特許第6936577号(P6936577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6936577位置ずれ量取得装置、検査装置、位置ずれ量取得方法および検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6936577
(24)【登録日】2021年8月31日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】位置ずれ量取得装置、検査装置、位置ずれ量取得方法および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20210906BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20210906BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20210906BHJP
   G06T 7/33 20170101ALI20210906BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   G01N21/956 B
   G01B11/00 H
   G06T7/00 610C
   G06T7/33
   H05K3/00 Q
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-8269(P2017-8269)
(22)【出願日】2017年1月20日
(65)【公開番号】特開2018-116008(P2018-116008A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】里見 一哉
(72)【発明者】
【氏名】赤木 祐司
(72)【発明者】
【氏名】井上 学
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2012/144025(JP,A1)
【文献】 特開2010−249565(JP,A)
【文献】 特開2001−357382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
G06T 7/00− 7/90
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置ずれ量取得装置であって、
2つの画像のうち一方の画像を分割して分割領域群を取得する画像分割部と、
前記2つの画像間の位置ずれ量を取得するずれ量取得処理に対する各分割領域の適性度を求めることにより、前記分割領域群から前記ずれ量取得処理に適した複数の適性領域を特定する適性領域特定部と、
各適性領域において、前記2つの画像間における前記ずれ量取得処理を行うことにより、前記各適性領域の位置ずれ量を取得する位置ずれ量取得部と、
前記分割領域群のうち前記複数の適性領域に含まれない不適性領域に対して、前記複数の適性領域の位置ずれ量、および、前記不適性領域と前記複数の適性領域との位置関係に基づいて、位置ずれ量を求める位置ずれ量算出部と、
を備え
前記適性領域特定部が、前記各分割領域が示すパターンにおける特徴点を検出することにより、前記適性度を求め、
前記適性領域特定部は、
前記各分割領域においてパターン領域内に含まれない画素である第1対象画素のうち、45度間隔にて設定される8方向のそれぞれに関して、前記第1対象画素から前記パターン領域のエッジまでの距離が、前記8方向のうちの7方向にて所定距離未満かつ前記8方向のうちの1方向にて前記所定距離以上である、凹部画素と、
前記各分割領域において前記パターン領域内に含まれる第2対象画素のうち、前記パターン領域のエッジまでの距離が、前記8方向のうちの7方向にて所定距離未満かつ前記8方向のうちの1方向にて前記所定距離以上である、凸部画素と、
の一方又は両方を前記特徴点として検出し、前記特徴点を複数、かつ所定数以上含む分割領域を、適性領域と判定することを特徴とする位置ずれ量取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置ずれ量取得装置であって、
前記一方の画像が、設計パターンを示す設計データから導かれる画像であり、前記2つの画像の他方の画像が、前記設計データに基づく実パターンが形成された対象物を撮像することにより取得される画像であることを特徴とする位置ずれ量取得装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の位置ずれ量取得装置であって、
前記ずれ量取得処理において、前記一方の画像における前記各適性領域を上下左右に移動しつつ、前記各適性領域と前記2つの画像の他方の画像との差を求めることにより、前記各適性領域の前記位置ずれ量が取得されることを特徴とする位置ずれ量取得装置。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1つに記載の位置ずれ量取得装置であって、
前記各分割領域の位置をパラメータとする位置ずれ量についての式が予め設定されており、
前記位置ずれ量算出部が、前記複数の適性領域の位置ずれ量、および、前記複数の適性領域の位置に基づいて、前記式の係数を求めることを特徴とする位置ずれ量取得装置。
【請求項5】
検査装置であって、
請求項1ないしのいずれか1つに記載の位置ずれ量取得装置と、
