特許第6936616号(P6936616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6936616-複製ツール 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6936616
(24)【登録日】2021年8月31日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】複製ツール
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/38 20060101AFI20210906BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   B29C33/38
   B29C59/02 B
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-87135(P2017-87135)
(22)【出願日】2017年4月26日
(65)【公開番号】特開2017-222161(P2017-222161A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2020年3月24日
(31)【優先権主張番号】2016689
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】510007573
【氏名又は名称】アンテリオン インターナショナル ビー ヴィー
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ウォルタリンク、エドウィン マリア
(72)【発明者】
【氏名】ブラウアー、ウィレム マティース
(72)【発明者】
【氏名】ミネン、マリウス ジョセフス マルセリス
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/084475(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0217524(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/038594(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/174930(WO,A1)
【文献】 特表2017−526977(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/092148(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/174929(WO,A1)
【文献】 特表2017−516162(JP,A)
【文献】 特開2012−093765(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0054506(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/191034(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104023932(CN,A)
【文献】 国際公開第2011/055627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 59/00−59/18
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複製材料から素子を複製するための複製ツールであって、前記複製ツールは、複製面と、前記複製面上の複数のキャビティと、を備え、前記キャビティの各々は、1つの素子又は一群の素子の形状を定義し、前記複製ツールは、前記複製面上に、前記キャビティから突出した少なくとも1つの突起部分を更に備え、
前記複製材料は、前記ツールが基板に向けて圧迫されたとき、所定の領域に閉じ込められ、
前記所定の領域は、前記ツールが基板に向けて圧迫されたとき、前記基板の表面に沿う少なくとも一方向において、前記素子の所期の容積を超過し、
前記少なくとも1つの突起部分が、50ミクロン―500ミクロンの範囲にあるフィレット半径Rを有する、曲面状表面遷移領域を定義し、
