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特許6937013ベンゼン化合物の製造方法及びベンゼン化合物製造用の触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937013
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】ベンゼン化合物の製造方法及びベンゼン化合物製造用の触媒
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/48 20060101AFI20210909BHJP
   C07C 15/14 20060101ALI20210909BHJP
   C07C 69/76 20060101ALI20210909BHJP
   C07C 67/347 20060101ALI20210909BHJP
   C07C 41/32 20060101ALI20210909BHJP
   C07C 69/753 20060101ALI20210909BHJP
   C07C 43/164 20060101ALI20210909BHJP
   C07D 333/18 20060101ALI20210909BHJP
   C07D 493/04 20060101ALI20210909BHJP
   B01J 23/52 20060101ALI20210909BHJP
   B01J 23/68 20060101ALI20210909BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210909BHJP
【FI】
   C07C2/48
   C07C15/14
   C07C69/76 Z
   C07C67/347
   C07C41/32
   C07C69/753 Z
   C07C69/76 A
   C07C43/164
   C07D333/18
   C07D493/04 101A
   B01J23/52 Z
   B01J23/68 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-119302(P2017-119302)
(22)【出願日】2017年6月19日
(65)【公開番号】特開2019-1757(P2019-1757A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 哲也
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大樹
【審査官】 池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03562346(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第104557373(CN,A)
【文献】 特表2004−524151(JP,A)
【文献】 R. Mark Ormerod et al.,Geometrical and electronic effects in the conversion of acetylene to benzene on Au(111)/Pd and Au/Pd surface alloys,Surface Science Letters,1991年,vol. 259, issue 1-2,L709-713
【文献】 Antonio Leyva-Perez et al.,Reactivity of electron-deficient alkynes on gold nanoparticles.,ACS Catalysis,2013年,vol. 3, no. 8,pp.1865-1873
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 2/42
C07C 2/76
C07C 15/00
B01J 23/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下、アルキン類からベンゼン化合物を製造する製造方法であって、
上記触媒が、担体にPdとAuとをモル比でPd:Au=1:1〜10で担持させてなる担持PdAu触媒であり、
上記担体は、卑金属元素、遷移金属元素又はランタノイドの酸化物であり、
上記のPdとAuとの上記担体への担持量は、触媒全体量100重量部に対して1〜4重量部である
ベンゼン化合物の製造方法。
