(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信機1のブロック図である。
図2は、無線通信機1の斜視図である。
【0017】
無線通信機1は、DSC(Digital Selective Calling;デジタル選択呼出し)通信を行い、自局と相手局との間で無線通信(具体的には音声通話)を行うための装置である。無線通信機1は、例えば、船舶、灯台及び港等に設置される。即ち、無線通信機1は、例えば船舶と通信する陸上の無線局(海岸局)として機能することができ、また、船舶上に開設される無線局(船舶局)として機能することもできる。以下の説明では、他船に開設される無線局と通信することを、単に他船と通信する等と称する。
【0018】
図1に示すように、無線通信機1は、無線機本体10と、ハンドセット端末(ハンディ端末)30と、を備える。また、無線通信機1(無線機本体10)には、AIS装置41と、GPS受信機42と、が接続されている。
【0019】
AIS装置41は、AIS(Automatic Identification System:船舶自動識別システム)を用いて他船の情報(具体的には、他船の位置(絶対位置)、名称、目的地等、以下AIS情報)を取得する。具体的には、AIS装置41は、図略のAISアンテナを介して、他船が送信したAIS情報を受信する。AIS装置41は、他船のAIS情報を無線通信機1へ送信する。なお、AIS装置41は、自船のAIS情報を送信することもできる。
【0020】
GPS受信機42は、自機(自船)の位置を取得する。具体的には、GPS受信機42は、図略のGPSアンテナを介して、GPS衛星からの測位信号を受信する。GPS受信機42は、この測位信号に基づいて自船の位置(詳細には、GPSアンテナの位置、地球基準の絶対位置)を求める。GPS受信機42は、算出した自船の位置を無線通信機1へ送信する。なお、GPS以外のGNSSを用いて自船の位置を求めても良い。
【0021】
図1に示すように、無線機本体10は、AIS情報取得部(船舶情報取得部)11と、自機位置取得部12と、無線通信部13と、本体演算部15と、本体表示部16と、本体操作部17と、本体接続部18と、を備える。
【0022】
AIS情報取得部11は、AIS装置41が送信した他船のAIS情報を取得する。AIS情報取得部11は、AIS装置41から取得したAIS情報を本体演算部15へ出力する。本実施形態では、無線機本体10とAIS装置41とはケーブルで直接的に接続されている。なお、無線機本体10とAIS装置41とは、船内ネットワーク(LAN)で接続されていても良い。
【0023】
自機位置取得部12は、GPS受信機42が算出した位置を自機の位置として取得する(自機位置取得ステップ)。自機位置取得部12は、GPS受信機42から取得した自船の位置を本体演算部15へ出力する。本実施形態では、無線機本体10とGPS受信機42とはケーブルで直接的に接続されている。なお、無線機本体10とGPS受信機42とは、船内ネットワーク(LAN)で接続されていても良い。
【0024】
AIS情報取得部11及び自機位置取得部12は、それぞれのケーブルを無線機本体10に接続するためのコネクタ、又は、それぞれのケーブルを介して受信した信号の変換等を行う部分である。また、無線機本体10は、有線ではなく無線でAIS装置41及びGPS受信機42と接続されていても良い。この場合、これらのデータの受信に用いるアンテナ等がAIS情報取得部11及び自機位置取得部12に相当する。
【0025】
無線通信部13は、アンテナ13aに接続されており、自船と他船との間で送受信される電波に関する処理を行う。無線通信部13は、DSC機能を有しており、MMSI(無線局を識別するための識別情報である識別番号)を用いて特定の他船に無線通信の開始を要求できる。具体的には、無線通信部13は、他船との無線通信を開始する場合、当該他船のMMSI、無線通信で用いるチャネル(周波数)、通信の緊急度等を含む呼出信号を外部へ送信する。この呼出信号に対して他船が応答し、無線通信に用いるチャネルが確定することで、自船と他船とで無線通信による音声通話を行うことが可能となる。
【0026】
