特許第6936983号(P6936983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6936983運搬可能な積層体ユニット、それを使用した積層体ユニット構造物、及び、運搬可能な積層体ユニット製作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6936983
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】運搬可能な積層体ユニット、それを使用した積層体ユニット構造物、及び、運搬可能な積層体ユニット製作方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/08 20060101AFI20210909BHJP
   A47J 37/07 20060101ALI20210909BHJP
   F24B 1/20 20060101ALI20210909BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   F27D1/08
   A47J37/07
   F24B1/20
   F27D1/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-5021(P2017-5021)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-115777(P2018-115777A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】516306348
【氏名又は名称】AZれんがテクノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516306359
【氏名又は名称】クレアコルド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】東 明彦
(72)【発明者】
【氏名】横田 邦彦
【審査官】 宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−073679(JP,A)
【文献】 特開2002−267371(JP,A)
【文献】 米国特許第06189526(US,B1)
【文献】 実公昭45−019979(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/00−1/18
A47J 37/07
F24B 1/20
F23M 5/00
F23M 5/02
B32B 18/00
E04B 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦孔及び横孔のうちの少なくとも縦孔を有する有孔積層部材を列設させて少なくとも2段に積み重ねられた積層体と、前記縦孔及び横孔に、又は、前記縦孔に、隣接する有孔積層部材間にかけ渡らせて貫入させた補強材と、を備え、
最下段の有孔積層部材の下面に樹脂と親和性を有する第一水平補強体を前記樹脂で貼設し、
記有孔積層部材の上下間に運搬時に形態保持可能な剛性を有しセメント系材料と結合可能な第二水平補強体を介在させ、
前記有孔積層部材の縦孔や横孔、前記有孔積層部材の上下間および左右間の隣接間にセメント系材料を流し込んで運搬可能な構造物部材としたことを特徴とする運搬可能な積層体ユニット。
【請求項2】
前記補強材の形態が、前記縦孔に貫入させた垂直方向の垂直補強材を有する形態、又は、前記縦孔に貫入させた垂直方向の垂直補強材及び前記横孔に貫入させた水平方向の水平補強材を有する形態であることを特徴とする請求項1に記載の運搬可能な積層体ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運搬可能な積層体ユニット間にセメント系材料を介在させた構造物であることを特徴とする積層体ユニット構造物。
【請求項4】
1段目を構成する、縦孔及び横孔のうちの少なくとも縦孔を有する有孔積層部材を配設し、前記縦孔には垂直方向の垂直補強材を貫入し、前記横孔には水平方向の水平補強材を貫入し、前記1段目の有孔積層部材の上面に運搬時に形態保持可能な剛性を有しセメント系材料と結合可能な第二水平補強体を載設し、その後に前記有孔積層部材の縦孔や横孔、前記有孔積層部材の上面および左右間の隣接間にセメント系材料を流し込んで1段目を製作する第1段目製作工程と、
2段目を構成する有孔積層部材を、前記1段目の有孔積層部材の上面に、前記2段目の有孔積層部材の縦孔に1段目製作工程で配設した前記垂直補強材を、あるいは、前記2段目の有孔積層部材の孔が縦孔と横孔がある場合は前記縦孔に1段目製作工程で配設した前記垂直補強材を、及び前記横孔に水平補強材を貫入させて配設し、前記2段目の有孔積層部材の縦孔や横孔並びに左右間の隣接間にセメント系材料を流し込み、前記2段目の有孔積層部材の上面に樹脂と親和性を有する第一水平補強体を前記樹脂で前記2段目の有孔積層部材に貼設して2段目を製作する第2段目製作工程と、
