(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
使用中、少なくとも部分的に水中に沈められる物体であって、前記物体は、船舶及びインフラ物体からなる群から選択され、前記物体はさらに、UV放射要素を含む生物付着防止システムを備え、前記物体はさらに複数の突出要素を備え、前記UV放射要素は、前記突出要素の第1端部と第2端部との間に構成され、前記突出要素の前記第1端部及び前記第2端部に対して窪んでいるように構成され、前記突出要素の前記第1端部及び前記第2端部の両方が、前記UV放射要素よりも前記物体から離れており、前記UV放射要素は、照射段階中、前記物体から離れる方向に、前記突出要素の前記第1端部と前記第2端部との間を通して、前記物体の外面に隣接する水をUV線で照射する、物体。
前記UV放射要素は、光源の前記UV線を、前記物体の前記外面に隣接する水に供給する光学媒体を含み、前記光学媒体は前記突出要素の前記第1端部と前記第2端部との間に構成され、また、前記突出要素の前記第1端部及び前記第2端部に対して窪んでいるよう構成される、請求項1に記載の物体。
(i)前記物体が、前記突出要素を含む表面プロファイルを含み、前記表面プロファイルは前記外面に取り付けられること、及び(ii)前記生物付着防止システムが前記突出要素を含むことのうちの1つ以上である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の物体。
前記物体は、前記突出要素を含む前記表面プロファイルを含むUV放射ユニットと、請求項2に記載の光学媒体とを含み、前記表面プロファイルは前記外面に取り付けられている、請求項5に記載の物体。
前記光学媒体は、前記光学媒体の放射線出射面に光源のUV線を供給するように構成され、前記光学媒体は、前記突出要素の前記第1端部と前記第2端部との間に構成され、また、前記突出要素の前記第1端部及び前記第2端部に対して窪んでいるよう構成され、前記生物付着防止システムの前記放射線出射面は、前記外面の一部として構成される、請求項6に記載の物体。
前記突出要素はスチールを含み、前記突出要素は突出リムとして構成され、前記UV放射要素は前記突出リム間に構成されている、請求項1乃至7の何れか一項に記載の物体。
前記UV放射要素は光源を含み、前記光源は、2つ以上の最も近くに隣接する突出要素を有し、1番目に最も近くに隣接する突出要素と前記光源との間の第1の最短距離は、2番目に最も近くに隣接する突出要素と前記光源との間の第2の最短距離の50%以下であり、前記突出要素と前記UV放射要素との間の最小の高さの差は、少なくとも1mmであ
る、請求項1乃至8の何れか一項に記載の物体。
突出要素を含む表面プロファイルと、光源のUV線を光学媒体の放射線出射面に供給するように構成された当該光学媒体とを含む、UV放射ユニットの形式の生物付着防止システムであって、前記光学媒体は、前記突出要素の第1端部と第2端部との間に構成され、前記突出要素の前記第1端部及び前記第2端部に対して窪んでいるよう構成され、使用中に少なくとも部分的に水中に沈められる物体に取り付けられたときに、前記突出要素の前記第1端部及び前記第2端部の両方が、前記光学媒体よりも前記物体から離れ、照射段階中、前記放射線出射面から出射された前記UV線が、前記物体から離れる方向に、前記突出要素の前記第1端部と前記第2端部との間を通して、前記物体の外面に隣接する水を照射する、生物付着防止システム。
複数の突出要素を含み、前記光学媒体は前記突出要素間に構成され、前記光学媒体は1つ以上の前記光源を含み、前記1つ以上の光源は固体光源を含み、前記光学媒体は、導波路材料としてシリコーンを含み、前記表面プロファイル及び前記突出要素はスチールを含み、前記突出要素とUV放射要素との間の最小の高さの差は少なくとも1mmである、請求項13に記載の生物付着防止システム。
【発明の概要】
【0003】
生物付着又は生物的付着(本明細書では「ファウリング」又は「汚損」とも呼ばれる)とは、表面上の微生物、植物、藻類及び/又は動物の蓄積である。生物付着有機体は非常に多様であり、フジツボや海藻の付着をはるかに上回る。一部の推定によると、4000を超える生物を含む1700種以上が生物付着の原因となっている。生物付着は、バイオフィルム形成及びバクテリア付着を含むマイクロファウリング、及びより大きな生物の付着であるマクロファウリングに分けられる。また、生物の固着の防止法を決定する異なる化学及び生物学に起因して、生物は、ハード又はソフトファウリングタイプとしても分類される。石灰質(ハード)汚損生物には、フジツボ、外皮形成外肛動物(encrusting bryozoans)、軟体動物、多毛類及び他のチューブワーム、並びにゼブラマッスルが含まれる。非石灰質(ソフト)汚損生物の例は、海藻、ヒドロ虫、藻類、及びバイオフィルム「スライム」である。合わせて、これらの生物は汚損コミュニティを形成する。
【0004】
いくつかの状況において、生物付着は重大な問題を引き起こす。機械が機能しなくなり、取水口が詰まり、船体の抗力が増す。したがって、汚損防止のトピック、すなわち、汚損を除去又は汚損の形成を防止する方法がよく知られている。工業的方法では、生物付着を防除するためにバイオ分散剤が使用され得る。より防除されていない環境では、生物は、殺生物剤、熱処理、又はエネルギーパルスを用いて殺されたり、コーティングによってはじかれる。生物付着を防ぐ非毒性機械的戦略には、滑りやすい表面を持つ材料やコーティングの選択、乏しいアンカーポイントしか提供しないサメやイルカの皮膚に似たナノスケールの表面トポロジーの作成が含まれる。船体の生物付着は、抗力の著しい増加をもたらし、したがって燃料消費量を増加させる。燃料消費量の増加の最大40%は、生物付着による可能性があると推定されている。大型のタンカーやコンテナ輸送船は一日最大200.000ユーロの燃料を消費し得るため、効果的な生物付着防止法を講じることにより、大幅な節約が可能である。
【0005】
驚くべきことに、海水、又は湖、河川、運河などの水と接触する表面上の生物付着を顕著に防ぐために、紫外線を効果的に使用することができるようである。これにより、光学的方法に基づくアプローチ、特に紫外(UV)光又は紫外(UV)線を用いたアプローチが提示される。十分なUV光により、大部分の微生物が殺され、不活性にされ、又は繁殖できなくされるようである。この効果は、主にUV光の総線量によって支配される。ある微生物の90%を殺すための典型的な線量は、10mW/h/m2である。
【0006】
抗ファウリング放射線の照射は必ずしも直接的とは限らない。大きな領域を照射するのに光学媒体を使用することができるが、この方法は、例えば港内で停泊しているときにのみ可能であり得る。
【0007】
