(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6936619
(24)【登録日】2021年8月31日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】油性ゲル組成物及び油性ゲル組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20210906BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20210906BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20210906BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20210906BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20210906BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20210906BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/44
A61K8/02
A61K8/92
A61Q1/00
A61Q19/00
A61Q5/00
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-91896(P2017-91896)
(22)【出願日】2017年5月2日
(65)【公開番号】特開2018-188388(P2018-188388A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】黒谷 達
【審査官】
宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−510136(JP,A)
【文献】
特開2015−145429(JP,A)
【文献】
特開2018−070612(JP,A)
【文献】
特開2016−124863(JP,A)
【文献】
特開2005−298388(JP,A)
【文献】
特開2009−114161(JP,A)
【文献】
特表2013−522226(JP,A)
【文献】
特開2012−240994(JP,A)
【文献】
特開2002−316971(JP,A)
【文献】
特開2010−260825(JP,A)
【文献】
特開2011−213677(JP,A)
【文献】
特開2011−074006(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/093802(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0264742(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D);
成分(A)ジブチルラウロイルグルタミド、成分(B)ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、成分(C)炭素数1〜3の低級アルコール、成分(D)25℃で液状の油剤
を含有し、前記成分(C)の含有量が0.1〜10%であり、前記成分(D)がトリメリト酸トリトリデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2、およびジイソステアリン酸ポリグリセリル−2からなる群より選択されるいずれかのエステル油である油性ゲル組成物。
【請求項2】
前記成分(C)炭素数1〜3の低級アルコールの含有量が0.1〜10質量%である請求項1に記載の油性ゲル組成物。
【請求項3】
前記成分(A)と前記成分(B)の含有質量比がA:B=1:10〜10:1である請求項1または2に記載の油性ゲル組成物。
【請求項4】
前記成分(A)と前記成分(C)の含有質量比がA:C=60:1〜1:12である請求項1〜3のいずれか1項に記載の油性ゲル組成物。
【請求項5】
前記成分(B)と前記成分(C)の含有質量比がB:C=40:1〜1:12である請求項1〜4のいずれか1項に記載の油性ゲル組成物。
【請求項6】
前記成分(C)炭素数1〜3の低級アルコールがエタノール及び/またはイソプロピルアルコールである請求項1〜5のいずれか1項に記載の油性ゲル組成物。
【請求項7】
前記成分(D)にトリメリト酸トリトリデシルを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の油性ゲル組成物。
【請求項8】
前記油性ゲル組成物が油性固形化粧料である請求項1〜7のいずれか1項に記載の油性ゲル組成物。
【請求項9】
