通信を行ってもよい。
【0066】
一実施形態に係る電子機器1が備えるECU50は、移動体100を構成する各機能部の制御をはじめとして、移動体100全体の動作の制御を行うことができる。ECU50は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。ECU50は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、ECU50は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。ECU50は、ECU50の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。また、制御部10の機能の少なくとも一部がECU50の機能とされてもよいし、ECU50の機能の少なくとも一部が制御部10の機能とされてもよい。
【0067】
図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えている。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25及び任意の数の受信アンテナ31を備えてもよい。例えば、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えることにより、電子機器1は、仮想的に8本のアンテナにより構成される仮想アンテナアレイを備えるものと考えることができる。このように、電子機器1は、例えば仮想8本のアンテナを用いることにより、
図3に示す16のサブフレームの反射波Rを受信してもよい。
【0068】
次に、一実施形態に係る電子機器1によるターゲット検出処理について説明する。
【0069】
上述のように、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナから送信波を送信し、ターゲットとなる物体及び/又はクラッタなどによって送信波が反射された反射波を、受信アンテナから受信する。そして、一実施形態に係る電子機器1は、送信信号及び/又は受信信号に基づいて、送信波を反射する物体をターゲットとして検出し得る。
【0070】
一般的なFM−CWレーダの技術においては、受信信号からビート周波数を抽出したものに高速フーリエ変換処理を行うなどした結果に基づいて、ターゲットが存在するか否かを判定することができる。ここで、受信信号からビート周波数を抽出して高速フーリエ変換処理を行うなどした結果には、クラッタ(不要反射成分)などによる雑音(ノイズ)の成分も含まれる。したがって、受信信号を処理した結果から雑音成分を取り除き、ターゲットの信号のみを抽出するための処理を実行してもよい。
【0071】
ターゲットが存在するか否かを判定する手法として、受信信号の出力に閾値を設定し、反射信号の強度が当該閾値を超える場合にターゲットが存在するとみなす方式がある(threshold detection方式)。この方式を採用すると、クラッタの信号強度が当該閾値を超える場合もターゲットと判定することになり、いわゆる「誤警報」を発することになる。このクラッタの信号強度が閾値を超えるか否かは確率統計的なものである。このクラッタの信号強度が閾値を超える確率は、「誤警報確率」と呼ばれる。この誤警報確率を低く一定に抑制するための手法として、一定誤警報確率(Constant False Alarm Rate)を用いることができる。
【0072】
以下、一定誤警報確率(Constant False Alarm Rate)を、単にCFARとも記す。CFARにおいて、雑音の信号強度(振幅)はレイリー(Rayleigh)分布に従うという仮定が用いられる。この仮定に基づくと、ターゲットを検出したか否かを判定するのに用いる閾値を算出するための重みを固定すれば、雑音の振幅にかかわらず、ターゲット検出の誤り率が理論的に一定になる。
【0073】
一般的なレーダの技術におけるCFARとして、Cell Averaging CFAR(以下、CA−CFARとも記す)という方式が知られている。CA−CFARにおいては、所定の処理を施した受信信号の信号強度の値(例えば振幅値)が、一定のサンプリング周期ごとに、順次、シフトレジスタに入力されてよい。このシフトレジスタは、中央に検査セル(cell under test)を有し、当該検査セルの両側にそれぞれ複数個の参照セル(reference cell)を有する。信号強度の値がシフトレジスタに入力されるたびに、以前に入力された信号強度の値は、シフトレジスタの一端側(例えば左端側)から他端側(例えば右端側)のセルに、1つずつ移動される。また、入力のタイミングと同期して、参照セルの各値は平均化される。このようにして得られた平均値は、規定の重みを乗じられ、閾値として算出される。このようにして算出された閾値よりも検査セルの値が大きい場合、検査セルの値がそのまま出力される。一方、算出された閾値よりも検査セルの値が大きくない場合、0(ゼロ)値が出力される。このように、CA−CFARにおいては、参照セルの平均値から閾値を算出して、ターゲットが存在するか否かを判定することにより、検出結果を得ることができる。
【0074】
CA−CFARにおいては、例えば複数のターゲットが近接して存在している場合、アルゴリズムの性質上、ターゲットの近傍において算出される閾値が大きくなる。このため、十分な信号強度を有しているにも関わらず、検出されないターゲットもあり得る。同様に、クラッタの段差がある場合、そのクラッタの段差の近傍においても算出される閾値が大きくなる。この場合も、クラッタの段差の近傍にある小さなターゲットが検出されないこともあり得る。
【0075】
