特許第6937006号(P6937006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937006
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】消臭システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/00 20060101AFI20210909BHJP
【FI】
   A61L9/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-68376(P2017-68376)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-166945(P2018-166945A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高矢 努
(72)【発明者】
【氏名】丸川 雄一
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−087368(JP,A)
【文献】 特開平07−184986(JP,A)
【文献】 特開平05−016660(JP,A)
【文献】 特開2003−299720(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/072744(WO,A1)
【文献】 特開2014−171671(JP,A)
【文献】 特開2007−020741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00−9/22
B01J 10/00−12/02
B01J 14/00−19/32
F24F 7/00−7/007
F24F 3/00−3/16
F24F 7/04−7/06
B60H 1/00−3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境空気に含まれる臭気を消臭する消臭媒体を、当該環境に供給する消臭器と、
前記環境の変化を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に応じて、前記消臭器の動作モードを変更する制御部と、
を有し、
前記消臭器は、
吸入孔および通気孔が設けられ、かつ、回転可能に筐体に保持された回転吸気部と、
前記筐体に設けられるとともに、前記回転吸気部内を複数の部屋に仕切る隔壁と、
少なくとも一つの前記部屋に配置されるとともに、前記消臭媒体を発生させる消臭剤と、
前記吸入孔を介して前記回転吸気部に空気を吸引し、前記回転吸気部から前記通気孔を介して前記空気を排出する方向の気流を形成する回転翼と、
前記回転吸気部を回転駆動する駆動部と、
を含み、
前記制御部は、前記動作モードの変更として、前記駆動部に対して前記回転吸気部の回転方向および回転量の制御指示を行うことにより、前記消臭器により供給する前記消臭媒体の量および/または種類を変更する、消臭システム。
【請求項2】
前記検出部は、前記環境の変化として、前記環境中の前記臭気の量の変化を直接的および/または間接的に検出する請求項1に記載の消臭システム。
【請求項3】
前記検出部は、前記環境中の前記臭気自体を検出することによって、前記臭気の量の変化を検出する請求項2に記載の消臭システム。
【請求項4】
前記検出部は、前記環境中の前記臭気の発生源を検出することによって、間接的に前記臭気の量の変化を検出する請求項2または3に記載の消臭システム。
【請求項5】
前記検出部は、前記環境中の人を検出することによって、間接的に前記臭気の変化を検出する請求項2〜4のいずれか一項に記載の消臭システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記検出部により検出された人から、前記環境中の人の数を特定し、当該人の数に応じて、前記消臭器の動作モードを変更する請求項1〜5のいずれか一項に記載の消臭システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記検出部により検出された人から、前記環境中の人の性別および年齢の少なくとも一方を特定し、当該特定の結果に応じて、前記消臭器の動作モードを変更する請求項1〜6のいずれか一項に記載の消臭システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記動作モードの変更として、さらに、前記臭気の量が多い位置に前記消臭媒体が向かうように、前記消臭媒体の供給方向を変更する請求項1〜7のいずれか一項に記載の消臭システム。
