【実施例1】
【0011】
始めに、本発明に係る角度規制具Aについて説明する。
【0012】
<1>全体構成(
図1)
図1は、本発明に係る角度規制具Aの正面概略図である。
角度規制具Aは、足場を構成する支柱の最下層に設けた、桁方向の水平材と梁方向の水平材との間を繋いで、いわゆる火打ち材の機能を発揮するため部材である。
角度規制具Aは、主として、連絡部10、第1の受け部20a、第2の受け部20b、を少なくとも有して構成する。
以下、各部の詳細について説明する。
【0013】
<2>連絡部(
図1)
連絡部10は、後述する第1の受け部20aと第2の受け部20bとを繋いで連絡するための部材である。
本実施例では、連絡部10を鋼管で構成し、該鋼管の一端に第1の受け部20a、他端に第2の受け部20bを溶接によって接合している。
【0014】
<2.1>連絡部の形状
本発明において連絡部10の形状は特段限定しない。
すなわち、連絡部10は直線形状を呈する部材であっても良いし、複数辺からなる部材であっても良いし、湾曲形状を呈する部材であってもよい。
本実施例では、連絡部10を、各水平材に対して略45°の内角を有する斜材で構成しており、各水平材と連絡部10とで略直角二等辺三角形状を呈している。
【0015】
<3>第1の受け部・第2の受け部(
図1)
第1の受け部20aおよび第2の受け部20b(以下、単に「受け部20」ともいう。)は、足場を構成する支柱の最下層(ジャッキベースの直上)に位置する水平材に脱着するための部材である。
【0016】
<3.1>脱着機構の種類
受け部20における水平材との脱着機構は、嵌め込み式、狭持式、把持式などの公知の取付機構を採用することができる。
本実施例では、受け部20を嵌め込み式で構成しており、第1の受け部20aを桁方向の水平材に上方から嵌め込み、第2の受け部20bを梁方向の水平材に上方から嵌め込むよう構成している。
【0017】
<3.2>受け部の構成例
本実施例に係る受け部20は、水平材を嵌め込んで収容する収容部30と、水平材の長手方向に直交する方向にクサビ43を打ち込んで、収容部30に収容した水平材の抜け出しを防止する抜け止め部40を少なくとも有する。
以下、各部の詳細について説明する。
【0018】
<3.3>収容部
収容部30は、脱着対象の水平材を収容するための部材である。
収容部30の形状は、水平材を収容可能な形状であれば如何なる形状であってもよい。
本実施例では、収容部30を、脱着対象の水平材の長手方向からみて下部を開口したU字プレートで構成している。
この収容部30の長さが極端に短いと、収容した水平材の拘束効果が発揮しにくいことから、ある程度余裕を持った長さとするよう、連絡部10との接合部分から延伸しておくことが好ましい。
本実施例では、収容部30の延伸方向を、連絡部10と受け部との接合部分から外側へと離れる方向としている。
【0019】
<3.4>抜け止め部(
図1,2)
抜け止め部40は、受け部20と水平材との間での抜け出しを防止するための箇所である。
本発明に係る抜け止め部40は、クサビ結合、クランプ結合またはボルト結合の何れかを選択することができる。
本実施例では、抜け止め部40をクサビ結合で構成している。
また抜け止め部40のクサビは受け部に一体化するように取り付けておくとクサビの紛失を防止できる点で好ましい。
【0020】
<3.4.1>抜け止め部の構成例(
図2)
本実施例に係る抜け止め部40の構成の詳細について、
図2を参照しながら説明する。
図2に示す抜け止め部40は、収容部30の側壁から横方向に張り出すように設けたU字プレートで構成した対向壁41と、該対向壁41間を繋ぐように配置した軸部42と、前記軸部42に沿って摺動および回動自在な溝431を内部に設けてなるクサビ43と、前記収容部30の外側および内側の側壁をそれぞれ貫通してある挿通孔44とを有して構成している。
使用前の抜け止め部40では、クサビ43の先端側の溝431に軸部42が接近しており、クサビ43の長手方向は受け部20と略並行して整列した状態となっている。
抜け止め部40を使用する際には、受け部20に水平材を嵌め込んだ状態から、90°回転させたクサビ43を、前記した挿通孔44へと差し込み、適宜ハンマーなどでクサビ43の頭部を打突して緊結することで、収容部30の開口を閉塞し、受け部20に収容した水平材の抜け出し・離脱を防止することができる。
【0021】
<3.4.2>抜け止め部の位置(
図1)
抜け止め部40の位置は、本発明において特段限定しない。
