(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
最近の住宅では、スマートハウスに代表されるように、「省エネ」、「創エネ」、「蓄エネ」をキーワードとして、快適で二酸化炭素を排出させない住宅造りを目指している。一方で、パッシブハウスという考え方があり、高度な断熱性能を備えることで、高い省エネルギー性と快適性を実現した住宅造りが注目されている。いずれの住宅においても、住宅の断熱性能と熱環境に対する性能の向上が必要不可欠とされている。そういった背景から、住宅の床、壁で蓄熱し、省エネで快適な住空間を提供できる蓄熱性を有した建材の研究・開発が盛んとなってきている。
【0003】
たとえば、太陽光等の自然エネルギー、冷暖房装置等により発生する熱エネルギー、または、生活において発生する熱エネルギー等を潜熱蓄熱材に蓄熱し、外気温の変動に対して吸熱・放熱を行うことで室内の温度変化を極力少なくしようという提案や試みがなされてきた。
【0004】
このような点を鑑みて、例えば特許文献1には、木質系材料からなる木質ボードと、多孔質基材に含浸された蓄熱材組成物とを少なくとも備える蓄熱ボードが提案されている。蓄熱材組成物は、潜熱蓄熱材と、所定の重量平均分子量を有した水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとを混合した混合物からなる。
【0005】
蓄熱ボードを製造する際には、この混合物を加熱することで混合物を液状にし、液状の混合物に、木質ボードを浸漬することにより、蓄熱ボードに混合物を含侵することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示す製造方法では、液状の混合物に、木質系材料からなる木質ボードを含侵した後、木質ボードを混合物から引き上げて、液切りをして蓄熱ボードを製造する。そのため、製造工程が煩雑となるばかりでなく、蓄熱ボードの所定の部位に所定の量の潜熱蓄熱材を含有させることは難しかった。
【0008】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定の部位に所定の量の潜熱蓄熱材を含有した蓄熱ボード、および、この蓄熱ボードを簡単に製造することができる蓄熱ボードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を鑑みて、本発明に係る蓄熱ボードの製造方法は、接着剤を混合した木質系材料を集積してフォーミングマットを形成する工程と、前記フォーミングマットに対して熱圧成形を行うことにより、木質系材料同士が接着剤を介して接着された木質ボードを成形する工程と、を少なくとも含む蓄熱ボードの製造方法であって、前記フォーミングマットを形成する工程において、前記フォーミングマットの少なくとも内部に、熱可塑性樹脂と潜熱蓄熱材を含む混合物からなる蓄熱粒子が分散するように、前記蓄熱粒子を配置し、前記木質ボードを成形する工程において、前記蓄熱粒子が分散した前記フォーミングマットに対して、前記熱可塑性樹脂の軟化点よりも高い温度で前記熱圧成形を行うことにより前記蓄熱ボードを製造することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、フォーミングマットを形成する工程において、フォーミングマットの所定の部位に、所定の量の蓄熱粒子を配置すれば、蓄熱ボードの所定の部位に、所定の量の潜熱蓄熱材を配置することができる。
【0011】
また、従来の如く、木質ボードを液状の混合物に浸漬するような工程を設けることなく、これまでの木質ボードを成形する工程において、潜熱蓄熱材を簡単に含有させることができるので、蓄熱ボードの生産性を高めることができる。
【0012】
より好ましい態様としては、前記フォーミングマットを形成する工程において、前記蓄熱ボードの表面層の単位体積あたりの前記混合物の含有量が、前記蓄熱ボードの内部層の単位体積あたりの前記混合物の含有量よりも多くなるように、前記蓄熱粒子を配置する。
【0013】
この態様により製造された蓄熱ボードは、結果として、蓄熱ボードの表面層の単位体積あたりの潜熱蓄熱材の含有量が、蓄熱ボードの内部層の潜熱蓄熱材の含有量よりも多くなるので、蓄熱ボードの蓄熱の応答性を高めることができる。
【0014】