【請求項9】
前記回転吸気部は、複数の前記吸入孔が設けられた領域と、前記吸入孔が設けられていない領域とを有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の消臭システム。
【請求項10】
前記消臭剤は、種類の異なる複数の前記消臭剤を含み、
複数の前記消臭剤が、互いに異なる前記部屋に配置されている請求項1〜9のいずれか一項に記載の消臭システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭システムに関する。
【背景技術】
【0002】
居室等の臭気を消臭する従来の装置として、ファンなどにより発生させた気流に芳香剤より発する芳香成分を混ぜた状態において気流を噴出し、芳香成分を居室内等に拡散させる装置がある(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4685421号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された装置は、芳香成分を居室内等に一定の割合で拡散させることによって、特定の空間に存在する臭気を消臭する。特許文献1に記載された装置では、拡散する量が一定なので、空間内の環境が変化した場合に対応できない。たとえば、空間中の臭気の量が芳香成分を大きく上回った場合、臭気により不快な空間が形成されてしまう。逆に、臭気がほとんどないのに、芳香成分だけが拡散される場合、芳香成分が目立ってしまい、不自然な空間が形成されてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、環境の変化に対応できる消臭システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
消臭システムは、環境空気に含まれる臭気を消臭する消臭媒体を、当該環境に供給する消臭器と、前記環境の変化を検出する検出部と、前記検出部による検出結果に応じて、前記消臭器の動作モードを変更する制御部と、を有し、前記消臭器は、吸入孔および通気孔が設けられ、かつ、回転可能に筐体に保持された回転吸気部と、前記筐体に設けられるとともに、前記回転吸気部内を複数の部屋に仕切る隔壁と、少なくとも一つの前記部屋に配置されるとともに、前記消臭媒体を発生させる消臭剤と、前記吸入孔を介して前記回転吸気部に空気を吸引し、前記回転吸気部から前記通気孔を介して前記空気を排出する方向の気流を形成する回転翼と、前記回転吸気部を回転駆動する駆動部と、を含み、前記制御部は、前記動作モードの変更として、前記駆動部に対して前記回転吸気部の回転方向および回転量の制御指示を行うことにより、前記消臭器により供給する前記消臭媒体の量および/または種類を変更する。
【発明の効果】
【0007】
消臭システムによれば、環境の変化に応じて、動作モードを変更するので、環境の変化に合致した消臭器の動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の消臭システムの概略構成を示す図である。
図2】消臭器の斜視図である。
図3】消臭器の分解斜視図である。
図4】消臭器内の両方の部屋に空気が吸い込まれる様子を示す図である。
図5】消臭器内の片方の部屋に空気が吸い込まれる様子を示す図である。
図6】消臭システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0010】
図1は、本実施形態の消臭システムの概略構成を示す図である。
【0011】
消臭システム1は、消臭器10、検出部20および制御部30を有する。
【0012】
消臭器10は、消臭システム1が適用される環境に設置される。消臭器10は、内部に消臭剤を有し、環境から取り込んだ空気流により消臭剤から消臭媒体を発生し、環境に消臭媒体を供給する。消臭媒体は、臭気を消臭する作用を発揮する材料により形成される。消臭媒体は、臭気を消臭することができる限りにおいて特に限定されない。たとえば、消臭成分、芳香成分、イオン、オゾンの少なくとも1つを含むことができる。これらの消臭媒体を単独で使用してもよいし、たとえば、消臭成分と芳香成分とを組み合わせて使用することができる。芳香剤を使用する消臭法として、マスキング法、ペアリング消臭のいずれをも採用できる。マスキング法は、比較的強い香りにより、臭気を打ち消す方法であり、ペアリング消臭法は、比較的軽い香りにより臭気を消臭する方法である。
