(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれ独立して回転駆動される左右一対のクローラを備えて階段を走行可能な走行装置と、前記走行装置に枢設されている車椅子搭載部とを具備し、前記車椅子搭載部に車椅子を搭載して階段を昇降する車椅子用階段昇降機であって、
当該車椅子用階段昇降機は、左右方向に並んだ配置に設けられ、前記階段の蹴込板までの距離を測定する一対の測距センサと、
当該車椅子用階段昇降機を駆動制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
当該車椅子用階段昇降機が少なくとも前記階段を走行する際、前記一対の測距センサがそれぞれ測定した距離の差分に基づき、前記階段の昇降方向に対する当該車椅子用階段昇降機の走行方向の傾きの程度を判断する傾き判断手段と、
前記傾き判断手段が、当該車椅子用階段昇降機の走行方向の傾きが所定角度以上であると判断した場合に、当該車椅子用階段昇降機が昇降方向に対し遅れて傾いた側のクローラの回転速度を相対的に上げるように、少なくとも一方のクローラの回転速度を切り替える傾き修正用クローラ制御手段と、
を備えたことを特徴とする車椅子用階段昇降機。
前記側壁距離判断手段は、前記側方測距センサが測定した前記側壁までの距離が、前記第1閾値よりも小さな値の第3閾値よりも近いか否かを判断する処理を実行する機能を有し、
前記制御部は、
前記側壁距離判断手段が、前記側方測距センサが測定した前記側壁までの距離が第3閾値よりも近いと判断した場合には、当該車椅子用階段昇降機の走行を止めるように前記一対のクローラの回転駆動を停止するクローラ停止制御手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の車椅子用階段昇降機。
前記側壁距離判断手段は、前記側方測距センサが測定した前記側壁までの距離が、前記第2閾値よりも大きな値の第4閾値よりも遠いか否かを判断する処理を実行する機能を有し、
前記制御部は、
前記側壁距離判断手段が、前記側方測距センサが測定した前記側壁までの距離が第4閾値よりも遠いと判断した場合には、当該車椅子用階段昇降機の走行を止めるように前記一対のクローラの回転駆動を停止するクローラ停止制御手段を備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の車椅子用階段昇降機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の車椅子用階段昇降機の場合、左右一対のベルトクローラが駆動軸で連結されており、左右のベルトクローラが同一速度で回転するため、車椅子用階段昇降機は直進しかできないようになっている。
そのため、車椅子用階段昇降機の移動方向を変える際には介助者が人力で昇降機の向きを変えるしかなかったが、車椅子用階段昇降機に車椅子と車椅子の搭乗者を加えた重量は重く、その向きを変えることは困難であった。特に、車椅子用階段昇降機が階段を昇降する際に、その向きを変えることは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、好適に階段を昇降することができる車椅子用階段昇降機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
それぞれ独立して回転駆動される左右一対のクローラを備えて階段を走行可能な走行装置と、前記走行装置に枢設されている車椅子搭載部とを具備し、前記車椅子搭載部に車椅子を搭載して階段を昇降する車椅子用階段昇降機であって、
当該車椅子用階段昇降機は、左右方向に並んだ配置に設けられ、前記階段の蹴込板までの距離を測定する一対の測距センサと、
当該車椅子用階段昇降機を駆動制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
