【実施例】
【0029】
つぎに、実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下に示す成分組成は、特に記載がない限り、すべて質量基準(質量部)で示している。
【0030】
〔実施例1〜9、比較例1〜13〕
後記の表1〜6に示す組成の通り、内服組成物(実施例1〜9、比較例1〜13)を調製した。すなわち、各材料を準備し、これらを一度に混合して、粉末状の内服組成物を調製した。なお、各生薬の抽出物に関しては、下記のものを使用し、その他の材料は日本薬局方の収載品を用いた。
【0031】
オンジ抽出物:刻まれたオンジ原生薬を、10倍量の水をもって煮て(約100℃)、30分間抽出を行った。得られた抽出液を100メッシュの篩でろ過し、ろ液を70℃以下で濃縮した。濃縮液は加熱殺菌し、噴霧乾燥して粉末状のオンジ抽出物を得た。この方法では、オンジ原生薬5gから約0.55gのオンジ抽出物が得られた(収率11質量%)。
カンゾウ抽出物:カンゾウエキス末(日本粉末薬品社)
ニンジン抽出物:人参乾燥エキス(日本粉末薬品社)
【0032】
各実施例および各比較例の内服組成物について、(1)色差抑制率1、(2)質量変化抑制率、(3)固化の有無、(4)においの抑制、(5)においの変化、(6)色差抑制率2、の6項目について評価を行った。各項目の評価方法は、以下に示すとおりである。なお、各実施例および各比較例における上記6項目の各評価は、オンジ抽出物として収率11質量%のものを同量用いれば同じものとなる。すなわち、オンジ原生薬5gから得られた約0.55gのオンジ抽出物に代えて、オンジ原生薬3gから得た約0.33gのオンジ抽出物を同量用いた場合であっても、各実施例および各比較例における上記6項目の各評価はかわることはない。
【0033】
(1)色差抑制率1
表1および表2に示す組成の通り調製した内服組成物0.5gをプラスチック製シャーレに入れ、40℃、湿度75%RHで10分間保存後の内服組成物の色の変化を、色差計(コニカミノルタ社製、品番:CR−400)を用いて測定し、調製直後の内服組成物の色をスタンダードとし、下記の式1を用いて保管前後における色差(ΔE*ab)を求めた。さらに、オンジ抽出物のみが配合された内服組成物(比較例1)の色の経時変化(ΔE*ab)を基準とし、経時による色の変化をどの程度抑制できたか(色差抑制率%)を式2により算出した。色差抑制率が高いほど、高温高湿度保存下での変色が抑制されたことを意味する。表1および表2に併せて結果を示す。
式1:色差(ΔE*ab)=[(Δa
*)
2+(Δb
*)
2+(ΔL
*)
2]
1/2
Δa
*:保存後の錠剤のa値−保存前の錠剤のa値
Δb
*:保存後の錠剤のb値−保存前の錠剤のb値
ΔL
*:保存後の錠剤のL値−保存前の錠剤のL値
式2:色差抑制率(%)=((比較例1の色差−各組成物の色差)/比較例1の色差)×100
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
上記表1および表2に示されたように、オンジ抽出物とステアリン酸マグネシウムとを含有し、生薬としてオンジのみが配合される実施例1〜5のすべてにおいて、高温高湿下での経時的な変色が抑制されており、品質が安定していることが確認された。一方で、オンジ抽出物以外に、生薬としてカンゾウ抽出物もしくはニンジン抽出物を含有する比較例2、3においては、変色が抑制されておらず、むしろ一層変色していた。また、ステアリン酸マグネシウムに換えて、結晶セルロース、バレイショデンプン、もしくはマンニトールを用いた比較例4〜6においても、変色が抑制されず、むしろ一層変色していた。
【0037】
(2)質量変化抑制率
下記の表3に示す組成の通り調製した内服組成物0.5gをプラスチック製シャーレに入れ、40℃,湿度75%RHで10分間保存後の内服組成物の吸湿による質量の変化を、調製直後の内服組成物の質量をスタンダードとし、下記の式3に示すとおり、質量変化率(%)として算出した。さらに、オンジ抽出物のみが配合された内服組成物(比較例1)の質量変化率(%)を基準とし、経時による質量の変化をどの程度抑制できたか(質量変化抑制率(%))を下記の式4を用いて算出した。質量変化抑制率が高いほど、高温高湿度保存下での吸湿による質量変化が抑制されたことを意味する。表3に併せて結果を示す。
式3:質量変化率(%)=〔(保存後の質量−保存前の質量)/保存前質量〕×100
式4:質量変化抑制率(%)=〔(比較例1の質量変化率−各組成物の質量変化率)/比較例1の質量変化率〕×100
【0038】
【表3】
【0039】
上記表3に示されたように、オンジ抽出物とステアリン酸マグネシウムとを含有し、生薬としてオンジのみが配合される実施例1〜5のすべてにおいて、高温高湿下での経時的な変色が抑制されており、品質が安定していることが確認された。
