【文献】
Dominik Paul, et al.,Intrinsic Fat Suppression in TIDE Balanced Steady-StateFree Precession Imaging,Magnetic Resonance in Medicine,2006年 月 日,56,1328-1335
【文献】
Karla L Miller, et al.,Steady-state sequences: Spoiled and balanced methods,Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med,2014年 月 日
【文献】
Matthias Weigel, et al.,Inversion Recovery Prepared Turbo Spin Echo Sequences With Reduced SAR Using Smooth Transitions Between Pseudo Steady States,Magnetic Resonance in Medicine,2007年,57,pp.631-637
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
励起パルスの後に複数のリフォーカスパルスが続くFSE(Fast Spin Echo)系のパルスシーケンスであって、前記複数のリフォーカスパルスは、前記励起パルスに続いて印加される第1のパルス群と、前記第1のパルス群に続いて印加される第2のパルス群とに少なくとも分割され、前記第1のパルス群は、各リフォーカスパルスのフリップ角が所定の高フリップ角を有するリフォーカスパルス列から構成され、前記第2のパルス群は、各リフォーカスパルスのフリップ角が前記所定の高フロップ角からフリップ角ゼロに向かってフリップ角0°近くまで減少するリフォーカスパルス列から構成される、パルスシーケンスを設定する設定部と、
前記パルスシーケンスを被検体に印加することで、前記複数のリフォーカスパルスに夫々対応して収集される複数の磁気共鳴信号から、前記被検体の画像を生成する生成部と、
を備える磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1を、添付図面に基づいて説明する。
【0012】
(構成及び動作の概要)
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の全体構成を示すブロック図である。実施形態の磁気共鳴イメージング装置1は、磁石架台100、制御キャビネット300、コンソール400、寝台500等を備えて構成される。
【0013】
磁石架台100は、静磁場磁石10、傾斜磁場コイル11、WB(Whole Body)コイル12等を有しており、これらの構成品は円筒状の筐体に収納されている。寝台500は、寝台本体50と天板51を有している。また、磁気共鳴イメージング装置1は、被検体に近接して配設されるアレイコイル20を有している。
【0014】
制御キャビネット300は、傾斜磁場電源31(X軸用31x、Y軸用31y、Z軸用31z)、RF受信器32、RF送信器33、及びシーケンスコントローラ34を備えている。
【0015】
磁石架台100の静磁場磁石10は、概略円筒形状をなしており、被検体(例えば、患者)の撮像領域であるボア(即ち、静磁場磁石10の円筒内部の空間)内に静磁場を発生させる。静磁場磁石10は超電導コイルを内蔵し、液体ヘリウムによって超電導コイルが極低温に冷却されている。静磁場磁石10は、励磁モードにおいて静磁場用電源(図示せず)から供給される電流を超電導コイルに印加することで静磁場を発生し、その後、永久電流モードに移行すると、静磁場用電源は切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、静磁場磁石10は長時間、例えば1年以上に亘って、大きな静磁場を発生し続ける。なお、静磁場磁石10を永久磁石として構成しても良い。
【0016】
傾斜磁場コイル11も概略円筒形状をなし、静磁場磁石10の内側に固定されている。この傾斜磁場コイル11は、傾斜磁場電源(31x、31y、31z)から供給される電流によりX軸,Y軸,Z軸の方向に傾斜磁場を被検体に印加する。
【0017】
寝台500の寝台本体50は天板51を上下方向に移動可能であり、撮像前に天板51に載った被検体を所定の高さまで移動させる。その後、撮影時には天板51を水平方向に移動させて被検体をボア内に移動させる。
【0018】
WBコイル12は、傾斜磁場コイル11の内側に被検体を取り囲むように概略円筒形状に固定されている。WBコイル12は、RF送信器33から伝送されるRFパルスを被検体に向けて送信する一方、水素原子核の励起によって被検体から放出される磁気共鳴信号を受信する。
【0019】