当該車椅子用階段昇降機が少なくとも前記階段を走行する際、前記一対の測距センサがそれぞれ測定した距離の差分に基づき、前記階段の昇降方向に対する当該車椅子用階段昇降機の走行方向の傾きの程度を判断する傾き判断手段と、
前記傾き判断手段が、当該車椅子用階段昇降機の走行方向の傾きが所定角度以上であると判断した場合に、当該車椅子用階段昇降機が昇降方向に対し遅れて傾いた側のクローラの回転速度を相対的に上げるように、少なくとも一方のクローラの回転速度を切り替える傾き修正用クローラ制御手段と、
を備えるようにした。
【0007】
かかる構成の車椅子用階段昇降機であれば、一対の測距センサがそれぞれ測定した階段の蹴込板までの距離の差分に基づき、階段の昇降方向に対する車椅子用階段昇降機の走行方向の傾きの程度を判断することができる。
そして、車椅子用階段昇降機の走行方向の傾きが所定角度以上であるとの判断に基づき、その車椅子用階段昇降機が階段の昇降方向に対し遅れて傾いた側のクローラの回転速度を相対的に上げるように切り替えることで、車椅子用階段昇降機の走行方向を階段の昇降方向に合わせるように、昇降機の傾きを修正することができる。
こうして車椅子用階段昇降機は、走行方向の傾きを修正しつつ階段を走行することで、好適に階段を昇降することができる。
【0008】
また、望ましくは、
前記階段のいずれか一方の側壁までの距離を測定する側方測距センサを備え、
前記制御部は、
前記側方測距センサが測定した前記側壁までの距離が、第1閾値よりも近いか否かを判断するとともに、前記第1閾値よりも大きな値の第2閾値よりも遠いか否かを判断する側壁距離判断手段と、
前記側壁距離判断手段が、前記側方測距センサが測定した前記側壁までの距離が第1閾値よりも近いと判断した場合には、当該車椅子用階段昇降機の前記側壁側のクローラの回転速度を相対的に上げるように、少なくとも一方のクローラの回転速度を切り替え、前記側方測距センサが測定した前記側壁までの距離が第2閾値よりも遠いと判断した場合には、当該車椅子用階段昇降機の前記側壁とは反対側のクローラの回転速度を相対的に上げるように、少なくとも一方のクローラの回転速度を切り替える側壁距離修正用クローラ制御手段と、
を備えるようにする。
【0009】
かかる構成を備えている車椅子用階段昇降機が、階段の側壁に沿うように走行する際、所定の範囲を越えて側壁に近付いた場合、その車椅子用階段昇降機の側壁側のクローラの回転速度を相対的に上げるように切り替えることで、その車椅子用階段昇降機が側壁から離れるように調整することができる。
同様に、階段の側壁に沿うように走行する車椅子用階段昇降機が、所定の範囲を越えて側壁から離れた場合、その車椅子用階段昇降機の側壁とは反対側のクローラの回転速度を相対的に上げるように切り替えることで、その車椅子用階段昇降機が側壁に近付くように調整することができる。
こうすることで、車椅子用階段昇降機が側壁に近寄り過ぎず、側壁から遠ざかり過ぎずに、側壁と好適な距離を保ちつつ階段を走行することが可能になる。
【0010】
また、望ましくは、
前記側壁距離判断手段は、前記側方測距センサが測定した前記側壁までの距離が、前記第1閾値よりも小さな値の第3閾値よりも近いか否かを判断する処理を実行する機能を有し、
前記制御部は、
前記側壁距離判断手段が、前記側方測距センサが測定した前記側壁までの距離が第3閾値よりも近いと判断した場合には、当該車椅子用階段昇降機の走行を止めるように前記一対のクローラの回転駆動を停止するクローラ停止制御手段を備えるようにする。
【0011】
かかる構成を備えている車椅子用階段昇降機が、階段の側壁に沿うように走行する際、側壁に近付き過ぎたり、側壁から離れ過ぎたりした場合に、車椅子用階段昇降機を緊急停止させることができる。
【0012】
また、望ましくは、
前記側壁距離判断手段は、前記側方測距センサが測定した前記側壁までの距離が、前記第2閾値よりも大きな値の第4閾値よりも遠いか否かを判断する処理を実行する機能を有し、
