【実施例】
【0020】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
【0021】
<触媒の実施例>
〔実施例1〕
ポリビニルピロリドン濃度0.9g/リットルのポリピロリドン水溶液を調製し、このポリピロリドン水溶液に金化合物(HAuCl4等)とパラジウム化合物(PdCl2等)とを、得られる触媒においてAuとPdとの配合比1:3となる量添加して、Au・Pd含有水溶液を調整した。
ついで、この水溶液を冷却しながら水素化ホウ素ナトリウム濃度3.7 g/リットルの水素化ホウ素ナトリウム水溶液を混合し、30分程度撹拌混合した。
ついで得られた水溶液に担体として酸化チタン(TiO
2)を担体100重量部に対して3重量部となるように投入し、更に1規定の塩酸水溶液を酸化チタンのPZCであるpH=3となるように滴下した。滴下終了後、1日撹拌し、その後精製水とメタノールによりpH5に調整し、その後分離乾燥させて、PdAu(Pd:Au=1:3)が担持されたTiO
2担体からなる触媒を得た。得られた触媒におけるPdAu担持量は担体100重量部に対して3重量部であった(この場合を以下の実施例では「3重量%」と表記する)。
得られた触媒について、操作型電子顕微鏡(SEM)により観察した。また、上述の測定法にした粒径分布と平均粒子径を測定した。その結果を
図1に示す。
〔実施例2〕
また、担持量が1重量%となるようにした以外は同様にして担持量1重量%のPdAu(Pd:Au=1:1)が担持されたTiO
2担体からなる触媒を得た。得られた触媒について、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。また、上述の測定法にした粒径分布と平均粒子径を測定した。その結果を
図2に示す。
〔実施例3〜6、比較例〕
PdとAuとの比を1;2(実施例3),1:4(実施例4)1;5(実施例5),1:10(実施例6),3:1(比較例1),1:0(比較例2),0:1(比較例3)とした以外は実施例1と同様にして担持量3重量%のPdAu(Pd:Au=1:3)が担持されたTiO
2担体からなる触媒を得た。
〔実施例7〜10〕
担体をTiO
2からAl
2O
3(実施例7)、SiO
2(実施例8)又は、ZrO
2(実施例9)、Nb
2O
5(実施例10)にした以外は実施例1と同様にして担持量3重量%のPdAu(Pd:Au=1:3)が担持された各担体からなる触媒を得た。
【0022】
<製造方法の実施例>
〔実施例12、比較例4〕
実施例1〜4で得られた触媒及び比較例1〜3の触媒、並びに比較対象としてのPdとPtとからなる(Pd:Pt=1:3)の触媒及びPtとAuとからなる(Pt:Au=1:3)の触媒について、ベンゼン化合物の製造を行った。
下記化学式に示すように、化合物1 1.5mmolをトルエン1ml中に溶解し、そこに溶液全体で1mol%となるように各触媒を添加し、75℃にてアルゴン雰囲気下3時間反応を行うことにより、化合物2及び3で示すベンゼン化合物を得た。各触媒について収率を
図3に示す。なお、収率及び反応率(conv.)はそれぞれガスクロマトグラフィー(「GC−2014」島津製作所社製)により測定した。
図3に示す結果から明らかなように、本発明の触媒は優れた触媒活性を示すことをわかる。対してPdとAuとの比が本発明の範囲外の場合には触媒活性がないか、きわめて 低いことがわかる。
【0023】
【化5】
【0024】
〔実施例13〕
実施例1及び7〜10で得られた、それぞれ担体の異なる触媒について実施例12と同様にしてベンゼン化合物の製造を行い、その収率を測定した。その結果を
図4に示す。
図4に示す結果から明らかなように、本発明の触媒は優れた触媒活性を示すことがわかる。
【0025】
〔実施例14〕
反応系における溶媒を
図5に示す溶媒に変えた以外はそれぞれ実施例12と同様に反応を行い、化合物2及び3を得た。それぞれの収率を
図5に示す。
図5に示す結果から特に芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、ベンゼン)、エーテル系溶媒(THF、1,4−ジオキサン)、ジクロロエチレンが特に好ましいことがわかる。
【0026】
〔実施例15〕
担持量が1重量%となるようにした以外は同様にして担持量1重量%のPdAu(Pd:Au=1:1)が担持されたTiO
