特許第6936737号(P6936737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6936737
(24)【登録日】2021年8月31日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20210909BHJP
【FI】
   A23L2/00 U
【請求項の数】5
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-561181(P2017-561181)
(86)(22)【出願日】2017年1月13日
(86)【国際出願番号】JP2017001010
(87)【国際公開番号】WO2017122777
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2019年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-4410(P2016-4410)
(32)【優先日】2016年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-181728(P2016-181728)
(32)【優先日】2016年9月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】397077760
【氏名又は名称】株式会社林原
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】特許業務法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 真弓
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 光
【審査官】 田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−223163(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/136331(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)乃至()の特性を有する分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、0.25質量%以上3質量%以下含有し、炭酸ガスと、麦汁、麦汁エキス又は麦芽エキスと、ホップ又はホップ加工品を含むことを特徴とするビールテイスト飲料;
(A)グルコースを構成糖とする
(B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する
(C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成する、
(D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である
(E)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が1:0.6乃至1:4の範囲にある、
(F)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の60%以上を占める、
(G)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上10%未満である、
(H)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上である、
(I)分岐α−グルカン混合物の重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が1乃至5である、
(J)デキストロース・エクイバレント(DE)が6乃至8である、
(K)平均グルコース重合度が6乃至500の範囲にある、
(L)固形分当たり、グルコース重合度(DP)9以上の糖質の無水物換算での合計量が80質量%以上である、
(M)固形分当たり、グルコース重合度(DP)8以下の糖質の無水物換算での合計量が20質量%以下である
【請求項2】
前記分岐α−グルカン混合物中に含まれる水溶性食物繊維含量が、固形分当たり、75乃至85質量%であることを特徴とする、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
アルコールを含まないことを特徴とする請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
炭酸ガスと、麦汁、麦汁エキス又は麦芽エキスと、ホップ又はホップ加工品を含むビールテイスト飲料の製造方法において、下記(A)乃至(M)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、ビールテイスト飲料の製造原料、中間体、及び/又は最終製品の質量に対し、合計で0.25質量%以上3質量%以下配合する工程を含むことを特徴とする、ビールテイスト飲料の製造方法
(A)グルコースを構成糖とする、
(B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する、
(C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成する、
(D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である、
(E)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が1:0.6乃至1:4の範囲にある、
(F)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の60%以上を占める、
(G)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上10%未満である、
(H)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上である、
(I)分岐α−グルカン混合物の重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が1乃至5である、
(J)デキストロース・エクイバレント(DE)が6乃至8である、
(K)平均グルコース重合度が6乃至500の範囲にある、
(L)固形分当たり、グルコース重合度(DP)9以上の糖質の無水物換算での合計量が80質量%以上である、
(M)固形分当たり、グルコース重合度(DP)8以下の糖質の無水物換算での合計量が20質量%以下である
【請求項5】
前記分岐α−グルカン混合物中に含まれる水溶性食物繊維含量が、固形分当たり、75乃至85質量%であることを特徴とする、請求項4に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡特性が改善されたビールテイスト飲料とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールテイスト飲料は、ビール風味飲料、ノンアルコールビール、或いはノンアルコールビールテイスト飲料などとも呼称される発泡性炭酸飲料であり、ビールグラスなどの容器に注いだときの色調や起泡性はもとより、喉ごし、キレ、及び、風味(香り、香味、甘味など)が、ビールに極めて近似しているにもかかわらず、実質的にアルコールを含んでいないことから、近年、にわかに人気が高まり、需要が急増している飲料である。因みに、斯界において、ビールテイスト飲料とは、アルコールを含まないか、アルコール濃度が1体積%未満であるビール風味の発泡性炭酸飲料と定義され、日本国の酒税法に言う酒類には含まれない。
【0003】
ビールテイスト飲料は、ビールや発泡酒と同様、ビールグラス或いはジョッキなどの容器に注いだとき、液面上部に形成される泡/ヘッドの量、泡立ち/フロッシング、泡持ち/ヘッドリテンション、及び泡のキメの細かさ(以下、特段の断りがない限り、これらを纏めて「泡特性」と言う。)の違いにより、外観や風味に違いが出てくる。ビールテイスト飲料は、前記泡特性の内、泡立ち、泡持ちの点で、アルコール発酵させたビールや発泡酒と比べ遜色があると言われている。
【0004】
ビールテイスト飲料の上記欠点を改善する試みとして、例えば、特許文献1、2には、難消化性デキストリンを用いて、特許文献3には、特定の構造と重合度を有するとされる分岐グルカンを用いて、また特許文献4には、リシン、アルギニン、又はチロシンなどの塩基性アミノ酸を用いて、ビールテイスト飲料の泡特性を改善する方法が開示されている。更に、特許文献5には、アミノ酸、脂質、リポキシゲナーゼ、ポリフェノール、全窒素、又はエグ味成分などの配合量を調整することにより、ビール、発泡酒、ウイスキー、低アルコール発酵飲料、或いはノンアルコール飲料(ビールテイスト飲料)の泡特性を改善する方法が開示されている。特許文献1乃至5に示された方法の内、特許文献1、2で用いられている難消化性デキストリンは、アミノ酸やエグ味成分とは違って、それ自体、殆ど呈味がなく、ビールテイスト飲料の風味などを損なう恐れが少ないことから、ビールテイスト飲料の風味に影響を実質的に及ぼすことなく、泡特性をある程度改善できると考えられる。また、特許文献3には、特定の構造と重合度を有するとされる分岐グルカンがビールテイスト飲料をはじめ、コーラ、サイダーなどの炭酸飲料(炭酸清涼飲料)をも含む発泡性飲料全般の起泡性と気泡安定性を改善する旨、開示されているが、実際に製造され、その泡改善効果が確認されたとされる分岐グルカンは、その製造方法からみて低いながらも甘味を有すると考えられるので、これをビールテイスト飲料に配合すると甘味が付与され、ビールテイスト飲料の風味が変わることが危惧される。更に、特許文献4の方法で用いられているアミノ酸成分は、自体、苦味を有していることから、ビールテイスト飲料の風味に影響を及ぼす恐れがある。また、特許文献5の方法は、泡特性を改善するために用いる成分の種類が多いことから、工程管理が煩雑化し、高コスト化を招くことが懸念される。
【0005】
このような状況下、出願人が知る限り、前記特許文献1乃至5に提案されているビールテイスト飲料を含め、ビールテイスト飲料本来の色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感などを損なうことなく、泡特性を効果的に改善できる手段は未だ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−180269号公報
【特許文献2】特許第5480995号公報
【特許文献3】特開2015−223163号公報
【特許文献4】特開2015−29479号公報
【特許文献5】特開2011−229538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のビールテイスト飲料と比べ、泡特性に優れ、しかも、色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感も良好な、嗜好性に優れたビールテイスト飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、従来のビールテイスト飲料に用いられていた難消化性デキストリンなどの所謂食物繊維成分を、下記(A)乃至(D)に示す特性を有する分岐α−グルカン混合物で置き換えると、ビールテイスト飲料中に含まれる、麦汁、麦汁エキス、又は麦芽エキス由来の蛋白質、ホップ又はホップ加工品由来の苦味成分(イソα−酸など)、及び炭酸ガスとうまく調和し、従来のビールテイスト飲料と比べ、顕著に優れた泡特性を有し、色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感も良好な嗜好性に優れたビールテイスト飲料が得られることを見出すともに、その製造方法をも確立して本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明者等は、ビールテイスト飲料において、下記(A)乃至(D)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、0.25質量%以上含有することを特徴とするビールテイスト飲料とその製造方法を提供することにより、上記課題を解決するものである。
【0010】
(A)グルコースを構成糖とし、
(B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、
(C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成し、かつ