前記制御部は、
前記側壁距離判断手段が、前記側方測距センサが測定した前記側壁までの距離が第4閾値よりも遠いと判断した場合には、当該車椅子用階段昇降機の走行を止めるように前記一対のクローラの回転駆動を停止するクローラ停止制御手段を備えるようにする。
【0013】
かかる構成を備えている車椅子用階段昇降機が、階段の側壁に沿うように走行する際、側壁に近付き過ぎたり、側壁から離れ過ぎたりした場合に、車椅子用階段昇降機を緊急停止させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、好適に階段を昇降することができる車椅子用階段昇降機が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る車椅子用階段昇降機の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
車椅子用階段昇降機100は、
図1(a)(b)、
図2、
図3に示すように、左右一対のクローラ11を備えて階段Sを走行可能な走行装置10と、走行装置10に枢設されている車椅子搭載部20とを具備しており、車椅子搭載部20に車椅子Cを搭載して階段Sを昇降することが可能な機器である。
【0018】
本実施形態の車椅子用階段昇降機100は、左右方向に並んだ配置に設けられ、階段Sの蹴込板Pの板面(蹴込面)までの距離を測定する一対の測距センサ30と、階段Sのいずれか一方の側壁Wまでの距離を測定する側方測距センサ40と、走行装置10に対する車椅子搭載部20の角度を切り換える車椅子搭載部用駆動部50と、昇降機を操作するコントローラー60と、昇降機の各部を制御する制御部1と、バッテリー等を備えて構成されている。
【0019】
走行装置10は、クローラ11の駆動輪11aを回転させ、クローラ11を回転駆動するクローラ駆動モーター12を備えている。
クローラ駆動モーター12は、左右一対のクローラ11にそれぞれ設けられており、左右一対のクローラ11がそれぞれ独立して回転駆動されるようになっている。
なお、クローラ11における駆動輪11aの反対側には従動輪11bが配設されており、クローラ11は、駆動輪11aと従動輪11bの間で少なくとも階段Sの2段に跨る長さを有している。
【0020】
また、走行装置10のフレーム10aに側方測距センサ40が配設されている。側方測距センサ40は、周知の距離センサであり、レーザー式、超音波式、反射光式などのセンサを用いることができる。
本実施形態の車椅子用階段昇降機100には、4つの側方測距センサ40が設けられている。
具体的には、昇降機左側のフレーム10aに2つの側方測距センサ40が設けられ、その一方の側方測距センサ40が駆動輪11aの近傍に設けられ、他方が従動輪11bの近傍に設けられている。同様に、昇降機右側のフレーム10aに2つの側方測距センサ40が設けられ、その一方の側方測距センサ40が駆動輪11aの近傍に設けられ、他方が従動輪11bの近傍に設けられている。
なお、側方測距センサ40は、昇降機の左側の前後に各1つ又は昇降機の右側の前後に各1つの計2つが設けられた構成であってもよい。
車椅子用階段昇降機100は、例えば、階段Sの両側にある側壁Wのいずれかに寄せられた位置を走行するので、その側壁W寄りのフレーム10aに設けられている側方測距センサ40を使用するように切り替えて、階段S側方の側壁Wまでの距離を測定する。
特に、フレーム10aに設けられている2つの側方測距センサ40のうち、進行方向前方の側方測距センサ40を使用するように切り替える。本実施形態では、階段Sを昇る方向に走行する際には、従動輪11b側の側方測距センサ40を使用するように切り替え、階段Sを降りる方向に走行する際には、駆動輪11a側の側方測距センサ40を使用するように切り替える。
