【実施例】
【0050】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0051】
<防錆コーティング用水性樹脂組成物の調製>
[実施例1〜44、46〜55]
滴下漏斗、温度計、加熱装置、及び撹拌装置を備えた反応容器に、表1、2に示す水性樹脂850gと純水150gとを配合して1Lの水性樹脂組成物を調製し、撹拌混合しながら80℃に加熱した。次いで、水性樹脂組成物を撹拌混合しながら、表1、2に示す種類及び量(単位:g)のシランカップリング剤を1g/分の滴下速度で滴下し、3時間加熱して反応させた。次いで、反応後の溶液を40℃以下に放冷した後、表1、2に示す種類及び量(単位:g)の水分散性シリカと、ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製、「ハイテックE−6000S」)22gとを添加して撹拌混合することにより、実施例1〜44、46〜55の防錆コーティング用水性樹脂組成物を得た。
【0052】
[実施例45]
水性樹脂組成物の加熱温度を80℃から50℃に変更した以外は実施例1〜44、46〜55と同様にして、実施例45の防錆コーティング用水性樹脂組成物を得た。
【0053】
[比較例1〜3]
滴下漏斗、温度計、加熱装置、及び撹拌装置を備えた反応容器に、表2に示す水性樹脂850gと純水150gとを配合して1Lの水性樹脂組成物を調製し、撹拌混合しながら80℃に加熱した。次いで、水性樹脂組成物を撹拌混合しながら、表2に示す種類及び量(単位:g)のシランカップリング剤を1g/分の滴下速度で滴下し、3時間加熱して反応させた。次いで、反応後の溶液を40℃以下に放冷した後、表2に示す種類及び量(単位:g)の水分散性シリカと、ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製、「ハイテックE−6000S」)22gとを添加して撹拌混合することにより、比較例1〜3の防錆コーティング用水性樹脂組成物を得た。
【0054】
[比較例4]
滴下漏斗、温度計、加熱装置、及び撹拌装置を備えた反応容器に、表2に示す水性樹脂850gと純水150gとを配合して1Lの水性樹脂組成物を調製し、撹拌混合しながら80℃に昇温し、3時間加熱した。次いで、反応後の溶液を40℃以下に放冷した後、表2に示す種類及び量(単位:g)の水分散性シリカと、ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製、「ハイテックE−6000S」)15gとを添加して撹拌混合することにより、比較例4の防錆コーティング用水性樹脂組成物を得た。
【0055】
[比較例5]
水分散性シリカの代わりに、表2に示す種類及び量(単位:g)のヒュームドシリカを添加した以外は比較例1〜3と同様にして、比較例5の防錆コーティング用水性樹脂組成物を得た。
【0056】
[比較例6]
滴下漏斗、温度計、加熱装置、及び撹拌装置を備えた反応容器に、表2に示す水性樹脂850gと純水150gとを配合して1Lの水性樹脂組成物を調製し、撹拌混合しながら80℃に加熱した。次いで、水性樹脂組成物を撹拌混合しながら、表2に示す種類及び量(単位:g)のシランカップリング剤を1g/分の滴下速度で滴下し、3時間加熱して反応させた。次いで、反応後の溶液を40℃以下に放冷し、ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製、「ハイテックE−6000S」)27gを添加して撹拌混合することにより、比較例6の防錆コーティング用水性樹脂組成物を得た。
【0057】
[比較例7]
水性樹脂組成物の加熱温度を80℃から40℃に変更した以外は比較例1〜3と同様にして、比較例7の防錆コーティング用水性樹脂組成物を得た。
【0058】
[比較例8]
滴下漏斗、温度計、加熱装置、及び撹拌装置を備えた反応容器に、表2に示す水性樹脂850gと純水150gと水分散性シリカ500gとを配合して1Lの水性樹脂組成物を調製し、撹拌混合しながら80℃に加熱した。次いで、水性樹脂組成物を撹拌混合しながら、表2に示す種類及び量(単位:g)のシランカップリング剤を1g/分の滴下速度で滴下し、3時間加熱して反応させた。次いで、反応後の溶液を40℃以下に放冷し、ポリエチレンワックス(三井化学株式会社製、「ケミパールW401」)35gを添加して撹拌混合することにより、比較例8の防錆コーティング用水性樹脂組成物を得た。
