特許第6937016号(P6937016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937016
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】噴霧乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 3/12 20060101AFI20210909BHJP
   B01D 1/18 20060101ALI20210909BHJP
   B01J 2/04 20060101ALI20210909BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20210909BHJP
   B05B 17/06 20060101ALI20210909BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   F26B3/12
   B01D1/18
   B01J2/04
   B01D5/00 Z
   B05B17/06
   G01N1/28 T
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-171335(P2017-171335)
(22)【出願日】2017年9月6日
(65)【公開番号】特開2019-45114(P2019-45114A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】591245543
【氏名又は名称】東京理化器械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】有賀 眞一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 修造
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−232405(JP,A)
【文献】 特表2007−535652(JP,A)
【文献】 特表2016−531138(JP,A)
【文献】 特開2009−069774(JP,A)
【文献】 特開2011−016821(JP,A)
【文献】 米国特許第5092959(US,A)
【文献】 米国特許第4713233(US,A)
【文献】 実公平07−010274(JP,Y2)
【文献】 特開昭63−267401(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102989182(CN,A)
【文献】 中国実用新案第203264309(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B
B01D
B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末として回収する溶質が溶媒に溶解されたサンプル溶液を噴霧する噴霧器と、該噴霧器から噴霧された霧状サンプル溶液を加熱して溶媒を蒸発させ、溶質の微細粉末を生成する蒸発管と、該蒸発管内に熱風を供給する熱風供給装置と、前記蒸発管から導出した微細粉末含有ガス中の微細粉末を捕集する粉末捕集器と、該粉末捕集器で微細粉末を分離した後のガスを排出する排気手段とを備えた噴霧乾燥装置において、前記蒸発管は、該蒸発管の上部に、前記噴霧器から噴霧された霧状サンプル溶液と前記熱風供給装置から供給された熱風とを混合する混合部を有し、該蒸発管の下部に、蒸発管から前記粉末捕集器に向けて前記微細粉末含有ガスを導出する微細粉末含有ガス導出口を設けるとともに、該蒸発管内で蒸発した前記サンプル溶液の溶媒を凝縮させる溶媒蒸気捕捉手段を設けたことを特徴とする噴霧乾燥装置。
【請求項2】
前記蒸発管は、透明ガラスで形成されていることを特徴とする請求項1記載の噴霧乾燥装置。
【請求項3】
