【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
上記の目的を達成するために本発明の打設装置は、先端に被嵌挿部が設けられたシリンダー、および、シリンダー内に配置され、圧縮空気によってシリンダーの軸方向に往復動する打撃ピストンを有し、往復動状態にある打撃ピストンのストロークが、被嵌挿部方向のみを打撃可能な長さに設定された構造のハンマ部と、被嵌挿部に嵌挿され、打撃ピストンで打撃されると共に、ハンマ部の軸方向へ所定のストロークで進退可能な可動継手部と、可動継手部に取り付けられ、打設対象物を挟持可能で、挟持した該打設対象物に対し、可動継手部を介した打撃力を伝達可能なチャック部とを備える。
【0010】
ここで、本発明のハンマ部は、打撃ピストンがシリンダー内を軸方向に往復動する構造であることによって、嵌挿された可動継手部に打撃力を伝達することができる。そして、本発明の打設装置は、可動継手部とチャック部が取り付けられ、チャック部で挟持した打設対象物を打設することができる。即ち、本発明の打設装置は、ハンマ部からの打撃力を以て打設対象物を打設することができる。
【0011】
更に、本発明の打設装置は、ハンマ部からの打撃力を以て打設対象物を打設する構造であることによって、例えば、打設対象物に与える振動を以て打設対象物を打ち込む方式のバイブロハンマよりも強い力での打設が可能である。つまり、本発明のハンマ部は、打設作業を行うための充分な打撃力を発生することができる。
【0012】
ところで、バイブロハンマは、前述の通り、上下方向への振動が発生する構造であるため、作業時に使用する吊下機に対して、バイブロハンマの作動に起因する振動が伝達され、この振動に起因する共振で吊下機が破損することがある。
【0013】
一方、本発明のハンマ部によれば、打撃ピストンが被嵌挿部方向のみを打撃可能な長さに設定されたストロークで往復動するため、被嵌挿部の反対方向(ハンマ部の基部側)には打撃力を発揮せず、被嵌挿部方向(ハンマ部の先部側)にのみ打撃力を発揮する構造である。この構造を有することによって、打設装置を使用した作業時に使用する吊下機には、打設装置の作動に起因する振動がほとんど伝達されないので、吊下機での共振が起きにくい。つまり、本発明のハンマ部は、作業時において、共振に起因する吊下機の破損を抑制することができる。
【0014】
更にまた、ハンマ部は、動力が圧縮空気のいわゆるエアハンマ式であるため、圧力の上げ下げによって打撃速度を容易に調節することができる。更にまた、ハンマ部の動力が圧縮空気であることによって、作動流体の生成および排出の際の環境負荷を抑制することができる。
【0015】
そして、本発明の可動継手部は、打撃ピストンで打撃されて、軸方向へ所定のストロークで進退可能であることによって、取り付けられたチャック部に対して、ハンマ部からの打撃力を伝達することができる。
【0016】
更に、チャック部は、可動継手部に取り付けられていることによって、可動継手部を介してハンマ部からの打撃力の伝達を受けることができる。また、チャック部は、打設対象物を挟持可能で、挟持した打設対象物に打撃力を伝達できることにより、伝達された打撃力を以て、打設対象物を打設箇所(主に地面)へ打設することができる。
【0017】
(2)
また、ハンマ部が、着脱可能なウエイト部を有する場合は、ハンマ部の全体重量を変更することができる。これにより、例えば、打設対象物を地中深くまで打設する必要がある場合は、ウエイト部をハンマ部に取着することによって全体重量を増加させ、荷重も加わることで、作業時における打設装置の打撃力を向上させることができる。
【0018】
一方、打設対象物を地中深くまで打設する必要がない場合は、ウエイト部をハンマ部から外してよく、その場合でもハンマ部の自重のみで打設作業を行うことができる。また、ウエイト部の取着が不要な際には、ハンマ部から外すことで、ハンマ部の全体重量の軽量化を図ることができ、運搬や保管の際の利便性が向上する。