本体演算部15は、FPGA、ASIC、又はCPU等の演算処理部である。本体演算部15は、ROM等に記憶されたプログラムをRAM等に読み出して実行することで、無線通信機1に関する様々な制御を実行できるように構成されている。例えば、本体演算部15は、無線通信の開始時において、ユーザが選択した他船を特定する処理を行ったり、特定した他船のMMSIを無線通信部13へ出力したりする処理を行う。
【0027】
本体表示部16は、例えば液晶ディスプレイにより構成されており、無線通信に関する様々な情報を表示することができる。本体表示部16に表示される内容は、本体演算部15によって制御されている。
【0028】
本体操作部17は、通信する相手局を指定したり、相手局との通信に使用する周波数を指定したりする操作を行うためのものである。本体操作部17は、例えば、ダイヤル、数字キー、矢印キー、タッチパネル等により構成される。本体操作部17に行われた操作は、電気信号に変換されて本体演算部15へ出力される。
【0029】
本体接続部18は、無線機本体10とハンドセット端末30の接続に関する部分のうち、無線機本体10側の部分である。本実施形態では、無線機本体10とハンドセット端末30はケーブルで接続されているので、本体接続部18は、このケーブルを無線機本体10に接続するためのコネクタ、又は、このケーブルを介して受信した信号の変換等を行う部分である。また、無線機本体10とハンドセット端末30は、有線ではなく無線で接続されていても良い。この場合、ハンドセット端末30と通信するための無線機本体10側のアンテナが本体接続部18に相当する。なお、無線機本体10とハンドセット端末30とは、船内ネットワーク(無線LAN、有線LAN)で接続されていても良い。
【0030】
ハンドセット端末30は、ユーザが手に持って他船と音声通話を行うための端末である。ハンドセット端末30は、ユーザが手に持って使用するタイプであれば、ユーザの耳に当てて使用するタイプであっても良いし、口元に位置させて使用するタイプであっても良い。
図1に示すように、ハンドセット端末30は、スピーカ31と、マイク32と、方位センサ33と、傾斜センサ(姿勢検出センサ)34と、端末演算部35と、端末表示部36と、端末操作部37と、端末接続部38と、を備える。
【0031】
スピーカ31は、他船から無線機本体10を介して入力された電気信号に応じて音声を出力する。マイク32は、ユーザの発言等の音声を取得し、この音声等に応じた電気信号を出力する。スピーカ31及びマイク32は、端末演算部35に接続されている。
【0032】
方位センサ33は、ハンドセット端末30が指す方位を、地球基準の絶対的な方位で検出するように構成されている。方位センサ33は、例えば磁気方位センサ、GPSコンパス、ジャイロコンパス等を利用することができる。方位センサ33が指す方位とは、細長状の筐体の基端から先端に向かう仮想線L1(
図2)が指す方位である。言い換えれば、端末表示部36の下端から上端に向かう仮想線が指す方位である。更に言い換えれば、ハンドセット端末30の正面(スピーカ31、マイク32、端末表示部36、及び端末操作部37等が(少なくとも1つ)配置される面)において、上側が指す方位である。方位センサ33が検出した方位は、端末演算部35へ出力される。なお、方位センサ33は、船舶の船首方位に対してハンドセット端末30が指す方位を検出可能であれば、検出した方位と、船首方位センサから取得した船首方位と、に基づいて、ハンドセット端末30が指す地球基準の絶対的な方位を算出することもできる。
【0033】
傾斜センサ34は、ジャイロセンサ又は加速度センサ等を含んで構成されており、ハンドセット端末30の姿勢(傾き)を検出する。ハンドセット端末30の姿勢とは、ハンドセット端末30の3軸方向のそれぞれの回転角度である。傾斜センサ34が検出したハンドセット端末30の姿勢は、端末演算部35へ出力される。
【0034】
端末演算部35は、FPGA、ASIC、又はCPU等の演算処理部である。端末演算部35は、ROM等に記憶されたプログラムをRAM等に読み出して実行することで、ハンドセット端末30に関する様々な制御を実行できるように構成されている。
【0035】
端末表示部36は、例えば液晶ディスプレイにより構成されており、無線通信に関する様々な情報を表示することができる。端末表示部36に表示される内容は、端末演算部35によって制御されている。