アレイコイル20はRFコイルであり、被検体から放出される磁気共鳴信号を被検体に近い位置で受信する。アレイコイル20は、例えば、複数の要素コイルから構成される。アレイコイル20は、被検体の撮像部位に応じて、頭部用、胸部用、脊椎用、下肢用、或いは全身用など種々のタイプがあるが、
図1では胸部用のアレイコイル20を例示している。
【0020】
RF送信器33は、シーケンスコントローラ34からの指示に基づいて、WBコイル12にRFパルスを送信する。一方、RF受信器32は、WBコイル12やアレイコイル20によって受信された磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号をデジタル化して得られる生データをシーケンスコントローラ34に送る。
【0021】
シーケンスコントローラ34は、コンソール400による制御のもと、傾斜磁場電源31、RF送信器33およびRF受信器32をそれぞれ駆動することによって被検体のスキャンを行う。そして、シーケンスコントローラ34は、スキャンを行ってRF受信器32から生データを受信すると、その生データをコンソール400に送る。
【0022】
シーケンスコントローラ34は、処理回路(図示を省略)を具備している。この処理回路は、例えば所定のプログラムを実行するプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成される。
【0023】
コンソール400は、処理回路40、記憶回路41、ディスプレイ42、及び入力デバイス43を有するコンピュータとして構成されている。
【0024】
記憶回路41は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)の他、HDD(Hard Disk Drive)や光ディスク装置等の外部記憶装置を含む記憶媒体である。記憶回路41は、各種の情報やデータを記憶する他、処理回路40が具備するプロセッサが実行する各種のプログラムを記憶する。
【0025】
入力デバイス43は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、タッチパネル等であり、各種の情報やデータを操作者が入力するための種々のデバイスを含む。ディスプレイ42は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、有機ELパネル等の表示デバイスである。
【0026】
処理回路40は、例えば、CPUや、専用又は汎用のプロセッサを備える回路である。プロセッサは、記憶回路41に記憶した各種のプログラムを実行することによって、後述する各種の機能を実現する。処理回路40は、FPGA(field programmable gate array)やASIC(application specific integrated circuit)等のハードウェアで構成してもよい。これらのハードウェアによっても後述する各種の機能を実現することができる。また、処理回路40は、プロセッサとプログラムによるソフトウェア処理と、ハードウェア処理とを組み合わせて、各種の機能を実現することもできる。
【0027】
これらの各構成品によって、コンソール400は、磁気共鳴イメージング装置1全体を制御する。具体的には、検査技師等の操作者による、マウスやキーボード等(入力デバイス42)の操作によって撮像条件その他の各種情報や指示を受け付ける。そして、処理回路40は、入力された撮像条件に基づいてシーケンスコントローラ34にスキャンを実行させる一方、シーケンスコントローラ34から送信された生データに基づいて画像を再構成する。再構成された画像はディスプレイ42に表示され、或いは記憶回路41に保存される。
【0028】
さらに、実施形態の磁気共鳴イメージング装置1では、後述する所定のパルスシーケンスによるスキャンの実行によって得られるMR信号を再構成して被検体の画像を生成する。特に、本実施形態では、SARを低減すると共に、撮像時間を従来よりも短縮することができる、特徴的なパルスシーケンスを提供する。
【0029】
図2は、この特徴的なパルスシーケンスを生成し、このパルスシーケンスに基づいて被検体のMR画像を生成する磁気共鳴イメージング装置1のブロック図である。また、
図3は、磁気共鳴イメージング装置1の処理例を示すフローチャートである。
【0030】
図2に示すように、磁気共鳴イメージング装置1の処理回路40は、設定機能410、画像生成機能420、及び表示制御機能430の各機能を実現する。
【0031】
設定機能410は、パラメータ入力機能412、フリップ角算出機能414、及びパルスシーケンス設定機能416を含んでいる。また、画像生成機能420は、再構成機能422、及び画像処理機能424を含んでいる。上述したように、これらの各機能は、例えば、処理回路40が具備するプロセッサが所定のプログラムを実行することによって実現される。
【0032】