前記キャビティの各々は、突起部分として機能する曲面状表面遷移領域と、キャビティと遷移領域との間にある内縁部と、オーバーフロー体積部と、遷移領域とオーバーフロー体積部との間にある外縁部と、によって限定され、
前記外縁部は、1−35度の範囲にある傾斜角度Θを有する、周辺樹脂流出領域を定義することを特徴とする複製ツール。
【請求項2】
前記少なくとも1つの突起は、100ミクロンから120ミクロンの範囲にあるフィレット半径Rを有する、曲面状表面遷移領域を定義することを特徴とする、請求項1に記載の複製ツール。
【請求項3】
前記周辺樹脂流出領域の長さは、少なくとも20ミクロンの範囲である、請求項1または2に記載の複製ツール。
【請求項4】
前記ツールが前記基板に向けて圧迫されたとき、前記曲面状表面遷移領域と前記基板との間隔は、少なくとも60ミクロンの範囲であり、前記間隔は、前記曲面状表面遷移領域の最高点において測定される、請求項1または2に記載の複製ツール。
【請求項5】
複製ツールを用いて素子を製造するための方法であって、
前記素子の形状を定義する複製ツールを与えるステップと、
基板を与えるステップと、
前記ツールと前記基板との間に配置された、液体又は流体又は塑性的に変形可能な複製材料とともに、前記複製ツールを前記基板に向けて圧迫するステップと、
前記複製材料を前記基板の所定の領域に閉じ込めるステップと、
前記複製材料を硬化させて前記素子を形成するステップと、を備え、
前記所定の領域の前記基板の表面に沿う少なくとも一方向における長さは、前記素子の所期の領域の長さより、所定の長さより短い長さで超過し
前記複製ツールは、請求項1から4のいずれかに記載された複製ツールである方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複製材料から素子を複製するための複製ツールに関する。本複製ツールは、複製面と、複製面上の複数のキャビティを備える。キャビティの各々は、1つの素子又は一群の素子の形状を定義する。本複製ツールは、複製面上に、キャビティから突出した少なくとも1つの突起部分を更に備える。本複製ツールは、本ツールが基板に向けて圧迫されたとき、複製材料を本ツールの所定の領域に閉じ込めるための手段を更に備える。この所定の領域は、基板の表面に沿う少なくとも一方向において、素子の所期の容積を超過する。
【背景技術】
【0002】
ここでいう複製ツールは、例えばEP 1 837 165などにより当該分野で知られている。この文献で論じられているように、光学素子が複製により製造されるとき、基板と基板面上の複製材料とに関し、基本的な配置が存在する。この複製材料は、複製プロセス中に成形され、硬化される。基板面と呼ばれる平面に垂直な方向の次元、すなわち複製構造の厚さ又は高さ、すなわちz次元は、しばしば重要であり、明確に定義されコントロールされる必要がある。素子の他の次元は複製ツールによって定義される(これは複製プロセスの特徴である)ため、複製素子の体積もまた明確に定義される。EP 1 837 165に開示された複製ツールは、複数のキャビティを備える。キャビティの各々は、1つの素子又は一群の素子の形状を定義する。キャビティの各々は、平坦部分により、少なくとも1つの側方向に限定される。キャビティと平坦部分との間に、内縁部が形成されている。複製ツールは、キャビティ間に、複数のオーバーフロー体積部又は1つの連続オーバーフロー体積部を更に備える。更に平坦部分とオーバーフロー体積部との間に、外縁部が形成されている。(キャビティあたりに)分配される複製材料は、キャビティの体積よりも大きくなるよう選択される。従って平坦部分は、キャビティを取り囲む浮動(非接触)スペーサとして機能する。外縁部は、複製材料の流れを止める切れ目を構成する。このような切れ目がなければ、最終的に、毛管力により複製材料が素子体積部から流出するであろう。
【0003】
WO2015/174929は、光学素子を備える光学構造を作成するための複製ツールに関する。この複製ツールは、光学構造の一部のネガを規定する形状と縦方向に整列された中心軸とを有する中央部と、横方向に沿って中央部を囲む周囲部と、接触面と呼ばれる平面を定義する1つ以上の接触支持棒と、を備える。複製ツールのすべての部分は、接触面の1つの同一の面上に配置される。周囲部は、中心軸から外側に面し、第1補償面と呼ばれる表面を形成する。更に周囲部は、中心軸から外側に面し、第2補償面と呼ばれる面を形成する。第2補償面の峻度は、第1補償面の峻度よりも大きい。両峻度は、それぞれの表面の中心軸からの距離の増加に対して、それぞれの表面の縦座標の増加として定義される。この国際出願は、複製ツールの内部が硬質であって、該複製ツールが保持部の近傍に配置された場合、複製材料を(少なくとも部分的に)硬化後、複製ツールを除去するときに、複製構造の剥離または亀裂が生じる可能性があることを示す。保持部は、複製ツールが接触面に非常に近接して延在するものの接触面に接触はしない部分である。周囲部は保持部を含む。複製ツールはこの保持部において、各断面における接触面に対して最小の非ゼロ距離を有する。