驚くべきことに、ある種の第2のスキンとして光学媒体を適用することが良い解決策であると思われる。そのような光学媒体を備えるUV放射素子は、例えば、船の船体に関連付けられ、UV放射素子の放射線出射面からUV線が放射される。この放射線出射面は、物体の外面の一部として構成されてもよい。しかしながら、そのような光学媒体は、例えば、波止場やポンツーン(はしけ)等との衝突に対処するのに十分な強度を有さないようである。
【0008】
したがって、本発明の1つの態様は生物付着の防止又は低減のための代替システム又は方法であって、好ましくは上述の欠点の1つ以上をさらに少なくとも部分的に解消する方法を提供することである。
【0009】
第1の側面では、本発明は、使用中、少なくとも部分的に水中に沈められる物体を提供し、物体は、船舶及びインフラ物体からなる群から選択され、物体はさらに、UV放射要素を含む生物付着防止システム(「抗ファウリング照明システム」とも表され得る)を備え、UV放射要素は、照射段階中、(i)物体の外面の第1の部分、及び(ii)物体の外面の第1の部分に隣接する水のうちの1つ以上をUV線(「抗ファウリング光」とも表され得る)で照射するよう構成され、物体はさらに複数の突出要素を備え、UV放射要素は、突出要素間に構成され、また、突出要素に対して窪んでいるよう構成される。
【0010】
このような構成によれば、突出要素は、例えばスチールのような強固な材料、又は木材のような衝撃を吸収可能な材料で作られ、またUV放射要素は、物体と衝突し得る第2の物体、例えば波止場、ポンツーン、(他の)船体などとの接触を回避し得る。代替的に又は追加的に使用され得る他の材料は、ゴム、シリコーンなどからなる群から選択され得る。したがって、突出要素は、下側に位置するUV放射要素(又は生物付着防止システム若しくは光学媒体)に対して突出する。例えば、突出要素とUV放射要素(又は生物付着防止システム若しくは光学媒体)との間の最小の高さの差は、少なくとも1mm、例えば1〜500mmの範囲内、一般には約5〜200mmの範囲内、例えば5〜50mmであり得る。より大きな高さの差は、柔軟な材料については妥当であり、より低い高さの差は、特に、スチールのような非可撓性材料の場合に使用され得る。UV放射要素、特に光学媒体は、実質的に2つの突出要素間に最下点を有する曲面、例えば凹面を有してもよい。したがって、最小の高さの差は、端部、すなわち突出要素に近いところでは、2つの突出要素の間よりも小さくなり得る(下記も参照されたい)。代替的又は追加的に、(元の)外面の最も近くに配置される光学媒体の背面が湾曲されてもよい。そのような湾曲は、光学媒体の放射線出射面においてUV線をより良好に分配するために使用され得る。したがって、一般に、突出要素の最も離れた部分は(「離れている」とは、物体に対して規定される)、UV放射要素よりも物体から離れている。したがって、これらの要素は、本明細書では突出要素として示されている。例えば、波止場や(他の)船舶と衝突するとき、突出要素が物体を保護する。したがって、突出要素は、特に、物体の他の物体との衝突に対してUV放射要素及び/又は生物付着防止システムを保護するように構成される。
【0011】
本明細書において、「使用中、少なくとも部分的に水に浸かる物体」という表現は、特に、水性用途を有する船舶及びインフラ物体などの物体を指す。したがって、使用中、かかる物体は一般的に水と接触し、例えば、海、湖、運河、河川、又は他の水路などにある船舶である。「船舶」という用語は、例えば、帆船、タンカー、クルーズ船、ヨット、フェリー、潜水艦などの船又は船舶などを指し得る。「インフラ物体」という用語は、特に、ダム、堰、ポンツーン、オイルリグなどのように、一般的に実質的に固定配置された水性アプリケーションを指し得る。「外面」という用語は、特に、水と物理的に接触する可能性のある表面を指す。パイプの場合、これは、パイプ内面及びパイプ外面のうちの1つ以上に該当し得る。したがって、「外面」という用語の代わりに、「汚損面」という用語も適用され得る。さらに、そのような実施形態では、「水線」という用語は、例えば充填レベルを指す場合もある。特に、物体は、海洋用途、すなわち海の中または近くでの適用のために構成された物体である。このような物体は、使用中、少なくとも一時的に、又は実質的に常に少なくとも部分的に水と接触している。物体は、使用中、少なくとも部分的に水(線)の下にあってもよく、潜水艦用途のように実質的に常に水(線)よりも下にあってもよい。
【0012】
この水との接触のために、上記の欠点を伴う生物付着が起こり得る。生物付着は、そのような物体の外面の表面(「表面」)で生じる。保護対象の物体の(要素の)表面は、スチールを含んでいてもよいが、場合によっては例えば、木材、ポリエステル、複合材、アルミニウム、ゴム、ハイパロン、PVC、ガラスファイバなどの他の材料を含んでもよい。したがって、スチール船体のほかに、船体は、PVC船体又はポリエステル船体などであってもよい。スチールの代わりに、他の鉄材料、例えば(他の)鉄合金が使用され得る。
【0013】
ここでは、「ファウリング」、「生物付着」、又は「生物的ファウリング」という用語は同義に使用される。上記には、ファウリングの例がいくつか示されている。生物付着は、水中の、又は水に近く、一時的に水(又は別の導電性水性液体)にさらされるあらゆる表面上に生じ得る。そのような表面上では、生物付着は、要素が水中にあるとき又は水の近くにあるとき、例えば、水線の(ちょうど)上にあるときに生じ得る(例えば、船首波に起因する水はねなどの理由で)。熱帯地方では、生物付着は数時間以内に起こり得る。適度な温度であっても、初期(段階)の汚損は、糖及び細菌の第1(分子)のレベルとして、数時間以内に起こる。
【0014】
生物付着防止システムは、少なくともUV放射要素を含む。さらに、生物付着防止システムは、制御システム(以下も参照)、ローカルエネルギー取得システム(以下も参照)等の電気エネルギー供給源を含むことができる。
【0015】
「生物付着防止システム」という用語は、例えば、互いに機能的に結合されていてもよい複数のかかるシステム、例えば、単一の制御システムによって制御されるようなものを指す場合もある。さらに、生物付着防止システムは、複数のかかるUV放射要素を含むことができる。ここで、「UV放射要素」という用語は、複数のUV放射要素を指し得る。例えば、一実施形態では、複数のUV放射要素が、船体のような物体の外面に関連付けられてもよく、又はそのような表面によって含まれてもよく(以下も参照のこと)、一方、例えば制御システムは、物体内のどこかに、例えば船舶の制御室や操舵室に存在してもよい。
【0016】
