(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6936797
(24)【登録日】2021年8月31日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】IL−23に対するポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 16/24 20060101AFI20210909BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20210909BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20210909BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20210909BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20210909BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20210909BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20210909BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20210909BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20210909BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20210909BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20210909BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20210909BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20210909BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20210909BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20210909BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20210909BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20210909BHJP
【FI】
C07K16/24ZNA
C07K16/18
C07K19/00
A61K39/395 N
A61P29/00
A61P1/00
A61P31/00
A61P31/12
A61P17/06
A61P35/00
A61P37/06
A61P37/02
A61P11/06
A61P11/00
A61P19/02
A61P29/00 101
!C12N15/13
!C12P21/08
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-521975(P2018-521975)
(86)(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公表番号】特表2018-538251(P2018-538251A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】EP2016076076
(87)【国際公開番号】WO2017072299
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2019年10月10日
(31)【優先権主張番号】62/248,468
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505166225
【氏名又は名称】アブリンクス エン.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】バイセ,マリー−アンジュ
【審査官】
小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−525408(JP,A)
【文献】
特表2014−525752(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/111550(WO,A1)
【文献】
特表2014−520134(JP,A)
【文献】
特表2011−504740(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/142534(WO,A1)
【文献】
特表2013−515460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:2及び配列番号:3のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項2】