前記第1段目製作工程及び第2段目製作工程で流し込んだセメント系材料や樹脂が固まった後に、前記第2段目製作工程の完成体を上下方向にひっくり返して積層体ユニットを完成させる積層体ユニット完成工程と、を備えることを特徴とする運搬可能な積層体ユニット製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場等の施工場所で有孔レンガ、有孔石材又は有孔セメントブロックなどの有孔積層部材を積層させて造った複数の積層体ユニットと、前記複数の積層体ユニットを設置場所に運搬し設置場所で運搬した複数の積層体ユニットを積み重ねて完成させるバーベキュー炉等の積層体ユニット構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有孔積層部材を積層させたバーベキュー炉としては、特許文献1に、地面に置かれる第一枠部材と、この第一枠部材に取り付けられ略垂直に立設される棒状の保持部材と、上記保持部材が挿通される透孔が形成されこの透孔に上記保持部材が挿通されて組み立てられた複数のブロックと、組み立てられた最上層の上記ブロックの上面に当接しこのブロックの上面に突出する上記保持部材の先端に固定される第二枠部材が設けられ、組み立てられた上記複数のブロックによる構造物は、一部が開口した筒状に設けられていることを特徴とする組立式バーベキュー炉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−267371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明は、使用する現地での組立工程を簡単化させるが、現地での作業となるため作業者の技能レベルによって組立精度などの品質面で差が生じやすく、現地での作業が天候に左右されやすく納期が日程通りになりにくいという問題があった。
【0005】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、工場内で有孔積層部材を積層させて運搬可能に造った積層体ユニットを現地まで運搬し、現地で積層体ユニットを積み重ねて完成させる、例えばバーベキュー炉等の積層体ユニット構造物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の運搬可能な積層体ユニット1は、縦孔及び横孔のうちの少なくとも縦孔を有する有孔積層部材3を列設させて少なくとも2段に積み重ねられた積層体と、前記縦孔及び横孔に、又は、前記縦孔に、隣接する有孔積層部材3間にかけ渡らせて貫入させた補強材と、を備え、最下段の有孔積層部材3の下面に樹脂8と親和性を有する第一水平補強体5を前記樹脂8で貼設し、前記有孔積層部材3の上下間に運搬時に形態保持可能な剛性を有しセメント系材料7と結合可能な第二水平補強体6を介在させ、前記有孔積層部材3の縦孔や横孔、前記有孔積層部材3の上下間および左右間の隣接間にセメント系材料7を流し込んで運搬可能な構造物部材としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の運搬可能な積層体ユニット1は、請求項1において、前記補強材の形態が、前記縦孔に貫入させた垂直方向の垂直補強材4を有する形態、又は、前記縦孔に貫入させた垂直方向の垂直補強材4及び前記横孔に貫入させた水平方向の水平補強材を有する形態であることを特徴とする。

【0008】
請求項3に記載の積層体ユニット構造物2は、請求項1又は2に記載の運搬可能な積層体ユニット1間にセメント系材料7を介在させた構造物であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の運搬可能な積層体ユニット製作方法10は、1段目を構成する、縦孔及び横孔のうちの少なくとも縦孔を有する有孔積層部材3を配設し、前記縦孔には垂直方向の垂直補強材4を貫入し、前記横孔には水平方向の水平補強材を貫入し、前記1段目の有孔積層部材3の上面に運搬時に形態保持可能な剛性を有しセメント系材料7と結合可能な第二水平補強体6を載設し、その後に前記有孔積層部材3の縦孔や横孔、前記有孔積層部材3の上面および左右間の隣接間にセメント系材料7を流し込んで1段目を製作する第1段目製作工程12と、2段目を構成する有孔積層部材3を、前記1段目の有孔積層部材3の上面に、前記2段目の有孔積層部材3の縦孔に1段目製作工程12で配設した前記垂直補強材4を、あるいは、前記2段目の有孔積層部材3の孔が縦孔と横孔がある場合は前記縦孔に第1段目製作工程12で配設した前記垂直補強材4を、及び前記横孔に水平