また、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置1の構成のうち、コンソール40以外の構成品(制御キャビネット300、磁石架台100及び寝台500)で、収集部600を構成している。
【0033】
記憶回路41には、撮像目的や撮像部位に応じた各種の標準的なパルスシーケンスを設定するためのパラメータやデータが記憶されている。また、複数のパルスシーケンスを連続して実行する場合には、それらの標準的な実行順序等も記憶回路41内にプロトコルデータとして記憶されている。
【0034】
パラメータ入力機能412は、記憶回路41から各パルスシーケンスを設定するためのパラメータや、各パルスシーケンスの実行順序に関するデータを読み込んで、パルスシーケンス設定機能416に送出する。また、パラメータ入力機能412は、各パルスシーケンスのパラメータや各パルスシーケンスの実行順序を、表示制御機能430を介してディスプレイ42に表示する。操作者は、ディスプレイ42の表示を確認し、必要に応じて入力デバイス43を操作し、パラメータの値や実行順序を変更することができる。
【0035】
また、記憶回路41はルックアップテーブル411を記憶する。ルックアップテーブル411には、後述する、本実施形態の撮像で使用する特徴的なFSE系のパルスシーケンスのフリップ角を算出するためのパラメータが記憶されている。ルックアップテーブル411には、FSE系のパルスシーケンスのフリップ角の値自体が記憶されてもよい。
【0036】
パラメータ入力機能412は、ルックアップテーブル411から、FSE系のパルスシーケンスのフリップ角を算出するためのパラメータ、或いは、FSE系のパルスシーケンスのフリップ角の値を入力する。
【0037】
上述したパラメータ入力機能412が行う処理は、
図3のステップST100の処理に対応する。
【0038】
フリップ角算出機能414は、ルックアップテーブル411に記憶されているパラメータに基づいて、FSE系のパルスシーケンスにおける各リフォーカスパルスのフリップ角を算出してパルスシーケンス設定機能416に供給する。或いは、フリップ角算出機能414は、ルックアップテーブル411に記憶されている各リフォーカスパルスのフリップ角を読み出して、パルスシーケンス設定機能416に供給する。
【0039】
上記のフリップ角算出機能414の処理は、
図3のステップST101の処理に対応する。フリップ角算出機能414の、より具体的な処理については、後述する。
【0040】
パルスシーケンス設定機能416は、フリップ角算出機能414から供給される各リフォーカスパルスのフリップ角と、パラメータ入力機能412から供給される、フリップ角以外のパラメータを用いて、パルスシーケンスの種々のパラメータを設定する。設定するパルスシーケンスが、例えば、FSE系シーケンスの場合、フリップ角以外のパラメータとして、ETS(Echo Train Spacing)、ETL(Echo Train Length)、実効エコー時間TEeff、繰り返し時間TR,マトリクスサイズ、FOV(Field of View)サイズ、位相エンコード方向及びリードアウト方向等がある。
【0041】
上記のパルスシーケンス設定機能416の処理は、
図3のステップST102の処理に対応する。パルスシーケンス設定機能416で設定するパルスシーケンスの具体例についても、後述する。
【0042】
パルスシーケンス設定機能416で設定されたパルスシーケンスのパラメータは、シーケンスコントローラ34に送出される。シーケンスコントローラ34は、例えば、入力デバイス43を介した、ユーザからの撮像開始の指令を受けて、設定されたパルスシーケンスを実行する。具体的には、設定されたパルスシーケンスに基づく、RFパルス(即ち、励起パルス及びリフォーカスパルス)や傾斜磁場パルスを被検体に印加することにより、被検体の撮像を実行する。被検体の撮像の実行は、
図3のステップST103の処理に対応する。
【0043】
パルスシーケンスの印加に応じて、被検体から磁気共鳴信号が発せられる。この磁気共鳴信号はWBコイル12或いはアレイコイル20で受信され、シーケンスコントローラ34を介して再構成機能422に入力される。再構成機能422に入力される磁気共鳴信号は、生データ或いはk空間データとも呼ばれる。
【0044】
再構成機能422は、入力された磁気共鳴信号(即ち、k空間データ)に対して、2次元又は3次元の逆フーリエ変換処理を行うことにより、実空間画像を再構成する。再構成機能422の処理は、
図3のステップST104の処理に対応する。
【0045】
再構成された実空間画像は、画像処理機能424によって、所定の画像処理、例えば、MIP(Maximum Intensity Projection)処理や所定のレンダリング処理等が施される。画像処理機能424の処理も、
図3のステップST104の処理に対応する。
【0046】