配列番号:2のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項3】
配列番号:3のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項4】
請求項1記載のポリペプチドを含む組成物。
【請求項5】
IL−23、及び/又はIL−23により媒介されるシグナル伝達に関連する疾患を予防又は治療するための、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項6】
炎症性障害及び炎症、腸疾患(結腸炎、クローン病、炎症性腸疾患)、感染症、乾癬、ガン、自己免疫疾患、多発性硬化症、サルコイドーシス、移植拒絶、嚢胞性線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチ、ウイルス感染症、又は分類不能型免疫不全症を予防又は治療するための、請求項1記載のポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL−23に対するアミノ酸配列に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明のアミノ酸配列は、2つのリンカー(9GSリンカー)によって連結される、IL−23に対する2つのナノボディ及び血清アルブミンに対する1つのナノボディを含む。
【0003】
とりわけ、本発明は、配列番号:2及び配列番号:3のアミノ酸配列(表1及び
図1に示す)(本明細書では「本発明の抗IL 23ポリペプチド」とも呼ぶ)に関する。
【0005】
本発明の他の態様、実施形態、特徴、使用及び利点は、本願明細書での開示に基づき当業者にとって明らかになるはずである。
【0006】
本願において、免疫グロブリン重鎖可変ドメインにおけるアミノ酸残基/位置は、Kabatに従う番号付けで示される。便宜のため、本願で具体的に言及されるアミノ酸配置のいくつかと、いくつかの代替的番号付けシステムに従うそれらの番号付け(Aho及びIMGTなど。注記:別途明示的に示さない限り本願明細書及び請求項に対しては、Kabat番号付けが決定的であり、他の番号付けシステムを参照用に示すに過ぎない)を列挙した表を
図2に示す。
【0007】
関連ナノボディ基本単位に基づくIL−23に対するアミノ酸配列は、国際公開公報第2009/068627号、国際公開公報第2010/142534号及び国際公開公報第2011/135026号より公知である。これらの先行技術配列は配列番号:4〜23として表1に示される。
図3に、これらの先行技術配列の、本発明に係る配列番号:2及び配列番号:3の配列とのアライメントを示す。配列番号:1の配列は、アライメント作製を目的として、すなわち、本発明のアミノ酸配列と、配列番号:4〜23の先行技術配列との間のアミノ酸の「相違」を明らかに示すために挙げられている参照配列である。配列番号:1は、配列番号:22の先行技術配列に対応するが、N末端のGlu−残基(E)の代わりにN末端Asp−残基(D)を有する。この参照配列は、実施例1コンパレータとしても使用される。
【0008】
配列番号:4〜23のアミノ酸配列と比較して、本発明の抗IL 23ポリペプチドは、いくつかの特異的なアミノ酸残基/変異(
図3のアライメントに示す)や、C末端アラニン残基を含む。これらの変異及びアラニン伸長の存在の結果として、本発明のアミノ酸残基は、配列番号:4〜23の先行技術配列と比較していわゆる「既存抗体」による結合の大幅な低下を示す(国際公開公報第12/175741号、国際公開公報第2013/024059号と、例えばHollandら(J. Clin. Immunol. 2013, 33(7):1192-203)や、譲受人による同時係属中の前公開されなかったPCT出願PCT/EP2015/060643号、2015年5月13日出願、発明の名称「改良された免疫グロブリン可変ドメイン(Improved immunoglobulin variable domains)」(国際公開公報第2015/173325号、2015年11月19日公開、を参照)。
【0009】
本願で明示的に定義されていない用語はすべて、国際公開公報第2009/068627号にて定義されるとおりである。
【0010】
第一の態様では、本発明は、配列番号:2及び配列番号:3のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に関する。これらのアミノ酸配列はIL−23に結合することができ(とりわけ、国際公開公報第2009/068627号に定義されるように特異的に結合する)、且つ/又はIL−23(又はそのレセプター)によって媒介されるシグナル伝達をモデュレーションすることができ、また及びそれらアミノ酸配列を、IL−23に関連する疾患を予防又は治療するために使用することができる(本願明細書及び国際公開公報第2009/068627号、国際公開公報第2010/142534号及び国際公開公報第2011/135026号に記載されるとおり)。
【0011】
具体的な態様では、本発明は、配列番号:2のアミノ酸配列であるアミノ酸配列に関する。
