(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱硬化性樹脂層とポリイミド層とを有する積層体であって、前記熱硬化性樹脂層は、10GHzにおける比誘電率が3.0以下で、誘電正接は0.003以下であり、かつ、動的粘弾性の測定により得られる20℃における貯蔵弾性率が0.1GPa以上5.0GPa以下であり、前記ポリイミド層は前記熱硬化性樹脂層の両面を被覆しており、
前記積層体の厚みが25μm以上であり、片面の前記ポリイミド層の厚みが0.5μm以上かつ、積層体の総厚みに対する両面の前記ポリイミド層の厚みの比が4%以上30%以下であり、
前記ポリイミド層は、非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層を有する多層ポリイミド層であり、
前記多層ポリイミド層は、前記非熱可塑性ポリイミド層が、前記熱硬化性樹脂層に隣接するよう設けられており、
前記熱硬化性樹脂層は、SF樹脂からなることを特徴とする積層体。
前記積層体の10GHzにおける比誘電率が3.0以下で、誘電正接は0.004以下であり、50℃〜250℃における線膨張係数が22ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
フレキシブルプリント回路基板に用いるための積層体であって、前記積層体は熱硬化性樹脂層とポリイミド層とを有し、前記熱硬化性樹脂層は、10GHzにおける比誘電率が3.0以下で、誘電正接は0.003以下であり、かつ、動的粘弾性の測定により得られる20℃における貯蔵弾性率が0.1GPa以上5.0GPa以下であり、前記ポリイミド層は前記熱硬化性樹脂層の両面を被覆しており、
前記積層体の厚みが25μm以上であり、片面の前記ポリイミド層の厚みが0.5μm以上かつ、積層体の総厚みに対する両面の前記ポリイミド層の厚みの比が4%以上30%以下であり、
前記ポリイミド層は、非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層を有する多層ポリイミド層であり、
前記多層ポリイミド層は、前記非熱可塑性ポリイミド層が、前記熱硬化性樹脂層に隣接するよう設けられており、
前記熱硬化性樹脂層は、SF樹脂からなることを特徴とする積層体。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の積層体は、熱硬化性樹脂層とポリイミド層とを有する。前記熱硬化性樹脂層は、10GHzにおける比誘電率が3.0以下で、誘電正接は0.003以下であり、かつ、動的粘弾性の測定により得られる20℃における貯蔵弾性率が0.1GPa以上5.0GPa以下である。前記ポリイミド層は前記熱硬化性樹脂層の両面を被覆している。
【0025】
(熱硬化性樹脂層)
本発明で用いる熱硬化性樹脂層は、10GHzにおける比誘電率が3.0以下で、誘電正接は0.003以下となっているので、積層体に低誘電特性を付与し、これを用いたFPCの伝送損失の低下に大きく寄与する。10GHzにおける比誘電率と誘電正接は空洞共振器法によって得られるもので、10GHzにおける値と設定した理由は、プリント配線板の基板に使用する材料に対して高周波領域とされる電子信号の領域が1GHz〜10GHzとされ、その中でも10GHzにおける電気信号損失を低減できる材料が有用なためである。熱硬化性樹脂を用いるので、被積層材料との密着性を良好なものにすることができる。
【0026】
このようにして得られる熱硬化性樹脂層の比誘電率は、好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.3以下である。誘電正接は、好ましくは0.0025以下、さらに好ましくは0.0015以下である。
【0027】
また、本発明で用いられる熱硬化性樹脂層は、原料の樹脂を硬化後、低弾性(低貯蔵弾性率)を示すものを意味する。低弾性とは、具体的には、動的粘弾性の測定により得られる20℃における貯蔵弾性率が0.1GPa以上5.0GPa以下であることをいう。さらに貯蔵弾性率が4.0GPa以下であることが好ましく、3.5GPa以下であることがより好ましい。また、本発明で用いられる熱硬化性樹脂層の20℃における貯蔵弾性率は、ラミネートできるものであればよく、0.1GPa以上であり、0.5GPa以上が好ましい。動的粘弾性の測定は、SIIナノテクノロジー社製DMS6100により窒素雰囲気下にて行い、5Hzにおける貯蔵弾性率の温度依存性を得る。
【0028】
本発明に用いられる10GHzにおける比誘電率が3.0以下で、誘電正接は0.003以下であり、動的粘弾性の測定により得られる20℃における貯蔵弾性率が5.0GPa以下である樹脂としては、疎水効果のある長鎖の炭化水素基を有する構造や誘電特性を損なう極性を有しない構造として、例えば日立化成株式会社製のSF樹脂、ナミックス株式会社製のアドフレマ(登録商標)、などを用いればよく、誘電特性を損なう極性を有しない構造として、例えばポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)、液晶ポリマー(以下、LCP)などを用いればよい。
【0029】
本発明に用いられる10GHzにおける比誘電率が3.0以下で、誘電正接は0.003以下であり、動的粘弾性の測定により得られる20℃における貯蔵弾性率が5.0GPa以下である樹脂としては、耐熱性に優れ、隣接するポリイミドとの接着性が優れることから日立化成株式会社製のSF樹脂を用いることが好ましい。
【0030】
本発明の積層体は、前記熱硬化性樹脂層の両面が、ポリイミド層で被覆されている。優れた誘電特性を発現するため、熱硬化性樹脂層の厚みは、その両方の面を被覆するポリイミド層と比して実質的に十分厚いものとなっている。
【0031】