成分(A)ジブチルラウロイルグルタミド、成分(B)ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、成分(C)炭素数1〜3の低級アルコール、成分(D)25℃で液状の油剤とを含有し、前記成分(C)の含有量が0.1〜10% であり、前記成分(D)がトリメリト酸トリトリデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2、およびジイソステアリン酸ポリグリセリル−2から選択されるいずれかのエステル油である油性ゲル組成物の製造方法であって、前記成分(A)及び成分(B)を成分(C)および成分(D)に混合し、80℃以下で混合溶解する油性ゲル組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジブチルラウロイルグルタミド及びジブチルエチルヘキサノイルグルタミドで固化した油性ゲル組成物及びその製造方法に関し、より詳細には、透明性が高く、溶解温度降下作用による製造時の操作性に優れる油性ゲル組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸系ゲル化剤を用いて作製するゲル組成物はワックス等を用いたゲル組成物よりも透明性に優れることが知られている。特に、使用者の嗜好性に流行が左右される化粧料においては、その審美性が問われることが多く、透明性は非常に重視される品質である。また、審美性が高い透明な化粧料は、水を水溶性高分子等で固めた水性固形化粧料、油を油性ゲル化剤等で固めた油性固形化粧料等が挙げられるが、容器の気密性等の観点から、油性固形化粧料が広く用いられている。透明性を有するゲル化剤としては、デキストリン脂肪酸エステル等が使用される場合があり(特許文献1参照)、その他にも、ポリアミド樹脂、12−ヒドロキシステアリン酸等が油性ゲル化剤として知られている。一方、アミノ酸系ゲル化剤を用いたゲル組成物としては、N−アシルアミノ酸誘導体と、ポリアミド樹脂と、液状油分とを含有する油性組成物(特許文献2参照)が透明性や使用感に優れることが開示されている。また、ジブチルラウロイルグルタミドを含む、直鎖アルキル基を有する低分子N−アシルグルタミン酸ジアミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドを含む、分枝鎖アルキル基を有する低分子量N−アシルグルタミン酸ジアミド、ゲル化促進性溶媒ならびに、硬質セグメントおよび軟質セグメントを有する高分子ブロックコポリマーおよび、高分子ブロックコポリマーの硬質セグメントおよび/または軟質セグメントを可溶化する能力のある溶媒または、油溶性極性修飾ポリマーおよび油溶性極性修飾ポリマーを可溶化する能力のある溶媒、ならびに任意選択で活性成分を含み、約30〜300gfの範囲の硬度値および約50℃以上の融点を有するゲル構造を形成する能力のある非水性担体組成物とすることで、透明であり、固形組成物を冷却固化後に生じる離液を抑えることができることが開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−138012号公報
【特許文献2】特開2010−260825号公報
【特許文献3】特許5689897号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術やポリアミド樹脂、12−ヒドロキシステアリン酸をゲル化剤として用いたゲル組成物の場合、透明性を維持するためにゲル化剤の含有量を減らす必要があり、ゲル化剤の含有量を減らすと、満足のいく強度を有するゲル組成物は得られない場合がある。また、ゲル化構造内に取り込まれた油剤が経時変化によりゲルの表面からにじみ出る発汗現象が生じる場合があった。また、特許文献2の技術では、透明性を有するものの、N−アシルアミノ酸誘導体の溶解に高温に加熱する必要があり、製造時の操作性に満足のいくものが得られなかった。また、特許文献3の技術では、ブロックコポリマーが必須の成分であり、使用感や、製造時の操作性において満足のいく組成物が得られなかった。
【0005】
そこで本発明は、ゲル組成物製造時に高温に加熱する必要がないために操作性に優れ、透明性が高く、ゲル組成物として保形でき、使用時に適度に崩れることで使用感に優れる油性ゲル組成物を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み、ジブチルラウロイルグルタミド及びジブチルエチルヘキサノイルグルタミドを含有することで高い透明性を有するゲル組成物が得られる知見を用い、種々の溶媒を用いて溶解検討を行った。鋭意検討の結果、25℃で液状の油剤にジブチルラウロイルグルタミド及びジブチルエチルヘキサノイルグルタミドを分散した組成物と、炭素数1〜3の低級アルコールを組み合わせることで透明性を維持しながらも、ジブチルラウロイルグルタミド及びジブチルエチルヘキサノイルグルタミドの溶解温度を下げる効果が顕著であり、さらに使用時に適度に崩れることで使用感に優れることを見出し、本願を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(D);
成分(A)ジブチルラウロイルグルタミド、成分(B)ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、成分(C)炭素数1〜3の低級アルコール、成分(D)25℃で液状の油剤、
を含有する油性ゲル組成物を提供するものである。
【0008】
さらに、前記成分(C)炭素数1〜3の低級アルコールの含有量が0.1〜10質量%である前記油性ゲル組成物を提供するものである。
【0009】
さらに、前記成分(A)と前記成分(B)の含有質量比がA:B=1:10〜10:1である前記油性ゲル組成物を提供するものである。
【0010】
さらに、前記成分(A)と前記成分(C)の含有質量比がA:C=60:1〜1:12である前記油性ゲル組成物を提供するものである。
【0011】