【0036】
端末操作部37は、音声通話時の音量を調整したり、音声通話の開始及び終了を指示したりする操作を行うためのものである。端末操作部37は、例えば、ダイヤル、数字キー、矢印キー、タッチパネル等により構成される。端末操作部37に行われた操作は、電気信号に変換されて端末演算部35へ出力される。
【0037】
次に、
図3から
図7を参照して、ユーザが指定した他船との無線通信を開始する処理について説明する。本実施形態では、ハンドセット端末30が指す方位に存在する他船に対して、他の表示部等を用いて他船を指定することなく、無線通信を開始することが可能である。これにより、目視で見つけた他船に対して、簡単かつ迅速に無線通信を開始することができる。以下、
図3のフローチャートに沿って詳細な処理を説明する。
【0038】
端末演算部35は、初めに、船舶指示モードが実行されているか否かを判定する(S101)。船舶指示モードとは、無線通信を開始する他船をハンドセット端末30を用いて指示する際に実行されるモードである。ハンドセット端末30は、船舶指示モード以外のモードとして、例えば音声通話モードを有する。音声通話モードとは、無線通信による音声通話を行う際に実行されるモードである。船舶指示モードでは、
図4に示すように、仮想線L1が水平方向を向く姿勢(以下、第1姿勢)でハンドセット端末30が使用されると考えられる。これに対し、音声通話モードでは、仮想線L1が鉛直方向を向く姿勢(以下、第2姿勢)でハンドセット端末30が使用されると考えられる。以上の点を考慮し、本実施形態では、傾斜センサ34の検出結果に基づいて、第1姿勢又はそれに類似する姿勢になったことが検出された場合、端末演算部35は、船舶指示モードが実行されるように制御を行う。なお、船舶指示モードがユーザの意図なく実行されることを防止するため、一定条件下(例えば所定のキーが押されている状態)で第1姿勢又はそれに類似する姿勢になったことが検出された場合に、船舶指示モードが実行される構成にすることもできる。
【0039】
端末演算部35は、船舶指示モードが実行されている場合は、端末操作部37に確定操作が行われたか否かを判定する(S102)。確定操作とは、ハンドセット端末30が指す方位を確定させるための操作である。ユーザは、ハンドセット端末30を船舶指示モードにし、無線通信の開始を希望する他船にハンドセット端末30を向けた状態で確定操作を行う。確定操作は、例えば所定のボタンを押す操作である。端末演算部35は、確定操作が行われた場合、当該確定操作が行われたタイミングにおいて方位センサ33が検出した方位を無線機本体10(詳細には本体演算部15)へ出力する(S103)。
【0040】
本体演算部15は、船舶リストを作成して所定のタイミングで更新している。船舶リストとは、自機の周囲に存在する他船のMMSI及び位置等を示すリストである。本実施形態では、更に、他船の名称もこの船舶リストに記載されている。本体演算部15は、AIS装置41からAIS情報取得部11を介して取得したAIS情報に基づいて船舶リストを作成し、所定の頻度で更新している。なお、他船が送信するAIS情報が届く範囲は限られているため、本体演算部15に入力される他船の数もそれほど多くはない。従って、本体演算部15は、取得したAIS情報が全て記載された船舶リストを作成している。この構成に代えて、自機の近傍にある他船を抽出して、抽出した他船のみで構成される船舶リストを作成しても良い。
【0041】
本体演算部15(船舶特定部15a)は、この船舶リストと、ステップS103でハンドセット端末30から入力された方位と、自機位置取得部12を介して検出した自機の位置と、に基づいて、方位センサ33が検出した方位に存在する他船を特定する(S104)。以下、
図5を参照して具体的に説明する。船舶リストに記載されている他船の位置は、絶対位置である。また、GPS受信機42によって検出される自船の位置も絶対位置である。従って、
図5に示すように、自船の位置から、方位センサ33が検出した方位に仮想線(指示方位線)を延ばすことで、ユーザの指示を把握できる。ただし、船舶リストに記載された他船の位置は、それぞれの他船の所定の一点(例えばGPSアンテナの位置、又は、他船の中心位置)を示すため、指示方位線と他船の位置とが重なる可能性は非常に低い。従って、本実施形態では、指示方位線に基づいて特定領域を作成し、この特定領域内に位置している他船を特定する。