なお、本実施例では、抜け止め部40を、連絡部10と受け部20との接合部分から、外側へと離れる方向に離隔した位置に設けている。
これは、抜け止め部40を構成するクサビ43が連絡部10に干渉することを防止することや、緊結したクサビ43の先端をハンマーで打突する際に、連絡部10が作業の邪魔にならないようにすること、などの理由による。
【0022】
<4>取付イメージ(
図3)
図3は、角度規制具Aを取り付けた際のイメージを示す概略平面図である。
図3に示す水平材Y(Y1,Y2)は、足場を構成する支柱Xの最下層に設けてある水平材である。
この桁方向の水平材Y1と梁方向の水平材Y2とで平面視して略矩形形状を呈する空間において、少なくとも二箇所以上の隅部にそれぞれ角度規制具Aを上から取り付け、前記隅部の角度を略直角に固定する。
本実施例では、対角線上に配置した二つの隅部に、角度規制具Aを取り付けている。
なお、この角度規制具Aは水平材の下から上へと差し込んで使用してもよい。
【0023】
<4.1>作用効果
上記取付構造によれば、角度規制具Aを取り付けた隅部の平面視角度を略直角に固定した箇所を二箇所以上設けることで、支柱Xに対する各水平材Yの移動を規制することができる。その結果、足場の滑動を防止することができる。
【0024】
<5>その他の変形例
角度規制具Aのその他の構成例について以下説明する。
【0025】
<5.1>横から脱着するタイプ(
図4)
本発明に係る角度規制具Aは、水平材Yの側方から脱着する態様とすることができる。
図4(a)は本変形例に係る角度規制具の概略平面図であり、
図4(b)は、該角度規制具の概略正面図である。
図4(b)に示すように、本変形例に係る角度規制具Aは、受け部20を構成する収容部30の開口を側方に設け、抜け止め部40を収容部30の上部に設けてクサビ43を上方から差し込み可能に構成している。
使用時には、
図4(a)に示すように角度規制具Aを各水平材Yで囲んだ空間の内部側から隅部に向かって側方に差し込み、その後クサビ43を上方から打ち込んで角度規制具Aと水平材Yとを一体化する。
【0026】
<5.2>抜け止め部を設けないタイプ(図示せず)
本発明に係る角度規制具Aは、各受け部20の一部または全部について、抜け止め部40を省略し、前記収容部30で水平材Yを嵌め込んで固定する態様とすることができる、
このとき、収容部30の収容幅や開口幅を水平材Yの外径よりも狭くし、角度規制具Aを押し込んで嵌合するような態様としておくと、水平材Yから角度規制具Aが振動などによって簡単に外れることを防止することができる
【実施例2】
【0027】
次に、
図5を参照しながら本発明に係る角度規制具Aを用いた足場の安定化構造について説明する。
【0028】
<1>足場の安定化構造(
図5)
足場の安定化構造とは、足場の滑動および沈下を防止することで、足場をより安定化させるための構造を指す。
図5に示す足場の安定化構造は、足場を構成する支柱Xの最下層に設置したジャッキベースX1の下に沈下防止材Bを設置し、さらに前記支柱Xの最下層に設けている桁方向の水平材Y1と梁方向の水平材Y2との間に、本発明に係る角度規制具Aを設けた状態である。
上記した足場の安定化構造では、滑動防止機能は角度規制具Aが担い、沈下防止機能は沈下防止材Bが担うこととなる。
以下、各機能について説明する。
【0029】
<2>滑動防止機能
滑動防止機能は、各水平材Y間に取り付ける角度規制具Aが担う。
作用効果は、前記した実施例1の通りであるため詳細な説明は省略する。
【0030】
<3>沈下防止機能
沈下防止機能は、ジャッキベースX1の下に設けた沈下防止材Bが担う。
沈下防止材Bは、その接地面積をジャッキベースX1の接地面積よりも広くすることで、単位面積あたりの荷重負担を軽減することで足場の沈下を防止する部材である。
沈下防止材Bは、ジャッキベースX1毎に独立した部材である敷盤B1を設けるタイプ(
図5(a))や、桁行方向に連続して複数のジャッキベースX1を載置する敷板B2を設けるタイプなどがある。
【0031】
<4>作用効果
上記した安定化構造によれば、足場の滑動防止機能を角度規制具Aが担うため、沈下防止材Bに滑動防止機能を発揮させるための機構や加工を施す必要が無い。
特に、
図5(b)に示す敷板B1からなる沈下防止材Bを採用する際に、敷板B1とジャッキベースX1とを釘止めすることで滑動防止機能を付与する必要がなくなるため、組立時や解体時の作業効率性の向上に寄与する。