上述のCA−CFARに対し、参照セルにおける値のメディアン(中央値)、又は、参照セルにおける値を小さい順に並べ替えたときの規定番目の値から閾値を得る手法として、Order Statistic CFAR(以下、OS−CFARとも記す)という手法がある。OS−CFERは、順序統計(ordered statistics)に基づいて閾値を設定し、その閾値を超える場合にターゲットが存在すると判定する手法である。このOS−CFARによれば、上述のようなCA−CFARにおける問題点に対処し得る。OS−CFARは、CA−CFARとは部分的に異なる処理を行うことにより、実現することができる。
【0076】
以下、一実施形態に係る電子機器1においてOS−CFAR処理を実行する例について、さらに説明する。
【0077】
一実施形態に係る電子機器1は、例えば
図2に示した制御部10の距離速度検出判定部13において、OS−CFAR処理を行ってよい。一実施形態に係る電子機器1は、例えば
図2に示した制御部10の距離FFT処理部11及び/又は速度FFT処理部12において、OS−CFAR処理を行ってもよい。以下、
図4を参照して、距離速度検出判定部13においてOS−CFAR処理を行う場合の例について説明する。
【0078】
図2において説明したように、一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21によって生成されたチャープ信号の周波数は、シンセサイザ22によって選択された周波数帯の周波数まで上昇される。その後、周波数が上昇されたチャープ信号は、位相制御部23及び増幅器24などを経由して、送信アンテナ25から送信される。また、反射物体によって反射されたチャープ信号は、受信アンテナ31及びLNA32を経由した後、ミキサ33において送信信号と掛け合わされてから、IF部34を経由して、AD変換部35で受信される。AD変換部35において受信された複素信号は、距離FFT処理部11において、距離FFT処理が行われる。
【0079】
一実施形態において、距離速度検出判定部13は、距離FFT処理が行われた信号に、OS−CFAR処理を実行してよい。
図4は、一実施形態に係る電子機器1の制御部10における処理を説明するブロック図である。より詳細には、
図4は、制御部10の距離速度検出判定部13においてOS−CFAR処理を実行する回路のロジックの一例を説明する図である。OS−CFAR処理を実行するために、距離速度検出判定部13は、
図4に示すように、シフトレジスタ131、ソート部132、データ選択部133、閾値算出部134、重み設定部135、及び検出判定部136を含んでよい。
【0080】
OS−CFARにおいても、CA−CFARの場合と同様に、所定の処理を施した受信信号の信号強度の値が、一定のサンプリング周期ごとに、シフトレジスタ131に、順次、入力されてよい。信号強度の値がシフトレジスタ131に入力されるたびに、以前に入力された信号強度の値は、シフトレジスタ131の一端側(例えば左端側)から他端側(例えば右端側)のセルに、1つずつ移動されてよい。このように、一実施形態において、(距離速度検出判定部13の)シフトレジスタ131は、所定のサンプリング周期で一方から入力された受信信号に基づく信号強度を、先入れ先出し方式によって他方に向けてシフトしてよい。
【0081】
図4に示すように、シフトレジスタ131は、中央の検査領域に、検査セルTを有してよい。以下、検査セルTが配置される領域を、「検査領域」とも記す。また、シフトレジスタ131は、検査セルTの両側のガード領域に、それぞれガードセルGを有してよい。
図4において、ガードセルGは、それぞれ連続する2つのセルとして示してあるが、ガードセルGの個数は任意としてよい。以下、ガードセルGが配置される領域を、「ガード領域」とも記す。さらに、シフトレジスタ131は、それぞれのガードセルGの外側の参照領域に、それぞれ複数個の参照セルRを有する。
図4において、参照セルRは、それぞれ連続する4つずつのセルとして示してあるが、参照セルRの個数は任意としてよい。以下、参照セルRが配置される領域を、「参照領域」とも記す。このように、一実施形態において、制御部10(距離速度検出判定部13のシフトレジスタ131)は、距離方向において、検査領域と参照領域との間にガード領域を設けてもよい。また、上述のように、一実施形態において、シフトレジスタ131は、検査領域における検査セルT及び参照領域における参照セルRを含んでよい。
【0082】
ソート部132は、参照セルRのそれぞれから出力される値を小さい順に並べ替える。ソート部132は、例えば任意のソート回路などで構成してよい。ソート部132は、シフトレジスタ131に信号強度が入力されるタイミングと同期して、参照セルRの値を小さい順に並べ替えてよい。このように、一実施形態において、制御部10(距離速度検出判定部13)は、シフトレジスタ131における参照セルRから出力される信号強度を小さい順に並べ替えるソート部132を備えてもよい。
【0083】
データ選択部133は、ソート部132によって並べ替えられた値のうち、規定の位置(例えば小さい方から所定番目)の値を選択して取り出してよい。このように、一実施形態において、制御部10(距離速度検出判定部13)は、ソート部132によって並べ替えられた信号強度のうち、所定番目の信号強度を選択するデータ選択部133を備えてもよい。
【0084】
閾値算出部134は、データ選択部133によって選択された値に規定の重みを乗じることにより、閾値Thを算出してよい。この場合、重み設定部135は、データ選択部133によって選択された値に、例えば規定の重みMを乗じることにより、閾値Thを算出してもよい。このように、一実施形態において、制御部10(距離速度検出判定部13)は、データ選択部133によって選択された信号強度に基づいて、ターゲットの検出に用いる閾値を設定する閾値算出部134を備えてもよい。
【0085】