【0042】
具体的には、指示方位線の方位をAとした場合に、A−αからA+αまでの領域を特定領域とする。また、本実施形態では、特定領域の条件として、距離条件も設定されている。なぜなら、本実施形態では、ユーザが目視で見つけた他船をハンドセット端末30で指示することが想定されているため、目視で他船を認識可能な距離を特定範囲の距離条件として設定することで、ユーザが指示した他船をより的確に特定できる。例えば、目視で他船を認識可能な距離をBとした場合、自機からの距離がBより近い範囲を特定領域とする。なお、特定領域の設定の仕方は上記に限られない(例えば距離条件をなくしても良い)。また、特定距離という概念を用いずに、例えば他船から指示方位線までの距離を求め、この距離が閾値以内の他船を特定しても良い。
【0043】
次に、本体演算部15は、特定した他船が複数か否かを判定する(S105)。特定した他船が複数である場合、
図6に示すように、本体演算部15は、端末表示部36に選択画面を表示するように端末演算部35に指示する(S106)。選択画面とは、特定した複数の船舶のうち無線通信を開始する他船をユーザに選択(確認)させるための画面である。また、本実施形態では、ユーザが所望の他船を選択できるように、選択画面に他船に関する情報を含めて表示している。他船に関する情報とは、MMSI、名称、自船からの距離、及び自船からの方位等がある。なお、他船に関する情報としては、別の情報(例えば他船の目的地等)を更に表示しても良いし、上述した情報の一部の情報の表示を省略しても良い。
【0044】
また、本実施形態では、他船に関する情報に基づいて、選択画面における他船の表示順序を定めている。
図6に示す例では、自船からの距離が近い順に他船が表示されている。即ち、他船が上から下に向かって並べて表示されるので、自船から最も近い船舶が最も上に表示されている。なお、他船の表示順序は、自船からの距離ではなく別の情報(例えば船舶の大きさ)に基づいて決定しても良い。また、ユーザの指示(操作)に応じて、他船の表示順序を定める情報を切換可能な構成であっても良い。ユーザが無線通信を行う他船を選択した後に、端末演算部35は、ユーザが選択(決定)した他船を特定する情報を本体演算部15へ送信する。
【0045】
また、本体演算部15は、特定した他船が複数でない場合、特定した船舶が1つか否かを判定する(S107)。特定した船舶が1つである場合、
図7に示すように、本体演算部15は、端末表示部36に確認画面を表示するように端末演算部35に指示する(S108)。確認画面とは、特定した船舶と無線通信を開始して良いか、ユーザに確認させるための画面である。また、本実施形態では、確認画面においても、選択画面と同様に、他船に関する情報を表示する。これにより、ユーザは、自身が指した船舶が特定されているかを確認することができる。端末演算部35は、ユーザが確認(決定)した他船を特定する情報を本体演算部15へ送信する。
【0046】
また、本体演算部15は、特定した船舶がゼロである場合(ステップS107の判断でNOの場合)、船舶が検出できなかった旨を端末表示部36に表示するように、端末演算部35に指示する(S109)。
【0047】
ステップS106及びステップS108で無線通信を開始する船舶が決定された場合、本体演算部15は、この船舶のMMSIを船舶リストから読み出す(S110)。そして、この読み出したMMSIを用いてDSCの呼出信号を送信するよう無線通信部13に指示する(S111)。これにより、送信先の他船から応答があることで、無線通信が確立し、ユーザがハンドセット端末30で指した他船との音声通話が可能となる。
【0048】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。本変形例では、船舶特定部15aが特定領域にある他船を特定した結果、複数の他船が特定された場合に行う処理(上記実施形態のステップS106)が、上記実施形態と異なる。それ以外の処理は、上記実施形態と同じである。そのため、
図8のフローチャートにおいて、
図3のフローチャートとの相違点は、ステップS206−1とS206−2のみである。従って、以下では、ステップS206−1とS206−2の処理のみ説明する。
