(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6936609
(24)【登録日】2021年8月31日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】避難誘導照明システム
(51)【国際特許分類】
F21S 19/00 20060101AFI20210906BHJP
F21S 8/02 20060101ALI20210906BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20210906BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20210906BHJP
F21W 111/02 20060101ALN20210906BHJP
【FI】
F21S19/00 100
F21S8/02 410
F21V9/30
F21Y101:00 100
F21W111:02
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-77646(P2017-77646)
(22)【出願日】2017年4月10日
(65)【公開番号】特開2018-181547(P2018-181547A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】西川 経太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 将吾
【審査官】
河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−086615(JP,A)
【文献】
特開2005−344344(JP,A)
【文献】
特開平11−111027(JP,A)
【文献】
特開平09−311652(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0132183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 19/00
F21S 8/02
F21V 9/00
F21Y 101/00
F21W 111:02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の照明器具が避難経路に沿って配置され、
複数の前記照明器具の夫々に蓄光部が備えられ、
複数の前記照明器具の夫々は、設置対象面に対して凹入する窪み部を有し、その窪み部の内部に照明部が配置された埋込型の照明器具にて構成され、
前記蓄光部は、前記窪み部における反射部のうちの一部の領域として、前記避難方向の下流側領域に配置され、前記避難方向を指す形状に形成されている避難誘導照明システム。
【請求項2】
前記蓄光部は、正面視で扇形状に形成されている請求項1に記載の避難誘導照明システム。
【請求項3】
前記照明器具の設置箇所に応じて異なる種類の前記蓄光部を配置させる形態で、複数の前記照明器具に対して複数の種類の前記蓄光部が配置されている請求項1又は2に記載の避難誘導照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具を用いて避難誘導を行う避難誘導照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような避難誘導照明システムでは、複数の照明器具が避難経路に沿って配置され、複数の照明器具の夫々に蓄光部を備えることで、避難誘導を行う(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載のシステムでは、照明器具における反射体に蓄光材料を塗布することで、照明器具に蓄光部を備えており、停電等により照明器具の照明部が消灯した場合に、蓄光部が発光し、その蓄光部の光によって避難誘導を行う。また、蓄光部を、避難経路における避難方向を示す矢印形状とすることで、蓄光部の発光により避難方向を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−265812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のシステムでは、蓄光部を矢印形状とすることで、蓄光部の発光により避難方向を示しているが、実際には、避難者が蓄光部の細かな形状まで把握することが難しく、避難者が避難方向を容易に認識することが難しいものとなっていた。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、避難者が避難方向を容易に認識することができる避難誘導照明システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、複数の照明器具が避難経路に沿って配置され、