非造影MRA(Magnetic Resonance Angiography)の撮像法の中に、心電同期とFSE系パルスシーケンスを併用したFBI(Fresh Blood Imaging)法と呼ばれる撮像法がある。FBI法では、例えば、収縮期と拡張期とで収集された2つの画像を差分処理することによって、動脈と静脈とが良好に分離された画像を生成することができる。FBI法で使用される差分処理も、画像処理機能424で行われる。
【0047】
また、同じく非造影MRAの分野で、Time−SLIP(Time-Spatial Labeling Inversion Pulse)法と呼ばれる撮像法が知られている。Time−SLIP法の中には、ラベリングパルスとしての領域選択的反転パルスを印加して収集される画像と、ラベリングパルスの印加なしで収集される画像とを差分処理して、背景が良好に抑圧された血管画像を得ることができる撮像法がある。この撮像法における差分処理も、画像処理機能424で行われる。
【0048】
画像処理機能424で画像処理された画像は、表示制御機能430において、ディスプレイ42の所望の表示形態に対応させるための表示制御が行われる。表示制御機能430の処理は、
図3のステップST105の処理に対応する。
【0049】
(本実施形態のパルスシーケンス)
以下、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置1で設定し、使用するFSE系パルスシーケンスについて具体的に説明する。
【0050】
本実施形態のFSE系パルスシーケンスは、2次元でマルチスライスから信号を収集する2D型でもよいし、3次元で所定の厚みのスラブを励起し、スラブ内をエンコードしつつ信号を収集する3D型でもよい。
【0051】
図4は、3D型のパルスシーケンスの印加領域を模式的に示したものである。以下の説明では、3D型のFSE系パルスシーケンスを例に挙げて説明する。このパルスシーケンスでは、
図4に示すように、スライス方向に所定の厚みを有するスラブを励起し、スライスエンコードSE(1)〜SE(N)で、スライス方向にエンコードしている。また、FSE系パルスシーケンスでは、励起パルス(例えば、フリップ角90度の励起パルス)に続いて、複数のリフォーカスパルスが印加されるが、位相エンコードは、リフォーカスパルス毎に異なる値に設定される。
図4に示す例では、図の横方向(例えば、被検体の左右方向)を位相エンコード(PE)方向として、図の縦方向(例えば、被検体の頭足方向)をリードアウト(RO)方向としている。
【0052】
図5は、本実施形態のFSE系パルスシーケンスとの比較のために、従来から一般に用いられているFSE系パルスシーケンスを例示した図である。
図5に示す従来のFSE系パルスシーケンスは、例えばフリップ角90度の励起パルスに続いて、高フリップ角(例えば、フリップ角180°)の複数のリフォーカスパルスが設けられている。ここで、従来のFSE系パルスシーケンスでは、各リフォーカスパルスのフリップ角は一定である。
【0053】
図5に示すように、最初の90度励起パルスによって、縦磁化はゼロとなり、その一方で横磁化が発生する。そして、最初の90度励起パルスに続く各リフォーカスパルスの間で、スライスエンコードSE(1)に対応するスライスの磁気共鳴信号が収集される。
図5に示すパルスシーケンスは、1つの90度励起パルスに続く複数のリフォーカスパルスの間で、1スライス分の磁気共鳴信号が全て収集される、ワンショット型のFSE系パルスシーケンスを例示している。
【0054】
一方、最初の90度励起パルスによって一旦ゼロとなった縦磁化は、その後、縦緩和時間T1に相当する時定数で、指数関数的に回復していく。そして、縦磁化が十分に回復した時点で、2つ目の90度励起パルスが印加され、スライスエンコードSE(2)に対応するスライスの磁気共鳴信号が収集される。
【0055】
縦磁化が十分に回復する前に、2つ目以降の90度励起パルスを印加すると、その時の縦磁化は、初期の縦磁化よりも小さいため、それに応じて横磁化の値も小さくなる。その結果、収集される磁気共鳴信号の大きさも小さくなり、SNRが低下することになる。そこで、従来のFSE系パルスシーケンスでは、90度励起パルスと次の90度励起パルスとの間に、縦磁化回復のための待ち時間を設けるものとしている。この結果、90度励起パルスと次の90度励起パルスとの間隔、即ち、繰り返し周期TRが長くなっていた。また、この結果、撮像時間が長くなっていた。特に、3T以上の高磁場下では、縦緩和時間T1が長くなるため、広く普及している1.5Tの磁気共鳴イメージング装置に比べて、繰り返し周期TRを長く設定する必要があった。
【0056】
なお、
図5では(
図6も同様)、繰り返し周期TRの長さを直感的に例示するために、心電信号のR波も併記している。例えば、従来のFSE系パルスシーケンスでは、繰り返し周期TRが3R−R(3つのR波に相当する期間)程度であり、このうち、約2/3の期間が、信号を収集することのない、縦磁化回復のための待ち時間となっている。
【0057】
一方、