2担体からなる触媒を得た(実施例15の触媒)。得られた触媒、及び実施例2の触媒について、実施例12と同様に反応を行い、化合物2及び3を得た。その際の収率を測定し、実施例12の結果と合わせて
図6に記載した。
図6に示す結果から明らかなように、実施例1及び2の触媒の方が好ましいことがわかる。
【0027】
〔実施例16〕
反応時におけるアル
キン類(化合物1)の濃度を0.5mmol/ml、0.75mmol/ml、3mmol/mlとした以外は実施例12と同様にして反応を行い、化合物2及び3を得た。得られたベンゼン化合物の収率を測定し、その結果を
図7に示す。
図7に示す結果から明らかなように、1.5mmol/ml、3mmol/mlの場合に特に好ましいことがわかる。
【0028】
〔実施例17〕
下記化学式に記載する化合物4 1.5mmolをトルエン1ml中に溶解し、そこに溶液全体で1mol%となるように実施例1の触媒を添加し、100℃にてアルゴン雰囲気下、化合物毎に下記に示す時間反応を行うことにより、化合物2及び3で示すベンゼン化合物を得た。
【化6】
【0029】
〔実施例18〕
下記化学式に記載するように、反応条件を、反応温度100℃、アルゴン雰囲気下又は空気雰囲気下とし、反応時間を2時間とした以外は実施例12と同様にして化合物2及び3で示すベンゼン化合物を得た。下記に示す結果から明らかなように、空気雰囲気下でも十分に反応が進行し、ベンゼン化合物の製造ができることがわかる。
【化7】
【0030】
〔実施例19〕
反応温度100℃、反応時間2時間とした以外は実施例12と同様に反応を行い、反応終了後に取り出した触媒を乾燥させた後、再利用した。再利用の反応は下記に示すように、回収した触媒のみを用い、反応温度100℃、反応時間2時間とした以外は実施例12の反応と同じ条件とした。その結果を以下に示す。尚、再利用は1回だけではなく3回まで行った。
以下に示す結果から明らかなように、繰り返し使用しても高い活性が得られた。また、再利用時の触媒量もあまり減少せず、触媒を高い回収率で回収し再利用できることもわかる。
【化8】
【0031】
〔実施例20〕
下記式に示すようにアルキン類として化合物5(0.5mmol)と化合物1(0.6mmol)とを用いて、アルゴン雰囲気下又は空気雰囲気下にて、実施例1の触媒を溶液全体中3mol%の濃度となるように使用し、トルエン1ml中、反応温度100℃で1.5時間反応を行うことにより、化合物6に示すベンゼン化合物を得た。
得られた化合物6の収率を以下に示す。この例から、種々アルキン類において有効な触媒であること、空気中でも反応が進行し所望のベンゼン化合物を得ることができることがわかる。
【化9】
【0032】
〔実施例21〕
実施例20におけるアルゴン雰囲気下の反応終了後に、触媒を回収し、実施例19と同様に再利用した以外は実施例20と同様に反応を行い、所望の化合物6を得た。
【化10】
【0033】
〔実施例22〕
下記化学式に記載するアルキン類5 0.3mmol及びアルキン類7(Rはそれぞれ下記に示すとおりである)をトルエン1ml中に溶解し、そこに溶液全体で6mol%となるように実施例1の触媒を添加し、75℃にてアルゴン雰囲気下、化合物毎に下記に示す時間反応を行うことにより、化合物8で示すベンゼン化合物を得た。
【化11】
【0034】
〔実施例23〕
下記化学式に記載するアルキン類9(9a〜9eの5種類それぞれについて反応を行った) 0.3mmol及びアルキン類1をトルエン1ml中に溶解し、そこに溶液全体で6mol%となるように実施例1の触媒を添加し、75℃にてアルゴン雰囲気下、化合物毎に下記に示す時間反応を行うことにより、化合物10(式中Rはそれぞれ9a〜9eのRに対応する)で示すベンゼン化合物を得た。
【化12】
【0035】
〔実施例24〕
下記化学式に記載するアルキン類11 0.5mmolを0−キシレン2.5ml中に溶解し、そこに溶液全体で3mol%となるように実施例1の触媒を添加し、140℃にてアルゴン雰囲気下、24時間反応を行うことにより、化合物12で示すベンゼン化合物を収率68%で得た。
また、下記化学式に記載するアルキン類13 0.5mmolを0−キシレン2.5ml中に溶解し、そこに溶液全体で3mol%となるように実施例1の触媒を添加し、140℃にてアルゴン雰囲気下、3時間反応を行うことにより、化合物14で示すベンゼン化合物を収率50%で得た。
【化13】