前記噴霧器は、下方に向かって噴霧された霧状サンプル溶液を前記蒸発管の上部に向けてガイドする霧状サンプル溶液ガイド管を備え、前記蒸発管は、該蒸発管の上部に、前記霧状サンプル溶液ガイド管の下部外周を覆う大径管部と、該大径管部の下方に設けられた小径管部と、前記大径管部の下端と前記小径管部の上端とを接続するテーパー管部とを備え、大径管部の内周面と霧状サンプル溶液ガイド管の下部外周面と間に、前記熱風供給装置からの熱風が供給される熱風通路を形成し、該熱風通路内に前記熱風供給装置からの熱風を供給する熱風供給管を、前記大径管部の外周面に対して接線方向に設けるとともに、前記霧状サンプル溶液ガイド管の下端と前記テーパー管部の内周面との間に、前記熱風通路内の熱風を前記混合部に向けて通過させるリング状の熱風通過部を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の噴霧乾燥装置。
【請求項4】
前記小径管部の外周に、透明材料からなる保温カバーが設けられていることを特徴とする請求項3記載の噴霧乾燥装置。
【請求項5】
前記噴霧器は、前記霧状サンプル溶液ガイド管の上端部で、前記熱風通路からの熱が伝達されない位置に設けられていることを特徴とする請求項3又は4記載の噴霧乾燥装置。
【請求項6】
前記粉末捕集器は、有底筒状の捕集器本体と、該捕集器本体の上部開口に着脱可能に設けられた捕集器蓋体と、捕集器本体と捕集器蓋体とに外周部が挟着された微細粉末捕集フィルタと、前記捕集器蓋体に設けられて前記排気手段の排気管が接続される排気口と、前記蒸発管の微細粉末含有ガス導出口から導出した微細粉末含有ガスを捕集器本体内に導入する微細粉末含有ガス導管とを備え、該微細粉末含有ガス導管は、前記捕集器本体の周壁に対して接線方向に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の噴霧乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧乾燥装置に関し、詳しくは、サンプル溶液を微細粉末化するのに適した噴霧乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、噴霧乾燥装置では、サンプル溶液を、高温の熱風を導入した蒸発塔内に、二流体噴霧ノズルや回転型アトマイザなどにより噴霧して乾燥させ、生成した固体粒子をサイクロンで捕集するものがあった(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−92969号公報
【特許文献2】特開2016−155055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、創薬開発研究分野では、溶解速度に優れたナノ粒子結晶体が注目されており、特に、熱に敏感なタンパク質等のナノ粒子結晶体を生成可能な噴霧乾燥装置の開発が望まれている。しかし、上述の特許文献1及び2のように、二流体噴霧ノズルや回転型アトマイザを用いた噴霧乾燥装置で生成できる固体粒子の粒子径は10〜50μm程度で、捕集率も70%程度に止まっている。また、サイクロンで捕集可能な粒子は、ある程度の質量と粒径が必要であることから、ナノ粒子結晶体を捕集することは難しかった。さらに、捕集した粒子に蒸発した溶媒が吸着して乾燥度が低下し、粒子同士が付着して粒径が大きくなってしまうことがあった。
【0005】
そこで本発明は、サンプル溶液を効率よく微細粉末化して捕集することができる噴霧乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の噴霧乾燥装置は、粉末として回収する溶質が溶媒に溶解されたサンプル溶液を噴霧する噴霧器と、該噴霧器から噴霧された霧状サンプル溶液を加熱して溶媒を蒸発させ、溶質の微細粉末を生成する蒸発管と、該蒸発管内に熱風を供給する熱風供給装置と、前記蒸発管から導出した微細粉末含有ガス中の微細粉末を捕集する粉末捕集器と、該粉末捕集器で微細粉末を分離した後のガスを排出する排気手段とを備えた噴霧乾燥装置において、前記蒸発管は、該蒸発管の上部に、前記噴霧器から噴霧された霧状サンプル溶液と前記熱風供給装置から供給された熱風とを混合する混合部を有し、該蒸発管の下部に、蒸発管から前記粉末捕集器に向けて前記微細粉末含有ガスを導出する微細粉末含有ガス導出口を設けるとともに、該蒸発管内で蒸発した前記サンプル溶液の溶媒を凝縮させる溶媒蒸気捕捉手段を設けたことを特徴としている。