【文献】
Yang, X. et al.,Poly(ε-caprolactone)-based copolymers bearing pendant cyclic ketals and reactive acrylates for the fabrication of photocrosslinked elastomers,Acta Biomater.,2013年,Vol. 9(9),pp. 8232-8244
【文献】
Villa-Diaz, L. G. et al.,Synthetic polymer coatings for long-term growth of human embryonic stem cells,Nat. Biotechnol.,2010年,Vol. 28(6),pp. 581-583
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材(B)が、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリイミド、変成ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリトニトリル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、セルロース及びその共重合物からなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載の表面修飾基材。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の表面修飾基材に用いる環状化合物(A)は、上記一般式(1)で表される2価の基、上記一般式(2)で表される2価の基及び上記一般式(3)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を構成単位とし、前記構成単位を環状に結合してなる環状化合物であって、上記関係式(I)を満たす。
【0008】
一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子がハロゲン原子、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されていても良い炭素数2〜21の2価の炭化水素基である。
【0009】
炭素数2〜21の炭化水素基としては、炭素数2〜21のアルキレン基、炭素数2〜21のアルケニレン基、炭素数6〜21のアリーレン基及び炭素数7〜21のアラルキレン基等が挙げられる。
【0010】
炭素数2〜21のアルキレン基としては、炭素数2〜21の直鎖アルキレン基(エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基及びn−ヘンイコサニレン基)、炭素数3〜21の分岐アルキレン基(1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルプロピレン基、1−ヘキシルプロピレン基及び1−オクチルエチレン基等)及び炭素数4〜21のシクロアルキレン基(シクロブチレン基、シクロペンチレン基、2−メチルシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、1,3−ジメチルシクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、1−エチルシクロペンチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基、シクロトリデレン基、シクロテトラデシレン基、シクロペンタデシレン基、シクロヘキサデシレン基、シクロヘプタデシレン基、シクロオクタデシレン基、シクロノナデシレン基、シクロエイコシレン基、ノルボルニレン基、ジシクロペンチレン基、イソプロピリデンジシクロヘキシレン基及びシクロヘキサンジメチレン基等)等が挙げられる。
【0011】
炭素数2〜21のアルケニレン基としては、炭素数2〜21の直鎖アルケニレン基(エテニレン基、プロペニレン基及びヘンイコセニレン基等)及び炭素数3〜21の分岐アルケニレン基(1−エチルエテニレン基、1,2−ジメチルエテニレン基、1−ブチルエテニレン基、1−ヘキシルエテニレン基及び1−オクチルエテニレン基等)等が挙げられる。
炭素数6〜21のアリーレン基としては、o−、p−又はm−フェニレン基、2,4−ナフチレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、フルオレニレン基、ピレニレン基及び基等が挙げられる。
【0012】
炭素数7〜21のアラルキレン基としては、フェニルメチレン基、ジフェニルメチン基、1−フェニルエチレン基、o−フェニレンエチル基及びナフチルメチレン基等が挙げられる。
【0013】
これらの基の有する水素原子の少なくとも1つがハロゲノ基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換された基としては、1−ブロモ−トリメチレン基、1−アセチル−トリメチレン基、1−メトキシ−トリメチレン基及び1−フェノキシ−トリメチレン基等が挙げられる。
【0014】
これらのうち、R
1、R
2及びR
3として、反応効率の観点から好ましいのは炭素数3〜16の直鎖又は炭素数3〜16の分岐アルキレン基であり、更に好ましいのはトリメチレン基、ブチレン基、トリデセン基、ペンタデセン基、1−ヘキシルプロピレン基、1−ヘキシルブチレン基、1−ウンデシルプロピレン基及び1−ウンデシルブチレン基である。
【0015】
一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)において、X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立に、ホスホン酸から2個の水酸基を除いた残基、カルボニル基、スルホニル基又はチオカルボニル基である。
【0016】
一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)において、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Y
7及びY
8は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、イミノ基又は一般式(4)で表される2価の基である。
【0017】
−NR
4− (4)
一般式(4)中、R
4は、水素原子がハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。
炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の飽和炭化水素基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、デシル、ドデシル基等)、1価の脂環式飽和炭化水素基(シクロヘキシル基)、芳香脂肪族炭化水素基(ベンジル基等)及び1価の芳香族炭化水素基(フェニル基等)等が挙げられる。
【0018】
一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)において、A
1、A
2、A
3及びA
4は、それぞれ独立に、水素原子がハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素及び沃素等)で置換されていても良い炭素数2〜8の2価の炭化水素基である。
【0019】
炭素数2〜8の2価の炭化水素基のうち、後述する環状化合物(A)の製造方法において、その製造を容易にする観点から好ましいものとしては、フェニルエチレン基、炭素数2〜4のアルキレン基が挙げられ、更に好ましいのは炭素数2〜4の直鎖アルキレン基(エチレン基、プロピレン基及びブチレン基等)及び炭素数3〜4の分岐アルキレン基(メチルエチレン基、エチルエチレン基、メチルプロピレン基及び2−メチルプロピレン等)であり、特に好ましいのは、炭素数2〜4の直鎖アルキレン基及び炭素数3〜4の分岐アルキレン基であり、最も好ましいのは、エチレン基及びプロピレン基である。
【0020】
一般式(3)において、Zは、それぞれ独立に、一般式(1)で表される2価の基又は一般式(2)で表される2価の基である。
【0021】
本発明の環状化合物(A)は、上述のように、一般式(1)において、X1がカルボニル基であり、かつ、Y
1及びY
2が酸素原子である2価の基をのみを構成単量体とする環状化合物を除く。即ち、環状化合物(A)が一般式(1)で表される2価の基のみから構成される場合、X
1がカルボニル基で、かつ、Y
1及びY
2が酸素原子となることはない。
【0022】
一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)において、n1、n2、n3、n4及びmは、それぞれ独立の正数である。
また、n1、n2、n3及びn4は、関係式(I)を満たす。
関係式(I)
1≦p+q+r≦2000 (I)
【0023】
関係式(I)において、pは、環状化合物(A)1モルを構成する全ての一般式(1)で表される2価の基における各n1を合計したモル数である。