上述のように、本発明における熱硬化性樹脂層の20℃における貯蔵弾性率は0.1GPa以上5.0GPa以下であり、寸法安定性も低い。従って、上述のように当該熱硬化性樹脂層のFPC基板材料の基本特性は悪化すると考えられる。しかしながら、本発明者らがこれら基本特性を確認したところ、驚くべきことに従来のフレキシブルプリント基板材料に要求される寸法安定性や耐熱性を十分満たす良好な結果が得られた。これはポリイミド層の20℃における貯蔵弾性率が6.0GPa程度以上であり、熱硬化性樹脂層の両面にポリイミド層を有することで、寸法安定性が保持されるためと考えられる。
【0032】
しかも、積層体のうち熱硬化性樹脂層の割合が大きいにも関わらず、本発明の構成により、ポリイミドの優れた難燃性が活かされて、積層体においても優れた難燃性をも有する。これは、熱硬化性樹脂層の両方の面がポリイミド樹脂で被覆されているため、炎が近づいても中央部への伝達がくい止められるためと考えられる。
【0033】
熱硬化性樹脂層の両面のポリイミド層に用いられるポリイミドの種類は、同じであっても異なっていてもよいが、線膨張の均一性を保持し、樹脂積層体の反りを抑制する観点から、同じであることが好ましい。
【0034】
本発明において樹脂積層体の厚みは25μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上がより好ましく、好ましい上限値は100μm以下である。片面のポリイミド層の厚みは、難燃性の確保の観点から0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。優れた誘電特性を得る観点から、積層体全体の厚みに対するポリイミド層の厚みの比は30%以下であることが好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
また、両面のポリイミド層の厚みは同じであることが好ましく、両面のポリイミド層の厚みが各々0.5μm以上であることが好ましく、各々1μm以上がより好ましい。積層体全体の厚みに対するポリイミド層の厚み(両面のポリイミド層の厚み)の比は4%以上であることが好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。
【0036】
以上から、積層体の厚みは25μm以上であり、片面のポリイミド層の厚みは0.5μm以上、積層体全体の厚みに対するポリイミド層の厚みの比が4%以上であることが好ましく、30%以下であることが好ましい。熱硬化性樹脂層とポリイミド層の厚みの関係がこの範囲にあると、誘電特性の低下を招くことなく、FPC基板材料としての特性および難燃性が良好なものになる。
【0037】
本発明の積層体は、比誘電率を3.0以下、誘電正接が0.004以下とすることが可能となる。積層体の比誘電率は、2.8以下がより好ましく、2.5以下が特に好ましい。誘電正接は、0.0035以下が好ましく、0.003以下がより好ましい。また線膨張係数は22ppm以下にすることが好ましく、20ppm以下がより好ましい。上述のようにして得られるFPCは、電気特性に優れるだけでなく、低線膨張係数、優れた寸法安定性など、FPCとしての特性に優れる。
【0038】
(ポリイミド層)
本発明に用いられるポリイミド層は、非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層からなる多層ポリイミド層であることが好ましい。多層ポリイミド層は、非熱可塑性ポリイミド層が、熱硬化性樹脂層に隣接するよう設けられていることが好ましい。すなわち、熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/熱硬化性樹脂層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層の構成であることが好ましい。
【0039】
以下、非熱可塑性ポリイミド層に使用される非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の原料モノマー、前記非熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸の製造、非熱可塑性ポリイミドフィルムの製造方法、熱可塑性ポリイミド層の順に詳述する。
【0040】
(非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の原料モノマー)
本発明における非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の原料モノマーは、前駆体であるポリアミド酸をイミド化した非熱可塑性ポリイミドが、従来のフレキシブルプリント基板材料に求められる半田耐熱性、寸法安定性、難燃性を有し、一次構造と製造方法によりそれが制御されれば特に制限されない。ポリアミド酸の合成に通常用いられるジアミンおよび酸二無水物を使用可能である。
【0041】
芳香族ジアミンとしては本発明の効果を発現できれば特に制限されないが、2,2’-ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン等が挙げられ、これらを単独または複数併用することができる。
【0042】
また、ポリアミド酸の原料モノマーとして使用し得る酸二無水物系化合物としては本発明の効果を発現できれば特に制限されないが、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシフタル酸二無水物、3,4’−オキシフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの類似物等が挙げられる。
【0043】
(非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の製造)