別のより好ましい態様としては、前記フォーミングマットを形成する工程において、前記蓄熱ボードの内部層の単位体積あたりの前記混合物の含有量が、前記蓄熱ボードの表面層の単位体積あたりの前記混合物の含有量よりも多くなるように、前記蓄熱粒子を配置する。
【0015】
この態様により製造された蓄熱ボードでは、蓄熱ボードの表面層の混合物の単位体積あたりの含有量が、内部層に比べて少なくなるので、表面層の木質系材料同士が接着剤を介して接着される割合が多くなり、表面層の強度が高くなる。この結果、混合物を含む場合であっても蓄熱ボードの曲げ強度の低下を抑えることができる。
【0016】
さらに別のより好ましい態様としては、前記フォーミングマットを形成する工程において、前記蓄熱ボードの内部層に、前記混合物を含有し、前記蓄熱ボードの表面層に、前記混合物を含有しないように、前記蓄熱粒子を配置する。
【0017】
この態様により製造された蓄熱ボードは、蓄熱ボードの表面層に、混合物を含有しないので、内部層に含有した混合物から潜熱蓄熱材が漏洩したとしても、漏洩した潜熱蓄熱材が表面層で保持され易い。
【0018】
より好ましい態様としては、前記蓄熱粒子は、複数種の蓄熱粒子からなり、各種類の蓄熱粒子の混合物に含まれる潜熱蓄熱材の相変化温度が異なる。この態様によれば、複数種の蓄熱粒子のうち、各種類の蓄熱粒子の混合物に含まれる潜熱蓄熱材の相変化温度が異なるので、蓄熱ボードが潜熱として蓄熱できる温度領域をより広くすることができる。
【0019】
本発明に係る蓄熱ボードは、接着剤を介して少なくとも木質系材料同士が接着され、熱可塑性樹脂と潜熱蓄熱材を含む混合物を有した蓄熱ボードであって、前記蓄熱ボードの表面層の単位体積あたりの前記混合物の含有量が、前記蓄熱ボードの内部層の単位体積あたりの前記混合物の含有量よりも多い。
【0020】
本発明に係る蓄熱ボードによれば、結果として、蓄熱ボードの表面層の単位体積あたりの潜熱蓄熱材の含有量が、蓄熱ボードの内部層の潜熱蓄熱材の含有量よりも多くなるので、蓄熱ボードの蓄熱の応答性を高めることができる。
【0021】
別の本発明に係る蓄熱ボードは、接着剤を介して少なくとも木質系材料同士が接着され、熱可塑性樹脂と潜熱蓄熱材を含む混合物を有した蓄熱ボードであって、前記蓄熱ボードの内部層の単位体積あたりの前記混合物の含有量が、前記蓄熱ボードの表面層の単位体積あたりの前記混合物の含有量よりも多い。
【0022】
この蓄熱ボードによれば、蓄熱ボードの表面層の混合物の単位体積あたりの含有量が、内部層に比べて少なくなるので、表面層の木質系材料同士が接着剤を介して接着される割合が多くなり、表面層の強度が高くなる。この結果、混合物を含む場合であっても蓄熱ボードの曲げ強度の低下を抑えることができる。
【0023】
さらに別の本発明に係る蓄熱ボードは、接着剤を介して少なくとも木質系材料同士が接着され、熱可塑性樹脂と潜熱蓄熱材を含む混合物を有した蓄熱ボードであって、前記蓄熱ボードの内部層には、前記混合物を含有しており、前記蓄熱ボードの表面層には、前記混合物を含有していない。
【0024】
この蓄熱ボードによれば、蓄熱ボードの表面層に、混合物を含有しないので、内部層に含有した混合物から潜熱蓄熱材が漏洩したとしても、漏洩した潜熱蓄熱材が表面層で保持され易い。
【0025】
より好ましい態様としては、前記混合物は、蓄熱粒子として構成されており、前記蓄熱粒子は、複数種の蓄熱粒子からなり、各種類の蓄熱粒子の混合物に含まれる潜熱蓄熱材の相変化温度が異なる。
【0026】
この態様によれば、複数種の蓄熱粒子のうち、各種類の蓄熱粒子の混合物に含まれる潜熱蓄熱材の相変化温度が異なるので、蓄熱ボードが潜熱として蓄熱できる温度領域をより広くすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る蓄熱ボードの製造方法によれば、所定の部位に所定の量の潜熱蓄熱材を含有した蓄熱ボードを簡単に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、第1〜第5実施形態に基づき本発明を説明する。
【0030】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る蓄熱ボードの製造方法を説明するための模式図であり、(a)は、フォーミングマットを形成する工程を説明するための模式図であり、(b)は、木質ボードを成形する工程を説明するための模式図である。