なお、階段Sの片側にのみ側壁Wがある場合、その側壁Wに寄せた位置で車椅子用階段昇降機100を走行させ、側壁W寄りのフレーム10aに設けられている側方測距センサ40のうち、進行方向前方の側方測距センサ40を使用するようにすればよい。
【0021】
車椅子搭載部20は、例えば、略箱型である有底籠状のコンテナであり、車椅子Cが車椅子搭載部20に乗り降りする際に使用するスロープや、車椅子Cを車椅子搭載部20に固定するロック機構などを有している。
【0022】
また、車椅子搭載部20には、一対の測距センサ30が配設されている。一対の測距センサ30は、周知の距離センサであり、レーザー式、超音波式、反射光式などのセンサを用いることができる。
本実施形態では、車椅子搭載部20の底面寄りの外面に一対の測距センサ30が左右方向に並んだ配置に設けられている。
具体的には、階段Sの昇降方向と車椅子用階段昇降機100の走行方向とが一致している場合、左右一対の測距センサ30がそれぞれ測定した階段Sの蹴込板Pまでの距離が同じ値になる配置に、一対の測距センサ30が車椅子搭載部20に配設されている。
なお、左右一対の測距センサ30はそれぞれ、走行装置10の従動輪11bの近傍側の面に配設されている。
【0023】
車椅子搭載部用駆動部50は、例えば、シリンダ装置であり、一端が走行装置10のフレーム10aに繋がれ、他端が車椅子搭載部20に繋がれている。
この車椅子搭載部用駆動部50は、車椅子用階段昇降機100が階段Sに向かって平地を移動する際(
図2参照)にはシリンダを縮めるように作動して、走行装置10に対して車椅子搭載部20が略平行の配置になるように、走行装置10に対する車椅子搭載部20の角度を切り換える。また、椅子用階段昇降機100が階段Sを昇降する際にはシリンダを伸ばすように作動して、車椅子搭載部20に搭載されている車椅子Cの姿勢が略水平となるように、走行装置10に対する車椅子搭載部20の角度を切り換える。
なお、車椅子搭載部用駆動部50は、シリンダ装置であることに限らず、他の駆動機構を採用してもよい。
【0024】
コントローラー60は、車椅子用階段昇降機100と有線接続あるいは無線接続されている操作部であり、車椅子Cの介助者が操作する。
例えば、各種センサの測定結果を利用して昇降機を走行させるセミ自動モードでは、主に車椅子用階段昇降機100の前進・後退に関する操作がコントローラー60によって行われる。また、4つの側方測距センサ40のうち、使用する側方測距センサ40の切り替えをコントローラー60によって行ってもよい。
また、各種センサの測定結果を利用しないで昇降機を走行させる手動モードでは、車椅子用階段昇降機100の前進・後退および左右の方向指示の操作と、停止に関する操作がコントローラー60によって行われる。
【0025】
制御部1は、例えば、各種の演算処理等を行うCPUと、CPUにより実行される各種制御プログラムや各種データ等が格納されているROM等を備えて構成されており、装置各部を統括制御するようになっている。
制御部1のROMには、後述する閾値(第1閾値D1、第2閾値D2、第3閾値、第4閾値D4)や、車椅子用階段昇降機100の走行方向の傾きに関する角度の基準値(第1基準値、第2基準値)が格納されている。
なお、閾値(第1閾値D1、第2閾値D2、第3閾値、第4閾値D4)に関するデータは、車椅子用階段昇降機100が走行する階段Sの幅などに応じて、コントローラー60を介して入力設定するようにしてもよい。
【0026】
例えば、制御部1は、一対の測距センサ30がそれぞれ測定した蹴込板Pまでの距離の差分に基づき、階段Sの昇降方向に対する当該車椅子用階段昇降機100の走行方向の傾きの程度を判断する傾き判断手段としての処理を実行する。
上述したように、階段Sの昇降方向と車椅子用階段昇降機100の走行方向とが一致している場合、左右一対の測距センサ30がそれぞれ測定した階段Sの蹴込板Pまでの距離は同じ値になるので、一対の測距センサ30がそれぞれ測定した蹴込板Pまでの距離が異なる値であるとき、階段Sの昇降方向に対して車椅子用階段昇降機100の走行方向が傾いている状態であると判定できる。