前記位置ずれ量取得装置により取得される前記各分割領域の位置ずれ量を用いて、前記2つの画像の位置合わせを行いつつ、前記2つの画像に含まれる被検査画像に対する検査結果を取得する検査部と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項6】
位置ずれ量取得方法であって、
a)2つの画像のうち一方の画像を分割して分割領域群を取得する工程と、
b)前記2つの画像間の位置ずれ量を取得するずれ量取得処理に対する各分割領域の適性度を求めることにより、前記分割領域群から前記ずれ量取得処理に適した複数の適性領域を特定する工程と、
c)各適性領域において、前記2つの画像間における前記ずれ量取得処理を行うことにより、前記各適性領域の位置ずれ量を取得する工程と、
d)前記分割領域群のうち前記複数の適性領域に含まれない不適性領域に対して、前記複数の適性領域の位置ずれ量、および、前記不適性領域と前記複数の適性領域との位置関係に基づいて、位置ずれ量を求める工程と、
を備え
前記b)工程において、前記各分割領域が示すパターンにおける特徴点を検出することにより、前記適性度が求められ、
前記各分割領域においてパターン領域内に含まれない画素である第1対象画素のうち、45度間隔にて設定される8方向のそれぞれに関して、前記第1対象画素から前記パターン領域のエッジまでの距離が、前記8方向のうちの7方向にて所定距離未満かつ前記8方向のうちの1方向にて前記所定距離以上である、凹部画素と、
前記各分割領域において前記パターン領域内に含まれる第2対象画素のうち、前記パターン領域のエッジまでの距離が、前記8方向のうちの7方向にて所定距離未満かつ前記8方向のうちの1方向にて前記所定距離以上である、凸部画素と、
の一方又は両方が前記特徴点として検出され、前記特徴点を複数、かつ所定数以上含む分割領域が、適性領域と判定されることを特徴とする位置ずれ量取得方法。
【請求項7】
請求項に記載の位置ずれ量取得方法であって、
前記一方の画像が、設計パターンを示す設計データから導かれる画像であり、前記2つの画像の他方の画像が、前記設計データに基づく実パターンが形成された対象物を撮像することにより取得される画像であることを特徴とする位置ずれ量取得方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の位置ずれ量取得方法であって、
前記ずれ量取得処理において、前記一方の画像における前記各適性領域を上下左右に移動しつつ、前記各適性領域と前記2つの画像の他方の画像との差を求めることにより、前記各適性領域の前記位置ずれ量が取得されることを特徴とする位置ずれ量取得方法。
【請求項9】
請求項ないしのいずれか1つに記載の位置ずれ量取得方法であって、
前記各分割領域の位置をパラメータとする位置ずれ量についての式が予め設定されており、
前記d)工程が、前記複数の適性領域の位置ずれ量、および、前記複数の適性領域の位置に基づいて、前記式の係数を求める工程を備えることを特徴とする位置ずれ量取得方法。
【請求項10】
検査方法であって、
請求項ないしのいずれか1つに記載の位置ずれ量取得方法と、
前記位置ずれ量取得方法により取得される前記各分割領域の位置ずれ量を用いて、前記2つの画像の位置合わせを行いつつ、前記2つの画像に含まれる被検査画像に対する検査結果を取得する工程と、
を備えることを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置ずれ量取得装置、検査装置、位置ずれ量取得方法および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板の外観検査では、CAM(Computer Aided Manufacturing)データ等の設計データを基準として検査が行われる。例えば、設計データが示す設計パターンの画像と、プリント基板の配線パターンを示す画像とを比較し、一定以上の相違がある場所が欠陥として抽出される。このような比較検査では、2つの画像の位置合わせが行われる。当該位置合わせでは、2つの画像における位置ずれ量が求められる。
【0003】
なお、特許文献1では、被検査画像および参照画像を、所定のサイズの領域に分割した評価区画毎に相互に比較して、欠陥の検出を行う検査装置が開示されている。当該検査装置では、各評価区画における両画像の位置ずれ量が求められ、位置ずれ量に対する度数分布が得られる。当該度数分布における分布の重心の位置が画像全体の位置ずれ量として取得され、重心から最も遠い点と重心との間の距離が被検査画像が示すパターンにおける内部歪の最大値として取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−300703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2つの画像における位置合わせを、所定サイズの分割領域毎に行う場合に、一の分割領域のパターンが、例えば、一の方向に延びる直線状のパターン要素のみにより構成されることがある。