さらに、前記成分(B)と前記成分(C)の含有質量比がB:C=40:1〜1:12である前記油性ゲル組成物を提供するものである。
【0012】
さらに、前記成分(C)炭素数1〜3の低級アルコールがエタノール及び/またはイソプロピルアルコールである前記油性ゲル組成物を提供するものである。
【0013】
さらに、前記成分(D)にトリメリト酸トリトリデシルを含む前記油性ゲル組成物を提供するものである。
【0014】
さらに、前記油性ゲル組成物が油性固形化粧料である前記油性ゲル組成物を提供するものである。
【0015】
さらに、成分(A)ジブチルラウロイルグルタミド、成分(B)ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、成分(C)炭素数1−3の低級アルコール、成分(D)25℃で液状の油剤とを含有する油性ゲル組成物の製造方法であって、前記成分(A)及び前記成分(B)を前記成分(C)および前記成分(D)で混合し、80℃以下で混合溶解する油性ゲル組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の油性ゲル組成物は、透明性が高く、製造時の操作性に優れ、使用時に適度に崩れることで使用感に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本発明において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0018】
本発明に用いられる成分(A)ジブチルラウロイルグルタミドは、分子中にアミド結合を有し、下記式(1)で表される(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に炭素数4の炭化水素基を示し、R
3は、炭素数12の炭化水素基を示し、nは1又は2を示す)。市販品としては、アミノ酸系油ゲル化剤GP−1(味の素社製、融点150〜161℃)等が挙げられる。本発明に用いられる成分(A)ジブチルラウロイルグルタミドは油剤を固化する効果を奏する。
【0019】
本発明に用いられる成分(A)の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜30質量%(以下%と略す)、1〜15%がより好ましい。成分(A)をこの範囲で含有すると、透明性および使用感により優れるためより好ましい。
【0020】
本発明に用いられる成分(B)ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドは、分子中にアミド結合を有し、下記式(1)で表される(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に炭素数4の炭化水素基を示し、R
3は、炭素数8の炭化水素基を示し、nは1又は2を示す)。市販品としては、アミノ酸系油ゲル化剤EB−21(味の素社製、融点183〜196℃)等が挙げられる。本発明に用いられる成分(B)ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドは油剤を固化する効果を奏する。
【0022】
本発明に用いられる成分(B)の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜20%、0.5〜10%がより好ましい。成分(B)をこの範囲で含有すると、透明性および使用感により優れるためより好ましい。
【0023】
本発明において、成分(A)ジブチルラウロイルグルタミドおよび成分(B)ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドの含有量は、任意に選択可能であり、含有する比率も特に限定されるものではないが、これらの含有量の比率を特定の範囲とすることにより、さらに本発明の効果を高めることが可能となり好ましい。このような成分(A)および成分(B)の含有質量比は、A:B=10:1〜1:10が好ましく、より好ましくは、5:1〜1:5である。この含有質量比であると、透明性により優れるためより好ましい。
【0024】
本発明に用いられる成分(C)炭素数1〜3の低級アルコールは、炭素数1〜3の直鎖アルコールである。水酸基の位置や数は限定されず、任意に選択することができるが、中でも溶解温度降下の観点から、化合物中に水酸基を1つ含む1価のアルコールであることが好ましい。本発明に用いられる成分(C)は、特に限定されず使用することができ、具体的には、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。本発明に用いられる成分(C)炭素数1〜3の低級アルコールを含有すると、成分(A)および成分(B)を溶解する際に、溶解温度を大幅に下げる効果を奏する。成分(C)を含有しない場合、成分(A)および成分(B)の溶解温度は150℃以上であるが、成分(C)を含有する場合は、その含有量等にも寄るが、溶解温度を降下させることができ好ましい。
【0025】
本発明に用いられる成分(C)の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10%、0.5〜5%がより好ましい。成分(C)をこの範囲で含有すると、ゲル組成物の溶解温度が低下する操作性および使用感により優れるためより好ましい。
【0026】