【0049】
ステップS206−1では、本体演算部15は、特定した複数の他船のうち、自機から最も近い距離に存在する他船を特定する。そして、ステップS206−2では、ステップS206−1で特定した他船(自機から最も近い距離に存在する他船)について、確認画面(
図7と同様の画面)を表示する。つまり、本変形例では、複数の他船が特定された場合において、どの他船と通信するかをユーザに選択させず、ユーザによる確認後に、自機から最も近い他船に対して呼出信号を送信する構成である。これにより、
図6のような選択画面を表示する場合と比較して、迅速に無線通信を開始できる。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態の無線通信機1は、方位センサ33と、自機位置取得部12と、AIS情報取得部11と、船舶特定部15aと、無線通信部13と、を備え、これらにより無線通信開始方法が行われる。方位センサ33は、音声通話用のマイク32を有するハンドセット端末30に配置され、当該ハンドセット端末30が指す方位を検出する。自機位置取得部12は、自機の位置を取得する。AIS情報取得部11は、自機の周囲に存在する船舶の位置及びMMSIを取得する。船舶特定部15aは、方位センサ33が検出した方位と、自機の位置と、AIS情報取得部11が取得した船舶の位置と、に基づいて、ハンドセット端末30が指す方位に存在する船舶を特定する。無線通信部13は、船舶特定部15aが特定した船舶に対して、AIS情報取得部11が取得したMMSIを用いてDSCによる呼出信号を送信する。
【0051】
これにより、無線通信の開始を希望する船舶を見つけた場合、この船舶の位置を表示部上で特定することなく、この船舶をハンドセット端末30で実際に指すだけで特定できる。従って、例えば目視で見つけた船舶に対して簡単、短時間、かつ当該船舶から目を離すことなく無線通信を開始できる。
【0052】
また、本実施形態の無線通信機1において、ハンドセット端末30は、指した方位を確定させる確定操作が行われる端末操作部37を備える。船舶特定部15aは、端末操作部37に確定操作が行われたタイミングで方位センサ33が検出した方位に存在する船舶を特定する。
【0053】
これにより、ユーザがどの方位の船舶との無線通信を望むかが明確になるので、ユーザが望む船舶を正確に特定できる。
【0054】
また、本実施形態の無線通信機1は、ハンドセット端末30に設けられる端末表示部36を備える。船舶特定部15aが特定した船舶に関する情報が、無線通信部13による呼出信号の送信前に、端末表示部36に表示される。
【0055】
これにより、ユーザは自身が希望した船舶が呼出信号の送信先となっているか否かを確認することができる。
【0056】
また、本実施形態の無線通信機1において、端末表示部36は、船舶への呼出信号の送信についての確認画面を表示する。無線通信部13は、端末表示部36に表示された船舶との無線通信を開始する旨の指示が入力された後に、DSCによる呼出信号を送信する。
【0057】
これにより、ユーザに確認させた後に呼出信号を送信するため、誤った船舶に対して無線通信が開始されることを防止できる。
【0058】
また、本実施形態の無線通信機1において、端末表示部36は、船舶特定部15aが複数の船舶を特定した場合は、船舶に関する情報を当該船舶毎に表示し、DSCによる呼出信号の送信先として設定する船舶の選択を受け付ける選択画面を表示する。
【0059】
これにより、ハンドセット端末30が指す方位に複数の船舶が存在する場合であっても、ユーザが望む船舶へ呼出信号を送信できる。
【0060】
また、本実施形態の無線通信機1において、端末表示部36は、選択画面において、船舶に関する情報に基づいた順序で当該船舶を並べて表示する。
【0061】
これにより、ユーザは、選択画面に表示された船舶から、音声通信を望む船舶を容易に特定することができる。
【0062】
また、変形例の無線通信機1において、無線通信部13は、船舶特定部15aが複数の船舶を特定した場合は、船舶の選択を受け付けずに、自機から最も近い船舶に対して、DSCによる呼出信号を送信する。
【0063】