ファウリングが生成され得る表面又は領域は、本明細書ではファウリング面とも示される。これは、例えば、船の船体及び/又は光学媒体の出射面であってもよい(以下も参照のこと)。この目的のために、UV放射要素は、生物付着の形成を防止するため、及び/又は生物付着を除去するために適用されるUV線(抗ファウリング光)を提供する。このUV線(抗ファウリング光)は、特に少なくともUV線(「UV光」とも呼ばれる)を含む。したがって、UV放射要素は、特にUV線を提供するように構成される。UV放射要素は光源を含む。「光源」という用語は、複数の光源、例えば、2〜20個の(固体)LED光源、さらに多くの光源に関連してもよい。したがって、LEDという用語は、複数のLEDを指す場合もある。特に、UV放射要素は複数の光源を含み得る。したがって、上記のように、UV放射要素は、1つ以上の(固体)光源を含む。LEDは、(OLED)又は固体LED(又はこれらのLEDの組み合わせ)であってもよい。特に、光源は固体LEDを含む。したがって、特に、光源は、UVA及びUVC光(下記も参照)のうちの1つ以上を提供するように構成されたUV LEDを含む。UVAは細胞壁を損傷するために使用され、UVCはDNAを損傷するために使用され得る。したがって、光源は、特にUV線を提供するように構成される。ここで、「光源」という用語は、特に、固体光源を指す。
【0017】
紫外(UV)は、可視スペクトルの下限及びX線放射帯域によって囲われる電磁光の一部分である。UV光のスペクトル範囲は、約100〜400nm(1nm=10−9m)であり、人間の目には見えない。CIE分類を使用すると、UVスペクトルは3つのバンドに細分される:UVA(長波)315〜400nm、UVB(中波)280〜315nm、UVC(短波)100〜280nm。現実には、多くの光生物学者は、UV曝露に起因する皮膚の影響について、320nmより上及び下の波長の偏った効果として話し、よって、代替的な定義が提供される。
【0018】
短波UVC帯の光は強い殺菌効果を発揮する。加えて、紅斑(皮膚の赤み)及び結膜炎(眼の粘膜の炎症)もまた、この形態の光によって引き起こされ得る。このため、殺菌UV光ランプを使用する場合、UVC漏れを排除してこれらの影響を避けるようにシステムを設計することが重要である。浸漬された光源の場合、水によるUV光の吸収は、液面より上の人間にとってUVC漏れが問題ではないほど強い可能性がある。したがって、一実施形態では、UV線(抗ファウリング光)はUVC光を含む。さらに別の実施形態では、UV線は、100〜300nm、特に200〜300nm、例えば230〜300nmの波長範囲から選択される放射線を含む。したがって、UV線は、UVC及び約300nm以下の波長の他のUV線から特に選択され得る。良好な結果は、100〜300nmの範囲、例えば200〜300nmの範囲内の波長で得られる。
【0019】
上記したように、UV放射要素、(照射ステージ中)(i)外面の一部分及び(ii)外面の一部分に隣接する水のうちの1つ以上をUV線で照射するように構成される。用語「一部分」は、例えば船体又はスルース(水門)のような物体の外面の一部を指す。しかし、「一部分」という用語は、船体又はスルースの外面のような外面の全体を実質的に指す場合もある。特に、外面は、1つ以上の光源のUV光によって照射され得る、又は1つ以上のUV放射要素のUV線によって照射され得る複数の一部分を含むことができる。各UV放射要素は、1つ以上の一部分を照射し得る。さらに、場合によっては、2つ以上のUV放射要素のUV線を受ける一部分があってもよい。
【0020】
一般に、2つの主要な実施形態の間で区別され得る。実施形態の1つは、少なくとも照射段階中、、光源とUV放出要素水、例えば海水(水線の上の場合は空気)との間でUV線で照射される外面の一部分を含む。そのような実施形態では、一部分は、特に、物体の「元の」外面によって含まれる。しかし、さらに別の実施形態では、「元の」外面は、モジュール、特に、(例えば、船の船体など)の「元の」外面に取り付けられた比較的平坦なモジュールで拡張され、よって、モジュール自体が実際には外面を形成し得る。例えば、このようなモジュールは船舶の船体に関連づけられてもよく、それにより、モジュールは外面(少なくともその一部)を形成する。両方の実施形態において、UV放射要素は、特に、放射線出射面を含む(下記も参照)。しかしながら、特に、UV放射要素が外面の一部を提供し得る後者の実施形態では、そのような放射線出射面が一部分を提供し得る(第1の一部分及び放射線出射面が本質的に一致し、特に同じ表面であり得るので)。
【0021】
したがって、一実施形態では、UV放射要素は外面に取り付けられる。さらに別の特定の実施形態では、生物付着防止システムの放射線出射面は、外面の一部として構成される。したがって、いくつかの実施形態では、物体は、船体を含む船舶を含み、UV放射要素は、船体に取り付けられる。「放射線出射面」という用語は、複数の放射線出射面も指す場合もある(以下も参照)。
【0022】
両方の一般的実施形態において、UV放射要素は、(照射段階中)外面の一部分に隣接する水をUV線で照射するように構成される。モジュール自体が実際には外面を形成する実施形態では、UV放射要素は、少なくとも、実際には外部表面の一部であるため、(照射段階中)外面の一部分、及び場合によっては外面の一部分に隣接する水をUV線で照射するように構成される。これによって、生物付着を防止及び/又は低減することができる。
【0023】
一実施形態では、保護表面のかなりの量がファウリングから免れ、好ましくは保護表面、例えば船の船体の全体が、殺菌光(「抗ファウリング光」)、特にUV光を放出する層で覆われ得る。
【0024】
さらに別の実施形態では、UV線(抗ファウリング光)は、ファイバなどの導波路を介して保護表面に提供されてもよい。
【0025】
したがって、一実施形態では、抗ファウリング照明システムは光学媒体を含み、光学媒体は、ファウリング表面にUV線(抗ファウリング光)を提供するように構成された光ファイバなどの導波路を含む。UV線(抗ファウリング光)が出射される導波路等の表面は、放出面とも示される。一般に、導波路のこの一部分は、少なくとも一時的に水没し得る。放出面から出射されるUV線(抗ファウリング光)のために、使用中、少なくとも一時的に液体(例えば海水)にさらされる物体の要素が照射され、それによりファウリングから保護される。しかしながら、放出面自体もファウリングから保護されてもよい。この効果は、後述する光学媒体を含むUV放射要素の一部の実施形態で使用される。
【0026】
光学媒体を有する実施形態は、WO2014188347にも記載されている。WO2014188347における実施形態は、本明細書に記載される突出要素、及び他の実施形態と組み合わせ可能であるため、本明細書に参照によって援用される。
【0027】