なお、環状化合物(A)が、一般式(3)で表される2価の基を構成単位として有し、かつ、Zが一般式(1)で表される基である場合、このZにおけるn1も合計してpの値を求める。
また、qは、環状化合物(A)1モルを構成する全ての一般式(2)で表される2価の基における各n2と各n3とを合計したモル数である。
なお、環状化合物(A)が、一般式(3)で表される2価の基を構成単位として有し、かつ、Zが一般式(2)で表される基である場合、このZにおけるn2及びn3も合計してqの値を求める。
また、rは、環状化合物(A)1モルを構成する全ての一般式(3)で表される2価の基における各n4を合計したモル数である。
【0024】
「p+q+r」が1未満の場合、環状化合物(A)で表面修飾された素材の修飾層の膜厚が十分ではなく、「p+q+r」が2000を超える場合は、環状化合物(A)で表面修飾された素材の修飾層の密度が低下する。
また、「p+q+r」は、環状化合物(A)で表面修飾された素材の表面のモビリティファクター(運動因子)を向上させるという観点から、2以上2000以下であることが好ましく、更に好ましくは20以上1000以下である。
【0025】
環状化合物(A)1分子を構成する一般式(1)で表される2価の基、一般式(2)で表される2価の基及び一般式(3)で表される2価の基の合計数は、これを用いた後述の素材の未分化性を制御する因子、すなわち表面の自由エネルギーを向上させる観点から、2以上2000以下であることが好ましく、更に好ましくは20以上1000以下である。
なお、上記の合計数について、環状化合物(A)が一般式(3)で表される2価の基を構成単位として有し、かつ、mが0でなく、即ち一般式(3)中に、一般式(1)で表される2価の基及び/又は一般式(2)で表される2価の基を有している場合、その数も合計して計算する。
【0026】
一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)において、複数ある場合のR
1〜R
3、A
1〜A
4、X
1〜X
4、Y
1〜Y
8、Z、n
1〜n
4及びmは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0027】
複数ある場合のR
1〜R
3、A
1〜A
4、X
1〜X
4、Y
1〜Y
8及びZの組成は、Polym.Chem.,2014,5,6905.に記載のマトリックス支援レーザー脱離イオン化法による飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MSともいう)により測定分析し、環状化合物(A)の構造を同定することができる。
【0028】
本発明の環状化合物(A)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明の環状化合物(A)として好ましいものとしては、具体的に、一般式(1)において、Y
1及びY
2が酸素、A
1がエチレン、プロピレン、クロロプロピレン又はフェニルエチレンであり、R
1がトリメチレン、ペンタメチレン、テトラデカメチレン又はビニレンであり、X
1がスルホニル基である2価の基の両末端を結合した環状化合物が挙げられる。
また、一般式(2)において、Y
3、Y
4、Y
5及びY
6が酸素であり、A
2、A
3がプロピレン、エチレン、クロロプロピレン又はフェニルエチレンであり、R
2がエチレン、プロピレン又はビニレンであり、X
2がカルボニルである2価の基の両末端を結合した環状化合物等が挙げられる。
また、一般式(3)において、Y
7及びY
8が酸素であり、A
4がプロピレン、エチレン、クロロプロピレン又はフェニルエチレンであり、R
3がエチレン、プロピレン又はビニレンであり、mは0であり、X
2及びX
3がカルボニルである2価の基の両末端を結合した環状化合物等が挙げられる。
【0029】
環状化合物(A)の「p+q+r」の値の調整は、後述の環状化合物(A)の製造方法において、後に詳述する環状化合物(E)と環状化合物(F)との比率の調整で行うことができる。
また、一般式(3)中のmの値は、環状化合物(E)として、後述の一般式(7)で表される化合物を使用し、更に環状化合物(F)として、後述の一般式(5)で表される化合物及び/又は後述の一般式(6)で表される化合物を併用することによって調整できる。
なお、環状化合物(A)のn1〜n4の値及びmの値は、Polym. Chem., 2014, 5, 6905.に記載のMALDI−TOF MSにより分析し、確認することが出来る。
【0030】
本発明の表面修飾基材に含まれる環状化合物(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記する)は、表面修飾される基材(B)(以下、基材)および高分子化合物(C)の分子量等に応じて調整することができるが、環状化合物(A)を素材の表面に配向させる観点から、130〜116,000であることが好ましい。
環状化合物(A)のMnはアルキレン化合物の付加モル数を調整すること等によって、上記の好ましい範囲にすることができる。
【0031】
環状化合物(A)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記)を用いて以下の条件で測定することができる。
【0032】
環状化合物(A)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記)を用いて以下の条件で測定することができる。
・装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
・カラム:「Guardcolumn Super H−L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000を各1本連結したもの」[いずれも東ソー(株)製]
・試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
・溶液注入量:10μL
・流量:0.6mL/分
・測定温度:40℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリエチレングリコール
【0033】
本発明の環状化合物は、以下に詳述する製造方法により製造することができる。
【0034】
本発明の環状化合物は、一般式(5)で表される化合物(E1)、一般式(6)で表される化合物(E2)及び一般式(7)で表される化合物(E3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状化合物(E)と、水素原子がハロゲン原子で置換されていても良い炭素数2〜8の環状エーテル(F1)、水素原子がハロゲン原子で置換されていても良い炭素数2〜8の環状チオエーテル(F2)及び水素原子がハロゲン原子で置換されていても良い炭素数2〜8の環状イミン(F3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状化合物(F)とを反応させる工程(以下反応工程と略記する)を含む製造方法により製造することができる。
【0036】
前記の反応工程において、環状化合物(E)が有するX基(X
5、X
6、X
7及びX
8)とY基(Y
9、Y
10、Y
11及びY
12)との間に、環状化合物(F)に由来する2価の基(例えば、水素原子がハロゲン原子で置換されていても良い炭素数2〜8の環状エーテルを用いた場合はオキシアルキレン基)が挿入される反応(カルボニル基と酸素原子との間にオキシアルキレン基を挿入する反応の場合、アルコキシル化反応という)が生じる。
例えば、環状化合物(E)としてγ−ブチロラクトンを用い、環状化合物(F)としてエチレンオキシドを用いた場合は、一般式(1)において、Y
1が酸素原子であり、A
1がエチレン基であり、Y
2が酸素原子であり、R
1がトリメチレン基であり、X
1がカルボニル基である化学式で表される構成単位、即ち、
−[(OCH
2CH
2)nOC
3H
6CO]−
で表される2価の基の両末端を直接結合してなる環状化合物が生成する。
【0037】
前記アルコキシル化反応工程では、生成した環状化合物(A)が、環上のX基とY基を直接結ぶ結合を一旦開裂する反応を生じ、更に、X基とY基を直接結ぶ結合が開裂した他の環状化合物(A)と反応し、一方の環状化合物(A)のY基と、他方の環状化合物(A)のX基とが結合する挿入付加反応も生じる。
例えば、環状化合物(E)としてγ−ブチロラクトンを用い、環状化合物(F)としてエチレンオキシドを用いた場合は、
−[(OCH
2CH
2)
nOC
3H
6CO]−
で表される2価の基の両末端を直接結合してなる環状化合物が生成する。
そして、この環状化合物2分子が上記の開裂反応及び挿入付加反応し、この2価の基を一分子中に2個有する環状化合物が生成する反応、また、この環状化合物3分子が反応し、この2価の基を一分子中に3個有する環状化合物が生成する反応等も生じる。
また、一般式(5)で表される化合物(E1)、一般式(6)で表される化合物(E2)及び一般式(7)で表される化合物(E3)を併用することで、上記の環状化合物(A)同士の開環反応及び挿入付加反応を経て、一般式(1)で表される2価の基、一般式(2)で表される2価の基及び一般式(3)で表される2価の基を構成単位とする環状化合物(A)を得ることができる。