(D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料に求められる、ビール様の色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感を有することは言うに及ばず、従来のビールテイスト飲料と比べ、ビールグラス或いはジョッキなどの容器に注いだときの泡特性、すなわち、泡の量、泡立ち、泡持ちに優れ、かつ泡のキメが細かいという優れた特徴を有する、高品質のビールテイスト飲料である。また、本発明の製造方法によれば、前記ビールテイスト飲料を工業的に容易に、大量かつ安価に安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実験3−1の被験試料A1乃至A4及び被験試料B1乃至B4のビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚(mm))に関する試験結果を示す図である。
図2図2は、実験3−1の被験試料A1乃至A4及び被験試料B1乃至B4のビールテイスト飲料の泡持ち時間(秒)に関する試験結果を示す図である。
図3図3は、実験3−2の被験試料A1、A2、及び被験試料B1、B2のビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚(mm))に関する試験結果を示す図である。
図4図4は、実験3−2の被験試料A1、A2、及び被験試料B1、B2のビールテイスト飲料の泡持ち時間(秒)に関する試験結果を示す図である。
図5図5は、実験3−3の被験試料A1乃至A3、及び被験試料C1乃至C3のビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚(mm))に関する試験結果を示す図である。
図6図6は、実験3−3の被験試料A1乃至A3、及び被験試料C1乃至C3のビールテイスト飲料の泡持ち時間(秒)に関する試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、上記(A)乃至(D)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、0.25質量%以上含有するビールテイスト飲料に係る発明である。
【0014】
本願明細書で言うビールテイスト飲料とは、斯界において一般に認識されている、アルコールが含まれていないか、アルコール含量が1体積%未満、好適には0.5体積%未満、より好適には0.01体積%未満であるビール風味の発泡性炭酸飲料を意味する。アルコール含量は、前記濃度範囲で、利用者の嗜好に合うように適宜設定できるが、殊に、アルコール無含有のビールテイスト飲料は、体質的にアルコールに弱い人が飲んでも体に優しい飲料であることから、とりわけ有用である。
【0015】
より詳細には、本発明のビールテイスト飲料は、下記(A)乃至(D)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、0.25質量%以上含有することを特徴とするビールテイスト飲料である。
(A)グルコースを構成糖とし、
(B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、
(C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成し、かつ
(D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である。
【0016】
本発明で用いる分岐α−グルカン混合物とは、例えば、本願と同じ出願人が、国際公開第WO2008/136331号パンフレットなどにおいて開示した分岐α−グルカン混合物(以下、単に「分岐α−グルカン混合物」と言う。)を意味する。当該分岐α−グルカン混合物は、澱粉を原料とし、これに種々の酵素を作用させて得られ、通常、様々な分岐構造とグルコース重合度を有する複数種の分岐α−グルカンを主体とする混合物の形態にある。当該分岐α−グルカン混合物の製造方法としては、前記国際公開第WO2008/136331号パンフレットに開示されているα−グルコシル転移酵素を澱粉質に作用させるか、前記α−グルコシル転移酵素に加え、マルトテトラオース生成アミラーゼ(EC 3.2.1.60)などのアミラーゼ、プルラナーゼ(EC 3.2.1.41)、イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68)などの澱粉枝切り酵素、更には、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19)、澱粉枝作り酵素(EC 2.4.1.18)、或いは特開2014−54221号公報などに開示されている重合度2以上のα−1,4グルカンを澱粉質内部のグルコース残基にα−1,6転移する活性を有する酵素などの1又は複数を併用して澱粉質に作用させる方法を例示できる。本発明を実施するに際しては、前記国際公開第WO2008/136331号パンフレットに開示された分岐α−グルカン混合物、中でも、バチルス・サーキュランス PP710(FERM BP−10771)由来及び/又はアルスロバクター・グロビホルミス PP349(FERM BP−10770)由来のα−グルコシル転移酵素単独、又は、当該α−グルコシル転移酵素とプルラナーゼ(EC 3.2.1.41)、イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68)などの澱粉枝切酵素及び/又はシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19(CGTase)とを組み合わせて、澱粉原料に作用させて得られる分岐α−グルカン混合物であって、その水溶性食物繊維含量が、無水物換算で、固形分当たり、約75質量%以上、好適には約80質量%以上にまで達している分岐α−グルカン混合物が、とりわけ好適に用いられる。また、前記バチルス・サーキュランス PP710(FERM BP−10771)の培養物には、α−グルコシル転移酵素とアミラーゼとが含まれており、斯かる酵素混合物は、これをマルトース及び/又はグルコース重合度が3以上のα−1,4グルカンに作用させると、前記水溶性食物繊維含量の高い分岐α−グルカン混合物を安定して生成するという特徴を有している。ところで、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物は、通常、様々な分岐構造並びにグルコース重合度(分子量)を有する多数の分岐α−グルカンの混合物の形態にあり、現行の技術では、当該混合物を構成する個々の分岐α−グルカン分子にまで単離して、定量したり、その構造、すなわち、その構成単位であるグルコース残基の結合様式及び結合順序を決定したりすることは不可能乃至は極めて困難であるが、当該分岐α−グルカン混合物は、斯界で一般に用いられている種々の物理的手法、化学的手法、又は酵素的手法により、混合物全体として特徴付けることができる。
【0017】
すなわち、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物は、混合物全体として、上記(A)乃至(D)の特性によって特徴付けられる。すなわち、本分岐α−グルカン混合物は、グルコースを構成糖とするグルカン[特性(A)]であり、α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有している[特性(B)]。なお、特性(B)で言う「非還元末端グルコース残基」とは、α−1,4結合を介して連結したグルカン鎖の内、還元性を示さない末端に位置するグルコース残基を意味し、「α−1,4結合以外の結合」とは、文字通り「α−1,4結合以外の結合」であり、α−1,2結合、α−1,3結合、及びα−1,6結合などを意味する。
【0018】
さらに、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物は、イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり、25質量%以上50質量%以下生成するという特性[特性(C)]を備えるとともに、後述の高速液体クロマトグラフ法により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上であるという特性[特性(D)]を備えている。
【0019】
このように、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物は、前記特性(A)乃至(D)により特徴付けられるグルカン混合物である。それら特性の内、特性(C)及び(D)について補足すれば以下に述べるとおりである。
【0020】
本発明で用いる分岐α−グルカン混合物を特徴づける前記特性(C)に関し、そこで言うイソマルトデキストラナーゼ消化とは、当該分岐α−グルカン混合物にイソマルトデキストラナーゼを作用させ、加水分解することを意味する。イソマルトデキストラナーゼは、酵素番号(EC 3.2.1.94)が付与されている酵素であり、α−グルカンにおけるイソマルトース構造の還元末端側に隣接するα−1,2、α−1,3、α−1,4、及びα−1,6結合のいずれの結合様式であっても加水分解する特性を有する酵素である。イソマルトデキストラナーゼ消化には、好適には、アルスロバクター・グロビホルミス由来のイソマルトデキストラナーゼ(例えば、サワイ(Sawai)ら、『アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry)』、第52巻、第2号、495乃至501頁(1988年)参照)が用いられる。
【0021】
前記イソマルトデキストラナーゼ消化により生成するイソマルトースの、消化物の固形分当たりの割合は、分岐α−グルカンの構造において、イソマルトデキストラナーゼで加水分解され得るイソマルトース構造の割合を示すもので、分岐α−グルカン混合物を、混合物全体として、酵素的手法により特徴付ける指標の一つとして用いることができる。本発明で用いる分岐α−グルカン混合物の内、イソマルトデキストラナーゼ消化により生成するイソマルトースの割合が、消化物の固形分当たり、通常、25乃至50質量%、好ましくは30乃至50質量%、より好ましくは35乃至45質量%である分岐α−グルカン混合物は、そのメカニズムは定かでないものの、ビールテイスト飲料の泡特性改善作用が高く、本発明を実施する上でより好適に用いられる。
【0022】
次に、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物を特徴づける前記特性(D)に規定される水溶性食物繊維含量は、例えば、平成8年5月厚生省告示第146号の栄養表示基準、『栄養成分等の分析方法等(栄養表示基準別表第1の第3欄に掲げる方法)』における第8項、「食物繊維」に記載されている高速液体クロマトグラフ法(以下、本願明細書においては、「酵素−HPLC法」と言う。)により求めることができる。その概略は以下に述べるとおりである。すなわち、試料を熱安定α−アミラーゼ、プロテアーゼ、及びアミログルコシダーゼ(グルコアミラーゼ)による一連の酵素処理により加水分解処理し、イオン交換樹脂により、酵素処理液から、蛋白質、有機酸、無機塩類を除去することにより、ゲル濾過クロマトグラフィー用の試料溶液とする。次いで、得られた試料溶液をゲル濾過クロマトグラフィーに供し、クロマトグラムにおける、未消化グルカンとグルコースのピーク面積をそれぞれ求め、それらピーク面積と、別途、常法により、グルコース・オキシダーゼ法により求めておいた試料溶液中のグルコース量に基づいて、試料溶液中の水溶性食物繊維含量を算出する。なお、本願明細書を通じて「水溶性食物繊維含量」とは、特に断りがない限り、前記「酵素−HPLC法」で求めた水溶性食物繊維含量を意味する。
【0023】
本発明で用いる分岐α−グルカン混合物の内、前記「酵素−HPLC法」により求めた水溶性食物繊維含量が、通常、40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更には80質量%以上である分岐α−グルカン混合物は、そのメカニズムは定かでないものの、ビールテイスト飲料の泡特性改善作用が高いことから、本発明を実施する上でより好適に用いられる。なお、水溶性食物繊維含量の上限に制限は特にないけれども、経済性の観点から、通常、上限は水溶性食物繊維含量が100質量%未満、好適には90質量%未満、更に好適には85質量%程度に留めるのがよく、その内、水溶性食物繊維含量が70乃至90質量%、好適には75乃至85質量%である分岐α−グルカン混合物が本発明を実施する上でより好適に用いられる。
【0024】
更に、本発明でより好適に用いられる分岐α−グルカン混合物として、前記特性(A)乃至(D)に加え、下記特性(E)及び(F)を有する分岐α−グルカン混合物が挙げられる。
(E)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が1:0.6乃至1:4の範囲にある;及び
(F)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の55%以上を占める。
前記特性(E)及び(F)は、分岐α−グルカン混合物をメチル化分析に供することにより確認することができる。
【0025】