上述したように、UV放射要素は、特にUV線出射面を含むことができる。したがって、ある具体的実施形態では、UV放射要素は、UV線出射面を含み、また、UV放射要素は、特に、UV放射要素のUV線出射面から下流にUV線を供給するように構成される。このようなUV線出射面は、放射線がUV放射要素から出射される光学窓であってもよい。代替的に又は追加的に、UV線出射面は、導波路の表面であってもよい。したがって、UV線は、UV放射要素内で導波路に結合され、導波路の(一部の)面を介して要素から出射され得る。上述したように、一部の実施形態では、放射線出射面は、オプションで、物体の外面の一部として構成されてもよい。
【0028】
「上流」及び「下流」という用語は、光生成手段(ここでは、特に第1の光源)からの光の伝播に対するアイテム又は機構の配置に関するものであり、光生成手段からの光線の中の第1の位置に対して、光生成手段により近い光線の中の第2の位置は「上流」であり、光生成手段からより遠い光線の中の第3の位置は「下流」である。
【0029】
上述したように、物体又は生物付着防止システムは、複数の放射線出射面を備えてもよい。一部の実施形態では、これは、複数の生物付着防止システムを指し得る。しかしながら、代替的又は追加的に、一部の実施形態において、これは、複数のUV線放射要素を含む生物付着防止システムを指し得る。したがって、このような生物付着防止システムは、特に、UV線を提供するための複数の光源を含み得る。しかしながら、代替的又は追加的に、一部の実施形態では、これは、UV線を提供するように構成された複数の光源を含むUV放射素子を指し得る。単一のUV線出射面を有するUV放射要素は、(依然として)複数の光源を含むことができることに留意されたい。
【0030】
生物付着防止システムは、特に、物体の部分又はこの部分に隣接する水にUV線を提供するように構成される。これは、特に、照射段階中にUV線が適用されることを意味する。したがって、場合によっては、UV線照射が全く行われない期間もあり得る。これは、例えば、1つ以上のUV放射要素に対する制御システムによる切り替えにのみ起因するとは限らず、例えば、昼夜や水温などの所定の設定に起因するものであってもよい。例えば、一実施形態では、UV線がパルス状に照射される。
【0031】
特に、物体又は生物付着防止システムは制御システムを含み、特に、物体は、場合によっては生物付着防止システムに、又は物体の他の場所に組み込まれ得るような制御システムを含む。
【0032】
したがって、特定の実施形態又は態様では、生物付着防止システムは、ファウリング表面又はこれに隣接する水に抗ファウリング光(すなわち、UV線)を提供することによって、使用中、水に少なくとも一時的にさらされる物体のファウリング表面上の生物付着を防止又は低減するように構成され、抗ファウリング照明システムは、(i)抗ファウリング光を生成するように構成された光源と、(ii)制御システムとを含む(i)照明モジュールを含み、制御システムは、(i)生物付着リスクに関連するフィードバック信号と、(ii)抗ファウリング光の強度の時間ベース変更のためのタイマーとのうちの1つ以上に応じて抗ファウリング光の強度を制御するように構成されている。
【0033】
ある具体的実施形態では、制御システムは特に、(i)物体の位置、(ii)物体の動き、(iii)物体から第2の物体までの距離(d)、及び(iv)水に対する外面の部分の位置のうちの1つ以上の情報を含む入力情報に依存してUV線を制御するよう構成される。したがって、特に、生物付着防止システムは、人間のUV線被曝リスクの情報を含む入力情報に応じてUV線を制御するように構成される。
【0034】
特に、生物付着防止システムは、光学媒体を介してファウリング表面に抗ファウリング光を提供するように構成されてもよく、照明モジュールは、さらに、(ii)UV線(抗ファウリング光)の少なくとも一部を受け取るように構成された光学媒体を備え、光学媒体は、UV線(抗ファウリング光)の少なくとも一部を提供するように構成された放出面を含む。さらに、特に、光学媒体は、導波路及び光ファイバのうちの1つ以上を含み、UV線(抗ファウリング光)は、UVA及びUVC光のうちの1つ以上を含む。これらの導波路及び光学媒体は、本明細書ではさらに詳細には論じられない。
【0035】
さらなる態様において、本発明はまた、使用中、少なくとも一時的に水にさらされる物体の外面の(一部の)(生物)付着防止方法を提供し、方法は、本明細書に記載される生物付着防止システムを物体に提供するステップと、オプションで、(i)フィードバック信号(例えば、生物付着リスク及び/または人間UV線曝露リスクに関連するもの)、及び(ii)UV線(抗ファウリング光)の強度を(周期的に)変化させるためのタイマーのうちの1つまたは複数に応じて(物体の使用中に)UV線を生成するステップと、(照射段階中に)UV線を外面(の一部)に提供するステップとを含む。
【0036】
上述したように、UV放射要素は、特に光学媒体、例えば導波板を含み得る。かかる光学媒体は、好適には、突出要素の間に構成され得る。したがって、特定の実施形態では、UV放射要素は、光源のUV線を、(i)物体の外面の第1の部分、及び(ii)物体の外面の第1の部分に隣接する水のうちの上記1つ以上に供給するよう構成された光学媒体を含み、光学媒体は突出要素の間に構成され、また、突出要素に対して窪んでいるよう構成される。特に、突出要素と光学媒体との間の最小の高さの差は、少なくとも1mm、例えば1〜500mmの範囲内、一般的には約5〜200mmの範囲内、例えば5〜50mmであり得る。
【0037】
光学媒体はまた、保護表面に適用される(シリコーン)フォイルとして提供されてもよく、フォイルは、抗ファウリング光を生成するための少なくとも1つの光源と、フォイルを横切ってUV線を分配するためのシート状光学媒体とを備える。一部の実施形態では、フォイルは、0.1〜5cm、0.2〜2cmなど、数ミリメートルから数センチメートル程度の厚さを有する。一部の実施形態において、フォイルは、厚さ方向に対して垂直なあらゆる方向において実質的に限定されず、数十又は数百平方メートル程度のサイズを有する著しく大きなフォイルが提供されてもよい。フォイルは、抗ファウリングタイルを提供するよう、フォイルの厚さ方向に垂直な2つの直交する方向で実質的にサイズ制限されていてもよい。別の実施形態では、抗ファウリングフォイルの細長いストリップを提供するよう、フォイルは、フォイルの厚さ方向に垂直な一方向のみにおいて実質的にサイズ制限される。したがって、光学媒体、さらには照明モジュールも、タイル又はストリップとして提供することができる。タイル又はストリップは、(シリコーン)フォイルを含むことができる。
【0038】
さらに、一実施形態では、光学媒体は保護表面の近くに配置され(保護表面に取り付けられることを含む)、紫外光を受けるように結合され、光学媒体は、保護表面と直交する厚さ方向を有し、光学媒体の厚さ方向と直交する2つの直交方向は、保護面に平行である。また、光学媒体は、紫外光の伝播経路を提供するように構成され、紫外光は、厚さ方向に直交する2つの直交方向の少なくとも1つの方向において光学媒体内を進み、また、光学媒体の表面沿いのいくつかの地点で、紫外光の対応する部分が光学媒体から逃げる。