非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の製造の際に使用する有機溶媒は、非熱可塑性ポリアミド酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができる。例えば、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドがより好ましく用いられ得る。非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の固形分濃度は特に限定されず、5重量%〜35重量%の範囲内であれば非熱可塑性ポリイミドフィルムとした際に十分な機械強度を有する非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。
【0044】
原料である芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物の添加順序についても特に限定されないが、原料の化学構造だけでなく、添加順序を制御することによっても、得られる非熱可塑性ポリイミドの特性を制御することが可能である。
【0045】
上記非熱可塑性ポリアミド酸には、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等のフィルムの諸特性を改善する目的でフィラーを添加することもできる。フィラーとしてはいかなるものを用いても良いが、好ましい例としてはシリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
【0046】
(非熱可塑性ポリイミドフィルムの製造方法)
本発明における非熱可塑性ポリイミドフィルムを得るには、以下の工程
i)有機溶剤中で芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物を反応させて非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液(以下、非熱可塑性ポリアミド酸ともいう)を得る工程、
ii)上記非熱可塑性ポリアミド酸溶液を含む製膜ドープをダイスから支持体上に流延して、樹脂層(液膜ともいうことがある)を形成する工程、
iii)樹脂層を支持体上で加熱して自己支持性を持ったゲルフィルムとした後、支持体からゲルフィルムを引き剥がす工程、
iv)更に加熱して、残ったアミド酸をイミド化し、かつ乾燥させ非熱可塑性ポリイミドフィルムを得る工程、
を含むことが好ましい。
【0047】
ii)以降の工程においては、熱イミド化法と化学イミド化法に大別される。熱イミド化法は、脱水閉環剤等を使用せず、ポリアミド酸溶液を製膜ドープとして支持体に流延、加熱だけでイミド化を進める方法である。一方の化学イミド化法は、ポリアミド酸溶液に、イミド化促進剤として脱水閉環剤及び触媒の少なくともいずれかを添加したものを製膜ドープとして使用し、イミド化を促進する方法である。どちらの方法を用いても構わないが、化学イミド化法の方が生産性に優れる。
【0048】
脱水閉環剤としては、無水酢酸に代表される酸無水物が好適に用いられ得る。触媒としては、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、複素環式第三級アミン等の三級アミンが好適に用いられ得る。
【0049】
製膜ドープを流延する支持体としては、ガラス板、アルミ箔、エンドレスステンレスベルト、ステンレスドラム等が好適に用いられ得る。最終的に得られるフィルムの厚み、生産速度に応じて加熱条件を設定し、部分的にイミド化または乾燥の少なくとも一方を行った後、支持体から剥離してポリアミド酸フィルム(以下、ゲルフィルムという)を得る。
【0050】
上記ゲルフィルムの端部を固定して硬化時の収縮を回避して乾燥し、ゲルフィルムから、水、残留溶媒、イミド化促進剤を除去し、そして残ったアミド酸を完全にイミド化して、ポリイミドを含有するフィルムが得られる。加熱条件については、最終的に得られるフィルムの厚み、生産速度に応じて適宜設定すれば良い。
【0051】
(熱可塑性ポリイミド層)
本発明における熱可塑性ポリイミド層に含まれる熱可塑性ポリイミドは、その前駆体であるポリアミド酸をイミド化して得られる。
【0052】
FPCは、例えばポリイミドのような絶縁性フィルム層をコアフィルムとし、このコアフィルムの表面に、各種接着材料による接着層を介して金属箔層を加熱・圧着することにより貼り合わされたフレキシブル金属張積層板に製造し、さらに回路パターンを形成することで得られる。接着層には従来、エポキシ樹脂やアクリル樹脂が使用されていたが、これらは耐熱性に乏しく、使用用途が限定されてしまう。しかし、接着層として熱可塑性ポリイミドを用いた2層フレキシブルプリント配線板(以下、2層FPCともいう)は、耐熱性、屈曲性に優れることから需要が更に伸びることが期待される。
【0053】
本発明において用いられる熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸に使用される芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物は、非熱可塑性ポリイミド層に使用されるそれらと同じものが挙げられるが、熱可塑性のポリイミドフィルムとするためには、屈曲性を有するジアミンと酸二無水物とを反応させることが好ましい。屈曲性を有するジアミンの例として、4,4‘−ジアミノジフェニルエーテル 、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。またこれらのジアミンと好適に組合せられる酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物などが挙げられる。