前記メチル化分析とは、周知のとおり、多糖又はオリゴ糖において、それらを構成する単糖の結合様式を決定する方法として、斯界において一般的に汎用されている方法である[シューカヌ(Ciucanu)ら、『カーボハイドレート・リサーチ(Carbohydrate Research)』、第131巻、第2号、209乃至217頁(1984年)参照]。当該メチル化分析をグルカンにおけるグルコースの結合様式の分析に適用する場合、まず、グルカンを構成するグルコース残基における全ての遊離の水酸基をメチル化し、次いで、完全メチル化したグルカンを加水分解する。その後、加水分解により得られたメチル化グルコースを還元してアノマー型を消去したメチル化グルシトールとし、更に、このメチル化グルシトールにおける遊離の水酸基をアセチル化することにより、部分メチル化グルシトールアセテート(なお、「部分メチル化グルシトールアセテート」におけるアセチル化された部位と「グルシトールアセテート」の表記を省略して、「部分メチル化物」と略記する場合がある。)を得る。得られる部分メチル化物をガスクロマトグラフィーで分析することにより、グルカンにおいて結合様式がそれぞれ異なるグルコース残基に由来する各種部分メチル化物は、ガスクロマトグラムにおける全ての部分メチル化物のピーク面積に占めるピーク面積の百分率(%)で表すことができる。そして、このピーク面積%から当該グルカンにおける結合様式の異なるグルコース残基の存在比、すなわち、各グルコシド結合の存在比率を決定できる。部分メチル化物についての「比」は、メチル化分析のガスクロマトグラムにおけるピーク面積の「比」を意味し、部分メチル化物についての「%」はメチル化分析のガスクロマトグラムにおける「面積%」を意味する。
【0026】
メチル化分析により得られる、α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比率である特性(E)、及び、α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の全グルコース残基に対する割合である特性(F)は、分岐α−グルカン混合物を、混合物全体として、化学的手法により構造を特徴付ける指標の一つとして用いることができる。
【0027】
前記特性(E)及び(F)における「α−1,4結合したグルコース残基」とは、1位及び4位の炭素原子に結合した水酸基のみを介して他のグルコース残基に結合したグルコース残基を意味し、メチル化分析において、2,3,6−トリメチル−1,4,5−トリアセチルグルシトールとして検出される。また、前記特性(E)及び(F)における「α−1,6結合したグルコース残基」とは、1位及び6位の炭素原子に結合した水酸基のみを介して他のグルコース残基に結合したグルコース残基を意味し、メチル化分析において、2,3,4−トリメチル−1,5,6−トリアセチルグルシトールとして検出される。
【0028】
前記特性(E)が規定する「α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が1:0.6乃至1:4の範囲にある」という要件は、分岐α−グルカン混合物を、メチル化分析に供したとき、2,3,6−トリメチル−1,4,5−トリアセチルグルシトールと2,3,4−トリメチル−1,5,6−トリアセチルグルシトールとの比が1:0.6乃至1:4の範囲にあることを意味している。前記特性(E)を充足する分岐α−グルカン混合物は本発明において好適に用いられるけれども、その内、前記比が、1:1乃至1:3、好適には1:2乃至1:3の範囲にある分岐α−グルカン混合物は、本発明を実施する上で、より好適に用いられる。また、前記特性(F)が規定する「α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の60%以上を占める」という要件は、分岐α−グルカン混合物を、メチル化分析に供したとき、2,3,6−トリメチル−1,4,5−トリアセチルグルシトールと2,3,4−トリメチル−1,5,6−トリアセチルグルシトールとの合計が部分メチル化グルシトールアセテートの60%以上を占めることを意味している。前記特性(F)を充足する分岐α−グルカン混合物は本発明において好適に用いられるけれども、その内、前記比率が、通常、60乃至90%、好適には60乃至80%、より好適には65乃至75%の範囲にある分岐α−グルカン混合物は、本発明を実施する上で、より好適に用いられる。
【0029】
なお、通常、澱粉は、1位と6位でのみ結合したグルコース残基を有しておらず、かつα−1,4結合したグルコース残基が全グルコース残基中の大半を占めていることから、前記特性(E)及び(F)の要件は、本発明において好適に用いられる分岐α−グルカン混合物が澱粉とは全く異なる構造を有することを如実に示すものである。
【0030】
更に、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物のより好適な一例として、前記特性(A)乃至(F)に加え、更に下記特性(G)及び(H)を有する分岐α−グルカン混合物が挙げられる。これら特性(G)及び(H)もメチル化分析によって確認することができる。
【0031】
(G)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上10%未満である;及び
(H)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上である。
【0032】
前記特性(G)が規定する、「α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上10%未満である」とは、本発明で好適に用いられる分岐α−グルカン混合物においては、C−1位の水酸基とC−3位の水酸基のみを介して他のグルコースと結合したグルコース残基が、グルカンを構成する全グルコース残基の0.5%以上10%未満存在することを意味する。前記特性(G)を充足する分岐α−グルカン混合物は本発明において好適に用いられるけれども、中でも、α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の1乃至3%の範囲にある分岐α−グルカン混合物は、本発明を実施する上でより好適に用いられる。
【0033】
さらに、前記特性(H)が規定する、「α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上である」とは、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物においては、C−1位の水酸基以外に、C−3位の水酸基とC−6位の水酸基を介して他のグルコースと結合したグルコース残基が、グルカンを構成する全グルコース残基の0.5%以上存在することを意味する。前記特性(H)を充足する分岐α−グルカン混合物は本発明において好適に用いられるけれども、中でも、α−1,3,6結合したグルコース残基が、グルカンを構成する全グルコース残基の1乃至10%である分岐α−グルカン、好適には、1乃至7%の範囲にある分岐α−グルカンは、本発明を実施する上でより好適に用いられる。
【0034】
なお、α−1,3結合したグルコース残基は、メチル化分析において検出される、「2,4,6−トリメチル−1,3,5−トリアセチルグルシトール」に基づいて解析でき、上記特性(G)が規定する「α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上10%未満である」ことは、分岐α−グルカン混合物をメチル化分析に供したとき、2,4,6−トリメチル−1,3,5−トリアセチルグルシトールが全部分メチル化グルシトールアセテートの0.5%以上10%未満存在することによって確認することができる。また、α−1,3,6結合したグルコース残基は、メチル化分析において検出される、「2,4−ジメチル−1,3,5,6−テトラアセチルグルシトール」に基づいて解析でき、上記特性(H)が規定する「α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上である」ことは、分岐α−グルカン混合物をメチル化分析に供したとき、2,4−ジメチル−1,3,5,6−テトラアセチルグルシトールが全部分メチル化グルシトールアセテートの0.5%以上10%未満存在することによって確認することができる。
【0035】
前記分岐α−グルカン混合物のメチル化分析結果は、分岐α−グルカン混合物が、α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造、例えばα−1,3結合、α−1,6結合、又はα−1,3,6結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を多数有するグルカン混合物であることを示している。また、前記分岐α−グルカン混合物の他の特性として、当該分岐α−グルカン混合物は、頻度は少ないながらも、α−1,4,6結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有している。前記分岐構造を有する分岐α−グルカン混合物は、生体内酵素による分解を受け難いことが、既述の国際公開第WO2008/136331号パンフレットに開示されている。
【0036】
本発明で更に好適に用いられる分岐α−グルカン混合物として、前記特性(A)乃至(H)に加え、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn値)が20以下、及び平均グルコース重合度が6乃至500の範囲にあるものを例示できる。
【0037】
本発明で用いられる分岐α−グルカン混合物の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー等を用いて求めることができ、本願明細書で言う平均グルコース重合度は、重量平均分子量(Mw)から18を減じ、162で除して求めることができる。また、分岐α−グルカン混合物のMw/Mn値は、1に近いものほど分岐α−グルカン混合物を構成する分岐α−グルカン分子のグルコース重合度のばらつきが小さいことを意味し、通常、20以下、好ましくは15以下、より好ましくは1乃至10、更に好ましくは1乃至5、更により好ましくは1乃至3、更に好ましくは1乃至1.5のものは、分岐α−グルカン混合物の均質性の観点から、本発明を実施する上でより好適に用いられる。
【0038】
また、本発明で用いられる分岐α−グルカン混合物の平均グルコース重合度は、通常、6乃至500の範囲にあり、その内、平均グルコース重合度が9乃至500、好ましくは15乃至400、より好ましくは20乃至300、更に好ましくは20乃至100、より好ましくは20乃至60、更により好ましくは20乃至40の範囲にあるものは、前記Mw/Mn値の限定と同様、分岐α−グルカン混合物の均質性の観点から、本発明を実施する上でより好適に用いられる。
【0039】
更に、本発明で用いられる分岐α−グルカン混合物のデキストロース・エクイバレント(DE)は、通常、10以下、好ましくは9以下、より好ましくは6乃至8、更に好ましくは6.5乃至7.5である。
【0040】
以上に述べた本発明で用いられる分岐α−グルカン混合物の中でも、前記特性(A)乃至(H)を有するとともに、Mw/Mn値、平均グルコース重合度、及びDEのいずれもが下記数値範囲内にあるものは、本発明を実施する上で最も好適に用いられる。詳細には、前記特性(A)乃至(H)を有し、かつ、Mw/Mn値が1乃至10、平均グルコース重合度が20乃至100、及びDEが9以下であるもの;好適には、Mw/Mn値が1乃至5、平均グルコース重合度が20乃至60、及びDEが6乃至8であるもの;より好適には、Mw/Mn値が1乃至3、平均グルコース重合度が20乃至40、及びDEが6.5乃至7.5であるものは、本発明を実施する上で最も好適に用いられる。
【0041】
本発明で用いる分岐α−グルカン混合物は、泡特性改善作用に程度の差こそあれ、前記特性(A)乃至(D)を有するものである限り、如何なる方法で製造されたものであっても良いが、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物を工業的規模で製造するに好適な製造方法としては、例えば、既述の国際公開第WO2008/136331号パンフレットに開示されているα−グルコシル転移酵素を澱粉質に作用させて得られる分岐α−グルカン混合物が挙げられる。また、前記α−グルコシル転移酵素に加え、液化型α−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)や糖化型α−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)、マルトテトラオース生成アミラーゼ(EC 3.2.1.60)、マルトヘキサオース生成アミラーゼ(EC 3.2.1.98)などのアミラーゼや、イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68)やプルラナーゼ(EC 3.2.1.41)などの澱粉枝切り酵素を併用すれば、本分岐α−グルカン混合物を低分子化することができるので、分子量、グルコース重合度などを所望の範囲に調整することができる。さらには、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19)や、澱粉枝作り酵素(EC 2.4.1.18)、特開2014−054221号公報に開示されている重合度2以上のα−1,4グルカンを澱粉質の内部のグルコース残基にα−1,6転移する活性を有する酵素を併用することにより、本分岐α−グルカン混合物を構成する分岐α−グルカンをさらに高度に分岐させ、本分岐α−グルカン混合物の水溶性食物繊維含量を高めることもできる。斯くして得られる分岐α−グルカン混合物に、さらにグルコアミラーゼ等の糖質加水分解酵素を作用させ、さらに水溶性食物繊維含量を高めた分岐α−グルカン混合物とすることも随意であり、グリコシルトレハロース生成酵素(EC 5.4.99.15)を作用させることにより分岐α−グルカン混合物を構成する分岐α−グルカンの還元末端にトレハロース構造を導入したり、水素添加により分岐α−グルカンの還元末端を還元するなどして分岐α−グルカン混合物全体の還元力を低下させてもよく、また、サイズ排除クロマトグラフィー等による分画を行なうことにより、分岐α−グルカン混合物の重量平均分子量や分子量分布を適宜調整することも随意である。