この場合、当該一の方向に垂直な方向の位置ずれ量は精度よく求められるが、当該一の方向の位置ずれ量を精度よく求めることが困難となる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、2つの画像における各分割領域の位置ずれ量を精度よく求めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、位置ずれ量取得装置であって、2つの画像のうち一方の画像を分割して分割領域群を取得する画像分割部と、前記2つの画像間の位置ずれ量を取得するずれ量取得処理に対する各分割領域の適性度を求めることにより、前記分割領域群から前記ずれ量取得処理に適した複数の適性領域を特定する適性領域特定部と、各適性領域において、前記2つの画像間における前記ずれ量取得処理を行うことにより、前記各適性領域の位置ずれ量を取得する位置ずれ量取得部と、前記分割領域群のうち前記複数の適性領域に含まれない不適性領域に対して、前記複数の適性領域の位置ずれ量、および、前記不適性領域と前記複数の適性領域との位置関係に基づいて、位置ずれ量を求める位置ずれ量算出部とを備え、前記適性領域特定部が、前記各分割領域が示すパターンにおける特徴点を検出することにより、前記適性度を求め、前記適性領域特定部は、前記各分割領域においてパターン領域内に含まれない画素である第1対象画素のうち、45度間隔にて設定される8方向のそれぞれに関して、前記第1対象画素から前記パターン領域のエッジまでの距離が、前記8方向のうちの7方向にて所定距離未満かつ前記8方向のうちの1方向にて前記所定距離以上である、凹部画素と、前記各分割領域において前記パターン領域内に含まれる第2対象画素のうち、前記パターン領域のエッジまでの距離が、前記8方向のうちの7方向にて所定距離未満かつ前記8方向のうちの1方向にて前記所定距離以上である、凸部画素と、の一方又は両方を前記特徴点として検出し、前記特徴点を複数、かつ所定数以上含む分割領域を、適性領域と判定する。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の位置ずれ量取得装置であって、前記一方の画像が、設計パターンを示す設計データから導かれる画像であり、前記2つの画像の他方の画像が、前記設計データに基づく実パターンが形成された対象物を撮像することにより取得される画像である。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項1または2に記載の位置ずれ量取得装置であって、前記ずれ量取得処理において、前記一方の画像における前記各適性領域を上下左右に移動しつつ、前記各適性領域と前記2つの画像の他方の画像との差を求めることにより、前記各適性領域の前記位置ずれ量が取得される。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1つに記載の位置ずれ量取得装置であって、前記各分割領域の位置をパラメータとする位置ずれ量についての式が予め設定されており、前記位置ずれ量算出部が、前記複数の適性領域の位置ずれ量、および、前記複数の適性領域の位置に基づいて、前記式の係数を求める。
【0012】
請求項に記載の発明は、検査装置であって、請求項1ないしのいずれか1つに記載の位置ずれ量取得装置と、前記位置ずれ量取得装置により取得される前記各分割領域の位置ずれ量を用いて、前記2つの画像の位置合わせを行いつつ、前記2つの画像に含まれる被検査画像に対する検査結果を取得する検査部とを備える。
【0013】
請求項に記載の発明は、位置ずれ量取得方法であって、a)2つの画像のうち一方の画像を分割して分割領域群を取得する工程と、b)前記2つの画像間の位置ずれ量を取得するずれ量取得処理に対する各分割領域の適性度を求めることにより、前記分割領域群から前記ずれ量取得処理に適した複数の適性領域を特定する工程と、c)各適性領域において、前記2つの画像間における前記ずれ量取得処理を行うことにより、前記各適性領域の位置ずれ量を取得する工程と、d)前記分割領域群のうち前記複数の適性領域に含まれない不適性領域に対して、前記複数の適性領域の位置ずれ量、および、前記不適性領域と前記複数の適性領域との位置関係に基づいて、位置ずれ量を求める工程とを備え、前記b)工程において、前記各分割領域が示すパターンにおける特徴点を検出することにより、前記適性度が求められ、前記各分割領域においてパターン領域内に含まれない画素である第1対象画素のうち、45度間隔にて設定される8方向のそれぞれに関して、前記第1対象画素から前記パターン領域のエッジまでの距離が、前記8方向のうちの7方向にて所定距離未満かつ前記8方向のうちの1方向にて前記所定距離以上である、凹部画素と、前記各分割領域において前記パターン領域内に含まれる第2対象画素のうち、前記パターン領域のエッジまでの距離が、前記8方向のうちの7方向にて所定距離未満かつ前記8方向のうちの1方向にて前記所定距離以上である、凸部画素と、の一方又は両方が前記特徴点として検出され、前記特徴点を複数、かつ所定数以上含む分割領域が、適性領域と判定される。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の位置ずれ量取得方法であって、前記一方の画像が、設計パターンを示す設計データから導かれる画像であり、前記2つの画像の他方の画像が、前記設計データに基づく実パターンが形成された対象物を撮像することにより取得される画像である。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項6または7に記載の位置ずれ量取得方法であって、前記ずれ量取得処理において、前記一方の画像における前記各適性領域を上下左右に移動しつつ、前記各適性領域と前記2つの画像の他方の画像との差を求めることにより、前記各適性領域の前記位置ずれ量が取得される。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項ないしのいずれか1つに記載の位置ずれ量取得方法であって、前記各分割領域の位置をパラメータとする位置ずれ量についての式が予め設定されており、前記d)工程が、前記複数の適性領域の位置ずれ量、および、前記複数の適性領域の位置に基づいて、前記式の係数を求める工程を備える。