【0054】
本発明における熱可塑性ポリアミド酸の製造方法は、得られるポリアミド酸をイミド化して得られる熱可塑性ポリイミドが従来のフレキシブルプリント基板材料に求められる金属箔との接着性、半田耐熱性、寸法安定性、難燃性を有するものであれば、公知のどうような方法も用いることが可能である。 例えば、下記の工程(A−a)〜(A−c):
(A−a)芳香族ジアミンと、芳香族酸二無水物とを、芳香族ジアミンが過剰の状態で有機溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る工程、
(A−b)工程(A−a)で用いたものとは構造の異なる芳香族ジアミンを追加添加する工程、
(A−c)更に、工程(A−a)で用いたものとは構造の異なる芳香族酸二無水物を、全工程における芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物が実質的に等モルとなるように添加して重合する工程、
によって製造することができる。
【0055】
または、下記の工程(B−a)〜(B−c):
(B−a)芳香族ジアミンと、芳香族酸二無水物とを、芳香族酸二無水物が過剰の状態で有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る工程、
(B−b)工程(B−a)で用いたものとは構造の異なる芳香族酸二無水物を追加添加する工程、
(B−c)更に、工程(B−a)で用いたものとは構造の異なる芳香族ジアミンを、全工程における芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物が実質的に等モルとなるように添加して重合する工程、
を経ることによってポリアミド酸を得ることも可能である。
【0056】
(ポリアミド酸の固形分濃度)
本発明のポリアミド酸の固形分濃度は特に限定されず、通常5重量%〜35重量%、好ましくは10重量%〜30重量%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る。
【0057】
(熱硬化性樹脂層とポリイミド層とを有する積層体の製造方法)
本発明における熱硬化性樹脂層とポリイミド層とを有する積層体の製造方法について詳述する。本発明における積層体の製造方法は、例えば、上記i)において非熱可塑性ポリアミド酸を合成し、その後上記ii)〜iv)工程まで進めて一旦回収した非熱可塑性ポリイミドフィルムを熱硬化性樹脂フィルムの両面に挟み、加熱圧着などで熱硬化性樹脂を硬化させながら積層させる。その後、熱可塑性ポリイミド層を設ける場合には、塗工により該層を設けることでも可能である。
【0058】
塗工により熱可塑性ポリイミド層を設ける場合は、熱可塑性ポリアミド酸を塗布し、その後イミド化を行ってもよいし、熱可塑性ポリイミド層を形成することができる熱可塑性ポリイミド溶液を塗布・乾燥してもよい。このようにして得られる積層体に金属層を設けることでFCCLを製造することができる。
【0059】
本発明の積層体を用いて、金属箔と積層することにより、2層FPCに加工されるフレキシブル金属張積層板を製造することができる。金属箔上に積層体を形成する手段としては、上述のようにして積層体を得た後、加熱加圧により金属箔を貼り合せてフレキシブル金属張積層板を得る手段(熱ラミネート法)が挙げられる。金属箔を貼り合せる手段、条件については、従来公知のものを適宜選択すればよい。
【0060】
金属箔は、特に限定されるものではなく、あらゆる金属箔を用いることができる。例えば、銅、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、およびこれら金属の合金などを好適に用いることができる。また、一般的な金属張積層板では、圧延銅、電解銅といった銅が多用されるが、本発明においても好ましく用いることができる。
【0061】
また、上記金属箔は、目的に応じて表面処理、表面粗さ等種々特性を有したものを選択できる。さらに、上記金属箔の表面には、防錆剤や耐熱処理剤あるいは接着剤が塗布されていてもよい。上記金属箔の厚みについては特に限定されるものではなく、その用途に応じて、十分な機能が発揮できる厚みであればよい。このようにして得られるFCCLの金属層をエッチングして、FPCを得ることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、合成例、実施例及び比較例における積層体の比誘電率、誘電正接、線膨張係数、難燃性、フレキシブル金属箔積層板のピール強度、吸湿半田耐熱性、寸法変化率の評価方法は次の通りである。
【0063】
<比誘電率及び誘電正接の測定>
誘電率及び誘電正接は、HEWLETTPACKARD社製のネットワークアナライザ8719Cと株式会社関東電子応用開発製の空洞共振器振動法誘電率測定装置CP511とを用いて測定した。サンプルを2mm×100mmに切り出し、23℃/50%R.H.環境下で24時間調湿後に測定を行った。測定は10GHzで行った。
【0064】
<吸水率>
50mm×50mmに切り出した積層体を150℃×30min乾燥させ、絶乾状態での重量(w1)を測定した後、水に浸漬させた。24hr後、試験片を水から取り出し、表面の水分をふき取って重量(w2)を測定した。得られたw1、w2を用いて式(1)より吸水率を算出した。
【0065】
吸水率(%)={(w2−w1)/w1}×100・・・式(1)
【0066】
<線膨張係数(CTE)の測定>
線膨張係数は、SIIナノテクノ口ジ一社製熱機械的分析装置、商品名:TMA/SS6100により、−10℃〜300℃まで10℃/minで昇温させた後、―10℃まで40℃/minで冷却し、さらに10℃/minで昇温させて、2回目の昇温時の、50〜250℃の値を見積もった。測定条件を以下に示す。
サンプル形状:幅3mm、長さ10mm