複数の前記照明器具の夫々に蓄光部が備えられ、
複数の前記照明器具の夫々は、設置対象面に対して凹入する窪み部を有し、その窪み部の内部に照明部が配置された埋込型の照明器具にて構成され、
前記蓄光部は、前記窪み部における反射部のうちの一部の領域として、前記避難方向の下流側領域に配置され、前記避難方向を指す形状に形成されている点にある。
【0008】
本構成によれば、蓄光部は、照明器具において、避難経路における避難方向の下流側に配置されているので、複数の照明器具の夫々において、蓄光部の発光により避難方向の下流側領域だけが蓄光部による光が見え易くなることになる。これにより、避難者は、発光部の細かな形状を認識しなくても、発光部にて発光される領域がどの領域であるかを認識するだけで、避難経路における避難方向を容易に認識することができる。
【0010】
本構成によれば、窪み部において避難方向の下流側領域に蓄光部が配置されているので、照明器具よりも避難方向の下流側に位置する避難者からは蓄光部による光が見え難く、照明器具よりも避難方向の上流側に位置する避難者からは蓄光部による光が見え易くなる。これにより、避難者は、避難方向をより簡易に認識することができる。よって、避難誘導照明システムは、避難者を避難経路に沿って適切に避難誘導することができる。
【0011】
本発明の第
2特徴構成は、前記蓄光部は、正面視で扇形状に形成されている点にある。
【0012】
本構成によれば、蓄光部として、避難方向を示すための適切な形状でありながら、十分な面積を確保することができるので、蓄光部の発光により、避難者に対して避難方向をより認識し易くすることができる。
【0013】
本発明の第
3特徴構成は、前記照明器具の設置箇所に応じて異なる種類の前記蓄光部を配置させる形態で、複数の前記照明器具に対して複数の種類の前記蓄光部が配置されている点にある。
【0014】
本構成によれば、例えば、避難口に近い照明器具については、面積が大きい蓄光部を配置させたり、発光度合いが高い蓄光部を配置させる等、照明器具の設置箇所に応じて蓄光部の種類を異ならせることができる。これにより、避難者は、例えば、避難口がどこに存在するのか等、避難経路においてどのような位置に存在しているのかを把握し易くなる。よって、避難誘導照明システムは、避難者を避難経路に沿って適切に避難誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】避難誘導照明システムの概略構成を示す平面図
【
図4】別実施形態における避難誘導照明システムの概略構成を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る避難誘導照明システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
この避難誘導照明システムでは、
図1に示すように、複数の照明器具1を備えており、それら複数の照明器具1が避難経路Hに沿って配置されている。
図1では、避難経路Hとして、廊下等の通路3にて避難口C1に導く避難経路Hを示している。ちなみに、
図1において、照明器具1については、その特徴部分を分かり易くするために、照明器具1の一部(後述する窪み部12の一部)を省略した模式的な平面図としている。
【0017】
図1に示すものでは、避難経路Hとして、図中上方側から下方側に向かう方向を避難方向Xとする第1避難経路部分H1と、図中下方側から上方側に向かう方向を避難方向Xとする第2避難経路部分H2と、図中左側から避難口C1が位置する右側に向かう方向を避難方向Xとする第3避難経路部分H3とが配置されている。避難経路Hは、第1避難経路部分H1と第2避難経路部分H2とが合流して第3避難経路部分H3に引き続いて、避難口C1に至る経路となっている。第3避難経路部分H3において、避難口C1の近くには、避難口誘導灯C2が備えられている。
【0018】
複数の照明器具1の夫々は、
図2に示すように、設置対象面である天井部11に対して上方側に凹入する窪み部12を有し、その窪み部12の内部に照明部13が設置された天井埋込型の照明器具1にて構成されている。ちなみに、照明部13については、白熱灯、LED電球等、各種の照明部を適用可能である。
【0019】
窪み部12は、平面視で円形状(
図3参照)に形成されており、その中央部分12aが、天井部11に対する上方側への凹入量が大きく最上位に位置する平坦部分となっている。窪み部12は、径方向外側ほど下位側となる傾斜状の側壁部分12bを有し、中央部分12aに連続して側壁部分12bが備えられている。窪み部12の中央部分12aに照明部13が配置され、照明部13が下方側に延びる姿勢にて備えられている。照明部13の周囲に位置する中央部分12a及び側壁部分12bが照明部13にて照射される光を反射させる反射部として構成されている。ちなみに、