【0042】
更に、本発明を実施する上でより好適な分岐α−グルカン混合物としては、固形分当たりのグルコース重合度(DP)9以上の糖質の無水物換算での合計量が、80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90乃至95質量%である分岐α−グルカン混合物、換言すれば、固形分当たり、DP8以下の糖質の無水物換算での合計量が、20質量%以下、好ましくは14質量%以下、より好ましくは5乃至13質量%である分岐α−グルカン混合物は、分岐α−グルカン混合物の均質性の点で優れており、本発明を実施する上でより好適に用いられる。また、前記分岐α−グルカン混合物の内、DP9以上の糖質の無水物換算での合計量が前記範囲にあり、かつ、DP35を超える糖質の無水物換算での合計量が、50質量%以下、好適には40質量%以下、より好適には25乃至35質量%の範囲にあるものは、ビールテイスト飲料の泡特性改善作用に優れる利点を有しているので、本発明を実施する上でより好適に用いられる。また、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物としては、取り扱い性の観点から、通常、水分含量が約10質量%以下、好ましくは5質量%以下である粉末状の分岐α−グルカン混合物が保存時の安定性に優れていることから、より好適に用いることができる。
【0043】
本発明で用いる分岐α−グルカン混合物は、以上述べたとおりのものであるが、株式会社林原から商品名『ファイバリクサ』として販売されている分岐α−グルカン混合物は、本発明を実施する上で最も好適に用いられる。
【0044】
本発明のビールテイスト飲料に配合される分岐α−グルカン混合物の量について述べると、ビールテイスト飲料に対し、分岐α−グルカン混合物を無水物換算で、0.25質量%以上、好適には、0.25乃至10質量%、より好適には0.25乃至5質量%、更に好適には0.5乃至3質量%、より更に好適には、0.5乃至2質量%配合する。なお、0.25質量%未満では、分岐α−グルカン混合物による所期の効果が十分発揮できなくなるので好ましくない。また、分岐α−グルカン混合物の配合量の上限に関し、ビールテイスト飲料の泡特性の内、泡持ち改善効果の点では上限に特段の制限はなく、分岐α−グルカン混合物の配合量の上限は、目指す泡特性改善効果のレベルに応じて適宜設定すればよい。しかしながら、3質量%超の場合、配合量依存的に、ビールテイスト飲料をビールグラスなどの容器に注いだとき、比較的大きな泡が少なからず生ずる傾向にあり、全体的にキメの細かい泡を望む場合には、分岐α−グルカン混合物の上限は3質量%とするのが望ましい。また、分岐α−グルカン混合物の配合量が10質量%を超える場合には、配合量依存的にビールテイスト飲料の色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感などの特性に好ましくない影響を及ぼす恐れがあることから、分岐α−グルカン混合物の上限は10質量%とするのが望ましい。
【0045】
本発明が対象とするビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料における泡特性が、分岐α−グルカン混合物を配合することにより、分岐α−グルカン混合物不含有のものと比べ効果的に改善されていることを特徴としている。ビールテイスト飲料における泡の生成には、通常、その製造原料として用いられる、炭酸ガスと、麦汁、麦汁エキス又は麦芽エキス由来の蛋白質と、ホップ又はホップ加工品由来の苦味成分(イソ−α酸など)とが密接に関与していることが知られており、これらの成分系に分岐α−グルカンを共存させると、ビールテイスト飲料の泡特性を顕著かつ効果的に改善することができる。本発明者等が見出した、分岐α−グルカン混合物によるビールテイスト飲料の泡特性改善作用は、ビールテイスト飲料以外の、炭酸ガスと、麦汁、麦汁エキス、又は麦芽エキス由来の蛋白質と、ホップ又はホップ加工品由来の苦味成分(イソ−α酸など)とを含む、ビール、発泡酒、及び第3のビールなどのビール類飲料全般においても発揮される。しかし、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物は、これをビールテイスト飲料の泡特性改善を発揮する配合量で、前記ビール類飲料以外の他の、所謂、炭酸飲料に配合しても、起泡、泡持ち改善作用は実質的に発揮されない。
【0046】
このように、本発明は、ビールテイスト飲料における泡特性を分岐α−グルカン混合物により効果的に改善する発明であり、この作用、目的を逸脱しない限り、本発明のビールテイスト飲料には、当該分岐α−グルカン混合物以外の他の成分を適宜配合することができる。
【0047】
<分岐α−グルカン混合物以外の他の成分について>
本発明のビールテイスト飲料に含まれる分岐α−グルカン混合物以外の他の主成分としては、麦汁、麦汁エキス、又は麦芽エキスを挙げることができる。
【0048】
前記麦汁、麦汁エキスとは、斯界においてビール、発泡酒、又はビールテイスト飲料などの製造において用いられる麦汁、麦汁エキス全般を意味し、本発明においては、公知の方法により麦芽を糖化させて得られるいずれのものも用いることができる。具体的には、麦汁、麦汁エキスは、室温乃至室温近傍の温度で麦類に水を加えて発芽させ、乾燥させたもの(麦芽又はモルトとも言う)に、室温以上の温水を加え、麦芽に含まれる酵素の作用により澱粉質を加水分解し、圧搾又は抽出することにより得ることができる。市販されている麦汁、麦汁エキスも適宜用いることができる。麦汁、麦汁エキスの形態としては、液状又は粉末状のものを例示できる。本発明においては非発酵のものが好適に用いられる。
【0049】
また、前記麦芽エキスとは、斯界においてビール、発泡酒、又はビールテイスト飲料などの製造において用いられる麦芽エキス(モルトエキス)全般を意味し、本発明においてはそのいずれも用いることができる。麦芽エキスは、通常、麦芽又はこれを焙煎したものを0.5乃至100倍量、好ましくは5乃至20倍量の水に、4℃以上、好適には10℃以上、より好適には15乃至100℃の温度で30分間乃至15時間程度、浸漬し、必要に応じて攪拌することにより抽出し、次いで抽出物を糖化することにより得ることができる。
【0050】
一般的に、ビールテイスト飲料における麦汁、麦汁エキス及び/又は麦芽エキスの含量は、ビールテイスト飲料の泡特性はもとより、色調、風味、ボディ感、キレ、及びのど越し感に深く関与している。また、ビールテイスト飲料のマイルドな麦芽臭と後味のバランスの観点から、ビールテイスト飲料質量に対し、麦汁、麦汁エキス、及び/又は麦芽エキスをその固形物換算で、通常、通常、0.01乃至7質量%、好ましくは0.03乃至5質量%、より好ましくは0.05乃至4質量%、更に好ましくは0.1乃至3質量%、より更に好ましくは0.1乃至2質量%、更に好ましくは0.1乃至1質量%の範囲から選択して用いられる。
【0051】
本発明が対象とするビールテイスト飲料における他の主要成分としてホップ又はホップ加工品を挙げることができる。ホップ加工品とは、ビール類製造用のホップ加工品全般を意味し、例えば、予め粉砕してペレット状に加工したホップペレット、斯かる加工に際し予めルプリン粒を篩分けして得られるルプリンを多く含んだホップペレット、また、ルプリンの苦味質や精油などを抽出して得たホップエキスなどを例示でき、これらの1種又は複数種類を適宜組み合わせて用いることができる。本発明のビールテイスト飲料を製造するに際し、ホップの添加方法としては、例えば、ケトルホッピング、レイトホッピング、ドライホッピング、或いはそれらに準ずる方法を例示できるが、これらの方法に何ら限定されるものではない。ここで、上記具体例として示した3つの添加方法は、本来的には、麦汁に酵母菌を添加してアルコール発酵させる場合に適用されるホップの添加方法であるけれども、本発明のビールテイスト飲料を製造するに際し、ケトルホッピングを採用する場合、当該添加方法は、本発明のビールテイスト飲料の製造工程中、及び/又は、麦汁を昇温する工程又は煮沸する工程の初期にホップを投入すればよい。また、レイトホッピングを採用する場合、本発明のビールテイスト飲料の製造工程中、及び/又は麦汁の煮沸工程が終了する間際にホップを投入すればよい。更に、ドライホッピングを採用する場合、前記ケトルホッピング及びレイトホッピングによりホップを添加する時期以外のタイミングでホップを投入すればよい。
【0052】
より詳細には、前記ホップ加工品の具体例として、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、ホップエキス、及び異性化ホップなどを例示できる。本発明を実施するに際し、前記ホップ加工品の1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、複数種類のホップ又はホップ加工品を用いる場合、前記ホップ添加方法の1種又は2種以上を適宜組み合わせて、ホップ又はホップ加工品の一部又は全部を一度に添加するか、小分けして複数回に分けて添加することも随意である。なお、ホップ又はホップ加工品は、ビールテイスト飲料はもとより、ビールや発泡酒の泡特性に関与する成分であるイソ−α酸の元となるα酸を含んでいる。α酸は加熱されると、シス−イソフムロン、トランス−イソフムロンなどのイソ−α酸となることから、本発明のビールテイスト飲料の製造方法が加熱工程を有する場合には、ホップ又はホップ加工品をイソ−α酸に代えて用いることができる。更に、本発明においては、α酸を化学的に変換して得られるρイソ−α酸、テトラヒドロイソ−α酸、及びヘキサヒドロイソ−α酸など(以下、「イソ−α酸誘導体」と言う。)もイソ−α酸と同様に用いることができる。
【0053】
ホップ、ホップ加工品、イソ−α酸、及びイソ−α酸誘導体の添加量はそれらの合計で、通常、イソ−α酸換算(固形物として)で、本発明のビールテイスト飲料に対し、通常、0.0001質量%以上、好適には、0.001質量%以上、より好適には0.01質量%以上、更に好適には、0.01乃至2重量%、より更に好適には0.01乃至1質量%の範囲から選択される。イソ−α酸の量は、イソ−α酸の添加量を加減するか、ビールテイスト飲料の製造工程において、ホップ又はホップ加工品添加後の煮沸時間を適宜加減することにより調節でき、それにより本発明のビールテイスト飲料の苦味(苦味価)と風味を調節することもできる。
【0054】
本発明で用いる炭酸ガスとは、ビール類に適用可能な炭酸ガスを意味し、本発明のビールテイスト飲料には所定圧の炭酸ガスが圧入されている。本発明のビールテイスト飲料は、通常、ガラス容器、アルミ缶、ペットボトルなどの耐圧容器に収容し、ユーザに提供される。前記耐圧容器への炭酸ガスの圧入方法は、公知の方法により実施できる。本発明のビールテイスト飲料における炭酸ガス含有量は、炭酸ガスボリュームの値(0℃、1気圧において、ビールテイスト飲料中に溶存している炭酸ガスの体積をビールテイスト飲料の体積で割った値を意味する。)が、通常、1.5乃至5.5、好ましくは2.0乃至4.0、より好ましくは2.0乃至3.6、更に好ましくは2.5乃至2.8の範囲とする。ここで、炭酸ガスボリュームの値が1.5未満では、ビールテイスト飲料に求められる爽快感が乏しくなり、風味も損なわれる。また、炭酸ガスボリュームの値が3.6を超える辺りから、苦味や刺激性が次第に強くなる一方、爽快感は乏しくなり、風味も損なわれるようになる。したがって、炭酸ガス含有量は、ビールテイスト飲料に及ぼす苦味、刺激性、爽快感、風味などのバランスを勘案しながら前記数値範囲で適宜設定すればよい。
【0055】
また、本発明のビールテイスト飲料のpHは、炭酸ガス含有量が前記所定の数値範囲にある状態において、通常、3.5乃至5.0、好ましくは3.7乃至5.0、より好ましくは3.8乃至4.2である。本発明のビールテイスト飲料のpHを前記数値範囲にすると、所望のビール様の風味を有するビールテイスト飲料とすることができる。なお、pHが3.5未満の場合、所望のビール様の風味が損なわれる恐れがあるとともに、酸味が過剰となり、風味を欠くビールテイスト飲料となるので好ましくない。また、pHが5.0を超えると、風味が不十分なビールテイスト飲料となるので好ましくない。
【0056】