荷重:1g
測定温度範囲:−10℃〜300℃
雰囲気:空気雰囲気下
【0067】
<難燃性>
200mm×50mmに切り出した積層体を用いてUL−94規格に準拠した試験片を作製し、VTM試験に準拠して燃焼試験を実施した。VTM−0の判定基準を合格した場合を○(良)、不合格の場合を×(悪)とした。
【0068】
<ピール強度>
実施例ならびに比較例で得られた両面フレキシブル金属張積層板に形成した1mmの金属配線パターンを90度に剥離する際のピール強度を測定した。ピール強度はJISC−6471にしたがって評価した。
【0069】
<吸湿半田耐熱性>
実施例ならびに比較例で得られた両面フレキシブル金属張積層板について、3.5cm角に切り出し、片面(便宜的にA面とする)は2.5cm角の銅箔層がサンプル中央に残るように、反対面(便宜的にB面とする)は銅箔層が全面に残るように、エッチング処理で余分な銅箔層を除去してサンプルを5つ作製した。得られたサンプルをそれぞれ85℃、85%R.H.の加湿条件下で、72時間放置し、吸湿処理を行った。吸湿処理後、サンプルをそれぞれ300℃の半田浴に10秒間浸漬させた。半田浸漬後のサンプルについて、B面の銅箔層をエッチングにより完全に除去し、5つ全てのサンプルにおいて銅箔が重なっていた部分の外観に変化が無い場合は○(良)、5つのサンプルのうち1つ以上のサンプルに樹脂層の白化、膨れ、銅箔の剥離のいずれかが確認された場合は×(悪)とした。
【0070】
<寸法変化率の測定>
JISC6481に基づいて、フレキシブル金属張積層板に4つの穴を形成し、各穴のそれぞれの距離を測定した。次に、エッチング工程を実施してフレキシブル金属張積層板から金属箔を除去した後に、23℃/55%R.H.の恒温室に24時間放置した。その後、エッチング工程前と同様に、上記4つの穴について、それぞれの距離を測定した。金属箔除去前における各穴の距離の測定値をD1とし、金属箔除去後における各穴の距離の測定値をD2として、次式(2)によりエッチング前後の寸法変化率を求めた。なお、上記寸法変化率は、MD方向(フィルム搬送方向)およびTD方向(フィルム搬送方向と直行する方向)の双方について測定した。
【0071】
寸法変化率(%)={(D2−D1)/D1}×100・・・式(2)
【0072】
<動的粘弾性の測定>
SIIナノテクノロジー社製 DMS6100を用いて(サンプルサイズ 巾9mm、長さ40mm)、周波数5Hzで昇温速度3℃/minで−50〜450℃の温度範囲で測定した。温度に対して貯蔵弾性率をプロットした曲線から20℃における貯蔵弾性率を見積もった。
【0073】
<非熱可塑性ポリイミド前駆体の合成>
(合成例1)
容量2000mlのガラス製フラスコにN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFともいう)を657.8g、ジアミノジフェニルエーテル(以下、ODAともいう)を10.5gと2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、BAPPともいう)を32.4g添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAともいう)17.0gとピロメリット酸二無水物(以下、PMDAともいう)14.3gを徐々に添加した。BTDAとPMDAが溶解したことを目視で確認後、p−フェニレンジアミン(以下、PDAともいう)を14.2g加えて5分間攪拌を行った。続いて、PMDAを28.7g添加した後、30分攪拌した。最後に、1.7gのPMDAを固形分濃度7.2%ととなるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
【0074】
(合成例2)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを625.9g、PDAを23.45gを添加し窒素雰囲気下で攪拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAともいう)を57.4gを徐々に添加した。BPDAが溶解したことを目視で確認後、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPBともいう)を17.1gと、BAPP19.0gを添加し窒素雰囲気下で攪拌しながら、BPDAを6.4gを徐々に添加した。BPDAが溶解したことを目視で確認後、4,4’−オキシジフタル酸無水物(以下、ODPAともいう)を14.4gとPMDA8.1gを添加し30分攪拌した後、PTFE粒子116gを添加し、さらに30分攪拌した。攪拌後、1.7gのPMDAを固形分濃度7.2%ととなるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液を得た。
【0075】
<熱可塑性ポリイミド前駆体の合成>
(合成例3)
反応系内を20℃に保った状態で、DMF323.0gに、BAPP43.6gを添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAともいう)43.6gを徐々に添加した。BPDAが溶解したことを目視確認した後、PMDA19.0gを添加し30分間攪拌を行った。0.7gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が800ポイズに達した時点で重合を終了した。
【0076】
<積層体の作製>
(実施例1)