【0038】
一般式(5)、一般式(6)及び一般式(7)において、R
5、R
6及びR
7は、一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物の説明で例示した、R
1、R
2及びR
3と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0039】
一般式(5)、一般式(6)及び一般式(7)において、X
5、X
6、X
7及びX
8は、一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物の説明で例示した、X
1、X
2、X
3及びX
4と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0040】
一般式(5)、一般式(6)及び一般式(7)において、Y
9、Y
10、Y
11及びY
12は、一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物の説明で例示した、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Y
7及びY
8と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0041】
一般式(5)で表される化合物(E1)の具体例としては、ラクトン、スルトン、ラクタム、チオラクタム及びスルタム等が挙げられる。
【0042】
一般式(5)で表されるラクトンとして、β−ラクトン(β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン等)、γ−ラクトン(γ−ブチロラクトン等)、δ−ラクトン(δ−バレロラクトン等)、ε−ラクトン(ε−カプロラクトン等)、長鎖アルキル基を有するラクトン(γ−エナントラクトン、γ−ウンデカノラクトン、γ−ドデカラクトン及びδ−ドデカノラクトン等)、γ−クロトノラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−ブロモ−γ−ブチロラクトン、α−クロロ−γ−ブチロラクトン、α−ヨード−γ−ブチロラクトン、テトロン酸、大環状ラクトン(15−ペンタデカノラクトン)及び芳香族ラクトン(3,4−ジヒドロクマリン)等が挙げられる。カルボニル構造を2つ以上含むラクトンとしてはD、L及びD/L−ラクチド、ポリ−εカプロラクトン等も好適に用いることができる。
反応性の観点から、β−ラクトン(β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン等)、γ−ラクトン(γ−ブチロラクトン等)、δ−ラクトン(δ−バレロラクトン等)、ε−ラクトン(ε−カプロラクトン等)、テトロン酸、大環状ラクトン(15−ペンタデカノラクトン)及び芳香族ラクトン(3,4−ジヒドロクマリン)が挙げられ、特に好ましくはγ−ラクトン(γ−ブチロラクトン等)、δ−ラクトン(δ−バレロラクトン等)、ε−ラクトン(ε−カプロラクトン等)が好ましい。
【0043】
一般式(5)で表されるスルトンとして、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,5−ペンタンスルトン、1,6−ヘキサンンスルトン、1,7−ヘプタンスルトン、1,8−オクタンスルトン、1,9−ノナンスルトン、1,10−デカンスルトン、1,11−ウンデカンスルトン、1,12−ドデカンスルトン及びアルキル基を有するスルトン(1−メチル−1,3−プロパンスルトン等)等が挙げられる。好ましくは、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,5−ペンタンスルトン、1,6−ヘキサンンスルトン、1,7−ヘプタンスルトン、1,8−オクタンスルトン、1,9−ノナンスルトン、1,10−デカンスルトン、1,11−ウンデカンスルトン、1,12−ドデカンスルトンが挙げられ、特に好ましくは1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,5−ペンタンスルトン、1,6−ヘキサンンスルトンが挙げられる。
【0044】
一般式(5)で表されるラクタムとして、β−ラクタム(β−プロピオラクタム、β−ブチロラクタム等)、γ−ラクタム(γ−ブチロラクタム等)、δ−ラクタム(δ−バレロラクタム等)、ε−ラクタム(ε−カプロラクタム等)、長鎖アルキル基を有するラクタム(γ−エナントラクタム、γ−ウンデカノラクタム、γ−ドデカラクタム及びδ−ドデカノラクタム等)、N位に置換基を有するラクタム(N−メチル−γ−ブチロラクタム、N−アリル−γ−ブチロラクタム、N−ビニル−γ−ブチロラクタム、N−プロパギル−γ−ブチロラクタム、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−アリル−ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−プロパギル−ε−カプロラクタム)γ−クロトノラクタム、α−メチレン−γ−ブチロラクタム、γ−メチレン−γ−ブチロラクタム、α−ブロモ−γ−ブチロラクタム、α−クロロ−γ−ブチロラクタム、α−ヨード−γ−ブチロラクタム、大環状ラクタム(15−ペンタデカノラクタム)及び芳香族ラクタム(3,4−ジヒドロキノリン)等が挙げられる。
反応性の観点から、β−ラクタム(β−プロピオラクタム、β−ブチロラクタム等)、γ−ラクタム(γ−ブチロラクタム等)、δ−ラクタム(δ−バレロラクタム等)、ε−ラクタム(ε−カプロラクタム等)、長鎖アルキル基を有するラクタム(γ−エナントラクタム、γ−ウンデカノラクタム、γ−ドデカラクタム及びδ−ドデカノラクタム等)、N位に置換基を有するラクタム(N−メチル−γ−ブチロラクタム、N−アリル−γ−ブチロラクタム、N−ビニル−γ−ブチロラクタム、N−プロパギル−γ−ブチロラクタム、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−アリル−ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−プロパギル−ε−カプロラクタム)γ−クロトノラクタム、α−メチレン−γ−ブチロラクタム、γ−メチレン−γ−ブチロラクタムであり、特に好ましくはγ−ラクタム(γ−ブチロラクタム等)、δ−ラクタム(δ−バレロラクタム等)、ε−ラクタム(ε−カプロラクタム等)、N位に置換基を有するラクタム(N−メチル−γ−ブチロラクタム、N−アリル−γ−ブチロラクタム、N−ビニル−γ−ブチロラクタム、N−プロパギル−γ−ブチロラクタム、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−アリル−ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−プロパギル−ε−カプロラクタム)γ−クロトノラクタムが挙げられる。
【0045】
一般式(5)で表されるチオラクタムとして、γ−ブチロチオラクタム、N−メチル−γ−ブチロチオラクタム(1−メチルピロリジンー2−チオン)、ε−カプロチオラクタム及びN−メチル−ε−カプロチオラクタム等が挙げられる。副生物低減の観点から好ましくは、N−メチル−γ−ブチロチオラクタム(1−メチルピロリジンー2−チオン)及びN−メチル−ε−カプロチオラクタムが挙げられる。
【0046】
一般式(5)で表されるスルタムとして、1,3−プロパンスルタム、N−メチル−1,3−プロパンスルタム、1,4−ブタンスルタム及びN−メチル−1,4−ブタンスルタム等が挙げられる。副生物低減の観点から好ましくは、N−メチル−γ−ブチロチオラクタム(1−メチルピロリジンー2−チオン)及びN−メチル−ε−カプロチオラクタムが挙げられる。
【0047】
一般式(6)で表される化合物(E2)の具体例としては、以下に例示する1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド、1,3,2−ホスホラン2−オキシド、イミダゾリジノン、1,2,5−チアジアゾリン1,1−ジオキシド、カーボネート及びトリチオカーボネート等が挙げられる。
【0048】
一般式(6)で表される1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシドとして、好ましいものとしては、1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド等が挙げられる。
【0049】
一般式(6)で表されるホスホラン2−オキシドとして、好ましいものとしては、1,3,2−ジオキサホスホラン2−オキシド及び4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサホスホラン2−オキシド等が挙げられる。
【0050】
一般式(6)で表されるイミダゾリジノンとして、好ましいものとしては、2−イミダゾリジノン及び1,3−ジメチル2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0051】