【0031】
1.フォーミングマットを形成する工程
この工程では、接着剤を混合した木質系材料を集積してフォーミングマット1aを形成する。この工程では、まず、以下に示す、木質片2、接着剤、および、熱可塑性樹脂と潜熱蓄熱材を含む混合物からなる蓄熱粒子3を準備する。
【0032】
1−1.木質片2について
木質片2は、蓄熱ボード1の基材となる材料であり、チップ、フレーク、ウエハー、およびストランドから選択される少なくとも1種の形態のものを含む。本実施形態では、木質系材料として木質片2を例示したが、たとえば、木質繊維または木粉などであってもよい。なお、木質繊維は、木材を解繊して得られる繊維である。木粉は、木質片2または木質繊維をさらに粉砕した粉末である。木質片2の材料としては、南洋材(ラワン等)、針葉樹(マツ、スギ等)等を挙げることができる。
【0033】
1−2.接着剤について
接着剤(図示せず)は、少なくとも、上述した木質片2同士を接着するものである。木質片2の代わりに木質系材料として、木質繊維または木粉を用いる場合には、接着剤は、これらを相互に接着するものある。接着剤は特に限定されないが、例えば、イソシアネート系接着剤、フェノールホルムアルデヒド系接着剤、尿素ホルムアルデヒド系接着剤、及びメラミンホルムアルデヒド系接着剤からなる群から選択される1種以上を用いることができる。
【0034】
1−3.蓄熱粒子3について
蓄熱粒子3は、熱可塑性樹脂と潜熱蓄熱材を含む混合物からなる粒子である。ここで、熱可塑性樹脂と潜熱蓄熱材を混合した混合物は、潜熱蓄熱材が相変化温度(融点)以上となったときに、液状の潜熱蓄熱材が混合物から漏洩しないまたは漏洩が抑制されように、液状の潜熱蓄熱材を、熱可塑性樹脂により保持することができる材料で構成されている。蓄熱粒子3の形状は、ブロック状、球状、チップ状など、特にその形状は限定されるものではない。
【0035】
潜熱蓄熱材の液相から固相への相変化温度は、18〜25℃であることが好ましい。潜熱蓄熱材としては、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン等或いはこれらの混合物で構成される、典型的には炭素数16〜24の、n−パラフィンやパラフィンワックス等の飽和脂肪族炭化水素;1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等或いはこれらの混合物で構成される、典型的には炭素数16〜24の、直鎖α−オレフィン等の一価又は多価不飽和脂肪族炭化水素;オクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等或いはこれらの混合物で構成される長鎖脂肪酸;上記脂肪酸のエステル、ポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物等を挙げることができる。たとえば28℃で融解するものであれば、n−オクタデカンを選択し、18℃で融解するものであれば、n−ヘキサデカンを選択する。さらに、上述した融点の異なる複数の潜熱蓄熱材を混合して用いてもよい。
【0036】
熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマー)は、混合物からの潜熱蓄熱材の漏洩を抑制する目的で添加されるものであり、潜熱蓄熱材の相変化温度よりも高い温度で軟化し、後述する熱圧成形時の加熱温度よりも低い軟化点を有しているものを用いる。熱可塑性エラストマーとは、常温では加硫ゴムと同様な性質を持ち弾性があり、高温では軟化、流動する性質を有する高分子材料である。熱可塑性エラストマーは、分子中に弾性を持つゴム成分(ソフトセグメント)と塑性変形を防止するための分子拘束成分(八ードセグメント)とを併せ持ちゴムとプラスチックの中間の性質を持つ。
【0037】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、その他の熱可塑性エラストマー(TPZ)からなる群から選択される1種以上が挙げられ、特に好ましくは、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは、スチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも1種であり、最も好ましくは、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも1種である。複数種の異なる熱可塑性エラストマーの混合物を用いてもよい。