成分(A)ジブチルラウロイルグルタミドおよび成分(C)炭素数1〜3の低級アルコールの含有量は、任意に選択可能であり、含有する比率も特に限定されるものではないが、これらの含有量の比率を特定の範囲とすることにより、さらに本発明の効果を高めることが可能となり好ましい。このような成分(A)と成分(C)の含有質量比は、A:C=60:1〜1:12が好ましく、10:1〜1:3がより好ましく、3:1〜1:2がさらに好ましい。この含有質量比であると、使用感を損なうことなく、安定性及び透明性により優れるため、より好ましい。
【0027】
また、成分(B)ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドおよび成分(C)炭素数1〜3の低級アルコールの含有量は、任意に選択可能であり、含有する比率も特に限定されるものではないが、これらの含有量の比率を特定の範囲とすることにより、さらに本発明の効果を高めることが可能となり好ましい。このような成分(B)と成分(C)の含有質量比は、B:C=40:1〜1:12が好ましく、10:1〜1:3がより好ましく、3:1〜1:2がさらに好ましい。この含有質量比であると、使用感を損なうことなく、安定性及び透明性により優れるため、より好ましい。
【0028】
本発明に用いられる成分(D)は、25℃で液状を呈する油剤である。本発明の成分(D)を含油することで、使用感を滑らかにする効果を奏する。本発明に用いられる成分(D)は、25℃で液状の油剤であれば、特に制限されず使用することができる。例えば、トリメリト酸トリトリデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2等のエステル油、流動パラフィン、ミネラルオイル、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ポリブテン、水添ポリデセン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン等の炭化水素油、ジメチルポリシロキサン、ジメチコノール等のシリコーン油が挙げられる。これらの中でも、トリメリト酸トリトリデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2等のエステル油が炭化水素油やシリコーン油に比べ、油性ゲル組成物とした際に透明性により優れるため好ましく、特にエステル油の中でも、トリメリト酸トリトリデシルを用いることで透明性と使用感により優れるためより好ましい。
【0029】
本発明に用いられる成分(D)の含有量は、特に限定されないが、好ましくは80〜99%、より好ましくは90〜95%含有させることができる。成分(D)をこの範囲で含有すると、使用感により優れるためより好ましい。また、トリメリト酸トリトリデシルを成分(D)に含有する場合、成分(D)中にトリメリト酸トリトリデシルを10〜80%、より好ましくは20〜70%含有することで透明性及び使用感により優れるためより好ましい。
【0030】
本発明は前記成分(A)〜(D)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)、(B)、(D)以外の油性成分、粉体、界面活性剤、水性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、色素、香料等の通常公知の成分を含有することができる。
【0031】
成分(D)以外の油性成分としては、25℃で固形、半固形状のものが挙げられ、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、炭化水素類、油脂類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類等が挙げられる。具体的には、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ワセリン等の炭化水素類、シア脂等の油脂類、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ステアリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン等のシリコーン類等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を用いることができる。本発明における25℃で固形、半固形状の油性成分の含有量は、特に限定されないが、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、1%以下が更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。この範囲であれば、透明性により優れるため、より好ましい。本発明における実質的に含有しないとは、その含有量が0%以上0.1%未満であることとする。
【0032】