更に、本発明のビールテイスト飲料には、必要に応じて、以下に示す<ア>乃至<オ>の成分から選ばれる1種又は2種以上の適量を適宜組み合わせて配合することも随意である。
【0057】
<ア.糖質>
グルコース、フラクトース、スクロース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、マルトテトラオース、マルトペンタオースなどの還元性の単糖類やオリゴ糖;ソルビトール、マルチトール、イソマルチトール、α,α−トレハロース、α,β−トレハロース、β,β−トレハロース、ラクチトール、パニトール、ネオトレハロース、蔗糖、ラフィノース、エルロース、ラクトスクロース、α−グリコシルトレハロース、α−グリコシル−α−グリコシド、α−グリコシルスクロースなどの非還元性の単糖類やオリゴ糖;及び砂糖結合水飴、マルトース高含有シラップ、トレハロース高含有シラップ、マルトテトラオース高含有シラップ、パノース高含有シラップ、ラクトスクロース高含有シラップ、マルチトール高含有シラップなどの混合糖質含有シラップ。
【0058】
<イ.起泡剤>
難消化性デキストリンや大豆食物繊維などの食物繊維、更には大豆ペプチド、大豆サポニン、アルギン酸エステル、キラヤサポニンなど。
【0059】
<ウ.酸味料>
乳酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸などの有機酸及びそれらの塩。
【0060】
<エ.苦味料>
マグネシウム塩、カルシウム塩、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、ナリンジン、クワシン、テトライソα酸、テトライソβ酸の酸化物、キニーネ、モモルデシン、クエルシトリン、テオブロミン、カフェイン等の苦味付与成分;ゴーヤ、センブリ茶、苦丁茶、ニガヨモギ抽出物、ゲンチアナ抽出物、キナ抽出物などの植物又は植物抽出物。
【0061】
<オ.その他の成分>
アミノ酸類、ビタミン類、色素(天然及び人工着色料を含む)、シクロデキストリン、環状四糖、増粘多糖類(プルラン、セルロース、カードランなど)、香料(ハーブ抽出物を含む)、高甘味度甘味料(スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ステビオサイド、ステビア抽出物など)、海洋深層水など。
【0062】
<本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法について>
本発明のビールテイスト飲料の製造方法は、当該製造方法により得られる最終製品としてのビールテイスト飲料が完成するまでの工程において、所定量の分岐α−グルカン混合物を溶解含有させ得る限り、斯界において許容されるビールテイスト飲料の製造方法のいずれも採用することができる。すなわち、本発明のビールテイスト飲料の製造方法は、斯界において公知のビールテイスト飲料の製造工程の1又は2以上の複数の工程において、所定量の分岐α−グルカン混合物を含有させることができる製造方法であればいずれの方法でもよく、所定量の分岐α−グルカン混合物を全量又は小分けして、一度に又は複数回に分けて、ビールテイスト飲料の製造原料及び/又は中間生成物、或いは、最終製品を得る前のビールテイスト飲料に含有させることにより、顕著に優れた泡特性をビールテイスト飲料に付与することを可能にしたビールテイスト飲料の製造方法である。分岐α−グルカン混合物を含有させるときのタイミングが制約されない理由は、分岐α−グルカン混合物が自体安定であり、加熱工程又はその前に添加しても物性が変化せず、顕著に優れたビールテイスト飲料の泡特性改善作用を発揮できるからである。また、ビールテイスト飲料の製造原料又はビールテイスト飲料の中間生成物に配合する際、分岐α−グルカン混合物の形態は、粉末、顆粒などの固状のものが推奨されるけれども、他のペースト状、フィルム状、又は液状のいずれの形態であってもよい。
【0063】
前記斯界において公知のビールテイスト飲料の製造方法を類型別に示せば下記(i)〜(v)に示すとおりである。
【0064】
(i)麦汁を使わずに麦芽から取れる麦芽エキスに様々な成分を加える方法。
(ii)麦芽を糖化させホップを加えて煮込んだ麦汁をベースとし、これに酵母菌を添加することなく、不純物を取り除いて炭酸ガスやその他の成分を加える方法。
(iii)ビールと同様の製造方法を用いるが、発酵時のアルコール生成濃度を低く抑え、アルコール濃度を1体積%未満とする方法。
(iv)ビールを製造してから、アルコール分を除去する方法。
(v)清涼飲料水を用いてビール様の呈味と風味を付与する方法。
【0065】
前記(i)乃至(v)の類型の内、(i)乃至(iv)の類型に相当するビールテイスト飲料の製造方法の具体例としては、既述の特許文献1、2、及び特許第5710672号公報などに開示された製造方法を例示することができる。
【0066】
以下、実験に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【0067】
<実験1:分岐α−グルカン混合物がビールテイスト飲料の泡特性に及ぼす影響>
(1)概要
市販のビールテイスト飲料に所定量の分岐α−グルカン混合物を添加し、分岐α−グルカン混合物がビールテイスト飲料の泡特性に及ぼす影響について調べた。
【0068】
(2)実験方法
(ア)被験試料の調製
試験に用いる分岐α−グルカン混合物として、後述する実施例1で用いたものと同じ分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、0.05、0.25、0.50、1.0、2.0、又は3.0g用意し、これらのいずれかと精製水とを混合し、全量を10gとした6種類の分岐α−グルカン混合物含有水溶液を調製した。得られた分岐α−グルカン混合物含有水溶液のいずれかを、市販のビールテイスト飲料(商品名『サントリーオールフリー』、350mL缶;100mL当たり、アルコール0.00%、蛋白質0g、脂質0g、糖質0g、食物繊維0乃至0.1g;サントリー株式会社販売)(以下、単に「原料ビールテイスト飲料」と言う。)90gに対し添加し、全量を100gとし、泡立たないように穏やかに内容物を均一に撹拌混合し、分岐α−グルカン混合物の濃度が0.05、0.25、0.50、1.0、2.0、又は3.0質量%である6種類のビールテイスト飲料(以下、「被験試料1a乃至6a」と言う。)を得た。対照として、分岐α−グルカン混合物含有水溶液10gに代えて、精製水又は原料ビールテイスト飲料10gを原料ビールテイスト飲料90gに添加した以外は、被験試料1a乃至6aと同様にして調製した2種類のビールテイスト飲料を用いた(以下、精製水及び原料ビールテイスト飲料を添加したものを、それぞれ「対照1」及び「対照2」と言う。)。
【0069】
(イ)泡特性試験
調製直後の前記被験試料1a乃至6a(品温約20℃)及び対照1、2のビールテイスト飲料(品温約20℃)を室温(約20℃)下、200mL容トールビーカーの底面から垂直に27cm上の高さ位置から、トールビーカー内へ全量を注ぎ込んでビールテイスト飲料の液面上部に泡の層を形成させた。被験試料投入後、直ちに泡の層厚を計測するとともに、経過時間の計測を開始し、泡が時間の経過とともに減少してゆき、トールビーカーの開口部上側からビールテイスト飲料の液面の一部が肉眼で見えるようになる迄の経過時間(秒)を計測し、その経過時間を泡持ち時間(秒)とした。経過時間計測開始時、各ビールテイスト飲料について、泡の性状(キメの細かさ)について肉眼観察により評価した。結果は表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の結果から明らかなとおり、被験試料1a乃至6aの内、分岐α−グルカン混合物の濃度が0.25乃至3.0質量%である、被験試料2a乃至6aのビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚)はそれぞれ、50mm、52mm、53mm、50mm、及び50mmと、対照2の35mmと比べ、約1.4乃至約1.5倍の範囲で増加した。また、被験試料2a乃至6aのビールテイスト飲料の泡持ち時間はそれぞれ、189秒、180秒、179秒、209秒、及び249秒と、対照2の121秒と比べ、約1.5乃至約2.1倍の範囲で増加した。更に、被験試料2a乃至6aのビールテイスト飲料の泡のキメ細かさは、対照1、2のいずれと比べても、「良好」と判定された。
【0072】
このように、所定量の分岐α−グルカン混合物をビールテイスト飲料に配合すると、ビールテイスト飲料の泡特性が顕著に改善されることが判明した。また、表1の結果から、分岐α−グルカン混合物による泡特性改善作用は、0.25質量%以上配合したときに効果的に発揮され、0.05質量%以下では所望の効果が十分に発揮されないと判断された。なお、別途試験したところによれば、ビールテイスト飲料に配合する分岐α−グルカン混合物の濃度が3.0質量%超の場合、濃度依存的に起泡性と泡持ち時間とが改善されるけれども、泡のキメ細かさ、つまり、泡のクリーミーさが低下する傾向にあったことから、分岐α−グルカン混合物の配合量の上限は3.0質量%に留めるのが望ましい。
【0073】
なお、被験試料1a乃至6aは、調製時、分岐α−グルカン混合物を溶解するために用いた精製水の量が試料毎に異なるので、被験試料1a乃至6aに含まれる原料ビールテイスト飲料の濃度に若干の違いがある。しかし、表1の対照1、2の結果に示されるとおり、原料ビールテイスト飲料90gに対し、各10gの精製水を配合した場合と原料ビールテイスト飲料を配合した場合とで、生じた泡の層厚(mm)と泡持ち時間(秒)のいずれについても実質的な差異は認められなかったことから、被験試料1a乃至6aにおいて、原料ビールテイスト飲料の濃度の違いによるビールテイスト飲料の泡特性への影響は、実質的になかったと判断した。
【0074】
<実験2:難消化性デキストリンがビールテイスト飲料の泡特性に及ぼす影響>
(1)概要
従来より、ビールテイスト飲料の泡特性改善効果があると言われている難消化性デキストリンを用いて、それがビールテイスト飲料の泡特性に及ぼす影響について実験1に準じて調べた。
【0075】
(2)実験方法
(ア)被験試料の調製
分岐α−グルカン混合物を難消化性デキストリン(商品名『ファイバーソル2』、松谷化学工業株式会社製)に置き換えた以外は、実験1の「(ア)被験試料の調製」と同様にして、下記表2に示す被験試料1b乃至6bを調製し、実験1と同様の「(イ)泡特性試験」に供した。なお、対照には、実験1の対照1、2と同様にして調製したものを用いた。結果は表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
表2の結果から明らかなとおり、難消化性デキストリンの濃度が0.05質量%である被験試料1bのビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚)は37mmと、対照2の35mmと比べ、約1.1倍増加したものの、泡持ち時間は125秒と、対照2の121秒と比べ、ほぼ同等であった。一方、難消化性デキストリンの濃度が0.25乃至3.0質量%である被験試料2b乃至6bのビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚)はそれぞれ、45mm、46mm、46mm、48mm、及び50mmと、対照2の35mmと比べ、約1.3乃至約1.4倍増加した。また、被験試料2b乃至6bのビールテイスト飲料の泡持ち時間はそれぞれ、171秒、187秒、208秒、211秒、及び185秒と、対照2の121秒と比べ、約1.4乃至約1.7倍延長された。また、被験試料2b乃至6bのビールテイスト飲料の泡のキメ細かさは、対照1、2のいずれと比べても、「やや良好」と判定されるに留まった。
【0078】
実験1、2の結果から、分岐α−グルカン混合物は、ビールテイスト飲料(品温約20℃)の泡特性の内、起泡性(泡の層厚)及び泡持ち時間を改善する作用が、従来、ビールテイスト飲料の泡特性改善作用があると言われていた難消化性デキストリンと比べ、顕著に優れていることが判明した。また、分岐α−グルカン混合物を配合したビールテイスト飲料は、泡のキメ細かさの点でも、難消化性デキストリンを配合したビールテイスト飲料と比べ、顕著に優れていることが判明した
【0079】
<実験3:分岐α−グルカン混合物又は難消化性デキストリンがビールテイスト飲料の泡特性に及ぼす影響>
<実験3−1:泡特性試験(1)>
(1)概要
実験1、2において、分岐α−グルカン混合物には、ビールテイスト飲料の泡特性改善作用があり、しかもこの改善作用は、従来、ビールテイスト飲料の泡特性改善作用があると言われていた難消化性デキストリンと比べ、顕著に優れていることが判明した。そこで、本実験では、分岐α−グルカン混合物と難消化性デキストリンによるビールテイスト飲料の泡特性改善作用についてより詳細に調べる目的で、各被験試料の品温をビールテイスト飲料が、通常、冬季に飲まれる品温を想定し、被験試料の品温を約8℃とし、約6℃に維持された恒温室内で試験を行った以外は実験1の「(イ)泡特性試験」と同様にして、分岐α−グルカン混合物と難消化性デキストリンが、ビールテイスト飲料の泡特性に及ぼす影響について調べた。