【0013】
なお、本明細書において、「消臭」とは、文字通りの消臭のみならず、脱臭や除臭をも含み、人が不快と感じる臭気を低減することや、不快と感じない程度にまで消すこと、不快と感じない種類に変化させることを広く表す言葉として使用する。
【0014】
消臭器10の詳細な構成については、後述する。
【0015】
検出部20は、環境の変化を検出する。本実施形態では、検出部20は、消臭システム1が適用される環境内を監視可能なカメラである。検出部20は、レンズにより環境内の画像を取得し、制御部30に送信する。
【0016】
制御部30は、消臭器10および検出部20を制御する。制御部30は、検出部20による検出結果に基づき、消臭器10の動作モードを制御する。本実施形態では、制御部30は、検出部20により検出した画像から、環境内の人数を判断する。制御部30は、検出部20から送信される画像を逐次分析し、画像内の人の数を検出する。画像の分析においては、例えば、人の顔を認識し、認識した顔の数を、環境内の人数と判断する。画像の分析方法については、顔認識に限定されない。たとえば、画像内で動くもの、一定の大きさの物、一定の形状の物、輝度勾配等の特徴を抽出して、人と判断することもできる。本実施形態には、現状用いられるいかなる人検出方法も適用可能である。
【0017】
制御部30は、環境の変化として、環境中の人数の変化を監視し、当該変化に基づき、消臭器10を制御する。制御部30による具体的な動作については、後述する。制御部30の動作の説明の前に、消臭器10の構造について説明する。
【0018】
図2は消臭器の斜視図、図3は消臭器の分解斜視図である。
【0019】
図2および図3に示すように、消臭器10は、筐体12、回転吸気部14、ファン16および上蓋18を有する。
【0020】
筐体12は、円筒状の回転吸気部14を回転可能に保持する。筐体12は、回転吸気部14を保持する際に、当該回転吸気部14内を仕切る隔壁120を有する。本実施形態では、隔壁120は、回転吸気部14内を二部屋に分ける。隔壁120により仕切られた部屋の一方には、消臭剤40が配置されている。本実施形態では、もう一方の部屋には、何も配置されていない。
【0021】
回転吸気部14は、円筒側面の半周に亘って、空気が通過可能な複数の吸入孔140が形成されている。回転吸気部14は、吸入孔140が形成された円筒の内側に、不織布など埃や粒子を吸着したり、捕捉したりできるフィルターを備えてもよい。回転吸気部14は、頂部142に円形の軸穴144が形成されている。軸穴144が、筐体12の隔壁120の頂部に形成された円筒の突起122に嵌まると、回転吸気部14は、突起122を中心として、回転できる。回転吸気部14は、図示していない筐体12中のモーターに接続されており、モーターの駆動により回転方向及び回転量が決定できる。回転吸気部14の頂部142には、軸穴144以外にも、空気の流路となる通気孔146も形成されている。
【0022】
ファン16は、回転吸気部14の頂部142上に位置するように設けられる。ファン16は、回転翼162を有する。回転翼162が回転することにより、回転吸気部14から空気を吸引する方向に気流を形成する。ファン16は、上蓋18内に収納される。
【0023】
上蓋18は、格納されるファン16が形成する気流の排気位置に合わせて、複数の排出孔182を有する。
【0024】
以上のように、消臭器10は、ファン16の回転により、回転吸気部14の周囲から筐体12内に吸気し、上蓋18の上面に排気する。筐体12内に吸い込まれた空気は、筐体12内で隔壁120により分離された二部屋の少なくとも一方の部屋を通り、通気孔146からファン16に排出される。ここで、少なくとも一方の部屋を通るというのは、回転吸気部14の位置によって、空気の流路が切り換えられるからである。
【0025】
空気の流路の切換について、さらに詳しく説明する。
【0026】