【0012】
さらに別の具体的な態様では、本発明は、配列番号:3のアミノ酸配列であるアミノ酸配列に関する。
【0013】
本願における開示から、本発明の抗IL−23ポリペプチドはIL−23に対するもの(国際公開公報第2009/068627号に定義のとおり)であって、本願で参照される先行技術配列の改良された変種であることは当業者に明らかであろう。したがって、本発明の抗IL−23ポリペプチドは、先行技術配列と同じ目的、使用及び利用のために、例えばIL−23及び/又はそのレセプター(1以上)により媒介されるシグナル伝達のモデュレーションを行うため;並びに/又はIL−23及び/若しくはIL−23により媒介されるシグナル伝達に関連する疾患、例えば腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、IBD)、感染症、乾癬、ガン、自己免疫疾患(MSなど)、サルコイドーシス、移植拒絶、嚢胞性線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチ、ウイルス感染症、分類不能型免疫不全症等の炎症性障害及び炎症、並びに本願で引用される先行技術に記載の種々の疾患及び障害の、予防若しくは治療に使用されることができる。ここでもまた、国際公開公報第2009/068627号、国際公開公報第2010/142534号及び国際公開公報第2011/135026号がさらに参照される。
【0014】
例えば、国際公開公報第09/068627号の第4〜5頁に記載されるとおり、IL23は、炎症性腸疾患で観察される慢性炎症の原因となることが示された。これは、IL23R遺伝子が炎症性腸疾患に関与しているものとして同定されたという事実によって確認された。p19ノックアウトマウスはコラーゲン誘発性の関節炎及び結腸炎に耐性であるということも見出されているが、比較対照となり得るp35ノックアウトマウスはコラーゲン誘発性の関節炎により罹りやすいことが見出された。また、p19ノックアウトマウスをIL−10ノックアウトマウスと交配させせると、生じた子孫は結腸炎に耐性であったが、p19ノックアウトマウスのIL−10ノックアウトマウスとの類似の交配の結果、結腸炎に罹りやすい子孫が生じた。p19に対するモノクローナル抗体は、EAE、多発性硬化症の前臨床動物モデルの発症を阻害し、IL−17の血清レベル(IL−12によって調節されない)を低下させることがさらに見出された。また、IL−12よりむしろIL−23は、CNS自己免疫性炎症において重要なサイトカインであるらしい。この結果は全て、IL−23/p19が、結腸炎、クローン病、IBD、多発性硬化症、関節リウマチ並びに他の疾患のいくつか及び本願に記載の障害の処置のための興味深いターゲットになり得るということを示唆する。また、IL23及びIL27(IL−12ファミリーからの他のヘテロダーマーサイトカインの2つ)もまた、別異の機能を用いてではるがTH1−細胞応答を調節する。IL−23がCD4+ T細胞を刺激してIL−17を生成する能力もまた、自己免疫性炎症の発症及び維持において主要な役割を有することとして報告されている。
【0015】
また、国際公開公報第09/068627号の実施例45は、国際公開公報第09/068627号のポリペプチド(したがって、伸長による、本発明の抗IL−23ポリペプチド)はまた、全身/非経口投与によるか、又はたとえばクリーム又はローション剤を用いた局所処置により、乾癬の予防及び治療においても有用であり得る(国際公開公報第09/068627号の第328及び第331〜332頁参照)ことを示している。
【0016】
別の態様では、本発明は、本発明の抗IL−23ポリペプチドをエンコードする核酸に関する。このような核酸を本明細書では「本発明の核酸」とも呼ぶ。
【0017】
別の態様では、本発明は、本発明の抗IL−23ポリペプチドを発現する(又は好適な環境下に発現することができる);及び/又は本発明の核酸を含むホスト又はホスト細胞に関する。このようなホスト又はホスト細胞は、ここでもまた一般的に国際公開公報第09/068627号に記載されたとおりであり得る(例えば第315〜328頁参照)。
【0018】
本発明はまた、本発明の抗IL−23ポリペプチドの生成/発現ための方法に関する。このような方法は一般的に、(i)好適なホスト細胞若しくはホスト生物又は別の好適な発現系において、本発明の抗IL−23ポリペプチドをエンコードする核酸を発現させる工程と、その後任意で(ii)こうして得られた本発明の抗IL−23ポリペプチドを単離及び/又は精製する工程を含み得る。とりわけ、このような方法は、(i)前記本発明のホストが本発明の抗IL−23ポリペプチドを発現及び/又は生成するような条件下に、本発明のホストを培養及び/又は維持する工程と;その後任意で(ii)こうして得られた本発明の抗IL−23ポリペプチドを単離及び/又は精製する工程を含み得る。これらの方法もやはり、原則的には国際公開公報第09/068627号(例えば第315〜328頁参照)に記載のとおりに実施され得る。
【0019】