【0018】
請求項10に記載の発明は、検査方法であって、請求項ないしのいずれか1つに記載の位置ずれ量取得方法と、前記位置ずれ量取得方法により取得される前記各分割領域の位置ずれ量を用いて、前記2つの画像の位置合わせを行いつつ、前記2つの画像に含まれる被検査画像に対する検査結果を取得する工程とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、2つの画像における各分割領域の位置ずれ量を精度よく求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】パターン検査装置の構成を示す図である。
図2】コンピュータの構成を示す図である。
図3】パターン検査装置における機能構成を示すブロック図である。
図4】基板を検査する処理の流れを示す図である。
図5】分割領域群を示す図である。
図6】分割領域の一部を示す図である。
図7】分割領域の一部を示す図である。
図8】適性領域を示す図である。
図9】不適性領域を示す図である。
図10】分割領域群における複数の適性領域を示す図である。
図11】ずれ量取得処理を説明するための図である。
図12】被検査分割領域の画素配列を示す図である。
図13】不適性領域に対応する被検査分割領域の画素配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るパターン検査装置1の構成を示す図である。パターン検査装置1は、例えば、電子部品が実装される前のプリント基板(プリント配線基板とも呼ばれる。)の外観を検査する装置である。
【0022】
ここで、プリント基板は、樹脂基板9(以下、単に「基板9」という。)の表面に、銅等の導電性材料により配線パターンが形成されたものである。プリント基板の製造では、基板9の表面に導電性材料の膜(導電膜)が設けられる。導電膜上には、感光材料であるレジスト膜が形成され、当該レジスト膜に設計データに基づくパターンの画像が描画装置(直描装置)により直接的に描画される。パターンが描画された基板9には、現像処理、エッチング処理、レジスト剥離処理等が施される。これにより、基板9上に配線パターンが形成される。基板9に対するエッチング処理は、例えば、基板9に対してエッチング液を付与することにより行われるウェットエッチングである。基板9に対するエッチング処理として、例えば、プラズマ等を利用したドライエッチングが行われてもよい。また、設計パターンを示すフォトマスクを用いてレジスト膜にパターンが形成(露光)されてもよい。
【0023】
パターン検査装置1は、基板9を撮像する装置本体2、および、パターン検査装置1の全体動作を制御するとともに、後述の演算部等を実現するコンピュータ3を備える。装置本体2は、基板9を撮像して多階調の撮像画像(のデータ)を取得する撮像デバイス21、基板9を保持するステージ22、および、撮像デバイス21に対してステージ22を相対的に移動するステージ駆動部23を有する。撮像デバイス21は、照明光を出射する照明部211、基板9に照明光を導くとともに基板9からの光が入射する光学系212、および、光学系212により結像された基板9の像を電気信号に変換する撮像部213を有する。ステージ駆動部23はボールねじ、ガイドレール、モータ等により構成される。コンピュータ3がステージ駆動部23および撮像デバイス21を制御することにより、基板9上の所定の領域が撮像される。
【0024】
図2は、コンピュータ3の構成を示す図である。コンピュータ3は各種演算処理を行うCPU31、基本プログラムを記憶するROM32および各種情報を記憶するRAM33を含む一般的なコンピュータシステムの構成となっている。コンピュータ3は、情報記憶を行う固定ディスク34、画像等の各種情報の表示を行うディスプレイ35、操作者からの入力を受け付けるキーボード36aおよびマウス36b、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体8から情報の読み取りを行う読取装置37、並びに、パターン検査装置1の他の構成との間で信号を送受信する通信部38をさらに含む。
【0025】
コンピュータ3では、事前に読取装置37を介して記録媒体8からプログラム80が読み出されて固定ディスク34に記憶されている。CPU31は、プログラム80に従ってRAM33や固定ディスク34を利用しつつ演算処理を実行する。
【0026】
図3は、パターン検査装置1における機能構成を示すブロック図であり、図3では、コンピュータ3のCPU31、ROM32、RAM33、固定ディスク34等により実現される機能構成を、符号3を付す破線の矩形にて囲んでいる。コンピュータ3は、位置ずれ量取得装置41、検査部42および記憶部49を有する。位置ずれ量取得装置41は、画像分割部411、適性領域特定部412、位置ずれ量取得部413、および、位置ずれ量算出部414を有する。記憶部49は、CAMデータ(またはCADデータ)等の設計データ48を記憶する。これらの構成が実現する機能の詳細については後述する。なお、これらの機能は専用の電気回路により構築されてもよく、部分的に専用の電気回路が利用されてもよい。
【0027】