【0027】
例えば、一対の測距センサ30がそれぞれ測定した蹴込板Pまでの距離の差分が第1基準値に満たない場合、傾き判断手段として機能する制御部1は、階段Sの昇降方向に対する車椅子用階段昇降機100の走行方向の傾きは3°未満の誤差範囲であり、その車椅子用階段昇降機100の走行方向の傾きはないものと判断する。
また、一対の測距センサ30がそれぞれ測定した蹴込板Pまでの距離の差分が第1基準値よりも大きく、第1基準値よりも大きな値の第2基準値よりも小さい場合、傾き判断手段として機能する制御部1は、階段Sの昇降方向に対する車椅子用階段昇降機100の走行方向の傾きが3°以上10°未満であり、その車椅子用階段昇降機100の走行方向に小さな傾きがあると判断する。
また、一対の測距センサ30がそれぞれ測定した蹴込板Pまでの距離の差分が第2基準値を超える場合、傾き判断手段として機能する制御部1は、階段Sの昇降方向に対する車椅子用階段昇降機100の走行方向の傾きが10°以上であり、その車椅子用階段昇降機100の走行方向に大きな傾きがあると判断する。
なお、一対の測距センサ30がそれぞれ測定した蹴込板Pまでの距離の差分に関する基準値は、一対の測距センサ30の間隔に応じて異なるので、昇降機の設計に応じて設定される。
【0028】
また、制御部1は、傾き判断手段として機能する制御部1が、当該車椅子用階段昇降機100の走行方向の傾きが所定角度以上であると判断した場合に、当該車椅子用階段昇降機100が階段Sの昇降方向に対し遅れて傾いた側のクローラ11の回転速度を相対的に上げるように、少なくとも一方のクローラ1の回転速度を切り替える傾き修正用クローラ制御手段としての処理を実行する。
例えば、傾き判断手段として機能する制御部1が、車椅子用階段昇降機100の走行方向の傾きが3°以上であると判断した場合、車椅子用階段昇降機100が階段Sの昇降方向に対し遅れて傾いた側のクローラ11の回転速度を上げるように切り替えるか、その反対側のクローラ11の回転速度を下げるように切り替えるか、またその両方のクローラ11の回転速度を切り替えるかして、階段Sの昇降方向に対し遅れて傾いた側のクローラ11の回転速度を相対的に上げて、車椅子用階段昇降機100の走行方向を階段Sの昇降方向に合わせるように、昇降機の傾きを修正する。
【0029】
また、制御部1は、側方測距センサ40が測定した側壁Wまでの距離が、第1閾値D1よりも近いか否かを判断するとともに、第1閾値D1よりも大きな値の第2閾値D2よりも遠いか否かを判断する側壁距離判断手段としての処理を実行する。
また、制御部1は、側壁距離判断手段として機能する制御部1が、側方測距センサ40が測定した側壁Wまでの距離が第1閾値D1よりも近いと判断した場合には、当該車椅子用階段昇降機100の側壁W側のクローラ11の回転速度を相対的に上げるように、少なくとも一方のクローラ11の回転速度を切り替え、側方測距センサ40が測定した側壁Wまでの距離が第2閾値D2よりも遠いと判断した場合には、当該車椅子用階段昇降機100の側壁Wとは反対側のクローラ11の回転速度を相対的に上げるように、少なくとも一方のクローラ11の回転速度を切り替える側壁距離修正用クローラ制御手段としての処理を実行する。
【0030】
例えば、側壁距離判断手段として機能する制御部1が、側方測距センサ40が測定した側壁Wまでの距離が20cm(第1閾値D1)よりも近いと判断した場合には、側壁W側のクローラ11の回転速度を上げるように切り替えるか、側壁Wとは反対側のクローラ11の回転速度を下げるように切り替えるか、またその両方のクローラ11の回転速度を切り替えるかして、車椅子用階段昇降機100の側壁W側のクローラ11の回転速度を相対的に上げて、車椅子用階段昇降機100が側壁Wから離間するように調整する。