【0039】
一実施形態では、照明モジュールは、UV線を生成するための光源の二次元グリッドを備え、光学媒体は、光モジュールの光出射面から出るUV線の二次元分布を提供するために、光源の二次元グリッドからのUV線の少なくとも一部を光学媒体を横切って分配するよう構成される。光源の2次元グリッドは、チキンワイヤー構造、最密構造、行/列構造、又は任意の他の適切な規則的若しくは不規則な構造に配置することができる。グリッド内の隣接する光源間の物理的距離は、グリッドにわたって固定であってもよく、又は例えば、抗ファウリング効果を提供するために必要な光出力パワーに応じて、若しくは保護表面上の照明モジュール上の位置(例えば、船の船体上の位置)に応じて異なってもよい。光源の二次元グリッドを提供する利点は、UV線照射によって保護されるべき領域の近くでUV線が生成され得ること、光学媒体又は光導波路における損失を低減すること、及び光分布の均一性を増すことを含む。好ましくは、UV線は、一般に、放出面にわたって均一に分布される。これにより、さもなければファウリングが起こり得る低照射領域が減少又は防止されると同時に、抗ファウリングに必要な光よりも多くの光による他の領域の過剰照射に起因するエネルギーの浪費を低減又は防止することができる。一実施形態では、グリッドは光学媒体に含まれる。さらに別の実施形態では、グリッドは(シリコーン)フォイルによって含まれてもよい。しかしながら、本発明は、UV透過性材料(光学媒体材料)として、シリコーン材料に限定されない。UV線に対して透過性を有する他の(ポリマー)材料、例えばシリカ、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、テフロン(登録商標)、及びオプションで(石英)ガラスなどを適用することもできる。
【0040】
UV放射要素又は光学媒体は、突出要素間に構成され得る。これはまた、UV放射要素又は光学媒体が、突出要素が突出するよう通過するスルーホールを含み得る実施形態を含む。
【0041】
したがって、上述のように、光学媒体は、導波路に自身の放射線を結合する外部光源のUV線を受け取るように構成され、又は光源は、光学媒体に埋め込まれてもよい(そして必然的に光学媒体にUV線を結合する)。当然ながら、組み合わせが適用されてもよい。したがって、一実施形態では、光学媒体は1つ以上の光源を含み、1つ以上の光源は固体光源を含み、光学媒体は導波路材料としてシリコーンを含む。
【0042】
突出要素及びUV放射要素は、物体に対して異なる態様で配置され得る。これは、例えば、物体が、例えば、延長要素、すなわち突出要素を含む表面プロファイルを含むように製造されたか、又はこれを含むように改造されたかに依存し得る。したがって、一実施形態では、外面は突出要素を含む。したがって、物体は予め表面プロファイルを含んでいてもよく、又は表面プロファイルが後で物体に適用されてもよい。しかし、生物付着防止システムも突出要素を含み得る。したがって、一部の実施形態では、(i)物体が、突出要素を含む表面プロファイルを含み、表面プロファイルは前記外面に取り付けられる、及び(ii)生物付着防止システムが突出要素を含むのうちの1つ以上である。特に、表面プロファイル及び/又は突出要素並びに生物付着防止システムを含む単一のユニットが物体に提供され得る。したがって、さらなる実施形態では、物体は、突出要素を含む表面プロファイルを含むUV放射ユニットと、本明細書に規定される光学媒体とを含み、表面プロファイルは前記外面に取り付けられる。そのようなUV放射ユニットは、特に、(適切な)表面プロファイルを有さない既存の物体にとって有用であり得る。「UV放射ユニット」という用語は、外面に適用可能な単一のユニットについて使用されるが、UV放射ユニットについて規定される要素と同じ要素を含む、外面に設けられる複数の要素のアセンブリについて使用されてもよい。
【0043】
表面プロファイルは、1つ以上の生物付着防止システム、1つ以上のUV放射要素、又は1つ以上の光学媒体を収容するように構成された1つ以上のキャビティを提供する。また、かかる実施形態の組み合わせを適用することもできる。表面プロファイルは、特に、突出要素、及びオプションで(湾曲した)背面を含む。光源及び/又は光ファイバが、このような背面に構成され得る。
【0044】
上述したように、UV放射要素を外面に適用する場合、一部の実施形態では、元の外面が少なくとも部分的にUV放射要素、特に光学媒体によって覆われるので、実質的にUV放射要素の一部が外面となり得る。これは、元の外面上の生物付着を実質的に防ぐことができるが、問題をUV放射要素(又は光学媒体)に転嫁する。有利なことに、光学媒体の放射線出射面が外面として使用され、UV線が生物付着を除去し、かつ/又は生物付着を防止する。したがって、一実施形態では、光学媒体は、光学媒体の放射線出射面に光源のUV線を供給するように構成され、光学媒体は、突出要素間に構成され、また、突出要素に対して窪んでいるよう構成され、生物付着防止システムの放射線出射面は、前記外面の一部として構成される。したがって、放射線出射面及び/又は放射線出射面に隣接する水(物体の使用中)は、UV線で照射され得る。
【0045】
上述したように、突出要素の適切な材料は、その硬度のために、また多くの船体がスチール製であるという理由から、例えばスチールである。しかし、突出要素は、木材やゴムなどの別の材料で作られてもよい(上記も参照されたい)。これにより、突出要素の損傷後の交換が比較的容易になり得る。突出要素は、ストリップ又はリム(縁)などの細長いものであってもよく、又はピンタイプの突出要素を含んでもよい。当然ながら、異なるタイプの突出要素が物体によって含まれてもよい。小さい突出要素は、円形、正方形、長方形、楕円形、又は六角形の断面を有することができるが、他の形状も可能である。突出要素の(外面に平行な)断面積は、例えば、1cm
2〜250m
2の範囲内であり得る。しかしながら、突出要素は、例えば、船の船体の長さに渡って伸びる細長いものであってもよい(リム)。したがって、特定の実施形態では、突出要素はスチールを含み、突出要素は突出リムとして構成され、UV放射要素は突出リム間に構成される。
【0046】
さらなる実施形態では、光学媒体、UV放射要素、又は生物付着防止照明システムは、窪み又は凹部を備えるユニットの窪み又は凹部内に構成され、UV放射要素又は生物付着防止照明システムは、ユニットに対して窪んでいるよう構成される。例えば、(円形の)窪みが形成されている平らなスチール表面の窪みのそれぞれに、UV放射要素又は生物付着防止照明システムが「充填」される。これは、突出要素を1つの大きなつながった「形状」として、すなわち、例えば、ゴルフボールのような円形の「ディンプル」を持つプレートとして残し得る。
【0047】