合成例2で得られたポリアミド酸溶液に無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比7.2/2.2/10.6)からなるイミド化促進剤をポリアミド酸溶液に対して重量比50%で添加し、連続的にミキサーで撹拌しTダイから押出してステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を120℃×60秒で加熱した後エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がしてテンタークリップに固定し、250℃×8秒、350℃×8秒、400℃×60秒で乾燥・イミド化させ、厚み4μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムを38μmの日立化成株式会社製SF樹脂(製品名:AS−8000)フィルムの両面に介し、185℃、2.0MPa、90minの条件で加熱圧着した後、得られた積層体の両面に合成例3で得られたポリアミド酸溶液を、最終片面厚みが3.0μmとなるように塗布し、120℃×120秒で乾燥した。続いて、350℃で11秒間加熱してイミド化を行い、総厚み52μmの積層体を得た。得られた積層体を用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0077】
さらに、得られた積層体の両面に12μm電解銅箔(3EC−M3S−HTE、三井金属製)を配し、さらに銅箔の両側に保護フィルム(アピカル125NPI;カネカ製)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で熱ラミネートを行い、得られたフレキシブル金属張積層板のピール強度、吸湿半田耐熱性、寸法変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例2)
合成例2で得られたポリアミド酸溶液を用いて、実施例1で用いたポリイミドフィルムの製造と同様な方法で得られた厚み4μmのポリイミドフィルムを28μmの日立化成株式会社製SF樹脂(製品名:AS−400HS)フィルムの両面に介し、185℃、2.0MPa、90minの条件で加熱圧着した後、得られた積層体の両面に合成例3で得られたポリアミック酸溶液を、最終片面厚みが2.0μmとなるように塗布し、120℃×120秒で乾燥した。続いて、350℃で11秒間加熱してイミド化を行い、総厚み40μmの積層体を得た。得られた積層体を用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0079】
さらに、得られた積層体の両面に実施例1と同様の条件で熱ラミネートを行い、得られたフレキシブル金属張積層板のピール強度、吸湿半田耐熱性、寸法変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例3)
合成例1で得られたポリアミド酸溶液に無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比7.2/2.2/10.6)からなるイミド化促進剤をポリアミック酸溶液に対して重量比50%で添加し、連続的にミキサーで撹拌しTダイから押出してステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を120℃×60秒で加熱した後エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がしてテンタークリップに固定し、250℃×8秒、350℃×8秒、400℃×60秒で乾燥・イミド化させ、厚み3μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムを40μmの日立化成株式会社製SF樹脂(製品名:AS−8000)フィルムの両面に介し、185℃、2.0MPa、90minの条件で加熱圧着した後、得られた積層体の両面に合成例3で得られたポリアミド酸溶液を、最終片面厚みが3.0μmとなるように塗布し、120℃×120秒で乾燥した。続いて、350℃で11秒間加熱してイミド化を行い、総厚み52μmの積層体を得た。得られた積層体を用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、線膨張係数(CTE)を評価した。
【0081】
さらに、得られた積層体の両面に12μm電解銅箔(3EC−M3S−HTE、三井金属製)を配し、さらに銅箔の両側に保護フィルム(アピカル125NPI;カネカ製)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で熱ラミネートを行い、得られたフレキシブル金属張積層板のピール強度、吸湿半田耐熱性、寸法変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0082】
(実施例4)
合成例1で得られたポリアミド酸溶液を用いて、実施例3で用いたポリイミドフィルムの製造と同様な方法で得られた厚み3μmのポリイミドフィルムを38μmの日立化成株式会社製SF樹脂(製品名:AS−400HS)フィルムの両面に介し、185℃、2.0MPa、90minの条件で加熱圧着した後、得られた積層体の両面に合成例3で得られたポリアミック酸溶液を、最終片面厚みが3.0μmとなるように塗布し、120℃×120秒で乾燥した。続いて、350℃で11秒間加熱してイミド化を行い、総厚み50μmの積層体を得た。得られた積層体を用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0083】
さらに、得られた積層体の両面に実施例1と同様の条件で熱ラミネートを行い、得られたフレキシブル金属張積層板のピール強度、吸湿半田耐熱性、寸法変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0084】
(比較例1)