【0059】
<評価>
実施例1〜55、比較例1〜8の防錆コーティング用水性樹脂組成物を用いて、以下のように、一次防錆性、上塗り塗装密着性、耐酸性、及び貯蔵安定性を評価した。結果を表1、2に示す。
【0060】
[試験板の作製]
表1、2に示す鋼板を、アルカリ脱脂剤(日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社製、「サーフクリーナー155」)を用いて60℃で1分間スプレー処理することにより脱脂した。脱脂した鋼板は、水洗した後、乾燥させた。次いで、鋼板の表面に、乾燥皮膜の付着量が表1、2に示す値となるように、実施例1〜55、比較例1〜8の防錆コーティング用水性樹脂組成物をバーコーターにより塗布し、鋼板の到達温度が150℃になるまで焼き付け乾燥し、試験板1を得た。
【0061】
また、実施例1〜55、比較例1〜8の防錆コーティング用水性樹脂組成物を40℃の恒温装置に3ヶ月間貯蔵した後、同様にして試験板2を作製した。
【0062】
[一次防錆性]
試験板1の乾燥皮膜表面に35℃の5w/v%食塩水を噴霧した。食塩水の噴霧から120時間後に、白錆が発生している面積の割合(%)を目視にて確認することにより、一次防錆性を評価した。評価は、平面部と、エリクセンで7mmまで押出加工した加工部との両方について行った。
評価基準は下記のとおりである。この評価基準で3点以上であれば合格とした。
−評価基準−
4点:白錆発生なし
3点:白錆が発生している面積が10%未満
2点:白錆が発生している面積が10%以上30%未満
1点:白錆が発生している面積が30%以上
【0063】
[上塗り塗装密着性]
a)上塗り密着試験板の作製
試験板1の乾燥皮膜表面に、市販のアクリルメラミン塗料(日本ペイントインダストリアルコーティングス株式会社製、「オルガネオ」)を乾燥膜厚が20μmとなるようにバーコーターにより塗布し、150℃で20分間乾燥させて上塗り密着試験板を作製した。
【0064】
b)一次密着試験
上塗り密着試験板に対して碁盤目1mmのカットを入れた部分をエクリセンで7mmまで押出加工した。加工部分にテープを貼った後、これを剥がし、上塗り塗装が剥がれている面積の割合(%)を目視にて確認することにより、密着性を評価した。
評価基準は下記のとおりである。この評価基準で3点以上であれば合格とした。
−評価基準−
4点:剥離なし
3点:剥離している面積が10%未満
2点:剥離している面積が10%以上25%未満
1点:剥離している面積が25%以上
【0065】
c)二次密着試験
上塗り密着試験板を沸水中に30分間浸漬した後、一次密着試験と同様の試験及び評価を実施した。
【0066】
[耐酸性]
a)初期液評価試験
試験板1を25℃の5w/v%塩酸水溶液に1時間浸漬し、試験前後の色調変化(ΔE)を測定することにより、耐酸性を評価した。
評価基準は下記のとおりである。この評価基準で3点以上であれば合格とした。
−評価基準−
4点:試験前後の色調変化(ΔE)が1未満
3点:試験前後の色調変化(ΔE)が1以上3未満
2点:試験前後の色調変化(ΔE)が3以上7未満
1点:試験前後の色調変化(ΔE)が7以上
【0067】
b)経時液評価試験
試験板1の代わりに試験板2を用いること以外は初期液評価試験と同様にして、耐酸性を評価した。
【0068】
[貯蔵安定性]
実施例1〜55、比較例1〜8の防錆コーティング用水性樹脂組成物を40℃の恒温装置内に3ヶ月間貯蔵し、ゲル化及び沈殿の状態を目視にて観察することにより、貯蔵安定性を評価した。
評価基準は下記のとおりである。この評価基準で2点であれば合格とした。
−評価基準−
2点:ゲル化及び沈殿が認められない
1点:ゲル化又は沈殿が認められる
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
なお、表1、2における略号は以下のとおりである。
(水性樹脂)
A1:カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(日本ペイント株式会社製、「PC2230」)