光源は、突出要素間に設けられ、例えば、光学媒体の端部に配置され、又は光学媒体内に埋め込まれてもよい。光学媒体は、例えば(シリコーン)導波路を含み得る。さらに別の実施形態では、光学媒体は、光学媒体の長さにわたってUV線を提供するための光ファイバが埋め込まれた導波路を備えることができる。光源(又はファイバ)は、突出要素の間のほぼ中間に配置されてもよい。これは、光学媒体にわたるUV線の良好な分配を提供し得る。しかしながら、光源(又はファイバ)は、別の最近隣接突出要素よりも、ある最近隣接突出要素の近くに配置されてもよい。例えば、2つの光源(又は2つのファイバ)(のセット)が、それぞれ、対応する突出要素により近い位置に配置されてもよい。これは、光の良好な分配を保証するだけでなく、光源(又はファイバ)の追加の保護を提供し得る。したがって、一実施形態では、UV放射要素は光源を含み、光源は、2つ以上の最も近い隣接する突出要素を有し、第1の最近隣接突出要素と光源との間の第1の最短距離(d1)は、第2の最近隣接突出要素と光源との間の第2の最短距離(d2)の50%以下である。この定義は、例えば埋め込み光源の代わりに光ファイバが適用される場合にも適用され得る。さらに、追加で又は代替的に、突出要素とUV放射要素との間の最小の高さの差(d3)は、特に少なくとも1mmである。
【0048】
特定の実施形態では、物体は船舶を含み、外面はスチール船体を含む。しかしながら、例えば、木材、ポリエステル、複合材、アルミニウム、ゴム、ハイパロン、PVC、ガラスファイバなどからなる群から選択される他の(船体)材料も可能である。
【0049】
さらに別の態様では、本発明は、上記生物付着防止システム自体、すなわち、(物体の外面の一部への)UV照射用のUV放射要素を含む生物付着防止システムであって、UV放射要素は、1つ以上の光源を含み、(照射段階中)(i)前記外面の前記部分及び(ii)前記外面の前記部分に隣接する水のうちの1つ以上をUV線で照射するように構成される、システムを提供する(下記も参照されたい)。本発明は、さらに、物体と組み合わせた生物付着防止システムを参照して特に説明される。したがって、さらに別の側面では、本発明は、突出要素を含む表面プロファイルと、光源のUV線を光学媒体の放射線出射面に供給するように構成された光学媒体とを含むUV放射ユニットを提供し、光学媒体は、突出要素に対して窪んでいるよう構成される。特定の実施形態では、UV放射要素は、(少なくとも2つの)突出要素を含む表面プロファイルと、光源のUV線を光学媒体の放射線出射面に供給するように構成された光学媒体とを含み、光学媒体は、突出要素間に構成され、また、突出要素に対して窪んでいるよう構成される。
【0050】
さらに別の特定の実施形態では、UV放射ユニットは複数の突出要素を含み、光学媒体は突出要素間に構成され、光学媒体は1つ以上の光源を含み、1つ以上の光源は固体光源を含み、光学媒体は、特に、導波路材料としてシリコーンを含み、表面プロファイル及び突出要素は特にスチールを含み、突出要素とUV放射要素との間の最小の高さの差は少なくとも1mm(又はそれ以上、上記も参照されたい)である。特に、突出要素と光学媒体との間の最小の高さの差は、少なくとも1mm(又はそれ以上、上記も参照されたい)である。
【0051】
したがって、一実施形態では、物体の外面(の少なくとも一部)は、突出要素及び1つ以上の放射線出射面を含み得る。
【0052】
さらに別の態様では、本発明はまた、使用中、少なくとも一時的に水にさらされる物体に生物付着防止システムを提供する方法を提供し、この方法は、物体への組み込み及び/または外面への取り付けなど、船舶等の物体に生物付着防止システムを提供するステップを含み、UV放射要素は、物体の外面の一部、及び(使用中に)該部分に隣接する水のうちの1つ以上にUV線を提供するように構成される。特に、UV放射要素は、外面に取り付けられてもよく、又は外面の(第1の)部分として構成されてもよい。上述したように、生物付着防止システムは、異なる態様で物体に適用され得る。したがって、他の側面では、本発明は、使用中、少なくとも部分的に水中に沈められる物体を生物付着から保護する方法を提供し、物体は、船舶及びインフラ物体からなる群から選択され、方法は、(i)UV放射要素を含む生物付着防止システムであって、UV放射要素は、照射段階中、(i)物体の外面の第1の部分、及び(ii)物体の外面の第1の部分に隣接する水のうちの1つ以上をUV線で照射するよう構成される、生物付着防止システムと、(ii)複数の突出要素とを物体に提供するステップを含み、UV放射要素は、突出要素間に構成され、また、突出要素に対して窪んでいるよう構成される。
【0053】
上記方法の特定の実施形態では、外面が複数の突出要素を含み、方法は(さらに)、生物付着防止システムを物体に提供するステップを含み、UV放射要素は、突出要素間に構成され、また、突出要素に対して窪んでいるよう構成される。例えば、これは、船の船体が、生産中に生成されるか、又は後に船体に適用されるプロファイルを含む場合に該当し得る。しかし、さらに別の実施形態では、方法は、(i)突出要素を含む表面プロファイル、及び(ii)請求項2に記載の光学媒体を含むUV放射ユニットを提供するステップを含み、光学媒体は、突出要素間に構成され、また、突出要素に対して窪んでいるよう構成され、方法はさらに、表面プロファイルを外面に取り付けるステップを含む。そのような実施形態では、完全なユニットが物体の外面と関連付けられる。
【0054】
「可視」、「可視光」、又は「可視放射」という用語は、約380〜780nmの範囲の波長を有する光を指す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1aは、使用中、少なくとも部分的に水2に浸される物体10を概略的に示す。物体100は、船舶1及びインフラ物体15(
図1bも参照されたい)からなる群から選択される。物体10は、UV放射要素210を含む生物付着防止システム200をさらに備え、UV放射要素210は、照射段階中、(i)物体10の外面11の第1の部分111、及び(ii)物体10の外面11の第1の部分111に隣接する水2のうちの1つ以上のをUV線221で照射するよう構成される。参照符号13は水線を示し、参照符号LLは(船舶1の)満載喫水線(load line)を示す。突起要素は、特に、例えば、満載喫水線LLの上下1メートルの範囲内にのみ配置され得る(以下も参照)。
【0058】
上述したように、参照番号1で示される「船舶」という用語は、例えば、
図1bに概略的に示されるように、帆船、タンカー、クルーズ船、ヨット、フェリー、潜水艦(
図1bの参照番号10d)などのボート又は船(
図1bの参照番号10a) を指し得る。参照番号15で示される「インフラ物体」という用語は、特に、ダム/堰(
図1bの参照番号10e/10f)、ポンツーン(