【0080】
(2)実験方法
(ア)被験試料の調製
分岐α−グルカン混合物又は難消化デキストリンとして、実験1又は実験2で用いたと同じ分岐α−グルカン混合物又は難消性デキストリン(商品名『ファイバーソル2』、松谷化学工業株式会社製)を用いて、実験1における「(ア)被験試料の調製」と同様にして、分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、それぞれ0.25、0.50、1.0、又は3.0質量%含有する下記表3に示す4種類のビールテイスト飲料(以下、「被験試料A1乃至A4」と言う。)、及び難消化性デキストリンを、無水物換算で、それぞれ0.25、0.50、1.0、又は3.0質量%含有する下記表3に示す4種類のビールテイスト飲料(以下、「被験試料B1乃至B4」と言う。)を調製し、それら被験試料の品温を約8℃とした以外は、実験1におけると同様の「(イ)泡特性試験」に供した。対照には、実験1の対照2と同様に原料ビーステイスト飲料90gに、分岐α−グルカン混合物及び難消性デキストリンの何れも含まない原料ビールテイスト飲料10gを加えて100gとし、品温を約8℃としたものを用いた。結果は表3に示すとともに、被験試料A1乃至A4及び被験試料B1乃至B4のビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚(mm))の結果を図1に、また、それら被験試料の泡持ち時間(秒)の結果を図2にそれぞれ示す。
【0081】
【表3】
【0082】
表3の結果から明らかなとおり、難消化性デキストリンを、無水物換算で、濃度0.25乃至3.0質量%の範囲で含む、被験試料B1乃至B4のビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚)はそれぞれ、32mm、28mm、31mm、及び25mmと、対照の30mmに対し、約1.1倍から約0.8倍まで、難消化性デキストリン濃度と略反比例的に低下した(図1参照)。殊に、難消化性デキストリン濃度が3.0質量%である被験試料B4のビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚)は25mmと、対照の30mmの約0.8倍と低値を示した。また、被験試料B1乃至B4のビールテイスト飲料の泡持ち時間はそれぞれ、89秒、81秒、90秒、及び77秒と、難消化性デキストリン濃度非依存的に、対照の82秒に対し、約0.9乃至約1.1倍の範囲で推移するに留まった(図2参照)。
【0083】
これに対し、分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、0.25乃至3.0質量%の範囲で含む被験試料A1乃至A4のビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚)はそれぞれ、32mm、32mm、35mm、及び45mmと、対照の30mmに対し、分岐α−グルカン混合物の濃度依存的に、約1.1倍から約1.5倍まで増加した(図1参照)。また、被験試料A1乃至A4のビールテイスト飲料の泡持ち時間はそれぞれ、86秒、92秒、87秒、及び109秒と、対照の82秒と比べ、約1.1乃至約1.3倍延長された(図2参照)。
【0084】
また、被験試料B1乃至B4のビールテイスト飲料の泡のキメ細かさは、難消化性デキストリンの濃度が0.25質量%のとき、対照と「同等」と判定され、難消化性デキストリンの濃度が0.5乃至3.0質量%の濃度範囲では、対照と比べ「やや良好」と判定されるに留まった。これに対し、分岐α−グルカン混合物を含む被験試料A1乃至A4のビールテイスト飲料の泡のキメ細かさは、分岐α−グルカン混合物の濃度が0.25乃至3.0質量%の濃度範囲において、対照と比べ「良好」と判定された。
【0085】
以上の結果から、分岐α−グルカン混合物を配合したビールテイスト飲料は、通常、冬場に飲用される品温(約8℃)において、従来のビールテイスト飲料はもとより、難消化性デキストリンを配合したビールテイスト飲料と比べても、起泡性(泡の層厚)、泡持ち時間が顕著に長く、しかも、ビールテイスト飲料の泡のキメ細かさの点でも優れていることが判明した。
【0086】
なお、実験3−1における被験試料A3のビールテイスト飲料につき7人のパネラーによる官能試験を行ったところ、原料ビールテイスト飲料の色調、風味(香味、香り、甘味などを含む)、ボディ感、キレ、のど越し感と比べ、実質的な差異はなく、分岐α−グルカン混合物は、ビールテイスト飲料本来の色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感に実質的な影響を及ぼさないことが確認された。
【0087】
次に、分岐α−グルカン混合物を配合したビールテイスト飲料は、通常、冬場に飲用される品温(約8℃)において、顕著に優れた泡特性改善効果を発揮するけれども、当該ビールテイスト飲料が、通常、夏場に飲用される品温(約6℃)においても、前記同様の泡特性改善効果が発揮されるのかどうか更に調べた。
【0088】
<実験3−2:泡特性試験(2)>
実験1の「(ア)被験試料の調製」と同様にして、実験1で用いたと同じ分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、それぞれ0.25又は0.5質量%含有するビールテイスト飲料(以下、「被験試料A1」及び「被験試料A2」と言う。)と、実験2で用いたと同じ難消化性デキストリン(商品名『ファイバーソル2』、松谷化学工業株式会社製)を、無水物換算で、それぞれ0.25又は0.5質量%含有するビールテイスト飲料(以下、「被験試料B1」及び「被験試料B2」と言う。)とを調製し、これら被験試料A1、A2、B1、及びB2の品温を約6℃とした以外は、実験1と同じ「(イ)泡特性試験」に供し、分岐α−グルカン混合物と難消化性デキストリンが、ビールテイスト飲料の泡特性に及ぼす影響について調べた。対照として、実験1の対照2と同様、原料ビーステイスト飲料90gに、分岐α−グルカン混合物及び難消性デキストリンの何れも含まない原料ビールテイスト飲料10gを加えて100gとし、品温を約6℃としたものを用いた。結果は表4、図3及び図4に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
表4及び図3から明らかなとおり、難消化性デキストリンを配合した被験試料B1及び被験試料B2のビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚)はそれぞれ、32mm及び31mmと、対照の30mmに対し、いずれも、約1.1倍に留まった。これに対し、分岐α−グルカン混合物を配合した被験試料A1及び被験試料A2のビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚)(mm)はそれぞれ、32mm及び33mmと、対照と比べ、それぞれ、約1.2倍及び約1.3倍もの高値を示した。
【0091】
また、表4及び図4から明らかなとおり、難消化性デキストリンを含む被験試料B1及び被験試料B2のビールテイスト飲料の泡持ち時間はそれぞれ、126秒及び125秒であり、対照の117秒に対し、いずれも、約1.1倍に留まった。これに対し、分岐α−グルカン混合物を含む被験試料A1及び被験試料A2のビールテイスト飲料の泡持ち時間はそれぞれ、144秒及び146秒と、対照の117秒に対し、それぞれ、約1.2倍及び約1.3倍延長された。
【0092】
以上の結果から、分岐α−グルカン混合物を配合したビールテイスト飲料は、通常、夏場に飲用される品温(約6℃)においても、従来のビールテイスト飲料はもとより、難消化性デキストリンを配合したビールテイスト飲料と比べても、起泡性(泡の層厚)、泡持ち時間が顕著に長く、しかも、ビールテイスト飲料の泡のキメ細かさの点でも優れていることが判明した。
【0093】
<実験3−3:泡特性試験(3)>
被験試料として、後述する実施例1で用いたものと同じ分岐α−グルカン混合物と、特許文献3(特開2015−223163号公報)において、ビールテイスト飲料等の起泡・泡持ち向上剤として用いられている分岐グルカンとを用いて、実験1と同じ「(イ)泡特性試験」に供し、それらがビールテイスト飲料の泡特性等に及ぼす影響について比較検討した。前記分岐グルカンは、特許文献3の段落0048の「製造例2:分岐グルカンの製造(2)」に示された方法に準じて調製した。すなわち、30質量%コーンスターチ液化液(DE6.5)を温度53℃、pH6.0に調整し、これにバチラス・ステアロサーモフィラスTc−91由来のシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼ(CGTase)(株式会社林原製)を対固形分当たり1単位、シュードモナス・アミロデラモーサ由来のイソアミラーゼ(株式会社林原製)を対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3(アマノエンザイム社製)を対固形分当たり0.01%、アスペルギルス・ニガーのα−グルコシダーゼ(商品名「トランスグルコシダーゼL「アマノ」、天野エンザイム社製」)を対固形分1g当たり3.75単位添加して72時間糖化し、これを80℃に加温して、クライスターゼL1(大和化成社製)を対固形分当たり0.005%添加してヨード反応が消失するまで作用させた。次いで、常法に従い精製し、濃縮し、分岐グルカンを調製した。得られた分岐グルカンにつき、「α−1,4結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が11〜35の分岐グルカン」含量を特許文献3が援用する特開2010−95701号公報の試験例2に記載された方法により測定した。すなわち、5質量%に調整した前記分岐グルカン水溶液1mLに1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に溶解した10mg/mL β−アミラーゼ#1500(ナガセケムテックス社製)50μLを添加し、55℃にて約1時間作用させ、煮沸し酵素を失活させた。次いで、酵素反応液を『マイクロアシライザーG0』(旭化成社製)により透析して脱塩し、0.45μmフィルターでろ過したものを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供した。HPLC条件は、カラムにMCI GEL CK02AS(φ20×250mm、三菱化学社製)を用い、移動相を超純水とし、カラム温度85℃、流速0.8mL/分とした。分析には、約50μLをクロマトグラフィーに供し、得られるクロマトグラムのピーク面積より各重合度成分の含有量を求め、重合度11以上の糖質の含有量を分岐グルカン含有量として算出した。その結果、本実験で調製した分岐グルカンの「α−1,4結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が11〜35の分岐グルカン」の含量は、18.3質量%であった。ここで、前記「製造例2:分岐グルカンの製造(2)」に示された分岐グルカンのそれは、17.9質量%であることから、本実験で調製した分岐グルカンは、前記製造例2に示された分岐グルカンと同等品であることが確認された。なお、本実験で調製した分岐グルカンの水溶性食物繊維含量を既述の「酵素−HPLC法」により求めたところ、30質量%未満であった。
【0094】
実験1の「(ア)被験試料の調製」と同様にして、前記分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、0.5、1.0、又は3.0質量%含有するビールテイスト飲料(以下、それぞれ「被験試料A1」、「被験試料A2」、及び「被験試料A3」と言う。)と、前記分岐グルカンを、無水物換算で、0.5、1.0、又は3.0質量%含有するビールテイスト飲料(以下、それぞれ「被験試料C1」、「被験試料C2」、及び「被験試料C3」と言う。)とをそれぞれ調製し、これら被験試料A1乃至A3、及び被験試料C1乃至C3の品温を約10℃とした以外は、実験1と同じ「(イ)泡特性試験」に供し、分岐α−グルカン混合物又は分岐グルカンが、ビールテイスト飲料の泡特性に及ぼす影響について調べた。対照として、実験1の対照2と同様、原料ビールテイスト飲料90gに、分岐α−グルカン混合物及び分岐グルカンの何れも含まない原料ビールテイスト飲料10gを加えて100gとし、品温を約10℃としたものを用いた。結果は表5、図5及び図6に示す。
【0095】
【表5】
【0096】
表5及び図5から明らかなとおり、分岐グルカンを配合した被験試料C1乃至C3のビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚)はそれぞれ、34mm、37mm、及び41mmであり、対照の32mmに対し、それぞれ、約1.1倍、約1.2、及び約1.3倍にとどまった。これに対し、分岐α−グルカン混合物を配合した被験試料A1乃至A3のビールテイスト飲料の起泡性(泡の層厚)はそれぞれ、39mm、45mm、及び48mmであり、対照の32mmに対し、それぞれ、約1.2倍、約1.4倍、及び1.5倍もの高い起泡性を示した。