また、側壁距離判断手段として機能する制御部1が、側方測距センサ40が測定した側壁Wまでの距離が30cm(第2閾値D2)よりも遠いと判断した場合には、側壁Wとは反対側のクローラ11の回転速度を上げるように切り替えるか、側壁W側のクローラ11の回転速度を下げるように切り替えるか、またその両方のクローラ11の回転速度を切り替えるかして、車椅子用階段昇降機100の側壁Wとは反対側のクローラ11の回転速度を相対的に上げて、車椅子用階段昇降機100が側壁Wに近付くように調整する。
こうすることで、車椅子用階段昇降機100が側壁Wに近寄り過ぎず、側壁Wから遠ざかり過ぎずに、側壁Wと好適な距離を保ちつつ階段Sを走行することが可能になる。
【0031】
また、側壁距離判断手段として機能する制御部1は、側方測距センサ40が測定した側壁Wまでの距離が、第1閾値D1よりも小さな値の第3閾値D3よりも近いか否かを判断するとともに、第2閾値D2よりも大きな値の第4閾値D4よりも遠いか否かを判断する処理を実行するように構成されている。
そして、制御部1は、側壁距離判断手段として機能する制御部1が、側方測距センサ40が測定した側壁Wまでの距離が第3閾値D3よりも近いと判断した場合には、当該車椅子用階段昇降機100の走行を止めるように一対のクローラ11の回転駆動を停止し、側方測距センサ40が測定したW側壁までの距離が第4閾値D4よりも遠いと判断した場合には、当該車椅子用階段昇降機100の走行を止めるように一対のクローラ11の回転駆動を停止するクローラ停止制御手段としての処理を実行する。
【0032】
例えば、側壁距離判断手段として機能する制御部1が、側方測距センサ40が測定した側壁Wまでの距離が10cm(第3閾値D3)よりも近いと判断した場合には、一対のクローラ11の回転駆動を停止して車椅子用階段昇降機100の走行を止める。
また、側壁距離判断手段として機能する制御部1が、側方測距センサ40が測定した側壁Wまでの距離が40cm(第4閾値D4)よりも遠いと判断した場合には、一対のクローラ11の回転駆動を停止して車椅子用階段昇降機100の走行を止める。
こうすることで、車椅子用階段昇降機100に何らかの異常が発生し、側壁Wに沿う走行ができなくなった場合に、緊急停止することができる。
【0033】
次に、本実施形態の車椅子用階段昇降機100が階段Sをセミ自動モードで走行する際の動作制御の一例として、車椅子用階段昇降機100が階段Sを昇る場合の動作制御について説明する。
ここでは、車椅子用階段昇降機100が階段Sを昇る方向に対し、左側の側壁Wに沿って走行する場合を例に説明する。
なお、車椅子用階段昇降機100をセミ自動モードで階段Sを昇る方向に走行させる際、例えば、介助者はコントローラー60の「昇」スイッチを押下すればよい。
【0034】
[車椅子用階段昇降機と側壁との距離が第1閾値D1と第2閾値D2の間にある場合]
図4に示す「A欄」のように、車椅子用階段昇降機100の走行方向に傾きがなく、側壁Wとの距離が第1閾値D1と第2閾値D2の間にある場合、車椅子用階段昇降機100がそのまま直進するよう、左右一対のクローラ11が回転駆動される。
【0035】
そして、
図4に示す「B欄」のように、側壁Wとの距離が第1閾値D1と第2閾値D2の間にある車椅子用階段昇降機100の走行方向が階段Sの昇降方向に対して傾き、その走行方向右側が遅れて傾いた角度が、例えば3°以上である場合、側壁Wとは反対側のクローラ11の回転速度を相対的に上げる動作制御がなされ、車椅子用階段昇降機100の走行方向を階段Sの昇降方向に合わせるように、昇降機の傾きが修正される。
同様に、
図4に示す「C欄」のように、側壁Wとの距離が第1閾値D1と第2閾値D2の間にある車椅子用階段昇降機100の走行方向が階段Sの昇降方向に対して傾き、その走行方向左側が遅れて傾いた角度が、例えば3°以上である場合、側壁W側のクローラ11の回転速度を相対的に上げる動作制御がなされ、車椅子用階段昇降機100の走行方向を階段Sの昇降方向に合わせるように、昇降機の傾きが修正される。