図6は、本実施形態のFSE系パルスシーケンスを例示する図である。
図6には、
図5と同様に、R波を併記しているが、実施形態のFSE系パルスシーケンスは、心電同期撮像を必ずしも前提とするものではない。心電同期撮像を行っても良いし、心電同期撮像を行わなくても良い。
【0058】
また、
図6の本実施形態のFSE系パルスシーケンスにおいても、従来のFSE系パルスシーケンスとの対比のために、1つの90度励起パルスに続く複数のリフォーカスパルスの間で、1スライス分の磁気共鳴信号が全て収集される、ワンショット型のFSE系パルスシーケンスを例示している。そして、リフォーカスパルスの数は、本実施形態のFSE系パルスシーケンスと従来のFSE系パルスシーケンスとの間で、同じであるとして図示している。
【0059】
図6に示す本実施形態のFSE系パルスシーケンスは、励起パルスに続く複数のリフォーカスパルスの中に、各リフォーカスパルスのフリップ角が所定の高フロップ角(例えば180°)からフリップ角ゼロに向かって減少するリフォーカスパルス列から構成される、フリップ角減少領域を設けている点に特徴がある。
【0060】
フリップ角減少領域を設けたことにより、
図6の下段に示すように、縦磁化の回復が加速される効果を生み出す。フリップ角減少領域を設けられていない従来のFSE系シーケンスでは、
図6の下段に点線で示したように、縦磁化回復の速度が縦緩和時間T1に応じたゆっくりしたものであるのに対して、フリップ角減少領域を設けた本実形態のFSE系シーケンスでは、
図6の下段に実線で示したように、縦磁化回復の速度が加速されることになる。縦磁化回復が加速される理由については、
図8及び
図9を用いて、後述する。
【0061】
縦磁化回復が加速されることによって、縦磁化回復のための待ち時間を短くしても、即ち、繰り返し時間TRを短くしても、2つ目以降の90度励起パルスの印加時に十分な大きさの縦磁化が得られるため、SNRの低下をもたらすことがない。この結果、実施形態のFSE系パルスシーケンスは、従来のFSE系パルスシーケンスに比べて、撮像時間を大幅に短縮することが可能となる。例えば、
図6に例示するように、従来3R―R程度の時間を要していた繰り返し時間TRを、1R―R(R波1つの間隔)にまで短縮することができる。
【0062】
なお、実施形態のFSE系パルスシーケンスにおいても、ある程度の縦磁化回復のための待ち時間を設けることによって、縦磁化を初期値により一層近づけることができる。例えば、1R―R程度の待ち時間を設けて、繰り返し時間TRを2R−R程度とすることもできる。この場合であっても、従来のFSE系パルスシーケンスに比べると、繰り返し時間TRを短縮することが可能であり、撮像時間は短縮される。
【0063】
図7は、実施形態のFSE系パルスシーケンスにおけるリフォーカスパルスのフリップ角の設定方法を示す図である。
図7に示すグラフの横軸は、リフォーカスパルスの時間的な印加順を示しており、縦軸はリフォーカスパルスのフリップ角を示している。
【0064】
前述したように、実施形態のFSE系パルスシーケンスは、各リフォーカスパルスのフリップ角が所定の高フリップ角を有するリフォーカスパルス列から構成される第1のパルス群と、各リフォーカスパルスのフリップ角が所定の高フロップ角からフリップ角ゼロに向かって減少するリフォーカスパルス列から構成される第2のパルス領域とを少なくとも有している。第1のパルス群が高フリップ角領域に対応し、第1のパルス群に続いて印加される第2のパルス群が、前述したフリップ角減少領域に相当する。
【0065】
ここで、所定の高フリップ角とは、例えば、180度のフリップ角である。所定の高フリップ角は、180度よりも若干大きなフリップ角、例えば、200度のフリップ角でもよい。
【0066】
第2のパルス群に続いて、フリップ角が所定の低フリップ角を有するリフォーカスパルス列から構成される第3のパルス群が印加される。ここで、所定の低フリップ角とは、例えば、ゼロ度以上5度未満のようにゼロ度に近いフリップ角である。また例えば、所定の低フリップ角とは、約1度のフリップ角である。
【0067】
フリップ角減少領域におけるフリップ角の減少パターンは、例えば、指数関数的にフリップ角が減少するパターンを利用することができる。この場合、高フリップ角からフリップ角を指数関数的に減少させていき、フリップ角が低フリップ角とほぼ同じになった時点で、低フリップ角領域に移行させればよい。
【0068】
フリップ角の減少パターンは、指数関数的な現象パターンに限定されるものではなく、例えば、直線的な減少パターンでもよいし、或いは、n次関数(nは2以上)の一部を切り取った減少パターンでも良い。
【0069】