【0097】
これらの結果から、分岐α−グルカン混合物を配合した被験試料A1乃至A3のビールテイスト飲料は、分岐グルカンを配合した被験試料C1乃至C3のビールテイスト飲料と比べ、起泡性が顕著に優れていることが判明した。
【0098】
また、表5及び図6から明らかなとおり、分岐グルカンを含む被験試料C1乃至C3のビールテイスト飲料の泡持ち時間はそれぞれ、約108秒、約114秒、及び約130秒であり、対照の約94秒に対し、それぞれ、約1.1倍、約1.2倍、及び約1.4倍であった。これに対し、分岐α−グルカン混合物を含む被験試料A1乃至A3のビールテイスト飲料の泡持ち時間はそれぞれ、131秒、149秒、及び162秒であり、対照の94秒に対し、それぞれ、約1.4倍、約1.6倍、及び約1.7倍も延長し、被験試料C1乃至C3のビールテイスト飲料と比べ、泡持ち時間が顕著に優れていることが判明した。
【0099】
このように、本発明に係る分岐α−グルカン混合物を配合した被験試料A1乃至A3のビールテイスト飲料は、特許文献3に開示された構造及び重合度を有する上記分岐グルカンを配合した被験試料C1乃至C3のビールテイスト飲料と比べ、起泡性及び泡持ち時間の何れの点においても、顕著に優れているという結果が得られた。このような結果が得られた理由は定かではないけれども、本実験で用いた分岐α−グルカン混合物は、DP9以上の糖質の無水物換算での合計量が約90質量%以上であり、高分子量の分岐α−グルカンを比較的多量に含んでおり、かつ、個々の分岐α−グルカン分子がα−1,4結合以外に、α−1,3結合、α−1,6結合、α−1,3,6結合などの分岐構造を多数有しているので、これら分岐α−グルカン分子が有する分岐構造が、ビールテイスト飲料中に含まれる、麦汁、麦汁エキス、又は麦芽エキス由来の蛋白質や、ホップ又はホップエキス由来の成分(イソ−α酸)とが共同的に作用して、炭酸ガスを包接/被覆し、その結果、ビールテイスト飲料の泡特性が効果的に改善されるのではないかと考えられる。なお、特許文献3に開示されている分岐グルカンを再現した上記分岐グルカンによっても、一定の泡特性改善効果が認められたが、使用した分岐グルカンは、「α−1,4結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が11〜35の分岐グルカン」を18.3質量%含有するものの、約80質量%ものその余の成分を含んでおり、ビールテイスト飲料の泡特性改善作用に寄与した成分が、果たして、前記重合度が11〜35の分岐グルカンであるのかどうかは不明である。
【0100】
更に、表5に示すとおり、分岐α−グルカン混合物を配合した被験試料A1乃至A3のビールテイスト飲料は、対照のビールテイスト飲料の風味と同等であったことから、分岐α−グルカン混合物は、ビールテイスト飲料本来の風味を損なうことなく、その泡特性を効果的に改善できると判断された。これに対し、分岐グルカンを0.5質量%又は1質量%配合した被験試料C1、C2のビールテイスト飲料にあっては、対照のビールテイスト飲料の風味と同等であったものの、3質量%配合した被験試料C3のビールテイスト飲料にあっては、ビールテイスト飲料本来の風味が損なわれていた。なお、上記分岐グルカンは、自体、低甘味を有していると考えられる素材であるので、その甘味に起因して、ビールテイスト飲料本来の風味を変えてしまったのではないかと推測される。
【0101】
以上の結果から、ビールテイスト飲料の泡特性改善の目途で用いる素材として見た場合、分岐α−グルカン混合物は、前記分岐グルカンと比べ、顕著に好ましい素材であると判断された。
【0102】
以上に述べた実験1乃至実験3の結果から、分岐α−グルカン混合物は、これを無水物換算で、0.25質量%以上、好適には、0.5乃至10質量%、より好適には0.5乃至5質量%、更に好適には0.5乃至3質量%、より更に好適には、0.5乃至2質量%の範囲でビールテイスト飲料に配合することにより、ビールテイスト飲料の風味を変えることなく、四季を通じて、ビールテイスト飲料が、通常、飲用される品温において、ビールテイスト飲料の泡特性が効果的に改善され、嗜好性に優れたビールテイスト飲料が提供できる。なお、分岐α−グルカン混合物によるビールテイスト飲料の泡改善作用は、ビールテイスト飲料の品温が高くなるにつれ、より顕著になることから、ビールテイスト飲料が飲まれる品温に応じて、分岐α−グルカン混合物の量を適宜加減することにより、所望の泡特性改善作用を効率的、効果的に発揮させることができる。そして、この分岐α−グルカン混合物によるビールテイスト飲料の泡特性改善作用は、ビールテイスト飲料だけでなく、ビールテイスト飲料と同様、所謂、ビール、発泡酒、及び第3のビールなどのビール類飲料全般において発揮される作用である。
【0103】
<実験4:分岐α−グルカン混合物が炭酸水の泡特性に及ぼす影響>
(1)概要
実験1及び実験3で判明した分岐α−グルカン混合物によるビールテイスト飲料の泡特性改善作用は、分岐α−グルカン混合物をビールテイスト飲料に適用したときに見られる固有の作用なのか、或いは、炭酸ガスを含む飲料(炭酸飲料)に見られる普遍的な作用なのかを明らかにする目的で、本実験においては、分岐α−グルカン混合物が炭酸飲料の泡特性に及ぼす影響について調べた。
【0104】
(2)実験方法
(ア)被験試料の調製
実験1の「(ア)被験試料の調製」において、実験材料として用いた市販のビールテイスト飲料(商品名『サントリーオールフリー』、サントリー株式会社販売)を市販の炭酸飲料(『トップバリュ ソーダ(炭酸水)』、500mL、イオン株式会社販売)で置き換えた以外は、実験1の「(ア)被験試料の調製」と同様にして被験試料1c乃至6cを調製し、それらを実験1の「(イ)泡特性試験」に供した。対照として、前記炭酸水のみを用いた。結果は表6に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
表6の結果から明らかなとおり、分岐α−グルカン混合物をビールテイスト飲料とは範疇を異にする炭酸飲料に配合しても、試験した全ての濃度範囲において、気泡性、泡持ち時間、及び泡のキメの細かさのいずれもが「−」と評価され、分岐α−グルカン混合物には、炭酸飲料の泡特性改善作用がないことが判明した。その理由は定かではないけれども、ビールテイスト飲料と炭酸飲料とは、共に炭酸ガスを含む点で共通点があるとしても、炭酸飲料には、通常、ビールテイスト飲料に含まれる泡形成成分である、麦汁、麦汁エキス、又は麦芽エキス由来の蛋白質や、ホップ又はホップエキス由来の成分(イソ−α酸)などのいずれの成分も含まれていないことが、分岐α−グルカン混合物を炭酸飲料に配合しても、ビールテイスト飲料の場合に見られる泡特性改善作用が発揮されない理由ではないかと推測される。
【実施例1】
【0107】
<ビールテイスト飲料>
粉砕した麦芽(固形物として)50gを精製水300mLに添加し、十分撹拌した後、60℃で90分間加熱し、濾過し、得られたエキス分が12質量%である濾液を最終エキス分濃度が約0.5質量%となるように精製水にて希釈して麦糖化液を得た。別途、果糖ブドウ糖液糖15g(固形分約13g)及びダイズ蛋白質分解物5gを精製水1Lに添加し、十分撹拌した後、得られた水溶液を前記麦糖化液と混合し、これにホップエキス0.02gを添加し、国際公開第WO2008/136331号パンフレットの実施例5に開示された方法に準じて得た下記(ア)乃至(セ)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を50g、及びホップエキス(イソ−α酸として)0.02g添加し、1時間煮沸し、冷却後、蒸発分の水を補充し、珪藻土濾過及びフィルター濾過により清澄化処理を施した。
<分岐α−グルカン混合物の特性>
(ア)グルコースを構成糖とする。
(イ)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する。
(ウ)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり約40質量%生成する。
(エ)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が約80質量%である。
(オ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が約1:2.6である。
(カ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の約69%を占める。
(キ)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の2.5%である。
(ク)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の6.3%である。
(ケ)ゲル濾過高速液体クロマトグラムに基づく分子量分布分析による重量平均分子量(Mw)が約4,700ダルトンであり、かつ
(コ)重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が2.1である。
(サ)固形分当たり、グルコース重合度(DP)9以上の分岐α−グルカン含量が約90質量%である。
(シ)DP1乃至8の単糖乃至オリゴ糖の合計含量が約10質量%である。
(ス)DEが約7である。
(セ)水分含量が約8%である。
【0108】
次いで、得られた清澄液に常法により炭酸ガスを吹き込んで2.6炭酸ガスボリュームに調整し、本発明のビールテイスト飲料を得た。
【0109】
本品は、室温はもとより、約4乃至約8℃に冷却し、ビールグラスなどの容器に注いだとき、何れの温度においても従来のビールテイスト飲料と比べ、起泡性、泡の量、及び泡持ちなどの泡特性が顕著に優れており、泡のキメも細かく、嗜好性をそそる外観を有していたとともに、色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感のいずれの点においても良好なビールテイスト飲料であった。
【実施例2】
【0110】
<ビールテイスト飲料>
国際公開第WO2008/136331号パンフレットの実施例5に開示された方法に準じて得た下記(ア)乃至(セ)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を1質量%、麦芽エキス2質量%、及びホップエキス(イソ−α酸として)0.05質量%となるように精製水1Lに溶解し、1時間煮沸し、冷却した後、蒸発分の水を補充し、珪藻土濾過及びフィルター濾過により清澄化処理をした。
<分岐α−グルカン混合物の特性>
(ア)グルコースを構成糖とする。
(イ)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する。
(ウ)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり約35質量%生成する。
(エ)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が約76質量%である。
(オ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が約1:1.3である。
(カ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の約70%を占める。
(キ)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の3.0%である。
(ク)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の4.8%である。
(ケ)ゲル濾過高速液体クロマトグラムに基づく分子量分布分析による重量平均分子量(Mw)が約6,200ダルトンであり、かつ
(コ)重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が2.2である。
(サ)固形分当たり、グルコース重合度(DP)9以上の分岐α−グルカン含量が約91質量%である。
(シ)DP1乃至8の単糖乃至オリゴ糖の合計含量が約9質量%である。
(ス)DEが約7.5である。
(セ)水分含量が約8%である。
【0111】
次いで、常法により、得られた清澄液に炭酸ガスを吹き込んで2.6炭酸ガスボリュームに調整し、本発明のビールテイスト飲料を得た。
【0112】
本品は、室温はもとより、約4乃至約8℃に冷却し、ビールグラスなどの容器に注いだとき、何れの温度においても従来のビールテイスト飲料と比べ、起泡性、泡の量、及び泡持ちなどの泡特性が顕著に優れており、泡のキメも細かく、嗜好性をそそる外観を有していたとともに、色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感のいずれの点においても良好なビールテイスト飲料であった。
【実施例3】
【0113】
<ビールテイスト飲料>
国際公開第WO2008/136331号パンフレットの実施例5に開示された方法に準じて得た下記(ア)乃至(セ)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を1質量%、麦芽エキス2質量%、及びホップエキス(イソ−α酸として)0.05質量%となるように精製水1Lに溶解し、1時間煮沸し、冷却した後、蒸発分の水を補充し、珪藻土濾過及びフィルター濾過により清澄化処理をした。