粉体としては、化粧料に一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、ガラス末、窒化ホウ素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等の合成樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色1号、青色404号、黄色401号、黄色4号、黄色5号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体、アルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これら粉体はその一種又は二種以上を用いることができ、必要に応じて、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等を用いて、公知の方法により表面処理を施したり、さらに複合化したものを用いても良い。また、粉体の含有量としては、透明性の観点から、1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下である。
【0033】
界面活性剤としては、化粧料に一般に用いられている界面活性剤であれば、特に限定されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0034】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。本発明における水性成分の含有量は、特に限定されるものではないが、安定性及び透明性の観点から1%以下であることが好ましい。
【0035】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等の紫外線吸収剤や、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられ、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられ、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等が挙げられ、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が挙げられ、防腐剤としてはパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0036】
本発明の油性ゲル組成物の製造方法は、特に限定されないが、成分(A)ジブチルラウロイルグルタミド及び成分(B)ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドと、成分(C)炭素数1〜3の低級アルコール及び成分(D)25℃で液状の油剤とを加熱混合し、溶解して得ることができる。本発明において、成分(C)及び成分(D)を添加する順序は限定されないが、成分(C)及び成分(D)をそれぞれ順番に添加しても良く、成分(C)及び成分(D)は同時に添加しても良い。さらに、加熱中に添加しても良く、例えば、成分(A)及び成分(B)に成分(C)を添加混合し、加熱中に成分(D)を添加する製造方法としても良い。
【0037】
本発明における透明とは、12.5×12.5×45mmガラスセルにサンプルを溶融充填したものを、1.5ポイント太さの黒線を書いた白い紙の上に置き、厚さ12.5mmの上から黒線が見えるものを指す。また、顔料、染料、パール剤等の着色剤で着色したものであっても、前記方法にて黒線が確認できれば、本願における透明性を有しているものとする。本発明は、ガラスセルの上から黒線が見えるものであった。
【0038】
本発明における溶解温度は、示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)社製DSC6200)を用い、測定温度10〜150℃、昇温速度5℃/minで測定して得られる融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップを溶解温度とする。
【0039】
本発明の油性ゲル組成物は、特に限定されず、様々な用途に用いることができる。例えば、皮膚外用剤、化粧料、軟膏、塗料、オブジェ等が挙げられる。本発明の油性ゲル組成物が、化粧料とすることが好ましく、油性固形化粧料であるとより好ましい。化粧料としては、口紅、リップグロス、リップライナー、ファンデーション、下地、コンシーラー、チーク、アイシャドウ、アイライナー、アイブロウ、マスカラ等のメークアップ化粧料、マッサージ料、日焼け止め等のスキンケア化粧料、デオドラント料、ヘアトニック、ヘアカラー等の頭髪化粧料等が挙げられ、中でも、口紅、リップグロス、リップライナー等の口唇化粧料として用いることが好ましい。
【0040】
本発明の油性ゲル組成物の形状は、特に限定されず、充填する容器に合わせて様々な形状とすることができる。例えば、柱状、錐体状、球状等の単純な立体であっても良く、白鳥や猫等の動物の形状の型で作製したものでも良い。尚、本願における球状とは真球状だけでなく、略球状、楕円球状、偽球状等を包含する。また、柱状、錐体状は底面に平行な断面が四角形、三角形、円形、星形等のいずれの形状であっても良い。
【実施例】
【0041】
以下に実施例1〜11、比較例1〜2の油性固形口唇化粧料をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0042】
実施例1〜11、比較例1〜2:油性固形口唇化粧料
表1及び表2に示した成分、含有量の油性固形口唇化粧料を以下の方法で製造し、下記評価方法、判定基準に基づき評価したものを併せて表1及び表2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
*1:アミノ酸系油ゲル化剤GP−1(味の素社製)
*2:アミノ酸系油ゲル化剤EB−21(味の素社製)