【請求項2】
上記アルキン類が下記一般式(I)、(I)’又は(I)’’で表されるアルキン類であり、上記ベンゼン化合物が下記一般式(II)で表される化合物である、請求項1記載のベンゼン化合物の製造方法。
【化1】

式中、R〜Rは、それぞれ同一でも異なっていてもいい基であって、それぞれ水素原子、ヘテロアリール基、炭素数2〜6のアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシ基(OCH)、カルボキシメチル基(COCHを示す。また、Xは、酸素原子、硫黄原子、RN<、RC< を示す。Rトシル基又は〜Rと同一の基を示す
【請求項3】
アルキン類からベンゼン化合物を製造するための、担体にPdとAuとをモル比でPd:Au=1:1〜10で担持させてなる担持PdAu触媒からなる触媒であって、
上記担体は、卑金属元素、遷移金属元素又はランタノイドの酸化物であり、
上記のPdとAuとの上記担体への担持量は、触媒全体量100重量部に対して1〜4重量部である
ベンゼン化合物の製造ベンゼン化合物製造用の触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多様なベンゼン誘導体が設計可能であり、環境にやさしい反応系で所望のベンゼン化合物を得ることができるベンゼン化合物の製造方法及びベンゼン化合物製造用の触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼン化合物は、置換基を所望の基に変更することにより各種ポリマー原料や医薬品中間体等種々用途に活用できるため、現在も広く活用されている。
従来のベンゼン化合物の製造方法は、石油化学的に得られるベンゼンやフェノールなどを置換して所望のベンゼン化合物を得るというものであったが、この方法では所望のベンゼン化合物の置換基によっては製造が困難であり、また副生物が多く廃棄物が多く生成してしまうという問題があった。
そこで所望の置換基を有するアルキンを環化する等環化反応により所望のベンゼン化合物を得ることが試みられている。
たとえば特許文献1には、アルケン類を含むプラスチック溶解物から環化反応によりベンゼン類を製造する方法において、Ni系触媒やCoMo触媒を用い得ることが開示されている。
また、非特許文献1には、担持Au触媒を用いてアルキンの環化を行い得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−332345号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A. Corma et al. ACS Catal. 2013, 3, 1865-1873.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の提案にかかる製造方法では、限られた原料でしかベンゼン化合物を得ることができず、多様なベンゼン化合物を得られない等の問題があり、多様なベンゼン化合物の製造を行うことができる、ベンゼン化合物の製造方法の開発が要望されているのが現状である。
したがって、本発明の目的は、ベンゼンを出発原料とした場合のように廃棄物を出すことがなく、環境負荷が低く、多様なベンゼン化合物の製造を行うことができる、ベンゼン化合物の製造方法及びその製造方法に用いる触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解消するために鋭意検討した結果、不均一系の触媒の中でもパラジウムと金との両方を具備する触媒が効果的であることを見出し、更にパラジウムと金との組成比などを検討して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の各発明を提供するものである。
1.触媒の存在下、アルキン類からベンゼン化合物を製造する製造方法であって、
上記触媒が、担体にPdとAuとをモル比でPd:Au=1:1〜10で担持させてなる担持PdAu触媒である
ベンゼン化合物の製造方法。
2.上記アルキン類が下記一般式(I)、(I)’又は(I)’’で表されるアルキン類であり、上記ベンゼン化合物が下記一般式(II)で表される化合物である、1記載のベンゼン化合物の製造方法。
【化1】
式中、R〜Rは、それぞれ同一でも異なっていてもいい基であって、それぞれ水素原子、ヘテロアリール基、炭素数2〜6のアルキル基、炭素数2〜4の置換基を有するアリール基、炭素数2〜6の置換基を有するアルキル基を示す。また、Xは、酸素原子、硫黄原子、RN<、RC< を示す。RはR〜Rと同一である。