【0019】
なお、ウエイト部は、ハンマ部のみならず、可動継手部またはチャック部(以下、本段落中では「可動継手部等」という)への着脱を除外するものではない。しかしながら、可動継手部等は、それ自体が高速で動く箇所であるため、ウエイト部を取着することによって可動継手部等に加わる応力が更に増す。この結果、可動継手部等の構成材の疲労破壊が起きるおそれがあり、また、作業に伴う振動増加のおそれもあるため、好ましくない。
【0020】
(3)
上記の目的を達成するために本発明の打設機は、先端に嵌挿部が設けられたシリンダー、および、シリンダー内に配置され、圧縮空気によってシリンダーの軸方向に往復動する打撃ピストンを含み、往復動状態にある打撃ピストンのストロークが、被嵌挿部方向のみを打撃可能な長さに設定された構造のハンマ部、嵌挿部に嵌挿され、打撃ピストンで打撃されると共に、ハンマ部の軸方向へ所定のストロークで進退可能な可動継手部、および、可動継手部に取り付けられ、打設対象物を挟持可能で、挟持した打設対象物に対し、可動継手部を介した打撃力を伝達可能なチャック部を有する打設装置と、打設装置を、チャック部が地面の方向に向き、かつ、シリンダーの軸方向が地面に対して垂直または略鉛直な状態となるように吊り下げ可能な吊下機と備える。
【0021】
ここで、本発明の打設装置は、ハンマ部が、打撃ピストンがシリンダー内を軸方向に往復動する構造であることによって、嵌挿された可動継手部に打撃力を伝達することができる。そして、本発明の打設装置は、可動継手部とチャック部が取り付けられ、チャック部で挟持した打設対象物を打設することができる。即ち、本発明の打設装置は、ハンマ部からの打撃力を以て打設対象物を打設することができる。
【0022】
更に、本発明の打設装置は、ハンマ部からの打撃力を以て打設対象物を打設する構造であることによって、例えば、打設対象物に与える振動を以て打設対象物を打ち込む方式のバイブロハンマよりも強い力での打設が可能である。つまり、本発明のハンマ部は、打設作業を行うための充分な打撃力を発生することができる。
【0023】
ところで、バイブロハンマは、前述の通り、上下方向への振動が発生する構造であるため、作業時に使用する吊下機に対して、バイブロハンマの作動に起因する振動が伝達され、この振動に起因する共振で吊下機が破損することがある。
【0024】
一方、本発明のハンマ部によれば、打撃ピストンが被嵌挿部方向のみを打撃可能な長さに設定されたストロークで往復動するため、被嵌挿部の反対方向(ハンマ部の基部側)には打撃力を発揮せず、被嵌挿部方向(ハンマ部の先部側)にのみ打撃力を発揮する構造である。この構造を有することによって、打設装置を使用した作業時に使用する吊下機には、打設装置の作動に起因する振動がほとんど伝達されないので、吊下機での共振が起きにくい。つまり、本発明のハンマ部は、作業時において、共振に起因する吊下機の破損を抑制することができる。
【0025】
更にまた、このハンマ部は、動力が圧縮空気のいわゆるエアハンマ式であるため、圧力の上げ下げによって打撃速度を容易に調節することができる。更にまた、ハンマ部の動力が圧縮空気であることによって、作動流体の生成および排出の際の環境負荷を抑制することができる。
【0026】
更に、本発明の打設装置は、可動継手部が、打撃ピストンで打撃されて、軸方向へ所定のストロークで進退可能であることによって、取り付けられたチャック部へ打撃力を伝達することができる。
【0027】
更にまた、本発明の打設装置は、チャック部が可動継手部に取り付けられていることによって、可動継手部を介してハンマ部からの打撃力の伝達を受けることができる。また、チャック部は、打設対象物を挟持可能で、挟持した打設対象物に打撃を加えることができることにより、伝達された打撃力を以て、打設対象物を打設箇所(主に地面)へ打設することができる。
【0028】
そして、本発明の