図4は消臭器内の両方の部屋に空気が吸い込まれる様子を示す図、図5は消臭器内の片方の部屋に空気が吸い込まれる様子を示す図である。図4および図5では、消臭器10を、上蓋18を平面として見た様子を示しており、説明のため、回転吸気部14および筐体12の隔壁120以外の構成の図示を省略している。また、図4および図5において、回転吸気部14の吸入孔140が形成されている範囲、すなわち、空気が流入できる範囲を、両矢印により示す。
【0027】
図4に示すように、吸入孔140が配置される範囲が、隔壁120を跨ぐ場合、隔壁120の両側の二部屋いずれにも吸入孔140から空気が流入する。一方、図5に示すように、吸入孔140が配置される範囲が、隔壁120により分離される部屋の一方のみに亘る場合、一方の部屋には空気が流入され、他方の部屋には空気が流入されない。図5に示す例では、消臭剤40が配置される部屋にのみ空気が流入する。
【0028】
以上のように、回転吸気部14を回転させて、吸入孔140が配置される位置を変更することによって、空気の流動経路を適宜変更できる。図4では、消臭剤40が配置された部屋と、配置されていない部屋に半分(50%)ずつ、空気が流入する場合を示し、図5では、消臭媒体が配置された部屋に全て(100%)、空気が流入する場合を示した。しかし、回転吸気部14の位置、すなわち、吸入孔140が配置される範囲を調整することによって、消臭剤40が配置された部屋への空気の流入の割合を0〜100%まで調整できる。以下では、回転吸気部14の位置を調整して、消臭剤40が配置された部屋に流入させる空気の割合をX%とすることを、「消臭剤40にX%の空気を供給する」と表現する。
【0029】
消臭剤40が存在する部屋に通過する空気の量を調整することで、消臭剤40から気化等により分散する消臭媒体の量を調整でき、結果として、消臭器10から環境に供給する消臭媒体の量を調整できる。
【0030】
次に、消臭システム1の動作について説明する。
【0031】
図6は、消臭システムの動作の流れを示すフローチャートである。なお、本実施形態では、消臭システム1は、タバコの喫煙スペースに設置されているものとする。
【0032】
検出部20は、環境の変化の検出として、消臭システム1が設置された環境にいる人を検出する(ステップS101)。
【0033】
制御部30は、検出部20により検出した人から人数(パラメーター)を特定し(ステップS102)、特定した人数に応じて、動作モードを変更する(ステップS103)。本実施形態では、動作モードの変更は、消臭器10の回転吸気部14の位置の変更である。たとえば、喫煙スペースの収容可能人数が10人であるとする。そして、消臭剤40に100%の空気を供給したときに消臭器10が環境内に供給する消臭媒体が、環境内で10人がタバコを吸ったときに発生する臭気をちょうど消臭する場合を考える。すなわち、喫煙スペース内で10人がタバコを吸ったときの臭気を、消臭剤40に100%の空気を供給すると発生する消臭媒体によりちょうど消臭できるように、消臭剤40の成分や大きさ、空気の流入量等を予め設定しておいた場合を考える。この場合において、検出部20により検出された人数が2人(パラメーター)の場合、制御部30は、消臭剤40に20%の空気を供給するように、回転吸気部14の位置を制御する。同様に、検出した人数が5人の場合は、図4に示すように、消臭剤40に50%の空気を供給するように、回転吸気部14の位置を制御する。
【0034】
本実施形態における消臭システム1によれば、以下の効果を奏する。
【0035】
以上のように、本実施形態においては、環境内の人数の変化(環境の変化)に応じて、回転吸気部14の位置(動作モード)を変更する。喫煙スペースにおいては、検出される人がタバコを吸っている蓋然性が高く、タバコから出る煙の量、すなわち、臭気の量を推定できる。したがって、消臭システム1は、環境内の人数が多くなれば、環境に供給される消臭媒体の量を多くし、少なくなれば、環境に供給される消臭媒体の量を少なく調整できる。さらに、誰も検出されない場合は、環境に供給される消臭媒体の量をゼロにすることもできる。したがって、環境内の臭気と消臭媒体との量を常にバランスさせられる。これにより、環境内の臭気を、必要量の消臭媒体により、消臭できる。確実な消臭効果が得られる。また、消臭剤40が不必要に消費されることもなく経済的である。加えて、消臭媒体に香りがある場合でも、環境に必要以上に香りを供給することがなく、消臭媒体の存在が不自然に目立つことがない。
【0036】
(検出部の変形例)