合成例1で得られたポリアミド酸溶液に無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比7.2/2.2/10.6)からなるイミド化促進剤をポリアミック酸溶液に対して重量比50%で添加し、連続的にミキサーで撹拌しTダイから押出してステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を120℃×120秒で加熱した後エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がしてテンタークリップに固定し、250℃×11秒、350℃×11秒、450℃×120秒で乾燥・イミド化させ、厚み17μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムに固形分濃度20%になるようにトルエンで希釈した日立化成株式会社製SF樹脂(製品名:SFR−2300MR)を、最終片面厚みが4μmとなるように、ポリイミドフィルムの両面に塗布し、110℃×600秒で乾燥した。続いて、185℃で60分間加熱硬化を行い、総厚み25μmの積層体を得た。得られた積層体を用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0085】
さらに、得られた積層体の両面に12μm電解銅箔(3EC−M3S−HTE、三井金属製)を配し、さらに銅箔の両側に保護フィルム(アピカル125NPI;カネカ製)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で熱ラミネートを行ったところ、積層体中の樹脂層が流動し、好適なフレキシブル金属張積層板を得ることができなかった。
【0086】
(比較例2)
合成例1で得られたポリアミド酸溶液を用いて、比較例1で用いたポリイミドフィルムの製造と同様な方法で得られた厚み12.5μmのポリイミドフィルムの両面に厚み6.5μmの日立化成株式会社製SF樹脂(製品名:AS−8000)フィルムを、70℃、0.4MPaで加熱圧着し、総厚み25.5μmの積層体を得た。得られた積層体を用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0087】
さらに、得られた積層体の両面に12μm電解銅箔(3EC−M3S−HTE、三井金属製)を配し、さらに銅箔の両側に保護フィルム(アピカル125NPI;カネカ製)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で熱ラミネートを行ったところ、積層体中の樹脂層が流動し、好適なフレキシブル金属張積層板を得ることができなかった。
【0088】
(比較例3)
合成例1で得られたポリアミド酸溶液を用いて、比較例1で用いたポリイミドフィルムの製造と同様な方法で得られた厚み17.0μmのポリイミドフィルムの両面に厚み6.5μmの日立化成株式会社製SF樹脂(製品名:AS−8000)フィルムを、70℃、0.4MPaで加熱圧着し、総厚み30μmの積層体を得た。得られた積層体を用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0089】
さらに、得られた積層体の両面に12μm電解銅箔(3EC−M3S−HTE、三井金属製)を配し、さらに銅箔の両側に保護フィルム(アピカル125NPI;カネカ製)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で熱ラミネートを行ったところ、積層体中の樹脂層が流動し、好適なフレキシブル金属張積層板を得ることができなかった。
【0090】
(比較例4)
合成例1で得られたポリアミド酸溶液を用いて、比較例1で用いたポリイミドフィルムの製造と同様な方法で得られた厚み17.0μmのポリイミドフィルムの両面に厚み13μmの日立化成株式会社製SF樹脂(製品名:AS−8000)フィルムを、70℃、0.4MPaで加熱圧着し、総厚み43μmの積層体を得た。得られた積層体を用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0091】
さらに、得られた積層体の両面に12μm電解銅箔(3EC−M3S−HTE、三井金属製)を配し、さらに銅箔の両側に保護フィルム(アピカル125NPI;カネカ製)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で熱ラミネートを行ったところ、積層体中の樹脂層が流動し、好適なフレキシブル金属張積層板を得ることができなかった。
【0092】
(比較例5)
合成例2で得られたポリアミド酸溶液に無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比7.2/2.2/10.6)からなるイミド化促進剤をポリアミック酸溶液に対して重量比50%で添加し、連続的にミキサーで撹拌しTダイから押出してステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を120℃×120秒で加熱した後エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がしてテンタークリップに固定し、250℃×25秒、350℃×20秒、400℃×200秒で乾燥・イミド化させ、厚み44μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの両面に、合成例3で得られたポリアミック酸溶液を、最終片面厚みが3.0μmとなるように塗布し、120℃×120秒で乾燥した。続いて、350℃で11秒間加熱してイミド化を行い、総厚み50μmの積層体を得た。得られた積層体を用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0093】