補強材を貫入させて配設し、前記2段目の有孔積層部材3の縦孔や横孔並びに左右間の隣接間にセメント系材料7を流し込み、前記2段目の有孔積層部材3の上面に樹脂と親和性を有する第一水平補強体5を前記樹脂8で前記2段目の有孔積層部材3に貼設して2段目を製作する第2段目製作工程13と、前記第1段目製作工程12及び第2段目製作工程13で流し込んだセメント系材料7や樹脂8が固まった後に、前記第2段目製作工程13の完成体を上下方向にひっくり返して積層体ユニット1を完成させる積層体ユニット完成工程14と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1、2又は4に記載の積層体ユニット1は、工場内で有孔レンガ、有孔石材又は有孔セメントブロックなどの有孔積層部材3から造った構造部材である積層体ユニット1を、その形態を崩すことなく運搬することができるという効果を有する。そして、工場から現地まで運搬して、現地で運搬した構造部材である積層体ユニット1を、モルタル等のセメント系材料7を塗布しながら積み重ねてバーベキュー炉等の積層体ユニット構造物2を完成させることができる。これにより、現地での施工が極めて容易になり現地工数が大幅に短縮されるという効果を有する。さらに、積層体ユニット1を工場内で製造するので天候に左右されず、有孔積層部材3やモルタルなどの部品や資材や工具の配置や作業高さを作業のしやすさでもっとも効率的な位置にすることができるので、工程管理がやりやすく安定した品質を造り込むことができ納期を確実に遵守できるという効果を奏する。
【0011】
請求項2に記載の積層体ユニット構造物2は、従来の現地でのレンガ等の有孔積層部材1の積み上げ作業では例えばバーベキュー炉の場合は施工完了までに2日間は要していたが、本願発明の積層体ユニット1の場合は施工を半日で完了するという現地での作業時間の大幅短縮化できるという効果を奏する。現地の天候が雨天が日々続いた期間であっても、半日でも晴れた時間帯が生ずれば現地に積層体ユニット構造物2を設置できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の積層体ユニットの一つの形態を示す外観図である。
図2】本発明の積層体ユニットの一つの形態の1段目の施工を説明する説明図である。
図3】本発明の積層体ユニットの一つの形態の1段目の施工を説明する説明図である。
図4】本発明の積層体ユニットの一つの形態の2段目の施工を説明する説明図である。
図5】本発明の積層体ユニットの一つの形態の2段目の施工を説明する説明図である。
図6】本発明の積層体ユニットの一つの形態の完成状態を説明する説明図である。
図7】現地で積層体ユニットを重ねる施工を説明する説明図である。
図8】現地で完成させた1形態の積層体ユニット構造物を説明する説明図である。
図9】現地で完成させた他の形態の積層体ユニット構造物を説明する説明図である。
図10】現地で完成させた他の形態の積層体ユニット構造物を説明する説明図である。
図11】積層体ユニット構造物の例を示す平面図であり、(a)が略コ字状で、(b)が略円形状で、(c)が略四角形状の積層体ユニット構造物を説明する平面図である。
図12】積層体ユニット及び積層体ユニット構造物の製作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
従来はレンガ等の有孔積層部材3を積み重ねた構造物は現地で一から造り上げるという施工をしてきたのに対して、本発明の積層体ユニット1を使用した構造物は、工場でレンガ等の有孔積層部材3を積み重ねた積層体ユニット1なる構造部材を造り、この構造部材の積層体ユニット1を現地まで運搬して現地で極めて短時間でバーベキュー炉等の積層体ユニット構造物2を完成させるという、有孔積層部材3を使用した構造物のユニット化を実現させたものである。
【0014】
本発明の運搬可能な積層体ユニット1は、複数の有孔積層部材3を列設させて少なくとも2段に積み重ねられた積層体と、前記積み重ねた有孔積層部材3が縦孔及び横孔のうちの少なくともいずれかの孔を有し、前記縦孔及び横孔のうちの少なくともいずれかの孔に貫入させた補強材と、を備え、最下段の複数の有孔積層部材3の下面に樹脂8と親和性を有する第一水平補強体5を前記樹脂8で貼設し、前記複数の有孔積層部材3の上下間に運搬時に形態保持可能な剛性を有しセメント系材料7と結合可能な第二水平補強体6を介在させ、前記有孔積層部材3の縦孔や横孔、前記有孔積層部材3の上下間および左右間の隣接間にセメント系材料7を流し込んで運搬可能な構造部材である。
【0015】
前記有孔積層部材3の縦孔及び横孔のうちの少なくともいずれかの孔に貫入させた補強材の形態が、前記縦孔に貫入させた垂直方向の垂直補強材4を有する形態、前記横孔に貫入させた水平方向の水平補強材を有する形態、又は、前記縦孔に貫入させた垂直方向の垂直補強材4及び前記横孔に貫入させた水平方向の水平補強材を有する形態である。