3.アルキン類からベンゼン化合物を製造するための触媒であって、
担体にPdとAuとをモル比でPd:Au=1:1〜10で担持させてなる担持PdAu触媒からなる、ベンゼン化合物製造用の触媒。
【発明の効果】
【0007】
本発明のベンゼン化合物製造用の触媒は、ベンゼンを出発原料とした場合のように廃棄物を出すことがなく、環境負荷が低く、多様なベンゼン化合物の製造を行うことができる触媒である。
また、本発明のベンゼン化合物の製造方法によれば、ベンゼンを出発原料とした場合のように廃棄物を出すことがなく、環境負荷が低く、多様なベンゼン化合物の製造を行うことができる。
具体的には、以下の通りである。
・ 不均一系触媒であるため、触媒の回収が容易である。
・ 生成物に金属がほとんど混入しないため、環境負荷が小さい。
・ 触媒の再利用が可能であり、均一系触媒に比べてコスト的で有利である。
・ 空気中でも取り扱いが容易であり、活性の低下も小さい。
・多様なベンゼン化合物の合成が可能である。
・対応する多置換ベンゼン誘導体が高収率で得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は、合成例で得られた3重量%の担持量の触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(図面代用写真)であり、(b)はその粒径分布を示す棒グラフである。
図2図2(a)は、合成例で得られた1重量%の担持量の触媒のTEM写真(図面代用写真)であり、(b)はその粒径分布を示す棒グラフである。
図3図3は、実施例12の結果を示すグラフである。
図4図4は、実施例13の結果を示すグラフである。
図5図5は、実施例14の結果を示すグラフである。
図6図6は、実施例15の結果を示すグラフである。
図7図7は、実施例16の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。まず、本発明の触媒について説明する。
<触媒>
本発明のベンゼン化合物製造用の触媒は、アルキン類からベンゼン化合物を製造するための触媒であって、担体にPdとAuとをモル比でPd:Au=1:1〜10で担持させてなる担持PdAu触媒からなる
以下、詳述する。
【0010】
(担体)
上記担体としては、活性炭あるいは金属酸化物を好ましく用いることができ、卑金属元素、遷移金属元素又はランタノイドの酸化物がさらに好ましく、具体的には、TiO、Al、SiO、ZrO、Nb等を挙げることができる。なお、使用に際しては、それぞれ単独で若しくは2種以上混合して用いることができる。
上記担体の形状は、粉末状であり100メッシュ以下に分級したもの
であるのが好ましい。
また、上記担体の平均粒径は、10ナノメートルから1マイクロメートルであるのが好ましい。また、粒度分布は平均径が10〜100ナノメートル
であるのが好ましい。ここで、上記平均粒径及び上記粒度分布は、SEM、TEMあるいはゼータ電子測定装置により測定することができる。
また、上記担体の比表面積は、50〜1000 m2g-1
であるのが好ましい。ここで、上記比表面積は、窒素吸脱着測定装置により測定することができる。
【0011】
(PdとAu)
PdとAuとはそれぞれ原子がランダムに集積してなり、担体上でPd原子とAu原子とが混合した状態のクラスターを形成してなる。
上記クラスターの形状は通常の結晶化状態により形成される形状であれば特に制限されない。
PdとAuとの担持量比は、モル比でPd:Au=1:1〜10であり、好ましくはPd:Au=1:2〜5である。上記の範囲外の場合には、著しく収率が低くなり、反応性の点で問題がある。
また、PdとAuとは上述の担持量比で上記担体に担持されていればよく、それらの担持量は特に制限されないが、反応性の観点から触媒全体量100重量部に対して1〜10重量部であるのが好ましく、1〜4重量部であるのがさらに好ましい。また、クラスターの数も1つでも複数でもよい。
【0012】
(構造)
本発明の触媒は、上述の担体にPdとAuとが上記担持量で担持されてなるものである。
また、上記触媒の平均粒径は、2〜5ナノメートル
であるのが好ましい。また、粒度分布は狭ければ狭いほど好ましい。ここで、上記平均粒径及び上記粒度分布は、TEMにより測定することができる。
また、上記触媒の比表面積は、50〜1000 m2-1であるのが好ましい。ここで、上記比表面積は、窒素吸脱着測定装置により測定することができる。
また上記触媒全体の形状は粉末状であるのが好ましい。
【0013】
(製造法)