【0004】
US9,279,964は、ウェハレベル光学レンズ構造に関する。この構造は、光透過性基板と、レンズ層と、光透過性基板とレンズ層との間に配置される少なくとも1つの応力バッファ層と、を備える。この応力バッファ層はパターニングに適したものである。このような応力バッファ層は、光透過性基板とレンズ層との間に配置される。応力バッファ層は、レンズ層と光透過性基板との間の応力効果をバッファし、応力効果に起因するウェハレベル光学レンズの製造工程における不具合を低減する、例えばレンズ層と光透過性基板との間の格子不整合により生じる不具合を低減し、ウェハレベル光学レンズの生成量を増加するために使われる。
【0005】
US2015/217524は、複製によって切頭受動光学部品を製造するツールに関する。切頭光学部品の各々は、縁とこの縁に隣接する縁面とを形成する切頭により、プリカーサー受動光学部品から得ることのできる形状を持つ受動光学部品である。ツールは複製表面を備える。複製表面は、前記縁面を表わすものではない形状を有する。ツールは、複製表面に隣接し、流れ止め表面と呼ばれる表面を更に備える。流れ止め表面と複製表面とは、少なくとも200°、特定の例では少なくとも225°、更に特定の例では少なくとも260°の角度を形成する。流れ止め表面と複製表面とは、前述の縁が形成されるべき場所に縁を形成する。この米国出願は更に、少なくとも2つで一組の受動光学部品の組を含む装置を製造するための方法に関する。この方法は、ツール製造ステップを実行することによって得ることができるツールを使用するステップを含む。ツール製造ステップは、複製表面を有するプリカーサーツールを製造するステップと、このプリカーサーツールから材料を除去することによって複製表面を修正するステップと、を含む。プリカーサーツールの複製表面は、プリカーサー光学部品と呼ばれる受動光学部品を複製よって製造するのに適した形状を有する。受動光学部品の組を構成する受動光学部品は、プリカーサー光学部品を切頭することにより、プリカーサー光学部品から得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、全ポリマーの光学素子であって、ガラスなどの硬質又は非柔軟性の基板上で複製される素子は、光学素子の硬化に伴う亀裂に対して脆弱であることに気が付いた。更に、複製材料の最終硬化においては、亀裂と層間剥離が生じる可能性がある。
【0007】
更に、例えば誘電性反射防止コーティングなどの光学コーティングを施した同等の光学素子の場合、コーティング内及びコーティングと複製材料との界面に、更なる亀裂が見られる。これらの亀裂が発生するのは、温度変化が原因となって、材料、すなわち粗さと結びついて、異なるCTE値と異なる剛性とを持つ材料間に、過度の応力が生じるときである。異なる材料間の界面及び複製材料内には、微細な亀裂が発生する。一部分のみが充填された素子は不完全であり、失われる。従って過剰な複製材料を供給することが有益となる。これにより、素子が異なると複製材料の量が変化する場合であっても、失われる素子がない又は少ない、ということが保証される。
【0008】
前述の先行技術文献から、UV熱硬化ポリマーに基づくレンズでは、光学素子の底部と周辺バッファ層と間の急激な遷移をプロセスすることは明らかであるが、これら2つの表面の間隔は典型的には<<10ミクロンの範囲にある。このようなデザインは、特にプロセス中及び輸送保管中及び使用中に熱変動にさらされたとき、レンズ材料内部、光学コーティング内、並びにガラス及び複製層及びコーティング層の間の界面において、亀裂に対し非常に脆弱である。この現象は、硬質のモールド及び硬質の材料(E>2GPa)を用いたシステムで特に観測される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って本発明の一態様は、過度の応力を低減し、これにより材料及び光学コーティングにおける亀裂の形成を防止する複製ツールを提供する。