さらに、得られた積層体の両面に12μm電解銅箔(3EC−M3S−HTE、三井金属製)を配し、さらに銅箔の両側に保護フィルム(アピカル125NPI;カネカ製)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で熱ラミネートを行い、得られたフレキシブル金属張積層板のピール強度、吸湿半田耐熱性、寸法変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0094】
(比較例6)
合成例2で得られたポリアミド酸溶液に無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比7.2/2.2/10.6)からなるイミド化促進剤をポリアミック酸溶液に対して重量比50%で添加し、連続的にミキサーで撹拌しTダイから押出してステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を120℃×240秒で加熱した後エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がしてテンタークリップに固定し、250℃×22秒、350℃×35秒、400℃×240秒で乾燥・イミド化させ、厚み34μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの両面に、合成例3で得られたポリアミック酸溶液を、最終片面厚みが8.0μmとなるように塗布し、120℃×240秒で乾燥した。続いて、350℃で25秒間加熱してイミド化を行い、総厚み50μmの積層体を得た。得られた積層体を用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0095】
さらに、得られた積層体の両面に12μm電解銅箔(3EC−M3S−HTE、三井金属製)を配し、さらに銅箔の両側に保護フィルム(アピカル125NPI;カネカ製)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で熱ラミネートを行い、得られたフレキシブル金属張積層板のピール強度、吸湿半田耐熱性、寸法変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0096】
(比較例7)
合成例2で得られたポリアミド酸溶液を用いて、比較例6で用いたポリイミドフィルムの製造と同様な方法で得られた厚み17.0μmのポリイミドフィルムを用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0097】
さらに、得られた積層体の両面に12μm電解銅箔(3EC−M3S−HTE、三井金属製)を配し、さらに銅箔の両側に保護フィルム(アピカル125NPI;カネカ製)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で熱ラミネートを行ったところ、積層体が銅箔と接着せず、好適なフレキシブル金属張積層板を得ることができなかった。
【0098】
(比較例8)
合成例2で得られたポリアミド酸溶液を用いて、比較例6で用いたポリイミドフィルムの製造と同様な方法で得られた厚み34.0μmのポリイミドフィルムを用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0099】
さらに、得られた積層体の両面に12μm電解銅箔(3EC−M3S−HTE、三井金属製)を配し、さらに銅箔の両側に保護フィルム(アピカル125NPI;カネカ製)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で熱ラミネートを行ったところ、積層体が銅箔と接着せず、好適なフレキシブル金属張積層板を得ることができなかった。
【0100】
(比較例9)
38μmの日立化成株式会社製SF樹脂(製品名:AS−8000)フィルムを用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0101】
さらに、得られた積層体の両面に12μm電解銅箔(3EC−M3S−HTE、三井金属製)を配し、さらに銅箔の両側に保護フィルム(アピカル125NPI;カネカ製)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で熱ラミネートを行いったところ、積層体中の樹脂層が流動し、好適なフレキシブル金属張積層板を得ることができなかった。
【0102】
(比較例10)
33μmの日立化成株式会社製SF樹脂(製品名:AS−400HS)フィルムを用いて比誘電率、誘電正接、吸水率、難燃性、CTEを評価した。
【0103】
さらに、得られた積層体の両面に12μm電解銅箔(3EC−M3S−HTE、三井金属製)を配し、さらに銅箔の両側に保護フィルム(アピカル125NPI;カネカ製)を用いて、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で熱ラミネートを行いったところ、積層体中の樹脂層が流動し、好適なフレキシブル金属張積層板を得ることができなかった。
【0104】
【表1】
【0105】
表1より、中心に本発明の熱硬化性樹脂層を有し、熱硬化性樹脂層の両面にポリイミド層を有する実施例では、ポリイミド層のみを有する比較例5〜8に比べて比誘電率や誘電正接が低下し、誘電特性が良好となった。また、実施例1〜4では、貯蔵弾性率が低い熱硬化性樹脂層を用いているものの、ポリイミド層のみを有する比較例5、6と寸法安定率が同程度になり、線膨張係数も同程度となった。すなわち、寸法安定率の増加や、線膨張係数の増加を抑制することができた。
【0106】
中心にポリイミド層を有し、ポリイミド層の両面に熱硬化性樹脂層を有する比較例1〜4や、熱硬化性樹脂層のみを有する比較例9、10では、難燃性が低かった。すなわち、FCCLとしての使用が難しいということがわかった。