図3は、下方側から照明器具1を見たときの正面図を示している。
【0020】
複数の照明器具1の夫々には、
図2及び
図3に示すように、蓄光部2が備えられている。蓄光部2は、照明器具1により照射される光を蓄えて、照明器具1による光の照射が停止されても発光可能に構成されている。蓄光部2は、例えば、蓄光塗料を塗布して構成されており、蓄光塗料を塗布した領域に蓄光部2が配置される。
【0021】
照明器具1に蓄光部2を備えるに当たり、照明器具1の全体に蓄光部2を配置するのではなく、
図2及び
図3に示すように、照明器具1の一部の領域だけに蓄光部2が配置されている。蓄光部2は、照明器具1における一部の領域として、避難経路Hにおける避難方向Xの下流側に配置されている。これにより、照明器具1による照射が停止された場合に、複数の照明器具1の夫々において、
図1に示すように、蓄光部2の発光により避難方向Xの下流側領域だけが蓄光部2による光が見え易くなることになる。よって、避難者は、避難経路Hにおいて避難方向Xがどの方向であるかを容易に認識することができる。その結果、避難誘導照明システムは、避難者を避難経路Hに沿って適切に避難誘導することができる。
【0022】
蓄光部2は、窪み部12の一部の領域である避難方向Xの下流側に配置されている。この実施形態では、窪み部12における反射部として、中央部分12aと側壁部分12bとが備えられているので、中央部分12a及び側壁部分12bのうち、避難方向Xの下流側領域に蓄光部2が配置されている。このように、蓄光部2は、窪み部12における反射部のうち、避難方向Xの下流側領域に配置されている。ここで、窪み部12における反射部については、平坦状の中央部分12aと傾斜状の側壁部分12bとを備えるものに限らず、例えば、円弧状や傾斜状の側壁部分のみから構成することもでき、各種の形状や構成を適用することができる。よって、窪み部12において、各種の形状や構成の反射部が適用されても、その反射部のうち、避難方向Xの下流側領域に蓄光部2を配置するものであればよい。
【0023】
蓄光部2の形状については、
図3に示すように、照明器具1に対する正面視(下方側から照明器具1を見たときの正面視)で扇形状に形成されている。この実施形態では、照明器具1に対する正面視において、蓄光部2を半円形状に形成している。
【0024】
このように、蓄光部2は、窪み部12における中央部分12aのうち避難方向Xの下流側領域に位置する部分に加えて、窪み部12における傾斜状の側壁部分12bのうち避難方向Xの下流側領域に位置する部分に配置されているので、照明器具1よりも避難方向Xの下流側に位置する避難者からは蓄光部2による光が見え難く、照明器具1よりも避難方向Xの上流側に位置する避難者からは蓄光部2による光が見え易くなる。また、蓄光部2が半円形状に形成され、蓄光部2の外側の輪郭が避難方向Xの下流側が窄まる形状となっているので、蓄光部2自体が避難方向Xを指す形状とすることができる。よって、避難者は、避難方向Xをより簡易に認識することができる。その結果、避難誘導照明システムは、避難者を避難経路Hに沿って適切に避難誘導することができる。
【0025】
ここで、蓄光部2の形状については、
図3に示す半円形状に限るものではなく、例えば、
図5に示すように、半円形状よりも角度を小さくした扇形状に形成することもできる。なお、扇形状は半円形状よりも角度を小さくした形状に限らない。扇形状は、半円形状を含み、また、半円形状よりも角度を大きくした形状も含む。ちなみに、
図5も、
図3と同様に、下方側から照明器具1を見たときの正面図を示している。この場合には、照明部13よりも避難方向Xの下流側だけに蓄光部2を配置させることができる。蓄光部2は、窪み部12における避難方向Xの下流側領域にだけ配置されているものであればよく、蓄光部2の形状については、扇形状に限らず、三角状等、その他各種の形状も適用可能となっている。
【0026】
上述の如く、複数の照明器具1の夫々には、避難経路Hにおける避難方向Xの下流側に蓄光部2が配置されているが、複数の照明器具1に蓄光部2を配置させるに当たり、どのような種類の蓄光部2を配置させるかは適宜変更が可能である。
図1に示すものでは、複数の照明器具1の夫々に対して同一種類の蓄光部2(
図2及び
図3に示す蓄光部2)を配置させている。
【0027】
同一種類の蓄光部2を配置させるのに代えて、照明器具1の設置箇所に応じて異なる種類の蓄光部2を配置させる形態で、複数の照明器具1に対して複数の種類の蓄光部2を配置させることができる。例えば、避難経路Hにおいて避難口C1に近い領域に配置された照明器具1については、避難口C1から離れた領域に配置された照明器具1よりも、面積(扇形状の角度)が大きい蓄光部2を配置させることができる。また、避難経路Hにおいて避難口C1に近づくにつれ段々と蓄光部2の面積(扇形状の角度)を大きくさせる形態で、複数の照明器具1の夫々に対して面積(扇形状の角度)の異なる蓄光部2を配置させることもできる。