図1bの参照番号10c)、油井(
図1bの参照番号10b)など、通常、実質的に固定配置される水中アプリケーションを指し得る。
【0059】
特定の実施形態では、物体10はさらに、(i)物体10の位置、(ii)物体10の動き、(iii)物体10から第2の物体20までの距離、及び(iv)水に対する外面11の部分111の位置のうちの1つ以上の情報を含む入力情報に依存してUV線221を制御するよう構成された制御システム300を含む(例えば、
図2gを参照されたい)。したがって、特に、生物付着防止システムは、人間のUV線被曝リスクの情報を含む入力情報に応じてUV線を制御するように構成される。一実施形態では、生物付着防止システム200は、統合制御システム300及び統合センサ310を含み得る。したがって、制御システム300は、(i)生物付着リスクに関連するフィードバック信号、及び(ii)時間に基づき抗ファイルイング光の強度を変化させるためのタイマーのうちの1つ以上に応じて抗ファウリング光の強度を制御するように構成され得る。このようなフィードバック信号は、センサによって提供されてもよい。
【0060】
物体10は、さらに突出要素100を備え、UV放射要素210は突出要素100の間に構成され、突出要素100に対して窪んでいるよう構成される。
図2a〜
図2cは、生物付着防止システム200又はUV放射要素210がどのように突出要素間に構成され得るかを概略的に示す。ここで、一例として、生物付着防止システム200は、基本的に、UV放射要素210からなり、UV放射要素210は、基本的に、参照符号230で示される放射線出射面にUV線を導く光学媒体270(導波路)からなる。しかし、生物付着防止システム200は、複数のUV放射要素210及び他の要素、例えば制御ユニットなども含むことができる(例えば、上記も参照)。
図2aには、生物付着防止システム200/UV放射要素210/光学媒体270の構成の3つの変形例が概略的に示されている。
【0061】
変形例Iにおいて、放射線出射窓230は実質的に平坦であり、突出要素100は、特に、実質的に矩形のキャビティ121を画定する縁(以下も参照)であり、キャビティ121は、突出要素100に対して窪んでおり、生物付着システム200/UV放出要素210/光学媒体270がその中に構成される。参照番号d3は、突出要素100とUV放射要素210との間の高さの差を示し、参照番号d4は、突出要素100と光学媒体270との間の高さの差を示す。一例として、固体光源のような光源220が光学媒体に埋め込まれている。
【0062】
変形例IIでは、実質的に同じキャビティ121が突出要素100の間に設けられているが、放射線出射面230は凹状である。ここでは、一例として、2つの光源220が光学媒体270に埋め込まれている。(各光源から)突出要素100への距離は異なることに留意されたい。したがって、光源220は、2つ以上の最も近い隣接する突出要素100を有し、第1の最近隣接突出要素100と光源220との間の第1の最短距離d1は、第2の最近隣接突出要素100と光源220との間の第2の最短距離d2の50%以下である。
【0063】
変形例IIIでは、突出要素100の間に設けられたキャビティ121は、凹状の底面又はキャビティ背面122を有する。ここでは、放射線出射面230は平坦になるように選択される。さらに、一例として、光学媒体270によって光ファイバ又はファイバ225が含まれる。光源220(図示せず)は、UV線221をファイバに結合し、ファイバは光を光学媒体に結合し得る。UV線をファイバ及び/又は光学媒体に結合させる方法は、当該技術分野で知られている。
図2aはまた、突出要素100を含む表面プロファイル110と、光源220のUV線221を光学媒体270の放射線出射面230に送るように構成された光学媒体270とを含むUV放射ユニット1210の実施形態を示し得る。光学媒体270は、突出要素100間に構成され、また、突出要素100に対して窪むように構成されている。このようなユニット1210は、物体の既存の外面に構成することができる(
図2cも参照)。
【0064】
図2bは、ここでは、UV放射要素、及び上から見ると縁102として構成される突出要素100の構成の3つの変形例を概略的に示している。
図2bの変形例Iは、例えば、
図2aの変形例Iに対応し得る。光源列220に注意されたい。
図2bの変形例IIは
図2aの変形例IIに対応し得るが、ここでは(光源220の代わりに)2本のファイバ225が選択されている。端部において、光源220は、UV線221をファイバ225に結合するように構成されていることに留意されたい。
図2bの変形例IIIは、例えば、
図2aの変形例IIIに対応し、2つの縁102の間にファイバ225を有する。
【0065】
図2cは、船舶1のような物体10の外面11に対する複数のUV放射要素210の構成を概略的に示す。複数のUV放射要素210は、例えば、単一の生物付着防止システム200によって含まれ得る。突出要素100のために、例えば波止場16との衝突は、一般的に、より繊細な光源又はUV放射要素210などの光学要素に対して必ずしも有害とはならない。参照番号13は水線を示す(LLとも示される)。
【0066】
縁の代わりに、ピン状または他の形状の突出要素100を適用することもできる。
図2d〜
図2eは実施形態を示し、
図2dでは、変形例Iが突出要素100間に構成されたUV放射要素を示し、変形例IIが、突出要素100がUV放射要素210内の開口部107、例えば光学媒体270内の開口部を通って突出する上面図を示す。
図2eは、
図2dの変形例IIと同様の変形例を概略的に示すが、ここでは側面図又は断面図(垂直断面図)である。
【0067】
図2fは、UV LEDなどの光源210がグリッド状に配置され、一連の並列接続で接続されたチキンワイヤー実施形態を示す。LEDは、はんだ付け、接着、又はLEDをチキンワイヤーに接続するための他の公知の電気接続技術のいずれかによってノードに取り付けることができる。1つ以上のLEDを各ノードに配置することができる。DC又はAC駆動が実装され得る。ACを使用する場合、逆並列構成の一組のLEDを使用することができる。当業者は、各ノードにおいて、逆並列構成の2つ以上のLEDペアが使用され得ることを知る。チキンワイヤー(六角状)グリッドの実際のサイズ、及びグリッド内のUV LED間の距離は、ハーモニカ構造を伸ばすことによって調整することができる。チキンワイヤーグリッドは光学媒体に埋め込まれてもよい。
【0068】
図2gは、物体10の実施形態としての船舶1が、複数の生物付着防止システム200、及び/又は、複数のUV放射要素210を含む1つ以上のかかる生物付着防止システム200を含む実施形態を概略的に示す。例えば、特定のかかる生物付着防止システム200の高さ、及び/又は、例えば、水(線)に対するUV放出要素210の高さに依存して、それぞれのUV放射要素210が駆動され得る。