検出判定部136は、検査セルTにおける信号強度の値Aの大きさを、閾値算出部134によって算出された閾値Thと比較する。検出判定部136は、検査セルTにおける信号強度の値Aが閾値Thよりも大きい場合、検出結果として、検査セルTにおける信号強度の値Aをそのまま出力する。一方、検出判定部136は、検査セルTにおける信号強度の値Aが閾値Thよりも大きくない場合、検出結果として、ゼロを出力する。このように、一実施形態において、制御部10(距離速度検出判定部13の検出判定部136)は、検査領域における検査セルTの信号強度の値Aと閾値Thとに基づいて、ターゲットの存否を判定してよい。
【0086】
OS−CFARにおいては、ソートした信号強度のうち、規定位置(例えば小さい順から所定番目)の値から閾値を算出して、反射波に基づく信号が閾値の算出に与える影響を抑制し得る。したがって、OS−CFARにおいては、ターゲットの近傍において閾値の上昇が抑制され得る。また、OS−CFARにおいては、クラッタの段差の近傍において閾値の上昇が抑制され得る。
【0087】
一実施形態に係る電子機器1において、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号が距離FFT処理部11によって距離FFT処理されることにより、信号強度(電力)の距離方向の分布が得られる。上述のように、距離FFT処理部11によって距離FFT処理された信号は、距離速度検出判定部13(のシフトレジスタ131)に供給されてよい。この場合、
図5に示すように、シフトレジスタ131の右側は、電子機器1のセンサ5から遠い距離に対応するものとしてよい。また、シフトレジスタ131の左側は、電子機器1のセンサ5から近い距離に対応するものとしてよい。
図5は、一実施形態に係る電子機器1において、OS−CFER処理を実行する例を説明する図である。
図5において、検査セルT、ガードセルG、及び参照セルRの配置は、
図4に示した例と同じ態様にしてある。
【0088】
上述したOS−CFARによって、一実施形態に係る電子機器1は、距離検出の判定を行うことができる。すなわち、一実施形態に係る電子機器1の制御部10は、参照セルRにおける信号強度(電力)のうち、低い方から所定番目(例えばK番目)の値に基づいて距離閾値Thを算出する。そして、一実施形態に係る電子機器1の制御部10は、検査セルTにおける信号強度の値Aが距離閾値Thよりも大きければ、検査領域にターゲットが存在すると判定することができる。
【0089】
このようにしてターゲットが存在すると判定された距離において、制御部10の速度FFT処理部12は、複数のチャープ信号に対し、速度FFT処理を行ってもよい。また、距離速度検出判定部13は、上述した距離FFT処理の場合と同様に、速度検出の判定を行ってもよい。上述のように、速度FFT処理部12によって速度FFT処理された信号は、距離速度検出判定部13(のシフトレジスタ131)に供給されてよい。この場合、
図6に示すように、シフトレジスタ131の上側は、電子機器1のセンサ5とターゲットとの相対速度が速い領域に対応するものとしてよい。また、
図6に示すように、シフトレジスタ131の下側は、電子機器1のセンサ5とターゲットとの相対速度が遅い領域に対応するものとしてよい。
図6は、一実施形態に係る電子機器1において、OS−CFER処理を実行する例を説明する図である。
図6においても、検査セルT、ガードセルG、及び参照セルRを配置してあるが、
図6に示す配置は一例である。このように、一実施形態に係る電子機器1は、速度方向の一定誤警報確率による速度検出の判定を行うことができる。
【0090】
図5に示したシフトレジスタ131において、複数の参照セルRは、距離方向に、検査領域の両側に連続して配置されている。OS−CFARにおいて、
図5に示したシフトレジスタ131のように参照セルRを配置すると、状況によっては、ターゲットが正しく検出されないことが想定される。
【0091】
例えば、車載レーダを備えた自車両が高速道路などを走行している場面において、車載レーダを用いて、自車両の周囲に存在する他の車両などを検出することを想定する。ここで、自車両が走行する車線に並行して、例えば鉄柵のような物体が長距離に渡って途切れることなく設置されていたとする。このような環境において、車線に並行して設置された鉄柵のような物体と、自車両との間隔(自車両の幅方向の距離)は、走行中ほぼ一定に維持される。この場合、シフトレジスタ131の参照領域(参照セルR)において、距離方向に渡って連続して大きな(長い)干渉物(鉄柵)による反射波に基づく信号強度が検出される。したがって、車載レーダは、その鉄柵をターゲットとして検出することはできると想定される。
【0092】
しかしながら、その鉄柵に並行する車線において、例えば他の車両などが並走していたとする。このような場合、鉄柵に並走する車両などをターゲットとして検出しようとしても、参照セルRが配置される参照領域は、鉄柵によって反射する反射波による信号強度に対応する領域になってしまう。このような状況においては、雑音電力が増加することにより、検査領域の検査セルTにおける信号強度の値Aは、閾値Thを超えなくなり得る。したがって、車載レーダは、その車両をターゲットとして検出できないことが想定される。
【0093】
また、反射波に基づく信号強度(電力)は、レーダからの距離が近くなるほど、大きくなる傾向にある。このため、電子機器1のセンサ5からの距離が比較的近い領域を参照すると、雑音電力が高くなることにより、検査領域の検査セルTにおける信号強度の値Aは、閾値Thを超えなくなり得る。このような場合も、車載レーダは、対象をターゲットとして検出できないことが想定される。
【0094】