フリップ角減少領域のフリップ角は、高フリップ角領域のフリップ角α及びパルス数M、低フリップ角領域のフリップ角β、指数関数の低減係数等のパラメータを設定することにより、算出機能414が算出することができる。上記のパラメータのうち、例えば、高フリップ角の値αだけを操作者が入力できるようにしておき、その他のパラメータは、ルックアップテーブル411に内部データとして、予め保持させておくこともできる。また、フリップ角減少領域のフリップ角を含めたすべてのリフォーカスパルスのフリップ角をルックアップテーブル411に記憶させておき、フリップ角算出機能414がこれらのフリップ角をルックアップテーブル411から読み出すようにしてもよい。
【0070】
図8及び
図9は、フリップ角減少領域を設けたことにより、縦磁化の回復が加速される理由を、回転座標系におけるスピン(即ち、巨視的磁化)の振る舞いを示すベクトルを用いて説明する図である。このうち、
図8は、高フリップ領域におけるスピンの振る舞いを示す図であり、
図9は、フリップ角減少領域におけるスピンの振る舞いを示す図である。
【0071】
図8及び
図9の上段はRFパルス列を示す図であり、励起パルスをEPと略記し、リフォーカスパルスをRPと略記している。また、リフォーカスパルスの印加順序nをRP(n)のように()内の番号で示している。また、各RFパルスのフリップ角をFAで略記し、RFパルスの印加方向(x軸方向又はy軸方向)を、FA=180°yのように、フリップ角FAの値に付記している。
【0072】
また、
図8及び
図9において、破線で囲んだ枠内には、各RFパルスの印加直後、及び印加直前におけるスピンの振る舞いを図示している。そして、各枠内の上段には、回転座標系で見た、X’−Z’平面におけるスピンの振る舞いを示し、各枠内の下段には、回転座標系で見た、X’−Y’平面におけるスピンの振る舞いを示している。X’−Z’平面におけるスピンのZ’方向成分が、縦磁化成分、即ち、縦磁化の大きさを表す。また、X’−Y’平面には、スピンの横磁化の振る舞いが表される。
【0073】
なお、
図8及び
図9において、励起パルスのフリップ角FAは90度であるとし、高フリップ角領域のリフォーカスパルスのフリップ角は180度であるとしている。また、
図9に示すように、フリップ角減少領域におけるリフォーカスパルスのフリップ角は、160度、120度、60度と減少するものとしている。
【0074】
図8の最左列にしめすように、励起パルスEPの印加によって、Z’方向を向いていたスピン(縦磁化の初期状態)は、X’軸周りに90度回転し、Y’軸に倒れて横磁化となる。この横磁化は、静磁場の不均一性ΔB
0によって、ETS/2の間に、X’−Y’平面を位相φ(φ=γ・ΔB
0・(ETS/2)、γは磁気回転比)だけ回転し、1番目のリフォーカスパルスRP(1)の印加直前において、スピンは
図8の左から2列目に示す状態となる。
【0075】
このスピンは、リフォーカスパルスRP(1)の印加によって、Y’軸周りを180度回転する。その結果、1番目のリフォーカスパルスRP(1)の印加直後において、スピンは
図8の左から3列目に示す状態となる。
【0076】
この状態から、ETSだけ時間が経過すると、横磁化は再び静磁場の不均一性ΔB
0によって、ETSの間に、X’−Y’平面を位相2φだけ回転する。そして、2番目のリフォーカスパルスRP(2)の印加直前において、スピンは
図8の左から4列目に示す状態となる。そして、このスピンは、リフォーカスパルスRP(2)の印加によって、Y’軸周りを180度回転する。その結果、2番目のリフォーカスパルスRP(2)の印加直後において、スピンは
図8の左から5列目に示す状態となる。
【0077】
以下、高フロップ領域における各リフォーカスパルスの印加ごとに、スピンは、
図8の左から4列目に示す状態と、左から5列目の状態とを交互に繰り返す。なお、
図8では、高フロップ領域における縦磁化の回復が、無視できる程度に小さいと仮定している。つまり、高フロップ領域における縦磁化成分はゼロとみなせる程度に小さい仮定している。
【0078】
次に、フリップ角減少領域におけるスピンの振る舞いを、
図9を用いて説明する。
図9の最左列は、高フリップ角領域の最後のリフォーカスパルスRP(M)が印加された後に、ETSだけ経過したときのスピンの状態を示す図である。即ち、フリップ角減少領域における最初のリフォーカスパルスRP(M+1)の印加直前のスピンの状態を示す図である。この状態のスピンに対して、フリップ角減少領域では、フリップ角が180度から徐々に減少していくリフォーカスパルスが順次印加されていく。
【0079】
本例では、フリップ角減少領域における1番目のリフォーカスパルスRP(M+1)として、フリップ角が160度のリフォーカスパルスが印加される。この結果、リフォーカスパルスRP(M+1)の印加直後では、スピンがY’軸周りを160度回転し、
図9の左から2列目の状態となる。ここで、180度よりも小さなフリップ角160度のリフォーカスパルスRP(M+1)の印加により、
図9の左から2列目枠の上段に示すように、高フリップ角領域ではゼロであった縦磁化成分が、非ゼロのプラス方向の成分として発生していることに注目されたい。つまり、フリップ角160度のリフォーカスパルスRP(M+1)の印加により、縦磁化の強制的な回復が行われたことになる。