【0010】
従って本発明は、複製材料から素子を複製するための複製ツールに関し、前記複製ツールは、複製面と、前記複製面上の複数のキャビティと、を備え、前記キャビティの各々は、1つの素子又は一群の素子の形状を定義し、前記複製ツールは、前記複製面上に、前記キャビティから突出した少なくとも1つの突起部分を更に備え、前記ツールが基板に向けて圧迫されたとき、前記複製材料を前記ツールの所定の領域に閉じ込めるための手段を更に備え、前記所定の領域は、前記基板の表面に沿う少なくとも一方向において、前記素子の所期の容積を超過し、前記少なくとも1つの突起部分が、50ミクロン―300ミクロンの範囲にあるフィレット半径Rを有する、曲面状表面遷移領域を定義することを特徴とする。
【0011】
本発明者らは、50ミクロン―300ミクロンの範囲にあるフィレット半径Rを有する、曲面状表面遷移領域を与えることにより、過度の応力が低減されることを見出した。これにより、材料及び光学コーティングにおける亀裂の形成が著しく低減され、更には防止される。ある実施形態では、曲面状表面遷移領域は最大200ミクロンのフィレット半径Rを有する。ある実施形態では、曲面状表面遷移領域は50ミクロン―200ミクロンの範囲にあるフィレット半径Rを有する。
【0012】
本発明の特定の実施形態では、前記少なくとも1つの突起は、100ミクロン―120ミクロンの範囲にあるフィレット半径Rを有する、曲面状表面遷移領域を定義する。
【0013】
更に本複製ツールは、前記キャビティの各々が、突起部分として機能する曲面状表面遷移領域と、キャビティと遷移領域との間にある内縁部と、オーバーフロー体積部と、遷移領域とオーバーフロー体積部との間にある外縁部と、によって限定されることにより特徴付けられる。このような実施形態では、前記外縁部は、1−35度の範囲にある傾斜角度Θを有する、周辺樹脂流出領域を定義する。好ましい実施形態では、前記周辺樹脂流出領域の長さは、少なくとも20ミクロン、好ましくは少なくとも50ミクロン、更に好ましくは60−90ミクロンの範囲である。
【0014】
本発明者らは、遷移領域のバッファ層をより薄くすることにより、応力が更に低減されることを見出した。このようにすると、バッファ層の漸進的な積層により、層間剥離と材料割れのリスクが低減される。前記ツールが前記基板に向けて圧迫されたとき、前記曲面状表面遷移領域と前記基板との間隔は、好ましくは60ミクロンより小さい、好ましくは20−40ミクロンの範囲である。ただし前記間隔は、前記曲面状表面遷移領域の最高点において測定される。
【0015】
フィレット半径Rは主に亀裂を防止し、遷移領域6でのバッファ層の薄さは主に層間剥離を対象とするが、両技術的特徴は相乗効果を奏する。更に周辺バッファ領域の傾斜Θにより、複製材料が、中心から縁4に向けて滑らかで均一に分散されて流れることが可能となる。この特性により、光軸を持つ縁の輪郭の偏心が的確にコントロールされることになるだろう。
【0016】
更に本発明は、複製ツールを用いて素子を製造するための方法に関する。この方法は、
前記素子の形状を定義する複製ツールを与えるステップと、
基板を与えるステップと、
前記ツールと前記基板との間に配置された、液体又は流体又は塑性的に変形可能な複製材料とともに、前記複製ツールを前記基板に向けて圧迫するステップと、
前記複製材料を前記基板の所定の領域に閉じ込めるステップと、
前記複製材料を硬化させて前記素子を形成するステップと、を備え、
前記所定の領域は、前記基板の表面に沿う少なくとも一方向において、前記素子の所期の領域を、所定の長さより短い長さで超過し、
前記複製ツールは、先行する請求項のいずれか一項又はそれより多くの項に記載された複製ツールである。
【0017】
上記で議論された複製ツールに基づき、本発明者らは、滑らかなモールド表面により、樹脂材料内部、光学コート、並びにコート及び樹脂及び基板の間の界面における応力ビルドが最小化されることを見出した。加えて、滑らかなモールド表面により樹脂の均一な分散がもたらされ、これにより輪郭の偏心が最小となる。更に、滑らかなモールド表面からは、複製材料をより容易に剥離することができる。
【0018】
更に本複製ツールでは、いかなる追加的な層応力除去層も不要である。またモールドには、いかなる支持棒も不要である。本方法により、硬質の(>0.8GPa(2−30GPa).CTE 10<30ppm/K)モールドを用いて、形状精度の高い高品質光学素子が得られる。