このような状況に対応するため、一実施形態に係る電子機器1は、シフトレジスタ131において、参照領域(参照セルR)を2次元的に配置してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、2次元的に構成されるシフトレジスタ131において、参照領域(参照セルR)の配置を変更する。以下、一実施形態に係る電子機器1は、一定誤警報確率でターゲットを検出するものとして説明する。一実施形態に係る電子機器1は、シフトレジスタ131において、参照領域(参照セルR)を相対速度方向又は距離方向のいずれかの1次元的に配置してもよい。
【0095】
図7は、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131における参照領域(参照セルR)の2次元的な配置の例を示す図である。
図7においても、検査セルT、ガードセルG、及び参照セルRを配置してあるが、
図7に示す配置は一例である。
図7においても、
図5と同様に、シフトレジスタ131の右側は電子機器1のセンサ5から遠い距離に対応し、シフトレジスタ131の左側は電子機器1のセンサ5から近い距離に対応する。また、
図7において、
図6と同様に、シフトレジスタ131の上側は電子機器1のセンサ5との相対速度が速い領域に対応し、シフトレジスタ131の下側は電子機器1のセンサ5との相対速度が遅い領域に対応する。
図4に示した距離速度検出判定部13のシフトレジスタ131は、参照領域(参照セルR)を、距離方向のみに1次元的に配置してある。一方、一実施形態において、距離速度検出判定部13のシフトレジスタ131は、参照領域(参照セルR)を、距離方向及び速度方向に2次元的に配置してよい。このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10(の距離速度検出判定部13)は、検査領域における検査セルT及び参照領域における参照セルRを含む、距離方向及び相対速度方向の2次元的なシフトレジスタ131を備えてよい。
【0096】
上述のように、距離FFT処理部11は、複数のチャープ信号に対して距離フーリエ変換を行ってよい。また、速度FFT処理部12は、距離FFT処理部11によって距離フーリエ変換が行われた信号に、さらに速度フーリエ変換を行ってよい。したがって、距離速度検出判定部13は、複数のチャープ信号に対して距離フーリエ変換した信号に、さらに速度フーリエ変換を行った結果について、距離及び速度の検出判定を同時に行ってよい。
【0097】
図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、検査領域(検査セルT)から距離方向の遠い方に、参照領域(参照セルR)を配置してよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、検査領域から距離方向の近い方に、参照領域を配置しなくてもよい。
図7に示すシフトレジスタ131は、近い距離に対応する領域には参照領域を配置しておらず、遠い距離に対応する領域には参照領域を配置している。一方、後述のように、一実施形態において、シフトレジスタ131は、検査領域から距離の近い方に、参照領域を配置してもよい。
【0098】
また、
図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、参照領域(参照セルR)を距離方向に間欠的に配置してもよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、参照セルRを距離方向に連続させずに配置してもよい。
図7に示すシフトレジスタ131は、参照セルRを、距離方向に連続させずに、間欠的に配置している。
図7に示す例において、参照セルRは、距離方向に間欠的に合計16個配置してある。しかしながら、参照セルRの配置する数は、例えばターゲット検出の態様又は求められる精度などに応じて、任意としてよい。また、
図7に示す例において、参照セルRは、距離方向に3つおきに配置してある。しかしながら、参照セルRを距離方向に間欠的に配置する間隔は、例えばターゲット検出の態様又は求められる精度などに応じて、任意としてよい。また、各参照セルRの距離方向の配置間隔は任意の間隔でよい。各参照セルRの配置間隔は、例えば、等間隔としたり、又は、それぞれごとに異なる間隔などとしてもよい。また、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、参照領域(参照セルR)を距離方向に間欠的に配置する場合と連続的に配置する場合とを組み合わせて配置してもよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、参照セルRを距離方向に連続させて配置した場合と連続させずに配置した場合とを組み合わせて用いてもよい。
【0099】
さらに、
図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、参照領域(参照セルR)を速度方向に間欠的に配置してよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、参照セルRを速度方向に連続させずに配置してよい。
図7に示すシフトレジスタ131は、参照セルRを、速度方向に連続させずに、間欠的に配置している。
図7に示す例において、参照セルRは、速度方向に間欠的に合計16個配置してある。しかしながら、参照セルRの配置する数は、例えばターゲット検出の態様又は求められる精度などに応じて、任意としてよい。また、
図7に示す例において、参照セルRは、速度方向に1つおきに配置してある。しかしながら、参照セルRを速度方向に間欠的に配置する間隔は、例えばターゲット検出の態様又は求められる精度などに応じて、任意としてよい。また、各参照セルRの速度方向の配置間隔も任意の間隔でよい。各参照セルRの配置間隔は、例えば、等間隔としたり、又は、それぞれごとに異なる間隔などとしてもよい。また、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、参照領域(参照セルR)を速度方向に間欠的に配置する場合と連続的に配置する場合とを組み合わせて配置してもよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、参照セルRを速度方向に連続させて配置した場合と連続させずに配置した場合とを組み合わせて用いてもよい。