上記実施形態では、検出部20がカメラであり、環境内の臭気の量の変化を、環境内の人数により間接的に検出していた。しかし、検出部20は、カメラ以外の構成により、間接的または直接的に臭気の量の変化を検出することもできる。
【0037】
以下の変形例1〜5は、環境中の臭気自体を検出することによって、直接的に臭気の量の変化を検出する検出部20の変形例である。
【0038】
変形例6〜10は、環境中の臭気の発生源を検出することによって、間接的に臭気の量の変化を検出する検出部20の変形例である。
【0039】
変形例11〜18は、環境中の人を検出することによって、間接的に臭気の量の変化を検出する検出部20の変形例である。
【0040】
以下では、検出部20の変形例1〜18について説明する。
【0041】
(検出部の変形例1)
変形例1においては、検出部20は、臭気自体を検出する臭いセンサーである。具体的には、臭いセンサーは、たとえば、金属酸化物素子または有機半導体膜素子の誘電率の変化や、水晶振動子の周波数変化により、臭気の量の変化を検出する。他にも、臭いセンサーは、いかなる方式により臭いを検出してもよい。
【0042】
(検出部の変形例2)
変形例2においては、検出部20は、臭気を伴う煙を検出する煙センサーである。具体的には、煙センサーは、赤外線等により環境中の光の透過度を見て、煙の存在および量を確認できる。制御部30は、煙の量から、臭気の量を特定できる。ただし、これ以外にも、一般的に使用されているいかなる煙センサーも検出部20に適用できる。
【0043】
(検出部の変形例3)
変形例3においては、検出部20は、臭気に含まれる成分を検出するセンサーである。具体的には、たとえば、臭気の原因がタバコの煙である場合、タバコ由来で空気中に飛散する成分の量を検出する。タバコ由来の成分としては、たとえば、アセトアルデヒド、アルロレイン、ピリジン、環式芳香族炭化水素、ニコチン、1,3−ブタジエン、ベンゼン、トルエン、二酸化炭素等がある。制御部30は、環境中のタバコ由来成分の量を検出することにより、臭気の量を特定できる。
【0044】
さらに、検出部20がタバコ由来の成分を検出するので、制御部30は、検出された成分を分析することにより、タバコの種類も特定できる。
【0045】
(検出部の変形例4)
変形例4においては、検出部20は、温度センサーである。検出部20は、煙による温度上昇を検出する。制御部30は、予め、温度上昇と臭気の量(煙の量)の相関テーブルを有しており、当該テーブルを参照することによって、臭気の量を特定できる。この場合、検出部20は、気流等により煙が当たる位置に配置されることが好ましい。
【0046】
(検出部の変形例5)
変形例5においては、検出部20は、湿度センサーである。検出部20は、煙に含まれる蒸気による湿度上昇を検出する。制御部30は、湿度上昇と臭気の量(煙の量)の相関テーブルを有しており、当該テーブルを参照することによって、臭気の量を特定できる。この場合、検出部20は、気流等により煙が当たる位置に配置されることが好ましい。
【0047】
(検出部の変形例6)
変形例6においては、検出部20は、煙の発生源として、タバコを検出する。検出部20は、たとえば、赤外線サーモグラフィの原理を利用して、赤外線によりタバコの先端の燃焼部分を検出する。この場合、検出した燃焼部分の数が、燃焼中のタバコの本数に相当する。燃焼中の1本のタバコから発生する臭気量を事前に測定(決定)しておけば、当該臭気量に、検出したタバコの本数を乗算することで、環境内の臭気量を間接的に特定できる。なお、電子タバコの場合、タバコの燃焼または加熱が筐体内で起こることもあるが、その場合、検出部20は、筐体の発熱を検出する。
【0048】
(検出部の変形例7)
変形例7においては、検出部20は、タバコの吸殻の数を検出する。この場合、検出部20は、たとえば、灰皿に設置された赤外線センサーや、重量センサーである。
【0049】
検出部20が赤外線センサーの場合、灰皿に投入された吸殻が落下する途中に、発光部と受光部を設ける。落下する吸殻が赤外線を遮断し、受光部への受光がなくなる回数を数えることによって、吸殻の数を検知できる。1本のタバコから発生する臭気量を事前に測定しておけば、当該臭気量に、検出したタバコの吸殻の数を乗算することで、環境内の臭気量を間接的に特定できる。
【0050】
検出部20が重量センサーの場合、灰皿の重量増加を検出することによって、吸殻の数を特定できる。この場合、吸殻の平均重量を予め測定(決定)しておけば、重量増加を吸殻の平均重量で除算して、吸殻の数を特定できる。