一般式(6)で表される1,2,5−チアジアゾリン1,1−ジオキシドとして、好ましいものとしては、1,2,5−チアジアゾリン1,1−ジオキシド及びN,N−ジベンジル−1,2,5−チアジアゾリン1,1−ジオキシド等が挙げられる。
【0052】
一般式(6)で表されるカーボネートとして、好ましいものとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及び1,3−ジオキサン−2−オン等が挙げられる。
【0053】
一般式(6)で表されるトリチオカーボネートとして、好ましいものとしては、エチレントリチオカーボネート等が挙げられる。
【0054】
一般式(7)で表される化合物(E3)の具体例としては、酸無水物及び環状イミド等が挙げられる。
【0055】
一般式(7)で表される無水酢酸として、好ましいものとしては、無水コハク酸、3,3−ジエチル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、グルタル酸無水物、3,5−ジメチルグルタル酸無水物、3,3−テトラメチレングルタル酸無水物及び3−オキサビシクロ[3,1,1]ヘプタン−2,4−ジノン等が挙げられる。
【0056】
一般式(7)で表される環状イミドとして、コハク酸イミド、N−メチルコハク酸イミド、3,3−ジエチルコハク酸イミド、N−メチル−3,3−ジエチルコハク酸イミド、マレイン酸イミド、N−メチルマレイン酸イミド、フタル酸イミド、N−メチルフタル酸イミド、トリメリット酸イミド、N−メチルトリメリット酸イミド、グルタル酸イミド、N−メチルグルタル酸イミド、3,5−ジメチルグルタル酸イミド、N−メチル−3,5−ジメチルグルタル酸イミド、3,3−テトラメチレングルタル酸イミド、N−メチル−3,3−テトラメチレングルタル酸イミド、3−アザビシクロ[3,1,1]ヘプタン−2,4−ジノン及びN−メチル3−アザビシクロ[3,1,1]ヘプタン−2,4−ジノン等が挙げられる。
反応性の観点からはコハク酸イミド、N−メチルコハク酸イミド、3,3−ジエチルコハク酸イミド、マレイン酸イミド、N−メチルマレイン酸イミド、フタル酸イミド、N−メチルフタル酸イミドが好ましい。
また、副生物低減の観点から、N−メチルコハク酸イミド、N−メチル−3,3−ジエチルコハク酸イミド、N−メチルマレイン酸イミド、N−メチルフタル酸イミド、N−メチルトリメリット酸イミド、N−メチルグルタル酸イミド、3、N−メチル−3,5−ジメチルグルタル酸イミド、N−メチル−3,3−テトラメチレングルタル酸イミド、3−アザビシクロ[3,1,1]ヘプタン−2,4−ジノン及びN−メチル3−アザビシクロ[3,1,1]ヘプタン−2,4−ジノン等が好ましい。
【0057】
環状化合物(E)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0058】
環状化合物(E)は、分子内縮合反応等によって製造することができる。
例えば、一般式(5)で表される化合物は、R
4で表される基の片末端に、X
5で表される基と水酸基とが結合した1価の基(例えばX
5がカルボニル基の場合はカルボキシ基)を結合させ、R
4で表される基の反対側の末端に、Y
9で表される基と水素原子とが結合した1価の基(例えばY
9基が酸素原子の場合は、水酸基)を結合させた化合物を用い、X
5で表される基と水酸基とが結合した1価の基、及びY
9で表される基と水素原子とが結合した1価の基を分子内縮合することで、得ることができる。
分子内脱水してラクトン等を合成する方法としては、公知の方法で加熱脱水する方法、J.S.Nimitz,R.H.Wollemberg,Terahedron Lett.1978,19,3523に記載方法、及びリパーゼ等の酵素を用いる方法の公知の合成方法を用いることができる。
【0059】
前記の「R
4で表される基の片末端に、X
5で表される基と水酸基とが結合した1価の基(例えばX
5がカルボニル基の場合はカルボキシ基)を結合させ、R
4で表される基の反対側の末端に、Y
9で表される基と水素原子とが結合した1価の基(例えばY
9基が酸素原子の場合は、水酸基)を結合させた化合物」としては好ましいものとしては、炭素数4〜22のモノヒドロキシモノカルボン酸等が挙げられる。
炭素数4〜22のモノヒドロキシモノカルボン酸としては、炭素数4〜22の直鎖ヒドロキシカルボン酸(3−ヒドロキシプロパン酸、4−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシペンタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、15−ヒドロキシペンタデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸及び4−ヒドロキシ−2−ブテン酸等)及び炭素数3〜22の分岐ヒドロキシカルボン酸(3−ヒドロキシブタン酸、5−ヒドロキシトリデカン酸、2−メチレン−4−ヒドロキシ酪酸、4−フェニル−4−ヒドロキシ酪酸、2,2−ジメチル−4−ヒドロキシ酪酸、4−ヘキシル−4−ヒドロキシ酪酸及び4−ヒドロキシ−2−メチル−2−ブテン酸等)等が挙げられる。
【0060】
炭素数4〜22のモノヒドロキシモノカルボン酸の炭素原子に結合した水素原子のうち、少なくとも1つの水素原子がハロゲノ基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されたヒドロキシカルボン酸が分子内脱水した構造を有するラクトンも用いることもできる。 炭素数4〜22のモノヒドロキシモノカルボン酸のうち、炭素原子に結合した水素原子の少なくとも1つがハロゲノ基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−ブロモ−4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられ、アセチル基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−アセチル−4−ヒドロキシブタン酸等が挙げられ、アルコキシ基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−メトキシ−4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられ、フェノキシ基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−フェニル−4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。
【0061】
炭素数2〜8の環状エーテルとしては、エチレンオキサイド、1,2−又は1,3−プロピレンオキシド、1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレンオキサイド、1,2−ジクロロオキセタン1,2−ペンチレンオキサイド、1,2−ヘキシレンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロルヒドリン及びエピブロモヒドリン等が挙げられる。
炭素数2〜8の環状エーテルは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0062】
炭素数2〜8の環状チオエーテルとしては、エチレンサルファイド、プロピレンサルファイド、1,2−ブチレンサルファイド、2,3−ブチレンサルファイド、1,2−ペンテンサルファイド、シクロヘキセンサルファイド、スチレンサルファイド、エピクロロチオサルファイド、エピブロモチオサルファイド及びパークロロプロピレンサルファイド等が挙げられる。
炭素数2〜8の環状チオエーテルは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0063】
炭素数2〜8の環状イミンはとしては、エチレンイミン、プロピレンイミン、1 , 2 − ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、1,2−ペンテンイミン、シクロヘキセンイミン、スチレンイミン、エピクロロイミン及びエピブロモイミン等が挙げられる。
炭素数2〜8の環状イミンは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0064】
環状化合物(F)を2種以上を併用する場合、得られる環状化合物(A)が有するA(A
1、A
2、A
3又はA
4)で表される2価の基は、使用した環状化合物(F)の種類に対応した異なる種類のAを有する。
【0065】
アルコキシル化反応工程は、触媒の存在下で行うことが好ましい。
反応工程で用いる触媒としては、金属(ホウ素、錫、ニッケル、亜鉛及びアルミニウム等)のハロゲン化物、無機酸(硫酸及びリン酸等)、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等)の水酸化物、アミン化合物(ジエチルアミン及びトリエチルアミン等)、ホスファゼン、複合金属シアン化物錯体触媒(特開2005−53952号公報及び特開2016−6203号公報等に記載された亜鉛ヘキサシアノコバルテート等の2種類の金属を分子内に含有する金属錯体触媒等)、特開2000−354763号公報に記載された酸化物複合体、AlとMgとの複合酸化物(G1)及び層状複水酸化物並びにその焼成物等を用いて行うことができる。