【0016】
構造物としては、レンガ等の有孔積層部材3を使用して造るバーベキュー炉、門柱、暖炉、竈などがある。これらの構造物が例えば有孔積層部材3を6段積重ねた構造物の場合は、2段積みの運搬可能な積層体ユニット1を工場内で3組造り、これを現地まで運搬して現地で3組の積層体ユニット1をセメント系材料7である例えばモルタルを塗布しながら積み重ねて積層体ユニット構造物2を完成させる。
【0017】
有孔積層部材3には、有孔レンガ、有孔石材又は有孔セメントブロックなどの有孔積層部材3が該当する。
【0018】
レンガ等の有孔積層部材3を少なくとも2段積みとするのは、段積みした積層体ユニット1が、補強材、第一水平補強体5や第二水平補強体6の保持力によって、全体の形体を崩さないで全体の形体を保持可能な範囲内にするためには、段積みが少ない方が適するからである。
【0019】
垂直補強材4や水平補強材は、有孔積層部材3の縦孔には垂直方向に延伸させた長軸状の垂直補強材4を貫入させ、有孔積層部材3の横孔には水平方向に延伸させた長尺状の水平補強材を貫入させる。使用する有孔積層部材3の孔の向きが縦方向か横方向かで異なり、補強材を垂直方向と水平方向のうちの少なくとも1つ以上の方向に貫入させる。補強材としては、ダボ筋、金属製棒状体、非金属製棒状体、樹脂製棒状体などがあり、有孔積層部材3間の位置ずれを生じさせるせん断力に打ち勝つ強度を有する補強材であればよい。補強材を貫入させた有孔積層部材3の孔にはモルタル等のセメント系材料7を流し込む。これにより補強材が有孔積層部材3に固定される。
【0020】
最下段に配設した複数の有孔積層部材3の下面の全面には、樹脂8と親和性を有する第一水平補強体5が配設されている。第一水平補強体5としては、例えば不織布等の布体があり、この場合には前記樹脂8を塗布して前記布体を前記下面に貼設する。樹脂8としては薄く塗布できる接着剤がよく、例えばFRP樹脂がある。これにより、積層体ユニット1の各有孔積層部材3同士の下面の高さを揃え、各有孔積層部材3の横方向の固着力を高めて積層体ユニット1を運搬可能とすることができる。
【0021】
複数の有孔積層部材3の上下間に運搬時に形態保持可能な剛性を有する第二水平補強体6を介在させる。第二水平補強体6としては、積層体ユニット1がバラバラに崩れるのを阻止するために必要な保持力を有するようにするため、例えばラスや金網等の格子状網体がある。この格子状網体を、例えば運搬可能な積層体ユニット1が2段積みの場合は、1段目と2段目の間に全面に亘って配設する。そして、セメント系材料7としてのモルタルを塗布して上側の有孔積層部材3の下面と格子状網体と下側の有孔積層部材3の上面とを固着させる。これにより、2段積みの積層体ユニット1が運搬中に崩れないという効果を奏する。
【0022】
次に、積層体ユニット構造物2について説明する。積層体ユニット構造物2は、前記運搬可能な積層体ユニット1の構造部材を、配設した前記積層体ユニット1の上下間や左右間にモルタル等のセメント系材料7を介在させた構造物である。
【0023】
積層体ユニット1を造るときは図1に示すように第一水平補強体5を最上の位置に配設するが、積層体ユニット構造物2を造るときは図6図7に示すように第一水平補強体5を最下の位置にする。これは、積層体ユニット1を運搬するときに、積層体ユニット1の下面に有孔積層部材3がバラバラにならないように補強がされている必要があり、セメント系材料7を接着用に使用した場合は接着力が不足して積層体ユニット1を構成する複数の有孔積層部材3がバラバラになる可能性があるため、接着用にセメント系材料7の接着力よりも強い接着力を有する樹脂8を使用した面にするためである。
【0024】
積層体ユニット構造物2が有孔積層部材3を4段積み重ねた形態である場合であって、運搬可能な積層体ユニット1が図6に示すように2段積みの場合は、図7に示すように、現地で樹脂8と親和性を有する布体を前記樹脂8で貼設した面を最下面になるように1つ目の積層体ユニット1を設置し、その設置した積層体ユニット1の上にモルタル等のセメント系材料7を塗布し、2つ目の積層体ユニット1を樹脂8と親和性を有する布体を前記樹脂8で貼設した面を下面になるように載置し上から押圧する。以上で、図8に示すように現地における積層体ユニット構造物2が完成する。
【0025】
積層体ユニット構造物2の段数としては、図9に示すようにレンガ等の有孔積層部材3が4段積みや図10に示すように有孔積層部材3が6段積みの形態がある。段積み数は所望の段数にすることができる。また、平面視の形態としては、レンガ等の有孔積層部材3を長さの異なるものを使用して、図11(a)に示すように略コ字状、(b)に示すように略円状、(c)に示すように略四角形状の形態がある。そして、有孔積層部材3を積み木のようにして積層体ユニット構造物2の形体を積み木細工のように所望の形体にすることができる。