【0038】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、結晶擬似架橋構造を持った無架橋型あるいは部分架橋型のエラストマーが挙げられ、具体的には、ポリプロピレン(PP)とエチレンプロピレンゴム(EPM)とが分散したブレンド体、PPとエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)とが分散したブレンド体、PPとEPDMとが分散し且つ部分的に架橋したブレンド体等が挙げられる。
【0039】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、水素添加されていないものであってもよいし、水素添加されたものであってもよい。水素添加されていないスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエンースチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンースチレンブロック共重合体(SIS)等が挙げられる。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)等及びこれらのうち2種以上の混合物を用いることができる。なかでも、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)が好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーにおけるスチレン含量の範囲は特に限定されないが分子全体に対してスチレン含量が25〜35質量%の範囲であることが好ましい。
【0040】
1−4.フォーミングマットの形成について
本実施形態では、フォーミングマット1aを形成する際に、フォーミングマット1aの内部に、蓄熱粒子3が分散するように蓄熱粒子3を配置する。具体的には、上述した木質片2と接着剤とを混ぜ合わせた後、または、木質片2に接着剤を塗布した後、これに蓄熱粒子3をさらに混ぜ合わせてから、たとえば、
図1(a)に示すプレス装置の台座4の上に、フォーミングマット1aを形成する。
【0041】
また別の方法としては、たとえば、木質片2と接着剤とを混ぜ合わせた混合層の上に、蓄熱粒子3を均一に撒き散らし、さらに、その上に木質片2と接着剤とを混ぜ合わせた混合層を形成して、フォーミングマット1aを形成してもよい。
【0042】
さらに、別の方法としては、木質片2と接着剤とを混ぜ合わせた混合層と、蓄熱粒子3を撒き散らした蓄熱層とを交互に積層することにより、フォーミングマット1aを形成してもよい。
【0043】
ここで、木質片2の粒径よりも、蓄熱粒子3の粒径の方が大きい場合には、後述する木質ボード1Aを成形する工程において、蓄熱粒子3を木質片に絡まるように変形させることができる。この結果、木質片2同士の隙間から蓄熱粒子3が抜け出すことを防止することができる。
【0044】
一方、木質片2の粒径よりも、蓄熱粒子3の粒径の方が小さい場合には、木質片2同士に蓄熱粒子3が入り込み難いため、木質片2同士の接着割合を高めることができる。この結果、蓄熱ボード1の強度を高めることができる。
【0045】
さらに、木質片2の粒径よりも、粒径の方が大きい蓄熱粒子3と、木質片2の粒径よりも、粒径の方が小さい蓄熱粒子3と、の双方を用いた場合には、これらの双方の効果を期待することができる。
【0046】
2.木質ボード1Aを成形する工程(蓄熱ボード1を製造する工程)
次に、
図1(b)に示すように、蓄熱粒子3が分散したフォーミングマット1aに対してホットプレス装置の加熱された押圧部材5で、熱圧成形を行うことにより蓄熱ボード1を製造する。この際、台座4も加熱し、フォーミングマット1aに加熱される加熱温度は、蓄熱粒子3の熱可塑性樹脂の軟化点の温度よりも高い温度にする。これにより、蓄熱粒子3が変形し、木質片2、2同士の間に入り込む。
【0047】