上記触媒は以下のようにして製造することができる。
まず、結合剤としてのポリビニルピロリドン水溶液(ポリビニルピロリドン濃度は
0.5〜3.0g/リットルとするのが好ましい)を調製する。得られたポリビニルピロリドン水溶液に金化合物(HAuCl4等)とパラジウム化合物(PdCl2等)とを、得られる触媒においてAuとPdとの配合比が所望の配合比となる量添加して、Au・Pd含有ポリビニルピロリドン水溶液を調整する。ついで、このAu・Pd含有ポリビニルピロリドン水溶液を室温以下の温度に、好ましくは0〜10度に冷却しながら水素化ホウ素ナトリウム水溶液(水素化ホウ素ナトリウム濃度は2〜10g/リットルとするのが好ましい)を混合し、10〜120分間撹拌混合する。
ついで得られた水溶液に所定の担体を所定量投入し、更に塩酸水溶液等の酸水溶液(好ましくは1規定の水溶液)をゼロ電荷点(PZC)となるpHに調整しながら滴下する。
滴下終了後、1日撹拌し、その後精製水とメタノールによりpH3〜6に調整し、その後分離乾燥させて、本発明の触媒を得ることができる。
【0014】
本発明の触媒は、上記担体に上記Pd及び上記Auを上記担持割合で歎じさせてなるものであれば、これらの他に他の成分を担持させたものでもよく、また使用に際しては他の成分と組み合わせて用いてもよい。
【0015】
<ベンゼン化合物の製造方法>
ついで、本発明のベンゼン化合物の製造方法について説明する。
本発明のベンゼン化合物の製造方法は、触媒の存在下、アルキン類からベンゼン化合物を製造する製造方法であって、
上記触媒が、担体にPdとAuとをモル比でPd:Au=1:1〜10で担持させてなる担持PdAu触媒であることを特徴とする。
具体的には、上記アルキン類が下記一般式(I)、(I)’又は(I)’’で表されるアルキン類であり、上記ベンゼン化合物が下記一般式(II)で表される化合物であるのが好ましい。
以下詳述する。
【化2】
式中、R〜Rは、それぞれ同一でも異なっていてもいい基であって、それぞれ水素原子、ヘテロアリール基、炭素数2〜6のアルキル基、炭素数2〜4の置換基を有するアリール基、炭素数2〜6の置換基を有するアルキル基を示す。また、Xは、酸素原子、硫黄原子、RN<、RC< を示す。RはR〜Rと同一である。)
【0016】
(アルキン類)
上記アルキン類としては具体的には以下の化合物を挙げることができる。また、(I)の場合、使用に際しては3分子全て同じものを用いても、2分子を同じもの1分子を異なるものを用いても、また3分子全てを異なるものを用いてもよい。
【化3】
【0017】
(ベンゼン化合物)
本発明の製造方法によって得られる上記ベンゼン化合物は上記アルキン類により定まるものであるが、具体的には以下の化合物が挙げられる。
【化4】
【0018】
(製造方法)
本発明の製造方法の実施に際しては、上記アルキン類を溶媒に溶解した溶液に、所定量の触媒を投入し、空気中又はアルゴンなどの不活性ガス存在下において、好ましくは常温〜200℃の温度、更に好ましくは30〜100℃の温度で、好ましくは1時間以上、更に好ましくは2〜50時間撹拌しつつ反応を行うなどしてアルキン類からベンゼン化合物への反応を行うことができる。そして反応終了後、触媒をろ過などにより、分離し常法に従い、得られた溶液から所望のベンゼン化合物を単離し精製することで所望のベンゼン化合物 を得ることができる。
この際用いることができる溶媒としては、トルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジクロロエタン;アセトニトリル;エタノール;ジクロロメタン;キシレン;ヘキサン;メシチレン;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO);等を挙げることができる。
上記溶液における上記アルキン類の濃度は、0.02〜10モル/リットルとするのが好ましく、0.5〜3モル/リットルとするのがさらに好ましく、1〜3モル/リットルとするのがもっとも好ましい。
また、上記触媒の使用量は、上記溶液における上記触媒濃度が上記溶液全体に対して0.1〜10モル%となる量とするのが好ましく、特に好ましくは1〜5モル%となる量である。
【0019】
<作用効果>
上述のように実施する本発明のベンゼン化合物の製造方法は、簡易且つ簡便に所望のベンゼン化合物を得ることができる。