【0026】
次に、積層体ユニット1の製造方法について説明する。まず、作業床面の水平化等の準備作業11である。積層体ユニット1を造り上げていくスペースの水平を確保する。そのためには地面Gや床面等に凹凸部位があれば凹凸部位をセメント系材料7により水平面にする養生を実施する。
【0027】
そして、現地に設置する構造物を完成させるのに、その構造物に供給する構造部材として、例えば2段の積層体ユニット1を造るとすれば、前記構造物の平面視での1段目と2段目の形体を把握する。その形体が図9に示すようにコ字状であったとする。
【0028】
次に、第1段目製作工程12である。1段目を構成する有孔積層部材3を、図2に示すように、コ字状を形成するように配置する。そして、図3に示すように、有孔積層部材3の縦孔に2段分の長さを有する長尺状の垂直補強材4を垂設する。このときに前記1段目の有孔積層部材3の孔が横孔の場合には水平方向の水平補強材を貫入し、又は、縦孔及び横孔を有する場合には垂直補強材4や水平補強材を貫入することもできる。
【0029】
そして、前記1段目の有孔積層部材3の上面に運搬時に形態保持可能な剛性を有しセメント系材料7と結合可能な第二水平補強体6として例えばラスを載設する。第二水平補強体6としては、ラス等のセメント系材料7と結合可能なものが好適であり、ラスのような格子状のものがセメント系材料7と結合しやすいので好適である。
【0030】
そして、図4に示すように、前記有孔積層部材3の縦孔や横孔、前記有孔積層部材3の上面および左右間の隣接間にセメント系材料7を流し込む。前記有孔積層部材3の上面では載設したラスを覆うようにセメント系材料7を塗布する。セメント系材料7としては、例えばモルタル等がある。これで1段目が完成する。
【0031】
次に、第2段目製作工程13である。第2段目製作工程13は、2段目を構成する有孔積層部材3を、前記1段目の有孔積層部材3の上面の前記モルタル等のセメント系材料7を塗布した上に、図5に示すように、前記2段目の有孔積層部材3の縦孔に1段目製作工程で配設した前記垂直補強材4を貫入させて配設する。このときに、2段目の有孔積層部材3の孔が横孔の場合には、前記2段目の有孔積層部材3の横孔に1段目製作工程で配設した前記水平補強材又は垂直補強材4を貫入させて配設する。
【0032】
そして、2段目の有孔積層部材3の縦孔又は横孔、有孔積層部材3間にモルタル等のセメント系材料7を流し込む。そして、2段目の配設した複数の有孔積層部材3の上面を略水平になるように前記セメント系材料7を塗布する。
【0033】
そして、前記2段目の有孔積層部材3の上面に、図1図6に示すように、樹脂8と親和性を有する第一水平補強体5として例えば不織布を、前記樹脂8を塗布して前記2段目の有孔積層部材3の上面に貼設する。この貼設により有孔積層部材3が強固に連結して積層体ユニット1を運搬時に揺れなどの外力を受けても崩れないようにすることができる。これで、2段目が完成する。
【0034】
次に、積層体ユニット完成工程14である。前記第1段目製作工程12及び第2段目製作工程13で流し込んだセメント系材料7や樹脂8が固まった後に、図7(a)に示すように前記第2段目製作工程13の完成体を、図7(b)に示すように上下方向にひっくり返して積層体ユニット1を完成させる。
【0035】
次に、積層体ユニット構造物製作工程15である。例えば、積層体ユニット構造物2が有孔積層部材3の4段構造の場合、積層体ユニット構造物製作工程15は、現地で図7(b)に示すように、積層体ユニット構造物2予定地の地面Gの上にモルタル等のセメント系材料7を地面Gが水平になるように塗布し、その塗布したセメント系材料7の上に積層体ユニット1を載設し、前記載設した積層体ユニット1の上面にモルタル等のセメント系材料7を塗布する。そして、塗布したセメント系材料7の上に、次の図7(b)に示すように、2段目用の積層体ユニット1を載設し、上方から押圧をかける。これで、図8に示すように、2段積みの積層体ユニット1を2段に積み重ねた、有孔積層部材3の4段構造の積層体ユニット構造物2が完成する。
【0036】
積層体ユニット構造物2の有孔積層部材3の段数が多くなれば、それに合わせて有孔積層部材3が2段積みの積層体ユニット1の積み重ね数を増やせばよい。
【符号の説明】
【0037】
1 積層体ユニット
2 積層体ユニット構造物
3 有孔積層部材
4 垂直補強材
5 第一水平補強体
6 第二水平補強体
7 セメント系材料
8 樹脂
10 積層体ユニット製作方法
11 準備作業
12 第1段目製作工程
13 第2段目製作工程
14 積層体ユニット完成工程
15 積層体ユニット構造物製作工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12