【0066】
本発明の製造方法で用いる層状複水酸化物とは、2価の金属(Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co及びCu等)と3価の金属(Al、Fe及びMn等)の水酸化物とが複合して積層構造を形成した無機の層状化合物を意味し、一般式が[M
2+1−hM
3+h(OH)
2][(W
i−)
h/i・jH
2O][ここで、M
2+は2価の金属、M
3+は3価の金属、W
i−はi価の陰イオン(HCO
3−、CO
32−、PO
43−、SO
42−、Cl
−、NO
2−及びNO
3−等)、h、i及びjはそれぞれ独立の正数である。]で表さる化合物であり、ハイドロタルサイト、モツコレアイト、マナセイト、スティッヒタイト、パイロアウライト、タコバイト、イヤードライト及びメイキセネライト等が含まれる。これらの層状複水酸化物は、粘土鉱物として知られており、天然に産する鉱物に含まれたものであっても、合成によって得られたものであってもよい。
【0067】
触媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの内、反応効率の観点から好ましいのは、AlとMgとの複合酸化物(G1)の焼成物及びAlとMgを有する層状複水酸化物(G2)の焼成物である。
【0068】
本発明において用いられる複合酸化物(G1)は、AlとMgを有する酸化物であれば、特に限定されないが、好ましい複合酸化物としては下記一般式(8)又は(9)で示される化合物等が挙げられる。
〔aMgO・Al
2 O
3 ・bH
2O〕 (8)
〔Mg
sAl
tO
u〕 (9)
【0069】
一般式(8)において、a及びbは、それぞれ独立の正数である。
一般式(9)において、s、t及びuは、それぞれ独立の正数である。
反応性の観点から、s/tは0.1以上0.9未満であることが好ましい。
複合酸化物(G1)としては、2.5MgO・Al
2 O
3 ・bH
2O及びMg
0.7Al
0.3O
1.15等が挙げられ、それぞれキョーワード300[協和化学工業(株)製]及びキョーワード2000[協和化学工業(株)製]等として市場から入手することができる。
【0070】
本発明に用いるハイドロタルサイト(G2−1)としては、下記一般式(10)で示される化合物等が挙げられる。
〔Mg
1−cAl
c(OH)
2 〕
c+ 〔CO
3c/2 ・dH
2 O〕
c− (10)
【0071】
また、一般式(10)において、cは0<c≦0.33を満たす数であり、dは0<d≦1.0を満たす数である。
【0072】
ハイドロタルサイト(G2−1)としては、Mg
6Al
2 (OH)
16CO
3・4H
2 O及びMg
4.5 Al
2(OH)
13CO
3 ・3.5H
2O等が挙げられ、それぞれキョーワード500[協和化学工業(株)製]及びキョーワード1000[協和化学工業(株)製]等として市場から入手することができる。
【0073】
本発明に用いるハイドロタルサイト(G2−1)としては、上記の化合物以外にも、西ドイツ特許公告第1592126号及びヨーロッパ特許公開第0207811号等に記載の既知の鉱物も使用することができる。
【0074】
(G1)及び(G2)は、それぞれ1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの内、反応性の観点から好ましいのは複合酸化物(G1)であり、更に好ましいのは2.5MgO・Al
2O
3・nH
2O(nは正数)及びMg
0.7Al
0.3O
1.15である。
【0075】
本発明に用いるハイドロタルサイト(G2−1)としては、上記の化合物以外にも、西ドイツ特許公告第1592126号及びヨーロッパ特許公開第0207811号等に記載の既知の鉱物も使用することができる。
【0076】
(G1)及び(G2)は、それぞれ1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの内、反応性の観点から好ましいのは複合酸化物(G1)であり、更に好ましいのは2.5MgO・Al
2 O
3 ・nH
2O(nは正数)及びMg
0.7Al
0.3O
1.15である。
【0077】
AlとMgとの複合酸化物(F1)の焼成物又はAlとMgを有するハイドロタルサイト(E2)の焼成物は、AlとMgとの複合酸化物(G1)又はハイドロタルサイト(G2−1)を空気雰囲気下、好ましくは窒素気流下で、好ましくは400〜1500℃(更に好ましくは600〜1000℃)にて1〜4時間加熱処理する方法等で得ることができる。
なお、(G1)又は(G2)の焼成物は以降、触媒(G’)と記載する。
【0078】
アルコキシ化反応工程において、触媒の含有量は特に限定されないが、反応速度及び濾過効率の観点から、環状化合物(E)と環状化合物(F)との合計重量に対して0.0001〜10重量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜1.0重量%である。
【0079】
また、アルコキシ化反応工程において、攪拌を容易にする等の観点から、環状化合物(E)、環状化合物(F)及び触媒以外に、溶剤を添加してもよい。
溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジグリム、トリグリム、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、N−メチルピロリドン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジクロロエタン、O−ジクロロベンゼン及びクロロホルム等が挙げられる。
溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの内、環状化合物(E)及び環状化合物(E)等との混和性、高沸点並びに留去のしやすさの観点から、トルエン及びキシレンが好ましい。
アルコキシ化反応工程に用いる溶剤の重量は、反応速度等の観点から、環状化合物(E)と環状化合物(F)と触媒との合計重量に対して、0〜99重量%が好ましく、更に好ましくは0〜90重量%である。
【0080】
アルコキシ化反応工程においては、環状化合物(E)及び環状化合物(F)並びに必要に応じて、触媒及び溶媒の混合物の温度が90〜250℃となることが好ましく、更に好ましくは100〜190℃である。
また、上記の温度とする時間は、1〜200時間が好ましい。
【0081】
アルコキシ化反応工程は、環状化合物(E)及び環状化合物(F)並びに必要に応じて、触媒及び溶媒を反応装置へ入れ不活性ガス(窒素及びアルゴン等)により系内を置換・密閉し、前記の反応温度と反応時間とで撹拌混合することで行うことができる。
反応装置としては撹拌装置及び加熱装置の付属した混合容器(スターラー付きフラスコ及びオートクレーブ等)等の公知の反応装置を用いることができる。
【0082】
本発明の製造方法は、アルコキシ化反応工程で得られる生成物[すなわち、環状化合物(A)を含む混合物]を、更に濾過操作(特開2011−213864号公報に記載の方法等)、ゲル透過法及びシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の方法により精製する工程(以下精製工程と略記する)を含んでいてもよい。
上記の精製工程により、特定の構造を有する環状化合物(A)のみを抽出することができる。
【0083】
本発明の表面修飾基材に含まれる基材(B)としては、有機材、無機基材を問わず、複合体が吸着できる基材であれば制限はなく、例えば、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリイミド、変成ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリトニトリル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、セルロースの単独重合物や共重合物が挙げられる。
表面修飾のし易さという観点から、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、変成ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリトニトリル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、セルロースが好ましく、特に好ましくはガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、セルロース、及びそれらの共重合物が好ましい。
基材は単独で用いても複数種類を併用してもよく、積層のような分離構造、ミクロ相分離、および完全相溶したものまで含む。さらには、基材(B)の用途に応じて、例えば、可塑剤、増量剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、各種フィラーを含有させる等の公知の方法で製造できるものを含む。
【0084】