【0051】
(検出部の変形例8)
変形例8においては、検出部20は、電子タバコの発光部分を検出する。この場合、検出部20は、画像認識できるカメラである。電子タバコは、一般的に、喫煙準備中、喫煙可能、喫煙終了のようなタイミングで、筐体の一部を点灯する。当該点灯を検出することによって、タバコを検出できる。点灯数に、1本のタバコから発生する臭気量を乗算することで、環境内の臭気量を間接的に特定できる。あるいは、喫煙準備中、喫煙可能、喫煙終了で点灯の色や、点灯の仕方(たとえば点滅など)など、点灯パターンが異なる場合、点灯パターン別に臭気の発生量を予め測定(決定)しておけば、より精度を高めて、臭気量を特定できる。
【0052】
(検出部の変形例9)
変形例9においては、検出部20は、電子タバコの筐体と通信可能な通信装置である。検出部20は、電子タバコの筐体と通信することによって、環境内のタバコを検出できる。
【0053】
(検出部の変形例10)
変形例10においては、検出部20は、電子タバコの筐体の充電数を検出する。検出部20は、電子タバコの筐体用の充電器に設けられており、充電器への給電を検出する。充電器の数は、タバコの数(あるいは人の数)と推定できるので、暫定的ではあるが、検出部20は、環境内のタバコを検出できる。
【0054】
(検出部の変形例11)
変形例11においては、検出部20は、上記実施形態のように、人を検出する。検出部20は、例えば、赤外線サーモグラフィの原理を利用して、赤外線により人の数を検出する。この場合、制御部30は、人の数に、一人の人がタバコを吸って発生する臭気量を乗算することにより、間接的に環境内の臭気量を特定できる。
【0055】
検出部20は、カメラであってもよい。この場合、検出部20は、カメラにより、環境の変化として環境内の画像を撮影する。制御部30は、カメラにより検出された画像に基づいて、画像内に人がいるか判断する。たとえば、制御部30は、画像から人の顔を認識したり、人の手足等の外形や大きさから人の体を認識したりできる。制御部30は、画像から人を抽出空することによって、人の人数も特定できる。
【0056】
(検出部の変形例12)
変形例12においては、検出部20は、環境(喫煙スペース)に設けられた赤外線センサーである。赤外線センサーは、一組の発光部および受光部からなる。二組の赤外線センサーが、例えば、喫煙スペースの入口の外側と内側に2列に設けられる。喫煙スペースの外側の一組において、受光部による受光が遮断され、所定時間(たとえば1〜2秒)以内に、喫煙スペースの内側の一組において、受光部による受光が遮断された場合、人が入室したことを検出できる。逆に、先に内側の一組で遮断が起こり、続けて外側の一組で遮断が起こった場合、人が退室したことを検出できる。このようにして、入退室を検出することにより、環境内の人数を監視できる。制御部30は、環境内の人数に、一人の人がタバコを吸って発生する臭気量を乗算することにより、間接的に環境内の臭気量を特定できる。
【0057】
(検出部の変形例13)
変形例13においては、検出部20は、カメラを用いて体表面の皮膚血流から脈派を検出したり、人体に電波を当てることで脈拍を測定したりする非接触の心拍センサーである。検出部20は、人の心拍が発生している数を検出することによって、環境内の人数を検出できる。制御部30は、検出した人数に、一人の人がタバコを吸って発生する臭気量を乗算することにより、間接的に環境内の臭気量を特定できる。
【0058】
(検出部の変形例14)
変形例14においては、検出部20は、臭いセンサーである。検出部20は、人由来の臭い、たとえば、汗や脂の臭いを検出する。制御部30は、人由来の臭いの量から、環境内の人数を推定し、一人の人がタバコを吸って発生する臭気量を乗算することにより、間接的に環境内の臭気量を特定できる。
【0059】
(検出部の変形例15)
変形例15においては、検出部20は、たとえば、圧電素子などの重量センサーである。この場合、検出部20は、床に埋設される。床を踏んでいる人を検出することにより、環境内の人数を検出できる。制御部30は、検出した人数に、一人の人がタバコを吸って発生する臭気量を乗算することにより、間接的に環境内の臭気量を特定できる。
【0060】
(検出部の変形例16)