A2:カルボキシル基を有するウレタン樹脂(株式会社ADEKA製、「HUX−1025」)
A3:ポリアクリル酸(東亜合成株式会社製、「ジュリマーAC−10L」)
A4:カルボキシル基を有するポリエステル樹脂(東亜合成株式会社製、「アロンメルトPES−1000」)
A5:カルボキシル基を有するウレタン樹脂(三洋化成工業株式会社製、「ユーコートUX−485」)
A6:ポリビニルアルコール樹脂(日本合成化学工業株式会社製、「ゴーセノールGH−20」)
【0072】
(シランカップリング剤)
B1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBM−403」)
B2:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE−403」)
B3:3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBM−402」)
B4:3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE−402」)
B5:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBM−303」)
B6:ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBM−1003」)
B7:3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBM−903」)
【0073】
(シリカ)
C1:Naイオンにより安定化されている水分散性シリカ(株式会社ADEKA製、「アデライトAT−20A」、粒子径:10〜20nm)
C2:Naイオンにより安定化されている水分散性シリカ(日産化学工業株式会社製、「スノーテックス30」、粒子径:10〜15nm)
C3:Alイオンにより安定化されている水分散性シリカ(日産化学工業株式会社製、「スノーテックスC」、粒子径:10〜15nm)
C4:アンモニウムイオンにより安定化されている水分散性シリカ(日産化学工業株式会社製、「スノーテックスN」、粒子径:10〜15nm)
C5:Naイオンにより安定化されている水分散性シリカ(日産化学工業株式会社製、「スノーテックス50」、粒子径:20〜25nm)
C6:Naイオンにより安定化されている水分散性シリカ(日産化学工業株式会社製、「スノーテックス20L」、粒子径:40〜50nm)
C7:Naイオンにより安定化されている水分散性シリカ(日産化学工業株式会社製、「スノーテックスZL」、粒子径:70〜100nm)
C8:ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、「アエロジル200」)
【0074】
(鋼板)
GI:溶融亜鉛めっき鋼板
GL:アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板(Al:55質量%)
GF:アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板(Al:5質量%)
EG:電気亜鉛めっき鋼板
AL:アルミニウム板
SUS:ステンレス鋼板
【0075】
表1、2に示すとおり、水分散性シリカの添加前に水性樹脂組成物を50℃未満の温度に冷却した実施例1〜55は、水分散性シリカの添加後に水性樹脂組成物を加熱した比較例8に比べて、経時後の防錆コーティング用水性樹脂組成物を用いて得られる乾燥皮膜の耐酸性に優れていた。このことから、水分散性シリカの添加前に水性樹脂組成物を50℃未満の温度に冷却することで、防錆コーティング用水性樹脂組成物の経時による性能低下が抑えられることが分かる。
【0076】
なお、カルボキシル基を有する水性樹脂、エポキシ系シランカップリング剤、及び水分散性シリカのいずれかを用いていない比較例1〜6は、一次防錆性、上塗り塗膜密着性、耐酸性、及び貯蔵安定性の少なくとも1つの評価が、実施例1〜55よりも劣っていた。
また、カルボキシル基を有する水性樹脂及びエポキシ系シランカップリング剤を含有する水性樹脂組成物を40℃に加熱した比較例7は、実施例1〜55に比べて、経時後の防錆コーティング用水性樹脂組成物を用いて得られる乾燥皮膜の耐酸性が劣っていた。