本発明の表面修飾基材に含まれる高分子化合物(C)としてはセルローストリアセテート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリビニルアルコール、ポリN−イソプロピルアミド、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアミド、変成ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリトニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、セルロースが好ましく、単独または共重合物が挙げられる。
【0085】
高分子化合物(C)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
修飾表面の柔軟性の観点から、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリビニルアルコール、ポリN−イソプロピルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、変成ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリトニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンが好ましく、特に好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリビニルアルコール、ポリN−イソプロピルアミド、ポリビニルピロリドンの単独または共重合物である。
【0086】
高分子化合物(C)は市販のものを入手してもよく、公知の方法によって製造しても良い。また、高分子化合物(C)は公知の方法に従い複数の高分子を互いに化学結合および/または物理的に結合させることよって製造してもよい。
【0087】
環状化合物(A)との複合化の観点から、環状化合物(A)の存在下で高分子化合物(C)の原料であるモノマーの重合をおこなうことが好ましい。
モノマーとしては、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、N−イソプロピルアミド、ビニルピロリドン、スチレン、イソプレン、ブタジエンなどが挙げられ、単一モノマーの重合でもよく、複数モノマーの共重合によって合成しても良く、共重合にはランダムおよびブロック共重合を含む。
【0088】
また、高分子化合物(C)は、反応性官能基を導入した高分子であってもよく、導入する反応性官能基としては、イソシアネート基、アルケニル基、アルキニル基、(メタ)アクリレート基、水酸基、カルボキシ基、エステル基、アルデヒド基、カルボニル基、ハロゲノ基、スルホ基、ホスホ基、ジスルフィド基、トリアジド基、シアノ基、イミン系置換基、アミジン基、オキシム基、シリル基、シロキシ基、アミノ基、チオ基、水酸基及びマレイミド基等があげられる。これらの反応性官能基を導入した高分子化合物としては、末端アミン変性ポリエチレングリコール、末端チオール変性ポリエチレングリコール及び末端マレイミド変性ポリエチレングリコール等が挙げられ、これらはSUNBRITEシリーズ(SUNBRITEは日油株式会社の登録商標)として日油株式会社から入手可能である。
【0089】
高分子化合物(C)の数平均分子量に特に制限はないが、合成し易さ等の観点から、1000〜100,000であることが好ましい。高分子化合物(C)の数平均分子量は、以下のGPCを用いて以下の条件で測定することができる。
・装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
・カラム:「Guardcolumn Super H−L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000を各1本連結したもの」[いずれも東ソー(株)製]
・試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
・溶液注入量:10μL
・流量:0.6mL/分
・測定温度:40℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリエチレングリコール
【0090】
環状化合物(A)と高分子化合物(C)との複合化は、環状化合物(A)存在下で高分子化合物(C)を合成し、複合化させても良い。また、高分子化合物(C)を環状化合物(A)と混合することで複合化させても良い。
【0091】
上記の環状化合物(A)と高分子化合物(C)の複合構造を安定して維持する観点から、架橋剤(H)を併用し、架橋剤(H)と反応する官能基を導入した高分子化合物同士を架橋してもよい。
架橋剤(H)としては、2官能以上の反応性置換基をもつ化合物であれば特に制限はなく、グリセリンなどの多価アルコール、ポリイソシアネート化合物、ジアクリレート化合物等が挙げられる。
【0092】
一方、架橋剤(H)を使用しない場合には、高分子化合物(C)同士で疑似架橋(水素結合、イオン結合及び分子間力、配位結合)を形成することができる官能基及び/又は結合を有する高分子化合物を用いることができる。
【0093】
高分子化合物(C)の合成は、上記の環状化合物(A)と高分子化合物(C)の複合体を形成しやすくする観点から、後にも記載するように、環状化合物(A)存在下で行うことが好ましい。
【0094】
本発明の表面修飾基材に用いられる環状化合物(A)と高分子化合物(C)との複合体は、環状化合物(A)及び高分子量化合物(C)以外に、溶剤を含有していてもよい。
溶剤を用いる場合には、環状化合物(A)の溶解性の高い溶媒を適宜選択することが好ましい。
好ましい溶剤としてはトルエン、キシレン、ベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジグリム、トリグリム、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、水、四塩化炭素、N−メチルピロリドン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジクロロエタン及びクロロホルム、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
溶剤を使用しない場合は、環状化合物(A)と、高分子化合物(C)又は高分子化合物(C)を構成する各種モノマーとの親和性が高いことが望ましい。
例えば、環状化合物(A)が、ポリオキシプロピレン鎖を有する場合、高分子化合物(C)としては、ポリオキシプロピレン鎖を有する高分子化合物(ポリプロピレンオキシド等)を用いることが好ましい
また、環状化合物(A)が、ポリオキシエチレン鎖を有する場合、高分子化合物(C)としては、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物(ポリエチレングリコール等)を用いることが好ましい。
【0095】
本発明の環状化合物(A)と高分子化合物(C)の複合体において、環状化合物(A)の環成分を、軸成分である高分子化合物(C)が貫通した構造を有することが好ましく、環状化合物(A)に高分子化合物(C)が貫通した場合は、公知の粉末X線回折及びNMRスペクトルの測定並びに原子間力顕微鏡による観察等を行うことで確認することができる。
粉末X線回折の測定においては、既知のロタキサンが示す回折ピークと比較をすることで、ロタキサン生成の有無、即ち、環状化合物(A)の環成分を軸成分である高分子化合物(C)が貫通したか否かを確認することができ、NMRスペクトルにより、高分子化合物(C)1分子に対して貫通する環状化合物(A)の数を算出することができる。
【0096】
本発明の表面修飾基材は環状化合物(A)と高分子化合物(C)の複合体及び基材(B)を有しており、複合体が基材(B)の表面に吸着又は結合していることが好ましい。
環状化合物(A)と高分子化合物(C)の複合体の基材(B)への吸着又は結合方法は公知の手法をもちいて行うことができる。以下に例を挙げて説明する。
物理的な吸着を利用する場合:例えば、環状化合物(A)と高分子化合物(C)の複合体を基材(B)にキャストし、乾燥させることで行うことができる。他、ディップコーティングや、スピンコーティング法も利用できる。なお、コーティング工程では必要に応じて溶剤を用いても良い。
化学結合を利用する場合:例えば、(i)環状化合物(A)と高分子化合物(C)の複合体を基材(B)にキャストし乾燥させた後、γ線照射によって基材(B)との化学結合を炭素−炭素結合を形成させる方法、(ii)基材(B)にプラズマ処理を施して表面に水酸基を生じさせた後、環状化合物(A)と高分子化合物(C)の複合体と反応させる方法、(iii)超臨界二酸化炭素中で基材(B)に高分子化合物(C)の原料となるモノマーを浸漬させた状態でモノマーを重合させ、環状化合物(A)を重合時に存在させておくことで基材の表面に環状化合物(A)を高分子鎖を介して導入する方法が挙げられる。
【0097】