図4は、パターン検査装置1が基板9を検査する処理の流れを示す図である。ここでは、1つのロット(以下、「対象ロット」という。)として製造される複数の基板9が検査対象であるものとする。対象ロットに含まれる複数の基板9は同一の製品の製造に用いられ、同じ配線パターンが形成されている。
【0028】
パターン検査装置1では、まず、基板9の表面の配線パターン(以下、実際の基板9上の配線パターンを「実パターン」という。)を形成する際に利用された設計データ48が記憶部49に入力されて準備される(ステップS10)。本実施の形態における設計データ48は、設計パターンを示すベクトルデータである。設計データ48は、ラスタデータであってもよい。対象ロットに含まれる複数の基板9上の実パターンは、設計データ48に基づいてエッチング処理等により形成される。
【0029】
画像分割部411では、設計パターンを示す二値画像(以下、「参照画像」という。)が生成される。参照画像では、複数の画素が行方向および列方向に配列され、設計パターンのパターン領域に含まれる各画素に一の値(例えば、1)が付与され、背景領域に含まれる各画素に他の値(例えば、0)が付与される。図5に示すように、参照画像6は複数の領域60(以下、「分割領域60」という。)に分割される(ステップS11)。例えば、参照画像6は、行方向および列方向に等分割され、複数の分割領域60は、同じ大きさである。複数の分割領域60は、異なる大きさであってもよい。以下の説明では、複数の分割領域60の集合を「分割領域群」という。
【0030】
図6および図7は、分割領域60の一部を示す図である。画像分割部411により分割領域群が取得されると、適性領域特定部412では、参照画像6中のパターン領域61に含まれない各画素、すなわち、背景領域62に含まれる各画素を対象画素として、45度間隔にて設定される8方向のそれぞれに関して、対象画素からパターン領域61のエッジまでの距離(以下、「背景測定距離」という。)が測定される。図6では、画素82を対象画素とする場合における8方向の背景測定距離を矢印81(1つの矢印に符号81aを付している。)にて示している。
【0031】
対象画素において、1方向の背景測定距離のみが所定の判定距離以上であり、かつ、他の7方向の背景測定距離が判定距離未満である場合に、対象画素が凹部画素として検出される。図6中の画素82では、矢印81aにて示す背景測定距離のみが判定距離以上であるため、画素82は凹部画素である。凹部画素は、パターン領域61の凹部63(以下、「パターン凹部63」という。)の存在を示す。なお、背景測定距離の上限が予め定められており、図6中の矢印81aは上限の背景測定距離となっている。凹部画素の探索は、背景領域62における所定数の画素毎に行われてもよい(凸部画素の探索において同様)。
【0032】
適性領域特定部412では、さらに、パターン領域61に含まれる各画素を対象画素として、45度間隔にて設定される8方向のそれぞれに関して、対象画素からパターン領域61のエッジまでの距離(以下、「パターン測定距離」という。)が測定される。図7では、画素72,72Aを対象画素とする場合における8方向のパターン測定距離を矢印71(3個の矢印に符号71a,71b,71cを付している。)にて示している。
【0033】
そして、対象画素において、1方向のパターン測定距離のみが所定の判定距離以上であり、かつ、他の7方向のパターン測定距離が判定距離未満である場合に、対象画素が凸部画素として検出される。図7中の画素72では、矢印71aにて示すパターン測定距離のみが判定距離以上であるため、画素72は凸部画素(図7では、パッドの先端を示す凸部画素)である。また、画素72Aでは、矢印71b,71cにて示す2つのパターン測定距離が判定距離以上であるため、画素72Aは凸部画素ではない。凸部画素は、パターン領域61の凸部64(以下、「パターン凸部64」という。)の存在を示す。なお、パターン測定距離の上限が予め定められており、図7中の矢印71a,71bは上限のパターン測定距離となっている。
【0034】
適性領域特定部412では、各分割領域60に含まれる凸部画素および凹部画素の個数が求められ、当該個数が所定数以上である分割領域60が、適性領域として特定される(ステップS12)。図8では、適性領域として特定された3個の分割領域60を縦に並べて示している。一方、凸部画素および凹部画素の個数が所定数未満である分割領域60は、不適性領域として特定される。図9では、不適性領域として特定された3個の分割領域60を縦に並べて示している。図10では、参照画像6の分割領域群において適性領域として特定された分割領域60に平行斜線を付している。
【0035】
後述するように、基板9の検査では、当該基板9の撮像画像と参照画像6との位置合わせが行われる。当該位置合わせでは、参照画像6の各分割領域60が示すパターンと、当該パターンに一致(または、およそ一致)する撮像画像中のパターンとの間における位置ずれ量が求められる。各分割領域60に対して位置ずれ量を精度よく求めるには、当該分割領域60が示すパターンが、パターン凹部63およびパターン凸部64をある程度含むことが好ましい(理由については後述する)。したがって、適性領域特定部412では、分割領域群のうち、凹部画素および凸部画素の個数が所定数以上である分割領域60が、位置ずれ量を取得する処理(位置ずれ量取得部413による処理であり、以下、「ずれ量取得処理」という。)に適した適性領域として扱われる。換言すると、分割領域群のうち、凹部画素および凸部画素の個数が所定数未満である分割領域60が、ずれ量取得処理に適していない不適性領域として扱われる。不適性領域は、分割領域群のうち複数の適性領域に含まれない分割領域60である。