本発明の抗IL−23ポリペプチドの生成/発現ための具体的な一方法は、2010年4月30日が国際出願日であるAblynx N.V.の国際出願、発明の名称「ドメイン抗体の生成のための方法(Method for the production of domain antibodies)」に記載されている。
【0020】
本発明はさらに、産物又は組成物に関し、これは本発明の抗IL−23ポリペプチド及び/又は少なくとも1つの本発明の核酸、並びに任意で、自体公知のこのような組成物の一以上のさらなる成分(すなわち、その組成物の所期の使用に応じたもの)を含有するか又は含むものに関する。このような産物又は組成物は、例えば医薬組成物(本願明細書に記載されるとおり)、獣医用組成物又は診断用の産物若しくは組成物であり得る(やはり本願明細書に記載されるとおり)。このような産物又は組成物もやはり、一般的国際公開公報第09/068627号に記載されるとおりであり得る(例えば第329〜337頁参照)。
【0021】
本発明はまた、IL−23及び/又はIL−23で媒介されるシグナル伝達(国際公開公報第09/068627号での定義のとおり)の、インビトロで(たとえば、インビトロ又は細胞アッセイにおける)、又はインビボで(たとえば、単細胞中又多細胞生物中、とりわけ哺乳動物において、さらにとりわけ、ヘテロダイマーサイトカイン及びそれらのレセプターに関連する疾患又は障害のリスクにある又は見舞われているヒトなどのヒトにおいて)の(方法又は組成物のための)モジュレーション(国際公開公報第09/068627号での定義のとおり)における、本発明の抗IL−23ポリペプチドの、又はこれを含む組成物の使用に関する。
【0022】
本発明はまた、IL−23及び/又はIL−23で媒介されるシグナル伝達(国際公開公報第09/068627号での定義のとおり)の、インビトロで(たとえば、インビトロ又は細胞アッセイにおける)又はインビボで(たとえば、単細胞又は多細胞生物中、とりわけ哺乳動物において、及びさらにとりわけ、IL−23及び/又はそのレセプターに関連する疾患又は障害のリスクにある又は見舞われているヒトなどのヒトにおいて)のモジュレーションのための方法(国際公開公報第09/068627号での定義のとおり)に関し、この方法は少なくとも、モデュレーションするIL−23及び/又はIL−23で媒介されるシグナル伝達をモジュレーションするように、且つそのモジュレーションに好適な量で、IL−23を本発明の抗IL−23ポリペプチドに接触させる工程を含む。
【0023】
本発明はまた、IL−23及び/又はIL−23で媒介されるシグナル伝達(国際公開公報第09/068627号での定義のとおり)の、インビトロで(たとえば、インビトロ又は細胞アッセイにおける)又はインビボで(たとえば、単細胞中又多細胞生物中、とりわけ哺乳動物において、さらにとりわけ、IL−23及び/又はIL−23で媒介されるシグナル伝達に関連する疾患又は障害のリスクにある又は見舞われているヒトなどのヒトにおいて)モジュレーション(国際公開公報第09/068627号での定義のとおり)するための組成物(非限定的に、さらに本願明細書に記載されるような医薬組成物又は調剤など)の調製における、本発明の抗IL−23ポリペプチドの使用に関する。
【0024】
本発明はまた、IL−23及び/又はそのレセプター(1以上)により媒介されるシグナル伝達のモジュレーションにおいて使用するための、本発明の抗IL−23ポリペプチド(又はこれを含む組成物)に関する。
【0025】
本発明はまた、IL−23及び/又はIL−23により媒介されるシグナル伝達に関連する疾患、例えば腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、IBD)、感染症、乾癬、ガン、自己免疫疾患(MSなど)、サルコイドーシス、移植拒絶、嚢胞性線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチ、ウイルス感染症、分類不能型免疫不全症等の炎症性障害及び炎症などの予防又は治療において使用するための、本発明の抗IL−23ポリペプチド(又はこれを含む組成物)に関する。
【0026】
本発明はまた、IL−23及び/又はIL−23により媒介されるシグナル伝達に関連する疾患、例えば腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、IBD)、感染症、乾癬、ガン、自己免疫疾患(MSなど)、サルコイドーシス、移植拒絶、嚢胞性線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチ、ウイルス感染症、分類不能型免疫不全症等の炎症性障害及び炎症などを予防又は治療するための方法に関し、前記方法は、このような処置が必要な被検者に、予防的又は治療上活性な量の本発明の抗IL−23ポリペプチド(またはこれを含む組成物)を投与することを含む。
【0027】
以下の限定を意図しない好ましい態様、実施例及び図面によって本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本願で参照されるアミノ酸配列(配列番号:1〜23、左欄参照)を示す。以前の出願に、すなわち、国際公開公報第2009/068627号、国際公開公報第2010/142534号、又は国際公開公報第2011/135026号に記載の場合には、左から第二番目の欄にその配列の参照配列番号を示す。