変形例16においては、検出部20は、電磁波測定器である。近年、ほとんどの人が携帯電話、スマートフォン、タブレット等の携帯端末を保有している。携帯端末からは電磁波が発生しているので、検出部20は、当該電磁波を検出する。制御部30は、検出した電磁波の数を、環境内の人数と推定できる。
【0061】
(検出部の変形例17)
変形例17においては、検出部20は、騒音計である。検出部20は、環境内の騒音レベルを測定する。制御部30は、予め用意された騒音レベルと環境内の人数の相関テーブルに基づき、環境内の人数を推定できる。
【0062】
(検出部の変形例18)
変形例18においては、検出部20は、カメラであり、環境中の人の性別および年齢の少なくとも一方を検出する。具体的には、検出部20は、環境内の画像を撮影する。制御部30は、カメラにより検出された画像に基づいて、画像内に人がいるか判断する。たとえば、制御部30は、画像から人の顔を認識したり、人の手足等の外形や大きさから人の体を認識したりできる。制御部30は、さらに、認識した人の顔や体から、特徴を分析し、認識した人の性別および年齢の少なくとも一方を特定(推定)する。
【0063】
以上の変形例1〜18のように、実施形態以外にも、様々な態様の検出部20が本発明に適用できる。
【0064】
なお、上記実施形態および変形例1〜18では、検出部20が環境の変化を検出し、制御部30が環境の変化を分析して、タバコの数や人の数等を特定している。しかし、これに限定されず、検出部20に処理機能を搭載して、検出部20において、タバコの数や人の数等の特定までしてもよい。
【0065】
(消臭器の動作モードの変形例)
次に、消臭器10の動作モードの変形例について説明する。
【0066】
上記実施形態では、制御部30は、動作モードの変更として、消臭剤40に供給する空気の割合を変更することにより、環境に供給する消臭媒体の量を調整していた。しかし、制御部30は、動作モードの変更として、別の形態により消臭媒体の量を調整したり、別の要素を変更したりすることができる。
【0067】
以下では、制御部30による消臭器10の動作モードの変形例A〜Cについて説明する。
【0068】
(消臭器の動作モードの変形例A)
変形例Aにおいては、動作モードの変更として、上記実施形態と同様に、環境に供給する消臭媒体の量(濃度)を調整する。しかし、変形例Aでは、実施形態のように、消臭剤40に供給する空気の割合を変更しない。変形例Aでは、消臭器10内に二部屋を設けずに、一部屋だけとし、当該一部屋に消臭剤を配置する。すなわち、吸入孔から空気を吸い込めば100%の空気が必ず消臭剤が配置された部屋を通ってから、消臭器10の外部に排気される。一方で、変形例Aでは、上記実施形態とは異なり、ファン16の回転を可変とする。
【0069】
検出部20による検出結果に応じて、ファン16の回転速度を変更する。たとえば、喫煙スペースに消臭システム1が配置されるとする。喫煙スペースの収容可能人数が10名である場合で、検出結果から一人も特定されなかった場合、制御部30は、消臭器10のファン16の回転を止める。すなわち、制御部30は、環境に対し、消臭媒体を供給しない。一方、10名が特定された場合、制御部30は、ファン16の単位時間当たりの回転数を最大とする。これにより、制御部30は、収容可能人数が最大で、最も臭気が多い際には、最大限の量の消臭媒体を発生させ、環境に供給できる。また、5名が特定された場合、制御部30は、ファン16の単位時間当たりの回転数を最大の50%とする。
【0070】
このように、ファン16の回転数を変えて、消臭器10内の消臭剤に供給する風量を変えることによって、環境に供給する消臭媒体の量を変更できる。
【0071】
あるいは、検出部20によりタバコの吸殻が検出される場合、制御部30は、吸殻の検出の度に所定時間だけ、ファン16の回転数を単位時間当たりの最大回転数の10%ずつ増加してもよい。ここで所定時間は、たとえば、タバコ一本から発生する臭気とバランスする消臭媒体を発生させられる時間である。所定時間が経過する前に、吸殻が連続して検出された場合は、ファン16の単位時間当たりの回転数が最大回転数の10%ずつ増加する。これにより、連続して臭気が増えた場合にも、環境に供給する消臭媒体の量も比例して増加でき、臭気をバランスのとれた量の消臭媒体により消臭できる。
【0072】
(消臭器の動作モードの変形例B)