さらに、前記蒸発管が透明ガラスで形成されていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の噴霧乾燥装置は、前記噴霧器が、下方に向かって噴霧された霧状サンプル溶液を前記蒸発管の上部に向けてガイドする霧状サンプル溶液ガイド管を備え、前記蒸発管は、該蒸発管の上部に、前記霧状サンプル溶液ガイド管の下部外周を覆う大径管部と、該大径管部の下方に設けられた小径管部と、前記大径管部の下端と前記小径管部の上端とを接続するテーパー管部とを備え、大径管部の内周面と霧状サンプル溶液ガイド管の下部外周面と間に、前記熱風供給装置からの熱風が供給される熱風通路を形成し、該熱風通路内に前記熱風供給装置からの熱風を供給する熱風供給管を、前記大径管部の外周面に対して接線方向に設けるとともに、前記霧状サンプル溶液ガイド管の下端と前記テーパー管部の内周面との間に、前記熱風通路内の熱風を前記混合部に向けて通過させるリング状の熱風通過部を形成したことを特徴としている。さらに、前記小径管部の外周に、透明材料からなる保温カバーが設けられていること、また、前記噴霧器が、前記霧状サンプル溶液ガイド管の上端部で、前記熱風通路からの熱が伝達されない位置に設けられていることを特徴としている。
【0008】
前記粉末捕集器は、有底筒状の捕集器本体と、該捕集器本体の上部開口に着脱可能に設けられた捕集器蓋体と、捕集器本体と捕集器蓋体とに外周部が挟着された微細粉末捕集フィルタと、前記捕集器蓋体に設けられて前記排気手段の排気管が接続される排気口と、前記蒸発管の微細粉末含有ガス導出口から導出した微細粉末含有ガスを捕集器本体内に導入する微細粉末含有ガス導管とを備え、該微細粉末含有ガス導管は、前記捕集器本体の周壁に対して接線方向に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の噴霧乾燥装置によれば、溶媒蒸気を凝縮させる溶媒蒸気捕捉手段を蒸発管の下部に設けているので、粉末捕集器に向かう溶媒蒸気量を大幅に低減することができ、良質な微細粉末を得ることができる。また、噴霧器を、霧状サンプル溶液ガイド管を介して蒸発管の上部に設けているので、蒸発管内に供給される熱風と霧状サンプル溶液とを効果的に混合することができ、霧状サンプル溶液を速やかに加熱して溶媒を瞬時に蒸発させることができる。また、蒸発管を透明ガラスで形成することにより、蒸発管内の状態を外部から容易に確認することができ、外周を保温カバーで覆うことにより、溶媒蒸気が流れる小径管の温度低下を防止して内周面に溶媒蒸気が結露することを防止できる。さらに、超音波ホーンの作動で微細粒化した霧状サンプル溶液をマイクロメッシュを介して蒸発管に向けて噴霧することにより、サンプル溶液を微細な霧状にすることができ、粒径が0.1〜3μmの微細粉末を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一形態例を示す噴霧乾燥装置の一部断面正面図である。
図2】同じく噴霧乾燥装置の一部断面側面図である。
図3】同じく噴霧器の断面図である。
図4】同じく粉末捕集器の断面図である。
図5】同じく微細粉末捕集フィルタの斜視図である。
図6】本発明の噴霧乾燥装置で使用する粉末捕集器の他の形態例を示す断面図である。
図7】同じく微細粉末捕集フィルタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図5は本発明の噴霧乾燥装置の一形態例を示す図である。本形態例の噴霧乾燥装置11は、サンプル容器12a内のサンプル溶液を吸引して供給するチューブポンプなどの溶液供給装置12と、供給されたサンプル溶液を噴霧する噴霧器13と、噴霧された霧状サンプル溶液の溶媒を蒸発させる蒸発管14と、空気を電気ヒータで加熱した熱風を蒸発管14に供給する熱風供給装置15と、前記蒸発管14の下部から導出した微細粉末含有ガス中の微細粉末を捕集する粉末捕集器16と、該粉末捕集器16で微細粉末を分離した後のガスを排出するダイヤフラムポンプやドライ真空ポンプなどの排気手段17とを備えている。
【0012】
噴霧器13は、図3に示すように、超音波振動子を備えたハウジング13aと、該ハウジング13aから下方に突出する超音波振動子の超音波ホーン13bと、一定量のサンプル溶液を貯留するサンプルポット13cと、該サンプルポット13cの底面に設けられ、サンプルポット13c内にサンプル溶液を保持するとともに、超音波ホーン13bの作動で微細粒化した霧状サンプル溶液を透過して下方に向けて噴霧するマイクロメッシュ13dと、溶液供給装置12に溶液導入チューブ(図示せず)を介して接続され、サンプルポット13c内にサンプル溶液を導入するための溶液導入ノズル13eと、溶液供給装置12に溶液返送チューブ(図示せず)を介して接続され、サンプルポット13c内の余剰のサンプル溶液を返送するリターンノズル13fと、マイクロメッシュ13dを透過した霧状サンプル溶液を下方の蒸発管14に向けてガイドする霧状サンプル溶液ガイド管13gとを備えている。マイクロメッシュ13dは、上面にサンプル溶液を保持でき、霧状サンプル溶液を透過できれば適宜なものを使用できるが、通常は、メッシュサイズが3〜5μmのものをサンプル溶液の種類などの条件に応じて適宜選択すればよい。