【0100】
図7に示すように、シフトレジスタ131は、
図5の場合と同様に、距離方向において、検査セルTの両側のガード領域に、それぞれガードセルGを有してよい。また、シフトレジスタ131は、速度方向において、検査セルTの両側のガード領域に、それぞれガードセルGを有してよい。このように、制御部10(距離速度検出判定部13のシフトレジスタ131)は、検査領域(検査セルT)の周囲にガード領域(ガードセルG)を設けてもよい。また、一実施形態において、制御部10(距離速度検出判定部13のシフトレジスタ131)は、検査領域(検査セルT)の周囲に、検査領域(検査セルT)と隣接させてガード領域(ガードセルG)を設けてもよい。
図7において、ガードセルGは、距離方向に沿って、検査セルTの両側にそれぞれ連続する3つ又は4つのセルとして示してある。また、
図7において、ガードセルGは、速度方向に沿って、検査セルTの両側にそれぞれ連続する2つのセルとして示してある。しかしながら、ガードセルGの個数は、前述のような例に限定されず、任意としてよい。例えば、ガードセルGは、
図7に示すように、距離方向と、速度方向とで、異なる個数のセルとしてもよい。一方、ガードセルGは、距離方向と、速度方向とで、同じ個数のセルとしてもよい。また、ガードセルGは、距離方向及び速度方向の少なくとも一方において、検査セルTの両側で異なる個数のセルとしてもよい。
【0101】
一実施形態に係る電子機器1は、上述のように参照領域を配置した後で、上述したOS−CFARによって、速度検出の判定を行うことができる。すなわち、一実施形態に係る電子機器1の制御部10は、参照セルRにおける信号強度(電力)のうち、低い方から所定番目(例えばK番目)の値に基づいて速度閾値Thを算出する。そして、一実施形態に係る電子機器1の制御部10は、検査セルTにおける信号強度の値Aが速度閾値Thよりも大きければ、検査領域にターゲットが存在すると判定することができる。
【0102】
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、一定誤警報確率による距離及び速度の検出の判定を行うことができる。
【0103】
さらに、一実施形態に係る電子機器1において、到来角推定部14は、ターゲットが存在すると判定された速度において、複数の受信アンテナ31が受信する複素信号に基づいて、反射波の到来方向を推定してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、ターゲットの存在する方向の角度を推定することができる。
【0104】
一実施形態に係る電子機器1において、物体検出部15は、反射波の到来方向(角度)の情報、ターゲットとの相対速度の情報、及び/又は、ターゲットまでの距離の情報に基づいて、物体をターゲットとして検出(例えばクラスタリング)したか否かの判定を行う。ここで、反射波の到来方向(角度)の情報は、到来角推定部14から取得してよい。また、ターゲットとの相対速度及び距離の情報は、距離速度検出判定部13から取得してよい。また、ターゲットとの相対速度の情報は、速度FFT処理部12から取得してもよい。また、ターゲットまでの距離の情報は、距離FFT処理部11から取得してもよい。物体検出部15は、ターゲットとして検出する物体を構成するポイントの平均電力を計算してもよい。
【0105】
ところで、一実施形態に係る電子機器1において、上述のように参照領域を配置して2次元FFT処理を行うことにより、ターゲットの存在の有無を判定したとしても、依然としてターゲットの誤検出となり得る状況が想定される。以下、このような状況について説明する。
【0106】
例えば
図7に示すように、検査領域(検査セルT)から距離方向の遠い方に参照領域(参照セルR)を配置して、OS−CFARによってターゲットの検出を行う場合を想定する。この場合、距離FFT処理部11において距離FFT処理された後のデジタル信号は、例えば
図8に示すようになる。
図8は、ビート信号に距離FFT処理を行った結果の一例をグラフにして示す図である。
図8に示すグラフの横軸は電子機器1のセンサ5からの距離を表し、縦軸は受信した反射波の信号強度(電力)を表す。
【0107】
図8に示すグラフにおいて、縦方向のハッチングを付した部分は、主として静止物体による反射波の電力を示すものとしてよい。ここで、静止物体とは、例えば電子機器1を搭載した移動体100に対して静止している物体としてよい。例えば、静止物体とは、移動体100が地上を移動している場合に、地上に静止している物体としてよい。また、例えば、静止物体とは、移動体100が地上を移動している場合に、移動体100と同じ速さで逆向きに地上を移動している物体としてもよい。また、
図8に示すグラフにおいて、塗りつぶした部分は、主として静止物体以外の物体による反射波の電力を示すものとしてよい。
【0108】
ここで、
図8に示すように、電子機器1のセンサ5からの距離が比較的遠い領域においてターゲットの検出を行うと、信号強度(電力)が比較的低くなることがある。
図8において、距離が65mから75mまであたりの領域において、信号強度は比較的低くなっている。このような信号強度の低減は、距離FFT処理部11において距離FFT処理を行う際に窓関数を用いることにより、一層顕著に示され得る。
図8は、距離FFT処理部11において窓関数を用いずに距離FFT処理を行った例を示している。一方、
図9は、距離FFT処理部11において窓関数を用いて距離FFT処理を行った例を示している。
【0109】