本発明の表面修飾基材の表面のモビリティファクター(運動因子)については、QCM−D(Quartz−Crystal Microbalance−Dissipation)測定から得られる環状化合物水中でのエネルギー散逸量をコーティング質量に相当する周波数変化した数値を用いて算出することができる。具体的には、表面修飾後の質量増加による共振周波数変化(Δf)に対する表面修飾によるエネルギー散逸量変化(ΔD)の割合を水中でのモビリティファクター(Mf:運動因子)として用いる。
複合体が、環状化合物(A)の環成分を軸成分である高分子化合物(C)が貫通した構造を有する場合、環状化合物(A)の軸方向への自由度が高く、モビリティファクターは大きくなる。モビリティファクターが大きければ、細胞の未分化性が高いことが期待できる。
モビリティファクタ―(Mf)は、細胞の未分化性を維持するという観点から、1.2×10
−6〜5.0×10
−5であることが好ましく、更に好ましくは1.2×10
−6〜8.0×10
−6である。
【0098】
本発明の表面修飾基材を含む細胞培養器を用いた細胞培養方法について詳述する。細胞培養に必要な材料として、本発明の細胞培養器のほか、細胞および培地を含み、所定の条件で培養する。
【0099】
本発明の表面修飾基材は細胞培養器に利用することができる。本発明の表面修飾基材は、多能性幹細胞、前駆細胞、上皮細胞、内皮細胞、表皮細胞、免疫細胞及び癌細胞などの培養を行うことができる。細胞の未分化性を維持するための細胞培養基材として用いる場合は多能性幹細胞を培養することが望ましい。細胞塊を作成するための細胞培養基材として用いる場合は多能性幹細胞、前駆細胞、上皮細胞、内皮細胞、癌細胞を培養することが望ましい。
【0100】
本発明の表面修飾基材で培養可能な多能性幹細胞としては、例えば、ES細胞(胚性幹細胞)、iPS細胞(人工多能性幹細胞)、GS細胞(多能性生殖幹細胞)、ヒトES細胞と体細胞との融合細胞などが挙げられる。
【0101】
ヒトES細胞はKhES−1、KhES−3、H1、H9などが理研バイオリソースセンターから利用可能である。ヒトiPS細胞は、253G1、IMR90−1、IMR90−4などが利用可能である。
【0102】
細胞培養に必要な材料として利用可能な未分化維持用の培地としては、例えば、Primate ES Cell Medium+4ng/ml human basic FGF(ReproCeLL社)、human ES medium(ReproCell社)、Pluripotent Stem Cell SFM XF/FF(ATCC社)、DMEM/HamF12(2mM L−Glutamine)+20%KSR+0.1mM NEAA+0.1mM2−Mercaptoethanol+5ng/ml human bFGF、mTeSR1(Stem Cell Technologies社)、TeSR2(StemCell Technologist社)、StemPro hESC SFM(Invitrogen社)、hESF−GRO(株式会社細胞科学研究所)などを利用できる。
また、以下の文献に記載の培地も用いることができる。
(1)J.Cell Sci.誌2005年118巻4495−4509頁
(2)Biotechnol.Bioeng.誌2005年91巻688−698頁
(3)Biochem.Biophys.Res.Commun.誌2006年346巻131−139頁
(4)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.誌2006年103巻6907−6912頁
(5)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.誌2006年103巻5688−5693頁
【0103】
本発明の表面修飾基材上で細胞を培養する工程は、表面修飾基材上に多能性幹細胞を播種し、30〜50℃(好ましくは35〜40℃)の温度で二酸化炭素を3〜7容量%含む雰囲気下で行うことが好ましく、4.7〜5.3容量%含む雰囲気下で行うことが好ましい。
【0104】
本発明の表面修飾基材上で細胞を培養する方法は、細胞を培養する工程に加えて、細胞増殖性の観点から、多能性幹細胞を200〜40,000個/cm2の濃度で基材(B)に播種する工程を有することが好ましく、更に好ましくは500〜20,000個/cm2である。
【0105】
多能性幹細胞を表面修飾基材上に播種する方法としては、多能性幹細胞を含む懸濁液を基材に加える方法等が挙げられる。多能性幹細胞を含む懸濁液にはピルビン酸ナトリウム、MEM非必須アミノ酸、2−メルカプトエタノール及びKnock Out Serum Replacement等の公知の添加剤を含んでいても良い。
【0106】
本発明の表面修飾基材上での細胞培養は、細胞をより好適に維持または増殖する観点から、培地交換や継代を適当な時期に行うことが好ましい。培地交換の頻度としては、1〜5日間経過毎に行うことが好ましく、更に好ましくは3日に行うことが望ましい。継代の頻度としては、細胞の集団が大きくなるタイミングで適宜行うことが好ましく、好ましくは3〜15日間経過毎、より好ましくは6〜10日間経過毎に行うことが望ましい
【0107】
表面修飾基材上で培養した多能性幹細胞は、分化誘導を行って各細胞組織に分化してもよい。分化誘導は本発明の表面修飾基材の表面で行ってもよく、本発明の素材から別の公知の培養器に細胞を撒き直した後に行ってもよい。各細胞組織としては、中枢神経、感覚系の細胞、角膜、網膜、神経幹細胞、心筋細胞、インシュリン産生細胞、肝細胞、骨、軟骨、造血幹細胞、筋肉、血管、または腎臓の細胞などが挙げられる。
【0108】
多能性幹細胞の未分化性については、例えばSOX2、Oct−4、Nanogなどの未分化マーカーの蛋白質発現量を定量することで評価することができる。具体的な評価方法としては特に制限されないが、例えばウエスタンブロッティング法、リアルタイムPCR測定法などがある。
【0109】
本発明の表面修飾基材は医療応用に適した細胞塊を形成するための培養器としても有用である。細胞塊の形成のしやすさから環状化合物(A)に高分子化合物(C)が貫通した複合体で表面修飾された表面修飾基材であって、高分子化合物(C)がポリ2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを含むことが好ましい。
【0110】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は重量部を示す。
【0111】
<製造例1>
複合酸化物の合成
「キョーワード300」〔化学式:2.5MgO・Al
2O
3・nH
2O(nは正数)、協和化学工業(株)製〕を電気炉にて窒素気流下900℃で24時間加熱処理し、焼成物を調整した。
【0112】
<製造例2>
攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、モレキュラーシーブスを用いて脱水したγ−ブチロラクトン[東京化成工業(株)製]20部と製造例1で得られた焼成物1部を投入した。窒素通気を1時間行った後、減圧(ゲージ圧−0.1MPa)した。次いで150℃に昇温し、エチレンオキサイド50.7部を150℃にて、10時間かけて圧入した後10時間熟成した。
その後、オートクレーブから反応混合物51.4部を抜き取り、オートクレーブに製造例1で得られた焼成物1部を投入した。窒素通気を1時間行った後、減圧(ゲージ圧−0.1MPa)した。次いで150℃に昇温し、エチレンオキサイド43.6を150℃にて、15時間かけて圧入した。その後、10時間熟成し、環状化合物(A)を含有する混合物(PA−1)を得た。
得られた混合物(PA−1)を50℃まで冷却し、キシレン100部を加えて50℃に温調したのち、濾過助剤であるラヂオライト#700(昭和化学工業(株)製)5部及びキョーワード600(協和化学工業(株)製)5部を層状に充填した吸引漏斗で濾過して触媒を濾別した。次いで、キシレンを減圧留去し、濃縮した。濃縮物にメタノール40部を加えて撹拌し、水100部を加えて再沈殿させ、デカンテーションによって沈殿物を分離し、更に沈殿物を減圧乾燥することで、環状化合物(A−1)の平均付加モル数は20であった。
得られた環状化合物(A−1)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った結果、環状化合物(A−1)は、一般式(1)において、R
1がトリメチレン基であり、
A1が
エチレン基であり、n=20である本発明の環状化合物と、更に[R
1CO(O
A1)
nO]で表される繰り返し単位を2個有する環状化合物と3個有する環状化合物とを含有する混合物であった。
【0113】
<製造例3>
攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、製造例2で得られた環状化合物(A−1)30部と製造例1で得られた焼成物2部を投入した。窒素通気を1時間行った後、減圧(ゲージ圧−0.1MPa)した。次いで150℃に昇温し、エチレンオキサイド54.7部を150℃にて、10時間かけて圧入した。その後、10時間熟成し、環状化合物(A)を含有する混合物(PA−2)を得た。
得られた混合物(PA−2)を50℃まで冷却し、キシレン100部を加えて50℃に温調したのち、濾過助剤であるラヂオライト#700(昭和化学工業(株)製)5部及びキョーワード600(協和化学工業(株)製)5部を層状に充填した吸引漏斗で濾過して触媒を濾別した。次いで、キシレンを減圧留去し、濃縮した。濃縮物にメタノール40部を加えて撹拌し、水100部を加えて再沈殿させ、デカンテーションによって沈殿物を分離し、更に沈殿物を減圧乾燥することで、環状化合物(A−2)の平均付加モル数は20であった。