本実施形態の如く、木質片2、2に対して蓄熱粒子3の量が少ない場合、または、蓄熱粒子3同士がこの加熱温度で融着しない場合、蓄熱粒子3は、粒子の状態で、蓄熱ボード1の内部に残存する。蓄熱粒子3同士がこの加熱温度で融着する場合には、これらが連続して、不定形の状態で、蓄熱ボード1の内部に含有される。なお、蓄熱粒子3の融着の有無は、蓄熱粒子3の熱可塑性樹脂の種類を選定することにより、決定することができる。
【0048】
本実施形態では、フォーミングマット1aを形成する工程において、フォーミングマットの所定の部位に、所定の量の蓄熱粒子3を配置すれば、蓄熱ボード1の所定の部位に、所定の量の潜熱蓄熱材を配置することができる。これにより、蓄熱ボード1の蓄熱量を調整することができる。また、従来の如く、木質ボード1Aを液状の混合物に浸漬するような工程を設けることなく、これまでの木質ボード1Aを成形する工程において、潜熱蓄熱材を簡単に含有させることができるので、蓄熱ボード1の生産性を高めることができる。
【0049】
〔第2実施形態〕
図2は、第2実施形態に係る蓄熱ボード1の製造方法を説明するための模式図であり、(a)は、フォーミングマット1aを形成する工程を説明するための模式図であり、(b)は、木質ボード1Aを成形する工程を説明するための模式図である。なお、
図2(b)では、表面層を構成する木質片2Bを省略している。
【0050】
第2実施形態が、第1実施形態と相違する点は、蓄熱ボード1の内部層11と表面層12、12に含まれる木質片2の大きさと、熱可塑性樹脂と潜熱蓄熱材との混合物の含有量である。その他の構成は、第1実施形態と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0051】
本実施形態では、フォーミングマット1aを形成する際に、表面層12a、内部層11a、表面層12aの順に積層する。本実施形態では、表面層12aには、内部層11aの木質片2Aに比べて、細かな木質片2Bを用いる。具体的には、各表面層12aの木質片2Bの粒径は、内部層11aの木質片2Aの粒径よりも小さい。
【0052】
さらに、この工程では、蓄熱ボード1の表面層12の単位体積あたりの混合物の含有量が、蓄熱ボード1の内部層11の単位体積あたり混合物の含有量よりも多くなるように、混合物からなる蓄熱粒子3を配置する。すなわち、フォーミングマット1aの内部層11aに比べて、フォーミングマット1aの表面層12aに、蓄熱粒子3をより密に配置する。
【0053】
このように、表面層12a、内部層11a、表面層12aを順に積層したフォーミングマット1aを、第1実施形態と同じように熱圧成形し、蓄熱ボード1を製造する。得られた蓄熱ボード1は、接着剤を介して少なくとも木質片2A同士が接着され、蓄熱ボード1の表面層12、12の単位体積あたりの混合物の含有量が、蓄熱ボード1の内部層11の単位体積あたりの混合物の含有量よりも多い。
【0054】
本実施形態に係る蓄熱ボード1によれば、結果として、蓄熱ボード1の表面層12の単位体積あたりの潜熱蓄熱材の含有量が、蓄熱ボード1の内部層11の潜熱蓄熱材の含有量よりも多くなるので、蓄熱ボード1の蓄熱の応答性を高めることができる。
【0055】
さらに、表面層12は、より細かな木質片2Bで構成されるため、これまでの液化した混合物に、木質ボードを浸漬する場合には、混合物が含浸され難く、内部層まで混合物を含浸させるのに時間を要した。また、実際どの程度の量の混合物が、木質ボードに含浸されたかは、実測しなければ確認できないため、予定した一定量の混合物を木質ボードに含浸させることが難しかった。しかしながら、本実施形態では、フォーミングマット1aを形成する際に、所望の量の潜熱蓄熱材を含む蓄熱粒子3を、内部層11aおよび表面層12aに配置することができるため、より正確に潜熱蓄熱材の含有量が調整された蓄熱ボード1を簡単に製造することができる。
【0056】
なお、蓄熱ボード1の一方側の表面層12のみの蓄熱性を高めたい場合には、一方側の表面層12aにのみ、蓄熱粒子3を配置し、他方側の表面層12aに、蓄熱粒子3を配置せずに、フォーミングマット1aを形成し、これを熱圧成形してもよい。
【0057】
〔第3実施形態〕
図3は、第3実施形態に係る蓄熱ボード1の製造方法を説明するための模式図であり、(a)は、フォーミングマット1aを形成する工程を説明するための模式図であり、(b)は、木質ボード1Aを成形する工程を説明するための模式図である。なお、