【
図2】本願で具体的に参照されるアミノ酸位置のいくつか、及びいくつかの代替的番号付けシステム(Aho及びIMGTなど)に従うそれらの番号付けを示す表である。
【
図3】本願で参照されるアミノ酸配列のアライメントを示す。
【
図4】ヒト健常被検者からの66の血清試料、及びSLE患者からの29の試料を、配列番号:1(参照)並びに配列番号:2及び3(本発明)への結合について調べた場合、実施例1で得られたデータポイントの2つの対応するプロットを示す。各ドットは、調べた96試料のうちの1つの結合レベルを表す。右手パネル及び左手パネルに示すデータポイントは同じであり、右手パネルでは調べられた3種の化合物(すなわち、それぞれ配列番号:1、配列番号:2及び配列番号:3)の各々に対する個々の試料の各々で求められたデータポイントが線によって結ばれている(その結果、本発明の変異及びC末端アラニンが導入された場合に既存抗体による結合が低下する程度の指標が、線の下降から得られる)。
【
図5】実施例1で調べられ
図4に示された、SLE患者からの10の代表的試料由来の既存抗体の、配列番号:1(参照)及び配列番号:2及び3(本発明)への結合についてのデータを詳細に示す。
【
図6】
図4でコンパイルされたデータポイントの結合データ(それぞれ、3つの欄が標準化既存抗体(「Pre−Ab」)結合レベル(125秒でのRU)を表し、2つの欄が配列番号:1と比較した既存抗体結合の低下の百分率を表す)を示す表である。
【0029】
実験項
以下の実験項で使用されるヒト試料は、商業的供給源から、又はヒトボランティアから(必要とされる同意及び認可を全て得た後)のいずれかより得られ、適用され得る法的且つ規制要求事項(医療的機密及び患者のプライバシーに関するものを非限定的に含む)に従って使用された。
【0030】
以下の実施例において、別途明示的に示さない限り、使用された試料中に存在する既存抗体(すなわち、健常ボランティア、及びSLE患者由来)の、調べられたナノボディへの結合は、以下のとおりにProteOnを用いて求められた。
【0031】
ナノボディをヒト血清アルブミン上で捕獲し、捕獲されたナノボディでの既存抗体の結合をProteOn XPR36(Bio-Rad Laboratories, Inc.)を用いて評価した。PBS/Tween(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、0.005%Tween20)をランニングバッファーとして用い、実験を25℃で実施した。ProteOn GLC Sensor ChipのリガンドレーンをEDC/NHS(流量:30μl/分)で活性化し、ProteOn酢酸塩緩衝液pH4.5中10μg/mlのHSAを注入して(流量:100μl/分)およそ3200RUの固定化レベルにした。固定化後、表面をエタノールアミンHCl(流量:30μl/分)で不活性化させた。ナノボディをHSA表面上に45μl/分で2分間注入して、およそ600RUのナノボディ捕獲レベルにした。既存抗体を含有している試料を14,000rpmで2分間遠心分離し、上清をPBS−Tween20(0.005%)で1:10に希釈して、その後45μl/分で2分間注入し、引き続き400秒の解離工程を行った。各サイクル後に(すなわち、新しいナノボディ捕獲及び血液試料注入工程前に)、45μl/分でHCl(100mM)を2分間注入してHSA表面を再生させた。センサーグラム処理及びデータ解析は、ProteOn Manager 3.1.0(Bio-Rad Laboratories, Inc.)を用いて実施した。既存抗体結合を示すセンサーグラムは、1)ナノボディ−HSA解離及び2)参照リガンドレーンへの非特異的な結合を減算することによる二重照会(double referencing)後に得られた。既存抗体の結合レベルは、125秒(会合の終了後5秒)に報告ポイントを設定することによって求められた。既存抗体結合の低下百分率は、参照ナノボディの125秒での結合レベルに対して算出された。
【0032】
実施例1:配列番号:1(参照)、配列番号:2(本発明)及び配列番号:3(本発明)への既存抗体の結合。
配列番号:1(参照)、配列番号:2(本発明)及び配列番号:3(本発明)のアミノ酸配列を、66名の健常ヒトボランティア及び29名のSLE患者から得られた血清試料中に存在する既存抗体による結合につき、実験項の序文に記載のプロトコールを使用し、ProteOnを用いて調べた。調べられた配列は、ヒト血清アルブミンを用いて捕獲された。
【0033】
結果を
図4に示す。
図5は、12の代表的SLE試料(すなわち、29の調べられたSLE試料から得たもの)について得られた結果を詳細に示す。
図6は、
図4に示すデータを与える。
【0034】
以上の結果、健常ヒトボランティアから得られた非常に多くの試料や、SLE患者からの試料において、配列番号:2及び3の化合物は配列番号:1の化合物に比べて既存抗体による結合が随分低下したことが示される。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]