ユーザは、自機に近い船舶に対して呼出信号を送信することを望む可能性が高いので、上記の処理を行うことで、ユーザの手間を軽減できる。更に、自機に近い船舶に対しては、例えば衝突回避を目的とする場合、早急に呼出信号を送信するため、更に好ましい。
【0064】
また、本実施形態の無線通信機1において、AIS情報取得部11は、AIS装置41が受信したAIS情報に基づいて、船舶の位置及びMMSIを取得する。
【0065】
これにより、船舶の位置及びMMSIを簡単に取得できる。
【0066】
また、本実施形態の無線通信機1において、ハンドセット端末30は、無線通信の対象である船舶を指示する船舶指示モードと、音声通話を行う音声通話モードと、を実行可能であり、ハンドセット端末30の姿勢を検出する傾斜センサ34の検出結果に基づいて、船舶指示モードと音声通話モードとが切り替えられる。
【0067】
これにより、船舶の特定の開始、及び、その後の音声通話をスムーズに行うことができる。
【0068】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0069】
<ハンディ端末>上記実施形態で説明したハンドセット端末30は、一例であり、例えば端末表示部36等を有していない構成であっても良い。また、ハンドセット端末30は、細長状でなくても良い(例えば正面視で略正方形状)。この場合であっても、例えば正面視で上端が指す方向をハンドセット端末が指す方向として取り扱うことができる。また、ハンドセット端末30からスピーカ31を省略することもできる。この場合、ハンドセット端末30はユーザの音声等を取得する(音声等を電気信号に変換する)ために用いられ、通信相手の音声は、ハンドセット端末30以外(例えば無線機本体10)に設けられたスピーカから出力される。
【0070】
<本体演算部15と端末演算部35>上記実施形態で本体演算部15が行うと説明した処理の少なくとも一部を端末演算部35が行っても良いし、端末演算部35が行うと説明した処理の少なくとも一部を本体演算部15が行っても良い。例えば、ハンドセット端末30が指す方位に存在する船舶を特定する処理を本体演算部15で行っても良い。
【0071】
<確認画面、選択画面の省略>上記実施形態では、船舶を特定した後に、確認画面又は選択画面を表示する構成であるが、この処理を省略しても良い。つまり、船舶の特定後にユーザの確認なしに、呼出信号を送信する構成であっても良い。これにより、無線通信を更に短時間で開始できる。なお、誤った船舶に呼出信号を送信することを避けるため、この処理は、1つの船舶のみが特定された場合、又は、緊急度が高い場合等に限定して行うことが好ましい。
【0072】
<確定操作前の他船情報表示>上記実施形態では、船舶の特定後の確認画面又は選択画面で他船の情報が表示される構成であるが、確定操作前に他船の情報が表示される構成であっても良い。つまり、ハンドセット端末30は、確定操作が行われる前においても方位センサ33が検出した方位を無線機本体10へ送信しており、現時点でハンドセット端末30が指す方位に存在する他船の情報を無線機本体10から取得して端末表示部36に表示する。
【0073】
<AIS以外のMMSIの取得方法>例えば、所定のエリアの船舶から現在位置とMMSIとを定期的に受信して、当該エリア内の船舶に送信するシステムが構築されている場合、AISの代わりにこのシステムを用いることができる。
【0074】
<携帯端末への適用>上記実施形態では、「ハンディ端末」として、無線機本体10の一部(子機)であるハンドセット端末30を用いる例を説明したが、人が手で持って操作可能な端末であれば、別の端末をハンディ端末として用いることができる。例えば、スマートフォン等の携帯端末を「ハンディ端末」として用いることができる。この場合、携帯端末は、内蔵の方位センサを用いて、携帯端末が指す方位を無線機本体10に送信する(送信ステップ)。また、携帯端末と無線機本体10とは無線LAN等により接続され、携帯端末のマイク及びスピーカを用いて他船との音声通話を行う(音声通話ステップ)。なお、スマートフォン等の携帯端末をハンディ端末として用いる場合、このハンディ端末にGNSSアンテナ及びGNSS受信機が内蔵されており、当該GNSS受信機が演算を行うことで自機の位置を取得する構成であっても良い。また、ハンディ端末が外部と通信して船舶の現在位置とMMSIを直接的に取得する構成であっても良い。