【0013】
上部サポート部材18aと下部サポート部材18bとによって制御装置の筐体19に取り付けられた蒸発管14は、前記霧状サンプル溶液ガイド管13gの下部外周を覆う大径管部14aと、該大径管部14aの下方に設けられた有底の小径管部14bと、大径管部14aの下端と小径管部14bの上端とを接続する下方が縮径したテーパー管部14cと、大径管部14aの内周面と前記霧状サンプル溶液ガイド管13gの外周面と間に形成される熱風通路14dとを有している。
【0014】
大径管部14aには、熱風供給装置15から熱風供給管15aを介して供給される熱風を熱風通路14dに導入する熱風導入口14eが設けられている。熱風供給管15aは、大径管部14aの外周面に対して接線方向に設けられており、熱風導入口14eから熱風通路14d内に流入する熱風が、熱風通路14d内で旋回流を形成して螺旋状に下方に向かって流れていくようにしている。
【0015】
熱風供給装置15は、排気手段17の吸引力によって吸い込んだ空気を電気ヒータであらかじめ設定された温度に加熱するものを使用可能であるが、窒素ガスなどを使用することも可能であり、電気ヒータ以外の加熱手段を使用することも可能である。
【0016】
小径管部14bの下部側面には、微細粉末含有ガス導出口14fが設けられるとともに、該微細粉末含有ガス導出口14fより下方の小径管部14b内には、溶媒蒸気捕捉手段としての冷却コイル14gが設けられ、小径管部14bの底部には排液部14hが設けられている。
【0017】
冷却コイル14gには、溶媒蒸気を凝縮可能な温度の流体を流通させればよく、例えば、溶媒蒸気が水蒸気の場合は、2℃程度に冷却したチラー水を使用でき、除湿剤を使用することも可能である。また、小径管部14bの底部を冷却することによって溶媒蒸気を凝縮させてもよく、複数の溶媒蒸気捕捉手段を併用することも可能である。
【0018】
また、霧状サンプル溶液ガイド管13gの下端とテーパー管部14cの内周面との間には、熱風通過部14iがリング状に形成されており、熱風通路14dを螺旋状に流れる熱風が、螺旋流を維持したまま小径管部14bの内周面に沿って流れ、霧状サンプル溶液ガイド管13gの下端から流出する霧状サンプル溶液と熱風とが混合する混合部14jが形成されている。
【0019】
霧状サンプル溶液ガイド管13g、大径管部14a、テーパー管部14c、小径管部14bは、成形性や清掃性などを考慮して適宜分割して形成されており、本形態例では、霧状サンプル溶液ガイド管13g、大径管部14a、テーパー管部14c及び小径管部14bの上部が一体形成され、小径管部14bの下部と微細粉末含有ガス導出口14fに接続した微細粉末含有ガス導管20の基端部とが一体形成されている。小径管部14bは、上部、中間部、下部に3分割されており、分割部にそれぞれ設けた連結フランジをクランプ21,21によって締め付けることにより、気密に、かつ、分解可能に連結されている。また、小径管部14bの中間部外周には、上下両端にシール材22aをそれぞれ有する保温カバー22が設けられており、小径管部14bの温度が低下しないようにしている。
【0020】
粉末捕集器16は、有底筒状の捕集器本体16aと、該捕集器本体16aの上部開口にクランプ23によって着脱可能に装着される捕集器蓋体16bと、捕集器本体16aの側壁に設けられた微細粉末含有ガス導入口16cと、捕集器本体16a内に設けられた微細粉末捕集フィルタ24と、捕集器蓋体16bに設けられて前記排気手段17の排気管17aが接続される排気口16dとを備えている
【0021】
微細粉末含有ガス導入口16cは、蒸発管14の微細粉末含有ガス導出口14fに、中間に自在カップリングを有する微細粉末含有ガス導管20を介して接続しており、微細粉末含有ガス導管20は、捕集器本体16aの外周面に対して接線方向に配置されている。これにより、微細粉末含有ガス導入口16cから捕集器本体16a内に流入する微細粉末含有ガスが捕集器本体16aの内周面に沿って導入され、捕集器本体16a内で旋回流を形成するようにしている。