<分岐α−グルカン混合物の特性>
(ア)グルコースを構成糖とする。
(イ)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する。
(ウ)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり約45質量%生成する。
(エ)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が約85質量%である。
(オ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が約1:2である。
(カ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の約80%を占める。
(キ)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の1.4%である。
(ク)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の1.7%である。
(ケ)ゲル濾過高速液体クロマトグラムに基づく分子量分布分析による重量平均分子量(Mw)が約10,000ダルトンであり、かつ
(コ)重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が2.9である。
(サ)固形分当たり、グルコース重合度(DP)9以上の分岐α−グルカン含量が約92質量%である。
(シ)DP1乃至8の単糖乃至オリゴ糖の合計含量が約8質量%である。
(ス)DEが約6である。
(セ)水分含量が約7%である。
【0114】
次いで、常法により、得られた清澄液に炭酸ガスを吹き込んで2.6炭酸ガスボリュームに調整し、本発明のビールテイスト飲料を得た。
【0115】
本品は、室温はもとより、約4乃至約8℃に冷却し、ビールグラスなどの容器に注いだとき、何れの温度においても従来のビールテイスト飲料と比べ、起泡性、泡の量、及び泡持ちなどの泡特性が顕著に優れており、泡のキメも細かく、嗜好性をそそる外観を有していたとともに、色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感のいずれの点においても良好なビールテイスト飲料であった。
【実施例4】
【0116】
<ビールテイスト飲料>
国際公開第WO2008/136331号パンフレットの実施例5に開示された方法に準じて得た下記(ア)乃至(セ)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を0.4、1、2、又は3質量%、α,α−トレハロース2質量%、麦芽エキス2質量%、及びホップエキス(イソ−α酸として)0.1質量%となるように精製水1Lに溶解し、1時間煮沸し、冷却後、蒸発分の水を補充し、珪藻土濾過及びフィルター濾過により清澄化処理を施した。
<分岐α−グルカン混合物の特性>
(ア)グルコースを構成糖とする。
(イ)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する。
(ウ)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり約47質量%生成する。
(エ)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が約63質量%である。
(オ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が約1:2.4である。
(カ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の約60%を占める。
(キ)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の2.3%である。
(ク)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の2.1%である。
(ケ)ゲル濾過高速液体クロマトグラムに基づく分子量分布分析による重量平均分子量(Mw)が約1,000ダルトンであり、かつ
(コ)重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が1.8である。
(サ)固形分当たり、グルコース重合度(DP)9以上の分岐α−グルカン含量が約90質量%である。
(シ)DP1乃至8の単糖乃至オリゴ糖の合計含量が約10質量%である。
(ス)DEが約7である。
(セ)水分含量が約8%である。
【0117】
次いで、得られた清澄液に炭酸ガスを吹き込んで2.9炭酸ガスボリュームに調整し、4種類の本発明のビールテイスト飲料を得た。
【0118】
本品は、室温はもとより、約4乃至約8℃に冷却し、ビールグラスなどの容器に注いだとき、何れの温度においても従来のビールテイスト飲料と比べ、起泡性、泡の量、及び泡持ちなどの泡特性が顕著に優れており、泡のキメも細かく、嗜好性をそそる外観を有していたとともに、色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感のいずれの点においても良好なビールテイスト飲料であった。
【実施例5】
【0119】
<ビールテイスト飲料>
国際公開第WO2008/136331号パンフレットの実施例5に開示された方法に準じて得た下記(ア)乃至(セ)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を0.4、1、2、又は3質量%、α,α−トレハロース2質量%、麦芽エキス2質量%、及びホップエキス(イソ−α酸として)0.1質量%となるように精製水1Lに溶解し、1時間煮沸し、冷却後、蒸発分の水を補充し、珪藻土濾過及びフィルター濾過により清澄化処理を施した。
<分岐α−グルカン混合物の特性>
(ア)グルコースを構成糖とする。
(イ)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する。
(ウ)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり約28.4質量%生成する。
(エ)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が約42.1質量%である。
(オ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が約1:0.62である。
(カ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の約83.7%を占める。
(キ)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の1.1%である。
(ク)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.8%である。
(ケ)ゲル濾過高速液体クロマトグラムに基づく分子量分布分析による重量平均分子量(Mw)が約59,000ダルトンであり、かつ
(コ)重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が15.4である。
(サ)固形分当たり、グルコース重合度(DP)9以上の分岐α−グルカン含量が約92質量%である。
(シ)DP1乃至8の単糖乃至オリゴ糖の合計含量が約9質量%である。
(ス)DEが約6.5である。
(セ)水分含量が約7%である。
【0120】
次いで、得られた清澄液に炭酸ガスを吹き込んで2.9炭酸ガスボリュームに調整し、4種類の本発明のビールテイスト飲料を得た。
【0121】
本品は、室温はもとより、約4乃至約8℃に冷却し、ビールグラスなどの容器に注いだとき、何れの温度においても従来のビールテイスト飲料と比べ、起泡性、泡の量、及び泡持ちなどの泡特性が顕著に優れており、泡のキメも細かく、嗜好性をそそる外観を有していたとともに、色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感のいずれの点においても良好なビールテイスト飲料であった。
【実施例6】
【0122】
<ビールテイスト飲料>
国際公開第WO2008/136331号パンフレットの実施例5に開示された方法に準じて得た下記(ア)乃至(セ)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を0.4、1、2、又は3質量%、α,α−トレハロース2質量%、麦芽エキス2質量%、及びホップエキス(イソ−α酸として)0.1質量%となるように精製水1Lに溶解し、1時間煮沸し、冷却後、蒸発分の水を補充し、珪藻土濾過及びフィルター濾過により清澄化処理を施した。
<分岐α−グルカン混合物の特性>
(ア)グルコースを構成糖とする。
(イ)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する。
(ウ)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり約28.4質量%生成する。
(エ)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が約42.1質量%である。
(オ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が約1:0.62である。
(カ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の約83.7%を占める。
(キ)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の1.1%である。
(ク)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.8%である。
(ケ)ゲル濾過高速液体クロマトグラムに基づく分子量分布分析による重量平均分子量(Mw)が約59,000ダルトンであり、かつ
(コ)重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が15.4である。
(サ)固形分当たり、グルコース重合度(DP)9以上の分岐α−グルカン含量が約92質量%である。
(シ)DP1乃至8の単糖乃至オリゴ糖の合計含量が約9質量%である。
(ス)DEが約6.5である。
(セ)水分含量が約7%である。
【0123】
次いで、得られた清澄液に炭酸ガスを吹き込んで2.9炭酸ガスボリュームに調整し、
4種類の本発明のビールテイスト飲料を得た。
【0124】
本品は、室温はもとより、約4乃至約8℃に冷却し、ビールグラスなどの容器に注いだとき、何れの温度においても従来のビールテイスト飲料と比べ、起泡性、泡の量、及び泡持ちなどの泡特性が顕著に優れており、泡のキメも細かく、嗜好性をそそる外観を有していたとともに、色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感のいずれの点においても良好なビールテイスト飲料であった。
【0125】
<参考例>
<ビールテイスト飲料>
実施例2で用いた分岐α−グルカン混合物に代えて、DE25のデキストリン(松谷化学工業株式会社製「パインデックス#3」)、DE20のデキストリン(昭和産業株式会社製「LDX35−20」)、DE15のデキストリン(松谷化学工業株式会社製「グリスター」)、DE14のデキストリン(松谷化学工業株式会社製「液状デキストリン」)、DE11のデキストリン(松谷化学工業株式会社製「パインデックス#2」)、DE11の難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製「ファイバーソル2」)、又はDE4のデキストリン(松谷化学工業株式会社製「パインデックス#100」)を用いた以外は実施例2と同様にして7種類のビールテイスト飲料を調
製した。
【0126】
本例で得られた7種類のビールテイスト飲料と、実施例2で得た本発明のビールテイスト飲料とを室温、或いは、約4乃至約8℃に冷却し、それらを同一条件下でそれぞれ、ビールグラスなどの容器に注ぎ込んでそれらの泡特性について対比したところ、本例で得られた7種類のビールテイスト飲料のいずれも、実施例2で得た本発明のビールテイスト飲料と比べ泡特性のみならず、風味、ボディ感、キレ、のど越し感などのいずれの点においても明らかに劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上述べたとおり、本発明は、従来のビールテイスト飲料と比べ、起泡性、泡の量、泡持ちに優れ、しかも泡のキメも細かいなどの優れた外観特徴を有するとともに、色調、風味、ボディ感、キレ、のど越し感などのいずれの点においても良好な、嗜好性に優れたビールテイスト飲料とその製造方法を提供するものである。本発明が斯界に及ぼす影響は斯くも甚大であり、本発明の産業上の利用可能性は極めて大きい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6