*3:LIPONATE TDTM(LIPOCHEMICALS社製)
【0046】
(製造方法)
A.成分(1)〜(10)を、均一に混合する。
B.Aを110℃(比較例は170℃)に加熱し、均一に溶解させる。
C.Bを皿状容器に流し込み、室温まで冷却し、油性固形口唇化粧料を得た。
【0047】
(評価項目)
イ.操作性(溶解温度降下)
ロ.透明性
ハ.使用感(なめらかさ)
【0048】
イ.操作性(溶解温度降下)
成分(A)および成分(B)の油剤中での溶解温度が、それぞれの融点よりも低い温度で溶解する場合に、溶解温度降下が生じたと定義し、より低い温度で溶解する場合に操作性が良いものとする。評価方法としては、成分(1)〜(10)をビーカー等の容器に入れ、ウォーターバスにて加温しながら、成分(A)および成分(B)が溶けきったことを目視で確認し、その温度を温度計にて確認し、下記判定基準にて4段階に評価した。
【0049】
判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :90℃未満
○ :90℃以上110℃未満
△ :110℃以上130℃未満
× :130℃以上
【0050】
ロ.透明性
実施例1〜11、比較例1〜2に関して、透明性を下記手法により判定した。
12.5×12.5×45mmガラスセルにサンプルを溶融充填したものを、1.5ポイント太さの黒線を書いた白い紙の上に置く。厚さ12.5mmの上から黒線の見え方で透明性を下記判定基準により判定した。
【0051】
判定基準
(判定):(評価)
◎ :はっきりと明瞭に黒線が認識できる
○ :外観は透明であるが、黒線が一部ぼやけて見える
× :黒線が確認できない
【0052】
ハ.使用感(なめらかさ)
専門パネル10名による使用テストを行った。実施例及び比較例の油性固形口唇化粧料を使用してもらい、なめらかに伸び広がるかをパネル各人が下記絶対評価基準にて7段階に評価し評点をつけ、各試料についてパネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記判定基準により判定した。
【0053】
絶対評価基準
(評点):(評価)
6 :非常に良い
5 :良い
4 :やや良い
3 :普通
2 :やや悪い
1 :悪い
0 :非常に悪い
判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :5点を超える
○ :3.5点を超え5点以下
△ :1点を超え3.5点以下
× :1点以下
【0054】
表1及び表2の結果より明かなように、実施例1〜11の油性ゲル組成物は、溶解温度降下をはっきりと示して操作性に優れ、透明性が高いものであり、かつ滑らかな使用感を有するものであった。一方、成分(C)を固形の高級アルコールであるセタノールに置き換えた比較例1は、溶解温度降下があまり得られず、溶解には強い熱量を必要とし、透明性に劣るものであった。また、成分(C)を含有しない比較例2は、透明性は問題ないものの、溶解温度が160℃と高く、操作性に満足できるものではなかった。
【0055】
実施例12:クリスタルオブジェ
成 分 (%)
(1)ジブチルラウロイルグルタミド 12
(2)ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド 8
(3)エタノール 3
(4)トリメリト酸トリトリデシル 50
(5)ミネラルオイル 残量
(6)パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル 5
(7)フェノキシエタノール 0.2
(8)グリセリン 0.1
(9)酸化チタン被覆ガラス末※4 1
※4:メタシャインMT1080RR(日本板硝子社製)
【0056】
(製造方法)
A.成分(1)〜(6)を110℃に加温し、均一に混合溶解する。
B.Aに(7)〜(9)を加え、均一に混合する。
C.Bを花型に流し込み、室温まで冷却し固化し、型を外して花形のクリスタルオブジェを得た。
【0057】
得られたクリスタルオブジェは溶解温度降下(107℃)をはっきりと示して操作性に優れ、透明性が高いものであった。
【0058】
実施例13:リップスティック
成 分 (%)
(1)ジブチルラウロイルグルタミド 6
(2)ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド 4
(3)エタノール 5
(4)トリメリト酸トリトリデシル 50
(5)ミネラルオイル 残量
(6)ジプロピレングリコール 0.2
(7)酸化チタン・酸化鉄被覆マイカ※5 0.5
(8)シラカバエキス 0.03
(9)スクワラン 2
(10)蜂蜜 0.02
(11)緑茶エキス 0.01
(12)オレンジ油 0.01
(13)ローズマリーエキス 0.01
(14)オリーブ油 0.2
(15)ボタンピエキス 0.02
(16)コガネバナエキス 0.01
(17)ラベンダー油 0.01
※5:CLOISONNE CERISE FLAMBE(BASF社製)
【0059】
(製造方法)
A.成分(1)〜(5)を80℃に加温し、均一に混合溶解する。
B.Aに(6)〜(17)を加え、均一に混合する。
C.Bを金型に充填し、室温まで冷却して固化した後、型を外しリップスティックを得た。
【0060】
得られたリップスティックは溶解温度降下(78℃)をはっきりと示して操作性に優れ、透明性が高く、滑らかな使用感のものであった。