【0022】
微細粉末捕集フィルタ24は、有底円筒状に形成されたフィルタ本体部24aと、該フィルタ本体部24aの上部開口外周に設けられたフランジ部24bとを有するハット状に形成されており、フランジ部24bの外周部が捕集器本体16aの開口フランジ16eと捕集器蓋体16bとに挟着されて捕集器本体16a内に保持されている。また、捕集器蓋体16b内には、排気手段17に異物が吸引されることを防止するとともに、各種形状のフィルタを保持するためのステンレス鋼製の網状体を使用した網体16fが嵌め込まれている。フィルタ本体部24aにおけるフィルタは、捕集する微細粉末の粒径や量などの条件に応じて適宜なものを使用できるが、例えば、微細粉末の捕集量が比較的多い場合には、表面を樹脂繊維で覆ったプラスチック不織布からなる筒状のメンブレンフィルタを使用してハット状に形成すればよい。
【0023】
一方、微細粉末の捕集量が比較的少ない場合には、図6及び図7に示すように、粉末捕集器本体16aの開口フランジ16eと略同径の円盤状に形成したフィルタ25を使用することができる。この円盤状のフィルタ25は、網体16fの下面に重ねた状態で、外周部を粉末捕集器本体16aと蓋部材16bとで挟着した状態で粉末捕集器本体16a内に配置される。円盤状のフィルタ25の材質は任意であるが、例えばテトラテックスメンブレンが好適に使用できる。
【0024】
このように形成した噴霧乾燥装置11において、霧状サンプル溶液ガイド管13g,蒸発管14,微細粉末含有ガス導管20、フィルタ本体部24aといったガスが流れる部分をそれぞれ透明なガラスで形成し、さらに、保温カバー22も透明な合成樹脂で形成することにより、内部の状態を外部から容易に観察でき、異常事態にも迅速に対応できる。
【0025】
次に、図1に示す構成の噴霧乾燥装置11の使用方法を説明する。まず、排気手段17を作動させて系内にガス(空気)の流れを形成し、熱風供給装置15を作動させて空気を100℃以上に加熱するとともに、冷却コイル14gに冷却流体を流通させる。系内の温度が十分に高くなったところで、溶液供給装置12を作動させてサンプル容器12a内のサンプル溶液をサンプルポット13c内に供給するとともに、リターンノズル13fから余剰のサンプル溶液を吸引して返送し、サンプルポット13c内に一定量のサンプル溶液を保持した状態にする。
【0026】
そして、超音波振動子の超音波ホーン13bを作動させてサンプル溶液を、マイクロメッシュ13dを介して微細粒の霧状サンプル溶液とし、霧状サンプル溶液ガイド管13g内に流下させる。一方、熱風供給装置15で生成した熱風は、熱風供給管15aから熱風通路14d内に旋回流となって流入する。この熱風は、熱風通過部14iを通過してテーパー管部14cから小径管部14bに向かって流れる際に、混合部14jにおいて、霧状サンプル溶液ガイド管13gの下端から流出した霧状サンプル溶液と合流し、霧状サンプル溶液を加熱して溶媒を瞬時に蒸発させ、溶質を微細粉末にする。このとき、熱風が旋回流となっているので、熱風と霧状サンプル溶液とが効率よく接触し、霧状サンプル溶液を満遍なく加熱することができ、溶媒を速やかに蒸発させて溶質の微細粉末を効率よく生成することができる。
【0027】
また、霧状サンプル溶液ガイド管13gは、下部外周のみが大径管部14aに覆われているため、霧状サンプル溶液ガイド管13gの上半部が、熱風通路14d内の熱風によって加熱されることはなく、霧状サンプル溶液ガイド管13gの上端部に設けた噴霧器13が熱の影響を受けることがなくなり、噴霧器を高温下に設置したときのような目詰まりなどの不具合を生じることがなく、長時間にわたって安定した状態で霧状サンプル溶液を生成することができる。
【0028】
さらに、テーパー管部14cや小径管部14bの内周面に沿って熱風が旋回するので、生成した微細粉末がテーパー管部14cや小径管部14bの内周面に付着することを防止でき、微細粉末の全体を小径管部14bの下方に向かって円滑に流下させることができる。また、小径管部14bの外周に保温カバー22を設けているので、小径管部14bの周壁や管内の温度が低下することを抑えることができ、蒸発した溶媒が小径管部14bの周壁に凝縮して微細粉末が再溶解することがなくなり、内部の観察も確実に行うことができる。
【0029】