得られた環状化合物(A−2)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った結果、環状化合物(A−2)は、一般式(1)において、R
1がトリメチレン基であり、
A1が
エチレン基であり、n=60である本発明の環状化合物と、更に[R
1CO(O
A1)
nO]で表される繰り返し単位を2個有する環状化合物と3個有する環状化合物とを含有する混合物であった。
【0114】
<製造例4>
攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、製造例3で得られた環状化合物(A−2)30部と製造例1で得られた焼成物2部を投入した。窒素通気を1時間行った後、減圧(ゲージ圧−0.1MPa)した。次いで150℃に昇温し、エチレンオキサイド19.4部を150℃にて、10時間かけて圧入した。その後、10時間熟成し、環状化合物(A)を含有する混合物(PA−3)を得た。
得られた混合物(PA−3)を50℃まで冷却し、キシレン100部を加えて50℃に温調したのち、濾過助剤であるラヂオライト#700(昭和化学工業(株)製)5部及びキョーワード600(協和化学工業(株)製)5部を層状に充填した吸引漏斗で濾過して触媒を濾別した。次いで、キシレンを減圧留去し、濃縮した。濃縮物にメタノール40部を加えて撹拌し、水100部を加えて再沈殿させ、デカンテーションによって沈殿物を分離し、更に沈殿物を減圧乾燥することで、環状化合物(A−3)の平均付加モル数は20であった。
得られた環状化合物(A−3)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った結果、環状化合物(A−3)は、一般式(1)において、R
1がトリメチレン基であり、
A1が
エチレン基であり、n=100である本発明の環状化合物と、更に[R
1CO(O
A1)
nO]で表される繰り返し単位を2個有する環状化合物と3個有する環状化合物とを含有する混合物であった。
【0115】
<製造例5>
高分子化合物(C1−1)を特開2017−23008実施例1Aに記載の方法で合成した。
両末端にアミノ基を有するPEG(分子量20000)[SUNBRIGHT DE−2000PA, 日油(株)製],100部とジヂメチルアミノピリジン[東京化成工業(株)製]0.18部をジクロロメタン660部に溶解し、4-Cyano-4-(phenylcarbonothioylthio) pentanoic acid[Sigma-Aldrich社製]14部と1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド8.2部を加えて12時間撹拌した。更にジクロロメタンを加えて、冷ジエチルエーテル中で沈殿させて回収した。得られた粗生成物を水に溶解して透析し凍結乾燥して高分子化合物(C1−1)を得た。
【0116】
<製造例6>
高分子化合物のポリマー伸長と環状化合物(A−1〜A−3)との複合化
製造例2で得られた環状化合物(A−1)43部、製造例5で得られた高分子化合物(C1−1)38部、MPC[日油(株)製]35.4部およびBMA[東京化成工業(株)製]63.3部とエタノール/トルエン(1/1)混合溶媒580部中でAIBN(0.082部を開始剤としてアルゴン雰囲気下で15分間反応させ、更に60℃で24時間反応させた。溶媒を留去し、粗成物を引き続きエタノール、アセトン、ジメチルスルホキシドで洗浄した。得られた沈殿物を更に40℃で真空乾燥して複合体(1)とした。
【0117】
<製造例7>
製造例6において、環状化合物(A−1)43部を環状化合物(A−2)121部に変更する以外は、製造例5と同様の操作を行い、本発明の複合体(2)を得た。
【0118】
<製造例8>
製造例6において、環状化合物(A−1)43部を環状化合物(A−3)200部に変更する以外は、製造例5と同様の操作を行い、本発明の複合体(3)を得た。
【0119】
<比較製造例1>
特開2017−23008記載の実施例1A〜Dの方法に従って、比較用のポリロタキサン(HA−1)(1分子あたりのα−CD貫通数12、α−CDへのメトキシ基導入率90%のPEG・MPC・BMA共重合物)を得た。
【0120】
<実施例1>
製造例6で得られた複合体(1)1.89部を4000部のエタノールと5000部の水に溶解させ、複合体の溶液を調整した。この溶液を27φの直径を有するガラスボトムディシュ(IWAKI社製)に100μLキャストし、一晩クリーンベンチで乾燥させて、表面修飾基材(1)を得た。
【0121】
<実施例2>
実施例1において、複合体(1)1.89部を複合体(2)3.12部に変更する以外は、実施例1と同様の操作を行い、本発明の表面修飾基材(2)を得た。
【0122】
<実施例3>
製造例6において、複合体(1)1.89部を複合体(3)4.36部に変更する以外は、製造例5と同様の操作を行い、本発明の表面修飾基材(3)を得た。
【0123】
<比較例1>
製造例6において、複合体(1)1.89部をポオリロタキサン(HA−1)5部に変更する以外は、製造例5と同様の操作を行い、比較用の表面修飾基材(4)を得た。
【0124】
<モビリティファクター(運動因子)の評価>
モビリティファクターは未分化性と相関があることが期待でき、モビリティファクターの評価方法は以下の通りである。
散逸モニタリング水晶振動子マイクロバランス(QCM−D)としてQ−senseE4(BiolinScinetific社製)を使用し、測定に用いるセンサは金コーティングされたQSZ301(BiolinScinetific社製)を使用して、以下の手順でモビリティファクターを評価した。フローチャンバーを通して,実施例1から3で作製したキャスト用の溶液(5mL)を注入して、insituでモニタリングした。共鳴周波数の変化(Δf)は、15−MHzの共鳴周波数に対応する3次オーバートーン(ν=3)で測定した。また、本測定で用いたQCM−Dは振動エネルギーの散逸量(ΔD)を同時に測定することができる。これらの値を用いて、モビリティファクターはMf=ΔD/Δfの式から算出した。
【0125】
<細胞の培養方法>
本発明の表面修飾基材を使用し、マウス由来のiPS細胞(iPS−MEF−Ng−178B−5、京都大学iPS細胞研究所CiRA樹立)を37℃、二酸化炭素濃度5容量%、1mLの未分化培地(15重量%ウシ胎児血清(FBS)及び0.1mMの2−メルカプトエタノールを含有するDMEM(Gibco社製)培地)の条件下で8日間培養した。その際、播種後は毎日培地交換を行った。
細胞の未分化性を評価するために、以下の手順で示すウェスタンブロットによって、未分化マーカーであるOct−4の蛋白質発現量を算出した。蛋白質発現量が高いと細胞の未分化性が抑制されることがわかる。
【0126】
<ウェスタンブロット>
細胞溶解液の調整
未分化培地で培養したiPS細胞をMinute Detergent−Free protein extraction kit(Invent Biotechnology社製)を用いて溶解した。その後、Micro−BCAキット(Pierce社製)を用いて細胞溶解液のタンパク質濃度を定量した。細胞溶解液のタンパク質溶液は900μg/mLの濃度に調整した。
電気泳動
電気泳動は、細胞溶解液10μlとLamiel Buffer(バイオラッド社製)
10μlを混合した液を用いて以下の条件で実施することができる。
ポリアクリルアミドゲル:10%アクリルアミドグラディエントゲル(バイオラッド社製)
電気泳動槽:WSE−1100P パジェラン−R(アトー株式会社製品)
印加電圧:200V
電気泳動時間:30分
転写
転写は、上記条件で電気泳動後、下記転写メンブレンを用いて以下の条件で実施することができる。
転写メンブレン:Amersham Hybond P0.45 PVDF(GEヘルスケア株式会社製品)
転写液:AE−1465EzFastBlot (アトー株式会社製品)を蒸留水で10倍に希釈した液
電圧/電流:12V/400mA
転写時間:30分
発色
上記条件で転写後、その転写メンブレンを5%スキムミルク(Wako社製)溶液で室温1時間浸した後、抗Oct4抗体(ウサギ由来、Cell Signaling Technology社製)を1%スキムミルク溶液で1,000倍希釈した溶液に室温で2時間浸した。その後PBSで3回洗浄を行い、HRP標識抗ウサギIgG(Cell Signaling Technology社製)を1%スキムミルク溶液で1,000倍希釈した溶液で室温60分浸した。その後PBSで3回洗浄を行った後、ImageQuant LAS4000(富士フィルム社製)を用いて発色させた。
<発現量の解析方法>
発色させたことで得られる目的タンパク質のバンドの濃さをイメージJによって数値化した。バンドが濃いほど、細胞溶解液の単位体積あたりのタンパク質の発現量が高いことを意味している。比較例で、イメージJから得られるバンド濃さを数値化した値を1として、相対的に定量評価を行った。この結果を表1に示す。