【0040】
(3)固化の有無
下記の表4および表5に示す組成の通り調製した内服組成物10gをプラスチック製シャーレに入れ、40℃、湿度75%RHで1時間保存後の外観を目視により観察し、下記の基準に基づいて内服組成物の固化の有無を評価した。表4および表5に併せて結果を示す。
◎:固化は生じなかった。
○:固化がごくわずかに認められたが、問題とならない程度のものであった。
△:部分的に固化が生じた。
×:全体が固化した。
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
上記表4および表5に示されたように、オンジ抽出物のみを含有する比較例7が高温高湿下で固化したのに対して、オンジ抽出物とステアリン酸マグネシウムとを含有し、生薬としてオンジのみが配合される実施例6〜9のすべてにおいて、経時的な固化が抑制されており、品質が安定していることが確認された。一方で、オンジ抽出物以外に、生薬としてカンゾウ抽出物、ニンジン抽出物、もしくはショウキョウ抽出物を含有する比較例8〜10においては、固化が抑制されていなかった。また、ステアリン酸マグネシウムに換えて、結晶セルロース、バレイショデンプン、もしくはマンニトールを用いた比較例11〜13においても、固化が抑制されていなかった。
【0044】
(4)においの抑制
下記の表6に示す組成比の通り調製した調製直後の内服組成物について、10cm離れたところからそのにおいを嗅ぎ、下記の基準に基づいて評価した。評価を表6に併せて示す。
〇:オンジ生薬由来のにおいが抑制されたように感じた。
×:オンジ生薬由来のにおいの抑制は感じられなかった。
【0045】
(5)においの変化
下記の表6に示す組成比の通り調製した内服組成物10gをプラスチック製シャーレに入れ、40℃、湿度75%RHで1時間保存した。調製直後の内服組成物のにおいと、保存後の内服組成物のにおいを対比し、下記の基準に基づいて内服組成物のにおいの変化を評価した。評価を表6に併せて示す。
〇:においの変化は感じられなかった。
×:においが悪化した(不快なにおいが強くなった)。
【0046】
【表6】
【0047】
上記表6に示されたように、オンジ抽出物のみを含有する比較例7が生薬特有のにおいを発し、高温高湿下でにおいが悪化したのに対して、オンジ抽出物とステアリン酸マグネシウムとを含有し、生薬としてオンジのみが配合される実施例8、9のすべてにおいて、調製直後のにおいが改善され、また経時的なにおいの悪化が抑制されており、品質が安定していることが確認された。一方で、ステアリン酸マグネシウムに換えて、結晶セルロース、バレイショデンプン、もしくはマンニトールを用いた比較例11〜13においては、においが改善されず、においの悪化が抑制されていなかった。
【0048】
(6)色差抑制率2
下記の表7〜10に示す組成の通り調製した内服組成物における、40℃、湿度75%RHで10分間保存後の保管前後の色差を求めた。色差および色差抑制率は、前記「色差抑制率1」試験と同様の方法で測定、算出した。なお、実施例10については比較例1の代わりに比較例14を、実施例11については比較例1の代わりに比較例15を、実施例12については比較例1の代わりに比較例16を、実施例13については比較例1の代わりに比較例17を用いた。表7〜10に併せて結果を示す。
【0049】
【表7】
【0050】
【表8】
【0051】
【表9】
【0052】
【表10】
【0053】
上記表7〜表10に示されたように、ステアリン酸マグネシウムを含有しない比較例14〜17に対して、オンジ抽出物とステアリン酸マグネシウムが配合される実施例10〜13のすべてにおいて、高温高湿下での経時的な変色が抑制されており、品質が安定していることが確認された。
【0054】
〔製剤例〕
下記の表11〜16に示す材料を用いて、本発明の内服組成物(製剤例1〜28)を調製した。なお、製剤例1〜28の材料としては、オンジ抽出物については、実施例1〜13で用いたもの、およびそれに準じる方法により得られたものを用い、その他の材料は日本薬局方の収載品を用いた。また、表中、錠剤(素錠)とはコーティングされていない錠剤を意味し、錠剤(フィルム)とはフィルムコーティングされた錠剤を意味している。
【0055】
【表11】
【0056】
【表12】
【0057】
【表13】
【0058】
【表14】
【0059】
【表15】
【0060】
【表16】
【0061】
上記表11〜16に示す製剤例1〜28について、実施例と同様の方法により、固化の有無、においの抑制、においの変化の3項目の評価を行った。その結果、オンジ抽出物とステアリン酸塩とを含有し、生薬としてオンジのみが配合される製剤例1〜28のすべてにおいて、経時的な固化が抑制されており、調製直後のにおいが改善されていた。また、経時的なにおいの悪化が抑制されており、品質が安定していることが確認された。