小径管部14bを流下する微細粉末含有ガスは、大部分が微細粉末含有ガス導管20を通って粉末捕集器16に流入する。流入した微細粉末含有ガスは、捕集器本体16a内を螺旋状に流れながらガスのみが微細粉末捕集フィルタ24を透過し、排気口16dから排気手段17に吸引されて系外に排出される。
【0030】
これにより、微細粉末捕集フィルタ24の外周面に微細粉末が捕集される。このとき、微細粉末含有ガスが捕集器本体16aで旋回流を形成しているので、フィルタ本体部24aの全周で微細粉末を効率よく捕集することができとともに、捕集器本体16aの内周面に微細粉末が付着することを抑制できる。
【0031】
一方、小径管部14bを流下する微細粉末含有ガスの一部は、小径管部14bの下部で冷却コイル14gに接触することにより、微細粉末含有ガス中に含まれる大量の溶媒成分の大部分が凝縮して微細粉末含有ガスから分離される。凝縮した液体は、小径管部14bの底部に落下して貯留され、実験終了後に開閉栓を開放することにより、排液部14hから系外に排出される。これにより、微細粉末捕集フィルタ24に向かう微細粉末含有ガスに含まれる溶媒蒸気量を低減でき、微細粉末捕集フィルタ24で捕集した微細粉末に溶媒蒸気が吸着することを抑えることができ、乾燥度の良好な微細粉末を得ることができるとともに、微細粉末含有ガスの体積を少なくすることができ、微細粉末捕集フィルタ24及び排気手段17の負荷を低減することもできる。
【0032】
また、噴霧乾燥装置11で1%の食塩水溶液25gをサンプル溶液に使用して食塩の微細粉末を捕集する実験を行ったところ、乾燥状態が良好で、粒子径が0.1〜3μmの微細な食塩粉末0.237g(回収率95%)を得ることができた。
【0033】
本形態例の噴霧乾燥装置11では、蒸発管14における微細粉末含有ガス導出口14fの下方に、溶媒蒸気を凝縮させて分離する冷却コイル14gを設け、溶質の微細粉粒を生成する際に発生した溶媒蒸気を除去することにより、微細粉末捕集フィルタ24で捕集した微細粉末と蒸気との接触を抑えることができ、良好な乾燥度の微細粉末を得ることができる。
【0034】
さらに、超音波ホーン13bの作動でマイクロメッシュ13dを介して微細粒の霧状にサンプル溶液を噴霧するとともに、熱風を旋回流として導入することにより、熱風と霧状サンプル溶液とを効果的に混合させて霧状サンプル溶液中の溶媒を速やかに蒸発させることができ、サンプル溶液中の溶質を微細粉末として効率よく得ることができる。
【0035】
また、溶媒が蒸発する小径管部14bの中間部外周に保温カバー22を設けることにより、小径管部14b内の温度低下を防止して溶媒の蒸発効率を向上させることができるとともに、小径管部14bの管壁が温度低下して内面に結露が発生することを防止できる。そして、蒸発管14や粉末捕集器16などを透明なガラスで形成することにより、これらの内部の状態を外部から容易に視認できる。
【0036】
なお、本発明の噴霧乾燥装置は、少量のサンプル溶液から微細粉末を回収する実験用として最適なものであるが、各部の形状、大きさを、サンプル溶液における溶質及び溶媒の種類、サンプル溶液の量や、微細粉末の捕集量などに応じて適宜設定することによって大量のサンプル溶液を対象とすることも可能である。
【符号の説明】
【0037】
11…噴霧乾燥装置、12…溶液供給装置、12a…サンプル容器、13…噴霧器、13a…ハウジング、13b…超音波ホーン、13c…サンプルポット、13d…マイクロメッシュ、13e…溶液導入ノズル、13f…リターンノズル、13g…霧状サンプル溶液ガイド管、14…蒸発管、14a…大径管部、14b…小径管部、14c…テーパー管部、14d…熱風通路、14e…熱風導入口、14f…微細粉末含有ガス導出口、14g…冷却コイル、14h…排液部、14i…熱風通過部、14j…混合部、15…熱風供給装置、15a…熱風供給管、16…粉末捕集器、16a…捕集器本体、16b…捕集器蓋体、16c…微細粉末含有ガス導入口、16d…排気口、16e…開口フランジ、16f…網体、17…排気手段、17a…排気管、18a…上部サポート部材、18b…下部サポート部材、19…筐体、20…微細粉末含有ガス導管、21…クランプ、22…保温カバー、22a…シール材、23…クランプ、24…微細粉末捕集フィルタ、24a…フィルタ本体部、24b…フランジ部、25…フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7