【0080】
リフォーカスパルスRP(M+1)の印加直後のスピンの横磁化成分は、高フリップ角領域での振る舞いと同様に、静磁場の不均一性ΔB
0によって、ETSの間に、X’−Y’平面を2φだけ回転する。この結果、フリップ角減少領域における2番目のリフォーカスパルスRP(M+2)の印加直前においては、スピンは、
図9の左から3列目の状態となる。なお、静磁場の不均一性ΔB
0による位相の回転は、縦磁化成分には影響を与えない。したがって、
図9の左から3列目枠の上段に示すように、スピンは、縦磁化成分が保持された状態で、X’軸の負方向から正方向に移動することになる。
【0081】
このスピンに対して、160度から120度へとフリップ角がさらに減少された2番目のリフォーカスパルスRP(M+2)が印加されると、その印加直度において、スピンがY’軸周りを120度回転し、
図9の左から4列目の状態となる。この状態の縦磁化成分は、
図9の左から2列目枠の上段に示す縦磁化成分よりも大きくなっている。
【0082】
図9の左から5列目は、3番目のリフォーカスパルスRP(M+3)の印加直前の状態を示す。静磁場の不均一性ΔB
0によって、横磁化成分は2φだけ回転するものの、ここまで強制的に回復された縦磁化成分は保持されたままである。
【0083】
図9の左から6列目は、3番目のリフォーカスパルスRP(M+3)の印加直後の状態を示す。3番目のリフォーカスパルスRP(M+3)のフリップ角は、120度よりもさらに小さい60度に設定されている。3番目のリフォーカスパルスRP(M+3)の印加により、スピンはY’軸周りを60度回転し、スピンの方向はZ’軸方向にさらに近づくことになる。この結果、リフォーカスパルスRP(M+3)の印加後の縦磁化成分は、さらに大きくなることになる。
【0084】
以下、フリップ角がゼロ度に向かって徐々に減少されたリフォーカスパルスを順次印加することにより、縦磁化がZ’軸方向にさらに近づいていく。つまり、縦磁化が強制的に回復されていくことになる。
【0085】
言い換えれば、各リフォーカスパルスのフリップ角が、所定の高フロップ角(例えば、180度)からフリップ角ゼロに向かって減少するリフォーカスパルス列を印加することによって、縦緩和時間T1による縦磁化の自然回復の速度を、強制的に加速することが可能となる。以上が、フリップ角減少領域を設けることによって、縦緩和の回復を加速することができる理由の説明である。
【0086】
図10は、本実施形態のFSE系パルスシーケンスで得られる磁気共鳴信号の収集順序と、k空間への配置を説明する図である。
図10に示すFSE系パルスシーケンスは、部分フーリエ(partial Fourier)法と呼ばれる撮像法をFSE系パルスシーケンスに適用したものであり、FASE(Fast Advanced Spin Echo)法とも呼ばれる。FASE法では、k空間(位相エンコード方向をy方向とした場合のky空間)の正又は負の高周波領域のうち、いずれか一方の高周波領域に対応する磁気共鳴信号の収集を省略することにより、撮像時間が短縮される。収集されなかった一方の高周波領域のデータは、画像再生時におけるホモダイン処理等によって補完される。
【0087】
本実施形態のFSE系パルスシーケンスでは、
図10に示すように、90度励起パルスに近い位置に高フリップ角領域を配置し、90度励起パルスから遠い位置に低フリップ角領域を配置し、そして、高フリップ角領域と低フリップ角領域の間に、フリップ角減少領域を配置している。
【0088】
90度励起パルスの印加によって横磁化が発生するが、90度励起パルスに近い位置では、横緩和があまり進んでいないため、高フリップ領域で収集される磁気共鳴信号のSNRは高い。一方、90度励起パルスの印加から時間が経過するにつれて、横緩和が進み横磁化が徐々に減少していく。このため、90度励起パルスの印加からの経過時間が大きな低フリップ角領域における磁気共鳴信号のSNRは、高フリップ角領域における磁気共鳴信号に比べてSNRが低くなる。また、低フリップ角領域では、縦磁化が強制的に加速された結果として横磁化成分が低下するため、これもSNRが低くなる要因となっている。
【0089】
一方、再構成された画像のコントラストは、低周波領域に配置された磁気共鳴信号に支配される。逆に、高周波領域に配置された磁気共鳴信号は、画像のコントラストにそれ程影響を与えない。
【0090】
そこで、本実施形態のパルスシーケンスでは、高フリップ角領域で収集された磁気共鳴信号をky空間の低周波領域に配置する一方、低フリップ角領域で収集された磁気共鳴信号をky空間の低周波領域に配置している。そして、フリップ角減少領域で収集された磁気共鳴信号は、ky空間における低周波領域と高周波領域の間に配置している。
【0091】