【0019】
本添付図面が、発明の更なる理解をもたらすために含まれ、本明細書に組み込まれるとともに、本明細書の一部を構成する。これらの図面は、本発明の実施形態を概説し、詳細な説明とともに本発明の原理を説明するために機能する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る複製ツールの一実施形態を示す図である。
図2】本発明に係る複製ツールの一実施形態を示す図である。
図3】本発明に係る複製ツールによって得られる複製レンズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明に係る複製ツールの一実施形態を示す。複製材料3から素子を複製するための複製ツール1は、複製面と、複製面上のキャビティ5を備える。キャビティ5は、素子の形状を定義する。複製ツール10は、複製面上に、キャビティ5から突出した少なくとも1つの突起部分6を更に備える。本複製ツールは、本ツールが基板2に向けて圧迫されたとき、複製材料を本ツールの所定の領域に閉じ込めるための手段を更に備える。この所定の領域は、基板の表面に沿う少なくとも一方向において、素子3の所期の容積を超過して、オーバーフロー体積部7となる。突起部分6は、20ミクロン―300ミクロンの範囲にあるフィレット半径Rを有する、曲面状表面遷移領域を定義する。ツール1と基板2との間には間隔があり、この間隔は突起6と基板2との間で最小となる。従ってツールは基板に向けて密接に圧迫されるが、ツールと基板との間に間隔を残すため、完全には圧迫されない。換言すれば、ツールは基板に向けて所定の間隔まで圧迫される。この所定の間隔は様々な方法、例えば複製の位置決めアルゴリズム、及び/又は、機械的スペーサなどによりコントロールされ得る。このスペーサは、複製装置によって与えられてもよいし、モールド1の付加的特徴、例えばWO2015174929で開示された支持棒15や、EP 1 837 165で開示された接触スペーサなど、として統合されてもよい。
【0022】
図2は、本発明に係る複製ツールの一実施形態を示す。図1に示された複製ツール1と図2示された複製ツール1との主要な違いは、キャビティ5の数である。構造20は、複製10と、ポリマー材料3が与えられる基板と、を示す。周辺領域は、遷移領域の間隔が最小となるところで、<60ミクロン(好ましくは20−40ミクロン)の厚さを有するバッファ層7を備える。
【0023】
図3は、本発明に係る複製ツールによって得られる複製レンズを示す。
【0024】
遷移領域における周辺バッファの最小の厚さ、すなわち基板2と突起部分6との最小間隔は、<60ミクロン、好ましくは20−40ミクロンである。なぜなら>60ミクロンの値では、層間剥離が発生するからである。この最小の厚さは、複製プロセスの能力とデザインとによって決定される。
【0025】
外縁部は、1−35度の範囲にある傾斜角度Θを有する、周辺樹脂流出領域を定義する。ここで傾斜面は、直線状又は曲面状である。
【0026】
本発明者らは、遠心性の樹脂の流れを促進するためには、最小限このような傾斜面が必要であることを見出した。縁4の形状(図3を参照のこと)は、樹脂3のメニスカスにより、あるいは幅を限定するための他の後処理プロセス(リソグラフィ、レーザ切断など)により決定される。好ましいバッファ幅領域は60−90ミクロンの範囲にある。レンズ8の対応する適応寸法は以下の通りである。光学素子のsag高:5−2000、典型的には60−350ミクロン。開口直径:50−4000ミクロン(典型的には200−2000ミクロン)である。典型的な材料特性は以下の通りである。CTE(>30ppm/K)、E<4GPAの光学材料に関連する硬化ポリマーレンズ素子。E>0.8GPa(2−30GPa)、CTE10<30ppm/Kの硬質ポリマーモールディング材料。(E>40GPa、CTE<13ppm/K)の硬質基板(例えばガラス、石英など)。CTE<10ppm/Kの光学コーティング。
【0027】
本発明が表で示される。
【表1】
【0028】
この表は、異なるパラメータを有する実験設計を表す。「実施形態1」とこれに対応する参照に、フィレット半径の効果が示される。「実施形態2」とこれに対応する参照に、より薄いバッファ層を適用したことによる効果が示される。これらの結果は、下段の2列に与えられる。
図1
図2
図3