図2gはまた、満載喫水線LLを示す。満載喫水線LLの約0.5〜2m上(h2)及び約0.5〜2m下(h1)に、突出要素100が適用されてもよい。
【0069】
図2hは、例えば、湾曲キャビティ背面122を有するUV放射ユニット1210の変形例をより詳細に概略的に示す。かかる湾曲は、UV放射線出射面におけるUV線221の良好な分配を提供するために使用され得る。オプションで、キャビティ背面122はまた、UV反射コーティング123を含み得る。
【0070】
図2iは、
図2dのある種のネガティブを概略的に示す。ここでは、光源、又は特にUV放射要素210、又は光学媒体270、又は生物付着防止システム200を収容するための凹部1107を有する、突出要素として使用可能なユニットが提供される。ここでは、一例として、凹部又は窪み1107は円形である。しかし、正方形又は長方形を含む他の形状も使用することができる。さらに、構成は、六角形構成などのように、異なる態様で「密に(packed)」されてもよい。このようなユニットは、全体として、物体の外面に取り付けられてもよい。これにより、ユニットの表面が、物体の外面の(少なくとも一部)になり得る。
【0072】
上記したように、船体はしばしば、防舷材や港湾の岸壁、水面に浮かんでいる物体、タグボート、ガソリン補給船などの機械的衝撃によって損傷する(
図2c参照)。機械的損傷は満載喫水線(
図2c/2gの参照符号LL参照)に沿って、特にその上2mから下2mに集中する。本明細書では、この領域は「ブートトップ」と示される。また、この領域は海水及び日照の両方にさらされるため、厳しい環境下にある。
【0073】
当然ながら、水線は船の荷重に応じて変化し得るが、通常は、船舶に示される満載喫水線に近い。本明細書では、船舶の船体をきれいに保つためのUVベース生物付着防止構造が提案される。とりわけ、この思想は、この構造を機械的ストレスから保護するためのソリューションを表す。これは、ブートトップにのみ適用されてもよい。
【0074】
新たに製造される船については、スチール船体プレートが曲面状に丸められ得る。本明細書に規定されるソリューションが後付けされる既存の船の場合、船にスチールプロファイルが取り付けられ得る。曲面は、BaO
2又は他の反射成分を含有する塗料などの高UV反射材料でコーティングされ得る。垂直方向の湾曲は、UV光の十分な広がりを生じるように最適化されるべきである。これは、光源が焦点に位置する放物型であり得る。光源は、例えば、UVレーザー及び/又はUV LEDストリングから光が発せられる石英ファイバであり得る。プロファイルの大きさ、及びLED間の距離は、cm
2あたりに放出されるパワーに依存する。生物付着防止として効果的であるためには、放射線出射面から出る光パワーは、特に、1mW/dm
2以上であるべきである。
【0075】
UV光源は、シリコーンなどのUV透過性材料に埋め込まれ得る。スチールプロファイルが透過性材料よりも突き出るので、機械的な保護を提供するが、同時に、UV光がスチールリムをきれいに保つことを確保するために、数ミリメートルに制限される。材料及び光源は、配線を含め、工場で製造されて、ソリューションが船に追加される前にプロファイルに取り付けられてもよい。曲面の代わりに、他の形状も可能である。例えば、
図2a(II)及び
図2b(II)には、同じ思想がT字形プロファイルで描かれている。これは、光源を角部に配置することによって、光源をさらに保護することができるという利点を有する。他の実施形態は、スチール、丈夫なシリコン、又はガラス製のバンパーの追加に基づき得る(
図2d及び
図2e参照)。
【0076】
本明細書において、「実質的に全ての光」又は「実質的に〜からなる」などにおける「実質的に」という用語は、当業者に理解されるであろう。「実質的に」という用語は、「全体的に」、「完全に」、「全ての」等の実施形態も含み得る。したがって、実施形態では、実質的にという形容詞を削除することもできる。適用可能であれば、「実質的に」という用語は、90%以上、例えば95%以上、特に99%以上、さらに特に99.5%以上に関連し、また、100%を含む。用語「含む」は、用語「含む」が「からなる」を意味する実施形態も含む。「及び/又は」という用語は、特に、「及び/又は」の前後に記載されたアイテムの1つ以上に関連する。例えば、「アイテム1及び/又はアイテム2」というフレーズ、及び同様なフレーズは、アイテム1及びアイテム2の1つ以上に関連し得る。ある実施形態において、「含む」という用語は「からなる」を指し得るが、別の実施形態では、「少なくとも規定された種類、さらに場合により1つ以上の他の種類を含む」を指し得る。
【0077】
さらに、明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも逐次的又は時間的な順序を説明するものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示されているもの以外の順序で動作可能であることを理解されたい。
【0078】
本明細書の装置は、とりわけ、動作中の状態で説明されている。当業者には明らかなように、本発明は、動作方法又は動作中の装置に限定されない。
【0079】
上記実施形態は本発明を限定するものではなく、当業者は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、多くの代替的実施形態を設計することができることに留意されたい。特許請求の範囲において、括弧間に置かれた参照符号は、請求項を限定するものとして解釈されるべきではない。「含む」という動詞及びその活用形の使用は、請求項に記載された要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。要素に先行する冠詞「a」又は「an」は、複数のかかる要素の存在を排除するものではない。本発明は、複数の別々の要素を含むハードウェアによって、及び適切にプログラムされたコンピュータによって実施され得る。いくつかの手段を列挙する装置クレームにおいて、これらの手段のうちのいくつかは、同一のハードウェアアイテムによって具現化されてもよい。複数の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているからといって、これらの手段の組み合わせが好適に使用することができないとは限らない。
【0080】
本発明はさらに、明細書に記載された及び/又は添付図面に示された特徴の1つ以上を備えた装置を含む。本発明はさらに、明細書に記載された及び/又は添付図面に示された特徴の1つ以上を含む方法又はプロセスに関する。
【0081】
本特許で議論される様々な態様は、さらなる利点を提供するために組み合わせることができる。さらに、一部の特徴が、1つ以上の分割出願の基礎を形成し得る。