より具体的には、高フリップ角領域で収集した磁気共鳴信号がky空間の低周波領域に配置されるように、高フリップ角領域における位相エンコード量を設定する。また、低フリップ角領域で収集した磁気共鳴信号がky空間の高周波領域に配置されるように、低フリップ角領域における位相エンコード量を設定する。そして、フリップ角減少領域で収集された磁気共鳴信号が、低周波領域と高周波領域の間に配置されるように、フリップ角減少領域における位相エンコード量を設定する。
【0092】
例えば、
図10に示したように、磁気共鳴信号の収集を、ky空間の中央部の低周波領域のうち、負側の一端から開始する。その後、位相エンコード量を正の方向に増加させながら、位相エンコード量が正の高周波領域の最大値に達するまで、磁気共鳴信号を収集する。
【0093】
上記のように磁気共鳴信号の収集順序と、そのk空間への配置を設定することにより、画像のコントラストへの影響が強い低周波領域に、SNRの高い高フリップ角領域の磁気共鳴信号が配置され、画像のコントラストへの影響が弱い高周波領域に、SNRが比較的低い低フリップ角領域の磁気共鳴信号が配置されることになる。この結果、良好な画質の画像を得ることができる。
【0094】
なお、
図10に示したように、励起パルスの印加からky=0までの時間が実効エコー時間TEeffであるが、高フリップ角領域のデータ収集数(即ち、高フリップ角領域におけるリフォーカスパルスの数M)を、例えば、実効エコー時間TEeffの3倍の時間をETSで除した数として設定することもできる。
【0095】
図11は、k空間の全ての領域に磁気共鳴信号を配置する例を示す図である。この場合にも、高フリップ角領域の磁気共鳴信号を低周波領域に配置し、低フリップ角領域の磁気共鳴信号を高周波領域(この場合、正と負の高周波領域)に配置するものとしている。
【0096】
図12は、本実施形態に係る他のFSE系パルスシーケンスの例を示す図である。
図12の上段に示すFSE系パルスシーケンスは、フリップ角α(αは、例えば180度)を有する高フリップ角領域と、フリップ角減少領域の2つの領域を有している。フリップ角減少領域は、フリップ角γを有するリフォーカスパルスRP(γ)と、フリップ角βを有するリフォーカスパルスRP(β)の2つのリフォーカスパルスを有している。この場合であっても、フリップ角減少領域の各リフォーカスパルスのフリップ角は、所定の高フロップ角からフリップ角ゼロに向かって減少するリフォーカスパルス列となっている。
【0097】
例えば、フリップ角γはフリップ角αよりも小さく、例えばフリップ角γは約90度である。また、フリップ角βはフリップ角γより小さく、例えばフリップ角βは約1度である。なお、
図12の中段に示すように、2つのリフォーカスパルスRP(γ)及びRP(β)は、磁気共鳴信号の収集を伴うものである。
【0098】
図12の下段の各図から判るように、この実施形態のフリップ角減少領域における上記の2つのリフォーカスパルスRP(γ)及びRP(β)によっても、縦磁化、即ち、スピンのZ’軸成分が、強制的に回復され、縦磁化の回復速度が加速される。この結果、撮像時間を短縮することが可能となる。
【0099】
上述した各実施形態では、リフォーカスパルス列全体を、高フリップ角領域、フリップ角減少領域に少なくとも分割している。また、
図6等に示した実施形態では、フリップ角が、ゼロ度近傍に設定される低フリップ角領域を有している。そして、フリップ角減少領域及び低フリップ角領域では、高フリップ角領域に比べてフリップ角の小さなリフォーカスパルスが使用される。このため、リフォーカスパルス列全体が、一律に180度の高いフリップ角に設定されている従来のFSE系パルスシーケンスに比べると、SARを大幅に低減することができる。
【0100】
本実施形態のパルスシーケンスは、FSE系パルスシーケンスを使用する種々の撮像法に適用することができる。例えば、上述した実施形態のFSE系パルスシーケンスを、前述した非造影MRAで使用されるFBI法や、Time−SLIP法に適用することにより、これらの撮像法の撮像時間を短縮すると共に、SARを低減することができる。また、主に頭部の撮像に使用されるFLAIR(Fluid Attenuated Inversion Recovery)法や、MSK法等、FSE系パルスシーケンスを使用する種々の撮像法に適用することで、これらの撮像法の撮像時間を短縮すると共に、SARを低減することができる。
【0101】
以上説明してきたように、各実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、SARを低減すると共に、撮像時間を短縮することができる。
【0102】
なお、各実施形態の記載における設定機能は、特許請求の範囲の記載における設定部の一例である。また、各実施形態の記載における画像生成機能は、特許請求の範囲の記載における生成部の一例である。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。