【0028】
蓄光部2の種類としては、面積だけでなく、発光度合いや発光色等、各種の条件を異ならせることもできる。蓄光部2を構成する蓄光塗料には発光度合いや発光色の異なる様々なものが知られているので、適宜選択して用いればよい。発光度合いを異ならせる場合には、例えば、避難経路Hにおいて避難口C1に近い領域に配置された照明器具1については、避難口C1から離れた領域に配置された照明器具1よりも、発光度合いが大きい蓄光部2を配置させることができる。また、避難経路Hにおいて避難口C1に近づくにつれ段々と蓄光部2の発光度合いを大きくさせる形態で、複数の照明器具1の夫々に対して発光度合いの異なる蓄光部2を配置させることもできる。
【0029】
このように、照明器具1の設置箇所に応じて異なる種類の蓄光部2を配置させることで、避難者は、避難経路Hにおいて避難口C1の近くに居るのか、避難口C1がどこに存在するのか等、避難経路Hにおいてどのような位置に存在しているのかを把握し易くなる。よって、避難誘導照明システムは、避難者を避難経路Hに沿って適切に避難誘導することができる。
【0030】
また、例えば、
図1に示すものでは、第1避難経路部分H1と第2避難経路部分H2とが合流する位置に配置された照明器具1について、他の照明器具1よりも発光度合いの大きい蓄光部2を備えることもできる。これにより、避難者は、第1避難経路部分H1と第2避難経路部分H2との合流地点を容易に把握することができるので、避難者を避難口C1まで迅速に避難誘導することができる。
【0031】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、
図1に示すように、廊下等の通路3を避難経路Hとして本発明に係る避難誘導照明システムを適用した場合を例示したが、例えば、
図4に示すように、多目的ホール等の各種ホール4において、本発明に係る避難誘導照明システムを適用することもできる。
【0032】
この場合には、
図4に示すように、ホール4の前後方向及び左右方向に一定間隔を隔てて複数の照明器具1が配置されており、ホール4の全体に亘って照明器具1が備えられている。
図4に示すホール4においては、避難経路Hとして、ホール4の左右方向の中央側から左側端部に向かう方向を避難方向Xとする第3避難経路部分H3とホール4の左右方向の中央側から右側端部に向かう方向を避難方向Xとする第4避難経路部分H4との2つの避難経路部分H3、H4を1つの組として、それらの組がホール4の前端部、中央部、後端部の夫々に配置されている。
【0033】
そこで、複数の照明器具1のうち、避難経路Hに沿って配置される照明器具1aのみ蓄光部2を備えている。蓄光部2は、上記実施形態と同様に、照明器具1における一部の領域として、避難経路Hにおける避難方向Xの下流側だけに配置されている。
【0034】
ちなみに、ホール4において、避難経路Hをどのような位置に配置させるかについては、避難口C1の位置やその他各種の条件に応じて、適宜変更が可能であり、
図4に示す避難経路Hは、あくまで一例を示したものである。
【0035】
また、本発明に係る避難誘導照明システムは、
図1に示す廊下等の通路3、及び、
図4に示すホール4等、天井埋込型の照明器具1が備えられる建物内空間に限らず、教室、会議室、屋内スポーツ施設、劇場、コンサート場等の各種の建物内空間に適用することができる。
【0036】
(2)上記実施形態では、照明器具1について、窪み部12の中央部分12aに照明部13を配置した例を示したが、図示は省略するが、例えば、窪み部12の側壁部分12bに照明部13を配置させることもできる。この場合には、側壁部分12bから窪み部12の中央部に延びる傾斜姿勢にて照明部13を窪み部12の側壁部分12bに備えることができる。
【0037】
(3)上記実施形態では、照明器具1について、天井部11に窪み部12を備えた天井埋込型のものを例示したが、例えば、床面を設置対象面として、床部に窪み部を備える床埋込型としたり、壁面を設置対象面として、壁部に窪み部を備える壁埋込型とすることもでき、各種の形式の埋込型の照明器具を適用することができる。
【0038】
(4)上記実施形態では、照明器具1を、窪み部12を備えた埋込型としているが、この埋込型に限るものではなく、例えば、天井部11から下方側に突出する形式の照明器具とすることもでき、各種の照明器具を適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 照明器具
2 蓄光部
11 設置対象面
12 窪み部
13 照明部
H1 避難経路
H3 避難方向