変形例Bにおいては、動作モードの変更として、臭気の量が多い位置に消臭媒体が向かうように、消臭媒体の供給方向を変更する。消臭媒体の供給方向の変更のために、消臭器10は、排出孔の近傍に可動ハネ(不図示)を有する。可動ハネは、制御部30により角度(姿勢)が変更可能である。たとえば、上蓋18に対して垂直にハネが立つ場合、上蓋18の真上に向かって消臭媒体が供給される。また、上蓋18に対して30度傾斜している場合、30度斜め方向に消臭媒体が供給される。上蓋18自体が水平に180度回動してもよい。このように構成すれば、上蓋18から見て半球の範囲であれば、いずれの方向にも消臭媒体を供給できる。可動ハネや、上蓋18は、ギア等を介してモーターに接続することにより自由に回転できる。
【0073】
たとえば、上記の変形例2のように、赤外線センサーを環境内でスキャンして、煙の位置を特定できる場合、制御部30は、特定した煙の位置に向かって消臭媒体が供給されるように、可動ハネや上蓋18の回転位置を制御する。これにより、煙に含まれる臭気を、確実かつ効率的に消臭できる。
【0074】
あるいは、検出部20が変形例1や変形例3のようなセンサーである場合でも、検出部20を環境内の複数の異なる位置に配置しておけば、制御部30は、臭気(煙)が集まった場所を特定できる。臭気の位置が特定できれば、変形例Bの動作モードの変更を有効に活用できる。
【0075】
(消臭器の動作モードの変形例C)
変形例Cにおいては、動作モードの変更として、消臭器10により供給する消臭媒体の種類を変更する。消臭媒体の種類の変更のために、消臭器10は、上記実施形態のように、複数の部屋を有する。実施形態では、二つの部屋のうち一方の部屋に消臭剤40が配置されていたが、変形例Cでは、異なる部屋に異なる種類(香り)の消臭剤が配置される。そして、制御部30は、吸入孔140から吸引した空気が通る部屋を変更することによって、異なる種類の消臭媒体を環境に供給できる。空気が通る部屋の変更は、実施形態と同様に、回転吸気部14の位置を変更することにより可能である。
【0076】
具体的には、たとえば、回転吸気部14内で中心角が90度の四分割された部屋が設けられており、回転吸気部14の円周には90度の範囲で吸入孔140が設けられているとする。この場合だと、いずれかの部屋にだけ、吸入孔140が臨むように、回転吸気部14の位置を決めることができる。したがって、四つの部屋に異なる種類の消臭剤が配置されていれば、いずれの部屋に空気を流入させるかで、いずれの消臭剤から消臭媒体を発生させるか選択可能となる。
【0077】
たとえば、変形例18のように、制御部30が環境内の人の性別や年齢を特定できる場合、性別や年齢による香りの好みの傾向に応じて、環境に供給する消臭媒体の香りを変更できる。環境内に女性が多ければ、バラなどのフローラル系の香りがする消臭媒体を発生させたり、環境内に男性が多ければ、柑橘系の香りがする消臭媒体を発生させたりできる。
【0078】
また、たとえば、変形例1〜17のように、臭気の量を特定できる場合でも、特定した臭気の量に応じて、供給する消臭媒体の香りを変更してもよい。この場合、たとえば、臭気の量が多ければ、香りが強いフローラル系の消臭媒体を発生させ、臭気の量が少ない場合は、香りがマイルドな柑橘系の消臭媒体を発生させる。
【0079】
また、たとえば、変形例3のように、タバコの種類を検出できる場合、タバコの種類に応じて、供給する消臭媒体の香りを変更してもよい。この場合、タバコの種類によって、当該タバコの消臭に有効な消臭媒体を選択できる。
【0080】
以上、上記実施形態および検出部の変形例1〜18、動作モードの変形例A〜Cのように、本発明は様々なバリエーションが考えられる。そして、上述のいかなる検出部のバリエーションは、いかなる動作モードのバリエーションとも、組合せが自在である。また、検出部として変形例1〜18を組み合わせて使用したり、動作モードとして変形例A〜Cを組み合わせて使用したりすることも可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 :消臭システム、
10 :消臭器、
12 :筐体、
14 :回転吸気部、
16 :ファン、
18 :上蓋、
20 :検出部、
30 :制御部、
40 :消臭剤、
120 :隔壁、
122 :突起、
140 :吸入孔、
142 :頂部、
144 :軸穴、
146 :通気孔、
162 :回転翼、
182 :排出孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6