【0036】
続いて、装置本体2では、対象ロットに含まれる複数の基板9のうち最初の基板9がステージ22(図1参照)上に載置され、ステージ駆動部23により、基板9上の所定の領域が撮像部213による撮像領域に配置される。そして、撮像部213により実パターンを示す撮像画像(以下、「実パターン画像」という。)が取得され、位置ずれ量取得装置41に出力される(ステップS13)。実パターン画像では、参照画像6と同様に、複数の画素が行方向および列方向に配列される。実パターン画像の解像度は、参照画像6の解像度と同じである。換言すると、撮像部213による撮像画像の解像度に合わせて、設計データ48から参照画像6が生成される。参照画像6の一の画素が示す基板9上の領域のサイズは、実パターン画像の一の画素が示す基板9上の領域のサイズと同じである。
【0037】
位置ずれ量取得部413では、実パターン画像が所定の閾値にて二値化され、実パターンを示す二値画像(以下、「被検査画像」という。)が生成される。そして、被検査画像と参照画像6との間におけるずれ量取得処理が、適性領域である各分割領域60において行われ、各適性領域に対して位置ずれ量が取得される(ステップS14)。
【0038】
図11は、ずれ量取得処理を説明するための図である。図11では、後述の被検査分割領域50(破線の矩形にて示す。)に対して、分割領域60(平行斜線を付す実線の矩形にて示す。)を上下左右にずらして配置する様子を示している。本処理例では、参照画像6の分割領域群と同様に、被検査画像を行方向および列方向に分割することにより、被検査画像において、参照画像6の各分割領域60に対応する領域50(当該分割領域60と同じ基板9上の位置を示す領域であり、以下、「被検査分割領域50」という。)が特定されている。ずれ量取得処理では、図11中の中央に示すように、分割領域60の全体を、当該分割領域60に対応する被検査分割領域50の全体に重ねた状態で、分割領域60の各画素の値と、当該画素と重なる被検査画像の画素の値との差(絶対値)が求められる。そして、分割領域60の全ての画素に対して得られた当該差の値の和が、評価値として取得される。
【0039】
また、被検査画像上において、分割領域60を被検査分割領域50の位置から上下左右(行方向および列方向)に1画素ずつ移動しつつ、同様に評価値が取得される。このようにして、被検査分割領域50の中心画素を中央とするM行N列(MおよびNは任意の整数)の画素配列のそれぞれの画素と、分割領域60の中心画素とが重なるように、分割領域60を配置しつつ評価値が取得される。そして、被検査分割領域50において、分割領域60の中心画素が重ねられる複数の画素のうち、所定の閾値以下となる評価値が得られる画素が、特定画素として特定される。分割領域60の中心画素が特定画素と重なる位置に配置された状態では、分割領域60と被検査画像との差が比較的小さい。
【0040】
図12は、被検査分割領域50の中心画素51aを中央とする5行5列の画素51の配列510(すなわち、画素配列510)を示す図であり、特定画素51に平行斜線を付している。適性領域である分割領域60におけるずれ量取得処理では、複数の特定画素51が特定画素群として一塊に集まる。そして、被検査分割領域50の中心画素51aから、特定画素群における重心位置52へと向かうベクトルが、当該分割領域60の位置ずれ量として取得される。位置ずれ量は、行方向の成分と列方向の成分とを含み、以下の説明では、これらの成分を「行方向の位置ずれ量」および「列方向の位置ずれ量」という。以上のように、位置ずれ量取得部413では、参照画像6における各適性領域を上下左右に移動しつつ、当該適性領域と被検査画像との差を求めることにより、当該適性領域の位置ずれ量が取得される。
【0041】
なお、M行N列の画素配列510のいずれの画素51に合わせて分割領域60を配置しても、閾値以下となる評価値が得られない(特定画素51が取得されない)場合には、上記画素配列510に隣接する新たな画素配列に対して、上記と同様の処理が行われる。ずれ量取得処理では、特定画素51が取得されるまで、または、所定数の新たな画素配列が設定されるまで、上記処理が繰り返される。所定数の新たな画素配列を設定しても、特定画素51が取得されない場合には、上記処理の繰り返しが停止され、例えば当該分割領域60が適性領域から不適性領域に変更される。
【0042】
パターン検査装置1では、各分割領域60の位置をパラメータとする位置ずれ量についての式(以下、「ずれ量算出式」という。)が予め設定されている。例えば、数1のずれ量算出式では、図10に示す分割領域60の中心画素の行方向の位置Xbおよび列方向の位置Ybを用いて、行方向の位置ずれ量ΔXおよび列方向の位置ずれ量ΔYが表される。数1において、αx、βx、γx、αy、βy、γyは係数である。
【0043】
【数1】
【0044】
位置ずれ量算出部414では、複数の適性領域の位置(図10中の平行斜線を付す分割領域60の位置)、および、位置ずれ量取得部413により取得された当該複数の適性領域の位置ずれ量に基づいて、ずれ量算出式の係数αx、βx、γx、αy、βy、γy(の値)が求められる(ステップS15)。例えば、これらの係数は最小二乗法により求められる。最小二乗法では、数1から導かれる数2において、複数の適性領域における中心画素の行方向の位置Xbおよび列方向の位置Yb、並びに、行方向の位置ずれ量ΔXおよび列方向の位置ずれ量ΔYが代入される。そして、数2のExおよびEyが、最小となる係数αx、βx、γx、αy、βy、γyが求められる。