具体的には、ベンゼンを出発原料とした場合のように廃棄物を出すことがなく、環境負荷が低く、多様なベンゼン化合物の製造を行うことができる。また、不均一系触媒であるため、触媒の回収が容易である。生成物に金属がほとんど混入しないため、環境負荷が小さい。触媒の再利用が可能であり、均一系触媒に比べてコスト的で有利である。本発明の触媒は空気中でも取り扱いが容易であり、活性の低下も小さいので、この点でも本発明の製造方法の優位性がある。置換基の制約が少なく、多様なベンゼン化合物の合成が可能で、高収率で得られる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
【0021】
<触媒の実施例>
〔実施例1〕
ポリビニルピロリドン濃度0.9g/リットルのポリピロリドン水溶液を調製し、このポリピロリドン水溶液に金化合物(HAuCl4等)とパラジウム化合物(PdCl2等)とを、得られる触媒においてAuとPdとの配合比1:3となる量添加して、Au・Pd含有水溶液を調整した。
ついで、この水溶液を冷却しながら水素化ホウ素ナトリウム濃度3.7 g/リットルの水素化ホウ素ナトリウム水溶液を混合し、30分程度撹拌混合した。
ついで得られた水溶液に担体として酸化チタン(TiO)を担体100重量部に対して3重量部となるように投入し、更に1規定の塩酸水溶液を酸化チタンのPZCであるpH=3となるように滴下した。滴下終了後、1日撹拌し、その後精製水とメタノールによりpH5に調整し、その後分離乾燥させて、PdAu(Pd:Au=1:3)が担持されたTiO担体からなる触媒を得た。得られた触媒におけるPdAu担持量は担体100重量部に対して3重量部であった(この場合を以下の実施例では「3重量%」と表記する)。
得られた触媒について、操作型電子顕微鏡(SEM)により観察した。また、上述の測定法にした粒径分布と平均粒子径を測定した。その結果を図1に示す。
〔実施例2〕
また、担持量が1重量%となるようにした以外は同様にして担持量1重量%のPdAu(Pd:Au=1:1)が担持されたTiO担体からなる触媒を得た。得られた触媒について、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。また、上述の測定法にした粒径分布と平均粒子径を測定した。その結果を図2に示す。
〔実施例3〜6、比較例〕
PdとAuとの比を1;2(実施例3),1:4(実施例4)1;5(実施例5),1:10(実施例6),3:1(比較例1),1:0(比較例2),0:1(比較例3)とした以外は実施例1と同様にして担持量3重量%のPdAu(Pd:Au=1:3)が担持されたTiO担体からなる触媒を得た。
〔実施例7〜10〕
担体をTiOからAl(実施例7)、SiO(実施例8)又は、ZrO(実施例9)、Nb(実施例10)にした以外は実施例1と同様にして担持量3重量%のPdAu(Pd:Au=1:3)が担持された各担体からなる触媒を得た。
【0022】
<製造方法の実施例>
〔実施例12、比較例4〕
実施例1〜4で得られた触媒及び比較例1〜3の触媒、並びに比較対象としてのPdとPtとからなる(Pd:Pt=1:3)の触媒及びPtとAuとからなる(Pt:Au=1:3)の触媒について、ベンゼン化合物の製造を行った。
下記化学式に示すように、化合物1 1.5mmolをトルエン1ml中に溶解し、そこに溶液全体で1mol%となるように各触媒を添加し、75℃にてアルゴン雰囲気下3時間反応を行うことにより、化合物2及び3で示すベンゼン化合物を得た。各触媒について収率を図3に示す。なお、収率及び反応率(conv.)はそれぞれガスクロマトグラフィー(「GC−2014」島津製作所社製)により測定した。
図3に示す結果から明らかなように、本発明の触媒は優れた触媒活性を示すことをわかる。対してPdとAuとの比が本発明の範囲外の場合には触媒活性がないか、きわめて 低いことがわかる。
【0023】
【化5】
【0024】
〔実施例13〕
実施例1及び7〜10で得られた、それぞれ担体の異なる触媒について実施例12と同様にしてベンゼン化合物の製造を行い、その収率を測定した。その結果を図4に示す。
図4に示す結果から明らかなように、本発明の触媒は優れた触媒活性を示すことがわかる。
【0025】
〔実施例14〕
反応系における溶媒を図5に示す溶媒に変えた以外はそれぞれ実施例12と同様に反応を行い、化合物2及び3を得た。それぞれの収率を図5に示す。図5に示す結果から特に芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、ベンゼン)、エーテル系溶媒(THF、1,4−ジオキサン)、ジクロロエチレンが特に好ましいことがわかる。
【0026】
〔実施例15〕