吊下機は、チャック部を地面の方向に向け、かつ、シリンダーの軸方向が地面に対して垂直または略鉛直な状態となるように吊り下げることができ、これによって、打設対象物に対して、地中へ斜めに埋入することに起因する作業障害が起きにくいようにすることができる。なお、作業障害とは、例えば、打設対象物を所望する位置や深さまで打設できない、あるいは、土による固定力と打設機からの打撃力によって打設作業の途中で中間部が曲がる等が挙げられる。
【0029】
(4)
上記の目的を達成するために本発明の打設方法は、先端に嵌挿部が設けられたシリンダー、および、シリンダー内に配置され、圧縮空気によってシリンダーの軸方向に往復動する打撃ピストンを含み、往復動状態にある打撃ピストンのストロークが、被嵌挿部方向のみを打撃可能な長さに設定された構造のハンマ部、嵌挿部に嵌挿され、打撃ピストンで打撃されると共に、ハンマ部の軸方向へ所定のストロークで進退可能な可動継手部、および、可動継手部に取り付けられ、挟持した打設対象物に対し、可動継手部を介した打撃力を伝達可能なチャック部を有する打設装置を使用し、チャック部および挟持した打設対象物を地面に向け、かつ、地面に対してシリンダーの軸方向が略鉛直方向になるようにセットするか、または、シリンダーの軸方向が地面に対して直角方向になるようにセットする、第1の工程と、シリンダー内に供給する圧縮空気で打撃ピストンが軸方向に往復動し、往復動で生じた打撃力を以て打設対象物を地面に打設する、第2の工程とを備える。
【0030】
ここで、本発明の打設方法の第1の工程によれば、打設装置のハンマ部が、シリンダー内を打撃ピストンが軸方向に往復動する構造であることによって、嵌挿された可動継手部に打撃力を伝達することができる。そして、本発明の打設装置は、可動継手部とチャック部が取り付けられ、チャック部で挟持した打設対象物を打設することができる。即ち、本発明の打設装置は、打設作業を行うための充分な打撃力を発生することができ、この打撃力を以て打設対象物を打設することができる。
【0031】
更に、前述の第1の工程によれば、地面に対してシリンダーの軸方向が略鉛直方向になるようにセットするか、または、シリンダーの軸方向が地面に対して直角方向になるようにセットすることによって、シリンダーの軸方向が地面に対して垂直または略鉛直な状態となり、かつ、打設対象物も地面に対して垂直または略鉛直な状態にすることができる。これにより、打設対象物に対して、地中へ斜めに埋入することに起因する作業障害を起きにくくすることができる。
【0032】
そして、本発明の打設方法の第2工程によれば、シリンダー内に供給する圧縮空気で打撃ピストンが軸方向に往復動することで打撃力が生じ、生じた打撃力をチャック部で挟持した打設対象物へ伝達することができる。そして、この打撃力を以て、打設対象物を地面に打設することができる。
【0033】
更に、本発明の打設方法によれば、チャック部で挟持した打設対象物をハンマ部からの打撃力を以て打設する構造であることによって、例えば、打設対象物に与える振動を以て打設対象物を打ち込む方式のバイブロハンマよりも強い力での打設が可能である。つまり、本発明の打設方法は、打設作業を行うための充分な打撃力を発生することができる。
【0034】
更にまた、この打設方法によれば、打撃ピストンが被嵌挿部方向のみに打撃力を発揮し、これによって、打設装置を使用した作業時に使用する吊下機には、打設装置の作動に起因する振動がほとんど伝達されないので、吊下機での共振が起きにくい。つまり、本発明の打設方法では、バイブロハンマと異なり、作業時において、共振に起因する吊下機の破損を抑制することができる。
【0035】
加えて、この打設方法は、ハンマ部の動力が圧縮空気である、いわゆるエアハンマ式であるため、圧力の上げ下げによって打撃速度を容易に調節することができる。更にまた、ハンマ部の動力が圧縮空気であることによって、作動流体の生成および排出の際の環境負荷を抑制することができる。