【0045】
【数2】
【0046】
ずれ量算出式の係数が求められると、各不適性領域(図10中の白い分割領域60)の中心画素の行方向の位置Xbおよび列方向の位置Ybが、ずれ量算出式に代入される。これにより、当該不適性領域に対して、行方向の位置ずれ量ΔXおよび列方向の位置ずれ量ΔYが求められる(ステップS16)。既述のように、ずれ量算出式の係数αx、βx、γx、αy、βy、γyは、複数の適性領域の位置ずれ量、並びに、当該複数の適性領域の行方向および列方向の位置に基づいて求められる。また、不適性領域の位置ずれ量は、当該不適性領域の行方向および列方向の位置を用いて、ずれ量算出式により求められる。したがって、不適性領域の位置ずれ量は、実質的に、複数の適性領域の位置ずれ量、および、不適性領域と複数の適性領域との位置関係に基づいて求められるといえる。
【0047】
検査部42では、例えば、参照画像6の各分割領域60の中心画素を、対応する被検査分割領域50の中心画素51aから当該分割領域60の位置ずれ量だけ移動した位置に配置した状態で、当該分割領域60と被検査画像との相違を示す差分領域画像が取得される。差分領域画像は、位置が合わせられた参照画像6および被検査画像において、分割領域60の各画素の値と、当該画素と重なる被検査画像の画素の値との排他的論理和を示す二値画像である。差分領域画像は、欠陥候補画素を示す。互いに隣接する欠陥候補画素の集合の大きさが所定の面積閾値よりも大きい場合に、当該欠陥候補画素の集合が欠陥領域として検出される。
【0048】
検査部42における処理の他の例では、被検査画像の各位置においてパターン領域の幅、または、背景領域の幅が、パターン幅または背景幅として取得される。また、パターン検査装置1では、参照画像6の各位置に対して幅の閾値が設定されており、位置が合わせられた参照画像6および被検査画像において、被検査画像の各位置と重なる参照画像6の位置の閾値が取得される。そして、被検査画像の当該位置のパターン幅または背景幅を、当該閾値と比較することにより、被検査画像の当該位置が欠陥であるか否かが判定される。以上のように、検査部42では、各分割領域60の位置ずれ量を用いて、参照画像6および被検査画像の位置合わせを行いつつ、被検査画像に対する検査結果が取得される(ステップS17)。
【0049】
最初の基板9に対する検査が完了すると、対象ロットに含まれる2番目の基板9が撮像部213により撮像され、被検査画像が取得される(ステップS18,S13)。続いて、上記と同様に、適性領域の位置ずれ量が取得され、ずれ量算出式の係数が求められる(ステップS14,S15)。対象ロットに含まれる複数の基板9は、同じ設計データ48に基づくため、分割領域群における適性領域は、複数の基板9において同じである。そして、不適性領域の位置ずれ量が取得され、位置合わせが行われた参照画像6および被検査画像から検査結果が取得される(ステップS16,S17)。上記ステップS13〜S17の処理が、対象ロットに含まれる全ての基板9に対して行われると、パターン検査装置1における処理が完了する(ステップS18)。
【0050】
ここで、分割領域群の全ての分割領域60に対してずれ量取得処理を行う比較例のパターン検査装置について述べる。比較例のパターン検査装置では、例えば図9の3個の分割領域60に対してもずれ量取得処理が行われる。図9の上段、中段および下段の分割領域60のパターンは、それぞれ行方向、列方向および斜め方向に延びる直線状のパターン要素のみにより構成される。したがって、図13の上段、中段および下段に示すように、被検査分割領域50の中心画素51aを中央とするM行N列の画素配列510では、平行斜線を付す特定画素51が、それぞれ行方向、列方向および斜め方向に一列に並ぶ。その結果、特定画素51が並ぶ方向の位置ずれ量を正確に取得することが困難となる。仮に、被検査分割領域50の中心画素51aから、特定画素群における重心位置へと向かうベクトルを位置ずれ量として取得しても、当該位置ずれ量は信頼性が低く、検査部42による当該分割領域60における検査結果において、欠陥ではない部位が欠陥として検出される虚報が多く出現してしまう。分割領域60が、一の方向に周期性を有する他のパターンを示す場合において同様である。
【0051】
これに対し、パターン凹部63またはパターン凸部64を含む分割領域60のパターンは、一方向に延びる直線状のパターン要素のみとはならない。換言すると、凹部画素または凸部画素が検出される分割領域60(図8参照)では、当該凹部画素または凸部画素が、当該分割領域60が示すパターンにおける特徴点となり、上記のM行N列の画素配列510において特定画素51が一列に並びにくくなる。実際には、各分割領域60に含まれる凹部画素および凸部画素の個数、すなわち、特徴点の個数が、多いほど特定画素51が一列に並びにくくなるといえ、凹部画素および凸部画素の個数は、当該分割領域60のずれ量取得処理に対する適性度を示す。
【0052】
パターン検査装置1では、ずれ量取得処理に対する各分割領域60の適性度を求めることにより、分割領域群から複数の適性領域が特定され、ずれ量取得処理により各適性領域の位置ずれ量が取得される。そして、不適性領域に対して、複数の適性領域の位置ずれ量、および、不適性領域と複数の適性領域との位置関係に基づいて、位置ずれ量が求められる。このように、ずれ量取得処理に適した適性領域の位置ずれ量を用いて、ずれ量取得処理に適さない不適性領域の位置ずれ量を求めることにより、参照画像6および被検査画像における各分割領域60の位置ずれ量を精度よく求めることができる。また、ずれ量取得処理が複数の適性領域のみに対して行われるため、全ての分割領域60に対してずれ量取得処理を行う場合に比べて、位置ずれ量取得部413における処理量を低減する、すなわち、位置ずれ量の取得に要する時間を短くすることができる。