図3(b)では、表面層を構成する木質片2Bを省略している。
【0058】
第3実施形態が、第2実施形態と相違する点は、熱可塑性樹脂と潜熱蓄熱材との混合物の含有量である。その他の構成は、第2実施形態と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、フォーミングマット1aを形成する工程において、蓄熱ボード1の内部層11の単位体積あたりの混合物の含有量が、蓄熱ボード1の表面層12の単位体積あたり混合物の含有量よりも多くなるように、混合物からなる蓄熱粒子3を配置する。すなわち、フォーミングマット1aの表面層12aに比べて、フォーミングマット1aの内部層11aに、蓄熱粒子3をより密に配置する。
【0060】
表面層12a、内部層11a、表面層12aを順に積層したフォーミングマット1aを、第2実施形態と同じように熱圧成形し、蓄熱ボード1を製造する。得られた蓄熱ボード1は、接着剤を介して少なくとも木質片2A同士が接着され、蓄熱ボード1の内部層11の単位体積あたりの混合物の含有量が、蓄熱ボード1の表面層12、12の単位体積あたりの混合物の含有量よりも多い。
【0061】
本実施形態に係る蓄熱ボード1によれば、第2実施形態で説明した製造方法で示した効果に加えて以下の効果をさらに期待することができる。具体的には、本実施形態では、蓄熱ボード1の表面層12の混合物の単位体積あたりの含有量が、内部層11に比べて少なくなるので、表面層12の木質片2A同士が接着剤を介して接着される割合が多くなり、表面層12の強度が高くなる。この結果、混合物を含む場合であっても蓄熱ボード1の曲げ強度の低下を抑えることができる。
【0062】
〔第4実施形態〕
図4は、第4実施形態に係る蓄熱ボード1の製造方法を説明するための模式図であり、(a)は、フォーミングマット1aを形成する工程を説明するための模式図であり、(b)は、木質ボード1Aを成形する工程を説明するための模式図である。
【0063】
第4実施形態が、第2実施形態と相違する点は、表面層12に、混合物を含有していない点である。その他の構成は、第2実施形態と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施形態では、フォーミングマット1aを形成する工程において、蓄熱ボード1の内部層11に、混合物を含有し、蓄熱ボード1の表面層12、12に、混合物を含有しないように、蓄熱粒子3を配置する。すなわち、フォーミングマット1aの表面層12a、12aに、蓄熱粒子3を配置せず、フォーミングマット1aの内部層11aに、蓄熱粒子3を配置する。
【0065】
表面層12a、内部層11a、表面層12aを順に積層したフォーミングマット1aを、第2実施形態と同じように熱圧成形し、蓄熱ボード1を製造する。得られた蓄熱ボード1は、接着剤を介して少なくとも木質片2A同士が接着され、蓄熱ボード1の内部層11aには、混合物を含有しており、蓄熱ボード1の表面層12aには、混合物を含有していない。
【0066】
蓄熱ボード1によれば、蓄熱ボード1の表面層12に、混合物を含有しないので、内部層11に含有した混合物から潜熱蓄熱材が漏洩したとしても、漏洩した潜熱蓄熱材が表面層12で保持され易い。
【0067】
〔第5実施形態〕
図5は、第5実施形態に係る蓄熱ボード1の製造方法を説明するための模式図であり、(a)は、フォーミングマット1aを形成する工程を説明するための模式図であり、(b)は、木質ボード1Aを成形する工程を説明するための模式図である。
【0068】
第5実施形態が、第1実施形態と相違する点は、蓄熱粒子を複数種の蓄熱粒子を用いた点である。具体的には、本実施形態では、蓄熱粒子は、2種の蓄熱粒子3、3Aからなり、2種類の蓄熱粒子3、3Aの混合物に含まれる潜熱蓄熱材の相変化温度が異なる。このように、異なる相変化温度を有した2つの蓄熱粒子3、3Aを、蓄熱ボード1に分散して配置することにより、蓄熱ボード1の全体において、潜熱として蓄熱できる温度領域をより広くすることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0070】
第2〜4実施形態では、1種類の蓄熱粒子を用いて、蓄熱ボードを製造したが、これらの実施形態において、たとえば、異なる相変化温度を有した2つ以上の蓄熱粒子を用いてもよい。