担持量が1重量%となるようにした以外は同様にして担持量1重量%のPdAu(Pd:Au=1:1)が担持されたTiO担体からなる触媒を得た(実施例15の触媒)。得られた触媒、及び実施例2の触媒について、実施例12と同様に反応を行い、化合物2及び3を得た。その際の収率を測定し、実施例12の結果と合わせて図6に記載した。
図6に示す結果から明らかなように、実施例1及び2の触媒の方が好ましいことがわかる。
【0027】
〔実施例16〕
反応時におけるアルン類(化合物1)の濃度を0.5mmol/ml、0.75mmol/ml、3mmol/mlとした以外は実施例12と同様にして反応を行い、化合物2及び3を得た。得られたベンゼン化合物の収率を測定し、その結果を図7に示す。図7に示す結果から明らかなように、1.5mmol/ml、3mmol/mlの場合に特に好ましいことがわかる。
【0028】
〔実施例17〕
下記化学式に記載する化合物4 1.5mmolをトルエン1ml中に溶解し、そこに溶液全体で1mol%となるように実施例1の触媒を添加し、100℃にてアルゴン雰囲気下、化合物毎に下記に示す時間反応を行うことにより、化合物2及び3で示すベンゼン化合物を得た。
【化6】
【0029】
〔実施例18〕
下記化学式に記載するように、反応条件を、反応温度100℃、アルゴン雰囲気下又は空気雰囲気下とし、反応時間を2時間とした以外は実施例12と同様にして化合物2及び3で示すベンゼン化合物を得た。下記に示す結果から明らかなように、空気雰囲気下でも十分に反応が進行し、ベンゼン化合物の製造ができることがわかる。
【化7】
【0030】
〔実施例19〕
反応温度100℃、反応時間2時間とした以外は実施例12と同様に反応を行い、反応終了後に取り出した触媒を乾燥させた後、再利用した。再利用の反応は下記に示すように、回収した触媒のみを用い、反応温度100℃、反応時間2時間とした以外は実施例12の反応と同じ条件とした。その結果を以下に示す。尚、再利用は1回だけではなく3回まで行った。
以下に示す結果から明らかなように、繰り返し使用しても高い活性が得られた。また、再利用時の触媒量もあまり減少せず、触媒を高い回収率で回収し再利用できることもわかる。
【化8】
【0031】
〔実施例20〕
下記式に示すようにアルキン類として化合物5(0.5mmol)と化合物1(0.6mmol)とを用いて、アルゴン雰囲気下又は空気雰囲気下にて、実施例1の触媒を溶液全体中3mol%の濃度となるように使用し、トルエン1ml中、反応温度100℃で1.5時間反応を行うことにより、化合物6に示すベンゼン化合物を得た。
得られた化合物6の収率を以下に示す。この例から、種々アルキン類において有効な触媒であること、空気中でも反応が進行し所望のベンゼン化合物を得ることができることがわかる。
【化9】
【0032】
〔実施例21〕
実施例20におけるアルゴン雰囲気下の反応終了後に、触媒を回収し、実施例19と同様に再利用した以外は実施例20と同様に反応を行い、所望の化合物6を得た。
【化10】
【0033】
〔実施例22〕
下記化学式に記載するアルキン類5 0.3mmol及びアルキン類7(Rはそれぞれ下記に示すとおりである)をトルエン1ml中に溶解し、そこに溶液全体で6mol%となるように実施例1の触媒を添加し、75℃にてアルゴン雰囲気下、化合物毎に下記に示す時間反応を行うことにより、化合物8で示すベンゼン化合物を得た。
【化11】
【0034】
〔実施例23〕
下記化学式に記載するアルキン類9(9a〜9eの5種類それぞれについて反応を行った) 0.3mmol及びアルキン類1をトルエン1ml中に溶解し、そこに溶液全体で6mol%となるように実施例1の触媒を添加し、75℃にてアルゴン雰囲気下、化合物毎に下記に示す時間反応を行うことにより、化合物10(式中Rはそれぞれ9a〜9eのRに対応する)で示すベンゼン化合物を得た。
【化12】
【0035】
〔実施例24〕
下記化学式に記載するアルキン類11 0.5mmolを0−キシレン2.5ml中に溶解し、そこに溶液全体で3mol%となるように実施例1の触媒を添加し、140℃にてアルゴン雰囲気下、24時間反応を行うことにより、化合物12で示すベンゼン化合物を収率68%で得た。
また、下記化学式に記載するアルキン類13 0.5mmolを0−キシレン2.5ml中に溶解し、そこに溶液全体で3mol%となるように実施例1の触媒を添加し、140℃にてアルゴン雰囲気下、3時間反応を行うことにより、化合物14で示すベンゼン化合物を収率50%で得た。
【化13】

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7