【0053】
また、ずれ量取得処理では、参照画像6における各適性領域を上下左右に移動しつつ、当該適性領域と被検査画像との差が求められる。これにより、当該適性領域の位置ずれ量を容易に取得することが可能となる。さらに、各分割領域60の位置をパラメータとするずれ量算出式が予め設定されており、複数の適性領域の位置ずれ量、および、当該複数の適性領域の位置に基づいて、ずれ量算出式の係数が求められる。これにより、不適性領域の位置ずれ量を迅速に求めることができる。
【0054】
検査部42では、各分割領域60の位置ずれ量を用いて、参照画像6および被検査画像の位置合わせを行いつつ、被検査画像に対する検査結果が取得される。このとき、参照画像6および被検査画像の位置合わせが分割領域60毎に行われることにより、被検査画像の検査結果を精度よく取得する(虚報を低減する)ことができる。
【0055】
上記位置ずれ量取得装置41、および、パターン検査装置1では様々な変形が可能である。
【0056】
適性領域特定部412では、凹部画素および凸部画素を特徴点として、各分割領域60が示すパターンに含まれる特徴点を検出することにより、ずれ量取得処理に対する当該分割領域60の適性度を容易に求めることが実現されるが、特徴点は、凹部画素および凸部画素以外であってもよい。例えば、各分割領域60が示すパターンにおいて、パターン要素である多角形図形の頂点や、パターン要素のエッジにおける曲線部(直線を除く。)が特徴点として扱われてもよい。また、適性度は、特徴点の検出以外の手法により求められてもよい。
【0057】
画像分割部411では、被検査画像の分割領域群が取得されてもよい。この場合、当該分割領域群から複数の適性領域が特定され、各適性領域と参照画像6との差を求める、ずれ量取得処理が行われる。以上のように、パターン検査装置1では、被検査画像および参照画像6の2つの画像のうち一方の画像を分割して分割領域群が取得され、ずれ量取得処理に適した複数の適性領域が、当該分割領域群から特定される。また、ずれ量取得処理では、当該一方の画像における各適性領域を上下左右に移動しつつ、当該適性領域と当該2つの画像の他方の画像との差を求めることにより、当該適性領域の位置ずれ量が取得される。
【0058】
一方、基板9を撮像することにより取得される被検査画像では、欠陥等が含まれる場合に、分割領域の適性度を精度よく求めることができなくなる。したがって、各分割領域の適性度を精度よく求めるという観点では、設計パターンを示す設計データ48から導かれる参照画像6において分割領域群が取得されることが好ましい。また、複数の基板9において、同じ設計データ48に基づいて実パターンが形成される場合に、当該設計データ48から導かれる参照画像6において分割領域群を取得することにより、複数の基板9の被検査画像に対して、同じ適性領域を用いて、複数の基板9の検査を効率よく行うことが可能となる。
【0059】
2つの画像間の位置ずれ量を取得するずれ量取得処理として、図11および図12を参照して説明した手法以外が用いられてもよい。ずれ量取得処理では、パターンマッチングに係る様々な手法(例えば、正規化相関法等)を採用することが可能である。
【0060】
上記実施の形態では、実パターン画像を二値化した被検査画像と、二値の参照画像6との間の位置ずれ量が取得されるが、ずれ量取得処理では、多階調の実パターン画像が被検査画像として用いられてもよい。この場合、例えば、パターン領域61および背景領域62に、被検査画像におけるパターン領域の平均的な値および背景領域の平均的な値がそれぞれ付与された設計パターンの画像が参照画像として生成される。そして、多階調の被検査画像、および、当該参照画像において、位置ずれ量取得装置41による上記処理が行われる。検査部42においても同様に、多階調の被検査画像に対する検査結果が取得されてよい。
【0061】
数1のずれ量算出式は、一例に過ぎず、二次または高次の式が用いられてもよい。また、位置ずれ量算出部414では、ずれ量算出式を用いることなく、不適性領域の位置ずれ量が求められてもよい。例えば、各不適性領域の周囲に位置する数個の適性領域の位置ずれ量、および、これらの適性領域と当該不適性領域との位置関係を用いた補間演算により、当該不適性領域の位置ずれ量が求められてもよい。
【0062】
パターン検査装置1における検査の対象物である基板は、半導体基板やガラス基板等であってもよい。また、パターン検査装置1では、基板以外に、フィルム状の対象物や立体的な対象物等に対して検査が行われてもよい。
【0063】
2つの画像の位置ずれ量を求める位置ずれ量取得装置41は、描画装置等に用いられてもよく、様々な種類の画像における位置ずれ量の取得に用いることが可能である。
【0064】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0065】
1 パターン検査装置
6 参照画像
9 基板
41 位置ずれ量取得装置
42 検査部
48 設計データ
60 分割領域
411 画像分割部
412 適性領域特定部
413 位置ずれ量取得部
414 位置ずれ量算出部
S10〜S18 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13