図9は、窓関数を用いてビート信号に距離FFT処理を行った結果の一例をグラフにして示す図である。
図8と同様に、
図9に示すグラフの横軸は距離を表し、縦軸は信号強度(電力)を示す。
図9において、距離が65mから75mまであたりの領域、すなわち電子機器1のセンサ5からの距離が比較的遠い領域において、信号強度は比較的低くなることが顕著に示されている。このような信号強度の低下は、センサ5などのようなレーダセンサを構成するハードウェア及び/又はソフトウェアの仕様に起因し得るものと想定される。
【0110】
このように信号強度が低くなる領域に対応する参照セルRを参照してOS−CFAR処理を行うと、当該参照セルRの値に基づいて閾値算出部134が算出する閾値Thも低くなり得る。この場合、検査セルTにおける信号強度の値Aは、低く算出された閾値Thを超え易くなる。このため、検査セルTに対応する領域に実際にはターゲットが存在しなくても、ターゲットを誤検出してしまうという事態が生じ得る。
【0111】
図10は、
図7に示した参照領域(参照セルR)の2次元的な配置を用いて、OS−CFARによってターゲットの検出を行った結果の例を示す図である。
図10に示すグラフの横軸は電子機器1のセンサ5からの距離を表し、縦軸は検出されたターゲットとの相対速度を示す。
図10は、ターゲットを検出したと判定された距離及び速度に対応する点をプロットしたものである。ここでは、電子機器1のセンサ5からの距離が0mから80mまでの範囲において、検出すべきターゲットは存在しないものとして説明する。
【0112】
上述のように、
図7に示すような参照領域(参照セルR)の配置を用いてOS−CFARを行うと、
図8及び
図9に示すように、電子機器1のセンサ5からの距離が比較的遠い領域において、信号強度が比較的低くなり得る。したがって、
図10に示すように、電子機器1は、センサ5からの距離が比較的遠い領域(距離が65mから75mまであたりの領域)において、ターゲットを検出したと判定している。ここでは、実際には距離が65mから75mまであたりの領域においてターゲットとなる物体は存在しないため、このようなターゲットの検出は誤検出となる。
【0113】
このような事態に対処するため、一実施形態に係る電子機器1は、ターゲットの検出の途中で、
図7に示したような参照領域(参照セルR)の2次元的な配置のパターンを、他の配置のパターンに切り替えて用いてよい。例えば、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5からの距離が比較的遠い所定の領域までは、
図7に示したような参照領域(参照セルR)の2次元的な配置のパターンを用いてターゲットを検出してよい。一方、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5からの距離が比較的遠い所定の領域からは、例えば
図11に示すような参照領域(参照セルR)の2次元的な配置のパターンに切り替えて、ターゲットを検出してよい。
【0114】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、参照領域(参照セルR)の2次元的な配置を複数用意し、これらを切り替えてターゲットの検出を行ってよい。このような複数のパターンの切り替えは、例えば制御部10における距離速度検出判定部13によって実行してよい。以下、
図7に示すような参照領域(参照セルR)の2次元的な配置のパターンを、単に「
図7に示すパターン」とも記す。また、以下、
図11に示すような参照領域(参照セルR)の2次元的な配置のパターンを、単に「
図11に示すパターン」とも記す。
【0115】
図11は、
図7と同様に、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131における参照領域(参照セルR)の2次元的な配置の例を示す図である。
図11においても、
図7と同様に、検査セルT、ガードセルG、及び参照セルRを配置してあるが、
図11に示す配置は一例である。
図11においても、
図7と同様に、シフトレジスタ131の右側は電子機器1のセンサ5から遠い距離に対応し、シフトレジスタ131の左側は電子機器1のセンサ5から近い距離に対応する。また、
図11においても、
図7と同様に、シフトレジスタ131の上側は電子機器1のセンサ5との相対速度が速い領域に対応し、シフトレジスタ131の下側は電子機器1のセンサ5との相対速度が遅い領域に対応する。
【0116】
図11に示すように、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、検査領域(検査セルT)から距離方向の近い方に、参照領域(参照セルR)を配置してよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、検査領域から距離方向の遠い方に、参照領域を配置しなくてもよい。
図11に示すシフトレジスタ131は、遠い距離に対応する領域には参照領域を配置しておらず、近い距離に対応する領域には参照領域を配置している。
【0117】
また、
図11に示す例においても、
図7と同様に、参照領域(参照セルR)を距離方向に間欠的に、すなわち連続させずに配置してもよい。また、
図11に示す例においても、
図7の場合と同様に、参照セルRを距離方向に配置する数は、例えばターゲット検出の態様又は求められる精度などに応じて、任意としてよい。
図11に示す例において、参照セルRを距離方向に間欠的に配置する間隔は、例えばターゲット検出の態様又は求められる精度などに応じて、任意としてよい。また、各参照セルRの距離方向の配置間隔は任意の間隔でよい。各参照セルRの距離方向の配置間隔は、例えば、等間隔としたり、又は、それぞれごとに異なる間隔などとしてもよい。また、