【0036】
[車椅子用階段昇降機と側壁との距離が第1閾値D1よりも近い場合]
図4に示す「D欄」のように、車椅子用階段昇降機100と側壁Wとの距離が第1閾値D1よりも近い場合、車椅子用階段昇降機100が側壁Wから離間するように、側壁W側のクローラ11の回転速度を相対的に上げる動作制御がなされる。
具体的には、車椅子用階段昇降機100の走行方向に傾きがなく、側壁Wとの距離が第1閾値D1よりも近い場合、側壁W側のクローラ11の回転速度を相対的に上げる動作制御がなされ、車椅子用階段昇降機100が側壁Wから離間するように調整される。
また、側壁Wとの距離が第1閾値D1よりも近くにあって、車椅子用階段昇降機100の走行方向が階段Sの昇降方向に対して傾き、その走行方向左側が遅れて傾いた角度が、例えば3°以上である場合、側壁W側のクローラ11の回転速度を相対的に上げる動作制御がなされ、車椅子用階段昇降機100の走行方向を階段Sの昇降方向に合わせつつ、椅子用階段昇降機100が側壁Wから離間するように(椅子用階段昇降機100が側壁Wに近付かないように)調整される。
【0037】
一方、
図4に示す「E欄」のように、側壁Wとの距離が第1閾値D1よりも近くにあって、車椅子用階段昇降機100の走行方向が階段Sの昇降方向に対して傾き、その走行方向右側が遅れて傾いた角度が、例えば3°以上10°未満である場合、車椅子用階段昇降機100が側壁Wから離間するように、車椅子用階段昇降機100がそのまま直進するよう、左右一対のクローラ11が回転駆動される。
また、
図4に示す「F欄」のように、側壁Wとの距離が第1閾値D1よりも近くにあって、車椅子用階段昇降機100の走行方向が階段Sの昇降方向に対して傾き、その走行方向右側が遅れて傾いた角度が、例えば10°以上である場合、まずは、車椅子用階段昇降機100の走行方向を階段Sの昇降方向に合わせる傾き修正のために、側壁Wとは反対側のクローラ11の回転速度を相対的に上げる動作制御がなされる。
【0038】
[車椅子用階段昇降機と側壁との距離が第2閾値D2よりも遠い場合]
図4に示す「G欄」のように、車椅子用階段昇降機100と側壁Wとの距離が第2閾値D2よりも遠い場合、車椅子用階段昇降機100が側壁Wに近付くように、側壁Wとは反対側のクローラ11の回転速度を相対的に上げる動作制御がなされる。
具体的には、車椅子用階段昇降機100の走行方向に傾きがなく、側壁Wとの距離が第2閾値D2よりも遠い場合、側壁Wとは反対側のクローラ11の回転速度を相対的に上げる動作制御がなされ、車椅子用階段昇降機100が側壁Wに近付くように調整される。
また、側壁Wとの距離が第2閾値D2よりも遠くにあって、車椅子用階段昇降機100の走行方向が階段Sの昇降方向に対して傾き、その走行方向右側が遅れて傾いた角度が、例えば3°以上である場合、側壁Wとは反対側のクローラ11の回転速度を相対的に上げる動作制御がなされ、車椅子用階段昇降機100の走行方向を階段Sの昇降方向に合わせつつ、椅子用階段昇降機100が側壁Wに近付くように(椅子用階段昇降機100が側壁Wから離間しないように)調整される。
【0039】
一方、
図4に示す「H欄」のように、側壁Wとの距離が第2閾値D2よりも遠くにあって、車椅子用階段昇降機100の走行方向が階段Sの昇降方向に対して傾き、その走行方向左側が遅れて傾いた角度が、例えば3°以上10°未満である場合、車椅子用階段昇降機100が側壁Wに近付くように、車椅子用階段昇降機100がそのまま直進するよう、左右一対のクローラ11が回転駆動される。
また、
図4に示す「I欄」のように、側壁Wとの距離が第2閾値D2よりも遠くにあって、車椅子用階段昇降機100の走行方向が階段Sの昇降方向に対して傾き、その走行方向左側が遅れて傾いた角度が、例えば10°以上である場合、まずは、車椅子用階段昇降機100の走行方向を階段Sの昇降方向に合わせる傾き修正のために、側壁W側のクローラ11の回転速度を相対的に上げる動作制御がなされる。
【0040】
[車椅子用階段昇降機が緊急停止する場合]
図4に示す「J欄」のように、車椅子用階段昇降機100と側壁Wとの距離が第3閾値D3よりも近い場合、車椅子用階段昇降機100の走行方向の傾きによらず、椅子用階段昇降機100の走行を止めるために、一対のクローラ11の回転駆動を停止する動作制御がなされる。こうすることで、車椅子用階段昇降機100が側壁Wに衝突してしまうトラブルを防ぐことができる。
また、
図4に示す「K欄」のように、車椅子用階段昇降機100と側壁Wとの距離が第4閾値D4よりも遠い場合、車椅子用階段昇降機100の走行方向の傾きによらず、椅子用階段昇降機100の走行を止めるために、一対のクローラ11の回転駆動を停止する動作制御がなされる。こうすることで、車椅子用階段昇降機100が階段Sの中央側へ寄り過ぎてしまうトラブルを防ぐことができる。
【0041】
このような制御によって、車椅子用階段昇降機100は走行方向の傾きを修正しつつ走行するので、階段Sを昇る方向に車椅子用階段昇降機100を好適に走行させることができる。
なお、クローラ11の従動輪11bが階段Sの最上段を越えると、一対の測距センサ30は蹴込板Pまでの距離を測定できなくなるので、一対の測距センサ30が遠方の壁などを測定するようになった後は、車椅子用階段昇降機100がそのまま直進するよう、左右一対のクローラ11が回転駆動される。
そして、車椅子用階段昇降機100が階段Sを昇り切った後、介助者がコントローラー60の操作スイッチを放すことで、車椅子用階段昇降機100を停止させるようにする。
【0042】
また、側方測距センサ40の誤作動などに起因して、車椅子用階段昇降機100が緊急停止してしまった場合には、手動モードに切り替えて、介助者がコントローラー60を操作して、車椅子用階段昇降機100を階段Sの上や下まで移動させるようにする。
【0043】
上述した動作制御の一例では、車椅子用階段昇降機100が階段Sを昇る方向に対して左側の側壁Wに沿って走行する場合を例に説明したが、右側の側壁Wに沿って走行する場合や、椅子用階段昇降機100が階段Sを降りる方向に走行する場合も、同様の制御によって、車椅子用階段昇降機100を好適に走行させることができる。
【0044】
以上のように、本実施形態の車椅子用階段昇降機100は、一対の測距センサ30による測定結果(階段Sの蹴込板Pまでの距離)や、側方測距センサ40による測定結果(階段Sの側壁Wまでの距離)を利用して、走行方向の傾きなどを修正しつつ、好適に階段を昇降することができる。
【0045】
なお、以上の実施の形態においては、車椅子用階段昇降機100が階段Sの側壁Wに沿って走行する場合について説明したが、階段Sに側壁Wがない場合には、側方測距センサ40を使用せず、一対の測距センサ30による測定結果を利用して、車椅子用階段昇降機100が階段Sの昇降方向に対し遅れて傾いた側のクローラ11の回転速度を相対的に上げる動作制御を実行するようにすればよい。
つまり、制御部1が、側壁距離修正用クローラ制御手段としての処理を実行せずに、傾き修正用クローラ制御手段としての処理を実行することでも、車椅子用階段昇降機100は、好適に階段を昇降することができる。
【0046】
また、車椅子用階段昇降機100の走行方向が階段Sの昇降方向に対して傾いている場合、一対の測距センサ30のうち、一方のセンサ30が階段S下段側の蹴込板Pまでの距離を測定し、他方のセンサ30が階段S上段側の蹴込板Pまでの距離を測定するタイミングがある。
このタイミングでは、一対の測距センサ30がそれぞれ測定した距離の差分が急激に変化するので、このタイミングでの測定データをマスキングする処理を実行することで、車椅子用階段昇降機100の走行を安定させることができる。
【0047】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。