図11に示す場合において、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、参照領域(参照セルR)を距離方向に間欠的に配置する場合と連続的に配置する場合とを組み合わせて配置してもよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、参照セルRを距離方向に連続させて配置した場合と連続させずに配置した場合とを組み合わせて用いてもよい。
【0118】
さらに、
図11に示す例においても、
図7と同様に、参照領域(参照セルR)を速度方向に間欠的に、すなわち連続させずに配置してよい。また、
図11に示す例においても、
図7の場合と同様に、参照セルRを速度方向に配置する数は、例えばターゲット検出の態様又は求められる精度などに応じて、任意としてよい。
図11に示す例において、参照セルRを速度方向に間欠的に配置する間隔は、例えばターゲット検出の態様又は求められる精度などに応じて、任意としてよい。また、各参照セルRの速度方向の配置間隔も任意の間隔でよい。各参照セルRの速度方向の配置間隔は、例えば、等間隔としたり、又は、それぞれごとに異なる間隔などとしてもよい。また、
図11に示す場合において、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、参照領域(参照セルR)を速度方向に間欠的に配置する場合と連続的に配置する場合とを組み合わせて配置してもよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1のシフトレジスタ131は、参照セルRを速度方向に連続させて配置した場合と連続させずに配置した場合とを組み合わせて用いてもよい。
【0119】
図11に示す検査領域(検査セルT)、ガード領域(ガードセルG)、及び参照領域(参照セルR)の配置は、
図7に示したこれらの配置の左右を反転させた例を示してある。しかしながら、
図11に示すそれぞれの領域におけるそれぞれのセルの配置は、
図11に示した配置の左右を反転されたものに限定されず、種々の配置としてよい。
【0120】
また、
図11に示すように、シフトレジスタ131は、
図7の場合と同様に、距離方向において、検査セルTの両側のガード領域に、それぞれガードセルGを有してよい。また、シフトレジスタ131は、速度方向において、検査セルTの両側のガード領域に、それぞれガードセルGを有してよい。また、
図11においても、
図7に示した例と同様に、ガードセルGは、距離方向に沿って、検査セルTの両側にそれぞれ連続する3つ又は4つのセルとして示してある。さらに、
図11においても、
図7に示した例と同様に、ガードセルGは、速度方向に沿って、検査セルTの両側にそれぞれ連続する2つのセルとして示してある。しかしながら、ガードセルGの個数は、前述のような例に限定されず、任意としてよい。
【0121】
図8及び
図9に示した例においては、センサ5からの距離が65mから75mまであたりの領域において、信号強度が比較的低くなっている。したがって、一実施形態において、制御部10は、センサ5からの距離が例えば65mまでは、
図7に示すパターンを用いてターゲットの検出を行ってよい。この場合、一実施形態において、制御部10は、センサ5からの距離が例えば65mからは、
図11に示すパターンを用いてターゲットの検出を行ってよい。
【0122】
このように、一実施形態において、制御部10は、
図7に示すパターン及び
図11に示すパターンのような複数のパターンを切り替えて、ターゲットの検出を行ってよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、
図8及び
図9に示した例のように信号強度が比較的低くなる65mから75mまであたりの領域においては、
図11に示すパターンを用いてよい。すなわち、一実施形態において、制御部10は、ターゲットを検出する距離に応じて、
図7に示すパターン及び
図11に示すパターンのような複数のパターンを切り替えてよい。
【0123】
図11に示すパターンを用いる場合、信号強度が比較的低くなる65mから75mまであたりの領域において参照セルが配置されていない。このため、信号強度が低くなる領域に対応する距離においてOS−CFAR処理を行っても、当該領域において閾値算出部134が算出する閾値Thは過度に低くなる事態は抑制される。したがって、検査セルTにおける信号強度の値Aが閾値Thを超え易くなる事態も抑制される。このため、検査セルTに対応する領域にターゲットが存在しないのにターゲットとして誤検出する事態も抑制される。
【0124】
図12は、信号強度が比較的低くなる65mから75mまであたりの領域において、
図11に示すパターンを用いて、OS−CFARによってターゲットの検出を行った結果の例を示す図である。
図12に示すグラフにおいて、
図10と同様に、横軸は電子機器1のセンサ5からの距離を表し、縦軸は検出されたターゲットとの相対速度を示す。
図12も、
図10と同様に、ターゲットを検出したと判定された距離及び速度に対応する点をプロットしたものである。
【0125】
図10示した例においては、センサ5からの距離が比較的遠い領域(距離が65mから75mまであたりの領域)において、ターゲットが誤検出されていた。一方、
図12に示す例においては、センサ5からの距離が比較的遠い領域(距離が65mから75mまであたりの領域)において、ターゲットが誤検出されていないことがわかる。このように、一実施形態に係る電子機器1によれば、ターゲットの誤検出は抑制される。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、ターゲットを検出する精度を向上し得る。
【0126】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信波として送信される送信信号及び反射波として受信される受信信号に基づいて、一定誤警報確率でターゲットを検出する。この場合、制御部10は、受信信号に基づく信号強度の距離方向及び相対速度方向の2次元的な分布において、参照領域(参照セルR)における信号強度の順序統計量に基づいて、ターゲットの検出に用いる閾値を設定する。また、制御部10は、受信信号に基づく信号強度の距離方向及び相対速度方向の2次元的な分布において、検査領域を基準として距離方向及び相対速度方向に間欠的に参照領域(参照セルR)を設けた複数のパターンを切り替えてよい。例えば、制御部10は、
図7に示すパターンと、
図11に示すパターンとを切り替えて用いてよい。
【0127】
このように、制御部10は、受信信号に基づく信号強度の距離方向及び相対速度方向の2次元的な分布において、参照領域(参照セルR)を設けた複数のパターンを切り替えてもよい。ここで、上述の複数のパターンは、検査領域(検査セルT)を基準として距離方向における遠い方及び相対速度方向に間欠的に参照領域(参照セルR)を設けたパターンを含んでよい。また、上述の複数のパターンは、検査領域(検査セルT)を基準として前記距離方向における近い方及び前記相対速度方向に間欠的に参照領域(参照セルR)を設けたパターンとを含んでよい。
【0128】
また、一実施形態において、制御部10は、参照領域における信号強度の順序統計量に基づいて、所定の基準よりも自機器に近い領域(例えば0mから65mまでのような)に存在するターゲットを検出する際、例えば
図7に示すパターンを用いてもよい。すなわち、制御部10は、受信信号に基づく信号強度の距離方向及び相対速度方向の2次元的な分布において、検査領域(検査セルT)を基準として距離方向における遠い方及び相対速度方向に間欠的に参照領域(参照セルR)を設けたパターンを用いてもよい。
【0129】
一方、一実施形態において、制御部10は、参照領域における信号強度の順序統計量に基づいて、所定の基準よりも自機器から遠い領域(例えば65mより遠方のような)に存在するターゲットを検出する際、例えば
図11に示すパターンを用いてもよい。すなわち、制御部10は、受信信号に基づく信号強度の距離方向及び相対速度方向の2次元的な分布において、検査領域(検査セルT)を基準として距離方向における近い方及び相対速度方向に間欠的に参照領域(参照セルR)を設けたパターンを用いてもよい。
【0130】
上述した実施形態において、例えば
図11に示すパターンを用いて、所定の基準よりも自機器から遠い領域の例として65mより遠方に存在するターゲットを検出することを想定して説明した。一実施形態において、
図8及び
図9に示したような信号強度が低下する領域は、レーダの構成及び/又は仕様などによって異なり得る。したがって、所定の基準よりも自機器から遠い領域を65mより遠方としたのはあくまでも一例であり、使用するレーダのハードウェア及び/又はソフトウェアなどに応じて、所定の基準よりも自機器から遠い領域を適宜設定してよい。また、ターゲットの検出の各サイクルにおいて、所定の基準よりも自機器から遠い領域は、毎回同じ領域を設定してもよいし、適宜異なる領域を設定してもよい。
【0131】
また、上述した実施形態において、所定の基準よりも自機器から遠い領域に存在するターゲットを検出するか否かに応じて、参照領域(参照セルR)を設けた複数のパターンを切り替えるものとして説明した。ここで、参照領域(参照セルR)を設けた複数のパターンは、
図7及び
図11のような2つの異なるパターンに限定されるものではなく、3つ以上のパターンを適宜切り替えてもよい。例えば、一実施形態において、検査領域(検査セルT)が遠い距離に移動する距離に対応して、遠い距離にある参照領域(参照セルR)を順次近い方に移動させた複数のパターンを切り替えるとしてもよい。
【0132】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0133】
例えば、上述した実施形態においては、1つのセンサ5によって、動的に物体検出範囲を切り替える態様について説明した。しかしながら、一実施形態において、複数のセンサ5によって、決定された物体検出範囲において物体検出を行ってもよい。また、一実施形態において、複数のセンサ5によって、決定された物体検出範囲に向けてビームフォーミングを行ってもよい。
【0134】
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器が実行するプログラムとして実施してもよい。
【0135】
一実施形態に係る電子機器1は、最小の構成としては、例えばセンサ5又は制御部10の一方のみの少なくとも一部を備えるものとしてよい。一方、一実施形態に係る電子機器1は、制御部10の他に、
図2に示すような、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23、増幅器24、及び送信アンテナ25の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、上述の機能部に代えて、又は上述の機能部とともに、受信アンテナ31、LNA32、ミキサ33、IF部34、AD変換部35の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、記憶部40を含んで構成してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、種々の構成態様を採ることができる。また、一実施形態に係る電子機器1が移動体100に搭載される場合、例えば上述の各機能部の少なくともいずれかは、移動体100内部などの適当な場所に設置されてよい。一方、一実施形態においては、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31の少なくともいずれかは、移動体100の外部に設置されてもよい。